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選択肢を選んで1000レス目でED 2

1 :名無しって呼んでいいか?:2007/05/20(日) 18:41:45 ID:???
・リレー形式で話を作れ
・話の最後には選択肢をつけること
・選択肢は1つのみ選ぶこと(複数選択不可)
・次に進める人は選択肢を選んだ後それにあった話を作り、1000レス目でED
・途中にキャラ追加、話まとめなどO.K.
・話を続けるときは名前欄に通し番号を入れること
・今回はトゥルーEDを目指すこと。主要人物の死亡(モブはOK)、誰かとくっつけるのは無し
・450KBを超えたら気づいた人が注意を促すこと
・新規で書き込みする方はwikiを一読すること

▼前スレ
選択肢を選んで1000スレ目でエンディング
ttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/ggirl/1140272497/

▼まとめwiki 
ttp://www22.atwiki.jp/1000ed/

<<現在までの登場人物>>
大堂愛菜:高校二年の主人公 。予知夢を見る(但し起きると内容は忘れている)
大堂春樹:愛菜の義理の弟(高1)。好きな人がいるらしい。
愛菜よりしっかりものなので兄にみられがち。
湯野宮隆:愛菜の幼馴染。ファントム(ミスト)を操る能力がある(事故後能力発祥)。
      モノに宿る八百万の神に働きかける能力もある(先天的能力)。
武     :隆の裏人格(クローン)。ファントム(ミスト)を隆とは別に操ることができる。
      存在を組織に知られていないが、組織の命令には逆らえないらしい。
宗像一郎:放送委員の委員長。水野を利用している。「見える力」がある
宗像修二:一郎の双子の弟でテニス部エース。一郎と同じく「見える力」をもっている。
       他人を見下しているところがあり不誠実とおもわれているが、愛菜にはなぜか協力的。
近藤先生:厳格だが生徒思いの男性教師。春樹の担任。
水野先生:隆とキスしていた音楽教師。組織の一員?
長谷川香織:愛菜の親友。
御門冬馬:感情表現に乏しい。言葉遣いは丁寧。愛奈の従者(?)。
高村周防:高村研究所の反主流に属するもの。明るいお兄さん的存在。
チハル  :愛奈が隆からもらった熊のぬいぐるみ。隆の力で動くようになる。
大堂志穂:愛菜の実の母。冬馬の名付け親。
こよみ  :冬馬と同じ研究所にいた髪の長い少女らしい。
組織のNO.1:高村研究所のトップ。現在は性別年齢すべて不詳。


その他関連事項は>>2-3あたり


203 :543:2007/08/30(木) 00:30:27 ID:???
@「病院?」

(たしか……以前、改装していたし)

「そ、正解。よくわかったな」
周防さんが感心したように言った。

「研究所って、建物の構造が病院に近いだろうなって思ったんです。
病院が以前改装していたのを思い出してピンときました。
あと、病院の一部が研究施設なら、周りの住民の目も欺きやすそうですよね」

私の言葉を聞いて、美波さんはゆっくり頷いた。
「鋭いですね。愛菜さんはなかなか見所がありますよ」
「愛菜ちゃんはいつも見所ありまくりだよ、ね?」
修二君が私を覗き込んで、にっこり笑った。
「そ、そんなことないよ」
褒められるのが恥ずかしくて、私は思わず下を向いた。

「愛菜さんが言う通り、あの病院は以前、研究施設が併設されていました。
そして旧研究施設は改装され、現在は病院の入院棟となっています」
美波さんは私たちによどみなく説明してくれる。

「でも、皮肉だなー。俺が子供の頃にいた施設って、家からめちゃくちゃ家と近かったんだ」
修二君はようやく謎が解けたというような声をあげた。

(そうだった。たしか、一郎君と修二君は施設にいたんだよね)

「修二君。ぜんぜん気がつかなかったの?」
私は不思議になって尋ねた。
「うん。子供の頃すぎてあんまり憶えてないけど、塀に囲まれていたから周りの様子はわからなかったよ」
「確かに、塀に囲まれて逃げられないようなっていたな」
周防さんは眉間にしわを寄せて、心底施設を嫌っているようだった。

「それだけではありませんよ。
子供は特に無垢ですから、ここから出られないと思い込ませるなんて、施設側には容易いことだったのです。
さらに深いマインドコントロールを施して、何も疑うことなく施設側の言いなりになる人間を大勢作り出していました。
ですから、多くの施設出身者は今も施設に逆らうことができないのですよ」
美波さんは施設の内情を私たちに淡々と説明してくれた。

@美波さんに施設関係者なのか尋ねる
A主流派が私を狙う理由を尋ねる
B周防さんにこの通路で起こった出来事について尋ねる

204 :544:2007/08/31(金) 03:21:44 ID:???
@美波さんに施設関係者なのか尋ねる

「美波さんはもしかして……施設の関係者、だったんですか?」
すらすらと美波さんの口から語られる内容はどうしたって部外者は知りえない情報に聞こえる。美波さんは私をちらりと見て、目が合うとにっこり笑った。
「まああなたがそうおっしゃるのも当然でしょうね。こんな話を真顔でする部外者がいたら私も会ってみたい」
はぐらかすようにそう言って、美波さんは目を伏せた。薄明かりに照らされた長い睫毛はこころなしか少し震えているように見える。
なにか、まずいことを聞いてしまったんだろうか。

美波さんに謝らなければいけない様な気がして、私が口を開こうとした所で修二君が痺れを切らしたように言った。
「で、結局の所あなたはどういう人間なんです?施設の運営に関わっていたことでもあるんですか?」
「修二君!」
「良いんですよ、愛菜さん。素性のはっきりしない人間と共に行動などできませんからね。いずれはお話しなければならない事ですから」
美波さんの言葉に、隣りの周防さんも「そうだな」と頷いた。

「先ほどの修二さんの質問ですが、現在私の表向きの職業は医師です。表向き、と言ってもきちんと資格はありますよ」
「こいつは腕は良いんだが、治療が少々荒っぽいのが難点だ。……二人共、覚えておいたほうが良いぞ」
横でそう付け足した周防さんは、そこで何かを思い出したかのように小さく身震いした。
「……他の患者さんはあなたのように無茶はしませんからね。あなたは特別待遇なんですよ、周防。良かったですね、嬉しいでしょう」
「ああ、ほんとに」

(二人共、仲が良いんだなあ)
二人のやりとりを聞きながら美波さんにお手上げ、といったかんじの周防さんを見ているとなんだか可愛らしくて自然と笑みがこぼれた。
「さて。私は長年この不良患者と行動を共にしている訳ですが、周防との付き合いはかれこれ九年位になります。知り合ったのはご推察の通り、この施設内です」
美波さんはそう言って、辺りを見回すように周囲へ視線をめぐらせた。相変わらずあたりは暗闇に覆われている。
「私がこの施設に入所したのは小学校にあがる前でした。幸か不幸か、入所してほどなく私の能力は開花し、長年にわたって研究対象として所内で丁重に管理されることになりました。
当時の私はマインドコントロールを施されていましたから、非常に従順な良い模範でしたね。成長するに従って、研究員達の代わりに他の被験者たちの管理を任されるようになり、何の疑問も持たずに組織に都合の良い人間を次から次へと養成していた訳です」
「マインドコントロールされてた人間が、どうして反主流派に?」
修二君の問いかけに美波さんは困ったように笑った。
「修二さんは意外とせっかちですね。かいつまんで言うと、マインドコントロールが解けたからです」
「マインドコントロールって簡単に解けるものなんですか?」
「いいえ、愛菜さん。組織の施すマインドコントロールは特別強力です。なにしろ非合法ですからね、被験者の健康など省みる必要がないのですから」
それまで黙って聞いていた周防さんが、美波さんの後に静かに付け足した。
「だが、人の精神に作用するものだ。強いショックを受けると稀にマインドコントロールが解けることがある」
「幸い、研究員達は私のマインドコントロールが解けた事に気付かなかったようでした。その後自責の念に苛まれる私を救ってくれたのが、ここにいる周防です」
「よせよ、救ったなんてそんなたいした事しちゃいないだろ」
美波さんにまっすぐにみつめられて、周防さんはなんでもないというふうに両手をひらひらさせた。
「いいえ。あなたは私の罪を償う術を、妹の声を伝えてくれたんです。……それからの私は表向きはマインドコントロールされたまま、反主流として周防と共に活動するようになりました。
どうでしょう、修二さん。これで先ほどの質問の答えになるでしょうか?」
「そうですね、だいたいわかりました。愛菜ちゃんは?」
修二君が私の顔を覗き込む。そんなに何か聞きたそうな顔をしていたのだろうか。
(確かにちょっと気になることはあるけど……)

どうしようかな?
@美波さんが受けた強いショックとはどんなことだったのか聞いてみる。
A美波さんの妹さんと周防さんの関係について聞いてみる。
Bなんだか悲しそうな美波さんが気になるので何も聞かない。

205 :545:2007/09/01(土) 00:18:10 ID:???
A美波さんの妹さんと周防さんの関係について聞いてみる。

「妹さんと周防さんは知り合いなんですか?」
「……ああ、綾のことはよく知っているよ」
周防さんは複雑な表情で答えた。

(妹さんは綾さんっていうのね)

「綾さんは二十歳くらいですか? 美波さんの妹さんなら、きっと綺麗な方なんでしょうね」

美波さんの妹さんなら、きっとすごい美人に違いない。
妹が欲しいな、と小さい頃から思っていたから妹さんがいる美波さんが少し羨ましく思えた。

「愛菜ちゃん……それは…」
周防さんは言いよどんで、美波さんの方を見た。
美波さんはその視線に応え、小さく頷くと私に向き直った。

「私の妹、綾は16歳から永遠に歳をとることはありません」
「え……」

美波さんが言った意味が飲み込めず、私は言葉に詰まった。
修二君も驚いた顔で、美波さんを見た。

「綾は…妹は16歳で死にました。直接的に手を下したわけではありませんが、私が殺してしまったようなものです。
それが、私が背負っている罪なのですよ」

美波さんは真っ直ぐ私を見つめたまま言った。その瞳に、嘘や偽りは無い。
16歳といえば、私と同じ歳だ。
美波さんに何か言わなくちゃいけないと思うのに、思考が停止してしまったように上手く言葉が出てこない。

「それはお前の考え過ぎだ、美波。あの頃のお前は精神を組織に支配されていただろうが。
当時の状態でマトモな判断なんて出来なかったんだよ」
自分自身を責める美波さんを咎めるように、周防さんが強い口調で言った。

「支配を受けていたとはいえ、綾の逃亡計画を組織に告発したのは、他でも無い私です。
そして、周防に瀕死の重症を負わせ、妹の命までも削る結果になってしまった。
マインドコントロール施されてもいても、いなくても、この事実がある以上は罪を背負い続けなければならないのです」

美波さんの口調に全く迷いはなかった。
きっと罪を償おうとする決意に迷いがないからだろう。

私は…
@二人の様子を黙ってみている
A「妹の綾さんって……もしかして」
B「逃亡計画ってこの通路のことですか?」

206 :546:2007/09/01(土) 12:47:58 ID:???
A「妹の綾さんって……もしかして」

(待って、だけど……あれはこよみさんのはずじゃ)

夜の校庭の半分近くを、オレンジのような何かが照らしている夢を思い出す。
そして、私の腕の中で―――私とそう年の変わらない周防さんが傷だらけで横たわっていた。

夢で見た光景と美波さんの話はリンクしている。
逃げ出した綾さんと周防さんが通路の出口で組織に捕まったとすれば、辻褄も合う。
だけど、私が見た夢では周防さんと逃げていた女の子は綾さんではなく、こよみさんのはずだ。

「あの…周防さん。ひとつ聞いてもいいですか?」
私は顔を上げると、周防さんに話しかけた。
「ああ。なんだい、愛菜ちゃん」
「こよみさんって……誰ですか?」

私の言葉に、周防さんが一瞬息を呑んだ。
美波さんも目を見開いて、私を見つめた。
「愛菜ちゃん、どうしてその名前を知っている? 誰かから聞いたのか?」
「いいえ、夢をみたんです。周防さんは一緒にいた女の子に向かって『こよみ』と話しかけていました。
病院の中庭で一緒にいる光景や、傷ついた周防さんを抱きしめる光景――いつも周防さんの傍らには『こよみ』さんがいたんです」

「そうか……。愛菜ちゃんには隠し事はできないなー」
周防さんは参ったと言いたげな様子で、大げさに頭を掻いた。
「ご、ごめんなさい」
「いいって、いいって。少し驚いただけだから。うん、愛菜ちゃんの夢に出ていた女の子、その子は間違いなく綾だな」
「でも、周防さんはこよみと呼んでいましたよ?」

私は意味が分からず、頭の中は疑問符で埋め尽くされてしまう。
その姿を見て、美波さんがクスクスと笑った。

「綾は『こよみ』なんですよ。愛菜さん」
「え?」
「コードナンバー.543。それが綾の施設での呼び名でした。施設で名前はいりませんからね。
周防は私に会うまで、綾という本当の名前すら知らなかったのですよ」
少しだけ笑顔に影を落としながら、美波さんが呟いた。

「ふーん。そっか、そういうことか」
さっきまで黙っていた修二くんが突然閃いたように声をあげた。

「修二はわかったみたいだな。愛菜ちゃん、俺が綾を『こよみ』と呼んでいた理由はわかったかい?」
周防さんが覗き込むようにして私に尋ねてきた。

なんて答えようかな。

@わかった
Aわらない
Bヒントを要求

207 :547:2007/09/03(月) 14:58:48 ID:???
@わかった

「番号の543の言い方をちょっと変えたんですね」
「そうそう」
「何のひねりもなくて、つまらないでしょう?」
「わるかったな」
私の答えにすかさず美波さんが、周防さんを見ながら苦笑する。
周防さんも言われなれているのか軽く肩をすくめるだけだ。

(それじゃあ、あの後こよみさん、あ、綾さんって言ったほうがいいのかな、綾さんは……)
私が夢で見たとき怪我をしていたのは周防さんで、綾さんではなかった。
周防さんが気を失った後、私は目が覚めてしまってその後どうなったのかは分からないけれど、綾さんはその後亡くなったのだろう。

(そういえば……)
私は冬馬先輩の言葉を思い出す。

『僕が隔離された部屋の前の主は、力を暴走させた挙句病に冒され
再び日の光を浴びる事無く若くしてこの世を去ったと聞きました』

私はあれをこよみさん、つまり綾さんのことだと思った。
髪の長いきれいな女の子だったと、冬馬先輩も言っていたから間違いないだろう。
ならば、周防さんが気を失った後、綾さんは力を暴走させたあげく病に冒されあの部屋に閉じ込められた、ということだろうか?

(気を失った周防さんを見て、綾さんは自分を責めてた……)
気を失った直後、私はすぐに目が覚めてしまったが、その一瞬叫ぶ綾さんのなかで何かが壊れたような音を聞いた気がする。
病というのも精神的なものだったのかもしれない。

「愛菜ちゃん、どうした?そんな苦しそうな顔しない」
周防さんに軽く頭を小突かれ、私ははっと顔を上げる。
いつの間にか考え込んでしまっていたようだ。

「あ、ご、ごめんなさい」
とっさに謝った私に、周防さんが優しく笑って、いつものように頭にぽんと手をのせる。

「愛菜さん、顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」
その横から美波さんが少し心配そうに私を覗き込んできた。

私は……
@「大丈夫です」
A「ちょっと、疲れただけです」
B「そう、ですか?」

208 :548:2007/09/03(月) 23:29:53 ID:???
@「大丈夫です」

私は心配してくれた二人に向かって、笑いかけた。
周防さんと美波さんはちょっと困ったように顔を見合わせた。

すると、今まで黙って話を聞いていた修二君が、溜息を吐くように私に向かって話しかけてきた。

「愛菜ちゃんてさ、いっつも見ていて思うけど……そんな風に無理して笑うから疲れちゃうんだよ」
「え? 別に無理してるつもりはないよ」
「無理してるさ。俺の場合、見ていれば疲れていることなんてすぐにわかるし」
修二君の見透かすような視線に、思わず目を逸らす。
「で、でも本当に無理してないよ」
私は言い訳のように繰り返して言った。

「愛菜ちゃんはこの通路にある残留思念の毒気にあてられちゃってるのに、どうして笑って誤魔化すかなー」
修二君は納得いかないのか、不満の色を露わにしている。
「誤魔化してなんかいないよ」
「茶道室での事といい…自覚がないなら、余計タチ悪いじゃん」
「タチ悪いって……」
修二君の言葉に、思わずムッとしてしまう。

修二君はそんな私を見て、「めんどくさ」と苛立たしげに言った。

「やぁ、若いってもどかしいな」
周防さんは私と修二君を見ながら、しみじみと呟く。
「こらこら、周防。そんなことを言っている場合ではないでしょう。
修二さん、心配ならもう少し優しく愛菜さんに伝えないと嫌われてしまいますよ。
愛菜さんもせっかく修二さんが心配してくれているのですから、もう少し甘えてみてはいかがですか?」

美波さんの言葉に周防さんは大きく頷いていた。
(たしかに、心配させまいとして無理してたかも)
修二君を見ると肩をすくめて憮然としていたけれど、観念したように一歩前に出てきた。

「えっと…愛菜ちゃん、ごめん」
「あ、ううん、私こそ。それに、心配してくれてありがとう」
「俺、愛菜ちゃんの気持ちを全然わかってなかったかも。疲れてるのに、嘘つくなよって思ってた」

こうやってはっきり言葉にしてしまうのも、修二君らしいのかもしれない。

私は
@「次は疲れたらちゃんと言うね」
A「私もムカついて修二君のバカって思っちゃった」
B「素直に言うと、実はおぶって欲しいな」

209 :549:2007/09/04(火) 04:47:57 ID:???
A「私もムカついて修二君のバカって思っちゃった」

「……」
私の言葉が余程意外だったのか、修二君は目を丸くして固まった。予想外の反応に、抱えていた修二君に対するもやもやが次第に薄れてゆくのを感じる。
(珍しいもの、見ちゃったかも)

「えーと……」
戸惑ったように何か言おうとする修二君に、ほんの少しの優越感を持って笑いかける。
「って言っても、ほんとにちょっとだけだけど!これでおあいこだから、修二君も気にしないで。ね?」
「そう、だね。うん。ほんとごめん」
「だから気にしないでってば。心配して言ってくれたのはわかったから」
反省会のように延々続く私たちのやりとりを、周防さんと美波さんはやれやれといった様子で止めに入った。二人苦笑を浮かべつつ、それでもその表情は優しい。

「はいはい、お二人さん。その辺にしときな、修二も反省したよな?」
「愛菜さんも、これからはあまり無理はしないようにね」
二人に間に入られて、ようやくその場が収まった。修二君となにやら子供っぽいケンカをしたようで、私は今更ながら恥ずかしくなってきた。修二君もバツが悪そうに頭を掻いている。
(うう、変に意地張って子供っぽいって思われただろうな……)

そんな私の考えなどお見通しなのか、隣りにいた美波さんが慰めるように言う。
「相手を思うがゆえのすれ違いも、時に起こります。お互いがお互いのことを大切に思えばこそ、伝えなければならない事も出てくるものですし」
「ま、誰にも譲れないものはある。たまには本音でぶつかるのも良いだろ」
続けた周防さんはいつものように陽気にウィンクを飛ばした。

美波さんと周防さんの話を聞きながら、私はふとある人たちの事を重ね合わせていた。

私が重ね合わせていたのは……
@一郎君と修二君
A春樹と私
B周防さんと美波さん

210 :550:2007/09/04(火) 15:53:06 ID:???
@一郎君と修二君

(そうだよね、大事に思ってるならちゃんと話さないと……)
ふっと思いうかんだ一郎くんと修二くんの状態。
一郎くんは修二くんに何も言わず、一人ですべてを背負って行動していた。
修二くんもそんな一郎くんに何も聞くことはなく、それでも二人に一番良いと思われる行動をしている。
けれど気持ちは微妙にすれ違っているように思えて仕方がない。

(双子だって、何も言わなくても通じるわけじゃないのにね……)
そう思って、修二くんを見上げると一瞬目が合ったが、何かに気付いたように振り返った。

「どうしたの?修二くん」
「あ〜……あまりにも俺たちの帰りが遅いから、兄貴が来たみたいだ」
「え?」
私も振り返ったが、見えるのは闇だけで人の姿は確認できない。

(そういえば……)
病院で会ったときも、なぜか一郎くんは修二くんの場所を知っていた。
あの時一郎くんは『分かるからだ』と言っていたけれど……。

「修二のお兄さんが来るのか?」
「みたいだ」
周防さんの言葉に修二くんは肩をすくめて答える。
微妙に突き放したような答えに周防さんが苦笑する。

「では、私は戻りますね」
そのとき唐突に美波さんがきびすを返した。

「え!?」
驚く私に、美波さんはにっこり笑う。

「先ほどお兄さんと一緒のほうが良く見えると言っていましたからね。これ以上私の力を見透かされるのも困ってしまいますので」
「あ……」
「では、またお会いしましょう」
美波さんは私たちが言葉を発する前に、闇に紛れて行った。
なんとなく沈黙が落ちる。

どうしよう……
@周防さんはここに居て良いのか聞く
Aなぜ一郎くんは修二くんの場所が分かるのか聞く
Bどれくらいで一郎くんが来るのか聞く

211 :551:2007/09/04(火) 22:16:39 ID:???
@周防さんはここに居て良いのか聞く

「周防さんはここに居ていいんですか?」
私は美波さんが消えていった方を見ながら尋ねた。

「俺も退散するよ。穴に入り込んだネズミ退治に来ただけだしな」
周防さんはそう言って、私と修二君を交互に見ながら笑った。

「ネズミって、俺と愛菜ちゃんのこと?」
修二君は不服そうに口を尖らせながら、抗議する。
「あの連中と勘違いしたんだよ。じゃあな、お二人さん」
そう言って周防さんは片手を挙げながら、美波さんが去っていった方向に歩き出した。
けれど、二歩ほど進むとピタリと歩みを止めてしまった。

「あーっと、忘れるところだった。この前はいきなりの襲撃で渡せなかったからな」
周防さんはポケットから紙を取り出すと、私に渡してきた。
「俺の携帯番号が書いてある。困ったときは連絡くれればいいから。あと、修二も愛菜ちゃんから聞いといてくれ」
「はい」
「りょーかい」
私と修二君は、ほぼ同時に答えた。

「それともう一つ。修二、ちょっといいか?」
周防さんはちょいちょいと手まねきをして、修二君を呼び寄せる。
そして、耳元で何かを伝えていた。

(私には内緒の話なのかな…)
置いてきぼりにあったみたいで、なんとなく面白くない気分のまま二人の様子を見つめた。

周防さんの耳打ちを聞いて、修二君の顔が段々真剣なものに変わっていく。
そして、周防さんの話を聞き終わると、修二君は声には出さずに「わかった」と口を動かした。

「て、ことなんだ」
「…マジかよ」

「あのー、私には内緒なんですか?」
一応、確認のつもりで周防さんに尋ねる。
「それは、修二の判断に任せたからな。知りたいなら、修二から直接聞いてくれ。それじゃ、またな」
周防さんは闇に溶けるように、消えてしまった。

どうしようかな。

@修二君に内緒話の内容を尋ねる
A修二君が言うまで、内緒話の内容を尋ねない
Bどれくらいで一郎くんが来るのか聞く

212 :552:2007/09/05(水) 15:56:14 ID:???
@修二君に内緒話の内容を尋ねる

「修二くん、周防さんなんて言ってたの?」
「あぁ、うん、後で説明するよ。兄貴も一緒のほうが一回で済むし」
修二くんはそう言って、一度周防さんたちが消えた方向を見据えると、いつもの顔に戻りにっこり笑った。

「それじゃ俺たちも戻ろうか」
「うん」
私は歩き出した修二くんについて、一歩踏み出す。

(……っと、っと、と?)
その途端めまいがして思わず壁に手をつく。

「愛菜ちゃん!」
気付いた修二くんが、すぐに私を支えてくれる。

「だから言ったでしょ?無理してるって」
「……ごめん」
本当に修二くんの言ったとおりだった。
歩き出すまでぜんぜん自覚がなかった自分に落ち込む。

「ほら、掴まって。早くここから出よう、兄貴ももうすぐ合流するから」
「うん、ありがとう」
修二くんに支えられて歩き出してすぐに、闇の中に小さな明かりがゆれているのが見えた。

「大堂、大丈夫か?」
やって来た一郎くんは真っ先に私に尋ねてくる。
やっぱり一郎くんにも、私の状態が『見える』のだろう。

「何とかね、ちょっとふらつくけど……」
「修二、お前が付いていながらなんて無茶させるんだ」
「ごめん、配慮が足りなかったよ」
「……修二くんが悪いわけじゃないよ。私が大丈夫だって意地張っちゃったから」
一郎くんの言葉に、言い訳することもなく修二くんが謝る。
とっさに私が口を挟むと、一郎くんがなんともいえない顔で口を閉ざした。

「……とりあえず、ここから出よう。大堂はここに長く居ないほうがいい」
一郎くんは一つため息をついてすぐにいつもの表情に戻ると修二くんの反対側から私を支えた。

「行くぞ修二」
「愛菜ちゃん、ちゃんと掴まっててね」
「えっ!?」
二人が同時にかがんで私の身体を持ち上げる。
二人が組んだ両腕に座っているような状態だ。
急に視界が高くなり、慌てて両隣にある一郎くんと修二くんの肩に手を添えて身体を支える。
それを確認して、二人は走っているといっていい速度で進み始めた。
何の合図もないのに、二人の呼吸はぴったりだ。

(やっぱり双子なんだな……)
恥ずかしいのも忘れて、思わず感心してしまう。
速度が速度だっただけに、降りてきた階段まで到達するのにあまり時間はかからなかった。
降ろしてもらって体育館倉庫を出ると、すっかり日が落ちてしまっている。
下校時間も過ぎてしまっているようだ。
春樹たちも心配しているかもしれない。

どうしよう……
@今日はもう家に帰る。
A周防さんの話が気になるので聞く。
Bとりあえず、春樹に電話する。

213 :553:2007/09/05(水) 19:19:59 ID:???
@今日はもう家に帰る。

私が家に帰る事を告げようとする前に、二人は同時に口を開いた。

「日がすっかり落ちているな、送っていこう。大堂」
「話はまた今度でいっか……送ってくよ、愛菜ちゃん」

一郎君と修二君の視線が私の頭上でぶつかっている。
口火を切ったのは、一郎君の方だった。

「修二。さっき文化祭実行委員の藻部がお前を探していたぞ」
「げっ。それ、マジ?」
「嘘をついても仕方ないだろう」
「やばっ。アイツ、絶対に怒ってるよー。もう帰っちゃったかなぁ」
悪戯が見つかった子供のように、修二君は頭を抱えている。

「愛菜ちゃん、ゴメン。俺、やっぱり一度教室に戻るよ」
「あっ、うん。そうだね」
「ホント、ゴメンね」
私に手を合わせると、修二君はすごい速さで校舎に戻っていった。
その姿が見えなくなると、私は一郎君に向き直る。

「修二君、またクラスの仕事をサボってたのかなぁ。私には今日は暇だって言っていたのに」
「だろうな。藻部は修二が逃げ出したと言っていた」
「やっぱり」

(仕方ないなぁ……)

ぼんやりそんな事を考えていると、一郎君が私の鞄を黙って手渡してくれる。
鞄までしっかり用意してある辺り、さすがとしか言いようがない。
「あ、ありがとう」
「では帰ろうか」

一郎君と私は校門に向かう。
体調の悪い私を気遣うように、一朗君がゆっくり歩いてくれている。

「大堂。大丈夫か?」
「あ、うん。へいき……」
そう言いかけたところで、さっきの修二君とのやり取りが頭をよぎった。
(私がやせ我慢しても、一郎君にはお見通しなんだよね)

私は…
@「ちょっと歩けそうにないかも」
A「ごめん。タクシー呼んでもらっていい?」
B「平気だよ、ありがとう」

214 :554:2007/09/06(木) 16:42:08 ID:???
@「ちょっと歩けそうにないかも」

修二くんが言うように、自分には分かっているのに無理をされるというのは気持ちのいいことではないだろう。
そう思って、素直に口にする。
正直、自分でもこんなに影響されているなんて思っていなかった。
うまく足に力が入らない。
しっかり気をつけていないと、そのまま座り込んでしまいそうだった。

「大丈夫か?」
一郎くんはすぐに私を支えると、顔を覗き込んでくる。

「だいぶ疲れているようだな」
「あの通路に居るときは特に感じなかったんだけど、戻ろうとしたら急に、ね」
「そうか。だが今回は大堂自身の気が乱れているわけではない。
 外から影響を受けて、うまく気が巡らなくなっているだけだ。
 気のめぐりが悪くなって疲労しているが、少し休めば回復するだろう」
そう言って、一郎くんは私の額に手を当てた。

「少し影響を取り除いておこう」
そう言って当てられた一郎くんの手がとても暖かく感じる。

「何をしてるの?」
「大堂に影響を与えている思念を散らしている。
 俺の力はこういうことに向いてはいないから完全に取り除くことは出来ないが、時間がたてば自然に消えるものだから心配しなくていい」
一郎くんはしばらく私の額に手を置いていたが、しばらくしてその手をおろす。

「さっきよりは良くなったんじゃないか?」
「うん、ありがとう」
確かにさっきまでまとわり付いていた疲労感が和らいでいる。
一郎くんにお礼をいって笑うと、一郎くんも少しだけ微笑んだ。

「いや、たいしたことはしていない。さぁ、行こうか」
一郎くんは私を支えたまま促す。
私は一郎くんに支えられたまま歩き出す。

(ずっと無言って言うのも、気まずい、かな?)

私は……
@無言のまま帰る
Aどうして修二くんの居る場所が分かるのか聞く
B組織と決別してこれからどうするのか聞く

215 :555:2007/09/06(木) 20:15:45 ID:???
Aどうして修二くんの居る場所が分かるのか聞く

「一郎君。よく私たちの居場所がわかったね」
背中に添えられた一郎君の手に少しだけ意識を向けながら、私は尋ねた

「……修二の意識を追っていけばわかる。ただし、集中して追わなければ場所の特定まではできないが…」
「修二君の意識?」
「俺達は双子だから、特にアクセスしやすいのだろうな」
「うーん。じゃあ、修二君の意識にアクセスするって、どんな感じなの?」
「そうだな……」

一郎君はしばらく考え込みながら歩く。
その横顔を見ながら、私はじっと待った。

「ラジオのチューニングをあわせる感覚に近いだろう。修二の周波数を合わせ、意識を受信するんだ。
あと、空間の認識と言う上では、カーナビなどのGPSシステムにも似ているのかもしれない」

(あれ……この話、どこかで聞いたことがある)

どこだっけ?と真剣に考え始めたとき、突然、目がくらむほどの光を受ける。
「危ない!」という一郎君の声で我に返った。

プップープップー

グイと力強い腕に導かれ、すぐ鼻先を車が横切っていく。
けたたましいクラクションの音と共に、車は勢いを保ったまま、強引に右折してしまった。

「なんて乱暴な運転だ! 大堂も何をぼんやりとしている」
「ご、ごめん…」
「あ……いや、俺の方こそすまない。君は体調が優れなかったのだな」
身を竦めている私を気遣ったのか、口調が穏やかなものに変わる。
「もしかして…今のは組織の仕業……」
急に怖くなって、私は呟く。
「それは絶対に無い。主流派は君を傷つけてはならないと命令しているはずだ」
そう言うと、一郎君の腕に力が篭った。

私たちは住宅街の十字路、電柱の影に隠れるように体を寄せ合っている。
しっかりと抱きすくめられているせいなのか、少し息苦しい。顔を上げると、一郎君の瞳とぶつかった。
淡い街灯の明かりのせいなのか、その瞳に暗い影が落ちて、ひどく悲しげに映った。

私は…
@「あ、ありがとう」
A咄嗟に離れる。
B一郎君の瞳を黙って見つめ続けた。

216 :556:2007/09/07(金) 13:37:50 ID:???
@「あ、ありがとう」

なぜかその目に耐えられなくなって私は一郎くんから視線を外し、お礼をいってやんわりと離れようとする。
けれど一郎くんの手は緩む様子がない。

「一郎くん?」
私はおそるおそるもう一度一郎くんの顔を見る。
一郎くんはやっぱりさっきと同じ目で私を見ていた。
私の声が聞こえていないかのように、ただ見つめてくる。
まるで私の中の別の何かを見ているような、そんな気さえする。

「ねぇ一郎くん、どうしたの?」
「……すまない、なんでもない」
もう一度声をかけると、一郎くんは目を伏せて私を放す。
それから何事もなかったかのように、私を支えなおすと今度は前を向いたまま話し出す。

「大堂、君は自分の力を使いこなせるようになったほうがいいと思う。
 少なくとも、自分の身を守る方法は覚えたほうがいいだろう。
 契約である程度の危険からは守られているとはいえ、今回のようなことがまったくないとは言い切れないからな」
一郎くんに促されるまま歩きながら、私は頷く。

「そうよね……、こんなふうに何度も疲れてちゃ日常生活もままならないもんね」
私はため息をつく。
いままで、ただそこに居るだけで疲れてしまう、というようなことはなかった。
力があることを自覚したからなのだろうか?それとも他の要因があるのだろうか。

(一郎くんなら、何か分かるかな……?)
「どうした?」
私のもの問いたげな顔に気付いたのか、一郎くんが私を見る。

「あ、えっと……いままで、どこに行ってもこんなに疲れることはなかったのにな、とおもって」
「……?」
一郎くんは少し首を傾げる。

「今回はあの通路の残留思念の毒気にやられてるって、修二くんが言ってたけど、そういうのって人の思いの強く残っている場所には必ずあるものなんでしょ?」
「まぁ、そうだな」
「それなのに、いままで影響を受けたことがなかったから……こんなに疲れるのだって今回が初めてだし……」
いったん言葉を切って、一郎くんの目を見る。

@「一郎くんは理由が分かる?」
A「私の中で何かが変わってるのかな?」
B「『封印』が解けかけてるとか?」

217 :557:2007/09/07(金) 21:54:24 ID:???
A「私の中で何かが変わってるのかな?」

私の問いに、少し間を空けてから一郎君が口を開いた。
「大堂自身が、力を自覚したからだろうな」
「それだけ? 他に要因は無いの?」
「契約による作用も関係しているが、一番の理由は自覚することによって、力が少しずつ形を成してきている為だ」
「それは……私が力を使いこなせてきていると言う事?」
私は期待を込めて、一郎君に尋ねた。
「いや。力を使いこなすと言うよりは、ようやく目覚め始めたところだろう」

(なんだ…生まれたてみたいなものなのね)

がっくりと肩を落としてしまった私に向かって、一郎君はゆっくり語りかけてきた。

「一朝一夕でどうにかなるものでもない。しかし、身を守る力は必要だ。
力を使いこなすにはまず集中力が必要になる。そこでだ……」

手のひらサイズの箱を手渡された。

「すぐにどうにかなるものではないが、努力は必要だ。
それはESPカードと言って、丸、四角、プラス、波、星の形が描かれている。
きり混ぜたカードを伏せ、コールしながら一枚ずつ図柄を当てていくのが、一人で訓練できる最も簡単な方法だろう」

カードケースを開けると、トランプのようだったが表は数字ではなく、図柄のみが印刷されていた。

「これ、テレビで見たことがあるよ。神経衰弱みたいにして当てていけばいいんだよね」
つい嬉しくなって私はカードを取り出す。
なんだか、自分が急にテレビに出ているような超能力者になった気分だ。

「それを大堂に渡しておく。カードをすべて当てることができるまで集中力を養うといい。
君は不器用だから、少し時間がかかるかもしれないが」

(不器用は否定できないにしても…。今、すべてのカードを当てるって聞こえた気がするんだけど)

「あー。私の聞き違いかな? 今、すべてのカードを当てるって聞こえたんだけど」
「聞き違いではない。伏せた25枚をすべて当てるんだ」

(そんなの、無理に決まってるよ!)

私は…
@一郎君に試しにやってもらう
A自分でやってみる
Bカードを返す

218 :558:2007/09/08(土) 23:04:31 ID:???
@一郎君に試しにやってもらう

「どうした、大堂。突っ立ったままでは家に帰れないぞ」
歩き出した一郎君が、立ったままの私に振り向いて言った。

「ね、ねえ。……このカードって本当に25枚全部当てられるようにならないと駄目なの?」
数歩先にいる一郎君に追いつくために、小走りに近づく。
「それくらい初歩中の初歩だ」
「五枚のカードを当てるとかじゃなくて?」
「くどい。俺は25枚すべてを当てるように訓練するように言ったはずだ」
「……じゃあ、一郎君は出来るの?」

初歩だというけれど25枚全部当てるなんて、奇跡に近い確立だ。
そんな無茶を真顔で言う一郎君の正気を疑ってしまう。

「当たり前だろう。くだらない質問だな」
「本当に?」
疑いの眼差しを向ける私を見て、一郎君は小さく溜息を吐いた。
「確かに、確立で言えば、1/ 24,800,000,000 だ。しかし、君も俺と同じ能力者だろう。君は自分の力が信じられないのか?」

(信じるって言っても、未だに半信半疑だし。……って、そうだ)
私は道の反対側にある、一郎君と以前過ごした児童公園を指差す。
「一郎君が本当に25枚全部を当てられるのか、あの公園で見せて欲しいな。そうしたら、自分の力を信じられるかもしれない」
「仕方がない。それで大堂がやる気になるのであれば、安いものだ」

静まり返った公園のベンチに、私たちは腰掛けた。
手のひらサイズの箱から、カードを取り出して、私は慎重にきり始めた。
そして、伏せたままのカードを一郎君の目の前に置く。

「上から順にカードの図柄を当てていく方法でいいな?」
一郎君の言葉に、私は黙って頷いた。

(――す、すごい…。手品じゃないよね)
結局、一郎君は当たり前のように25枚すべてを当ててしまった。

「驚いたよ、本当だったんだね。そんな力があったらカンニングし放題だよ!」
目の当たりにした奇跡に興奮してしまい、つい声が大きくなってしまう。
「大堂はカンニングの為に力を手にしたいのか?」
私の言葉を聞いて、カードを片付けながら一郎君が眉をひそめた。
「そ、そういう訳じゃないよ……」
「勉学もスポーツも力の向上も、すべて自分自身を高める手段に過ぎないだろう」
一郎君の正論にぐうの音も出ない。
「それに、大堂は今まで散々力を見ているのだし、今更驚くこともないと思うが」

そう言われれば、ここ最近、力や組織やらで驚くことばかりだった。
けれど、現実味に欠けるようなすごい事ばかりで、夢の中の出来事のような気さえしていた。
今のは現実味があるだけに、心の底から一郎君をすごいと思ったのだ。

私は…
@自分でもやってみる
A訓練をやる気になったと言う
Bやっぱり無理だとカードを返す

219 :559:2007/09/09(日) 14:56:26 ID:???
@自分でもやってみる
「私も、ちょっとやってみようかな」
私の言葉に一郎君はカードを片付けていたその手を止める。
「うん?君が、今ここでか?」
「そう。一郎君を見てて、できそうって思った訳じゃないけど。一郎君に見ててもらった方がなんとなく上手くいきそうな気がするし」
一郎君は束ねたカードを手渡しながら不思議そうに言った。
「そんなものか?」
「そんなものです。それに一郎君の言う通り、私不器用だからね」
そう言って口を尖らせた私を見て、一郎君は困ったように小さく笑った。
「気にしていたのなら、悪かった。……だが、そうだな。君がそう言うのならそうなんだろう。俺でよければいくらでも力になろう」
「……」
私は一瞬言葉を忘れて一郎君に見入ってしまった。それくらい、今の一郎君の声は優しかった。
(なんだか、まるで……)
「? どうした、大堂?」
急に黙り込んだ私を前に、一郎君が気遣わしげに問いかけた。我に帰った私は取り繕うように慌てて首を振る。
「あ、ううん!なんでもないの。じゃあ、ちょっと私もやってみるね」
意識して笑顔を作ると、なんでもなかったかのように手元のカードに向かう。一郎君は何か言いたそうだったが、集中し始めた私の様子に黙ってそのまま腕を組んだ。

(よーし、集中集中……)
「一番上は……波、かな」
ゆっくりとカードをめくる。一郎君の視線に緊張しているのか、上手くめくれずに少々戸惑った。表に返されたカードの図柄をそろそろと確認する。
「……星だな」
「あれ?じゃあ、次は……丸とか」
「四角だ」


220 :559:2007/09/09(日) 14:58:15 ID:???
ごめんなさい、途中で書き込んじゃいました…!
↓のが続きです、失礼しました!

221 :559の続きです:2007/09/09(日) 14:59:02 ID:???
私の声に一郎君はカードをめくるよりも早く図柄を言い当てた。なんとなく焦りを感じて意識を集中するのもそこそこに次のカードに挑む。
「えーと次のは……」
「プラスじゃない」
私の心を読んだかのように、一郎君は言おうとしていた図柄を口にした。言いかけたまま一郎君の顔に目を向ける。
「一郎君……読心術も、できるの?」
「まさか。君の場合は特別だ。すぐに、顔に出る」
(私、そんなにわかりやすい?)
暗に単純だと言われたようで釈然としないまま改めて続きに挑戦したが、その後の結果はそろいも揃って目も当てられない無残なものだった。

「……ある意味、すごいな」
「うう、頑張ったのに……」
一郎君の言葉にがっくりと肩を落とす。自分でもまさかここまでとは思わなかった。
「25枚全てをはずすのもそうそうできるものではないように思う」
「すみません……」
うなだれる私にやれやれといったように一郎君が苦笑した。
「これは随分時間も手間もかかりそうだ。……またいずれ機会を見てやってみよう」
「……?また、って……またつきあってくれるの?」
「俺がいた方が上手くいくと、そう言ったのは君だろう?」
何でもないようにそう言ってふいと目をそらした一郎君を見て、自然に笑顔がこぼれた。
「一郎君、ありがとう」
「礼を言われるほどの事でもない」

チャーラーラーチャラーラーラー

不意に携帯が鳴った。慌てて制服のポケットに手を突っ込むと、お義母さんからの電話だった。
「ちょっとごめんね、一郎君。お義母さんから電話みたい。……もしもし?」
「愛ちゃん、どうしましょう!春樹が、春樹が……」
「お義母さん?どうしたの、落ち着いて」
電話の向こうのお義母さんの声は今迄聞いた事がないくらい逼迫していた。お義母さんの動揺が電話越しに私にも伝染してしまいそうな、そんなただならない様子でお義母さんは続ける。
「あの人が、春樹を連れていってしまったの。迎えに来たって、でも今になってどうして急に!春樹も大丈夫だから心配しないでって、でも……」
話すうちにお義母さんは泣き出してしまったようだ。時折しゃくりあげて言っている事は要領を得ない。一郎君は少し距離をとりつつ、心配そうにこちらに視線を投げかけている。

どうしよう?
@お義母さんに再度落ち着いて何があったのかを話してもらう
Aこのままでは埒があかないのですぐに家に帰る
B一郎君に事情を説明して協力してもらう

222 :560:2007/09/10(月) 01:46:29 ID:???
Aこのままでは埒があかないのですぐに家に帰る

(……一体、何があったの?)

「うん、わかったよ。すぐに帰るから、とりあえず落ち着いて。ね?」
泣きじゃくるお義母さんをなんとかなだめ、私は携帯を切った。
「どうしたんだ?」
ただならない様子を察したのか、一郎君が心配そうに尋ねてくる。

「あっ、うん……」
(『春樹を連れていってしまった』と言っていたけれど……)
一郎君に事態の説明をしようと思ったけれど、何もわからない以上、まだ言うべきではないと思いとどまる。

「お義母さんがね、少し取り乱していたの。心配だから急いで帰らなくちゃ」
一郎君には、お義母さんの様子だけ伝える。
「そうか」
「あと、ここからは一人で平気だから」
「わかった。気をつけて帰るといい」
早く家に帰りたい私を気遣うように、一郎君はベンチから立ち上がると私の鞄を差し出してくれた。
「それといい忘れてたんだけど、今日はいろいろあって機材の点検がまだなんだ。ごめん、今度するね」
「構わない。それより、早く帰って母親を落ち着かせてあげるべきだろう」
根掘り葉掘り訊かず、ただ見送ってくれる一郎君の察しのよさに感謝した。
「一郎君、送ってくれてありがとう。また、明日」

それだけ伝えると、私はきびすを返して公園を飛び出した。
体がまだ完全に良くなったわけではなかったけれど、走って家路を急いだ。

(あの子…チハル?)
「チハル!」
膝を抱き、玄関前に座り込むチハルに向かって叫んだ。

その声を耳にしたとたん、チハルは泣いている顔を更に崩しながら顔を上げる。
そして、突進するように私に駆け寄ると、腰に抱きつきながら顔を埋めてきた。

「春樹がぁ……いなぐ…なっちゃった……」
洟をすすり、目に涙を一杯溜めていている。

「おいおい、こんなところで喧嘩か? 近所迷惑だし、中でしろよ」
着替えの入ったスポーツバッグを抱え、隆がこちらに向かって歩いてきた。
この様子だと、まだ春樹が居なくなったことを知らないみたいだ。

どうしよう?

@隆にも一緒に家に入ってもらう
A状況を説明して帰ってもらう
Bチハルに話しかける

223 :561:2007/09/10(月) 13:37:35 ID:???
@隆にも一緒に家に入ってもらう

「いまお義母さんから電話が来て、春樹が連れて行かれたっていうから慌てて帰ってきたところなの」
「春樹が?」
「そしたらチハルは泣いてるし……とりあえずチハル、ぬいぐるみにもどってね」
「……うん」
いつものように軽い音を立てて、チハルはぬいぐるみに戻る。
チハルをいったん隆のスポーツバックに入れてもらって、玄関をあける。

「それでお義母さんすごく取り乱してるの……、とりあえず入っ……」
「愛ちゃん!春樹が!あの人に連れて行かれてっ」
玄関の扉を開けた途端、お義母さんがものすごい勢いで走ってきた。
サンダルも履かずに玄関から出てくる。
お義母さんはもう泣いては居なかったが、その目は真っ赤だ。

「お、お義母さん落ち着いて」
「おばさん、こんばんは」
「あ……、隆くん、こんばんは」
慌ててなだめる私の後から、隆がいつもどおりにあいさつしてくる。
それにお義母さんは我に帰ったらしく、少し笑って隆にあいさつした。
とりあえず他人の隆が居ることで、落ち着きを取り戻したらしい。
私はホッとして、感謝を込めて隆を見上げる。
隆はちょっと笑って頷いた。

「お義母さん、中入ろう?」
「うん、ごめんね愛ちゃん、隆君。そうよね少し落ち着かなくちゃ」
いいながら、お義母さんは靴下を脱ぎながら玄関を上がる。
そのまま3人でリビングまで行き、とりあえずソファに座る。

まず何から聞こうかな?
@いつ春樹が連れて行かれたのか?
A誰が連れて行ったのか?
B春樹は抵抗しなかったのか?

224 :562:2007/09/10(月) 22:55:24 ID:???
A誰が連れて行ったのか?

お義母さんは電話口で泣きながら、あの人と言っていた。
今、私が一番知りたいことは誰が春樹を連れて行ったかということだ。
嫌な胸騒ぎを感じながら、なるべくお義母さんを刺激しないように優しく問う。

「お義母さん。春樹を誰が連れて行ったのか教えて」

お義母さんはその時の状況を思い出したのか、また少し涙ぐんでしまった。
私はその様子を見守りながら、お義母さんが話し出すのを辛抱強く待つ。

「……いまさらあの人が…春樹を連れて行ってしまったのよ…」
お義母さんは涙声で答えた。
「あの人って誰かな? 」
お義母さんの背中を丁寧に擦りながら、ゆっくり尋ねる。

「……高村よ。高村が春樹を連れて行ってしまったの。春樹も…春樹も大丈夫だから心配しないでって……」
「それは、春樹の父親の?」
お義母さんは涙を拭きながらコクリと頷き、「愛ちゃん、知っていたのね」と呟いた。

高村。今朝、桐原さんが言っていた言葉を思い出す。
春樹の実の父親で、立派な学者で、たいへんな権力者。
お義母さんに暴力を振るっていた人で、春樹の最も憎んでいた人……。

私はその人の事を何も知らない。
きれぎれの情報のみで判断することはできないけれど、身勝手で独断的なのは想像がついた。

「おばさん。春樹は本当に心配しないでって言ってた?」
手を前で組みながら黙って座っていた隆が、納得いかないという顔を向ける。
「……ええ。俺が望んだことだから、心配しないでって……そう、はっきり言ったわ」

「あいつ、今朝まであんな男の息子じゃないって言ってたのにな」
歯に衣着せぬ、ありのままの言葉使って隆は言った。
その顔色から、隆も相当困惑しているのが見て取れる。

(春樹の意志で父親についていったということ?)

私自身、どうしていいのかわからないほど不安で、この事実を受け止めるのが怖かった。
今も手の震えが止まらないのがなによりの証拠だ。
だけど、私は困惑しつつも心のどこかで冷静に受け止めている。
それは予感めいたものがあったからだった。

その予感とは……

@夢を見る寸前に聞いた「…姉さんに、これ以上無理はさせない。……絶対だ」という言葉
A今朝聞いた「もう高村春樹だった頃のような子供じゃないんだからね」という言葉
Bチハルが「きもちいい」言っていた力の事

225 :562:2007/09/10(月) 23:03:40 ID:???
A誰が連れて行ったのか?

お義母さんが落ち着くまで、と思ったけれど。
(春樹……どうしちゃったの)
最近の私をとりまく状況からしても、どうしたって春樹の安否が気にかかる。
我慢できずに、何かに耐えるように目を閉じて額に手を当てたまま一向に話し出そうとしないお義母さんを促すように私はなるべく平静を装って切り出した。

「お義母さん、さっきはあの人って言ってたけど。誰が……春樹をつれていったの?」
私の問いかけに、お義母さんは怯えたように小さく肩を震わせた。それからゆっくりと顔を上げる。
「春樹を連れて行ったのは、あの人……別れた、私の前の夫」
「おばさんの……ってことは、春樹の血の繋がった実の父親が?」
それまで黙ってやりとりを見守っていた隆が心底驚いた様子で声をあげる。お義母さんは目を伏せたまま悲しげに首を振った。
「父親、きっと春樹は今迄そう思った事はないでしょうね。……あの人は、春樹に父親らしい事なんて何一つした事はなかったわ」
「そんな、そんな人がどうして今になって春樹を……?!」
春樹が昔から実の父親について固く口を閉ざして何も語ろうとしないことからも、今迄あえて聞いた事はなかったけれど。あまりの身勝手さに思わず声が大きくなった。
そんな私をなだめるように、隆が私の肩に手を置いた。
「愛菜、落ち着けって。……おばさん、春樹の父親っていうのはどこかの研究所に勤めていませんでしたか?」
「!……ええ、そうよ。隆くん、どうしてそれを?」
隆はお義母さんの質問には答えずに、黙って私を見た。
(もしかして……春樹のお父さんていうのは、主流派の……)
ふと思い浮かんだ答えに、体中の血の気が失せる気がした。心臓が私の意志とは関係なく、物凄い速さで鼓動を刻みだす。
「……お義母さん。春樹、春樹は何か言っていなかった?」
「いいえ、何も。チャイムが鳴って、私がキッチンにいたものだから春樹が玄関に出たの。凄い剣幕で怒鳴る春樹の声が聞こえて、慌てて玄関に出たのだけれど」
そこでお義母さんは一旦言葉を切って深呼吸をするように深く息を吸い込んだ。
「あの人は私には目もくれなかった。ただ、あの人が春樹に一言二言耳打ちをしたと思ったら春樹があの人について行くって言い出して……!どうして、どうして急にこんな事に……」
「おばさん、大丈夫です。春樹はきっと大丈夫ですから、泣かないで」
ついに泣き出してしまったお義母さんに立ち上がってあやすように声をかける隆をみつめながら、私はその場で呆然としていた。
(私の、私のせいで春樹が?……でも、ファントムには憑りつかれないはずだったのに……)

考えても考えても頭には同じような事ばかり浮かんでは消えていく私に、お義母さんの肩を抱いていた隆が静かに言った。
「愛菜もしっかりしろ。春樹が出て行ったのは自分の意思でだろう。あいつはお前にそんな顔をさせたくてそいつについてったんじゃ絶対に、ない」
隆の言葉にはっとなった。
(そうだ、落ち込んでる場合じゃない。私がしっかりしなきゃ)

どうしよう?
@お義母さんに春樹の父親について詳しく尋ねる
Aチハルに春樹がいなくなった当時の状況を尋ねる
B周防さん・美波さん・冬馬先輩に心当たりがないか尋ねる

226 :名無しって呼んでいいか?:2007/09/10(月) 23:05:31 ID:???
ヒー!見事にかぶったー!!!!
お先優先だよね、スマソ!!!!!

227 :563:2007/09/11(火) 13:21:36 ID:???
久々に被ったねw

@夢を見る寸前に聞いた「…姉さんに、これ以上無理はさせない。……絶対だ」という言葉

あの時の決意を秘めた呟き。
春樹はきっと何か考えがあって、父親についていったのだろう。
それは分かっている。
春樹はお義母さんも、私も裏切るようなことは絶対にしない。

(信じているけど……)
春樹の身が心配だ。
春樹は大丈夫だといって出て行ったというけれど、今日周防さんたちに組織のやり方を聞いてしまっている。
冬馬先輩も非人道的な行為をしていると言っていた。
春樹が洗脳されてしまう可能性だって捨てきれない。

「おばさん、おばさんは春樹の父親の研究所のある場所を知ってるんですか?」
唐突に隆がお義母さんに尋ねる。

「ごめんなさい……、分からないの」
お義母さんは、悲しそうに首を振った。
もし分かっていたらお義母さんは私に電話などせず、春樹を取り戻すために直接高村の研究所に乗り込んでいたかもしれない。

「そうか……こうなったら、水野にファントムをつけるか……」
小声で隆がブツブツと言っているのが聞こえる。

「隆、それじゃあ時間がかかりすぎるよ……」
私はお義母さんに聞こえないように、隆に言う。
ファントムをつけても1週間は水野先生を操ることは出来ない。

「そうか、そうだよな……」
隆はいらだたしげに頭をがしがしとかきむしる。

どうするのが一番いいだろう?
@周防か冬馬先輩に連絡を取る
A一郎くんと修二くんに連絡する
B春樹を信じて待つ

228 :564:2007/09/12(水) 01:24:36 ID:???
@周防か冬馬先輩に連絡を取る

このままじゃ、春樹が危ないかもしれない。
私はポケットから、周防さんの連絡先が書かれた紙切れを取り出した。

「どうしたんだ、愛菜?」
私の様子が気になったのか、隆が尋ねてきた。
その声にお義母さんも顔を上げ.る。

「今から、研究所に詳しい人に連絡してみる。高村周防さんって知り合いなんだけど、研究所の場所を教えてもらうね」
「高村周防? 愛菜、いつの間に組織の奴と知り合いになってんだよ」
高村と聞いた瞬間に隆は眉をひそめ、怪訝な顔を向けた。
武君の手紙で組織の存在を知った隆にとって、研究所の縁の者を信じることなんて出来ないのだろう。

「以前、私を助けてくれたの。とてもいい人だから、大丈夫」
隆にそう言うと、私は携帯を取り出して、番号を震える指で押していく。

「愛……ちゃん。今、周防さんって…。高村周防って言ったのよね」
赤い目をしたお義母さんが私に視線を向けた。
「うん。それがどうかしたの?」
私は手を止めて、お義母さんの視線を受け止める。

「春樹の従兄弟に周防という名前の子がいたわ。けれど…本当にその人は周防と名乗ったの?」
「うん。今日も会っていたよ」
どこか含みを持ったお義母さんの言い方に引っかかりを感じながも、私は頷いた。
お義母さんは目頭をハンカチで拭くと、心苦しそうに口を開いた。

「愛ちゃんを助けてくれた人に対して悪く言いたくないのだけれど、亡くなった人の名を騙るなんて悪戯にしては悪質だわ。電話をかけるのは止めて頂戴……」
「え?」
お義母さんが言った事が理解できず、呆然とするあまり携帯を落としてしまった。
「春樹より八歳年上の従兄弟に周防という子がいたの。けれど、16歳で亡くなっているのよ」

(亡くなった人?周防さんが?)

春樹は何も言わないで居なくなって……、周防さんが亡くなっていた人で……。
なぜ春樹は出て行ったの? 私が会っていた周防さんは誰?
もう、何がなんだか訳が分からない。

「次に……愛ちゃんまで居なくなってしまったら……。お願い、そんな人に電話しないで」
またお義母さんは泣き出してしまった。
「わかったよ。もう電話しないから、泣かないで、ね?」
肩を抱き、そっと手を握った。
心が折れそうになる。こんな時、春樹ならどうやってお義母さんを慰めるのだろうと思った。

私は
@周防さんについて考える
A春樹について考える
B飲み物を用意する

229 :565:2007/09/12(水) 11:54:37 ID:???
@周防さんについて考える

(周防さんが8年前16歳のときに亡くなってる?)
私が会った周防さんは、同姓同名の別人なのだろうか?
けれど、周防さんは24歳だといっていた。
お義母さんが言った周防さんと、私が会った周防さん。8年前はどちらも16歳だ。
そしてやはりどちらも高村研究所に深く関わる人物。
そんな人物が二人、同じ名前で存在するだろうか?

(亡くなって……?)
ふと、夢のことを思い出す。
綾さんの腕の中で傷だらけになっていた周防さん。
力なく落ちた手。

(あの、時……?)
あのときに、亡くなったというのだろうか?
けれどあの少年の顔は確かに周防さんの顔だった。
年齢による差異は多少あるにしろ、どう考えても同一人物。

『周防、とは……彼が16の時に知り合いました』

ふと、冬馬先輩の言葉が脳裏によみがえる。
周防さんが亡くなったという8年前に知り合ったという冬馬先輩。

(そういえば、あの時冬馬先輩の言葉に引っかかりを覚えたんだ)

『ただ、僕に出会った頃の周防はあなたの知る周防とほぼ変わりありません』

何に引っかかりを覚えたんだっけ?
@話の内容
A冬馬先輩の歯切れの悪い話し方
B考えても仕方ない冬馬先輩に直接聞く

230 :566:2007/09/12(水) 20:32:15 ID:???
@話の内容

(ほぼ、変わりないって…)

あの時は、何か含みのある言い方だとくらいしか思わなかった。
バラバラだったパズルのピースが繋がる。

(八年前の周防さんと今の周防さんは、ほぼ一緒の別人だったという事?)

昨日、一郎君が『あれが、高村周防……?……だが、彼は確か……』と呟いた言葉。
信じられないという態度をとても不思議に感じていた。
周防さんが亡くなっている事を知っていたとすれば、あの時の一郎君の態度に説明がつく。

研究所とは、集めた能力者やそのクローンを、洗脳し、自在に操る場所だと聞く。
冬馬先輩や美波さんも言っていたし、武君の手紙にも書いてあった。

という事は、隆と武君のように、一人の人物を二人にしてしまうことだって出来るということだ。

(……今の周防さんはクローンなのかな…)
想像したくない考えが頭をよぎる。

(だから冬馬先輩は……ほぼという言い方をしたの?)

でも…。
仮に今の周防さんがクローンだとしても、八年前、更にそれ以前の記憶を持っているのは間違いない。
研究所にどれくらいの技術力があるのか知らないし、専門的な知識は皆無だから大きな事は言えないけれど、
亡くなった周防さんの記憶までも移植したり再現したり出来るものなのだろうか。

やっぱり、分からない。
クローンは一つの可能性に過ぎないし、なにより私の考えすぎかもしれない。

@冬馬先輩に直接聞く
A思ったことを隆に話す
Bお義母さんに休むように言う

231 :567:2007/09/13(木) 16:17:02 ID:???
A思ったことを隆に話す

隆は武くんのこともあるし、もしかしたら何かわかるかもしれない。これは私の考えすぎかもしれないけれど、こうして悩んでいても事態は何も変わらないのだから。
「ねえ、隆……」
「おばさん、今日はもう休んだほうがいいでしょう」
声をかけた私を制するように、隆はこちらに視線を投げてよこした。確かに私が肩を抱く今のお義母さんは、青白い顔でこうして支えていなければ今にも倒れてしまいそうだ。
(そうか、どっちにしたってお義母さんの前でこんな話はできないよね……)

「ありがとう、隆くん。でも私は大丈夫よ」
「大丈夫って顔してないよ、お義母さん。春樹が心配なのはわかるけど、お義母さんまで倒れちゃったら私お父さんに何て言ったらいいか」
「そうですよ。今のおばさんを見れば、きっと愛菜じゃなくても休めって言います」
「でも、とても今は休めるような気分じゃ……」
辺りの重い空気を振り払うように首を振って、なおも言い募るお義母さんに隆は静かに、でも力強くこう言った。
「春樹なら大丈夫です。『大丈夫』って、春樹がそう言ったんでしょう?あいつはおばさんや愛菜に心配かけるような真似は絶対にしませんよ。出て行ったってまたすぐに帰ってくるかもしれない」
「隆の言う通りだよ。もしかしたらこの後春樹から連絡があるかもしれないし、お義母さんは上で少し休んでて。何か連絡あったらちゃんと起こすから、ね?」
「二人共……」

そうしてしばらく押し問答が続いていたが、最終的に12時までこのまま連絡を待って、もし何も連絡がなければ警察に相談するという事で話はついた。
私たちが押し切る形にはなったが、お義母さんはそれまで自分の部屋で横になっていると約束してくれた。
一人で大丈夫とよろめくようにリビングを出たお義母さんの背中を見送って、振り返りながら隆が言う。
「で?愛菜、さっきは何を言おうとしたんだ?」
「ああ、えーと……ね」
「うん」
「さっきの周防さんて人のことなんだけど」
「死んだはずの、って話か?」
問いかけには頷きつつも、隆の「死んだはず」という言葉に嫌な気持ちが胸に広がる。
(隆は周防さんに会った事がないから仕方ないんだろうけど……)
「私が会ったのが、その周防さんのクローンって事はあるのかな」
隆はうーんと唸って腕を組んだ。
「どうかな、無いとは言い切れないと思うが……ただ」
「ただ、何?」
「おばさんの話は確かなのか?なんたってあのインチキくさい研究所のお偉いに連なる人間だろ?都合が悪けりゃ死んだ事にして外部の目を欺くような事もあり得るんじゃねえの?」
(そうか、もしかしたら重傷を負った周防さんを死んだ事にして……?)
そういえば、美波さんも周防さんに『瀕死の重傷を負わせた』と言っていた。
「……愛菜?」
黙り込んでしまった私に、隆が声をかける。

どうしよう?
@お義母さんは上で休んでいるので周防さんに直接尋ねる
A冬馬先輩に心当たりがないか尋ねる
Bひとまずチハルに春樹が出て行った時の状況を聞く

232 :568:2007/09/14(金) 01:41:45 ID:???
@お義母さんは上で休んでいるので周防さんに直接尋ねる

(ゴメン。お義母さん)

私は再び、周防さんの携帯番号が書かれた紙切れを手に取る。
「愛菜。やっぱり周防ってヤツに連絡をとるのか?」
「うん。周防さんのことだし、本人に聞くのが一番いいと思うから」
そう言いながら、私は書かれた番号を押していく。
隆は複雑な表情をしていたけれど、黙って私の様子を見守っていた。

プルルル、プルルル…

無機質なコール音が今はやけに長く感じられた。
そして、何コール目かでようやく「もしもし、愛菜ちゃん?」と、周防さんの声。

「はい、愛菜です。夜遅くにすみません。今、大丈夫ですか?」
「ああ、構わないよ」
「実は、周防さんの過去についてお聞きしたい事があるんです」
「ん?」
「八年前の事についてなんですが…。あの時、一体何があったんですか?」
「そうか。八年前の事で電話があるんじゃないかなーとは思っていたんだ」
取り立てて驚く様子もなく、周防さんはいつも通り明るい声のままだった。

「愛菜。そんなまどろっこしい聞き方じゃ、いつまで経っても本題に入れないだろ」
私の聞き方が気に入らないのか、隆が横槍を入れてくる。
「隆は少し黙ってて」
「どうした?お前さん以外に誰か居るのか?」
受話器の口を手で押さえたつもりだったけれど、周防さんに私たちの会話が漏れてしまったようだ。

「あのーごめんなさい。私の幼馴染の隆って男の子も一緒なんです。隆も能力者で……」
私が隆を紹介しかけたところで、周防さんの声が被さるように聞こえてきた。
「武のオリジナルだな。よく知ってるから説明は要らないさ」
「え? 武君を知っているんですか?」
周防さんの口から武君の名が飛び出したのが意外で、思わず声がひっくり返ってしまった。
「おいおい、愛菜ちゃん…まさか武の事まで知ってるんじゃないだろうな」
「はい。話したこともあります…」

「おい、愛菜。何を話してるんだ?」
隆は私達の会話が気になるのか、話に割り込もうとしてくる。

「そうだな……。自分語りもむず痒いし、ここは美波に任せるかな。
隆君にも聞いてもらわなきゃならないし、尋ねたいこともある。美波を愛菜ちゃんの所に向わせよう。いいよな、美波?」
周防さんの声が遠くなる。どうやら、一緒に居る美波さんに確認を取っているようだ。
「いいってさ。愛菜ちゃんは今どこ?」
「自宅です。でも周防さん、私の家を知りませんよね」
「家くらい知ってるよ。ここからだと……20分ってところかな。だけど、もう夜か。愛菜ちゃんがよければ今から向わせるけど、どうする?」

@すぐに美波さんに来てもらう
A今度にしてもらう
Bやっぱりやめる

233 :569:2007/09/14(金) 13:10:04 ID:???
@すぐに美波さんに来てもらう

「急ですみませんが、お願いします」
「オッケーわかったすぐに美波を向かわせるよ、ってことだ」
最後の言葉は美波さんに言ったらしい。

「ありがとうございます」
「いやいや、愛菜ちゃんのお願いなら、出来る限りのことはするよ。命の恩人だしね。で、聞きたいのはそれだけ?」
「あ……あの、組織の場所を聞いても大丈夫ですか?」
「組織の?聞いてどうするの?」
「それが……、春樹が、私の弟が連れて行かれちゃったんです」
「愛菜ちゃんの弟……って確か……」
周防さんは考え込むように、電話の向こうで沈黙した。

「そっちは俺が調べるよ。愛菜ちゃんは危険だから組織には近づかないほうがいい。だから、俺が連絡するまで無茶なことはしちゃだめだよ」
「はい……お願いします」
「よし、それじゃ早速調べに行ってくるかな。俺のことは美波に遠慮なく聞いてくれていいから」
「ありがとうございます。あの、春樹のことお願いします」
「任せといて。じゃ、何か分かったら連絡するよ」
周防さんはそう言って電話を切った。

「どうなったんだ?」
「周防さんのことは、周防さんのお友達の美波さんって人が教えてくれるって。今、家に来てくれるの。20分くらいって言ってたかな。
 春樹のことは、周防さんが調べてくれるよ。……私が組織に近づくのは危険だからって」
私の横で、電話が終わるのを待っていた隆に私は答える。

「そうか、なんにしろ少し時間があるんだな」
隆が時計を見上げる。つられて私も時計を見上げる。
美波さんがくるまであと15分くらいだ。

どうしよう?
@とりあえずご飯
Aチハルにも話を聞く
B春樹の携帯に電話してみる

234 :570:2007/09/15(土) 00:24:00 ID:???
B春樹の携帯に電話してみる

「やっぱり私、春樹の携帯に電話してみるよ」
私は持ったままの携帯を、ギュッと強く握りなおす。
「でも、もうおばさんが電話してると思うけどな」
「多分、ね。……だけど、もしかしたら今度は出てくれるかもしれないから」
「まあな」
周防さんのことを信じていない訳ではないけれど、春樹の無事をどうしても知りたい。
私は携帯を開くと、春樹に電話をかけた。

「もしもし!春樹」
「……お留守番サービスに接続します。合図の音が鳴りましたら……」
無機質なアナウンスが耳元で流れる。
(春樹、電源切ってるのかな)

私は、「心配しているからすぐに連絡して欲しい」という内容のメッセージを入れて、溜息と共に電話を切った。

「……だめだったのか?」
「うん。電源を切ってると思う」
「そうか」
「春樹、大丈夫かな…」
「12時まで連絡がなったら警察に届けることも言ったんだし、心配していることも伝えたんだ。
愛菜やおばさんのメッセージを聞けば、俺の知っている春樹なら絶対に連絡を寄越すはず。そうだろ?」
「うん、そうだね。……そうだよね」
隆の言葉に少し元気づけられる。
(隆がいてくれてよかったよ)

そう思いながら隆を見ると、側に置いてあったスポーツバッグのジッパーが開いているのに気付いた。
ぬいぐるみのチハルがもぞもぞと顔を出し、バッグから自力で抜け出した。
テーブルにコロンと転げ落ちたところで、私は声をかける。

「もう人間になっても大丈夫だよ」
私の声を聞くと、ポンと軽い音を立てて泣きべそをかいた子供のチハルが現れた。
「うわぁ。な、なんだよ!急に変身するなっての!」
急に現れたチハルに驚き、隆はソファからずり落ちてしまった。

「愛菜……ぢゃ…ぁぁん……」
すがりつくチハルを抱きしめ、そっと頭を撫でた。
「チハル。もう大丈夫だよ」
「怖…かった…よぉ…。すごく怖いひとが……春樹を……春樹を…」
「ごめんね、傍にいてあげられなくて」

春樹が出て行く時に何が起きたのか分からないけれど、この怯え方は普通じゃない。
しゃくりをあげ泣きじゃくっている。
今朝の桐原さんの時みたいに、人の感情を敏感に感じ取ったのだろうか。

どうしよう?
@チハルが泣き止むまで待つ
Aすぐにチハルから話を聞く
B美波さんが来るので、またぬいぐるみに戻ってもらう

235 :571:2007/09/18(火) 11:40:06 ID:???
@チハルが泣き止むまで待つ

今の状態ではチハルから話を聞くことは難しい。
私はチハルを落ち着かせるために、背中を撫でる。

「そんなにこいつが怯えるって普通じゃないよな」
泣きじゃくるチハルの頭を優しく撫でながら隆が顔をしかめる。

「そうよね。そんなに怖い人なのかな……」
そんな人についていった春樹がますます心配になる。

「ほら、チハルもう怖い人は居ないんだからそんなに泣くな。男だろ?……男だよな?最初はその姿だったし」
ぽんぽんとチハルの頭をあやすように叩きながら言った隆は、自分の言葉に疑問を覚えたのか最後のほうは小さくぶつぶつと呟いている。

「……ぐすっ、うん」
最後のほうは聞こえなかったのか、隆の言葉にチハルは小さく頷くと何とか涙を止めようとごしごしと目をこする。

「あんまりこすると赤くなっちゃうよ」
私はあわてて鞄からハンカチを取り出すとこすらないようにチハルの顔をぬぐってあげる。

「大丈夫チハル?」
「うん」
まだ時々しゃくりあげるけれど、だいぶ落ち着いたらしい。
チハルはこくんと頷いて、まだ赤いままの目で少しだけ笑う。
とりあえず、チハルが落ち着いてくれたことにホッとする。

「春樹の父親ってのは、そんなに怖いやつだったのか?」
落ち着いたチハルに、隆は首を傾げながら聞く。
チハルはそのときを思い出したのか、また怯えた顔になったけれど今度は泣き出さず頷いた。

「すごい、真っ黒でどろどろしてるの。他の人のヒメイとかうウラミとかいっぱいついてた。僕たち精霊とははんたいのチカラ。つよいチカラ」
言いながら、チハルが震える。

「悲鳴?恨み?」
「精霊とは反対の力?」
私と隆は顔を見合わせる。
真っ黒でどろどろと言うのは感情のことだと予想はつく。
けれどその他の言葉は良く分からない。

ピンポーン

チハルに詳しく聞こうと口を開きかけた所に、チャイムが鳴る。
時計を見ると美波さんが到着する時間になっていた。
私は玄関まで行き、外に居るのが美波さんだと確認してから扉を開ける。

「こんばんは、愛菜さん」
「こんばんは美波さん。急にすみません」
「愛ちゃん?お客さん?」
「あ、お義母さん……」
チャイムの音にお義母さんが階段を降りてくる。
美波さんは、お義母さんをみて微笑んだまま会釈をしている。

どうしよう……
@病院の先生だという
A周防さんの友達だという
B自分の友達だと言う

236 :572:2007/09/18(火) 14:36:34 ID:???
@病院の先生だという

「えっと、こちら大宮美波先生。この前私も春樹も続けて病院に行ったでしょ?苗字が同じだったから覚えててくれたらしくて」
「そうなの。こんばんは、先生。家の子達がお世話になりまして。……それで、こんな時間にどうかなさったんですか?」
とっさに口をついて出たのは我ながら情けなくなるような怪しげな説明だった。言いながら自分でそう思ったくらいだ、お義母さんが納得できる筈が無い。
お義母さんの表情は美波さんが医者と聞いて多少は和らいだものの、やはりいつもよりは幾分険しい。

ない知恵をしぼってどうにかこの場を乗り切ろうと頭をフル回転させていた私の前で、美波さんは小さく苦笑してお義母さんに告げた。
「夜分に失礼かとも思ったのですが。春樹さんがこの前病院にいらした時に念のため精密検査を
受けて頂いたのはお母様もご存知かと思います。その時は特に異常は見られないようでしたがぶつけた場所が場所でしたので、経過を見るためにもう一度いらしてくださいとお話したのですけれど」
美波さんがそこで言葉を切ると、お義母さんは春樹がその後病院に行っている様子が無いのに思い当たったらしい。
「まあ、そのためにわざわざ?お忙しいところこんな所までご足労頂いて……」
頭を下げるお義母さんに美波さんはとんでもないというように首を振った。
「どうかお気になさらず。私も帰宅の途中ですし、春樹さんの担任……近藤先生ですか、彼からもよろしく頼むと言われていましたので」

(……近藤先生ってあの、近藤先生?美波さん、近藤先生と知り合いなの?)
何でもないように美波さんが口にした言葉に、私の頭の中にふと疑問が浮かぶ。
そう思ってみれば確かに近藤先生と美波さんの年齢は同じくらいだし、真面目そうな雰囲気や生徒・患者思いなかんじは似ているような気がしないでもない。
思わず凝視していた私の視線に気がついたのか、美波さんは内緒話をする子供みたいにいたずらっぽく笑った。
「彼とは大学の同級生なんです。私はてっきり彼も医者になるものと思っていたのですが、彼が教師とは生徒さん達もなかなか大変でしょうね。……ところで、春樹さんは?もうお休みですか?」
「え…ええ、今日はなんだか文化祭の準備で疲れたらしくて。せっかくお越し頂いたのに」
まるで事情を知らない素振りで問う美波さんに、お義母さんは申し訳なさそうに頭を下げた。
外の人間に春樹がいなくなったとは言う気にならないのだろう。美波さんはそうですか、と答えてお義母さんの顔に目を止めた。
「……おや。お母様、お顔の色が優れませんね」
「そうですか?嫌だわ、少し疲れているのかしら」
誤魔化すように無理矢理笑顔を浮かべて元気な振りをするお義母さんの様子に、胸が痛くなった。春樹のことが心配でたまらないはずなのに。

「お薬はお出しできませんが、お手をよろしいですか?」
不意にそう言って美波さんがお義母さんの手をとった。透き通るように白い両手でお義母さんの手を包むと、目を閉じて額にあてる。その姿はまるで祈りを捧げているかのようだった。
「あれ?お義母さん?」
美波さんが手を離すと、お義母さんはこちらに目もくれずにふらふらと階段を登っていった。表情はぼんやりとしてまるで眠っているかのようだ。
振り返って美波さんを見ると「これで明日の朝までぐっすりお休みになれますよ」と笑った。

美波さんに……
@お義母さんに何をしたのか聞く
A近藤先生について尋ねる
B時間が惜しい、周防さんのことを話してもらう

237 :573:2007/09/19(水) 02:21:44 ID:???
@お義母さんに何をしたのか聞く

「美波さん。お義母さんに何をしたんですか?」
お義母さんの空ろな瞳に不安を感じて、私は尋ねた。
「お疲れのようでしたので、まじないを施しておきました。今、お母様に必要なのは、あなたの支えと睡眠ですからね」

(そうだ。私がいつまでも悩んでいたら、お義母さんを支えてあげられないもんね)

「ところで……、そろそろお話させて頂きたいのですが、上がってもよろしいですか?」
玄関に立ったままの美波さんが困ったように笑いかけてきた。
「き、気がつかなくてすみません。どうぞ」

美波さんを居間に通し、私たちは簡単な挨拶をすませた。
紅茶を持って居間に戻ると、隆と美波さんは春樹のことについて話し合っていた。

「春樹はやっぱりあのインチキくさい連中の所に居るのか……」
「今は周防が調べています。その報告があるまでは動かない方が賢明でしょう」
「くそっ。わかってるのに助けにいけないのかよ」
「今は堪えてください。私たちも出来る限りのことをさせてもらいます」
「春樹のやつ……戻ってきたら一発殴ってやらなくちゃな」

隆と美波さんのやりとりを聞きながら、私は人数分の紅茶をテーブルに置いていく。
すべての紅茶を置き終わり、ようやくソファーに腰を下ろした。

「ねえ、隆。春樹が戻ってきたら、私も殴るのに参加していい?」
「お、おい?……愛菜?」
突然の私の発言に、隆は目を丸くしている。
「ボクもナグっていい?」
チハルは意味が分かっているのかいないのか、参加を申し出る。
「じゃあ。チハルも含めてみんなで殴ろっか」
「うん。春樹ナグル」
少し元気が出てきたのか、チハルはようやく笑顔を見せた。
驚いていた隆も笑いながら、「おう、でかくなって殴ってやれ」と言ってチハルに右ストレートを見せている。

「春樹さんは戻ってきたら袋叩きですか。それはある意味主流派より恐ろしいですね」
美波さんは穏やかな笑みを浮べたまま、私に向って話しかけてきた。
「美波さんも参加されますか?」
私は冗談で美波さんに尋ねる。
「そうですねぇ。私は一応医者ですし……殴られた春樹さんの傷口に塩でも塗っておきますよ」

(……それが一番怖いかも)

何から聞こうかな?

@周防さんの過去
A近藤先生とのこと
Bチハルが言っていた反対の力の心当たり

238 :574:2007/09/19(水) 11:02:45 ID:???
@周防さんの過去

「あの、早速なんですけれど、周防さんの過去について聞いてもいいですか?」
「ええ、そのために来たのですからね」
とりあえず会話が一区切り付いた所で、私は本題を切り出す。

「どこから話しましょうか……とりあえず、私が周防を知ったのは彼が7歳、私が10歳のときです」
美波さんはそう言って過去を思い出すように頬に手を当てる。

(美波さんて周防さんより3歳年上なんだ……あ、近藤先生と同級生ならそのくらいで当然だよね)
「といっても、私が周防を知ったというだけで周防が私のことを私として認識していたかはわかりません。
 私も周防に実際に会ったわけではありませんでしたから」
「要するに、周防って子供が居るって話を誰かに聞いたんだな?」
「少し違いますが、そう思っていただいて差し支えはありません」
隆がの言葉に、美波さんは微笑んで頷いた。

(あ、美波さんだって能力者だもんね、どんな力か分からないけど力を使って周防さんのことを知ったのかも……)
「実際に彼に会ったのは私が16歳、彼が13歳のときです」
13歳という年齢に、ふと以前見た夢の光景が思い浮かぶ。
病院の中庭のような場所に座っている周防さん。美波さんが会ったのはあのくらいの年齢の周防さんなのだろう。
そう言って美波さんは懐かしむように微笑んだ。

「彼は昔から組織のあり方について疑問を抱いていました。
 けれど当時はおおっぴらにそれを公言することはなく、表向きはそれなりに従順でした」
何かを思い出したのか、美波さんがくすっと笑う。

「彼は高村の直系ではありませんが、その能力は高いものだったので親元をはなれ、直系の能力者と共に生活をしていたそうです」
私はその言葉に周防さんに聞いた言葉を思い出す。

『うん、知ってるよ。というか、組織を作ったヤツを知ってる』

夢の中で周防さんがそう言っていた。
と言うことは、組織自体はそんなに古いものではないのだろうか?

「とりあえずここまで、よろしいですか?」

えっと……
@「大丈夫です」
A「組織っていつからあるんですか?」
B「隆は何か聞きたいことある?」

239 :575:2007/09/20(木) 03:04:46 ID:???
A「組織っていつからあるんですか?」

私はふと疑問に思ったことを口に出した。

「今の組織は、周防の祖父にあたる方が創設者なのですが、旧組織の歴史はもっと古いと聞いています。第一次世界大戦から生物兵器の研究していたようです」
「……そうですか」
ずいぶん歴史のある組織なのはわかったけれど、いまいちピンとこない。
そんな怪しい研究所が現代にあることすら、未だに納得できないところがある。

「ていうか、どうしてそんなアブナイ研究している所を放っておくんだ? どう考えても犯罪だろ」
隆は美波さんに向って、身を乗り出すようにして訴えた。
「ええ、その通りです。しかし、表向きは極めて合法的かつ良心的な研究所ということになっています。研究所の裏の姿は一部の人間しか知りません」
「じゃあ、俺達が裏の研究について警察に言えばいいんじゃないのか?」
「だけど……証拠がないよ」
私も以前、その事を考えたことがあった。
だけど、そんな突拍子もない話を信じてくれるとも思えない。

「残念ながら、警察に届けても、マスコミに公表しても、潰されてしまうでしょうね」
美波さんは苦笑を隠すように、紅茶に口をつけてながら言った。
「どういうことだよ?」
「元々高村というのは、明治時代に財閥の一つとしてあげられる企業家だったようです。爵位を獲て華族として政界にも参加していきました。ですから現代になっても、政界、財界、マスメディアに大きな影響力を持っているのです」
「なんだよ……それ」
にわかには信じられないという様子で、隆は美波さんを見ている。

『優秀な能力者であり、研究者であり、権力者でもある……それが高村の名を持つ者なのです』

冬馬先輩の言葉を思い出す。
そして、桐原さんが言っていた『たいへんな権力者』という言葉も。

「でも、そんなの昔の話だろ。財閥や華族なんて現代では関係ないじゃないか!」
権力を振りかざす大人を最も嫌う隆には、この話は許せないのだろう。
けれど、美波さんは首を振って否定する。

「隆さん。名だたる企業の多くは旧財閥ですし、世襲政治家ばかりが総理大臣になっている。それでも関係ないと言えますか?」

美波さんの問いに、隆は何も言えなくなってしまった。
私や隆が思っている以上に、世の中には見えない権力が渦巻いているのかもしれない。

「現在の高村は、製薬会社、病院、医療機器メーカーなど、医療を牛耳る存在となっています。……話が少し逸れてしまいました。周防の話に戻りますね」
そう言って美波さんは、紅茶のカップをソーサーにゆっくりと置いた。

次は何を聞こうかな

@13歳の周防さんの様子を聞く
A16歳の周防さんに何が起きたのか聞く
B綾さんと周防さんの関係について聞く

240 :576:2007/09/20(木) 12:08:27 ID:???
@13歳の周防さんの様子を聞く

「13歳の頃の周防さんはどんな感じだったんですか?」
「……そのあたりのことは実は私は良く分かりません」
「え?」
「彼が13の頃に始めて会ったといいましたが、本当に会っただけなのですよ。
 会話もなく、視線すら合わすことはありませんでした」
「すれ違った、とかそういうことか?」
「そうですね……同じ空間に居た、と言うのが正しいでしょう」
美波さんは笑うと言葉を続けた。

「私がその頃の周防を知らない理由は、私が施設を離れたからです」
「施設を離れた?」
「ええ。私は従順な研究対象でしたので、外部の高校へ編入する事になったのです」
そういえば、美波さんは小学校に上がる前に施設へ入ったと言っていた。
その間はずっと施設に居て外に出ることはなかったということなのだろう。

「それから二年あまり、私は外の世界を体験し高校を卒業と共に施設へ戻りました。
 もちろん、高校へ通っている間も定期的に施設へ通い報告もしておりましたが、周防に会うことはありませんでした」
だからその頃の周防さんのことは分からないのかと、私は納得する。

「ですが、妹が送ってくれる言葉に、時々周防の名が出てきました」
「綾さんの?」
「ええ。物心付く前に私と共に施設に入った綾は、能力が高くなかったため、主に薬による実験を受けておりました」
「……」
「私と綾は血のつながりがあったためか、どれほど遠くに居ても言葉を交わすことが出来ました。
 といっても、綾は薬によってほぼ自我はありませんでしたので、時々薬が切れたときのみの会話でしたが」
美波さんは寂しそうに笑う。

「そして高校を卒業し大学に入学した私は、大学へ行く以外は組織で被験者たちの管理をするようになりました。
 それと同時に私と周防の付き合いが始まります。私が18、周防が15ですね」
今日地下で聞いたかれこれ9年の付き合い、というのはこの時からということなのだろう。

「13の頃の周防のことはあまり話せず申し訳ありません。
 ここまでで何か質問はありますか?答えられるかは分かりませんが」

@特にない、話を続けてもらう
A綾さんは周防さんをどう言っていたのか?
Bこれからの話が美波さんにとってつらい話ではないのか聞く

241 :577:2007/09/21(金) 13:13:47 ID:???
A綾さんは周防さんをどう言っていたのか?

「綾さんは周防さんの事をどう言っていましたか?」

私が夢でみた綾さんは自我を失っていたのか、気持ちまで分からなかった。
亡くなった綾さんの心を覗くみたいで気が引けるけれど、知らなければならない事のような気がする。

「最初の頃は怖い人だと言っていました。綾にとってはじめての友達でしたし、接し方がわからなかったのでしょう。
綾は精神的に少し幼い子でした。薬のせいで、なかなか心が成長できなかったのです」

美波さんは下を向き、自分の手を見つめながら話していた。
その綺麗な手も綾さんと似ていたのか訊こうと思ったけれど、美波さんの気持ちを考えると何も言えなくなってしまった。

「その内、綾に変化が現れてきました。周防と会えるのが嬉しいと言いだしたのです。
兄としては焦りましたが、綾本人の心境としては、ようやく周防を友達として認めることができただけのようでした」

夢に出てきた少年の周防さんは、すでに綾さんのことを好きだったように見えた。
けれど、綾さんの心はそれを受け入れるほど成長していなかったのかもしれない。

「二年あまりが経ち、私が研究所に戻った時、綾はすでに特別棟に入れられていて会う事はできませんでした。
投与される薬もより強いものになってしまい、思念の伝達もままならない状態だったのです」

「綾さんの事が心配だったでしょうね……」

「はい。心配でしたね。ちょうどその頃、すでに研究員として綾の担当をしていた周防と知り合ったのです。
綾の様子を伝え聞くようになり、私たちは親しくなっていきました。もちろん、その時に周防の気持ちを知ることになります。
そして……綾を一途に想う周防の気持ちを、知れば知るほど…私は恐ろしくなっていったのです」

「恐ろしいだって?なんで怖がる必要があるんだよ」
腑に落ちないのか、隆が美波さんに問いかける。

「周防は高村の血筋の者ですから、実験体の綾に乱暴しようと、処分しようと咎めることは出来ません。
綾がもし周防を拒むことがあれば、どうなるか……周防が一途ゆえに余計恐ろしかったのです」

「で、でも……周防さんはそんな事をする人じゃ……」

「愛菜さんが言いたいことはわかります。ですが皮肉なことに、当時の私の精神もまた、洗脳によって侵されていたのです。
研究員達の代わりに何の疑問も持たず、組織に都合の良い人間を次から次へと養成していたような人間でしたからね。
本来ならば組織のあり方に疑問を抱くはずなのですが、正常な判断に欠いていた私は、周防を憎み、なんとかして綾を助け出したいと考えるようになっていきました。
そんなある日、綾から久しぶりに思念による連絡が入ってきました。それが逃亡計画だったのです」

「あの…美波さんは、洗脳されて組織に従順だったんですよね。なのに組織にいる周防さんに従おうとはしなかったんですか?」
私は疑問に感じて、周防さんの話に割り込んだ。

「洗脳といっても万能ではありません。特定の研究員達には従順でしたが、周防に従うようには洗脳を受けていませんでした。
さらに組織のあり方に疑問を抱く周防を、私は異分子としても敵視しはじめていたのです」

(組織全員に従うという訳ではなかったのね)

美波さんは一旦、話を区切って紅茶を飲んだ。

「……どうしましょうか。その頃の周防の話をしましょうか? それとも、続きを聞きますか?」

@話を続けてもらう
A15〜16歳の周防さんの様子を詳しく話してもらう
B隆に理解できているか尋ねてみる

242 :578:2007/09/25(火) 13:24:01 ID:???
B隆に理解できているか尋ねてみる

「隆、話についてきてる?」
よく考えれば、隆は私のように夢を見ているわけではないし、地下で周防さんや美波さんに会っているわけではない。
今の話で理解できているかどうかふと気になって尋ねてみる。

「なんとかな。
 要するに、この人は周防ってやつの好きだった女の兄貴で、元組織の被害者で今は組織に対立してるんだろ?」
「ま、まあそうかな……」
あまりにも大雑把に要約されて私は苦笑する。
けれど間違っているわけでもない。完全に真ん中をすっ飛ばしている気はするけれど……。
とりあえず一応隆にも理解できているようなので、美波さんに向き直る。
美波さんも、隆の言葉に苦笑めいた微笑を浮かべていた。

「長々と話していましたが要約するとそうなりますね。では、続けましょうか」
「お願いします」
「ここから愛菜さんが聞きたいといった16年前の話になります」
美波さんの言葉に、私は無意識に背筋を正す。

「私は綾から逃亡計画を聞きました。綾の思念は一週間後に計画が実行されると伝えてきました。
 私はその時、自我とマインドコントロールによって洗脳された意識の間で葛藤が起きたのです。
 今組織にこのことを伝えれば、高村である周防は軽い処分で済むだろう。
 けれど綾は本当の意味で処分されてしまう可能性が高い。
 しかしこの事を組織に伝えないわけにはいかない。けれど伝えたら綾が……、といったふうにグルグルと思考がループしていました」
当時のことを思い出したのか、美波さんはかすかに眉根をよせる。
マインドコントロールされていても、家族が大事だと言う意識は消えなかったんだろう。
ましてやずっと同じ境遇、いや綾さんのほうが過酷な環境で過ごしていたのだから当然かもしれない。

「こうして私は表向きは普通に今までの生活を続けながら、内心ではずっとこの葛藤を続けていました。
 そして、結局組織に何も言えないまま当日がやってきました」
そう言って美波さんは押し黙る。

私は…
@美波さんが話しだすのを待つ
A美波さんを促す
B無理して話さなくていいと言う

243 :579:2007/09/25(火) 22:52:33 ID:???
@美波さんが話しだすのを待つ

(美波さんにとって辛い過去のはずだよね。だけど……)

そんな私の様子を見て、美波さんは「大丈夫」と声を出さずに頷いてくれた。
そして、ソファーに深く座りなおすと、また口を開いた。

「当日を迎え、私は葛藤しつつも組織に逃亡計画を伝えました。
その時、この情報を提供する代わりに、妹を見逃してくれるように懇願しました。
組織の幹部達は、綾の自由を約束してくれました」

「けど、その約束は守られなかった…そうなんだろ?」
顛末のみえた物語のように、隆は淡々と言った。

「ええ。隆さんの仰る通り、約束が守られることはありませんでした。
何も知らない周防は綾を連れ、通路を出たところで組織に捕まりました。そして、殺されそうになる綾を庇って、周防が…」

そこで、美波さんは話すのをやめてしまった。

(やっぱり、話したくないよね)
私がもういいですと言いかけたところで、美波さんが私の名前を呼んだ気がした。

「今、私を呼びましたか?」
「はい。愛菜さん、すみませんが……ナイフなどの刃物と消毒液を頂きたいのです」
「??」
「出来れば、血で汚れてもよさそうな物をお願いします」
「……わ、わかりました」

私は意味も分からないまま、言われた通りにカッターナイフと消毒液を用意し、美波さんに渡した。
美波さんはカッターの刃を出し、刃に消毒液を垂らした。

「実際に見ていただくのが一番早いと思います。少しグロテスクなので、愛菜さんは見ない方がいいでしょう」
自分の腕を捲くりながら、美波さんは言った。
「何をするんですか?」
「すぐに終わります」
美波さんはそう言うと突然、私の手を握った――


「――さん、愛菜さん」
「え?」
私はぼんやりしていたのか、美波さんの声で我に返った。
「終わりましたよ」
何が終わったのか分からないまま、頭を振って二人を見た。
「隆さん、綾も私と同じ特殊能力を持っていました。わざと力を暴走させ、生命力のすべてを周防のために使ったのです」

美波さんはさっきと全く同じ様子だったけれど、隆は黙り込んでいた。
(何? 隆、顔色が悪いみたいだけど……)

私は……
@隆に何があったのか尋ねる
A美波さんに何があったのか尋ねる
B黙って二人の様子を見る

244 :580:2007/09/26(水) 11:37:43 ID:???
A美波さんに何があったのか尋ねる

「何が、あったんですか?」
顔色の悪い隆を気にしつつ、美波さんに尋ねる。

「私の力を見てもらっていたんですよ。私の力は治癒能力に特出しています。もちろんそれだけではありませんが」
美波さんは微笑んで人差し指を立てた右手で、すっと左腕をなぞる仕草をする。

「先ほどこのようにカッターで切って見せたのです。
 ソファーは汚れないようにしておりましたので大丈夫ですご安心ください」
そういった美波さん腕は滑らかで傷一つない。
半信半疑で隆を見ると、隆は小さく頷いた。

「この人の言ってることは嘘じゃない。言われただけじゃ信じられなかったが、見ちまったからな」
隆はそう言って、深くため息をつく。

「綾の力は強くないものでした。自分の傷を癒すのも、他の人より幾分早いという程度の。けれど綾は周防が傷つき倒れたあの時、自らの命を削り暴走させることでその力を最大限に発揮しました。
 その場に居合わせた私は、綾の暴走した力の余波によってマインドコントロールを解かれました」
美波さんはそう言っていったん口を閉じ、静かに目を閉じた。
数呼吸後、美波さんは言葉を続ける。

「周防の傷は綾の力で癒えました。けれど周防はそれから三ヶ月あまり意識を取り戻さなかったのです。
 組織は肉体は綾の力によって癒されたけれど、精神はすでに死んでいるものと判断しました」
「それで、周防さんは死んだっていうことになっているの…?」
「そうです。けれど周防が死んだという通達が組織に回ったその一週間後、周防は目覚めました。
 その三ヶ月の間に周防の中で何があったのかは分かりません。けれど、目が覚めた周防は完全に反主流派として組織と相対する姿勢を示すようになりました」
美波さんは穏やかな顔で私を見た。
その瞳が質問はありますか?と尋ねているように見える。

@「組織は周防さんが生き返ったことをなぜ公表しなかったの?」
A「周防さんに意識がない間、何があったのか聞かなかったの?」
B「意識がない間のことを周防さんは何も言わなかったの?」

245 :581:2007/09/27(木) 04:05:42 ID:???
@「組織は周防さんが生き返ったことをなぜ公表しなかったの?」

「身内から反逆者が出たとあっては、権威に関わりますからね。
組織にとって、死んだままのほうが好都合だったのでしょう」
「で、でも……周防さんはちゃんと生きているのに……」
「それが組織のやり方なのですよ」
美波さんは苦笑を浮かべた。

「あ、あの…力を使った綾さんは、一体どうなったんですか?」
綾さんの事がどうしても気になって、私は美波さんに尋ねた。

「綾は脱走犯として隔離棟の厳重な監視下に置かれ、二ヶ月後、誰にも会うこと無くこの世を去りました」

私は何も言葉をかけることが出来ず、冷めた紅茶に口をつけた。
隆も黙ったまま、美波さんをジッと見つめている。

「綾の死後半年以上が経ち、私は周防と面会の機会を得ました。
本来、会わす顔も無いのですが、一言でも詫びたいと思ったのです。
周防はとても冷静に私を迎え入れてくれました。
そして、『俺が死ぬ間際、こよみに“兄を許して欲しい”と頼まれた。だから、お前を許すことにした』と、言ってきたのです。
また、『こよみと似た境遇の人達を助けること。それがこよみを救えなかった俺に与えられた罰だと三ヶ月間寝ていて気付いた。だから、力を貸して欲しい』とも。
私に罪を償う術を、妹の声無き願いを、周防は伝えてくれたと思いました」

「それで反主流派になったんですね」
「はい。私たちはまず、隔離棟の少年に的を絞りました。この少年は能力がとても高く、前に居た部屋を破壊し、綾の部屋に移ってきたばかりでした」

「その少年って……」

「コードNO.673。現在は御門冬馬と名前ですね。少々強引な手を使って、私たちは少年の自由を手に入れました。
そして、信用のおける女性にその少年を託したのです」

「私のお母さん……ですか?」
「ええ、あなたのお母様です。彼女も研究員の一人で、人文学の見地から能力の解明を進めるチームの主任をしていました」

人文学。聞き慣れない言葉が美波さんの口から出てきた。

(そうだ。お母さんの居場所が分かるかもしれない)

けれど、このままお母さんの居場所を聞いていいものかと考える。
お父さん、お義母さん、春樹は何て思うだろう。
まして、春樹もお父さんも居ない今、心細いお義母さんを支えるのは私しか居ないのだ。

どうしよう…
@お母さんの居場所を聞く
A話しの続きを聞く
B考える

246 :582:2007/09/27(木) 11:08:10 ID:???
A話しの続きを聞く

「あなたのお母様は表の研究に携わっていました」
「表の研究?」
「はい。研究所は表向きは普通の研究所です。当然裏の事情を知らない普通の研究者も多数存在します。
 力の解明の研究と言いましたが、あなたのお母様の研究はいたって健全なものでした。
 あなたのお母様はとても優秀な方で、研究所に来て半年もたたないうちに主任に抜擢されるほどでした」
お母さんが研究所にいたということで、不安になった私に気付いたのか美波さんは微笑んで言葉を続けた。

「そうですね例をあげると、言霊などの研究ですね」
「ことだま?」
隆が不思議そうな顔をしたが、私は以前周防さんに似たようなことを聞いていたのですぐに理解する。

「言葉に力が宿るっていう?」
「そうです。たとえば『がんばれ』と応援されたら力がわいてくるような気がするでしょう?そういう言葉・語学なども、人文学の範囲です」
美波さんは隆に軽く説明をする。

「ですから、あなたのお母様は裏の仕事には携わっていませんでした。ご安心ください」
「そんな愛菜の母親に、周防先輩を預けたのか?危険だろ?」
最もな隆の意見に、私も頷いて美波さんを凝視する。

「確かに彼女が何も知らなければ私たちも周防を預けたりはしなかったでしょう。
 けれど、彼女はどこで聞きつけたのか裏の研究についても知っていました。そして周防に接触してきたのです」
美波さんは交互に私と隆の顔をみて続ける。

「あなたのお母様は周防にこう言ったそうです『私の大切なものを守るために、あの子を助ける手伝いをさせてくれませんか?』と」
「それって、愛菜を守るために周防先輩を助けたいって言ったってことか?」
「おそらくそうです。あなたのお母様にも何か力があったか、もしくは幼少の愛菜さんがお母様に何か伝えたか……どちらかでしょう」
「愛菜が……?」
「私はなにも……」
「まだ小さくて覚えていないと言うこともありえます。あなたのお母様が組織へ入ったのは9年前。
 事件の起こる1年前です。何者かの意図が感じられませんか?」
お母さんが私の前にから消えたのは10年前。
その1年後に組織に入り、さらに1年後に周防先輩を助けた。
言われて見れば、繋がっているように感じられなくもない。

@「きっと偶然ですよ」
A「何者かのって、一体誰の?」
B「私が何かしたと思っているんですか?」

247 :583:2007/09/28(金) 17:42:04 ID:???
A「何者かのって、一体誰の?」

「さぁ、私にも分かりません。あなたかもしれないし、あなたのお母様かもしれないし、他の誰かかもしれませんね」
美波さんはゆっくりした口調で答え、一呼吸置いてから言葉を続ける。

「……周防について話を戻しますね。事実上死んだことになっている周防は地下に潜って、現在も反主流で活動をしています。
それは愛菜さんもご存知ですね。長くなりましたが、これが私の知っている周防の過去です」

そう言って、美波さんは私を見た。
相変わらず、穏やかな表情を大きく崩す事は無い。
だけど、周防さんにとってつらい過去を話させる結果になってしまった。

「あの……美波さん。ごめんなさい」
「気分を沈ませてしまって、私こそ申し訳なかったですね。
でも、綾の事をあなた達に話せてよかったと思っています。あの子を知るものはごく僅かの人間だけですから」
美波さんは寂しそうに笑って、今度は隆に向き直った。

「隆さんにも、気持ち悪いものを見せてしまいましたね」
「別に気持ち悪くなんてなかったさ。あれくらい、どうって事無いぜ」
顔色は悪いままだったけれど、隆は空元気で答えた。

(隆なりに、気を使ったのかな)

「なあ、美波さん……だっけ」
隆は美波さんに向って、話しかけた。
「はい。何でしょう?」
「愛菜の母親は、今どこに居るんだ?
愛菜は長い間、母親の帰りをずっと待っていたんだ。もし知ってるなら、教えてくれないか」

「すみません、私は知らないのです。愛菜さんのお母様は反主流に属しているわけではないし、研究所もすでに辞められている。
もしかしたら周防なら知っているかもしれませんが……」

今の生活を壊すことになるなら、お母さんの居場所について知らないままの方がいいのかもしれない。
けれど、冬馬先輩を引き取ったのは私のためだと判った以上、会わなければならない気もする。
私の横で寝息を立てるチハルの頭を撫でながら、お母さんについて考えた。

美波さんは腕時計で時間を確認すると、ソファーから腰を上げた。
「では、時間も遅いですしそろそろ失礼させていただきます。最後に何か尋ねたいことはないでしょうか?」

私は
@もう無い
A美波さんは周防さんをどう思っているのか
B隆に尋ねるとこは無いか聞く

248 :584:2007/10/01(月) 13:42:19 ID:???
B隆に尋ねるとこは無いか聞く

「いいえ、私はもう大丈夫です。隆は何かある?」
私は美波さんにお礼を言って、チハルを起こさないように注意しながら立ち上がり、ふと隆を振り返って聞いてみる。
隆はソファに座ったまま、美波さんをじっと見つめて口を開いた。

「ところで、組織って言うのは今現在何を目的として動いてるんだ?」
「……」
美波さんはその問いに一瞬考え込むように目を閉じた。

「目的まではわかりませんが16年前の春までは……能力者の人工的な作製と能力者の力の増大について研究がなされていました。
 けれど16年前に何が起きたのか、能力者を人工的に作る研究は既存のものを除き新規研究は突然打ち切られ、能力者の力の増大についての研究と、力の解析についての研究に重点がおかれるようになりました」
「16年前の春……?」
その言葉に隆が一瞬眉をしかめ、それから私を見た。

「愛菜が生まれたとき、か?」
「え……?」
言われて私もハッとする。
確かに16年前の春……3月は私が生まれた年だ。

「組織は、愛菜が生まれたときから愛菜を狙っていたってことか?」
「わかりません。私には上層部が何を目的として動いているかは知らされておりませんので……」
美波さんは考えるようにそう言って、隆を見返す。

「けれど、可能性はありますね。隆さんのクローンが作られたのはその約半年前、学年で言えば愛菜さんと同じ学年ですが、ぎりぎり既存の研究対象ということで残されたのでしょう」
美波さんはそう言って小さく呟く。

「周防は当時8歳ですか……おそらく詳しいことは分からないでしょうね」
そういう美波さんだって当時は11歳だったはずだ。
私の心の内を察したのか美波さんは、チラリと私をみて微笑んだけれど何も言わずに隆に視線を戻す。

「この件については私ではお役に立てないと思います。周防に直接聞いたほうがいいでしょう。
 反逆者として扱われているとはいえ、彼は高村の名をもつ能力者ですから、経緯はともあれ現在の組織の目的は知っているかもしれません」
そう言って美波さんは再度時計を見る。

「では、これで失礼いたしますね」
私は美波さんを玄関まで送っていく。

「ありがとうございました」
「いいえ、何かありましたら周防に連絡してこき使ってやってください」
再度お礼を言うと、美波さんは微笑んで出て行った。
閉まった戸をなんとなく見つめていると、リビングから隆が私を呼んだ。

「おい、愛菜!携帯なってるぞ!」
「え、あ、うん」
隆の言葉に、慌ててリビングに戻ってディスプレイを覗く。

相手は
@春樹
A周防さん
B修二くん

249 :585:2007/10/01(月) 20:08:30 ID:???
@春樹

(……春樹からだ!)

私は急いで通話ボタンを押した。
「は、春樹!?」
「もしもし……姉…さんだよね」
いつもの春樹の声だった事に、とりあえず安心する。

「どうして黙って出て行ったの? お義母さんもすごく心配してるんだよ!」
「……ごめん」

春樹に謝られて、ようやく冷静さに欠いていた自分自身に気付いた。
心配そうに見つめる隆に向って、春樹は無事だと目で訴える。

「……今、どこにいるの?」
「実の父親の所だよ。しばらく家には帰らないけど、心配いらないから」
「それって、高村の研究所なの?」
「……………」
春樹は何も答えない。この沈黙は恐らく肯定だろう。

「俺のこと、警察に届けないで欲しいんだ。あと、学校には病欠ってことで連絡しといて。
色々勝手言ってるけど、必ず戻るから」
「お願い。すぐ戻ってきて」
「……それは出来ないよ」
「どうして? 」

暫く沈黙が続いた。
受話器の向こう側にいる春樹は、私に伝えるべき言葉を選んでいるのかもしれない。
そして、またポツリと話し出した。

「ここには、俺にも出来ることがあるから」

(ここにはって……私の傍じゃだめって事なの?)

「研究所なんて、危険だよ。春樹に何かあったら、私……」
「大丈夫だよ。あんな人でも父親だし、俺に無茶なことはしないと思う。もう、足手纏いにはなりたくないんだ。
無力なままじゃ、姉さんを守る事はできないからね」
その声は静かだったけれど、有無をいわせぬ響きがあった。

いつだって春樹は私を守っていてくれた。
『ずっと守る』と約束してくれてから、5年。
どんな時も傍にいてくれたのに。
春樹がいるだけで心強かったのに。

春樹の望む守ると、私の願う守るは違うのだろうか。
『これ以上無理はさせない。……絶対だ』と呟いた春樹の決意に気付けなかった事が、今になって悔やまれる。

私は
@正直な気持ちを言う
A春樹を信じてみる
B隆に替わってもらう

250 :586:2007/10/03(水) 13:49:18 ID:???
B隆に替わってもらう

春樹の決意は固いみたいだ。
助けを求めるように隆に視線を向けると、側で聞いていた隆が私に手を差し出してきた。

「春樹、隆が変わってほしいって、いま変わるから」
隆に電話を渡すと、隆はくるりと私に背を向け話しだした。

「春樹、俺だけど……あぁ……あのな、お前の母さん倒れそうなくらいショックを受けてたぞ」
隆の声だけが部屋の中に響く。

「……当たり前のことを言うな。だけどな、お前が思ってるほどお前は無力じゃない。……お前にだって……はぁ?」
春樹の声は聞こえないが、突然隆が驚いたような、あきれたような声を上げる。

(なにを話してるんだろう……?)
「……なにを言い出すかと思えば。はははっ……いや、バカにしてるわけじゃない。
 お前も年相応な所があるんだと思っただけだ。いやー、安心した。
 普段やけに大人びてるからなお前。いや考えすぎるだけか?」
再度笑いを洩らした隆が、次の瞬間にはまじめな声に戻る。

「お前の考えは分かった。けど、今回のお前の選択は誤りだ。
 ……いいから最後まで聞け。誰もお前にそういう力を望んでないんだ。
 お前にはこういうのとは違う別の力があるだろう。早く気付け、そして戻って来い」
隆の言葉は、春樹が特別な『力』を欲しがっていることをうかがえた。
けれど隆が言うとおり、私は春樹に隆や一郎くんたちのような『力』は望んでいない。
ただそばに居てくれるだけでいい。
普通で居られるならそれが一番だと思う。
私だって力を欲しいと昨日までは思っていたけれど、周防さんや美波さんの話を聞くうちに以前のように『力』が欲しいと思わなくなった。
以前冬馬先輩が言った言葉の意味が少し分かった気がする。

「……はぁ、分かったよ。けど、無茶するなよ。組織はヤバイとこだ。
 いくらお前の本当の父親だからって、信用するな。……あぁ、それじゃ」
そういって、携帯の通話を終わらせた隆は、私に携帯を返してくる。

「とりあえず、しばらくは戻ってくる気はないんだと」
「え!?」
「春樹には春樹なりの考えがある。お前の思ってることはちゃんと伝えてやった。
 それを聞いても春樹の考えは変わらなかったんだ。後は春樹のしたいようにさせてやれよ」
隆はそう言って私の額を軽く小突く。

私は、
@頷く
A文句を言う
B春樹がなんといったのか聞く。

251 :587:2007/10/03(水) 21:32:45 ID:???
@頷く

私は額を手で押さえて、小さく頷いた。

「文句は帰ってきてから、たっぷり言ってやれ。今は、愛菜がおばさんを守ってやらなくちゃいけない。泣き言なんて言ってられないだろ?」
「……そうだね」

春樹には、沢山言いたいことがある。
黙って出て行ってしまった春樹のやり方が、正しかったとは思えない。
それがたとえ、私のためであってもだ。

「さっき、コイツに右ストレートを教えてやったし。まぁ、チビから痛い一発を食らえば、春樹も目が覚めるだろ」
隆はチハルを指さして、微笑んだ。
寝息を立てるチハルと、羽織っていた上着を掛けてあげている隆を見ていると、歳の離れたお兄さんと弟みたいだ。
そんな穏やかな光景を見て、春樹のことも少しは落ち着いて話ができそうな気がしてきた。

「あのね、隆。春樹は電話で何て言ってたの?」
「あ? …ああ。俺に謝ってきたな。あと、何かあった時はよろしくお願いしますって言われた。俺が言うのも何だが、本当に勝手なヤツだよ。……ったく」
「他には? 他に何か言っていなかった?」
「力が欲しいと言っていた。お前を守れるだけの、強い力が欲しいってな」
「やっぱり……」
「それと、自分は無力だとも言っていた。春樹のやつ、勘違いしやがって」
隆はぶっきらぼうに言い放つと、溜息を吐いた。

「ねぇ、そういえば…。話の途中で隆、驚いていたよね。その後、年相応とか言っていたし。あの時、春樹は何て言っていたの?」
「それは……」
隆は言い淀むと、困ったように頭を掻いた。
そして、投げやりに口を開く。

「それは……春樹の口から聞いてくれ」
「え?」
「俺から、言うべき事じゃないからな。どうしても知りたいなら、帰ってから直接聞けばいい」
「どうして?」
「……って、お前。少しは俺の気持ちも察してくれっての」
「もったいぶって、何よ。意地悪しないで教えてくれてもいいじゃない」
「あ、あのなぁ……まぁ、いいや。とにかくだ。俺は絶対に言わないからな」

そう言って、私から視線を外すように再びチハルに向き直ってしまった。
私には、どうしても教える気が無いらしい。

(何よ、意地悪ね)

@他に何か言っていなかったか尋ねる
Aなんとしても聞きだす
Bチハルをベッドに運ぶ

252 :名無しって呼んでいいか?:2007/10/03(水) 22:41:50 ID:???
×私から視線を外すように再びチハルに向き直ってしまった。
○私の視線から逃れるように、再びチハルに向き直ってしまった。

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