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ギャルゲ・ロワイヤル 作品投下スレ10

1 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 16:28:08 ID:GVwIGeWd
ここは、「ギャルゲーキャラでバトルロワイヤルをしよう」というテーマの下、
リレー形式で書かれた作品を投下するための専用スレです。

前スレ
ギャルゲ・ロワイヤル 作品投下スレ9
http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gal/1190381254

投下前の予約はしたらば掲示板の予約スレで行なってください。
ギャルゲロワ専用したらば掲示板
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/8775/

作品に対する批評感想、投下宣言は雑談感想スレで行なってください。
ギャルゲ・ロワイアル感想雑談スレ5
http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gal/1189180321/

基本ルールその他は>>2以降を参照してください。
sage進行でお願いします。

2 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 16:28:58 ID:GVwIGeWd
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → 舞台である島の地図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。

【禁止エリアについて】
放送から2時間後、4時間後に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。

【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。

3 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 16:29:38 ID:GVwIGeWd
【舞台】
http://www29.atwiki.jp/galgerowa?cmd=upload&act=open&pageid=68&file=MAP.png

【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24

【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述する。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

4 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 16:30:56 ID:GVwIGeWd
【首輪】
参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
放送時に発表される『禁止エリア』に入ってしまうと、爆発する。
無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できない。

【デイパック】
魔法のデイパックであるため、支給品がもの凄く大きかったりしても質量を無視して無限に入れることができる。
そこらの石や町で集めた雑貨、形見なども同様に入れることができる。
ただし水・土など不定形のもの、建物や大木など常識はずれのもの、参加者は入らない。

【支給品】
参加作品か、もしくは現実のアイテムの中から選ばれた1〜3つのアイテム。
基本的に通常以上の力を持つものは能力制限がかかり、あまりに強力なアイテムは制限が難しいため出すべきではない。
また、自分の意思を持ち自立行動ができるものはただの参加者の水増しにしかならないので支給品にするのは禁止。

【予約】
したらばの予約専用スレにて予約後(ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1173505670/l50)、三日間以内に投下すること。
但し3作以上採用された書き手は、2日間の延長を申請出来る。

また、5作以上採用された書き手は、予約時に予め5日間と申請すろことが出来る。
この場合、申請すれば更に1日の延長が可能となる。
(予め5日間と申請した場合のみ。3日+2日+1日というのは不可)

5 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 16:32:38 ID:GVwIGeWd
1/6【うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
  ○ハクオロ/●エルルゥ/●アルルゥ/●オボロ/●トウカ/●カルラ
1/3【AIR】
  ●国崎往人/●神尾観鈴/○遠野美凪
2/3【永遠のアセリア −この大地の果てで−】
  ○高嶺悠人/○アセリア/●エスペリア
2/2【Ever17 -the out of infinity-】
  ○倉成武/○小町つぐみ
1/2【乙女はお姉さまに恋してる】
  ○宮小路瑞穂/●厳島貴子
4/6【Kanon】
  ●相沢祐一/○月宮あゆ/○水瀬名雪/○川澄舞/●倉田佐祐理/○北川潤
1/4【君が望む永遠】
  ●鳴海孝之/●涼宮遙/●涼宮茜/○大空寺あゆ
1/2【キミキス】
  ●水澤摩央/○二見瑛理子
2/6【CLANNAD】
  ●岡崎朋也/○一ノ瀬ことみ/○坂上智代/●伊吹風子/●藤林杏/●春原陽平
1/4【Sister Princess】
  ●衛/●咲耶/○千影/●四葉
0/4【SHUFFLE! ON THE STAGE】
  ●土見稟/●ネリネ/●芙蓉楓/●時雨亜沙 
1/5【D.C.P.S.】
  ○朝倉純一/●朝倉音夢/●芳乃さくら/●白河ことり/●杉並
3/7【つよきす -Mighty Heart-】
  ●対馬レオ/●鉄乙女/○蟹沢きぬ/●霧夜エリカ/○佐藤良美/●伊達スバル/○土永さん
2/6【ひぐらしのなく頃に 祭】
  ○前原圭一/●竜宮レナ/○古手梨花/●園崎詩音/●大石蔵人/●赤坂衛
1/3【フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
  ●双葉恋太郎/○白鐘沙羅/●白鐘双樹
【残り23/63名】 (○=生存 ●=死亡)

6 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:39:10 ID:sbfcblST
草木も眠る丑三つ時。
水瀬名雪は、とある作業を終えた所だった。
そう、『最強の機械』を手に入れる為の作業だ。

実際にやってみるまでは、単純な試行錯誤の繰り返しで、どうにかなると思っていた。
だが『最強の機械』は、ショベルカー程容易には動いてくれなかった。
見掛けとは裏腹に、動力部は最新技術が結集されており、車輪に該当する部分も、より幅広い環境で用いれる特殊なものだった。
運転席の周りには幾つかモニターが取り付けられており、周囲の景色を眺め見れるようになっている。

それ程高度な機械を、只の女子高生である名雪が、自身の持つ知識だけで扱える筈も無い。
そこで名雪は『最強の機械』内部をくまなく探索し、操作マニュアルと思われる本を見つけ出した。
そして――

「あはっ……あはははははっ! やったよ、遂に動かせたよ! アハハハハハハハハハッッ!!」

名雪は周囲を警戒しようともせず、声を張り上げて哂う。
敵を誘き寄せてしまう可能性もあったが、そんなモノ今の名雪にとっては、何の脅威にも成り得ない。
そう――名雪は『最強の機械』を操る事に成功したのだ。
最早どのような敵が現われようとも、負ける可能性など皆無。
例え自分と同じように、パワーショベルカーを入手した敵が現われたとしても、造作も無く粉砕出来るだろう。

とは云え機械である以上、燃料が尽きてしまえばそれまでだ。
余程の強敵が現われない限りは、パワーショベルカーを中心に戦うべきかも知れない。
名雪はそう考えて、『最強の機械』をデイパックに仕舞い、代わりにパワーショベルカーを取り出した。

「さああゆちゃん、早く出てきてよ! ボロボロにしてあげる! グシャグシャにしてあげる! 
 一杯……いーっぱい、苦しめてあげるんだからあああああああああ!!!」

闇夜に響き渡る雄叫び。
運命に翻弄され、狂気に飲み込まれ、そして究極の力を手に入れた少女が、再び動き出す――――


7 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:40:37 ID:DG6B30tJ


8 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:40:44 ID:sbfcblST


     ◇     ◇     ◇     ◇


舞台は移り変わる。
広大な森の中、切り開かれた円形状の平野に聳え立つ、一際巨大な建造物。
ホテルの玄関で、朝倉純一とその仲間達は話し込んでいた。
純一は外に広がる暗闇を一瞥した後、不安げな表情で問い掛ける。

「なあ悠人、どうしても行くのか? せめて明るくなるまで待った方が、安全じゃないか?」
「そういう訳にも行かないさ……合流予定時刻はもう過ぎてしまってるんだ。
 千影の無事も確認したいし、衛達だって病院で待ってる」

情報交換を行った後、高嶺悠人は純一達と別行動を取り、病院に向かおうとしていた。
この殺人遊戯に於いて戦力の分断は下策であるし、暗闇の中の行軍は危険極まりない。
そう云った理由から、純一は悠人に制止を呼び掛けている。
だが病院での待ち合わせ時刻は既に過ぎており、これ以上悠長にはしていられない。
次の放送で病院が禁止エリアに指定され、合流出来なくなる危険性だってあるのだ。
それに、今の悠人には頼もしき同行者が付いている。

「大丈夫よ純一。私が一緒に行くんだから、問題無いわ」

悠人と共に行動する事になった小町つぐみが、自信に満ち溢れた笑みを浮かべる。
何故つぐみが同行するのか、理由は簡単だ。
純キュレイ種であるつぐみは、赤外線を視覚で捉える事が可能な為、暗闇での行動を得意とする。
それに加え、純一や蟹沢きぬと違い、つぐみには『武を探す』という大きな目的もある。
人を探すのなら、一箇所に留まるよりも、動き回った方が遥かに効率的。
だからこそつぐみは悠人と共に病院へ向かい、その間純一と蟹沢きぬは、ホテルで待機する事になったのだ。

9 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:42:11 ID:DG6B30tJ


10 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:42:35 ID:sbfcblST

そして悠人とつぐみが玄関を潜り抜け、ホテルを後にしようとした時、後ろからきぬの躊躇いがちな声が聞こえてきた。

「……ちょっと待て、クラゲ」
「何よ?」
「変なトコでくたばんなよ。オメーみてえな奴でも、死なれたら気分悪いからよ」
「当然よ、武を残して死ねる訳無いじゃない。貴女の方こそ、精々純一の足を引っ張らないよう注意する事ね」

辛辣な言葉の交換は、別れの挨拶としては相応しくないようにも聞こえる。
だがつぐみも、きぬも、内心では分かっている。
お互いの言葉には、仲間を気遣う想いがちゃんと籠められているという事を。
悠人とつぐみは、純一達に見送られながらホテルを後にした。




そして、数十分後。

「つぐみ、前方の様子はどうだ?」
「大丈夫。少なくとも私の見える範囲内で、誰かが隠れてる様子は無いわ」

戦力的に劣る純一達の事を考えて、車をホテルに置いてきた為、二人は徒歩で林の中を進んでいた。
周囲に居場所を悟られぬよう、照明器具は一切用いずに、悠人は暗視ゴーグルを装備し、つぐみは己が赤外線視力を頼りとしている。
この方法だとどうしても移動速度は遅くなってしまうが、慎重を期すに越した事は無いだろう。
悠人と同じように暗視ゴーグルを装備した殺戮者が、突然奇襲を仕掛けてくる可能性だってあるのだ。

「…………」

悠人は複雑な表情で、つぐみの背中を眺め見る。
頭の中に引っ掛かっているのは、佐藤良美が逃げ際に放った言葉。

――『武さんはね、殺し合いに乗ったよ!』

11 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:43:29 ID:DG6B30tJ


12 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:43:46 ID:sbfcblST

自分がつぐみと共に行動した時間は、未だそれ程長くない。
それでもつぐみが、倉成武に対して非常に強い愛情を抱いているのは分かる。
良美の言葉が事実だったとしたら、そして武の説得に失敗したとしたら、つぐみはどのような行動を取るのだろうか。
諦めずに、何度でも説得を試みようとするだろうか。
それとも――
悠人がそこまで考えた所で、前方を進んでいたつぐみがピタリと立ち止まった。

「――ねえ、何が音がしない?」
「……え?」

云われて耳を澄ましてみると、確かに何かの音がしているようだった。
音は遠くから聞こえて来ているが、段々とこちらの方へと近付いてくる。

「悠人、此処は一旦――」
「ああっ!」

悠人とつぐみは頷き合い、瞬く間に茂みの中へと身を隠した。
音は益々近付いてきており、最早騒音と云える程の音量になっている。
そのまま待っていると、やがて林道の向こう側から、音源と思われるモノがやって来た。

(な……あんな物まで支給されてるのか!?)

悠人は驚愕の声を上げたい気分だった。
現われたのは、一般的にはパワーショベルカーと呼ばれている代物だったのだ。
無骨なフォルムや圧倒的な大きさもさる事ながら、その走行速度も馬鹿にならない。
少なくとも、常人の全力疾走に比べればずっと速い。
いかな悠人とて、正面からやり合えば苦戦は免れないだろう。
だが幸いショベルカーの運転手は悠人達に気付いていないようで、真っ直ぐに林道を突き進んでいる。


13 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:44:36 ID:vrE8wo2p


14 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:44:47 ID:sbfcblST

(……あの方向は)

パワーショベルカーが走り去ろうとしている方角、それは北だった。
自分の記憶に間違いが無ければ、北には学校や住宅街がある筈。
そしてそれらは、衛が病院に向かう道中で、立ち寄る予定の場所だ。
とは云え、普通に考えれば問題など無いだろう。
病院への集合予定時刻は既に過ぎている。
衛はもう、病院に到着していると判断するのが妥当。
だが悠人の脳裏には、とある不安がこびり付いて離れなかった。

(もし……衛も、俺と同じだったとしたら――)

自分と同じように、移動が大幅に遅れていたら?
何かのトラブルに巻き込まれて、相方とはぐれてしまっていたら?
そして――衛が一人で、あのショベルカーと遭遇してしまったら?

……結末は考えるまでもないだろう。
普通の少女である衛が、あんなモノから逃げ切れる筈も無い。
そう判断した悠人は、ショベルカーの姿が消えるや否や、鞄からランタンを取り出した。

「……悪い、病院にはつぐみ一人で行ってくれ」
「え?」
「ちょっと気になる事があるんだ――俺はあのショベルカーを追い掛ける」

悠人がそう伝えると、途端につぐみは呆れ気味の表情となった。
わざわざ危険に飛び込もうと云うのだから、その反応も当然の事だろう。

「貴方、何考えてるの? まさか生身で、あんなモノとやり合うつもり?」
「ああ、必要ならな」
「……そう、分かったわ」

15 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:45:15 ID:vrE8wo2p


16 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:45:58 ID:sbfcblST
つぐみはそれ以上、何も云わなかった。
その場で悠人と別れて、目的地である病院に向かって突き進む。
つぐみにとって悠人は、あくまで出会って間も無い人間。
朝倉純一や蟹沢きぬのように、仲間として認めた訳では無い。
無謀な行動を諌めたり、一緒になって戦う義理など、有りはしないのだ。
武が対主催者同盟の一員となって、病院に滞在している可能性もあるし、ホテルでは純一達が自分の帰りを待っているだろう。
ならば今は悠人の愚かな行動に関与するよりも、逸早く病院に向かうべきだった。


     ◇     ◇     ◇     ◇


再び場所は移り変わり、地図上で云えばE-4とE-5の境目に位置する平原。
傷の手当てと短い睡眠を終えた佐藤良美は、小屋を出発して北へと向かっていた。

「まさか、この島でこんなモノを使う事になるなんてね……」

良美はデイパックを開き、中に入れてあった目覚まし時計を複雑な表情で眺め見た。
商店街で入手した目覚まし時計があったからこそ、自身の睡眠時間をコントロール出来た。
もっと長時間眠ろうかとも考えたが、単独行動の自分がそんな事をすれば、睡眠中の所を襲われかねないのだ。
眠ったのは一時間程度、それでも以前に比べれば、体調は大幅に回復している。
手の傷は未だ激しく痛むものの、両腕を用いれば銃撃は可能な筈。
当分の間、行動に支障が出たりはしないだろう。
そうして良美が歩き続けていると、前方にある茂みの辺りから物音が聞こえてきた。
姿こそ見えぬものの、誰かがこちらに向かって歩いて来ているのは確実。

「……………っ」

瞬間、良美は選択を強いられた。
無力な少女を演じるべきか、若しくは正体を露にして交戦すべきか、である。
出来れば上手く騙して利用したい所だが、もう自分の悪評は相当に広まっている筈。
此処は素直に交戦すべきか――そう考え、S&W M627PCカスタムを構えようとしたのだが。

17 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:46:11 ID:vrE8wo2p


18 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:46:26 ID:IqLO2v2C


19 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:47:14 ID:sbfcblST

「……待つんだ。私は……殺し合いに、乗っていない……」

茂みの中から現われた少女――千影が、制止の声を投げ掛けてきた。
だが当然、その言葉を素直に信じ込む程良美は莫迦でない。
相手の右手には、しっかりと銃――恐らくはショットガンの類――が握り締められている。
相手は良美の正体に気付きながらも、敢えて何も知らぬ風を装い、隙を突こうとしているかも知れないのだ。

「ふうん……。じゃあまずは、その銃を放してくれないかな?
 私だって殺し合いに乗っていないけど、そんなの持たれてたら怖いよ」
「それは……無理だね。これは最低限の……護身道具さ……」

そして千影もまた、相手をアッサリと信用したりはしない。
この殺人遊戯に於いて、安易に他人を信じる事は即命取りとなる。
無闇矢鱈に交戦する気など無いが、必要最低限の警戒は維持しておかねばならないだろう。
死んでいった姉妹達やトウカの為にも、下らぬミスで命を落とす訳にはいかないのだ。

「……そう。困ったねえ、それじゃ貴女を信じてあげられないよ」
「…………」

二人の間に漂う緊張感が、少しずつ高まって行く。
二人は未だ銃口を向け合っていないものの、何時でも回避動作に移れるよう、腰を低く落した態勢になっている。

「でも、一応聞いておくよ。貴女の名前は?」
「……私の名前は……千影」
「――――っ」

良美の眉がピクリと持ち上げられる。
告げられた名前には聞き覚えがあった。
千影――自分の記憶に間違いが無ければ、少し前まで高嶺悠人と共に行動していた少女。
悠人が自分の正体を知らなかった以上、千影も同様である可能性が非常に高い。

20 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:47:20 ID:IqLO2v2C


21 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:48:25 ID:sbfcblST

「貴女が千影さん……か。うん、悠人君から話は聞いてるよ。
 ――私は佐藤良美。ごめんね、疑っちゃって」
「……いや……構わない。それよりも良美くん、君は……悠人くんと会ったのかい?」
「うん、そうだよ」

念の為に自身の名前を告げてみたが、千影の表情に翳りは見られない。
寧ろ悠人と出会ったという言葉の方に、興味を惹かれているようだった。
自分の悪評は伝わっていないと判断して、ほぼ間違いない筈。
ならば此処は攻撃を仕掛けるよりも、懐柔を試みるのが最善手だろう。
良美は表情を緩めると、デイパックにS&W M627PCカスタムを仕舞い込んだ。
千影もそれを見て、ショットガンをデイパックに戻そうとして――

「「――――――――ッ!!」」

後方で鳴り響く爆音。
二人が同時に振り返ると、巨大なショベルカーが一直線に突っ込んで来ていた。
良美も千影も数々の修羅場を経験しているが、流石にこの事態には驚愕を隠し切れなかった。

「アハハ、千影ちゃんに佐藤さんだ! アハハハハハハハハハハハッ!!」

ショベルカーの運転手――水瀬名雪の哄笑が拡声器で増幅されて、周囲一帯に響き渡る。
哂う名雪の肉体は、正視に耐えぬ程にボロボロだ。
右眼球は破裂し、頭蓋骨には皹が刻み込まれ、右肩にも大量の出血が見られる。
だがどれだけ自らの肉体が傷付こうとも、今の名雪は止まったりしない。
けろぴーさえ動かせれば、狩猟を続ける事は可能なのだ。
名雪が駆るショベルカーは、点在する木々を薙ぎ倒しながら疾駆してゆく。

しかし千影と良美は、名雪と面識がある。
ならば二人は、説得を試みようとするのだろうか。

「なゆ……き……くん……」

22 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:48:31 ID:IqLO2v2C


23 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:49:36 ID:IqLO2v2C


24 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:50:31 ID:sbfcblST

千影はぐっと息を呑んでから、擦れた声を絞り出した。
ショベルカーから聞こえてきた声は、間違い無く水瀬名雪のもの。
そして今もショベルカーは、千影達の方へと突っ込んで来ている。
言動からして、明らかに千影や良美の姿を視認しているにも関わらず、だ。
つまり――

「そうか……君は殺し合いに乗ったんだね」

ショットガンの銃口を持ち上げて、叫ぶ。

「やっぱり君が、衛くんを殺したんだね……っ!!」

瞬間、千影はショットガンのトリガーを引き絞った。
憎しみに身を任せ、何度も何度も。
そしてそれとほぼ同時に、良美もまた銃を構えた。

「いけないなあ、名雪ちゃん。折角千影さんとお話してたのに、邪魔しないでよ」

見境無く襲い掛かってくる狂人など、只の邪魔者でしかない。
良美の構えたS&W M627PCカスタムが、続けざまに火花を吹く。
千影と良美の放った銃弾の群れは、ショベルカーの胴体部へと吸い込まれていった。
相手が生身の人間ならば、完膚無きまでに葬り去れるであろう集中放火。
だがショベルカーの前には、その程度の攻撃など無意味。

「――そんな攻撃、けろぴーに効くもんかあ!」

カンカンッ、と甲高い金属音が連続して鳴り響く。
ショベルカーを覆う鋼鉄の装甲は、造作も無く弾丸を弾き返した。
そのまま名雪は機体を前進させ、哀れな獲物達を踏み潰そうとする。
ショベルカーと千影達の距離は、もうごく僅かだ。

25 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:50:35 ID:IqLO2v2C


26 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:50:58 ID:HbE3p3gP



27 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:51:23 ID:IqLO2v2C


28 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:52:17 ID:IqLO2v2C


29 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:52:56 ID:IqLO2v2C


30 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:52:58 ID:sbfcblST

「行け、けろぴー! 二人纏めて潰しちゃええええええ!!」
「くっ…………」
「この――」

迫り来る危険から身を躱すべく、良美は左方向へ、千影は右方向へと飛び退いた。
周囲に点在した木々のお陰で、ショベルカーの勢いが若干削がれたのもあり、どうにか回避が間に合った。
千影と良美の間にある空間を、鋼鉄の車体が通過してゆく。
必然的に千影と良美は、ショベルカーの背後を取る形となった。

「良美くん……此処は一つ……共同戦線を張らないかい?」
「私もそれが良いと思うな。でも、どうやってあんなのを倒すつもり?」
「正面からじゃ分が悪い……左右から、挟み撃ちの形で……窓ガラスを狙おう」

千影は未だ良美を完全に信用してなどいないし、良美も千影の利用価値を測っている最中だ。
それでもこの場に於ける最優先事項は、問答無用で攻撃してくる名雪への対処に他ならない。
直ぐ様二人は走り出し、ショベルカーを挟み込むような位置取りとなった。
ショベルカーがスピードを緩め、Uターンするその瞬間を狙って、銃の照準を窓ガラスに合わせる。

「名雪くん……残念だけど――」
「――死ぬのは貴女一人だけだよ!」

良美と千影は同時にトリガーを引き絞って、各々に銃撃を行った。
未だ方向転換を終えていない名雪に、迫り来る銃弾の群れを回避する術は無い。
そして窓ガラスの耐久力は、鋼鉄で覆われた胴体部に比べ大きく劣っている筈。
そこを狙っての一斉射撃。
千影と良美が取り得る戦術の中で、最も効率が良いであろう攻撃方法。
だが名雪を守る防弾ガラスは、永遠神剣による連撃すらも防ぎ切る代物だ。
放たれた銃弾は全て、防弾性の窓ガラスに虚しく弾き返されるだけだった。

「それで終わり? 下らない……下らない下らない下らないっ! 私のけろぴーには、何をやっても勝てる訳ないんだよ!!」

31 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:53:14 ID:9vLcqQ9M


32 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:54:35 ID:sbfcblST

『けろぴー』を駆る名雪にとっては、銃撃など警戒に値しない。
名雪は一方的な狩猟を行うべく、狙いを千影一人に絞って、ショベルカーを全速力で走らせた。
千影の眼前にまで詰め寄ってから、鋼鉄の牙――所謂シャベルを、勢い良く振り下ろす。

「くぅ――――」

千影は横に転がり込んで、迫るショベルから何とか身を躱した。
それまで千影が居た辺りの地面が、ショベルによって大きく削り取られる。
速度こそ大した事が無いものの、凄まじいまでの破壊力を伴った一撃。
直撃してしまえば――否、掠っただけでも致命傷になりかねない。

「あはっ、よく避けたね――でも次は絶対外さないよ。
 じっくりと追い詰めて、カトンボのように踏み潰してあげるんだから!!」
「……名雪くん」

何とか難を逃れた千影は、近距離でガラス越しに名雪の顔を眺め見た。
血塗れで笑顔を浮かべる名雪の姿は、言葉では言い表せぬ程に禍々しい。
片方しかない瞳は狂気の色に染まり切っており、口元は歪に吊り上げられている。
それで、名雪は殺し合いに乗ったと云うよりも寧ろ、狂気に飲み込まれただけなのだと分かった。

「でも……私がやるべき事は、変わらない……」

原因がどうであれ、名雪が善良な人間達にとって有害であると云う事実は、そして衛の仇であると云う事実は変わらない。
ならば千影にとって名雪は、何としてでも打倒しなければならない怨敵だ。
千影はショットガンに予備弾を装填しながら、ショベルカーの側面へと回り込む。
続けて走る足は止めぬまま、再度銃撃を試みた。
だが結果は同じ。
ショットガンから放たれた散弾の群れは、堅固な防弾ガラスによって一つ残らず阻まれた。
只でさえ残り少ない千影の体力だけが、徐々に削り取られてゆく。

33 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:54:36 ID:HbE3p3gP



34 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:54:41 ID:IqLO2v2C


35 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:56:03 ID:sbfcblST

そんな中、良美は目立たぬ位置へと身を隠してから、冷静に戦況を分析していた。

「……これはちょっと、不味いね」

先程の斉射が通じなかった以上、並大抵の攻撃では名雪を倒せないだろう。
相手は小回りが効かぬのだから、耐え凌ぐだけなら十分に可能だが、それも長くは保たない。
戦いが長引けば、いずれこちらの疲労が限界に達して、無様に殺されてしまうだけだ。
銃撃戦に固執せず、ショベルカーの車体に飛び乗ってしまえば勝機はあるが、それは相当のリスクを伴う筈。
そういった予測を踏まえると、自然に一つの選択肢が浮かび上がってくる。

(勿体無いけど……此処は引いた方が良いかな?)

幸い、名雪の攻撃は千影一人に集中している。
今なら、大した苦労も無く逃げ果せられるだろう。
だが一方で、このまま千影を見捨てるのは惜しい気もする。
時間が経過すればする程情報は拡散していくのだから、今後は益々状況が悪化していくに決まっている。
多くの人間に警戒されている自分が、手駒を入手する好機は、今回が最後かも知れないのだ。
どうするべきか、良美は迅速に思考を巡らせる。
だが良美が結論を下すよりも早く、決定的な転機が到来した。

「――――千影ぇぇッ!!」
「…………悠人、くんっ!?」

現われたのは、ショベルカーの後を追い掛けていた高嶺悠人だ。
悠人は状況を把握すべく全体を見渡し、最初に千影の姿を発見した。
見れば千影は、息を切らしながらも懸命に、巨大なショベルカーと戦っている。

「ク――待ってろ千影、今助ける!!」

36 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:56:07 ID:IqLO2v2C


37 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:57:38 ID:sbfcblST

再会を祝っている暇など無い。
一も二も無く悠人は疾走し、ショベルカー目掛けてベレッタM92Fを撃ち放った。
だが当然の如く銃弾は防弾ガラスに弾き飛ばされ、大した戦果を挙げぬまま無力化した。
驚きの表情を浮かべる悠人に、千影が警告を投げ掛ける。

「悠人くん、駄目だっ……! あの機械に銃は効かない!」
「分かった!」

悠人は直ぐにベレッタM92Fをデイパックへと戻し、代わりに日本刀――トウカが愛用していた物――を取り出した。
元々悠人の得意とする戦法は剣を用いての近接戦、銃弾が効かぬと分かった以上、拳銃に頼る意味など無い。
悠人はまるで臆する事無く走り続け、ショベルカーとの間合いを縮めてゆく。

「――カトンボが一匹増えたくらいで!!」

新たなる敵対者の存在を認めた名雪が、即座に攻撃目標を変更し、横薙ぎにシャベルを振るった。
広範囲に渡るその攻撃は、正しく死の旋風と呼ぶに相応しい。
しかし悠人は天高く跳躍する事で、迫る一撃を空転させた。

「ハアアアアアァッ!!」

空中に浮いたまま、ショベルカーの防弾ガラスに狙いを定めて、思い切り日本刀で斬り付ける。
悠人の攻撃動作はアセリアに比べると少々稚拙だが、一発一発の威力だけで見れば間違い無く最強だ。
その威力は、いかな防弾ガラスと云えども完全に防ぎ切れるものでは無い。

「えっ…………け、けろぴーが!?」

この戦いに於いて初めて、名雪の表情が狼狽の色に染まった。
悠人が放った剣戟は、防弾ガラスに刻み込まれていた皹を肥大化させていた。
それを好機と取った悠人は、連続して剣戟を繰り出し、その度に皹がより一層広がってゆく。
誰の目から見ても、耐久力の限界が近いのは明らかだった。

38 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:57:43 ID:HbE3p3gP



39 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:57:46 ID:IqLO2v2C


40 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:58:56 ID:HbE3p3gP



41 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 20:59:46 ID:sbfcblST
「う、あ、このっ……!!」

不利を悟った名雪は、堪らず操縦用のレバーを動かして、一旦悠人から距離を離そうとする。
しかしながら悠人が、後退しようとする敵を黙って見逃す筈も無い。
一気に勝負を決めるべく、大地を蹴り飛ばして疾走する。
だがそこで鳴り響く、一発の銃声。
悠人は脇腹に焼け付くような痛みを感じ、もんどり打って転倒した。

「あぐっ……が……!?」
「――ふふ、また会ったね悠人君」
「ぐ……お前は……!」

悠人が身体を起こし、銃声のした方へ振り向くと、そこには数時間前に交戦した佐藤良美が立っていた。
良美は心底可笑しげに微笑みながら、悠人に向けてS&W M627PCカスタムを構えている。
とどのつまりは、良美が悠人を狙撃したのだ。
未だ良美の正体を知らぬ千影が、訝しげに眉間へ皺を寄せた。

「良美くん……、一体何のつもりだい……?」
「一々説明しないと分からないのかな? 見ての通りだよ」
「……つまり君は、殺し合いに……乗っているという訳か」

千影の質問に、良美は笑みを深める事で応えた。
良美はもう正体を隠すつもりも、この場から逃亡するつもりも無かった。
自分の正体を知る悠人が出現した事で、千影を騙すのはほぼ不可能になった。
だからこそ逸早く思考を切り替えて、この場に居る人間全ての排除を目標にしたのだ。
平時であれば、殺し合いに乗った自分は、人数的に不利な戦いを強いられる。
しかし名雪という無差別殺人者が居る今ならば、立ち回り方次第で、悠人と千影の両方を始末出来る筈だった。

「糞っ――良美! お前どうして、そこまで楽しそうに人を襲えるんだよ!
 ことりみたいな良い子を殺して、心は痛まないのかよ!?」
「……ちょっと待ってくれ、悠人くん。ことりくんが……死んだ、だって……?」

42 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 20:59:52 ID:IqLO2v2C


43 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:01:06 ID:sbfcblST
千影が聞き返すと、悠人は表情を深く曇らせた。

「ああ。ことりは良美と戦って、それで……」
「……ことりくん。君まで……逝ってしまったのか……」

また一人知り合いが死んでしまったと分かり、千影は悲しげな声を洩らした。
白河ことりとは少し会話しただけの仲だったが、彼女が善良な人間であったのは分かる。
こんな所で殺される謂れなど、ある筈も無い。

一方千影と対照的に、良美は何時も以上の笑顔を湛えていた。
苦渋を舐めさせられた怨敵が死んだと聞いて、上機嫌になっているのだ。

「そっかあ、やっぱりことりちゃんは死んだんだね。うん良いよ、折角だから質問に答えてあげる。
 心が痛む? そんな訳無いじゃない。お人好しが一人減って、寧ろせいせいするよ」
「っ……コイツ、何処までも腐り切ってやがる……!」

三者三様の表情を見せる三人。
悠人は怒りの表情を、良美は愉悦の表情を、そして千影は悲嘆の表情を露としている。
だがそれも、長くは続かない。

ルール無用の殺人遊戯に、開戦の合図など不要。
良美は唐突に腕を持ち上げて、S&W M627PCカスタムのトリガーを引き絞った。
千影が直感に身を任せて跳ねるのとほぼ同時、唸りを上げる357マグナム弾が、彼女の頬を掠めた。

「――遅いよっ!」

良美の攻撃はそれだけに留まらず、立て続けに銃弾が放たれてゆく。
後手に回ってしまった千影と悠人は、否応無く回避を強要される。
疲弊した千影と脇腹を撃ち抜かれた悠人にとって、それは決して楽な作業で無かった。

「っ…………!」

44 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:01:11 ID:IqLO2v2C


45 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:02:40 ID:sbfcblST

業を煮やした千影が、苦し紛れにショットガンを撃ち放ったが、散弾は狙った位置から大きく逸れてしまった。
回避しながらでは、照準を合わせる余裕など無かったのだ。
そして無理な反撃を行った千影は、良美にとって格好の標的に他ならない。
しかし良美は千影に銃撃を浴びせようとせず、突然横方向へと飛び退いた。
その直後、良美の傍を巨大な物体が通過してゆく。

「――あははははははっ、一人残らずペチャンコにしてやるぅうううう!!」

ショベルカーに搭載された拡声器から、狂った笑い声が放たれる。
獲物達同士で交戦し始めたのを見て取り、名雪はここぞとばかりに攻めに転じた。
上手く奇襲を躱した良美にはもう目もくれず、前方に残る二人の標的へと意識を集中させる。
名雪の駆るショベルカーが、一直線に悠人達の方へと向かってゆく。
それを迎え撃つ形で、悠人もまた勢い良く駆け出した。
徐々に明るみを帯び始めた大空の下、鋼鉄の怪物と鍛え抜かれた戦士が衝突する。

「っ…………く、そ――――」

悠人の動きには、先程までのようなキレが無い。
乱暴に振り下ろされたシャベルを、サイドステップで躱したものの、そこから反撃に転じれない。
撃ち抜かれた脇腹の怪我が原因で、行動一つ一つの速度が大幅に低下しているのだ。
間合いを詰め切る前に、ショベルによる第二撃が飛んで来て、悠人は後退を余儀無くされる。
今の身体で接近戦を挑むのは、分が悪いと云わざるを得なかった。

「でも……それならそれで、やりようはある!」

ならばと、悠人はデイパックからベレッタM92Fを取り出した。
これならば無理に間合いを詰めなくても、離れたままで攻撃出来る筈。
シャベルの射程外で、悠人は弾切れまでトリガーを引き絞る。

46 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:02:46 ID:IqLO2v2C


47 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:02:48 ID:xEgVJbyk
 

48 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:04:03 ID:sbfcblST

しかし名雪も、大人しく銃撃を受け止めたりはしない。
防弾ガラスの損傷が深まっている今となっては、銃弾一つ一つが致命的な損害に繋がりかねない。
素早くレバーを操作して、ショベルカーの車体をジグザグに揺らす事で、被弾部位をズラそうと試みる。
それでも銃弾の幾つかは防弾ガラスに命中したが、破壊し切るには至らない。
そして銃弾を再装填する暇など与えんと云わんばかりに、ショベルカーが再び接近して来て、悠人は守勢に回る事となった。

「チィ――――」
「逃げろ逃げろ! 虫ケラみたいに醜く逃げ惑え!!」

傷付いた身体に鞭打って戦う悠人と、限界の近い機体を酷使する名雪。
両者の戦いは、互角と云っても差し支えないだろう。
そんな二人から少し離れた場所では、千影と良美が苛烈な銃撃戦を繰り広げていた。


「――千影さん、もっと頑張らないと当たっちゃうよ?」
「…………くっ」

轟く銃声、忙しい足音。
千影のすぐ傍の空間を、猛り狂う銃弾が切り裂いてゆく。
済んでの所で命を繋いだ千影は、散弾銃の照準を合わせようとする。
だがそれを遮るような形で、良美の構えたS&W M627PCカスタムが火を吹いた。

「――つ、あ……!」

千影は即座に銃撃を中断し、ぎりぎりのタイミングで上体を捻った。
真っ直ぐに迫り来る銃弾は、千影の右肩を軽く掠めていった。
千影は激痛を噛み殺して反撃しようとするが、それも良美の銃撃によって阻まれる。

49 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:04:06 ID:IqLO2v2C


50 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:04:39 ID:xEgVJbyk
 

51 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:05:34 ID:sbfcblST

古いタイプの回転式拳銃を用いている良美と、高性能の散弾銃を用いてる千影。
武器だけ見れば、どう考えても千影に分がある。
しかし休憩を取ったばかりの良美と違い、千影は未だ疲労困憊の状態だ。
故に良美は行動一つ一つの速度で千影を上回り、常に先手を取る形となっていた。

「ハァ――フ――、ハ―――」

呼吸を荒く乱しながら、千影は回避に専念し続ける。
秀でた動体視力など持たぬ千影が銃弾を避けるには、照準を合わされぬよう常に走り続けるしかない。
苦し紛れの反撃すらも許されない、余りにも一方的な展開。
それでも千影の瞳には、諦めの色など微塵も浮かんではいなかった。

(まだだ……絶対に好機は来る。トウカくんなら……絶対に、諦めない……!)

生きている限り、そして自分から勝負を捨てない限り、勝敗の行方は分からない。
桁外れの実力を誇ったネリネ相手ですら、トウカは最後まで希望を捨てず、そして絶対的な劣勢を覆したのだ。
だから、自分も諦めない。
どれだけ見苦しかろうとも、死を迎えるその瞬間まで諦めず、一縷の勝機が到来するのを待ち続ける。

「く――――は、――――あ――――!」

身体の限界を感じつつも、千影は懸命に良美の猛攻を耐え凌ぐ。
絶えず跳んだり跳ね回ったりして、敵の銃撃を躱してゆく。
そして千影が思っていたよりも早く、反撃の時は訪れた。

「…………?」

千影は激しく動き回りながらも、一抹の疑問を感じ始めていた。
それまで絶えず降り注いでいた銃弾の雨が、急に飛んで来なくなったのだ。
見れば良美は、鞄の中に片手を突っ込んだまま、狼狽の表情を浮かべている。
まさか――千影の推測を肯定するように、良美の口から焦りの言葉が零れ落ちた。

52 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:05:38 ID:IqLO2v2C


53 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:06:09 ID:HbE3p3gP



54 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:06:11 ID:xEgVJbyk
 

55 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:06:46 ID:sbfcblST

「――た、弾切れっ……!」

つまりは、そういう事だ。
あれだけ一方的に攻め立てれば、何時銃弾が尽きてしまっても可笑しくは無い。
その事実を正しく認識した瞬間、直ぐ様千影は攻めに転じた。
右手にショットガンを握り締めたまま、左手で鞄から永遠神剣第三位"時詠"を取り出す。
唯一無二の好機をモノにすべく、自身の全戦力を揃えた上で敵目掛けて疾駆する。

「……ことりくんの仇、取らせて貰うよ――!」
「ち、かげ――――さん――――!!」

千影は走りながら一発、二発とショットガンを撃ち放った。
片手での、そして動き回りながらの射撃が命中する筈も無いが、十分牽制にはなる。
今は当たらなくても良い、良美の後退を防げればそれで構わない。
焦らずとも、近距離まで詰め寄ってしまえば、広範囲に渡るショットガンの攻撃は確実に命中する筈だった。
前に進む足は決して止めぬまま、良美の後退を遮るような形で、何度も何度も引き金を絞る。
そのまま狙い通りに間合いを縮め切って、ゆっくりとショットガンの照準を定めようとして――瞬間、良美の顔に冷笑が浮かんだ。


「……莫迦だなあ、千影さん。本当に弾切れだったら、わざわざ報せてあげないよ」
「――――ッ!?」


千影が照準を定めるよりも早く、良美のS&W M627PCカスタムが水平に構えられた。
咄嗟の判断で千影が"時詠"に魔力を注ぎ込むのとほぼ同時、一発の銃声が鳴り響いた。



56 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:07:38 ID:IqLO2v2C


57 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:07:57 ID:sbfcblST


「……へぇ。まさか、今のを避けるなんてね」
「あ……ぐ…………」

結果から云えば、銃弾が千影の身体を捉える事は無かった。
千影はタイムアクセラレイト――自分自身の時間を加速する技――を発動させて、間一髪の所で難を逃れたのだ。
だがその代償として、残る全ての魔力と体力を消耗してしまった。
手足の先端にまで痺れるような感覚が奔り、喉はカラカラに乾き切っている。
最早、銃撃戦を続けられるような状態では無い。
千影と良美の距離は約15メートル。
苦しげな表情を浮かべる千影に、S&W M627PCカスタムの銃口が向けられる。

「どうやって躱したのか教えて欲しいけど……どうせ断るよね?」
「……ああ。君みたいな人間に……手を貸すつもりは無い」
「そう。それじゃ、今すぐ殺し――――!?」

そこで、良美の背後から、巨大なエンジン音が聞こえて来た。

「死ねっ死ねっ!! 佐藤さんも千影ちゃんも、皆死んじゃええええええええええッ!!」

悠人との戦闘を中断した名雪が、良美と千影を一纏めに始末すべく突撃する。
良美は死に物狂いで横に転がり込んで、迫る脅威から紙一重のタイミングで逃れた。
しかし未だ体力に余裕のある良美とは違い、千影にはもう何の力も残されていない。

「アハハハハハハハハッ、バイバイ千影さん!!」
「う、く、ァ――――――」

シャベルが容赦無く振り下ろされる。
千影は懸命に真横へ逃れようとするが、明らかに速度不足。
どう考えても避け切れない。
だが千影の危機を前にして、悠人が大人しく手を拱いている筈も無い。

58 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:08:04 ID:HbE3p3gP




59 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:08:10 ID:xEgVJbyk
 

60 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:09:05 ID:sbfcblST

「――させるかあああああああっ!!」

悠人は恐るべき勢いで駆け付けると、千影の身体を抱きかかえて跳躍した。
天より降り注ぐ鋼鉄の牙が、悠人達のすぐ真横の地面を大きく抉り取る。

「こ……の……カトンボがあああぁぁぁ!!」
「遅い――――!」

激昂した名雪がシャベルを横に払おうとするが、それは無駄だろう。
悠人は既に後方へ下がり始めており、このままショベルの射程範囲から逃れ切る筈。
横薙ぎに振るわれる鋼鉄の牙が、獲物に噛み付く事は無い。
そう――空気を引き裂く、一発の銃弾さえ無かったのなら。

「――惜しかったね、悠人君」
「…………ガアアアッ!?」

苦悶の声が木霊する。
良美の放った銃弾が、悠人の右太腿を完璧に貫いていた。
グラリ、と大きく悠人の身体がバランスを崩す。
悠人は一瞬の判断で、それまで抱き抱えていた千影を、安全圏へと突き飛ばした。
その、直後。


「あ――――――」


今度は、呻き声を上げる余裕すら無かった。
ショベルカーに搭載された鋼鉄の牙が、悠人の身体を正確に捉えていた。
悠人はゴミのように吹き飛ばされ、少し離れた地面に背中から衝突した。

61 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:09:08 ID:IqLO2v2C


62 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:09:15 ID:HbE3p3gP




63 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:10:24 ID:sbfcblST

「がはっ――――ぐ、ごふっ……!」
「ゆ、悠人くん……!!」

倒れたまま咳き込んだ悠人の吐息には、紅い血液が混じっていた。
手足の感覚は消え失せて、全身が砕け散ったような錯覚すら覚える。
圧倒的な衝撃で、内臓は酷く痛め付けられた。
肋骨の内数本は折れ、かろうじ骨折を免れた部位にも皹が入っている。

「づ……あ……ぐ……」

悠人は必死に立ち上がろうとするが、身体が反応してくれない。
どれだけ必死に命令を送っても、腕や足が思うように動かない。
それだけのダメージを、受けてしまった。

「フ――ハハ――――アハハハハハハハハハハハハッッ!!
 醜く地面を這いずり回って、カトンボにお似合いの姿だね!」

とうとう獲物を捕らえた名雪は、余裕綽々たる面持ちでショベルカーを停車させて、高々と哄笑を上げていた。
這い蹲るカトンボを天からじっくりと見下ろすのは、名雪にとってこの上無い快感だ。

「どうだどうだっ、やっぱりけろぴーは無敵なんだよ! 私は無敵なんだよ!
 あはっ、あははははははははっ!!」

気分が高揚し切った名雪は、すぐにトドメを刺そうとはせず、唯只哂い続ける。
だが名雪は少し横に視線を移し、大きな違和感を覚えた。
悠人同様に絶体絶命である筈の千影が、こちらを見ていないのだ。
単に余所見していると云う訳では無い。
千影の視線は、名雪よりも更に上方の位置へと寄せられていた。

64 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:10:27 ID:IqLO2v2C


65 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:11:11 ID:HbE3p3gP




66 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:11:57 ID:sbfcblST
「…………?」

疑問を解消すべく、名雪が頭上に視線を送ると、そこには――

「――良く頑張ったね、名雪ちゃん。お陰で悠人君達を殺せそうだよ」
「え……ひ、あ、ひああああっ!?」

嘗ての倉成武と同じように、佐藤良美がショベルカーの天井に張り付いていた。

「でもね、これでもう名雪ちゃんは用済みなの。だから――そろそろ死んでよ」

良美はS&W M627PCカスタムを取り出すと、防弾ガラス上の皹が密集した部分に狙いを定めて、思い切りトリガーを引いた。
至近距離から何度も何度も銃弾が吐き出され、同じ箇所に叩き付けられてゆく。
ピンポイントを狙ったその銃撃に耐え切れず、とうとう防弾ガラスの一部が砕け散った。
すかさず良美は、その開いた穴から片腕を侵入させる。

「ヒッ――は、はああ、ひううっ……、嫌だ、助けて、死にたくない…………っ!!」

良美を振り落とすべく、名雪が必死に機体を前進させようとするが、遅い。
良美は怯える名雪の姿を、何処までも愉しげに眺め見た後――

「さて、何が起きるかな?」

右人差し指に嵌めたフムカミの指輪を使用した。
瞬間、良美が指を向けた先――即ち、名雪に向かって幾重ものカマイタチが放たれる。

「ひぎゃぁぁぁぁぁああああああああああああああああッッ!!!」

名雪の喉から、獣の如き悲鳴が吐き出された。
荒れ狂う風の刃は、容赦無く名雪の身体を蹂躙してゆく。
服を裂き、肌を裂き、酷い箇所では血管すらも断ち切られている。
舞い散る鮮血により、防弾ガラスが真っ赤に染め上げられた。

67 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:12:02 ID:IqLO2v2C


68 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:12:59 ID:xEgVJbyk
 

69 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:13:11 ID:HbE3p3gP



70 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:13:14 ID:sbfcblST

「ぎっ……がっ……ごああ……ガァァァアアア!!」

凄まじい激痛から意識を逸らすように、名雪は操縦用のレバーを滅茶苦茶に動かした。
それは何か明確な狙いがあった訳では無い、只の苦し紛れに過ぎぬ行動だ。
だがその行動こそが、名雪の命を薄皮一枚の所で繋ぐ結果に繋がった。
まるで操縦者の苦悶に反応するかのように、ショベルカーが不規則な動きで走り出す。

「……っ、くあ、無茶苦茶、だね……!」

良美は慌てて攻撃を中断して、転げ落ちぬよう態勢を安定させる事に専念した。
ショベルカーは慌しく左右に方向転換し、その度に良美の身体を衝撃が襲う。
まるでロデオ。
暴れ狂う馬に乗っているかのような感覚。
結局このまま張り付いていては危険と判断し、良美はショベルカーから飛び降りた。

「あぐ、あうっ、ぐ……よくもよくもぉ! 殺すッ、絶対に皆殺してやるぅぅぅぅぅぅう!!!」

名雪が駆るショベルカーはそのまま、明後日の方向へと走り去って行った。
スピーカーから、苦悶と憎悪の声を撒き散らしながら。


そして地面に降り立った良美は、逃亡するショベルカーを追い掛けたりしない。
フムカミの指輪が巻き起こした現象は驚愕に値するが、そのような事に意識を取られている暇も無い。
今は生死を賭した激戦の最中であり、全員が敵対者を仕留めるべく動いているのだ。
ならば次に何が起こるなど、考えるまでもない事だろう。
良美は大地を蹴って、素早くその場から退避した。
次の瞬間、それまで良美が居た空間を散弾の群れが引き裂く。

「甘いよ千影さん。悠人君を囮にするくらいじゃないと、私の裏は掻けないよ?」
「――――っ」

71 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:13:18 ID:IqLO2v2C


72 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:14:16 ID:sbfcblST

散弾を放った張本人である千影が、焦りを隠し切れぬ顔付きになる。
良美の背後に回り込み、照準をしっかりと絞り込んでの奇襲。
千載一遇の好機だった筈なのに、それすらも読み切られてしまった。
良美はS&W M627PCカスタムに銃弾を詰め込みながら、千影をじっくりと眺め見る。

「千影さんもなかなか頑張ったと思うけど、そろそろ限界みたいだね」

その言葉に、千影は反論を返せない。
何とか自分の足で立ってはいるものの、それで殆ど限界だった。
時詠を介しての魔術はもう使えぬし、銃撃から身を躱すような動きも望めない。
度重なる連戦によって、魔力も体力も完全に底を突いているのだ。

対する良美も、万全の状態であるとは云い難い。
左手の小指は消失してしまっているし、右手にも軽くない傷を負っている。
体力も、一時間程度の睡眠では回復し切れていない。
それでも良美には未だ、動き回るだけの余力が十分にある。
とうに限界を越えている千影と比べれば、どちらが有利かなど明白だ。
両者が戦えば、一分も経たない内に決着が着くだろう。
だが、決して失念してはいけない――この場には、もう一人戦士が居る事を。

「ぐ――う――やらせる……かよっ……!」
「――悠人くん!?」

驚きの声は、千影のものだ。
満身創痍の風体を晒しながらも、悠人が懸命に起き上がろうとしていた。
口元にこびり付いた血を拭おうともせず、トウカの刀を杖代わりに用いて。
慌てて千影は、悠人の無謀な行いを制止しようとする。

73 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:14:20 ID:IqLO2v2C


74 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:14:34 ID:HbE3p3gP




75 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:15:25 ID:HbE3p3gP




76 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:15:29 ID:xEgVJbyk
 

77 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:15:56 ID:sbfcblST

「悠人くん、無茶だ……! 此処は私が――」
「駄目だ。ことりは最後までコイツに立ち向かった……腹を撃たれても戦い続けて、一矢報いたんだ。
 それなのに、俺だけ逃げる訳にはいかないさ」

それに、と悠人は続ける。

「俺は衛やお前を守るって決めたんだ! お前達を何としてでも守ってみせるって、約束したんだ!
 だから絶対、コイツに勝ってみせる!!」

そう云って悠人は、日本刀を深く構えた。
その瞳には、警戒に値するだけの強い光が宿っている。
肋骨の幾つかが折れ、内臓も酷く傷付けられているにも関わらず、良美に立ち向かおうと云うのだ。
通常ならば、まず考えられない状況。
だが良美は、目の前で繰り広げられた光景に対して、驚きなど感じていなかった。

「……やっぱりね」

良美にとって、この事態は予想の範疇。
自分は既に、過去何度も同じような経験をしている。
前原圭一も白河ことりも、追い詰めれば追い詰める程、驚異的な底力を発揮した。
そして――その度に、苦渋を舐めさせられてきた。

「私、分かったんだ。悠人君みたいなタイプの人は、どれだけ痛め付けても止まらない。
 どれだけ絶望させようとしても、奇麗事を吐き続ける」

もう、嫌という程思い知った。
こういった類の相手と戦う際には、一瞬の油断が命取りとなる。
相手がどれだけ傷付いていようとも、腹部を撃ち抜こうとも、気を抜けばその瞬間に負ける。
余分な思考は、只の足枷にしか成り得ない。

78 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:17:01 ID:8CeSwO3J


79 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:17:06 ID:IqLO2v2C


80 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:17:47 ID:sbfcblST

そう――必要なのは、純然たる殺意のみ。
相手の想いを上回る、圧倒的な憎悪のみ。

そこで良美がS&W M627PCカスタムの銃口を持ち上げ、構え終えた時にはもう銃弾が発射されていた。
三発。
群れを成した銃弾が、悠人目掛けて襲い掛かる。
悠人は上体を捻って避けようとしたが、今の身体で全てを凌ぎ切る事は不可能だった。
放たれた銃弾の一発が、悠人の左肩に突き刺さる。


「俺は……守ってみせる」

それでも、悠人は止まらない。
ことりは止まらなかったのに、自分だけが止まれる筈も無い。
トウカの刀を握り締めて、傷付いた足で一直線に駆け続ける。


「私は……憎い」

そして良美もまた、一歩も引き下がろうとはしない。
人を信じる、人を守ると云った悠人達の生き方は、絶対に認められない。
傷だらけの両手で、何度も何度も銃を撃ち放つ。


「衛を――そしてアイツの姉妹を、絶対に守ってみせる!
 もう衛が悲しむ所なんて見たくない!!」

悠人は良美の銃撃を、左右にステップする事で掻い潜った。
――これまで自分を支え続けてくれた少女、衛。
これ以上彼女が悲しむ所なんて見たくない。

81 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:17:48 ID:HbE3p3gP




82 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:17:51 ID:IqLO2v2C


83 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:18:26 ID:xEgVJbyk
 

84 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:18:36 ID:HbE3p3gP




85 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:18:59 ID:sbfcblST


「圭一君が――そして悠人君のような、偽善者達が憎い!
 私の全てを奪った世界そのものが憎い!!」

良美は弾の尽きた拳銃を仕舞い込んで、鞄から名刀"地獄蝶々"を取り出した。
――自分にとって最も大事な存在だった、霧夜エリカと対馬レオ。
彼女達を奪った世界そのものが憎い。



「だから俺は――」
「だから私は――」



二人は、互いの剣が届く位置にまで踏み込んだ。
良美は地獄蝶々を、悠人はトウカの刀を振り上げて、



「「絶対に負けられないんだぁぁぁぁあああああああ!!!」」



己が想いを思い切り叩き付ける――!!

86 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:19:01 ID:IqLO2v2C


87 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:19:35 ID:HbE3p3gP




88 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:19:47 ID:xEgVJbyk
 

89 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:20:05 ID:sbfcblST




二本の刀が鬩ぎ合う。
絶対に譲れぬ想いと想いが衝突する。
だが、それはほんの一瞬。
あっという間に均衡は破られた。


「くぅ――――!?」

甲高い金属音と共に、良美の手から地獄蝶々が弾き飛ばされる。
いかに満身創痍と云えども、高嶺悠人はラキオスのエトランジェ。
只の一般人である、そして左小指を失った良美が、斬り合いで勝てる道理など無い。

「貰ったぁぁぁぁああああ!!」

得物を失った良美目掛けて、悠人が日本刀を振り下ろそうとする。
至近距離から放たれる剣戟を、今の良美が防御する方法は存在しない。
されど――良美とて覚悟を決めし修羅。
どんな極限状態であろうとも、諦めたりしない。
守れぬと云うなら、攻撃に全力を注ぎ込むだけの事……!

「まだ、だよ…………っ!!」
「ッ――――!?」

手を伸ばせば届く程の至近距離で、良美はフムカミの指輪を使用した。
猛り狂うカマイタチが、悠人の身体を次々に切り裂いてゆく。
だが、どれも致命傷に至るようなものでは無い。
その程度の攻撃で、悠人は怯んだりしない。

90 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:20:14 ID:IqLO2v2C


91 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:20:49 ID:xEgVJbyk
 

92 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:21:31 ID:sbfcblST

「ク……オオオオォォォォォ――――!!」

悠人は風圧で吹き飛ばされながらも、刀を最後まで振り下ろした。
しかし距離を離されてしまった所為で、刀の先端しか届かない。
放たれた剣戟は、良美の左肩を浅く切り裂くに留まった。
二人はよろよろと後退して、十メートル程の間合いを置いた状態となる。

「グ、ガアァッ…………」
「あ、くうっ…………」

悠人と良美は揃って呻き声を洩らす。
最早悠人は、自力で立てているのが不思議な程の状態だ。
対する良美も相当のダメージを負っているものの、悠人に比べればまだ浅手。
身体の状態ならば良美が、素の実力ならば悠人が大きく上回っている。
故に、両者の戦いは互角。
このまま戦い続ければ、どちらが勝つか全く分からない。
だがそんな二人の戦いは、第三者の手によって終止符を打たれようとしていた。


(悠人くん、悪いけど……横槍を入れさせて貰うよ。
 君を……此処で死なせる訳には、いかないからね……)

ショットガンに銃弾を詰め終えた千影が、良美の横顔に照準を合わせる。
先程までは悠人を巻き込む可能性もあった為、狙撃する事が出来なかった。
しかし両者の間に十分な距離がある今ならば、確実に良美だけを仕留められる筈。
一騎打ちの邪魔をするのは少々気が引けるが、今は悠人の命を守るのが一番重要だ。
千影は引き金を絞ろうとして――そこで、絶望的な何かが近付いて来るのを感じ取った。

93 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:21:35 ID:IqLO2v2C


94 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:23:12 ID:sbfcblST

「な――――」

思わず千影は言葉を失った。
良美も悠人も戦いを中断して、迫り来る物体に視線を寄せている。
黒光りしているボディ、特徴的な煙突。
ショベルカーを遥かに凌駕する圧倒的スケール、スピード。
見間違う筈が無い。
木々を薙ぎ倒して疾駆するソレは、蒸気機関車と呼ばれている代物だった。

「っ…………!!」

良美の判断は素早かった。
ショベルカーならばともかく、あんなモノが相手では犬死にするだけだ。
燃え盛るような憎しみを抑え込んで、直ぐ様逃亡を開始した。
先程弾き飛ばされた地獄蝶々を拾い上げて、即座にデイパックに押し込もうとする。
慌てていたのもあり、デイパックから何かを落としてしまったが、そんな些事に構ってはいられない。
一分一秒でも早くこの場を離れるのが、生き延びる為の絶対条件。
そのまま良美は脇目も振らずに、全速力で戦場から離脱した。


「――ハ、――ハァ――フ――」

斬られた左肩がじくじくと痛む。
銃撃の反動を押さえ続けた所為で、両手は感覚が無くなり掛けている。
悠人と千影には十分な損害を与える事が出来たし、後は放っておいても、あの機関車が始末してくれる筈。
だが今回のような戦い方をずっと続けていては、とても身体が保たないだろう。
……いい加減、限界だ。
敵は大抵徒党を組んでいるのだから、こちらも集団化しなければ、余りにも不利過ぎる。

95 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:23:15 ID:IqLO2v2C


96 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:23:42 ID:xEgVJbyk
 

97 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:24:57 ID:sbfcblST

「なら――狙い目は、殺し合いに乗った人だね」

恐らくもう自分の悪評は広まり切ってしまっただろうが、殺人遊戯を肯定した者相手ならば、未だ交渉の余地はある。
自分と同じく、人数的な不利を痛感している殺戮者は多い筈なのだ。
交渉に成功したとしても、勝ち残れるのは一人だけである以上、信頼の伴わぬ一時的な協力関係に過ぎない。
だが、それで十分。
勝ち残れる確率が1%でも上がるのなら、何であろうと構わない。

「私は負けない……。どんな手を使ってでも、絶対に偽善者達を根絶やしにしてやる……っ!」

何処までも昏い声で紡がれる独白。
傷だらけになって尚、少女は全てを憎み続ける。


     ◇     ◇     ◇     ◇


佐藤良美が逃亡した後も、未だ戦場の緊張感は薄れていない。
千影と悠人は肩を並べて、眼前の絶望を只眺めていた。

「不味いな……」
「ああ……まさか……あんな物まで持ち出してくるとはね……」

逸早く逃亡した良美と違い、千影と悠人は未だその場に留まっている。
千影の体力は底を突いているし、悠人は右足を撃ち抜かれているのだから、逃げようとしても無駄だろう。
機動力。
その一点に於いて、千影達は絶望的な苦境に立たされていた。
機関車は悠人達の前方100メートル程の所まで来ると、その動きを止めた。

98 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:25:14 ID:IqLO2v2C


99 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:25:28 ID:xEgVJbyk
 

100 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:26:39 ID:sbfcblST

「フフフフ……アハハハハハハハハハハハッ!!!」
「名雪くん……」

機関車に取り付けられた拡声器から、水瀬名雪の笑い声が放たれる。
名雪が手に入れた『最強の機械』とは、殺人遊戯の開始直後に発見した、機関車の事だったのだ。
千影にとっても見覚えのあるソレは、二つの客車を切り離し、機関車本体のみの状態になっていた。
線路が無くとも運用出来る仕組みになっているこの特殊機関車は、走る殺戮兵器と云っても過言では無いだろう。

「もう許してあげないよ。凄く痛かったんだから……凄く恐かったんだからあ!!
 千影ちゃん達も佐藤さんも、グチャグチャにしてやるぅぅぅぅっ!!!」

名雪はそう云って、機関車を発進させた。
点在する木々など、足止めにすらならない。
助走距離が短かった為に速度こそ緩慢だが、生身の人間に止められるような代物では無い。
圧倒的質量を誇る車体が、容赦無く千影達に襲い掛かる。

「クソッ、こんなの反則だろっ!」

悠人は毒付きながらも、傷付いた右足に鞭打って、迫る驚異から身を躱した。
直ぐ様ベレッタM92Fに予備マガジンを詰め込んで、射撃態勢へと移行する。
千影もまたショットガンを構え、二人は同時に斉射を行った。
だが、そんな抵抗など無意味だろう。
蟻がいくら噛み付いた所で、巨像を倒す事など不可能なのだから。

「っ……やっぱり駄目か」

101 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:26:42 ID:IqLO2v2C


102 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:27:03 ID:HbE3p3gP




103 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:27:45 ID:xEgVJbyk
 

104 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:27:55 ID:sbfcblST

悠人が苦々しげに奥歯を噛み締める。
機関車を護る装甲は、造作も無く銃弾を弾き飛ばした。
恐らくは刀で殴り掛かろうとも、同じ結末に終わるだろう。
あのショベルカーには窓ガラスという弱点があったが、この殺戮兵器にはそんなモノ存在しない。
爆発物でも無い限り、アレを破壊するのは不可能だ。
機関車は少し離れた場所で旋回し、休憩の時間など与えぬと云わんばかりに突撃を再開した。
迫る狂風。

「くあっ……」
「…………っ」

悠人達は今の自分達が出し得る全速力で跳躍したが、それでも間一髪の回避だった。
突風の煽りを受けて、ごろごろと地面に転がり込んでしまう。
明らかに前よりも、回避に余裕が無くなっている。

「それそれっ、どんどんいくよおおおおぉぉぉ!!」

名雪が駆る機関車は少しずつ助走距離を延ばし、それと同時に速度も上げてゆく。
周囲に生えていた木という木は根こそぎ踏み潰され、残るは平らな荒地だけだ。
名雪は自らの手により創り上げた処刑場で、小さき敵対者達を断罪する。
巨大な彗星と化した機関車は、またも突撃の余波だけで悠人達を薙ぎ倒した。

「あぐっ――く、ハァ――ハ……。千影……平気か?」
「は――あ、ふぅ……平気なように……見えるかい?」

悠人と千影は疲弊した身体を叱り付けて、よろよろと立ち上がった。
何とか直撃だけは避けているものの、少しずつだが確実に追い詰められている。
敵の突撃はどんどん鋭さを増してゆくし、自分達の体力も削られてゆく。
このままではどう考えてもジリ貧だ。
守りに徹していても道が開かぬと云うのなら――玉砕覚悟で、攻撃を仕掛けるしかない。

105 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:27:58 ID:IqLO2v2C


106 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:29:04 ID:sbfcblST

「――悠人くん……これを……使ってくれ」
「……時詠か」

千影が差し出したのは、永遠神剣第三位"時詠"だった。
銃撃が全く通じぬ以上、もう永遠神剣を使用するしか無いと判断したのだ。
千影はもう魔力が尽きてしまったが、悠人は未だ魔力を消費していない。
ならば唯一の打開策である時詠を、使用可能な者の手に渡すのは当然だろう。
敵が強大な機関車であるとは云え、以前悠人が見せた大砲の如き破壊力ならば、僅かながら勝機はある筈だった。
しかし、時詠を受け取った悠人の表情は苦悩に歪んでいた。

(……どうすれば良いんだ? 俺はコレを……使うしかないのか?)

千影には知る由も無い事だが――悠人は時詠を完全に使いこなす事が出来る。
自身の持ち得る全てのマナを時詠に注ぎ込めば、敵が戦闘機であろうとも負ける気はしない。
ましてや攻撃手段が体当たりのみの機関車など、相手にもならない。
だが時詠の使用には、余りにも致命的なリスクが伴うのだ。

強力な奇跡を起こすには、それだけの代償が必要。
悠人が力を引き出そうとする限り、時詠は代償としてマナを要求し続けるだろう。
悠人自身がマナ切れを起こした場合は、外部からの搾取を命じる筈。
そして身体がマナで構成されている悠人は、その命令に抗えない。
もしマナ切れを起こしてしまえば、悠人は無差別に人を襲い続けるだけの悪鬼と化してしまうのだ。

今時詠を使わなければ、確実に自分も千影も殺される。
かと云って時詠を使ってしまえば、島の人間全てに危険が及ぶかも知れない。
究極の二択。
だが――考えている暇など無い。
現に今も、狂人に操られし暴走機関車が、悠人達を押し潰すべく迫っているのだから。

107 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:29:12 ID:IqLO2v2C


108 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:29:17 ID:xEgVJbyk
 

109 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:29:34 ID:HbE3p3gP




110 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:30:39 ID:sbfcblST

(大丈夫……マナさえ切らさなければ良いんだ!)

強引にそう結論付けて、思考を中断させる。
そうして悠人は、自身が秘めたるマナの一部を、時詠へと送り込んだ。
瞬間、身体中の隅々にまで力が溢れて来る。
全身の細胞一つ一つまでもが活性化してるような感覚。
撃ち抜かれた右足の痛みすらも、今この瞬間だけは気にならない。

「よし……これなら………!」

機関車に向かって、凄まじい勢いで駆け出す。
マナを全力で注ぎ込んだ訳では無いのだから、正面から機関車に対抗するのは不可能だ。
だが、わざわざ正面勝負を挑む必要などない。
巨大な機械を打倒する方法ならば、先程佐藤良美が示したばかりだ。

「アハハハハハハッ、カトンボが自分から潰されに来たよ!! けろぴーに勝てるとでも思ってるの!?」
「…………」

名雪が見下すような言葉を投げ掛けてきたが、悠人は答えない。
時詠を何度も使えば、確実に身体を乗っ取られてしまう。
チャンスは多く見積もっても二回。
故に全神経を、この衝突に集中させる。

「……ここだッ!」
「――――――えっ!?」

機関車が前方10メートル程まで迫った所で、悠人はタイムアクセラレイトにより自身の時間を加速させた。
続けてジェット気流の如き速度で、機関車の真横にまで回りこんで併走する。
狙いは只一つ、機関車本体に飛び移って内部へと侵入し、操縦者を直接叩く事だ。
悠人はその目論見を成功させるべく、機関車の屋根に向かって跳躍する。
だが、その刹那――突如機関車が方向転換した。

111 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:30:42 ID:IqLO2v2C


112 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:31:19 ID:HbE3p3gP




113 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:32:15 ID:sbfcblST

「やらせないよおおおおっ!!」
「――――ッ!?」

名雪とて莫迦では無い。
そう何度も何度も、同じ手を喰らったりはしない。
名雪は悠人から見て反対側へと機関車をカーブさせて、飛び移られるのを未然に防いだ。
舌打ちしながら着地する悠人を尻目に、名雪が駆りし機関車はその場を離れてゆく。
勝負は仕切り直し。
そして今度は名雪も、すぐに突撃を仕掛けるような真似はしない。


「アハ……もう遊んであげないよ」

悠人が見せた怪物じみた動きは、名雪の警戒心を最大限にまで引き上げていた。
もう、無闇矢鱈に中途半端な突撃を繰り返したりはしない。
放つべきは、必殺にして最強の一撃のみ。

「あはっ……あははっ……私は行くんだよ……皆を殺して!!」

距離にして600メートル以上。
機関車は、先程までの数倍に値する助走距離を取った。
続けて大きく方向転換して、先端を悠人の方へと向ける。
そのまま真っ直ぐに、動力部をフル稼働させつつ疾駆した。

「祐一が待ってる黄金卿へ行くんだよ、アハハハハハハハハハハハッ!!!」

巻き起こる暴風。
機関車はあっと云う間に加速して、時速100キロを突破した。
超高速で駆ける巨大な質量は、ミサイルにも匹敵する破壊力を秘めている。

114 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:32:18 ID:IqLO2v2C


115 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:32:58 ID:HbE3p3gP




116 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:33:37 ID:sbfcblST


「時詠よ、俺に力を貸してくれ…………!」

本気を出した敵に呼応するように、悠人は前以上のマナを時詠に注ぎ込んだ。
激しい頭痛に襲われたが、未だ身体を乗っ取られる程では無い。
自分の身体能力が大幅に向上しているのが分かる。
今度こそ、外さない。
何としてでも機関車に取り付いて、そして激闘に終止符を打ってみせる。

「――行くぞ!!」

悠人は吹き抜ける旋風と化し、敵を打ち破るべく疾駆する。
機関車とは比べるべくも無いが、悠人の駆ける速度もまた、人間の限界を大幅に上回っていた。
数百メートルあった両者の距離は、あっと云う間に縮まってゆく。
だがそこで予想外の事態が起き、悠人は大きく目を見開いた。

「まずは……千影ちゃんからだよおおおおぉぉ!!」
「な――っ…………!?」

名雪はハンドルを大きく切って、機関車の進行方向を転換させた。
馬鹿正直に悠人ばかり狙ってやる必要などない。
戦力的に劣る者から倒して行くのが、兵法の定石だ。
横から駆け寄る悠人など気にも留めず、千影目掛けて突撃する――!


「く――――」

117 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:33:42 ID:IqLO2v2C


118 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:34:00 ID:xEgVJbyk
 

119 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:34:55 ID:sbfcblST

千影は回避を試みるどころか、逆にショットガンを構えていた。
機関車がこちらに向きを変えた瞬間、何をやっても躱せないと理解出来てしまった。
防御が不可能である以上、無意味と知りつつも、奇跡に期待して攻撃するしかないのだ。
機関車の車輪に狙いを絞って、弾切れまでショットガンを連打する。
しかし案の定、機関車の勢いが止まる事は無かった。

打つ手の無くなった千影へと、落雷の如く機関車が迫る。
回避も反撃も不可能、完全なるチェックメイト。
そして悠人は、そんな光景を前にして――


「千影ぇぇぇぇぇ――――!!」

機関車の後を追い、全身全霊の力で走る。
タイムアクセラレイトを発動させて、身体能力も強化させて。
右足の傷口から噴き出す鮮血など、まるで気にせずに。
それでも、間に合わない。
千影を抱き抱えて退避する程の時間は、とても生み出せない。
力が、足りない。


「…………っ」

悠人の左手には、唯一千影を救い得る短剣が握り締められている。
怖い。
コレを全力で使えば、確実に自分が自分でなくなってしまう。
島の人間全てに牙を剥く、只の悪鬼と化してしまう。
自分の手で、仲間の命を奪ってしまうかも知れない。
それは、自分自身の死などより余程恐ろしい。

120 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:35:01 ID:IqLO2v2C


121 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:35:45 ID:xEgVJbyk
 

122 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:36:26 ID:sbfcblST


「それでも、俺は――」

そうだ、自分は誰と約束した。
何を誓った。


――『君達二人は俺が守ってやるよ』

自分は、衛と出会った時に約束した。
なら、守らないと。
自分がどうなってしまおうと、守らないと。


――『悠人さんも千影ちゃんを守ってあげて!』

自分は、衛と別れた時に約束した。
なら、何を引き換えにしてでも、守らないと。

……例えこの身が、悪鬼と化そうとも。


「――俺はっ……! 衛を……千影を……守りたいんだああああああああああああッッ!!!!」


瞬間、時詠の刀身から激しい光が噴出した。
信じられない程の力が、止め処も無く溢れ出して来る。
即座に悠人は、視認すら困難な速度で大地を駆け抜けた。
弾丸かと見紛おうその速度は、先程までの比では無い。

123 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:36:31 ID:IqLO2v2C


124 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:37:29 ID:HbE3p3gP




125 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:37:30 ID:xEgVJbyk
 

126 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:38:31 ID:sbfcblST

「ハ――――ア――――!」

続けてタイムアクセラレイトを用いて、自身の時間を最大限に加速させ、それと同時にデイパックへと片手を伸ばした。
取り出したるはカルラの剣。
優に二メートルを超える、強力無比な大剣だ。
悠人は機関車の真横に並び掛けて、右手一本で大剣を振り上げた。
桁外れの巨重を、人間離れした力で思い切り叩き落す。

「ウォォオオオオオオオオ――――――!!!」
「ひああああああああああああッッ!?」

爆撃の如き剣戟が、次々に機関車の側壁へと打ち込まれる。
その度に機関車全体が大きく揺れ、少しずつ歪に変形してゆく。
名雪の悲鳴と悠人の咆哮、そして大気を振動させる轟音が響き渡る。

「ひ、あ、う、ああああああああああああああああっ…………!」

放たれた剣戟は実に二十発以上。
攻撃開始から決着まで要した時間は、ほんの僅か。
凄惨にひしゃげた機関車が、衝撃に耐え切れなくなって横転した事で、決戦の幕は下ろされた。




「――悠人、くん」

殺戮兵器は完全に破壊され、千影の視界には、悠人の背中だけが映っている。
千影は眼前で繰り広げられた光景を前にして、只立ち尽くす事しか出来なかった。
自分が時詠を使用した時とは、比べ物にすらならない。
時詠を持った悠人は、正しく無敵の存在だった。

127 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:38:34 ID:IqLO2v2C


128 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:39:05 ID:xEgVJbyk
 

129 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:39:25 ID:HbE3p3gP




130 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:40:35 ID:sbfcblST

しかし何故悠人は、嘗て時詠の力を試した時に、制御出来ないなどと云ったのだろうか。
どう考えても、完璧に使いこなしてるようにしか思えない。
湧き上がった疑問を解消すべく、千影は悠人に歩み寄ろうとする。
だがその動きは、突如放たれた怒声によって遮られた。

「――来るなっ!!」
「…………え?」

背中を向けたまま、悠人が拒絶の声を発していた。
良く見ると、悠人の背中は小刻みに震えている。
酷い違和感が、千影の脳裏に沸き上がる。

「頼む――今すぐ、……ぐっ、此処から……離れてくれ……!!」
「…………っ!? 悠人くん……一体、どうしたんだい……?」

苦しげな声を洩らす悠人に、千影は動揺を隠し切れない。
何かが、決定的に不味い。
背筋はおろか、身体全体が凍り付くような感覚。
ネリネが力を解放したあの時と同様、絶望的な予感が膨れ上がってゆく。
そしてその予感は、次に悠人が放った言葉で現実となった。

「俺はマナを、使い過ぎた、んだっ……! ……俺の身体は……もう直ぐ、乗っ取られるッ……!!
 全ての人を殺し尽くして、マナを奪うだけの……、ぐうぅぅっ、……悪魔になってしまう……!!」
「な――――っ……!?」

余りにも衝撃的な告白。
そこで、千影は気付いた。
時詠から放たれている光が、徐々に黒く変色している事に。
悠人から感じられる魔力の波動が、どんどん邪悪な物へと変貌していっている事に。
千影が二の句を告げぬ中、悠人は言葉を続ける。

131 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:40:47 ID:IqLO2v2C


132 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:41:50 ID:xEgVJbyk
 

133 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:42:02 ID:HbE3p3gP




134 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:42:03 ID:8CeSwO3J


135 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:42:31 ID:sbfcblST

「だからっ……早く、……ぐああっ……逃げるんだ! このままじゃ俺は……お前を、殺してしまうっ……!!」

悠人を中心に、荒れ狂う暴風が渦巻き始めた。
肥大化してゆく殺気は、悠人の言葉が決して嘘偽りでないと証明している。
それでようやく千影は、何故悠人が時詠を持とうとしなかったのか、その理由に思い至った。
恐らく悠人は、この事態を予め予測していたのだ。
マナを使い過ぎてしまえば、その反動で自分がどうなってしまうか、理解していたのだ。

「け……けど、君を放ってなんて……」
「良いから、……があああっ、行けっ……! 衛を守れるのは……もう、お前しか居ないんだから……ッ!!」
「――――っ」

千影は俯いたまま、ぎゅっと唇を噛んだ。
そうだ――悠人は未だ、衛が死んでしまったと云う事実を知らないのだ。
見れば悠人は、滝のような汗を流しながらも、必死に衛の事を気遣っている。
その様子を見ているだけでも、悠人と衛がどれだけ深い絆を培ってきたのか、容易に推し量る事が出来た。

「頼むから……逃げて、……俺の代わりに、お前が……衛を守ってくれ……! 悪魔と化した高嶺悠人を……倒してくれ……!!」
「でも、悠人くん…………」

真実を伝えなければならない。
衛がもう死んでしまったと、教えてあげなければならない。
意を決した千影は、衛の死を伝えようとする。

136 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:42:36 ID:HbE3p3gP




137 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:42:49 ID:IqLO2v2C


138 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:43:18 ID:xEgVJbyk
 

139 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:43:50 ID:HbE3p3gP




140 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:43:56 ID:sbfcblST


「衛くんは――――、っ…………」


だが、最後まで云い切る事は出来なかった。
……云えない。
高嶺悠人という人格は、程無くして消滅するだろう。
最後の最後に知るのが、守りたかった者の死だなんて、余りにも残酷過ぎる。
だから千影は、一つだけ嘘を吐く事にした。

「分かったよ、悠人くん……。衛くんは……絶対に私が守ってみせるから……安心してくれ……」

悠人はもう答えない。
自我を保つのに必死なのか、唯只苦悶の声を上げ続けているだけだ。
それでも千影には、悠人の背中が少しだけ微笑んだように見えた。

「また……来世……」

最後にそれだけ告げると、千影は素早く行動を開始した。
地面に落ちていたタロットカードを拾い上げて、デイパックへと放り込む。
他に使えそうな物が落ちていない事を確認してから、一目散に走り出した。



「っ――――う、は――――」

141 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:44:00 ID:IqLO2v2C


142 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:45:09 ID:sbfcblST

千影は疲弊し切った体を酷使して、何とか安全圏まで離脱した。
近くに生えていた木に、力無く持たれ掛かる。
もう、何が何だか分からない。
この島は何もかもが異常過ぎるのだ。
四人居た姉妹は、もう自分一人だけになってしまった。
そして、第一回放送までに出会った三人の人間。
水瀬名雪は狂人と化して、激闘の末に死んだ。
直接確認した訳では無いが、あの状況で生きているとはとても思えない。
白河ことりも死んだ。
川澄舞は、何が原因かは分からないが、殺し合いに乗ってしまった。

この分では、どれだけの仲間が無事に病院へ辿り着けているか分からない。
高嶺悠人も、恐らくは殺人鬼へと変貌を遂げてしまっただろう。
もう、辞めたい。
全てを諦めて、只闇に融けていたい。

「けど……私は、未だ生きている。未だ……戦えるんだ」

そうして、千影は再び立ち上がった。
病院を目指して、一歩一歩進み始める。
此処で生きる意志を放棄するのは、散っていった仲間達への裏切り行為に他ならないから。
どれだけ傷付こうとも、最後まで足掻き続けよう。


     ◇     ◇     ◇     ◇

143 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:45:18 ID:IqLO2v2C


144 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:45:24 ID:xEgVJbyk
 

145 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:45:35 ID:HbE3p3gP




146 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:46:18 ID:HbE3p3gP




147 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:46:39 ID:sbfcblST


「あ……ぐぅ……ううっ……く、っそぉぉ……!」

朝日の降り注ぐ平原の中を、名雪は懸命に這い進んでいた。
機関車が横転した際、何とか一命を取りとめはしたが、その時に負った怪我は重い。
砕け散った鉄片が、脇腹に深々と突き刺さっている。
左足の骨は粉々に砕け散って、最早まともに動かす事は不可能だろう。
それでも尚、名雪は瞳に執念を宿して、安全な場所まで逃れようとする。

「嫌、だ……。あゆちゃんを……、皆を殺すまで……死んで、堪るもんかあぁぁぁ……!!」

月宮あゆへの、そして全参加者への殺意。
それが、満身創痍の名雪の身体を突き動かしていた。
感覚の麻痺し始めた両腕を使って、少しずつ地面を進む。
まだだ。
まだ終わらない。
傷は相当深いものの、致命的なレベルにまでは達していない。
しっかりとした治療を行えば、十分に命を繋げるだろう。
そして生きている限りは、まだパワーショベルカーを動かせるのだが――

「駄目……ショベルカーじゃ足りないよ……。もっと強い、けろぴーを……見つけないとっ……」

蒸気機関車を使っても、自分は敗北を喫してしまった。
パワーショベルカー如きで、これから先の戦いを勝ち抜ける筈が無い。
更に強力な機械――例えば戦闘機や戦艦の類等を、見つけねばならない。
まずは治療、そして次に新しいけろぴーを探すのだ。
今後の方針を固めた名雪は、前方に広がる森を目指して、更に進もうとする。

148 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:46:40 ID:IqLO2v2C


149 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:47:16 ID:xEgVJbyk
 

150 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:47:33 ID:HbE3p3gP




151 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:48:08 ID:sbfcblST

「…………?」

だがそこで、名雪は右足に妙な感触を覚えた。
妙に熱い。
例えるのなら、ホッカホカのカイロを押し付けられたような感じ。
違和感の正体を確かめるべく名雪が振り返ると――右足から、短剣が生えていた。

「いぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

途端に激痛が脳へと伝達され、名雪は壮絶な叫び声を上げた。
顔を上げると、先程機関車を破壊したあの男――高嶺悠人が立っていた。
悠人は、ゾッとするくらい冷たい目を湛えている。
そして、悠人の手に握り締められた時詠が、再び名雪の身体へと突き立てられた。

「あああああああああああ」

時詠の刀身が、根元までずぶっと名雪の左腕に沈み込んだ。
冗談のような量の鮮血が、地面に生い茂る草々を紅く染め上げる。
想像を絶する苦痛は、徐々に名雪の理性を奪い去ってゆく。

「やめてッ、たすけてッ、ホント痛いの――――ひぎいいいいぃぃっっ!」

あれ程根深かった筈の憎しみすら捨てて、必死に助命を懇願したが聞き入れられない。
悠人は何処までも無慈悲に、時詠を何度も何度も振り下ろし続ける。

152 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:48:43 ID:HbE3p3gP




153 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:48:49 ID:xEgVJbyk
 

154 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:49:12 ID:sbfcblST


名雪の目に、
肩に、
腕に、
手に、
腹に、
足に、
冷たい刃が突き刺さる。


悠人がようやく手の動きを止めた時、彼の眼下には只の肉塊が転がっているだけだった。
狂気に取り憑かれた少女――水瀬名雪は、地獄のような責め苦の中で死を迎えた。


「マナ……を……」

息絶えた獲物にはもう見向きもせずに、悠人は落ちていたデイパックだけを回収する。
今の彼を突き動かすのは、只一つの衝動。
意思を封じられた永遠神剣に、唯一残されていた本能。
即ち、生けとし生ける全ての存在から、マナを搾取する事だけである。

「もっと……マナを…………!」

だから、悠人は戦い続ける。
満身創痍の身体を酷使して、目に付くモノ全てを抹殺しようとする。
守ると誓った仲間達にさえ、容赦無く牙を剥く。
ひゅうひゅうと吹き荒れる風の音。
それはまるで、彼の泣き声であるかのようだった。

155 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:49:16 ID:IqLO2v2C


156 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:50:26 ID:sbfcblST






【水瀬名雪@kanon 死亡】


【D-5 ホテル/2日目 黎明】
【蟹沢きぬ@つよきす-Mighty Heart-】
【装備:拡声器】
【所持品:竜鳴館の血濡れのセーラー服@つよきす-Mighty Heart-、地図、時計、コンパス
     支給品一式x3、投げナイフ一本、ハクオロの鉄扇@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、
     麻酔薬入り注射器×2 H173入り注射器×2、食料品沢山(刺激物多し)懐中電灯、単二乾電池(×4本)】
【状態:強い決意、両肘と両膝に擦り傷、左手指先に切り傷、数箇所ほど蜂に刺された形跡、首に麻酔の跡】
【思考・行動】
基本:ゲームに乗らない人間を助ける。ただし乗っている相手はぶっ潰す。
0:つぐみ達の帰りを待つ
1:純一についていく
2:圭一、武を探す
3:ゲームをぶっ潰す。
4:よっぴーへの怒り
5:純一への不思議な感情
【備考】
※仲間の死を乗り越えました
※アセリアに対する警戒は小さくなっています
※宣戦布告は「佐藤」ではなく「よっぴー」と叫びました。
※つぐみを完全に信用しました。つぐみを椰子(ロワ不参加)に似てると思ってます。
※鷹野の発言は所々に真実はあっても大半は嘘だと思っています。
※純一と絆が深まりました。純一への不思議な感情を持ち始めました。
※悠人と情報交換を行いました

157 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:50:30 ID:IqLO2v2C


158 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:50:32 ID:xEgVJbyk
 

159 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:51:34 ID:sbfcblST


【朝倉純一@D.C.P.S.】
【装備:釘撃ち機(16/20)、大型レンチ】
【所持品:支給品一式x4 エルルゥの傷薬@うたわれるもの オオアリクイのヌイグルミ@Kanon クロスボウ(ボルト残26/30)
      ヘルメット、ツルハシ、果物ナイフ、昆虫図鑑、スペツナズナイフの柄虹色の羽根@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:若干の精神疲労・強い決意・血が服についている、顔がボコボコ、口の中から出血、頬に青痣、左腕と右足太ももに銃創(治療済み)】
【思考・行動】
基本行動方針:人を殺さない 、殺し合いに乗ってる人間を止め全員での脱出
0:つぐみ達の帰りを待つ
1:北川をホテルで待つ
2:つぐみと蟹沢で武を探す
3:つぐみと蟹沢を守り通す
4:圭一を探す
5:さくらとことりをちゃんと埋葬したい
6:理想を貫き通す
【備考】
※純一の参加時期は、音夢シナリオの初キス直後の時期に設定。
※つぐみとは音夢の死を通じて絆が深まりました。
※北川、梨花、風子をかなり信用しました。 悠人もそれなりに。
※蟹沢と絆が深まりました。
※自分自身をヘタレかと疑ってます。
※佐藤良美をマーダーとして警戒しています。 鳥も参加してる事も知りました。
※盗聴されている事に気付きました
※雛見沢症候群、鷹野と東京についての話を、梨花から聞きました。
※鷹野を操る黒幕がいると推測しています
※自分達が別々の世界から連れて来られた事に気付きました
※純一達の車はホテルの付近に止めてあり、キーは刺さっていません。燃料は軽油で、現在は約三分の二程消費した状態です。
※山頂に首輪・脱出に関する重要な建物が存在する事を確認。参加者に暗示がかけられている事は半信半疑。
※山頂へは行くとしてももう少し戦力が整ってから向かうつもり。
※悠人と情報交換を行いました

160 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:51:38 ID:IqLO2v2C


161 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:51:52 ID:xEgVJbyk
 

162 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:52:07 ID:sbfcblST



【E-5 下部/2日目 黎明】
【小町つぐみ@Ever17 -the out of infinity-】
【装備:鉈@ひぐらしのなく頃に祭、スタングレネード×6、ミニウージー(6/25)】
【所持品:支給品一式x3、ベレッタ M93R(18/21)、天使の人形@Kanon、バール、工具一式、暗号文が書いてあるメモ、
      バナナ(台湾産)(3房)、倉成武のPDA@Ever17-the out of infinity-、倉田佐祐理の死体の写真】
【状態:健康、肉体的疲労小】
【思考・行動】
基本:武と合流して元の世界に戻る方法を見つける。 ゲームを終わらせる。
0:まずは病院に向かう
1:病院に到着後、協力者を連れてホテルに戻る
2:武を探す、武を信じる
3:ゲームに進んで乗らないが、自分達と武を襲う者は容赦しない
4:圭一を探す(見つければ梨花達の事を教える)
5:四姉妹の話が真実か確かめる
【備考】
赤外線視力のためある程度夜目が効きます。紫外線に弱いため日中はさらに身体能力が低下。
参加時期はEver17グランドフィナーレ後。
※純一 とは音夢の死を通じて絆が深まりました。
※音夢とネリネの知り合いに関する情報を知っています。
※北川、梨花をある程度信用しました。
※投票サイトの順位は信憑性に欠けると判断しました。
※きぬを完全に信用しました。
※鷹野の発言は所々に真実はあっても大半は嘘だと思っています。
※倉田佐祐理の死体の写真は額の銃痕が髪の毛で隠れた綺麗な姿。撮影時間(一日目夕方)も一緒に写っています。
※悠人と情報交換を行いました

163 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:52:39 ID:HbE3p3gP




164 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:53:12 ID:sbfcblST





【F-4下部 /2日目 早朝】
【佐藤良美@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:フムカミの指輪(残使用回数0回)@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、破邪の巫女さんセット(巫女服のみ)】
【所持品:支給品一式×3、S&W M627PCカスタム(0/8)、S&W M36(5/5)、
 錐、食料・水x4、目覚まし時計、今日子のハリセン@永遠のアセリア(残り使用回数0回)、
 大石のデイパック、地獄蝶々@つよきす、S&W M627PCカスタムの予備弾3、.357マグナム弾(40発)、肉まん×5@Kanon、オペラグラス、医療品一式】
【状態:疲労大、左肩に銃創と穴(治療済み)、重度の疑心暗鬼、巫女服の肩の辺りに赤い染み、右手に穴・左手小指損失(応急処置済み)、左肩に浅い刀傷】
【思考・行動】
基本方針:あらゆる手段を用いて、優勝する。
1:ゲームに乗った者と共闘関係を築く(行き先は次の書き手さん任せ)
2:魔法、魔術品を他にも手に入れておきたい
3:あらゆるもの、人を利用して優勝を目指す
4:いつか圭一とその仲間を自分の手で殺してやりたい

【備考】
※ハクオロを危険人物と認識。(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※大空寺あゆ、ことみのいずれも信用していません。
※大石の支給品は鍵とフムカミの指輪です。 現在鍵は倉成武が所有
※商店街で医療品とその他色々なものを入手しました。 具体的に何を手に入れたかは後続書き手任せ。ただし武器は無い)
※襲撃者(舞)の外見的特長を知りました。

165 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:53:49 ID:xEgVJbyk
 

166 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:54:02 ID:HbE3p3gP




167 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:54:04 ID:sbfcblST





【E-5下部 /2日目 早朝】
【千影@Sister Princess】
【装備:トウカのロングコート、ベネリM3(0/7)、12ゲージショットシェル103発】
【所持品1:支給品一式×7、九十七式自動砲の予備弾95発、S&W M37 エアーウェイト弾数0/5、コンバットナイフ、タロットカード@Sister Princess、
 出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×7 9ミリパラベラム弾68発】
【所持品2:トカレフTT33の予備マガジン10 洋服・アクセサリー・染髪剤いずれも複数、食料品・飲み物多数】
【所持品3:朝倉音夢の生首(左目損失・ラム酒漬け) 朝倉音夢の制服 桜の花 びら コントロール室の鍵 ホテル内の見取り図ファイル】
【所持品4:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』、デザートイーグルの予備弾92発】
【所持品5:C120入りのアンプル×8と注射器@ひぐらしのなく頃に、ゴルフクラブ、各種医薬品】
【所持品6:銃火器予備弾セット各100発(クロスボウの予備ボルト80、キャリバーの残弾は50)、 バナナ(フィリピン産)(5房) 】
【状態:洋服の上から、トウカのロングコートを羽織っている。右肩軽傷、
 両手首に重度の擦り傷、左肩重傷(治療済み)、魔力残量皆無、肉体的疲労極大、深い深い悲しみ】
【思考・行動】
基本行動方針:罪無き人々を救い、殺し合いに乗った者は倒す。
1:病院へと向かう(疲労のため進行速度遅め)
2:悠人への対処法を考える
3:また会う事があれば智代を倒す
4:永遠神剣に興味
5:北川潤、月宮あゆ、朝倉純一の捜索
6:舞を何とかしたい

※四葉とオボロの事は悠人には話してません
※千影は原作義妹エンド後から参戦。
※ハクオロを強く信頼。
※所持品3の入ったデイパックだけ別に持っています。

168 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:54:09 ID:IqLO2v2C


169 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:55:17 ID:xEgVJbyk
 

170 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:55:41 ID:HbE3p3gP




171 : ◆guAWf4RW62 :2007/10/10(水) 21:56:25 ID:sbfcblST




【E-4・5境界線 /2日目 早朝】
【高嶺悠人@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【装備:永遠神剣第三位"時詠"@永遠 のアセリア-この大地の果てで-】
【所持品1:支給品一式×5、バニラアイス@Kanon(残り6/10)、予備マガジン×2、暗視ゴーグル、FN−P90の予備弾、電話帳】
【所持品2:カルラの剣@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、竹刀、トウカの刀@うたわれるもの、ベレッタM92F(9mmパラベラム弾0/15+1)、懐中電灯】
【所持品3:単二乾電池(×2本)バナナ(台湾産)(1房)、発火装置】
【所持品4:手術用メス、パワーショベルカー(運転席のガラスは全て防弾仕様)】
【所持品5:破邪の巫女さんセット(弓矢のみ10/10本)@D.C.P.S.、乙女と大石のメモ、乙女のデイパック、麻酔薬、硫酸の入ったガラス管x8、包帯、医療薬】
【状態:疲労大、魔力消費極大、手足に軽い火傷(行動に支障なし)、左肩と脇腹に銃創、肋骨数本骨折、数本に皹、内臓にダメージ、
 左太腿に軽度の負傷(処置済み・歩行には支障なし)、全身に浅い切り傷、暴走】
【思考・行動】
1:全ての生物を殺して、マナを奪い尽くす
【備考】
※バニラアイスは小型の冷凍庫に入っています。
※悠人の身体は、永遠神剣の本能に支配されています
※悠人本人の意識が残っているかどうかは不明
※パワーショベルカーの窓ガラスは、一部破損しています




【備考】
※機関車『トミー』は大破
※E-4・E-5境界線周辺の木々は、軒並み薙ぎ倒されています

172 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 21:57:08 ID:HbE3p3gP




173 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/10/10(水) 23:28:40 ID:5gXVjrFN
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