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ギャルゲ・ロワイヤル 作品投下スレ6

1 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/06(月) 19:34:50 ID:hv31EMlK
ここは、「ギャルゲーキャラでバトルロワイヤルをしよう」というテーマの下、
リレー形式で書かれた作品を投下するための専用スレです。

前スレ
ギャルゲ・ロワイヤル 作品投下スレ5
http://game12.2ch.net/gal/

投下前の予約はしたらば掲示板の予約スレで行なってください。
ギャルゲロワ専用したらば掲示板
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/8775/

作品に対する批評感想、投下宣言は雑談感想スレで行なってください。
ギャルゲ・ロワイアル感想雑談スレ4
http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gal/1184661257/

基本ルールその他は>>2以降を参照してください。
sage進行でお願いします。



2 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/06(月) 19:35:20 ID:hv31EMlK
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → 舞台である島の地図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。

【禁止エリアについて】
放送から2時間後、4時間後に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。

【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。


3 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/06(月) 19:36:15 ID:hv31EMlK
【舞台】
http://www29.atwiki.jp/galgerowa?cmd=upload&act=open&pageid=68&file=MAP.png

【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24

【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述する。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

4 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/06(月) 19:38:16 ID:hv31EMlK
【首輪】
参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
放送時に発表される『禁止エリア』に入ってしまうと、爆発する。
無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できない。

【デイパック】
魔法のデイパックであるため、支給品がもの凄く大きかったりしても質量を無視して無限に入れることができる。
そこらの石や町で集めた雑貨、形見なども同様に入れることができる。
ただし水・土など不定形のもの、建物や大木など常識はずれのもの、参加者は入らない。

【支給品】
参加作品か、もしくは現実のアイテムの中から選ばれた1〜3つのアイテム。
基本的に通常以上の力を持つものは能力制限がかかり、あまりに強力なアイテムは制限が難しいため出すべきではない。
また、自分の意思を持ち自立行動ができるものはただの参加者の水増しにしかならないので支給品にするのは禁止。

【予約】
したらばの予約専用スレにて予約後(ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1173505670/l50)、三日間
三作以上投下した書き手のみ、二日間の予約延長が認められる

5 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/06(月) 19:39:53 ID:hv31EMlK
2/6【うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
   ○ハクオロ/●エルルゥ/●アルルゥ/●オボロ/○トウカ/●カルラ
3/3【AIR】
   ○国崎往人/○神尾観鈴/○遠野美凪
2/3【永遠のアセリア −この大地の果てで−】
   ○高嶺悠人/○アセリア/●エスペリア 
2/2【Ever17 -the out of infinity-】
   ○倉成武/○小町つぐみ
1/2【乙女はお姉さまに恋してる】
   ○宮小路瑞穂/●厳島貴子
4/6【Kanon】
   ●相沢祐一/○月宮あゆ/○水瀬名雪/○川澄舞/●倉田佐祐理/○北川潤
3/4【君が望む永遠】
   ○鳴海孝之/●涼宮遙/○涼宮茜/○大空寺あゆ
1/2【キミキス】
   ●水澤摩央/○二見瑛理子
4/6【CLANNAD】
   ●岡崎朋也/○一ノ瀬ことみ/○坂上智代/○伊吹風子/●藤林杏/○春原陽平
2/4【Sister Princess】
   ○衛/●咲耶/○千影/●四葉 
3/4【SHUFFLE! ON THE STAGE】
   ○土見稟/○ネリネ/●芙蓉楓/○時雨亜沙 
2/5【D.C.P.S.】
   ○朝倉純一/●朝倉音夢/●芳乃さくら/○白河ことり/●杉並
3/7【つよきす -Mighty Heart-】
   ●対馬レオ/●鉄乙女/○蟹沢きぬ/●霧夜エリカ/○佐藤良美/●伊達スバル/○土永さん
3/6【ひぐらしのなく頃に 祭】
   ○前原圭一/●竜宮レナ/○古手梨花/●園崎詩音/●大石蔵人/○赤坂衛
1/3【フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
   ●双葉恋太郎/○白鐘沙羅/●白鐘双樹

【残り36/63名】 (○=生存 ●=死亡)

6 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/06(月) 19:41:16 ID:hv31EMlK
テンプレミス

>>1の前スレはhttp://game12.2ch.net/test/read.cgi/gal/1184168931/

7 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:34:28 ID:bc1HQD2m
『小さな、とても小さな奇跡。』


(咲耶くんと衛くんは無事みたいだね……。そしてトウカくんも無事生き延びたみたいだ……)

神社から一足早く離脱した千影は、二回目の定時放送を聞きながら心の中で呟く。
あれから彼女はそのまま北へ向かい、森からそれほど離れていない民家の一つに身を隠していた。

民家にあった救急箱を見つけるや、ネリネによって受けた左肩の傷を応急処置し、体を休めていた。
傷口を消毒し、化膿止めの軟膏をすり込んだ後、包帯を巻く。
その度に激痛が走ったが、悲鳴を上げることだけはなんとかこらえた。
今では出血もとまり、多少は左腕を動かすことができる。

定時放送が流れたのはその応急処置が済んだ直後だった。

「相沢祐一……朝倉音夢……杉並……芳乃さくら……」

放送で流れた死亡者の名前に鉛筆で線を引き、ここまで出会った他の参加者――名雪、舞、ことり――の知り合いが半分以上死んだ事を確認する。
そして、名前の挙がった死者の数に愕然とした。


8 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:34:53 ID:iSjvj6Kj


9 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:35:12 ID:w0emjlKc
 

10 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:35:54 ID:bc1HQD2m
その数、15名――

第一回放送より明らかにその数は増えている。
鷹野の言う事を認めたくは無いが、皆そんなに人殺しが好きなのだろうかとすら思いたくなる。
現に神社で殺されたオボロも自分と出会う前、四葉を手にかけたと言っていた様にこの殺人ゲームに乗っていたではないか。

だが、それよりも今の千影にとって気がかりなのは咲耶と衛の安否だった。
生存者の数が減ればそれだけ次の放送で呼ばれる可能性は高まるのは必然。
次の定時放送で咲耶や衛、そして自分の名が呼ばれる事も有りうるのだ。

「もうそろそろ、心の準備をするべきかもしれないね……」

そう一人呟く千影。
第一回放送で四葉の名が呼ばれたときは衝撃を受けたが、それはまさか名前が呼ばれるとは思っていなかったという事もある。
できる事なら、次の放送でも二人の名前が呼ばれない事を祈りたいが、その可能性は低いだろう。

11 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:36:14 ID:iSjvj6Kj


12 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:36:32 ID:w0emjlKc
 

13 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:36:46 ID:bc1HQD2m
神社の一戦でオボロを殺したネリネに楓。
いずれも目的の為には平然とゲームに乗り、殺人という行為を躊躇する様子は全くなかった。
自分はオボロの犠牲にトウカの援護もあって危機を脱したが、自分の様な幸運あの二人にも起こるとは思えない。
それ故に、千影は未だ見つけられない二人が次の放送で名が呼ばれる事を覚悟することとしている。

残酷だが、四葉が死んだという事実がある以上は、咲耶も衛も自分もいつここで命を落としても仕方が無いのだから。

「……もう、ここを離れたほうがいいかもしれないね」

ディパックを手にすると、千影は民家を離れる。
傷の手当てと休息によってある程度体力は回復した。
“時詠”を使ったあとの虚脱感はまだ完全に抜け切ったわけではないが、それでも神社を離れた時に
比べれば幾分ましになっている。

とりあえずは同じエリアに存在する映画館を探索しようと思いながら、千影はふと左手を動かしてみる。

指先は動く、感覚もある――。

傷は痛むが神経を断ち切られたわけではない。
映画館の探索後、そこに誰もいなければまた休息し、体力を回復させるのがいいだろう。

(でも、この傷は兄くんには見せられないね……)

生きて帰る事が出来たらその時は、魔術で肩の傷を消す事にしよう。
千影はふと、そんな風に思ったのだった。

14 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:37:04 ID:iSjvj6Kj


15 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:37:40 ID:iSjvj6Kj


16 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:38:06 ID:bc1HQD2m
「誰もいないね……」
「ああ、メモも無いな……」

ほぼ同じ頃、高嶺悠人と衛の二人は映画館に到着し、工場を目指していたハクオロ達
三人が映画館に置いたというメモを探していた。
プラネタリウムで3人と別れてから襲撃者の乗った車を見た二人は、すぐさま瑛理子に
電話で事を伝え、自分達は三人が置いたメモを処分する為に、映画館に来たのだった。
しかし、ロビーに置いてあったというメモはどこを探しても見当たらず、やったことと言えば、
二回目の定時放送で流れた死者の中に知り合いがいないかということの確認ぐらいだった。

(なんてことだ。最初の時より死亡者が増えているなんて)

悠人は苛立ちを込めてそう呟いた。
放送前は、死者の数が多少は減っていてくれる事を期待したが、それは見事に裏切られた。
それに、読み上げられた名前の中にハクオロの知り合いであるアルルゥとオボロという二人の名前があったということ。

エスペリアの名が呼ばれたときは予め話を聞かされていたし、衛の姉妹の名前が無いことで安心していたが、
改めて名簿を読み返し、さらにプラネタリウムで聞いた三人の知り合いの名前も呼ばれたのを確認したのだ。

(順調に行けば、公園で三人と合流するけど心配だな)

悠人が心配するのは無論ハクオロのことに他ならない。
プラネタリウムで情報交換をした時はハクオロに「エスペリアを殺した相手を見つけたら殺すのか?」と問われたが、
知り合いを一度に二人も失った彼がその事実に耐えられるのかが気がかりだった。

聞いた話ではオボロというのはハクオロを「兄者」と慕う武人だったそうだが、アルルゥという子はまだ年端もいかない子供で、彼のことを「おとーさん」と呼んでたそうではないか。

17 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:38:20 ID:w0emjlKc
 

18 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:38:36 ID:iSjvj6Kj


19 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:39:06 ID:w0emjlKc
 

20 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:39:16 ID:bc1HQD2m

そんな子供までが殺し合いに参加させられ、すでに命を落としたという事実は衝撃でしかないだろう。

(二見さんや神尾さんが、ハクオロの事を支えてくれるならいいけどな)

まだ、彼ら三人と合流できない今の段階ではただ、そう祈るしかなかった。

そう考えていると、衛が声をかけてくる。

「悠人さん、ゴミ箱の中も見たけどやっぱりメモなんて無いよ。誰かがもっていったんだよきっと」
「ああ、そうだろうな。もう行くか……」

結局、そう結論付けるしかなかった。
メモは襲撃者が持ち去ったのだろうが、そうなるといよいよ工場に向かうのは危険である。
しかし、首輪を外すには工場にある様々な機械が必要というのが瑛理子の話だった。
公園での合流後次第だが、もし工場を目指すなら戦闘は必至となる。

それとも他に首輪を解析・無力化する手段があるのだろうか。

(自分の頭で考えても仕方が無い。この件は二見さんに聞いてみよう)

悠人は軽く頭を振ると、映画館へ入ったときと同じように警戒しながら出入り口に向かう。
が、わずかに扉を開けた時、外からこちらへ向かってくる足音が聞こえる。

「まずい!衛、一旦中に戻るぞ!」
「え?な、何?悠人さん?」
「こっちに人が来るんだ!早く!」

こちらへ来るのがもし、乗った人間だったら危険である。
すぐさま悠人は衛の手を引っ張り再度映画館内へと戻っていく。

千影が館内へ足を踏み入れたのはその直後だった。

21 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:39:38 ID:iSjvj6Kj
 

22 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:40:24 ID:iSjvj6Kj


23 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:40:37 ID:w0emjlKc
 

24 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:40:38 ID:bc1HQD2m
「来るな……」

そう呟いた悠人は、既にホールのいくつも並ぶ座席の一つに身を隠し、いつでも飛び出せるようにしている。
右手にはディパックから取り出した刀を握り締め、左手にはベレッタの1丁を手にしている。
ここまで手にしてきた今日子のハリセンは、お守り代わりとして腰にさしているが、いつまで電撃を放って
くれるか分からない為、今回は温存する事とした。

「悠人さん、無事でいてね……」

一方で衛は映画館のホールを見渡せるコントロール室に待機し、悠人の合図を待つ。
この部屋にはスクリーンに映画を映す映写機のほかにも館内の照明をコントロールする装置があり、悠人の
合図で室内にあるスイッチを片っ端からONにして照明を点灯させるつもりだった。

二人がそれぞれの場に待機している間にホールの扉が開く音がする。
どうやらこちらに向かって来るみたいだ。

「いるね。間違いなく……」

一方、侵入者である千影もまた警戒を怠らず、徐々に侵入する。
右手には“時詠”を構え、ゆっくりと暗いホール内を歩いていく。

(足音からして人数は一人か……こっちにまっすぐ向かってくるということは気付いてないということか)

足音を聞きながら、悠人は刀を握る手に力を込める。
その足音は徐々に大きくなり、こちらとの距離が狭まってくるのが分かる。
侵入者は暗さの為、シルエットしか分からないがどうやら女性のようだ。
右手には何か短剣みたいな武器を持っているのが分かる。

3メートル……2メートル……その距離が徐々に狭まっていく。

そして距離が1メートルを切った時、悠人は手にしていたベレッタの銃口を天井に向けて1発撃ち放った。

25 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:41:54 ID:OdcPaT1U


26 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:41:59 ID:iSjvj6Kj


27 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:42:42 ID:w0emjlKc
 

28 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:42:52 ID:iSjvj6Kj


29 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:43:05 ID:bc1HQD2m
「銃声ッ!?」

直後に響く派手な音と天井への命中音、そして発砲時マズルフラッシュがいきなりの銃声により、思わず声をあげた
千影と隠れていた悠人の姿を一瞬照らし出す。

「うおおおおおおおおっ!」

そして、千影がその場を離れるより早く悠人が座席の間より飛び出す!
同時にホール内の照明が点灯し始め、二人の姿を照らし出す。
だが、千影はともかく悠人はそんなことお構いなしに肉迫していく。

「しまった!」

千影は“時詠”を構え、体勢を立て直そうとするが、それより先に勢いをつけた悠人の剣戟をさばき切れず、
再びバランスを崩す。

(体制は、立て直せない……。タイムアクセラレイトは……使えば今度こそ危険……ッ!)

そこまで思った時、遂に千影の手から“時詠”が弾き飛ばされた。
一方の悠人はまだ警戒を解いておらず、尻餅をついている千影に刀の切っ先を向けている。
肝心の“時詠”は数メートル先に飛ばされており、回収することは不可能だ。

千影は「もうここまでみたいだ」と思ったが、一向に次の一撃が来る様子は無い。
どうしたのかと千影が顔を上げてみると、目の前の男が口を開いた。

「悪いな、いきなり飛び掛ったりして……って、その髪型に服……君はもしかし」
「千影ちゃん!!」

男が最後まで言葉を言い終わるより早く、館内に声が響く。
二人が顔を向けると、そこにはいつの間にか上から降りてきた衛の姿があった。


30 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:43:48 ID:w0emjlKc
 

31 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:44:16 ID:bc1HQD2m
「衛!」
「まもる……くん」

そしてまた、衛の姿を認めた二人が声をあげるたのも、ほぼ同じタイミングだった。
衛はそのまま二人の方へ走り寄って来る。

「千影ちゃん……千影ちゃん!……よかった。無事でいてくれて……」
「衛くんも、無事でよかったよ……」

抱き合い、涙を流し再会を喜ぶ二人。
一方、それを見た悠人は、一歩間違えば衛の姉妹に傷を負わせたかも知れないことに冷や汗をかきながらも、二人の再会に安心した。

「よかったな、衛……」

心から二人の再会を喜ぶと共に、自分もアセリアを合流しなければという気持ちが強まる。
その一方で、二人が抱き合っている間に回収した“時詠”を目にする。

(間違いない、これは本物の永遠神剣第三位“時詠”だ……。どうやら力の制限がかかっているみたいだけど、
こんなものまであるなんて……。つまりはあの“献身”もレプリカではなく本物と考えた方がいいみたいだな……)

それなら“求め”や“存在”といった他の永遠神剣もこの島にあるんじゃないのかと思えてくる。
できる事なら“時詠”を持っていた彼女――衛の姉妹である千影――にこれを入手した経緯を聞きたいと思う。

32 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:44:20 ID:iSjvj6Kj


33 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:44:54 ID:iSjvj6Kj


34 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:45:26 ID:w0emjlKc
 

35 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:45:32 ID:bc1HQD2m
だが、そう思って悠人は考え直す。

(いや、今暫くは二人の再会を祝福してやろう。話は公園に向かう途中でも十分聞く事が出来るだろう)

そのとおり。
今、二人の間に水を差すのは野暮なだけだから――。


こうして、衛と千影は無事再会を果たした。
その再会は、脱出や主催者の打倒という事に比べれば小さな出来事に過ぎない。
とてもちっぽけで、ささやかな奇跡かもしれない。

しかし、当人たちにとってはこれ以上になく、とても重く大切な奇跡――。
それは紛れも無い事実だろう。

36 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:46:10 ID:w0emjlKc
 

37 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:46:24 ID:iSjvj6Kj


38 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:47:06 ID:iSjvj6Kj


39 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:47:09 ID:bc1HQD2m
【D-3 新市街・映画館/1日目 日中】

【千影@Sister Princess】
【装備:永遠神剣第三位『時詠』@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【所持品:支給品一式 バーベナ学園の制服@SHUFFLE! ON THE STAGE
     銃火器予備弾セット各100発(クロスボウの予備ボルトのみ残数80/100)、バナナ(フィリピン産)(2房)
     倉成武のPDA@Ever17-the out of infinity-】
【状態:左肩重傷(治療済み)、肉体的疲労大、魔力消費大、時詠使用による虚脱感、スカートに裂け目、精神的疲労小】
【思考・行動】
 基本行動方針:ゲームには乗らないが、襲ってくるものには手加減しない。時詠の能力使用は極力控える
 1:衛くん……無事でよかった。
 2:咲耶を探し出して守る
 3:永遠神剣に興味
 4:北川潤、月宮あゆ、朝倉純一の捜索
 5:魔力を持つ人間とコンタクトを取りたい
 6:『時詠』を使って首輪が外せないか考える

40 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:47:48 ID:iSjvj6Kj


41 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:48:05 ID:w0emjlKc
 

42 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:49:06 ID:iSjvj6Kj


43 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:49:54 ID:bc1HQD2m
※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※トウカの事は確実に信用できると評価しました。
※時詠を使用すれば首輪を外せるんじゃないかと考えています(ただし可能性は低いと考えています)
※千影は『時詠』により以下のスキルが使用可能です。 但し魔力・体力の双方を消耗します。
 タイムコンポーズ:最大効果を発揮する行動を選択して未来を再構成する。
 タイムアクセラレイト…自分自身の時間を加速する。
 他のスキルの運用は現時点では未知数です。
 詳しくはwiki参照。
 またエターナル化は何らかの力によって妨害されています。
※未来視は時詠の力ではありません。
※銃火器予備弾セットが支給されているため、千影は島にどんな銃火器があるのか全て把握しています。
 見た目と名前だけなので銃器の詳しい能力などは知りません。
※倉成武のPDA
 情報携帯端末。簡単に言えばネット通信機能搭載の超小型パソコン。携帯電話も内臓されている。
 また、静電充電機能で身に着けて歩行などすれば充電可能。ちなみに完全防水である。
※ネリネを危険人物と認識しました

44 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:50:00 ID:iSjvj6Kj


45 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:50:44 ID:iSjvj6Kj


46 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:51:29 ID:w0emjlKc
 

47 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:52:04 ID:bc1HQD2m
【偵察チーム】
【思考、行動】
基本方針1:襲撃者の北上につき急遽予定変更。映画館へ立ち寄ったあと、北上しD-2エリアの公園に移動し首輪チームと合流。
基本方針2:映画館、学校、神社、新市街を経由して参加者の捜索、情報収集を行いながら15時までに工場へ。
ただし時間の経過によっては何箇所か立ち寄らずに、時間までに工場に着くことを優先。

思考1:映画館からD-2の公園へ移動し、ハクオロ達3名と合流。今後について話し合う
思考2:有益な情報を集める、特にタカノの事を知ると思われる4人を重視。また、可能なら鳴海孝之が持っているというノートパソコンを入手。
【備考】
※ハクオロ、観鈴、瑛理子と協力状態。
※北へ向かった車の襲撃者を警戒。探索はキャンセルし、映画館でメモの件を終えたら再度北上してD-2の公園にて三人と合流。
※D-2が禁止エリアに指定された場合は映画館、C-3北のスーパーで合流。
※工場にハクオロ達が居ない可能性も考慮。その場合レジャービル、プラネタリウムの順に移動。
※首輪の盗聴と、監視カメラが存在する可能性を知りました。
※禁止エリアについて学びました。(禁止エリアにいられるのは30秒のみ。最初は電子音が鳴り、後に機械音で警告を受けます。)
※島内部の電話が使える事を知りました(現在、レジャービルの電話番号を知ってます)。
※車の一団はゲームに乗った者が徒党を組んでいると思ってます。

48 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:52:35 ID:iSjvj6Kj


49 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:52:46 ID:w0emjlKc
 

50 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:53:31 ID:iSjvj6Kj


51 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:53:42 ID:bc1HQD2m
【高嶺悠人@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【装備:今日子のハリセン@永遠のアセリア、トウカの刀@うたわれるもの、ベレッタM92F(9mmパラベラム弾14/15+1)】
【所持品:支給品一式×3、バニラアイス@Kanon(残り9/10)、ベレッタM92F(9mmパラベラム弾15/15+1)、
予備マガジン×7、暗視ゴーグル、FN−P90の予備弾、電話帳】
【状態:精神状態は普通、疲労軽程度、左太腿に軽度の負傷(処置済み・歩行には支障なし)】
【思考・行動】
基本方針1:衛と千影を守る
基本方針2:なんとしてもファンタズマゴリアに帰還する
0:衛、よかったな……。
1:北上した襲撃者を警戒。三人が心配。
2:アセリアと合流
3:咲耶や千影を含む出来る限り多くの人を保護
4:ゲームに乗った人間と遭遇したときは、衛や弱い立場の人間を守るためにも全力で戦う。割り切って容赦しない。
5:ネリネをマーダーとして警戒(ただし、名前までは知らない)。また、彼女がなぜ永遠神剣第七位“献身”を持っていたのか気になって仕方が無い。
6:地下にタカノ達主催者の本拠地があるのではないかと推測。しかし、そうだとしても首輪をどうにかしないと……
7:エスペリアを殺した相手を積極的に探すつもりはない、但し出会ったら容赦するつもりはない
8:涼宮茜については遙の肉親と推測しているが、マーダーか否かについては保留。

【備考】
※バニラアイスは小型の冷凍庫に入っています。
※衛と本音をぶつけあったことで絆が強くなり、心のわだかまりが解けました。
※上着は回収しました。
※レオと詩音のディパック及び詩音のベレッタ2丁を回収しています。
※遺体を埋葬、供養したことで心の整理をつけました。
※ハクオロとの会話でトウカをマーダーでないと判断、蟹沢きぬについては保留
※エスペリアを殺した相手を殺すつもりは(一応)ない
※原作の四章、アセリアルートから連れてこられた、アセリアはハイロゥが黒く染まった(感情が無い)状態だと思っている

52 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/07(火) 00:54:24 ID:iSjvj6Kj


53 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/07(火) 00:54:48 ID:bc1HQD2m
【衛@Sister Princess】
【装備:TVカメラ付きラジコンカー(カッターナイフ付き バッテリー残量50分/1時間)】
【所持品:支給品一式、ローラースケート、スーパーで入手した食料品、飲み物、日用品、医薬品多数】
【状態:精神状態は正常、疲労軽程度】
【思考・行動】
基本方針1:死体を発見し遙や四葉の死に遭遇したが、ゲームには乗らない。
基本方針2:あにぃに会いたい
基本方針3:これからは自分も悠人さんの支えになってあげたい
0:千影ちゃん、無事でいてくれてよかった……。
1:プラネタリウムで別れた三人が心配。
2:悠人の足手まといにならぬよう行動を共にする。
3:咲耶にも早く会わなきゃと思う。
4:ネリネをマーダーとして警戒(ネリネの名前までは知らない)。
5:鳴海孝之という人を悠人と共に探して遙が死んだことを伝える。


【備考】
※悠人の本音を聞いた事と互いの気持ちをぶつけた事で絆が深まりました。
※遙を埋葬したことで心の整理をつけました。
※瑛理子から、鳴海孝之の情報を得ました。
※TVカメラ付きラジコンカーは一般家庭用のコンセントからでも充電可能です。充電すれば何度でも使えます。
※ラジコンカーには紐でカッターナイフがくくりつけられてます。
※スーパーで入手した食料品、飲み物は二日程度補給する必要はありません。
※医薬品は包帯、傷薬、消毒液、風邪薬など、一通りそろっています。軽症であればそれなりの人数、治療は可能です。
※日用品の詳細は次の書き手さんにまかせます。

54 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 10:35:54 ID:CZy09TGd

駐車場までなんとか車を移動させた北川は、辿って来た道を振り返ってため息をついた。
あの頭のおかしい男から逃げるときは無我夢中だったが、冷静になると逆に緊張して、同じようなハンドル捌きとはいかない。
未だ慣れない運転席から降りて車のボディを見ると、所々が歪んでいたり塗装が剥げているのが確認できた。
周囲を見渡すと、車のあった位置から駐車場に到着するまでにぶつけたガードレールや電柱が、殆ど黒く擦れているのが良く判る。
(あれ?)
と、その黒い傷を目で追っていて奇妙な違和感を覚える。
こういう状況で一度気になった事は、早いうちに手を打ったほうがいい。
北川はガードレールや電柱に近づいて黒い擦り傷に手を当てた。
「別にどこもおかしくない……よなぁ」
角度を変えて検証するが、どこにも不自然な点が見つからない。
しばらく駐車場を歩き回っていたが、結局なにも閃いたりしなかったため店内に戻ることにした。
放送が終わるまで掛かると思っていた車の移動も、意外と早く済んだのだ。
この違和感はひとまず保留にして、次の行動に移そう。
するべき事は終えたのだから、早く二人に合流したい。
ふと、エントランスに足を踏み入れた北川は、昨夜の出来事を思い出して背中が痒くなった。
あのレナと名乗る少女は放送で名前を呼ばれた。だから、脅威になることはたぶんもうない。
けれども、この狭いフロアで鬼ごっこした恐怖は簡単には抜けない。
(下手に怖がらせる必要はないし……梨花ちゃんにはもう少し黙っておくか)
一瞬エレベーターに乗ることも考えたが、少しばかり躊躇った後、階段を頼ることにした。
二階の踊り場に到着すると、梨花が窓際に望遠鏡を設置して真剣な表情で外を見ていた。方角的には新市街。
「なに見てるんだ?」
「!」
突然声をかけられ、目を大きく見開く梨花。
まさかそこまで驚くとは思っていなかったため、北川もつられて驚いてしまう。

55 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 10:37:56 ID:CZy09TGd
「ビックリさせないで潤」
ほっと胸をなでおろす。自分にも非があると理解しているのか、文句を言う事はない。
一息入れると、梨花は視線だけで望遠鏡を覗くよう北川に促した。
要領を得ないが、真剣な彼女の視線は遊びでない事を物語っていた。
恐る恐る望遠鏡のレンズに目を重ねて、遠くの景色を眺める。
だが、そこに映っているのはただの街並みでしかない。
細心の注意を払って円状に写る景色を穴が開くまで見つめるが、どこにも異常が見当たらない。
「なあ梨花ちゃん」
「なに?」
「これって新市街の一角しか映ってないんだけど」
「ええ」
「ええ……って。これを見てたの?」
北川の問いに、梨花は真剣な表情のまま沈黙した。
やがて、小さな微笑を浮かべると風子の居る寝具コーナーへと足を向けて歩き出した。
歩き出す直前、北川の方を一瞬振り返り小さく呟いた。
「風子の所に戻りましょう。話はそれからよ」
その艶やかな視線にドキッとしながらも、北川は梨花の後ろに続いて足を進めた。



暫定的に集合場所として利用しているのは、レストラン街を抜けた家具コーナーの一角。
その中の寝具コーナーに向かうと、いつ目を覚ましたのか、小さなテーブルの上で風子が一心不乱に筆を走らせていた。
しかもどこから持ってきたのか、ご丁寧に12色のクレヨンを使い分けている。
そっと後ろから覗き込むと、描いているのは意味不明な線と丸だ。意味不明としか言い様がない。
だがそれより問題なのは、その筆を走らせていた媒体だった。
「俺の地図じゃん!」
風子が熱心に書き込んでいたそれは、どう考えても北川の地図に違いなかった。
その証拠に、地図の端に自分で走り書きしたメモが残されているのが判る。
第一梨花の地図は当人が管理しているし、風子の地図は何も書き込まれていない状態。
風子は北川の視線に気づくと、筆を止めて腕を組んだ。

56 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 10:41:07 ID:CZy09TGd
「ああ北川さん。これが気になりますか?」
「……ああ。凄く気になる」
疲れた表情で投げやりに答える北川とは裏腹に、風子は得意げに地図を広げてみた。
「風子特製『DX人生ゲーム風子Ver』です!」
北川はもはや言葉が出てこない。
「ちなみに、優勝賞金は一億ペリカです」
誰もそんな事を聞いてもいない。
「これは地下帝国でのみ使える貴重な通貨なんですよ!」
興奮気味に熱弁する風子だったが、やはり二人とも聴いてなどいない。
そんな二人を置き去りにして、風子はこのゲームの素晴らしさを一生懸命説いた。
北川は疲れきった表情で生返事を繰り返し、梨花も風子の言葉を右の耳から左の耳へと聞き流す。
熱弁を止めることに労力を使うより、適当に相槌を打ったほうが得策だろうと考えたのだ。
その判断から、二人は早く風子が飽きるように思いつつ、空返事を続けていた。
「だから、一攫千金のため温泉に向かうのがミソなのです」
「はいはい」
「ですが、困ったことに入り口が二つしかないんです」
「はいはい」
「これでは一発逆転が難しくなってしまうんですよ!」
「はいはい」
「だいたい西口と南口があるのに、どうして東口と北口がないのでしょうか?」
「はいは――え?」
適当に聞き流していたはずの梨花だったが、突然疑問系で語られたことに驚いてしまう。
ここで今まで空返事でしたと悟られるのも面倒なので、興味があるように聞き返す。
「ごめんなさい。もう一度お願いしていいかしら」
「も〜! ですから、どうして廃坑の西口と南口はあるのに、東口と北口がないのかという事です」
「廃坑?」
何か考え込む梨花とは対照的に、北川は呆れ顔で地図に指をさす。
「そんなのお前、島の西側と南側に位置するから記しただけだろ?」
「でもそれなら、風子的には北口と南口と記してくれた方が混乱しなくて済みます」
「だから、それだと格好悪いからそれっぽく記したんだろう?」

57 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 10:47:20 ID:CZy09TGd
「やれやれ。北川さんにはロマンの欠片すらありませんね」
「くぅっ」
肩を竦めて、呆れる様に北川へと視線を投げかける風子。
一方の北川も、今までの経験上言い返しても無駄である事を悟ったのか、怒りを抑えてその視線を流す事にした。
ただ一人、梨花だけが難しい表情で地図と睨み合いを続けていた。
なにか問題が発生したのかもしれないと思い、北川は伺うように声を掛けた。
「梨花ちゃ――」
『参加者の皆さん、ご機嫌如何かしら? 』
呼びかける北川の声を遮るように、第二回定時放送が流れ始めた。



     ◇     ◇     ◇     ◇



『――この島には法律なんて存在しないのだから、思う存分殺し合いなさい』
鷹野の上からものを告げるような放送が終わり、梨花は軽いショックを受けていた。
(大石……)
引退寸前とはいえ、まさか現職の刑事が殺されてしまうとは思わなかった。
周囲に対する警戒心や判断力。単純な身体能力のどれをとっても優れた部類に入る。
そんな男ですら、この島では簡単に殺されてしまうということだろうか。
つまりそれは、赤坂とて例外ではないと言う事に繋がる。
それにもう一つ、死者の数が一回目の放送に比べて増えている事。
減っているならまだしも、増えているということは『殺人否定派』から『殺人肯定派』へと、
その立ち位置を鞍替えした者が居る可能性を秘めているのだ。
自分とて、絶対に殺人を犯さないとは言い切れない。
「じゅ――」
潤に声をかけようとして思い留まる。
彼の顔が普段から考えられないくらい硬直していたからだ。

58 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 10:47:28 ID:7CMdOfWU
 

59 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 10:48:04 ID:Ha9sSO4w
   

60 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 10:51:42 ID:CZy09TGd
放送を聴くまでそんな顔はしていなかった。それが放送後にこうなった理由は一つしかない。
(そう……親しい人物が死んだのね)
詩音やレナを失った時、梨花は酷く取り乱したのをまだ覚えている。
今回はある程度覚悟していたのと仲間がいたという事で、混乱するまでには至らなかった。
だが、もし次に圭一と赤坂が呼ばれた場合、混乱しないという保障はどこにもない。
梨花は無意識内に潤へと視線を送っていた。
「梨花ちゃんは」
「え?」
俯いていた顔を上げ、寂しそうな表情で梨花を見つめる潤。
「知り合いがいたか?」
あえて『死』という単語は省き、淡々と用件を述べた。
「一人いたわ」
「そっか」
それだけ呟くと、潤は天井を見上げ大きく呼吸を吐いた。
自分より大きい背丈なのに、どうしてか小さく見えてしまう。
(ダメっ)
思わず立ち上がり、潤の袖を握り締める。
突然の事に驚いて梨花に視線を落とした潤だったが、ゆっくりと両手を自分の頬に当てると、力強く手の平で叩いた。
「!?」
「っつぅ〜……」
頬を真っ赤にして目尻に涙を浮かべた潤は、子供のような顔で笑みを浮かべた。
「心配してくれてありがとな梨花ちゃん。でも、もう大丈夫だ」
「え?」
「今の放送で親友……みたいな奴が呼ばれちまってさ。結構ショック受けてた」
「ぁ」
「けどさ、復讐だのなんだの考える前に、そいつを慕ってた女の子達や風子や梨花ちゃんが心配になってさ」
その言葉が本音かどうかは不明だが、少なくとも潤の瞳からは復讐の二文字は読み取れない。
握っていた袖をゆっくりと離し、梨花は安堵した表情を浮かべた。
「潤は……」
「ん?」

61 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 10:51:59 ID:7CMdOfWU
  

62 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 10:52:49 ID:Ha9sSO4w
   

63 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 10:53:49 ID:Ha9sSO4w
   

64 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 10:54:46 ID:CZy09TGd
この男は刑事のように危険な事件などに慣れていない。
首輪を何とか出来るような天才少年でもない。身体能力も平均的な男子でしかない。
名探偵の様にどんな難事件でも解決できる明晰な頭脳の持ち主でもない。
それでも……それでもこの男の瞳は心の波紋を鎮めてくれる。
「潤は本当に女たらしね」
梨花は、この北川潤と言う男に出会えた事を心から感謝していた。



     ◇     ◇     ◇     ◇



「そうだッ! 俺なんかより風子だ!」
北川は梨花の「女たらし」発言で傷つきながらも、ずっと気になっていた風子に声をかけた。
あの放送の中に、風子が知り合いであると言う人物が呼ばれていたからだ。
だが、テーブルの向かいに座っている風子は、普段と変わった様子はない。
北川は心配そうに顔を近づけて声を掛けた。
「おい風子、大丈夫か!?」
「北川さん顔を近づけないで下さい。暑苦しいです」
もしかして、座ったまま気を失ったのではないかと心配して顔を近づけたが、見事にそっぽを向かれた。
さすがにこれは予想外の反応である。呆然とする北川を無視して、風子は立ち上がるとベットへ足を進めた。
「おまっ、平気なのか?」
あまりにも冷静過ぎるその様子は、北川に不安を抱かせるのに十分だった。
本当に平気か確かめるため、なんとか寝かせない様にベットの前で通せんぼする。
「何がですか?」
「何ってそりゃ……」
口にして良いものか悩む。事情が解っていない梨花も、北川が何を言いかけているかは分かった。
三人の間に、微妙な沈黙が訪れる。
「北川さん。梨花ちゃん。一つ質問しましょう」
「な、なんだ?」
「私も?」

65 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 10:56:37 ID:7CMdOfWU
   

66 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 10:58:06 ID:Ha9sSO4w
   

67 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 10:58:51 ID:Ha9sSO4w
   

68 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 10:59:17 ID:CZy09TGd
沈黙を破った風子は、二人に対して偉そうな態度で質問を投げかけた。
「風子達は死体に遭遇しましたか?」
突然そんな事を聞かれ、虚を突かれたような表情を浮かべる二人。
殺し合いに乗っている人間ならば遭遇したが、確かに死体と遭遇したことは無い。
「俺は……無いけど」
「私も一応」
「風子もありません」
自信満々に言うが、北川には風子がなにを言いたいのかサッパリ理解できなかった。
「実際に見ていない以上、風子は放送なんて信じません」
「それは――」
勢いに任せて「事実から逃げているだけだろ」と言いかけるが、梨花がそれを遮る。
「どうしてそう思うの?」
梨花の問いに、風子は自信満々に答えた。
「風子が信じる事に間違いが無いからです。えっへん」
「信じる……か」
梨花は、その言葉を何度か繰り返し呟いた。
確かに前向きと言えば聞こえがいいが、北川には放送こそが真実と直感で気付いていた。
仮に死んでいないのだとしたら、今まで名前を挙げられた人間はどう思うだろう。
すでに半分に届きそうな数が、放送で読み上げられている。
単独行動しているならまだしも、集団で行動していて、その内の一人だけ読み上げられたら不自然だろう。
それが島に居る参加者を煽る手段であるとしても、すぐにバレるのは時間の問題。
だから、北川は呼ばれた人物は死んでしまったと結論付けている。
(けれど、今はそれでもいいかもしれないな)
言い方は悪いが、どう理由であれ泣き喚くよりもマシだ。
問題は今後誰かの死体を発見してしまう事だが、ここから動かない限りそれはない。
色々考えた末、北川は下手に突っつかずに静観する事を決めた。

69 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:01:03 ID:7CMdOfWU
    

70 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 11:03:04 ID:CZy09TGd
「そういえば、放送の前に梨花ちゃんは何を言おうとしてたんだ?」
決めた以上、その話題を長引かせるより、新たな話題を作るべきだ。
それに、踊り場でのやりとりもまだ答えてもらっていない。
梨花は禁止エリアを書き留めた地図を手に取ると、席を立ってどこかにいってしまった。
「ついてきて」
「え、ちょ」
テーブルで舟を漕ぐ風子を置いて、北川は梨花の後に続いた。
目的地に向かいながら、梨花は何気ない質問を投げかけた。
「潤。貴方の家に電気やガス。それに水道は来ていたかしら」
「来てたか……って、そりゃ来てるよ」
「水道はどこから?」
「えっと、浄水場から管を通って家に来てたはず」
「ガスは?」
「ガスは定期的にガス販売の人が来てた気がする」
「なら電気は?」
「電気なら、発電所から電線を伝って家に届いてたぞ」
最後の問いの答えが出ると同時に梨花は足を止めた。辿り着いた場所は、望遠鏡のあった踊り場だった。
「そう。その答えを頭に置いて、もう一度この景色を見て頂戴」
意味が解らなかった。この望遠鏡はつい先ほど見たばかりだ。
まさか、この十数分程度で景色が様変わりなどという馬鹿げた事はないはず。
けれども、梨花は先ほどと同じように真剣な表情のままだ。からかっている様子はどこにも無い。
どちらにせよ、覗けば全て判るのだ。意を決して、北川は望遠鏡に目を合わせた。
予想はしていたものの、その景色は先ほどとまったく同じものだった。
いつの間にか隣に立った梨花が、小さな声で呟く。
「潤……どこかおかしくないかしら?」
「そう言われてもなぁ」
「さっきの最後の質問。答えは何だったかしら」
そこに来て、初めて梨花の伝えたかった正体が理解できた。

71 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:03:32 ID:Ha9sSO4w
   

72 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:05:40 ID:Ha9sSO4w
   

73 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 11:06:34 ID:CZy09TGd
新市街の街並みの中、一定の距離で配置されている電柱。しかし、その電柱と電柱の間には――
「電線が……ない?」
「ええ。私も外を警戒するために見ていたんだけれど、ちょっとしたきっかけで違和感に気付いたの」
そこで北川は駐車場での違和感を思い出す。
あの違和感は車でつけた黒い傷にではなく、その上のほうに位置する電柱の先端から感じていたのだろう。
近づいたら気にならなくなったのも、おそらくは視界から外れたため。
その事実を頭に置いて再びレンズを覗くと、その違和感がハッキリ見て取れた。
一度気付いてしまうと、この気持ち悪い感覚から逃れられないらしい。
(あれ、でも電気は来てるよな)
電線は見当たらないが、電気が供給されている。
もしかしたら、百貨店のどこかで自家発電をしているのかもしれない。
その事を告げる前に、梨花はさっさと風子のもとへと歩き出してしまう。
「あ、おい」
今日は梨花の尻を追いかけてばかりだと思いつつ、北川は梨花の後を付いていった。



     ◇     ◇     ◇     ◇



(思わぬ所でヒントを得られたわね)
風子のもとに向かいながら、梨花は地図を睨んでいた。
バラバラに砕かれた正解に嵌るピースは、確実に揃い始めている。
けれども、これだけではまだ少な過ぎる。行動に移すのはもっと情報を集めてからだろう。
些細なきっかけでも欲しい梨花は、頭の中で考えていた事を口から漏らした。
「もし潤がこの殺し合いを『させる側』だったら、禁止エリアはどうする?」
「どうするって……え〜っと、俺だったら反乱に利用されそうな場所を優先的に潰すかな」
「そうね。私も同じ意見よ。けれど見て」
隣を歩く潤に、すでに禁止エリアにされた場所と、今後禁止されるエリアを見せる。
「何もないな」
「ええ。ちょっとした民家や建物はあるかもしれないけれど、地図で示されるような特殊な施設や建物は一つもないの」

74 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:09:38 ID:Ha9sSO4w
   

75 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:10:34 ID:7CMdOfWU
  

76 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 11:11:44 ID:CZy09TGd
梨花の言葉に、潤は何か閃いたのか、自分なりの意見をそっと述べる。
「う〜ん。例えば、他の参加者が集まり過ぎてたとか」
「殺し合いをさせるのに、わざわざ散らすかしら」
「そこにいた全員が反抗的だったとか」
「可能性は否定できないけど、それなら禁止エリアから全員で移動されたら終わりじゃないの?」
「むむむ」
出す案が即効で言い負かされて、潤は両手を突き上げギブアップのジェスチャーを見せた。
頃合良く寝具ルームに到着したため、二人はいったん会話を打ち切る。
荷物を置いた場所まで行くと、風子はすでにテーブルに突っ伏して眠りこけていた。
緊張感の欠片も無いことは、口元から垂れている涎が物語っている。
そんな風子を無視して、二人はテーブルを挟んで会話を再開した。
「この禁止エリアの謎……ある仮定を当てはめれば納得がいってしまうの」
「仮定ねぇ。例えばどんな?」
「例えば、その場所には『地図に記されていない何かがある』とか」
「あいつらが地図には記さなかった場所って事か」
風子のデイパックの中から、派手に塗り潰された地図の裏面が出てきた。
それは、潤の地図を無断で拝借し、カラフルに書き換えられた風子特製の人生ゲームだ。
「風子の言ってた事、覚えているかしら」
「あー、なんとなく」
梨花は頷くと、地図の中の廃坑の入り口を手の甲で叩く。
「この二つの他に入り口があるんじゃないかって事」
「おお。確かそんな感じだったな」
「で、ここからが本題……見てて」
梨花は南口から北に向かって器用に直線を引く。
続けて、西口から東に向かって直線を引いた。
「あ」
何度か角度を変えて交わっているうちに、遂に禁止エリアとぶつかる。
「仮定でしかないけれど、可能性はゼロじゃないわ」
もちろん、この考えが間違っている可能性のほうが高い。
「けれど、あの電線や廃坑。禁止エリアの意味する所が、なぜか重なって見えるのよ」
「なら、早く確認しないと!」
「駄目よ」

77 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:12:33 ID:Ha9sSO4w
   

78 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 11:13:21 ID:CZy09TGd
立ち上がる潤と違い、梨花の重い腰はあがる事は無かった。
「私達がどんな行動に移るにしても、三人では人数が少な過ぎるわ。
  この拠点を捨てずに、かつ島を探索出来るくらいの人数が欲しいの」
「……」
その言葉に、潤は飛び出しそうな勢いを抑える。
「まずはこの拠点に罠を仕掛けましょう。私は風子と罠を製作するから、潤は使えそうな資材を持ってきて」
「そうだな……」
気持ちを切り替えたのか、潤はやる気に満ちた表情で拳を握った。
「待つしか出来ないなら、やれる事から始めるとするか!」



     ◇     ◇     ◇     ◇



それから数十後、北川達は拠点を寝具ルームから二階の第二守衛室へと移していた。
一階の第一守衛室という案もあったが、万が一来た人物に敵意があった場合の事を考えて却下された。
たとえ設備が整っていても、逃げるには慌し過ぎるのが主な理由だ。
そこで、設備は劣るが防犯扉と監視カメラが備えてある二階の守衛室が繰り上げ当選されたのだ。
部屋で罠を製作する梨花と風子のために、北川は百貨店を走り回って使えそうな物を集めて回っていた。
そして、現在北川がいるのは……非常に危険な場所だった。
(俺の命もここまでか)
目の前に迫る四本の脅威を必死に回避しつつ、北川はどうしてこうなったか思い返す。
少し前までは前向きな展開ばかりで、今回はきっとこれで終わるだろうと油断したのが甘かったのか。
――それは、数分前の出来事だった。




79 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:13:58 ID:Ha9sSO4w
   

80 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:14:43 ID:7CMdOfWU
     

81 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 11:18:11 ID:CZy09TGd
一階で適当に資材を見繕っていた北川は、階段を往復するのに嫌気がさしていた。
そこで目に付いたのは、今まで使っていなかったエレベーターである。
あれだけ嫌な予感がして避けていたのだが、楽をしたい気持ちが優先され乗り込んでしまったのだ。
箱に乗って二階のボタンを押すと、エレベーターはゆっくりと動き出す。
そして、出入り口の上で点灯する『1』という文字が『2』に変わった瞬間事件は起きた。
エレベーターは突然停止し、明かりも消えてしまったのである。
「うわ、予想はしてたけどやっぱりかよ」
うな垂れつつ、並んだボタンの中から緊急用のボタンを発見し力一杯押し付ける。
だが、ボタンは軽い音しか鳴らず、どう見ても作動したようには見えなかった。
「って事は、やっぱりアレか」
泣きそうな表情で天井を見上げる。視線の先には緊急用の脱出口が備わっていた。
楽をするどころか、とんだ災難である。
とりあえず堅くて安定した資材を土台にして、北川は天井の脱出口から抜け出した。
だが、箱の屋根によじ登ったものの、残念ながら二階のドアには手が届かない。
どこか出られそうな場所はないかと周囲を見渡すと、足元の緊急避難通路が目に付いた。
「他に出られそうな場所もないしなぁ」
諦めた表情で避難通路の網を外す。中は暗いものの、四つん這いで進めば通るのは可能なようだ。
黙々と通路を前進していくと、三方向に別れる分岐点に差し掛かる。
北川は守衛室の位置を必死で思い出して、おそらくこの方向だろうと言う通路に体をねじ込んだ。
しばらく進んでいくと、ようやく頭上から光が漏れている場所に到達する。
(よかったぁ〜)
光が漏れているという事は、この上に位置する場所は、少なくとも北川達が通った場所だという証明になる。
早く出たい気持ちが先行していた北川は、深く考えずに頭上の蓋を開けてしまう。
暗い場所から飛び出した北川の、一番最初に写った光景は幼女の生足だった。
(避難通路の長いトンネルを抜けると天国であった。視界一面が絶対領域になった)
著名な作家の一節が北川の頭をよぎる。
(って、まてまてまて!)
目の前に迫る可愛らしい太ももに目が釘付けになりながら、北川はパニックになりかけていた。

82 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:18:51 ID:7CMdOfWU
  

83 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:19:14 ID:Ha9sSO4w
   

84 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:20:20 ID:Ha9sSO4w
   

85 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 11:21:03 ID:CZy09TGd
「ん?」
生足の主が何かに気づいたのか、体を屈めテーブルの下を覗こうとしている。
(まずッ!)
反射的に、北川は蓋を頭に乗せて避難通路へと身を隠した。タッチの差で発見されるのを回避できたようだ。
だが、よくよく考えてみると、身を隠した事は余計誤解を招いてしまう事に気付き後悔する。
(なんで隠れたんだ俺……)
やましい所は無いのだから、素直に事情を話せばよかった。
けれども、あの眼前に迫った絶対領域は、そんな冷静な判断すら奪い去ってしまうらしい。
(落ち着け俺。KOOLだ……素数を数えてKOOLになるんだ潤!)
どこかで見た漫画を思い出し素数を数える。
が、その度に目に焼きついた太ももが頭から離れない。
(そうだ! 脳内で妄想……じゃなくて、想像するから美化されるんだ。現実を見ろ潤!)
意を決して、もう一度蓋を開ける。今度は音を立てないよう静かに頭を突き出した。
(ふ、太ももが四つになってる)
黒と白の太ももは、北川の想像を遥かに超える代物だった。
太ももの主達は、足元に北川がいることを知らずに無防備な体勢で話を続ける。
「それにしても、潤は遅いわね」
「まったく。どこで道草を食っているのでしょう」
喋るたびに腰を動かすためか、そのさらに奥が見えそうで見えない。
危険だと理解しつつも、北川は血眼になりながらその奥を覗く。
もっと近くで見ようとした瞬間、白い方のふとももが体勢をずらす。
それと同時に床に何かが落ちる音がした。
(こ、これは!)
それに気付かないほど、眼前に広がる新たな景色は北川を虜にしていた。
「潤」

86 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 11:22:02 ID:CZy09TGd
(ああ、梨花ちゃんって意外と……)
「潤」
(風子は年相応というか、それはそれで素晴らしかったが)
「潤」
(梨花ちゃんのは……こう、幼い姿に似合わないアンバランスな)
「潤」
(だが、それがいい!)
「……潤」
肩を叩かれてようやく気付いた。
北川の眼前にあるのは、大人びた景色でなくこめかみに青筋を立てた梨花の顔。
「あ、いや、その……梨花ちゃんってさ」
「なにかしら」
「意外とセクシーだ――」
「寝てなさい」
親指を立て爽やかに褒め称える北川を、梨花は容赦なく踏み潰した。



     ◇     ◇     ◇     ◇




87 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:23:14 ID:Ha9sSO4w
   

88 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:23:58 ID:7CMdOfWU
  

89 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 11:25:15 ID:CZy09TGd
北川が折檻されている際、風子は眠いからという理由でその場を離れていた。
守衛室に備えてあったベットに潜り込みながら、小さく息を漏らす。
(第二回の放送に到達できませんでしたか)
二人にはああ言ったが、風子は生きているとは微塵も思っていなかった。
岡崎の事は辛いが、泣き叫べば蘇る訳ではない。
だからと言って、復讐するつもりなど絶対にない。
それがどんな悲劇を引き起こすかは『前回』で痛いほど理解していたから。
部屋の隅で怯える北川と、鬼の形相でお仕置きをする梨花を見つめながら、今まで見せた事のない緊張した表情を浮かべた。
(ちょっと喋りすぎでした。風子はもっとお馬鹿でないといけませんね)
この島に連れて来られた時から決めていた。普通の伊吹風子でいようと。
連れて来られて気付いたが、鷹野と言う女性は風子について特別なにか行動を起こすことはなかった。
それはつまり、あの女でさえ風子が二度目の参加者だと言う事実を知らされていないかもしれないと言う事だ。
だから下手に名乗り出ずに、事情を知らない一人の少女として振舞ってきた。
余計なことは口出さないつもりだったし、能動的な行動を起こすつもりもない。
ただ、北川や梨花が危険な事態になった時だけは、能動的になろうとも考えている。
そんな心情を悟られないために、風子はギリギリまで『天然で自己中心的な伊吹風子』を演じなければならない。
(ごめんなさい北川さん。梨花ちゃん。風子は悪い子です)
何も言えない事を心で詫びつつ、風子は固い決意を胸に誓った。
(今度こそ、風子は『仲間』と一緒に元の世界に還ります)
心に潜む『伊吹風子』を丁寧にしまい、今まで通りの『伊吹風子』を体に馴染ませ、浅い眠りに落ちていった。






【A-3 百貨店二階第二守衛室/1日目 日中】




90 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:26:49 ID:Ha9sSO4w
   

91 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:28:04 ID:Ha9sSO4w
   

92 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:28:20 ID:7CMdOfWU
  

93 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 11:29:51 ID:CZy09TGd
【北川潤@Kanon】
【装備】:コルトパイソン(.357マグナム弾6/6)、首輪探知レーダー、車の鍵
【所持品】:支給品一式×2(地図は風子に奪われまたまま)、チンゲラーメン(約3日分)、ゲルルンジュース(スチール缶入り750ml×3本)
     ノートパソコン(六時間/六時間)、 ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×7
【状態】:お仕置き中
【思考・行動】
基本:殺し合いには乗らない。というかもう乗れねーつーの!
0:ゆ、ゆるじで梨花ぢゃん……
1:百貨店内の探索&トラップ
2:信頼できる仲間が来るのを待つ
3:百貨店を拠点とし、風子と梨花を守る
2:水瀬名雪や信用できそうな人物を捜索したいんだけど、二人(風子達)をわざわざ危険に晒すわけにもいかないからなぁ
3:PCの専門知識を持った人物に役場のPCのことを教える
4:鳴海孝之(名前は知らない)をマーダーと断定
5:またか!また『童貞男』なのか!
【備考】
※チンゲラーメンの具がアレかどうかは不明。
※チンゲラーメンを1個消費しました。
※パソコンの新機能「微粒電磁波」は、3時間に一回で効果は3分です。一度使用すると自動的に充電タイマー発動します。
 また、6時間使用しなかったからと言って、2回連続で使えるわけではありません。それと死人にも使用できます。
※チェーンソのバッテリーは、エンジンをかけっ放しで2時間は持ちます。
※首輪探知レーダーが人間そのものを探知するのか、首輪を探知するのかまだ判断がついてません。
※車は百貨店の出入り口の前に駐車してあります。(万一すぐに移動できるようにドアにロックはかけていません)
※車は外車で左ハンドル、燃料はガソリン。
※一連の戦闘で車の助手席側窓ガラスは割れ、右側面及び天井が酷く傷ついています。
※梨花をかなり信用しました。
※電線が張られていない事に気付きました。
※『廃坑』にまだ入り口があるのではないかと考えています。
※禁止エリアは、何かをカモフラージュする為と考えています。
※ノートパソコンの二回目の新機能は確認していません。
※幼女に目覚めました

94 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:31:31 ID:Ha9sSO4w
   

95 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 11:31:39 ID:CZy09TGd


【伊吹風子@CLANNAD】
【装備】:無し(コルトパイソンは潤に預けたまま)
【所持品】:支給品一式、猫耳&シッポ@ひぐらしのなく頃に祭、赤いハチマキ(結構長い)、風子特製人生ゲーム
【状態】:健康。満腹
【思考・行動】
0:今まで通り『伊吹風子』を演じる(受動的)
1:Zzzzzz…
2:北川さんは風子がいないと本当に駄目ですね。やれやれです
【備考】
※状況を理解していないように装っています
※どれだけの知識や経験があるかは、後の書き手さんにお任せします
※北川をかなり信用。梨花も信用しています。



96 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:32:33 ID:Ha9sSO4w
   

97 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/08(水) 11:33:29 ID:7CMdOfWU
 

98 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 11:33:34 ID:CZy09TGd
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備】:催涙スプレー@ひぐらしのなく頃に 祭
     ヒムカミの指輪(残り2回)@うたわれるもの 散りゆく者への子守唄
     紫和泉子の宇宙服@D.C.P.S.
【所持品】:支給品一式
【状態】:頭にこぶ二つ。北川をお仕置き中
【思考・行動】
基本:潤と風子を守る。そのために出来る事をする
0:このロリコンめ!
1:捜索、トラップ仕掛けを潤と一緒に始める(風子のトラップ技術を評価)
2:百貨店に誰かが来るのを待っている
3:取り敢えずは潤達と一緒に居る
4:もしも(別の仲間が入る等して)自分がいなくても潤達が安全だと判断出来たら、一人で圭一達を探しに行く(D-2へ)
5:死にたくない(優勝以外の生き残る方法を見付けたい)
【備考】
※皆殺し編直後の転生。
※ネリネを危険人物と判断しました。
※探したい人間の優先順位は圭一→赤坂の順番です。
※北川と風子をかなり信用しています。
※電線が張られていない事に気付きました。
※『廃坑』にまだ入り口があるのではないかと考えています。
※禁止エリアは、何かをカモフラージュする為と考えています。

※ヒムカミの指輪について

ヒムカミの力が宿った指輪。近距離の敵単体に炎を放てる。
ビジュアルは赤い宝玉の付いた指輪で、宝玉の中では小さな炎が燃えています。
原作では戦闘中三回まで使用可能ですが、ロワ制限で戦闘関係無しに使用回数が3回までとなっています。



99 :童貞男と幼女の部屋 ◆Qz0e4gvs0s :2007/08/08(水) 11:34:30 ID:CZy09TGd
※紫和泉子の宇宙服について

紫和泉子が普段から着用している着ぐるみ。
ピンク色をしたテディベアがD.C.の制服を着ているというビジュアル。
水に濡れると故障する危険性が高いです。
イメージコンバータを起動させると周囲の人間には普通の少女(偽装体)のように見えます。
朝倉純一にはイメージコンバータが効かず、熊のままで見えます。
またイメージコンバータは人間以外には効果が無いようなので、土永さんにも熊に見えると思われます。
(うたわれの亜人などの種族が人間では無いキャラクターに関して効果があるかは、後続の書き手さんにお任せします)


宇宙服データ
身長:170cm
体重:不明
3サイズ:110/92/123


偽装体データ
スレンダーで黒髪が美しく長い美人
身長:158cm
体重:不明
3サイズ:79/54/80

100 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:19:48 ID:teeJ8ptM
住宅街の一角で、未だ周囲に立ち込めているドス黒い煙。
焼け焦げた肉より放たれる、酷く吐き気を催す悪臭。
激戦の傷痕が深く刻み込まれた地で、状況説明を受けた前原圭一は苛立たしげに声を洩らす。

「クソッ! 武さん、一体どうしちまったんだよ……っ」

先の死闘で、自分達は堅い信頼関係を活かして咲耶を打倒し、難敵佐藤良美すらも撤退せしめた。
倉成武は窮地に陥っていた自分を救ってくれたのだ。
その武が突如暴走し、事もあろうに手榴弾まで投げつけてきたと云う事実は、圭一に大きな衝撃を与えていた。

(焦るな……クールになれ、前原圭一!)

圭一は奥歯を噛み締め、ともすれば溢れ出しかねない感情の奔流を必死に抑え込む。
否定したかった。
武が仲間に攻撃を仕掛ける筈が無いと、全力で声を張り上げて主張したかった。
だが出会ったばかりの白鐘沙羅はともかく、遠野美凪が嘘を吐くとは考え難い。
それに何より焼け焦げた大地の惨状が、此処で爆発があったという事実を証明している。
今は目の前の現実を認め、的確に対処しなければならない時だ。

「ク……こうしちゃいられねえ! 早く武さんを探しにいこう!」

武を捜し出し、凶行の理由を聞き出す――それが圭一の判断だった。
だが駆け出そうとした圭一の後ろ手を、しっかりと沙羅が掴み取る。

「ちょっとアンタ、落ち着きなさいよ! 何処に行ったのかも分からないのに、無駄に走り回ってもしょうがないでしょ!」
「っ…………」

沙羅の言葉に対し、圭一は何の反論も返せなかった。
事実自分達は武を完全に見失っており、今何処に居るかまるで把握出来ていない。
そんな状況で闇雲に捜し回った所で、悪戯に体力を浪費するだけなのは明白だった。
圭一は今度こそ頭を冷やし、一つの結論を弾き出す。

101 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:21:45 ID:teeJ8ptM

「なら最初の予定通り神社に向かおう。俺達は、殺し合いに乗った土見禀を止めなくちゃいけない」
「倉成さんはどうするんですか?」
「……行き先が分からない以上、今は探しても仕方無い。神社で合流出来る可能性に賭けよう」
「……分かりました」

不安の種は尽きぬものの、まず神社に向かうという方針で一致する美凪と圭一。
だがそこでまたも沙羅が制止の声を上げる。

「それは危険なんじゃないの? 武は、圭一達が神社に向かおうとしていたのを知っている……。
 もし武が殺し合いに乗ってるなら、待ち伏せされる可能性があるわ」
「な――! 武さんがそんな事する訳……」
「――無いとは言い切れない、でしょ? 私と美凪は実際に攻撃されたんだから」

仮にも探偵助手、予測可能な不安要素は決して見逃さない。
圭一の言葉を途中で遮り、己の心に沸き上がった疑心を吐き出す沙羅。
自分は何もしていないにも関わらず、問答無用に手榴弾で攻撃されたのだ。
運良く無傷で済んだものの、一歩間違えれば殺されてしまっていたかも知れない。
そのような蛮行に及んだ武など、信用出来る筈も無い。
同じ目に遭った美凪もまた、沙羅の言葉を否定出来ないまま俯いている。
だがそんな二人の疑心を吹き飛ばす程の勢いで、圭一は心の奥底から思い切り叫んだ。

「違う――――そんな風に考えちゃ駄目だ!! 武さんは殺し合いに乗ったりしない!!!」

圭一の心より溢れ出る怒号が、周囲一帯の空気を振動させる。
その凄まじい剣幕、凄まじい語気を目の当たりにし、思わず沙羅は息を呑んだ。

「いきなり攻撃された沙羅が、武さんを疑いたくなるのも無理は無いさ。でも……それでも!
 皆で力を合わせなきゃ、この殺し合いは止められない! 信じるのは難しいけど、信じなきゃ始まらないんだッ!!」


102 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:23:37 ID:VGUJODsI


103 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:23:53 ID:teeJ8ptM

それはループ世界での経験による恩恵か、もしくは彼自身が元より持ち合わせていた資質なのか。
美凪ですら疑心を捨て切れぬ今も尚、圭一は武を――仲間を信じようとしていた。
そして圭一の言葉は子供のような主張にも聞こえるが、道理が通っている部分もある。
実際問題この殺人遊戯を覆すには、出来るだけ多くの戦力が必要となるだろう。
その為には、己の内に巣食う猜疑心を捨て去らなければならないのだ。
迸る想いを真正面より向けられた沙羅は、呆れたかのような溜息を洩らす。

「はあ……分かったわよ。しょうがないから、アンタのやり方に付き合ってあげる」

未だ武への疑惑が晴れた訳では無いが、今の圭一を説得するのは不可能だろう。
それに何より――何処までも純粋な圭一の想いが、自分もまた人を信じてみようという気にさせる。
親しい人間を殺し尽くされてしまった自分にすら、そう思わせる。

「そうと決まったら、こんな所でグズグズしてても仕方無いよね。急いで神社に行こう」
「……サンキュー、沙羅」
「お礼なんて要らないわ。ほうもう、早く車に乗って!」

ぶっきらぼうな言葉を返す沙羅だったが、その表情は心無しか柔らかくなっている。
それは沙羅が、圭一を仲間として認めた証なのかも知れない。
沙羅達は手早く荷物を纏め、出立の準備を整えた。
まず最初に沙羅が運転席へと乗り込み、遅れて美凪と圭一が車の後部へと移動する。

「救急車なんて運転した事無いけど……何とかやってみる。圭一と美凪は後ろで休んでていいわよ」
「おう、悪いな」
「……ご苦労様で賞、進呈します」

特殊車両の操縦経験がある者など居ないのだから、誰が運転しても大差無いだろう。
故に運転は五体満足である沙羅が請け負い、疲労の色が濃い圭一達は後部座席で休憩するという形になった。
沙羅が慎重にアクセルペダルを踏み込むと、救急車はゆっくりと動き出した。

「ふう……ちょっと疲れたな……」

104 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:24:38 ID:VGUJODsI


105 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:25:33 ID:teeJ8ptM

戦場を離れた事でやっと緊張が解けたのか、圭一は珍しく弱音を零す。
それも仕方の無い事だろう。
思えば第一回放送以降、緊張と戦いの連続だった。
佐藤良美と二度に渡る激闘を行い、病院では土見稟の襲撃を受けた。
その全てを仲間達とのチームワークで乗り切ったものの、流石に無傷という訳にはいかなかった。
ナイフで刺され銃弾で貫かれた左肩は酷く痛み、全身の至る所には細かい傷が刻み込まれている。
限界寸前まで酷使された圭一の身体は、満身創痍と表現するに相応しい状態なのだ。

圭一が憔悴し切った表情を浮かべていると、すぐ横から優しい声が聞こえてきた。

「……大丈夫ですか、前原さん? お疲れのようでしたら、もう少し眠りますか?」
「――遠野さん」

振り向いた圭一の目に飛び込んできたのは、気遣うような視線を送ってくる美凪の姿。
だが良く注視すれば美凪もまた、疲弊の色を隠し切れぬ様子となっている。
それは何故か――考えるまでも無く、先の戦いで名雪との激闘を繰り広げた所為だろう。
美凪は、圭一の周りには居なかったタイプの女の子。
底無しに優しい、お世辞にも戦いに向いているとは言えぬ女の子なのに、それでも懸命に戦ってくれた。

(こりゃヘコたれてる場合じゃないな……。こんなトコをレナや魅音に見られたら、絶対怒られちまう)

そうだ――こんな時こそ男である自分が、周囲を元気付けてやらねばならないのだ。
圭一は己の心を強引に奮い立たせ、にこりと笑ってみせた。
そのままおもむろに手を伸ばし、美凪の艶やかな髪を無造作に撫で回す。

「平気平気。遠野さん、いつも心配してくれて有り難うな」
「え、あの……っ!?」

予期せぬ圭一の行動を受け、美凪は見る見るうちに頬を紅潮させてゆく。
圭一はその事に気付かぬまま、続けざまに口を開く。

106 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:26:41 ID:VGUJODsI


107 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:27:22 ID:VGUJODsI


108 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:27:27 ID:teeJ8ptM

「俺、この島に来てから何度も遠野さんに助けられた。レナや詩音が死んだ時も、遠野さんのお陰で立ち直る事が出来たんだ。
 改まって言うのも何だけど、本当に感謝してる」
「……前原さん」

嘘偽りの一切無い純真な言葉が、疲弊した美凪の心を癒してゆく。
髪の毛越しに伝わる圭一の体温が、美凪の心を暖めてゆく。
美凪は圭一の手を優しく握り締めて、言葉一つ一つの意味を噛み締めるように、ゆっくりと想いを伝える。

「……私だって何度も前原さんに助けられました。
 突然殺し合いを強要されて……それでも前原さんが居てくれたから、これまで生きてこれました。
 だから、感謝してるのは私も一緒です」

殺人遊戯の開始以来、ずっと行動を共にし続けてきた二人。
その道中で二人はお互いに支え合い、庇い合い、信頼を深めていった。
今や圭一も美凪も互いに対して、仲間と云う枠組みを超越した感情を抱きつつある。

「…………」
「…………」

二人は顔を赤らめたまま、それでも笑顔を浮かべて見つめ合う。
互いの手を取り合い、様々な想いが籠められた視線を交錯させる。
それは傍目から見ればきっと、仲睦まじい恋人同士のように映るだろう。

だが――そこで圭一はある事を思い出し、運転席の方へと身体を動かした。
疑問の表情を浮かべる美凪を余所に、圭一はゆっくりと右手を伸ばし、運転中の沙羅の頭を撫で回す。

「沙羅も有り難うな。出会ったばかりなのに、もう何回か助けられちまった」
「ちょちょちょ、ちょっと圭一!? うう、運転中にそんな事したら危ないよ!」
「あ……そうだな。悪い悪い、運転に集中してくれ」

109 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:29:07 ID:VGUJODsI


110 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:30:52 ID:teeJ8ptM

感謝の気持ちを伝えるのは大切な事だが、それが原因で事故を引き起こしてしまっては元も子もない。
運転の邪魔をするのは不味いと判断し、圭一はすぐに手を引き戻した。
再び視線を後方に向けると、そこでは何故か美凪が不機嫌そうな顔をしていた。



土見稟を止める為に、武との再会を果たす為に、神社へと向かう圭一達。
だが圭一達は知らない――武は未だ住宅街で気絶しているという事実を。


 ◇  ◇  ◇


多くの命が散った惨劇の地に、今尚留まり続ける一つの影。
血染めの巫女装束を纏った少女――佐藤良美は足音を押し殺し、住宅街を慎重に進んでいた。
民家の塀を存分に利用し、身を隠しながら目標地点に近付いてゆく。
良美の耳に爆発音が届いたのは、約二十分程前の出来事だった。
聞こえてきた方角、場所は、先程圭一達と一戦交えた地点の辺りだ。

(圭一君達どうしちゃったのかな? 誰か新しい襲撃者が現れたのかな?
 それとも――仲間割れしちゃったのかな?)

可能性は幾つか考えられるが、いずれにせよ爆発音が圭一達に関係しているのは確実。
これは自分にとって、またとない絶好のチャンス。
人数の面では圧倒的に不利だが、今の圭一達はこれ以上無い程に消耗し切っている筈。
そこを漁夫の利の形で急襲すれば、労せずして殲滅する事が出来るだろう。

(待っててね、圭一君。まだ死んじゃ駄目だよ……貴方は私が殺すんだから)

111 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:31:47 ID:VGUJODsI


112 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:33:03 ID:VGUJODsI


113 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:33:10 ID:teeJ8ptM

間もなく訪れるであろう再戦の時に思いを馳せ、良美は凄惨に口元を吊り上げる。
全てを失った良美にとって、未だ仲間と行動を共にする圭一は許し難い存在だった。
自分はもう二度と幸せになれぬと云うのに、何故圭一だけが次々と仲間を得ているのだ。
的確に動いてきた筈の自分だけが不幸になるなど、絶対に認めない。
ただのお人好しに過ぎぬ圭一が幸福になるなど、絶対に許さない。
どのように絶望させてやろうかと、どのように殺してやろうかと、そんな事ばかりが頭に浮かんでくる。
だがそんな良美の思考は、突如視界に入った男の姿によって中断される。

「この人は確か……武さん、かな?」

良美の前方10メートル程の路上に、圭一と行動を共にしていた男――倉成武が倒れていた。
見れば武は身体の至る所に傷を負っているが、生きてはいるようである。
恐らくは先の爆発音がした時に戦闘となり、必死に逃げてきたのだろう。
この男も圭一の仲間である筈だから、優先殺害対象だ。
手早く排除して、本命である圭一を殺しにいかなければならない。
そう判断した良美は鞄の中から地獄蝶々を取り出して、その切っ先を武の首に押し当てた。
そのまま武の首を貫こうとして――刹那のタイミングで、最高の名案を思い付いた。
……思い付いてしまった。

「うん、そうだよね。このまま殺しちゃうなんて勿体無いよね」

自身が考え出した案に満足した良美は、嬉々とした様子で周囲の状況を確認し始めた。
付近を歩き回ってみたが、自分と武以外の人影は見受けられない。
耳を澄ましてみても何も聞こえて来ないのだから、この近辺で戦闘が行われているという事は無い筈。
恐らくはもう皆移動して、何処か別の場所に戦場を移したのだろう。
ならば無理に遠くまで移動する事もあるまい。

「うーんと……、やっぱり拘束する為の道具が欲しいかな」


114 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:34:47 ID:VGUJODsI


115 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:36:15 ID:FISnFABX
   

116 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:36:17 ID:teeJ8ptM

幸い此処は住宅街、一般人が持ち得る範囲の道具ならばすぐ手に入る。
良美は近くにあった民家の小屋に侵入し、程無くしてロープを発見した。
それを用いて、武の両腕両足をしっかりと拘束する。
作業中に意識を取り戻してしまうのでは無いかと云う危惧もあったが、それは杞憂に終わった。
かくして全ての準備を済ませた良美は、おもむろに足を振り上げて――武の顔面を思い切り蹴り飛ばした。


 ◇  ◇  ◇


「……うがあああああッッ!?」

顔面を強打された武が、悲痛な呻き声を洩らしながら跳ね起きようとする。
だが両手両足を拘束されている所為で、起き上がる事は叶わず、ただ地面を転げ回るに留まった。
激痛に悶える武の視界に入ったのは、少し前に戦ったばかりの良美の姿だった。

「ぐっ……お前は、佐藤良美……!」
「――お早う武さん。駄目だよぉ、こんな路上で寝てちゃ」

のた打ち回る武を見下ろしながら、心底愉しげに微笑む良美。
慌てて武は臨戦態勢を取ろうとするが、縛られてしまっている以上それは不可能だ。
キュレイウイルスの恩恵で、常人より多少優れた膂力を持っているとは云え、力任せにロープを引き千切れる程では無い。
精々、倒れたままの態勢で相手を睨み付けるのが精一杯だった。

「畜生、こんな事になるなんてっ! 俺をどうする気だ……このまま嬲り殺すつもりか!?」

117 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:36:49 ID:VGUJODsI


118 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:36:54 ID:FISnFABX
  

119 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:38:08 ID:teeJ8ptM

自分が気絶するまでの経緯は、朧げではあるが覚えている。
自分は一時の激情に身を任せて暴走し、圭一達の下を離れてしまった。
そして酷く消耗した状態での全力疾走が長続きする筈も無く、すぐに意識を失ってしまったという訳である。
恐らくはそこを良美に発見され、無防備のままに縛り上げられてしまったのだろう。
孤立無援、身動きが取れぬ状態での、殺人鬼との対峙。
掛け値無し、正真正銘の絶体絶命的状況だ。
しかし取り乱す武を余所に、良美は冷静な口調で話を進めてゆく。

「落ち着いてよ武さん。私のお願いさえ聞いてくれれば、別に何もしないよ?」
「お願い……? それはどういう事だ……?」

良美の意図を図りかねて、訝しげな表情となる武。
良美にとって自分は邪魔者でしか無い筈なのに、何故すぐ殺そうとしないのか理解出来なかった。
だがそんな武の疑問は、次の良美の言葉で一瞬にして吹き飛ばされる事となる。

「前口上なんて意味が無いし、単刀直入に言うね。武さん――――私の下僕として働いてくれないかな?」
「下僕……だと?」
「そう。私の命令通りに人を騙し、裏切り、殺し続ける操り人形になって?
 勿論、ずっととは言わない。圭一君を殺すまでで良いよ」

武を眷族として従え、圭一やその他の邪魔者達を排除する――それが良美の目的だった。
そちらの方が、武一人を殺すよりも遥かに有益だ。
優勝を目指す上でも、圭一を苦しませて殺すといった意味でも、これ以上無いくらい最高の一手だ。
しかし当然武も素直に頷いたりはしない。

「ふん、馬鹿らしい。そんな条件、俺が呑むとでも思ってるのか?」
「まさか断る気? それなら此処で殺しちゃうよ?」
「……殺したきゃ殺せよッ! 俺はお前みたいな奴の悪事に加担する程、落ちぶれちゃいねえんだ!」

120 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:39:03 ID:FISnFABX
   

121 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:39:25 ID:VGUJODsI


122 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:39:49 ID:teeJ8ptM
雛見沢症候群の影響もあり、冷静な判断力を欠いている武だったが、それでも我が身惜しさで屈服したりはしない。
たとえどれだけ痛めつけられようとも、道を曲げるつもりなど毛頭無かった。
だがこの武の反応は、良美の予想通り。
圭一と組むような偽善者の懐柔が容易で無いのは、火を見るより明らかだ。
故に良美は、間髪置かず本命の策を発動させる。
頑強な意思を秘めた人間さえも陥落させ得る、悪魔の策を。

「ふーんそっか、断っちゃうんだあ……。一つ確認するけど、貴方は武さんだよね?」
「ああ、そうだよ! 俺は倉成武、こう見えたって人並み程度の正義感はあるつもりだ! 絶対お前なんかに屈したりしねえ!」

良美の機嫌一つで殺されかねない状況だというのに、気丈に啖呵を切る武。
そして――良美の口より放たれる、武にとって最悪の言葉。


「そんな事言って良いのかな? もうちょっと慎重に発言しないと、貴方の大切な人まで死んじゃうよ?」

紡がれた言葉が鼓膜を震わせ、情報として脳に伝達される。
良美が言わんとする事を正しく把握するや否や、武は掠れた声を絞り出した。

「――――な……ん……だと……?」

大切な人とは誰か――そんなの決まっている。
自分にとって大切な人間は、何を差し置いてでも守るべき者は、小町つぐみ以外に存在しない。
良美は、そのつぐみの身に何らかの異変が起きたと示唆しているのだ。
武はカッと目を見開くと、あらん限りの声で絶叫した。

「お前、それはどういう事だッ!!! つぐみに……つぐみに何かしやがったのか!?」
「……だいぶ前に会った時、今の貴方と同じように拘束させて貰ったよ。
 凄い分かり辛い場所に隠してきたから、誰かに発見されて殺されるって事は無い思う。でもね――」

言葉を途中で止めて、良美は鞄の中から島の地図を取り出した。
もう禁止エリアに指定された場所を指差しながら、何処までも愉しげに告げる。

123 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:40:47 ID:VGUJODsI


124 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:40:53 ID:FISnFABX
   

125 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:41:10 ID:teeJ8ptM

「この殺し合いには『禁止エリア』っていうのがあるよねえ? 
 拘束された状態で自分の居る場所が禁止エリアになったら、どうなるかな?」
「――――――――!!」

そこまで聞いた武は、全身から血の気が引いていく感覚を覚えた。
実際に試した訳では無いが、主催者が嘘をついていない限り、禁止エリアに入れば首輪を爆破されてしまうだろう。
このまま放って置けば、いずれつぐみは禁止エリアにより殺されてしまう筈だった。

「『つぐみ』さんを助ける方法はたった一つ……ここから先は、わざわざ言わなくても分かるよね?
 もう一度言うよ――私の下僕になって。私の命令通りに動いて邪魔な連中を、圭一君を殺してよ」
「…………」

この広大な島の中、巧妙に隠された人間を見つけるのはまず不可能。
そしてつぐみの居場所を知る人物は、今の所良美だけだ。
即ち良美の助力を得ない限り、つぐみは救えないという事になる。
それでも――それでも尚、武は懸命に抗おうとする。

「そんなの出来る訳ねえだろ! 知らない奴を殺すのはまだ良いさ。
 だけど圭一は一緒に行動した仲間なんだ、裏切れねえよ!」
「へえ……」

正義感という名の城壁は、つぐみの命を握られてしまった所為で粉々に打ち砕かれた。
最後に武を支えるのは、これまで圭一と培ってきた信頼関係。
仲間として行動する事により育まれた、掛け替えの無い大切な友情だ。
だが良美は――少女の皮を被った悪魔は、それすらも易々と破壊してのける。

「本当に立派な心掛けだね。でも報われないと思うよ? 何しろ、圭一君は武さんを見捨てたんだから」
「何……? 圭一が俺を見捨てただと?」
「だってそうじゃない。何で武さんは、こんな所で眠ったまま放ったらかしにされていたの?
 何で圭一君は、何時まで経っても助けに来ないの?」
「それ……は……」

126 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:42:04 ID:VGUJODsI


127 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:42:17 ID:FISnFABX
   

128 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:42:38 ID:teeJ8ptM

武はどうにかして反論しようとしたが、適切な言葉が何も思い浮かばなかった。
良美の言う通り、誰も助けに来ないのはおかしいのだ。
確かに自分は信じられないような蛮行をしでかしてしまったし、美凪と沙羅に見限られるのは分かる。
しかし圭一には攻撃を仕掛けていないし、先刻の戦いでは命を救いもしてやった。
それならば当然圭一は、命の恩人である自分を信じようとしてくれる筈だ。
にも関わらずその圭一すらも助けに来ないのは、一体どういう事か。

「ま……まさか……圭一は……」

思い起こされるは、救急車のミラー越しに垣間見た圭一の表情。
悪鬼の如き笑みを湛えた顔。
そうだ――そうだったのだ。
あの時から既に、本当の意味では信用などされていなかった。
自分はこれまでずっと、騙され続けていたのだ。
圭一にとって自分は、生き延びる為の駒でしか無かったのだ。

「ふ、はははははは……そうか……そうだったのかっ…………。圭一は……ずっと俺を騙してたのか……!
 善人面して、莫迦なお人好しを利用し続けてきたって訳か……っ!!」

そこまで気付いてしまえば、怒りよりも寧ろ笑いがこみ上げて来た。
年下の子供にアッサリと騙され、良いように利用された自分自身が、滑稽で仕方無かった。
傷の痛みも気にならなくなる程に、目に映る物全てを破壊し尽くしたくなる程に、可笑しかった。
最早良美の提案を拒む理由など、何処にも存在しない。
所詮こんな島で作り上げられた信頼関係など、偽物に過ぎなかったのだ。
見せ掛けだけで実の伴わぬ、薄っぺらいハリボテのようなものだ。
信じられるのは自分自身と、愛しいつぐみのみ。
つぐみと共に生き延びる為ならば、誰だって殺してやろう。
一頻り笑い終えた武は、もう何の躊躇も無く、それこそ雑草を踏むくらいの気軽さで言い放つ。

129 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:43:03 ID:hNXdYgfu
   

130 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:43:41 ID:VGUJODsI


131 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:43:48 ID:teeJ8ptM

「分かったよ、良美……お前の提案に乗ってやるよ。俺は絶対に圭一を殺す。
 他の連中も全員殺して、つぐみと一緒に生き延びてやるっ……!」

とうとう放たれた服従の言葉に、良美は満面の笑みを以って応える。

「――うん、期待しているよ武さん」

良美は思う――予想以上に上手くいったと。
言うまでも無く良美はつぐみを拘束などしていないし、そもそも出会ってすらいない。
ただ適当な出鱈目を並べただけに過ぎぬ。
良美が行った作戦は、そう複雑なものでは無い。
あたかも相手の想い人の命を握っているかのように振る舞い、上手く行けばそのまま従属させる。
何らかの理由により目論見が失敗したならば、その場で撃ち殺してしまえば良いだけの事。
つまり良美はリスクの無い賭けを行い、そして勝利を掴み取ったのだ。



雛見沢症候群と良美の策略により、決して後戻りの出来ぬ道を選んでしまった武。
武は知らない――圭一は未だに自分を信じてくれているという事実を。

132 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:43:53 ID:FISnFABX
  

133 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:44:41 ID:VGUJODsI


134 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:44:46 ID:FISnFABX
   

135 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:44:52 ID:teeJ8ptM




【F-4左 住宅街/1日目 午後】
【前原圭一@ひぐらしのなく頃に祭】
【状態:精神安定、右拳軽傷、体全体に軽度の打撲と無数の切り傷、左肩刺し傷(左腕を動かすと、大きな痛みを伴う)】
【装備:悟史のバット@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式×2、折れた柳也の刀@AIR(柄と刃の部分に別れてます)、キックボード(折り畳み式)、手榴弾(残1発)】
【思考・行動】
基本方針:仲間を集めてロワからの脱出、殺し合いには乗らない、人を信じる
1:まずは神社に向かう。
2:美凪を守る。
3:土見稟の凶行を止める。
4:倉成武との再会を果たす
5:知り合いとの合流、または合流手段の模索
6:良美を警戒
7:あゆについては態度保留、但し大石を殺したことを許す気は今のところない。
8:土見稟を警戒
9:ハクオロを警戒
【備考】
※倉成武を完全に信用しています。
※宮小路瑞穂、春原陽平、涼宮茜、小町つぐみの情報を得ました
※救急車(鍵付き)のガソリンはレギュラーです。現在の燃料は残り1/2くらいです。
※沙羅の事は信用しています

136 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:45:39 ID:teeJ8ptM

【遠野美凪@AIR】
【状態:軽度の疲労】
【装備:包丁】
【所持品:支給品一式×2、救急箱、人形(詳細不明)、服(詳細不明)、顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)】
基本方針:圭一についていく
1:まずは神社に向かう
2:知り合いと合流する
3:佐藤良美を警戒
4:土見稟を警戒
※倉成武を信用するかどうかは保留。
※宮小路瑞穂、春原陽平、涼宮茜、小町つぐみの情報を得ました
※あゆのことは基本的には信用しています
※沙羅と情報交換しました。
※沙羅の事は信用しています

【白鐘沙羅@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
【装備:永遠神剣第六位冥加@永遠のアセリア −この大地の果てで− ワルサー P99 (16/16)】
【所持品:支給品一式 フロッピーディスク二枚(中身は下記) ワルサー P99 の予備マガジン8 カンパン30個入り(10/10) 500mlペットボトル4本】
【状態:軽度の疲労・強い決意・若干の血の汚れ】
【思考・行動】
基本行動方針:一人でも多くの人間が助かるように行動する
1:まずは神社に移動する。
2:情報端末を探す。
3:首輪を解除できそうな人にフロッピーを渡す
4:前原にタカノの素性を聞く。
5:混乱している人やパニックの人を見つけ次第保護。
6:最終的にはタカノを倒し、殺し合いを止める。 タカノ、というかこのFDを作った奴は絶対に泣かす。

137 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:46:06 ID:FISnFABX
  

138 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:46:24 ID:VGUJODsI


139 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:46:39 ID:teeJ8ptM
【備考】
※FDの中身は様々な情報です。ただし、真偽は定かではありません。
下記の情報以外にも後続の書き手さんが追加してもOKです。
『皆さんに支給された重火器類の中には実は撃つと暴発しちゃうものがあります♪特に銃弾・マガジンなどが大量に支給された子は要注意だぞ☆』
『廃坑の入り口は実は地図に乗ってる所以外にもあったりなかったり(ぉ』
『海の家の屋台って微妙なもの多いよね〜』
『H173を打たれても早めにC120を打てば症状は緩和されます(笑)』
少なくともこの4文はあります。
H173に基本的な情報や症状についての情報が載っています
場合によってはさらに詳しい情報が書いてある可能性もあります
※“最後に.txt .exe ”を実行するとその付近のPC全てが爆発します。
※↑に首輪の技術が使われている可能性があります。ただしこれは沙羅の推測です。
※双葉恋太郎の銃“S&W M60 チーフスペシャル(5/5)”は暴発しました。
※港には中型クルーザーが停船していますが、エンジンは動きません。
※パソコンに情報端末をつなげるとエンジンが動くというのはあくまでも沙羅の推測です。
※図書館のパソコンにある動画ファイルは不定期配信されます。現在、『開催!!.avi』のみ存在します。
※図書館についてある程度把握しました。
※隠しフォルダの存在を知りました。実際にパソコン内にあるかどうかは書き手さんにおまかせ。
※武たちと情報交換しました。
※圭一と美凪を信用しました。武については保留。

140 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:46:42 ID:2edjgCTF
 

141 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:46:57 ID:FISnFABX
  

142 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:47:22 ID:teeJ8ptM





【F-4 住宅街/1日目 午後】
【倉成武@Ever17】
【装備:投げナイフ2本、永遠神剣第四位「求め」@永遠のアセリア】
【所持品:支給品一式 ジッポライター、貴子のリボン@乙女はお姉さまに恋してる、富竹のカメラ&フィルム4本@ひぐらしのなく頃に】
【状態:L5侵蝕中。中度の疲労。極度の疑心暗鬼。頭蓋骨に皹(内出血の恐れあり)。頬と口内裂傷。頚部に痒み。 脇腹と肩に銃傷。刀傷が無数。服に返り血)】
【思考・行動】
基本方針:つぐみ以外誰も信用する気はありませんが、人質を取られている為良美の指示には従う。
1:圭一を殺害する
2:良美の指示に従い、他の参加者達を殺害する
3:圭一の殺害後、つぐみを救い出す
【備考】
※キュレイウィルスにより、L5の侵蝕が遅れています、現在はL3相当の状態で若干症状が進行しています。
※前原圭一、遠野美凪の知り合いの情報を得ました。
※富竹のカメラは普通のカメラです(以外と上物)フラッシュは上手く使えば目潰しになるかも
※永遠神剣第四位「求め」について
「求め」の本来の主は高嶺悠人、魔力持ちなら以下のスキルを使用可能、制限により持ち主を支配することは不可能。
ヘビーアタック:神剣によって上昇した能力での攻撃。
オーラフォトンバリア:マナによる強固なバリア、制限により銃弾を半減程度)
※沙羅と情報交換しました。
※キュレイにより少しづつですが傷の治療が行われています。


143 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 19:47:55 ID:FISnFABX
   

144 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/09(木) 19:48:40 ID:teeJ8ptM

佐藤良美@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:S&W M627PCカスタム(8/8)、地獄蝶々@つよきす、破邪の巫女さんセット(巫女服のみ)、ハンドアックス(長さは40cmほど)】
【所持品:支給品一式×3、S&W M36(0/5)、錐、食料・水x4、可憐のロケット@Sister Princess、タロットカード@Sister Princess、
大石のデイパック、  S&W M627PCカスタムの予備弾53、肉まん×5@Kanon、虎玉@shuffle、ナポリタンの帽子@永遠のアセリア、
日本酒x1(アルコール度数は46)、工事用ダイナマイトx1、発火装置、首輪(厳島貴子)】 】
【状態:軽度の疲労、手首に軽い痛み、左肩に銃創(出血は収まりつつある)、重度の疑心暗鬼、巫女服の肩の辺りに赤い染み】
【思考・行動】
基本方針:あらゆる手段を用いて、優勝する。
1:武を利用し尽くして、優勝を目指す
2:いつか圭一と美凪を自分の手で殺してやりたい
【備考】
※メイド服はエンジェルモートは想定。現在は【F-4】に放置されています。
※ハクオロを危険人物と認識。(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※名雪の第三回放送の時に神社に居るようようにするの情報を得ました
  (禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※ネリネを危険人物と判断しました(名前のみ)
※大空寺あゆ、ことみ、亜沙のいずれも信用していません。
※未成年が日本酒を飲んではいけません。
※大石の支給品は良美の持ってるハンドアックスのみです。

145 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:33:38 ID:vhlLYl0D
「もう少しで、この路地裏抜けて大通りにはいるわよ、後は公園まで一直線よ」
レジャービルを抜けたハクオロ達はD−3の公園に向かい今はD−2の路地裏を進んでいる。
車に乗っている襲撃者の事もあってか3者とも若干緊張していた。

「観鈴大丈夫か? 疲れていないか?」
「はい、大丈夫です……それにしても、もう襲撃者がくるなんて」
歩き続けていた観鈴をハクオロが労わった。
観鈴の疑問に瑛理子が
「メモを残して来たんだもの、それくらいのリスクは承知してたわ。でもこんなに早く襲撃者が来るとは思わなかったわ」
と言い、ため息をついた。
そんな瑛理子を
「こうなってしまえば仕方がない、とりあえず悠人達と合流しよう」
ハクオロは励ました。
「ええ行きましょう……そういえばもう少しで放送ね」
時計をみて瑛理子はいった。
「そうだな、公園に着く前に始まるか……急ごう」
「ええ」
そうして三人はまた進み始めた。

ハクオロ達が知る由もないのだが、
車に乗っていた者――純一とつぐみ――が殺し合いに乗っているのではなくゲームを止めるために動いてている事、
また今工場に向かっている事。
そのことに気付くのはいつだろうか?

146 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:33:48 ID:FISnFABX
   

147 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:35:25 ID:vhlLYl0D





 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・






「ん?……ちょっと2人とも止まって」
大通りに出ようとした時瑛理子が進むのを止めるように指示した。
「どうしたんですか? 瑛理子さん?」
疑問に思った観鈴に
「大通りに人がいたわ、金髪で。殺し合いに乗っているかもしれない」
「え……!?」
観鈴の顔が緊張と恐怖に染まった。
襲撃者だと思われる者から逃げている最中なのだ。
こう続けばそうなるも当然だろう。
3人に緊張した空気が流れていた。


148 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:36:03 ID:u/InVPDn


149 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:36:29 ID:vhlLYl0D

その中でハクオロが
「私が先にいこう。2人はここで待っていてくれ。安全だったら合図をする」
銃を構えそういった。
観鈴は驚き
「ハクオロさん!? 危ないですよ!」
と言ったが
「だからといってここで止まっているわけにもいかない。この中では私が適任だろう」
ハクオロは毅然と言った。その態度に観鈴と瑛理子は
「……解りました。気をつけて」
「ハクオロ、気を付けて」
「ああ……行ってくる」
ハクオロは笑みを残し大通りへ進んだ。




 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・






150 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:36:56 ID:u/InVPDn


151 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:37:34 ID:vhlLYl0D
(ふう、もう少しでプラネタリウムだね。たぶんいないだろけど、寄ってみなくちゃわからないな)
映画館から離れた陽平はハクオロ達に会うため北へ向かっていった。
(早く合流したい……独りは怖い……そうだ水を飲んで落ち着こう)
そう思いデイバックから水をとりだし飲もうとした時、背後から

「動くな」

その冷たい声を聞いた瞬間、手に持ったペットボトルを落とした。
落ちたペットボトルは地面におち、水がペットボトルからこぼれだしていた。

陽平はデイバックを投げ、手を頭にいた。
「ひいぃぃ! やめてくれ! 僕は殺し合いなんかに乗っていない! だから殺さないでくれ」
そう喚き散らした。
陽平の頭の中にはただ「死にたくない」ということしかなかった。
だから体面なんて気にする余裕などなかった

そんな状態の陽平を見て声をかけた主――ハクオロ――は銃を仕舞い陽平に穏やかに話しかけた。
「驚かしてすまなかった。私も乗っていない。私の名はハクオロ」
ハクオロはそう告げ、観鈴たちがいた方向に振り返り手を振った。
その瞬間、様子を見ていた観鈴と瑛理子は飛び出しハクオロに近づいてきた。
「ハクオロさん! 大丈夫ですか?」
「ああ大丈夫だよ、観鈴」
そういいハクオロは観鈴の頭をそっと撫でた。

152 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:38:01 ID:u/InVPDn


153 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:38:55 ID:u/InVPDn


154 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:38:58 ID:vhlLYl0D

(ハクオロと観鈴だって? メモに書いてあった人達じゃないか。よかった、これで安心だ。)
そう思い振り返るとそこには仮面をした男と金髪の少女、黒髪の少女がいた。
「僕の名は春原陽平、あなた達はハクオロ、神尾観鈴、二見瑛理子だね。メモを見たんだ」
「そうか……メモを見てくれたのか」
ハクオロは感慨深く呟いた。
殺し合いに乗っていない人間がメモを見て来てくれたのだ。
そのことが嬉しかった。

陽平はそして告げる。観鈴に会ったらまず先に伝えようとした事を。

「それで君が神尾観鈴だね? 国崎往人を見たよ」
「え? 本当ですか!?」
「さっき博物館でね。まだ居るかも知れない」
「よかった、無事で……」
観鈴の顔に安堵の表情が浮かぶ。
そんな観鈴の顔を見ながら陽平はただ、と言葉を続け
「殺し合いに乗ってるよ、あいつ」
「え……それ本当なんですか!? 往人さんはそんなことする人じゃないよ……きっと見間違いですよ」
「見間違いなんてあるか! 自分で名乗ったんだ。あいつは青みの混じった銀髪で鋭い目つきしてたんだよ! それに背が高かった」
「それ、往人さんだ……そんな、そんな事ないよ……」
観鈴の顔が絶望に染まり、目を手で押さえた。
信じたくなかった。優しい往人が殺し合いに乗ってる事を。


その一方でハクオロと瑛理子も驚いた。
陽平が語った往人の特徴はエスペリアを殺し、瑛理子を襲った者そのままだったからである。
そう、襲撃者は往人だったのだ。
2人は目で合図をし、互いの考えが同じである事を確かめた。
この事は今の観鈴に伝えてはいけない。
そう2人は思いアイコンタクトだけで済ました。

155 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:40:58 ID:u/InVPDn


156 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:42:07 ID:vhlLYl0D

「瑛理子、観鈴を頼む」
「ええ、わかったわ」
かといって今の観鈴をそのままにする訳には行かない。
そうハクオロは思い瑛理子に観鈴を任せ自分は陽平から往人に出会った経緯を聞くことにした。
(やれやれ、大変なことになったな……)
そうハクオロは嘆息し、陽平に聞き始めた。
「それで、陽平。お前はどうやって国崎往人と会ったのだ?」

陽平はもう自分が安全だと思い話さなければいいのに起きた事、全てをを話してしまった。
「そうだね、僕は瑞穂、茜、アルルゥと一緒に博物館に居たんだ。そこにあいつが来て殺そうとしたから逃げてきたんだ」
「アルルゥ達は!」
「いや、あいつらは逃げられなかった。僕だけ逃げてきたんだ」

ハクオロはその言葉に激昂し
「愚かな!!」
「ひぃぃ」
「貴様、仲間捨てて自分だけ逃げるだと、ふざけるんじゃない!捨てられた仲間はどう思う、貴様は自分だけ助ければいいと思っているのか!」」
ハクオロは普段からは信じられないくらい怒っていた。
捨てられた仲間が生き残る事が難しい。
その中でアルルゥ居たのも怒らせる原因になっていた。

「そうね、あなた最悪よ。自分だけ助かればいいなんて愚の骨頂だわ」
観鈴の傍にいた瑛理子も陽平を非難した。
(この男、鳴海孝之に似ているわね、最悪)

2人の非難を受け陽平は少し後退し、
「だって死にたくなかったんだ。まだしにたくないんだよぉ!!」
そう喚いた。
「どうして、皆、僕を非難するんだよぉ!」
たた死にたくない、どうして誰もが思う事を非難するだろうと陽平は思った。

157 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:42:11 ID:SWCZQOg1
 

158 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:42:57 ID:SWCZQOg1
 

159 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:43:03 ID:w6q78NQD
 

160 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:43:10 ID:FISnFABX
   

161 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:43:37 ID:vhlLYl0D


ハクオロが何か言おうとした時それは始まった。

『――参加者の皆さん、ご機嫌如何かしら? 』

二回目の放送が。
その瞬間4人とも放送に耳を立てた。



『アルルゥ――オボロ――』
2人の名前が呼ばれた瞬間、ハクオロは息がつまるような感じがした。
(……オボロ、お前は最後までトゥスクルの将軍であったか?……ユズハは任せろ……)
(……アルルゥ、護れなくて、すまない、本当にすまない。どうか向こうでエルルゥと仲良くな……)
おそらく状況的にアルルゥは往人に殺されたのだろう。
そうハクオロは思い悔しく思った。
そんなハクオロを観鈴と瑛理子は
「ハクオロさん……大丈夫ですか?」
「ハクオロ、大丈夫?」
励ました。そんな2人を見て、
(そうだな後悔している暇は無い。この子達を護ろう)
「ああ、大丈夫だよ」
笑顔を返した。

162 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:44:19 ID:u/InVPDn


163 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:44:29 ID:w6q78NQD
 

164 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:45:13 ID:FISnFABX
   

165 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:45:19 ID:u/InVPDn


166 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:45:35 ID:vhlLYl0D




 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・





『――岡崎朋也――』
放送を聴いて陽平は愕然とした。
(え……岡崎が? そんな! あの頼りになる岡崎が……)
朋也が死んだことは陽平には衝撃だった。

(待てよ、岡崎が死んだら誰が僕を護ってくれんだ?)
考えるのは自らの保身のみ。
(いやだ、死にたくない……)
(そうだ、あの人達に護ってもらおう、でもあの人達は僕の事、最悪といった。当然だもんな、仲間を捨てたから……待てよ?)
そこで陽平に一つの疑心が生まれた。
(あの人達はきっと僕を信用してない……きっと同じように捨てられて殺される!)
(いやだ、死にたくない……そうか、この島では人なんか信用しちゃダメなんだ。)
(仲間なんていらない、ただ殺される前に殺さなきゃいけないんだ。殺さなきゃ殺される!)

陽平は狂ってしまった。あまりの死の恐怖に。

(だからあの人達を殺さなきゃいけない! 殺される前に! 僕はまだ、死にたくない!)

そう思い陽平は投げナイフ持ち駆け出した。
「僕はまだ死にたくない! だから!」
狙いはハクオロ。

167 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:45:55 ID:u/InVPDn


168 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:46:06 ID:vhlLYl0D


だが持つ得物と、狙った相手が悪かった。
得物が銃とか、もしくは観鈴、瑛理子だったら結果は違ったかも知れない。

陽平の一撃は難なく避けられ、
「愚か者……」
その言葉と共に大きな衝撃が来た。

(いやだ、死にたくない……死にたくない……)
そう考えているうちに意識は落ちた。



 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・





169 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:46:16 ID:SWCZQOg1
 

170 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:46:37 ID:w6q78NQD
 

171 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:46:38 ID:vhlLYl0D
「殺したの?」
倒れている陽平を見て瑛理子は言った。
「いや、気を失わせただけだ。」
ハクオロは投げナイフを回収して答えた。
「急に襲って来るなんて……」
「大方、放送聞いて錯乱したんだろう。きっと大切な人でも呼ばれたんだろう」
観鈴の問いにハクオロは答えた。
「愚かね……さあ早く公園に行きましょう。」
瑛理子が行くように指示するが、

「待ってください。少し話を聞いてください」
観鈴がそれを止めた。
「どうしたのだ。観鈴?」
「我が侭かもしれないけど私、博物館に行きたいです。往人さんを止めたい」
瑛理子は驚き、
「ちょっと正気なの!? 彼、乗ってるのよ。それにもう居ないかもしれないじゃない」
その問いに観鈴は
「それでもです。少しでいる可能性があるなら私は行きたいです」
「自惚れかもしれないけど、往人さんたぶん私を護るために殺し合いをしているんだと思う」
それはハクオロにも瑛理子にも解った。
往人であった時そのようなことを話していた。
「往人さん、優しい人だもん。人殺しをして平気な訳ないよ。きっと苦しんでる」
「往人さんは人殺しなんか似合わない。人殺しなんかして欲しくない。」
だからと観鈴は言葉を続け

「私は往人さんを止めたい。お願いです。博物館に行かせてください」

少し気弱な少女の明確な意思表示。
観鈴には引く気はない。


172 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:47:09 ID:u/InVPDn


173 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:47:21 ID:FISnFABX
   

174 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:47:45 ID:vhlLYl0D

ハクオロはそんな観鈴に圧倒されつつ
「わかった。とりあえず悠人と合流しよう」
「ハクオロさん!? お願いです!」
観鈴は悲痛な顔をするが、ハクオロは笑顔になり
「その後、博物館に行く隊、工場に行くかもしくは何処かで待機する隊に分けよう。観鈴はもちろん博物館側だ。私も一緒に行く。彼と話がしたいしな」
「それに放送に呼ばれなかった、瑞穂、茜なる者が居るかもしれない」
「ハクオロさん……」
「瑛理子もそれでいいか?」
瑛理子は溜息をつき
「正直、納得できない所はあるけど、でもいいわ、大切な友達の頼みであるしね」
「瑛理子さん……」
瑛理子は美鈴に笑顔で返した。

ハクオロは瑛理子に
「瑛理子はどうする? どっちの隊にするか?」
「そうね……とりあえず待機する方かしら。でも博物館でもいいわ。危険だけどあなた達とは離れたくはないし」
「そうか……では公園に向かうとするか」
そうハクオロはいい、陽平に近づき彼を背負った。

「ちょっと、この人連れて行くの!?」
「こんな所に放置しておくわけないだろう。武器は奪ったしな」
「まあ、いいけど」
瑛理子は不服そうに言った。その理由は
(鳴海孝之に少し似ているのよね、こいつ……)
そんな瑛理子に気付かずハクオロは
「観鈴、彼のデイバックを持ってくれ」
「はい、わかりました」
「では行くか、公園へ」
彼らは公園へ向かった。

175 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:48:14 ID:u/InVPDn


176 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:48:18 ID:FISnFABX
   

177 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:48:40 ID:vhlLYl0D




はたして観鈴は往人に出会うことが出来るのか?
また会って彼を止める事ができるのか?
それはまだ解らない。



【D-2 中央/1日目 日中】



【工場探索チーム】
基本方針1:車に乗った襲撃者の一団を警戒。現在はレジャービルを出てD-2の公園に移動し、偵察チームと合流。 その後、博物館行くチームと待機するチームでチーム別け。
基本方針2:レジャービル、プール、廃墟郡を経由して工場へ。(工場に危険があった場合、レジャービル、プラネタリウムの優先順位で移動)
基本方針3:首輪の解析をする。
思考1: 悠人と衛が心配
思考2: 車に乗った襲撃者の一団との戦闘も想定。
【備考】
※首輪の盗聴と、監視カメラが存在する可能性を知りました。
※禁止エリアについて学びました。(禁止エリアにいられるのは30秒のみ。最初は電子音が鳴り、後に機械音で警告を受けます。)
※博物館で悠人たちを襲撃した相手(ネリネ)の外見と、その仲間と思われる相手の乗っている車について聞きました。
※悠人から、ファンタズマゴリア、永遠神剣、スピリットについて学びました。
※島内部の電話が使えることを知りました。
※車の一団はゲームに乗った者が徒党を組んでいると思ってます。
※陽平の情報は信用しました。陽平自体余りいい印象は持ってません。
※陽平をどうするかまだ決めてません。
※陽平がメモを持っていることは知りません。

178 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:49:01 ID:w6q78NQD
 

179 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:49:49 ID:vhlLYl0D





【ハクオロ@うたわれるもの】
【装備:Mk.22(7/8)、オボロの刀(×2)@うたわれるもの、春原陽平】
【所持品:投げナイフ2本、支給品一式(他ランダムアイテム不明)】
【状態:精神をやや疲労、緊張状態及び警戒中】
【思考・行動】
基本方針:ゲームには乗らない
1:ゲームに乗った人間を警戒中
2:悠人と合流、その後博物館へ
3:仲間や同志と合流しタカノたちを倒す
4:観鈴と瑛理子を守る。
5:トウカがマーダーに間違われるようなうっかりをしていないか不安
6:悠人の思考が若干心配(精神状態が安定した事に気付いてない)
【備考】
※レジャービルを探索した事で内部の状況を把握済み
※校舎の屋上から周辺の地形を把握済み
※中庭にいた青年(双葉恋太郎)と翠髪の少女(時雨亜沙)が観鈴を狙ってやってきたマーダーかもしれないと思っています。
※放送は学校内にのみ響きました。
※銃についてすこし知りました。また、悠人達から狙撃についても聞きました。
※国崎往人をマーダーとして警戒。
※観鈴からMk.22を受け取りました

180 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:50:14 ID:FISnFABX
    

181 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:50:20 ID:vhlLYl0D





【神尾観鈴@AIR】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、予備マガジン(40/40)、食料品、飲み物、日用品、医薬品多数、陽平のデイバック】
【状態:健康、緊張及び若干の恐怖】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:殺し合いに乗った人が来るというのが怖い。
2:ハクオロと瑛理子と行動する。
3:悠人と合流、その後博物館へ、往人を説得。
4:往人と合流したい
【備考】
※レジャービルを探索した事で内部の状況を把握済み
※校舎内の施設を把握済み
※ハクオロにMk.22を預けました
※映画館に自分たちの行動を記したメモをおいていきました。
※衛から食料品、飲み物、日用品、医薬品(約半分)を受け取りました。






182 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:51:36 ID:FISnFABX
 

183 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:51:49 ID:vhlLYl0D
【二見瑛理子@キミキス】
【装備:トカレフTT33 8/8+1、杖代わりのビニール傘】
【所持品:支給品一式 ブロッコリー&カリフラワー@ひぐらしのなく頃に祭 空鍋&おたまセット@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【状態:左足首捻挫】
【思考・行動】
基本:殺し合いに乗らず、首輪解除とタカノの情報を集める。
1:とりあえずは南下してD-2の公園を目指す。 悠人と合流後、どっちのチームに入るか決める。
2:車に乗った襲撃者の一団が工場に陣取った時、或いは工場が禁止エリアに指定された時の首輪解析方法を思案中。
3:ハクオロと観鈴と共に工場に向かう。
4:仮に仲間を作り、行動を共にする場合、しっかりした状況判断が出来る者、冷静な行動が出来る者などと行動したい。
5:(4の追記)ただし、鳴海孝之のように錯乱している者や、足手まといになりそうな者とは出来れば行動したくない。
6:鳴海孝之には出来れば二度と出会いたくない。
【備考】
※国崎往人をマーダーとして警戒。
※ハクオロと神尾観鈴の知り合いの情報を得ました。
※パソコンで挙がっていた人物は、この殺し合いで有益な力を持っているのでは?と考えています。
※観鈴とハクオロを完全に信頼しました。
※悠人と衛も基本的には信頼しています。
※首輪が爆発しなかった理由について、
1:監視体制は完全ではない
2:筆談も監視されている(方法は不明)
のどちらかだと思っています。
※電話についても盗聴されている可能性を考えています
※杖代わりのビニール傘は観鈴が衛から受け取った日用品の一つです。




184 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:51:54 ID:w6q78NQD
 

185 : ◆iWNzks43D6 :2007/08/09(木) 23:52:51 ID:vhlLYl0D
【春原陽平@CLANNAD】
【装備:映画館にあったメモ】
【所持品:なし】
【状態:気絶 肉体的には中度の疲労、精神錯乱、恐怖と怯え、右手首に手錠、上はTシャツ、下はジーンズを着用】
【思考・行動】
基本:死にたくない
1:???

※陽平の所持品は観鈴が持ってます。

186 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/09(木) 23:54:16 ID:DcjSVR/S



187 :信じる者、信じない者(U) ◆guAWf4RW62 :2007/08/10(金) 17:21:56 ID:tjNtfFs7
修正版のURLです
wiki掲載はこちらの方でお願いします
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8775/1173506458/796-805

188 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 21:08:11 ID:C0XTPzhw
「あひっ、あかかかかかかかかかかかか」

また、深い森の中に彼の奇妙な声が響いた。

鳴海孝之は狂っている。
ソレは常日頃の彼を知っている人間であれば誰であろうと気付く事実。
だが、それはあくまで彼の"普通"を知っている人物にとって、という話だ。

つまりは彼を激しく罵倒し、失望のあまり、侮蔑の視線で彼を射抜いた涼宮茜。
汚い言葉で彼の事を罵りながらも、どこか彼を見捨て切れていない大空寺あゆ。
もっとも彼女に関しては、未だこの島において鳴海孝之と接触していない事がその原因なのだが。
今の彼が彼女にとって、何の感慨も生み出さない肉のような存在である事を否定する要素は一つも無い。

そう、そんな彼女達が、この変わってしまった鳴海孝之と出会ったとしたら、どのような反応を取るか。
近いようで遠いその未来を見渡せるものは、誰も居ない。





喋るオウムこと土永さんは目の前で訳の分からない事を呟き続ける男、鳴海孝之に呆れていた。
自分は人ならざる生き物。そしてその身ながら人と同じくらいの知能を有した、ある意味矛盾した存在である。
それは十分に理解しているつもりだ。
だからこの島の戦いにおいて勝ち残るため、最も利用しやすそうな男に近付いた。そのはずだった。


189 :わたしの救世主さま ◆tu4bghlMIw :2007/08/11(土) 21:09:14 ID:C0XTPzhw
「かかかかかかかか、神様。もっと、もっと食べていいですか」

孝之が支給された食品に噛り付きながら問い掛ける。
体裁など何も考えず、目の前の食物を自らの胃の中に放り込む事しか考えていないその姿。
それは皮肉な事にソレは与えられた餌に群がる家畜、鳥としての仲間である鶏のようであった。

『……後のことを考えて、少し取っておけ。それよりも放送を聞き逃さないよう、注意しろ』
「はいはいはいはい。わか、わかり、わかりました」

まるで壊れたネジ巻き時計のように同じ台詞を呟く孝之。
残った食品を蓋もせずにデイパックの中に戻す。
遠くから眺めているとはいえ、少しだけ嫌悪感が湧いた。


――参加者の皆さん、ご機嫌如何かしら?


……始まった。
時は丁度正午。このゲームが始まってから十二時間が経過した。
六時間前の放送では死者は十一人だった。知り合いの死者は対馬レオただ一人。
土永さんにとって自らのアドバンテージを最大に生かすためには、その正体を知る人間が一人でも減るのは望ましい事だった。





――では、今回の放送はここまでよ。
次の放送は今から六時間後、十八時に行われるわ。
一切の躊躇も情けも必要無い。
この島には法律なんて存在しないのだから、思う存分殺し合いなさい』

190 :わたしの救世主さま ◆tu4bghlMIw :2007/08/11(土) 21:10:19 ID:C0XTPzhw


三人、か。
嘲笑めいたその言葉を土永さんは嘴の中で噛み殺した。
挙がった名前は鉄乙女、伊達スバル、そして霧夜エリカ。
自らの知り合いの中でも特に実力者であったと思われる三人の死亡はある意味朗報であり、そして驚きでもあった。

なぜならそれは、この島に彼女達でさえ十分に殺し得る実力者が闊歩している事の裏付けでもあるのだから。
もしも素面の彼女達を殺るだけの能力がある人間と遭遇したらどうなるだろう。
この力と本能に従って、凶器を振るうしか能の無い男にそんな人間の相手が務まるとは思えない。

「……神様? なにをぼんやりしているんですかぁ。早く行きましょうよぉ」
『いや……おい、人間。どうして名簿にチェックを入れていないのだ』
「名簿ぉ? 名簿って何のことですかぁ」

孝之が気の抜けるような間抜けな声を上げた。
もしや、放送の内容を書き留めていないのか?
まさかそんなはずは、と思ったものの土永さんはデイパックから参加者の名簿を取り出し、それを開くように指示する。
孝之はまるで映画に出てくる幽霊のような声を出し、首を上下左右にカクカクと動かしながらその命令に従った。


嫌な予感が的中した。
孝之の名簿は一回目の禁止エリアこそ書き記してあったものの、死亡者には一切チェックが入っていない。
リストは支給された時と同じで、ほとんど真っ白いままだった。


191 :わたしの救世主さま ◆tu4bghlMIw :2007/08/11(土) 21:10:52 ID:C0XTPzhw

同時に土永さんは孝之に対して強い失望と絶望を感じた。
まさかコイツがこの島で生き抜くための最低条件である放送の確認すら怠るような人間だったとは。
操り人形に意思などない方が扱い易いとはいえ、一切の知的行動を取れないようでは人形としてもジャンクとしか表現出来ない。

『……仕方ない。人間、今から言う名前に全部×印を付けろ』
「は、い。わかりました。よくわからないけど、わかりましたぁ」

今まで挙がった死亡者の名前を一つ一つ声に出して読み上げる。
まずは第二回放送時点で死亡した人間、そして第一回放送時点で死亡した人間という順番でだ。
この名簿にチェックを入れるという作業には何の問題も無いはずだった。
知り合いの名前が出て来れば動揺こそするかもしれないが、それ以外の名前は自分とはまるで関係の無い人間。
工場で刺身の上に黄色い蒲公英を乗せる作業と同じで、何の感慨も無く行われる工程のはず。


『……理
 涼宮遙
 水澤摩央
 藤林杏
 四葉
 対馬レオ
 竜宮レナ
 園崎詩音
 白鐘双樹……これで全部だな』
「……神様ぁ、これってどんな意味があるんですかぁ? どうして遙や双樹ちゃんの名前が出てくるんですぅ?」
『それはだな……待て、人間。最後の名前は白鐘"沙羅"では無くて"双樹"だ。それに涼宮遙にも印が付いていないではないか』
「双樹……ちゃん? 遙……が死んでいる?」



192 :わたしの救世主さま ◆tu4bghlMIw :2007/08/11(土) 21:11:57 ID:C0XTPzhw
孝之の様子が変わった。
白鐘双樹と涼宮遙の名前が出た途端、彼はその瞳を大きく見開き、だらしなく口を開けたままボンヤリと何かを考え始めた。
数秒後、彼はにたぁと口元を醜く歪ませ、大空に向かって吼えた。


「違いますよ、神様。あはははははははははははははは!
 沙羅ちゃんと遙ちゃんは起きただけなんです、この長い永いながい夢から。
 あひゃひゃ、そうですよ。俺が俺が俺が? 起こしてあげたんです。
 綺麗だったなーっ、双樹ちゃん。真っ赤に染まって、イチゴジャムの上で泳ぐ双樹ちゃん。
 髪の毛がぶわっーって広がって、ゆらゆら蠢いて。
 沙羅双樹の花の色とか言いますよね、ひひ。源氏物語でしたっけ。
 見た事無いですけど、きっとそんな色なんだろうなぁ、はははは。赤かかか、赤い赤い」


何処を見ている、何を見ているのだろう。
土永さんは思った。いや、ついに確信した。

この男は狂っている。

違う、考えてみれば初めからこの男はこんな感じだった。
既に完全なキチガイとしか表現のしようが無い。
猟奇的で病的な本能。言葉を喋るだけの知性はあるものの、理性という要素が見事なまでに欠如してしまっている。


「神様ぁぁぁ、聞いてますか? 聞いてますか?
 ははは、反応が無いなぁ! これは好きなようにしてみろって事ですね!
 嬉しいなぁ、ひゃはははははははは。
 ああ、そういえば双樹ちゃん言ってたなぁ。双子の姉妹がいるって。
 それってつまり、双樹ちゃんと同じ顔、身体って事なのかなぁぁぁあ。会ってみたいなぁ、刻んでみたいなぁ、あかかかか。
 身体の中身まで一緒なのかなぁ、興味あるなぁ!」


193 :わたしの救世主さま ◆tu4bghlMIw :2007/08/11(土) 21:12:50 ID:C0XTPzhw
孝之は奇声を発しつつ、名簿を投げ捨て、ツルハシを振り回し始めた。

ダメだこいつ……早く何とかしないと、とは思わない。
もうこんな人間には付き合っていられないというのが紛れも無い本音。
情報も分別も無い愚図がいかに組みし易いとはいえ、ただのキチガイを操っていてはいつその牙を自分に向けるか分からない。
マトモな人間こそ、突き付けられた現実を大きく受け止め、冷酷に、そして確実に仕事をこなす。
そう、同じ事をするのならあの銀髪の女のように憎悪を糧として行動する人間の方がよっぽど適している。

もうこの男に利用価値は無い。
土永さんは未だ大騒ぎを続ける孝之を放置して、その羽根を広げ北の空へ向けて翼を羽ばたかせる。


勿論孝之は自分が土永さんに見捨てられた事など露知らない。
自分は神に見初められた戦士、何をしても許されると思い込んでいるのだから。
今の彼を支配するのは純粋な欲望、そして本能。
すなわち食う、寝る、犯す、そして殺すと言った純粋な衝動だけ。
ある意味において、彼の行動は土永さんが居ようが居まいが関係ない。
ただ彼は自分のしたい事をするだけ。
ひたすら欲望に忠実なままに。

「神様、神様ぁぁぁ? 何処です、何処に居るんですかぁ!
 ひゃはははははははははははは! はは……は? 
 あれ、アレアレ? あそこに居るのは……くくくく、あははははははははは! 見つけた、見ぃつけたぁ!」






194 :わたしの救世主さま ◆tu4bghlMIw :2007/08/11(土) 21:13:44 ID:C0XTPzhw
【C-4 北部/1日目 日中】

【土永さん@つよきす−Mighty Heart−】
【装備:鳴海孝之@君が望む永遠】
【所持品:なし】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:最後まで生き残り、祈の元へ帰る
1:北へ向かう。
2:もっとまともな操り人形を探す。争いの種をまく。
3:自分でも扱える優秀な武器が欲しい、爆弾とか少量で効果を発揮する猛毒とか。
4:どこか一箇所留まったままマーダー的活動が出来る場所を探す
5:基本的に銃器を持った相手には近づかない


【備考】
土永さんの生徒会メンバー警戒順位は以下の通り(レオを除く、放送後の死亡者についてはまだ知らない)
よっぴー>>>>(越えられない壁)>カニ





「……少しは落ち着いたかい」
「はい大丈夫、です」

赤坂が出来るだけ優しく、相手を気遣うようにことりに話しかける。
ことりも顔色こそ優れないものの、必死に表情を取り繕いその質問に応える。


――アルルゥ、朝倉音夢、芳乃さくら、杉並、大石蔵人

195 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 21:14:13 ID:0Y7FeyW8


196 :わたしの救世主さま ◆tu4bghlMIw :2007/08/11(土) 21:15:13 ID:C0XTPzhw
コレが今回の放送で名前を呼ばれた赤坂とことりの知り合いの名前だった。
特にショックが大きかったのがことり。
朝倉音夢、芳乃さくら、杉並。どちらも大切な大切な友人である。
一方で赤坂の昔からの知り合いで名前を呼ばれたのは大石蔵人ただ一人。
未だ古手梨花の名前は呼ばれていない。

特に放送直後のことりは酷く取り乱して涙で散々頬を濡らした。
嗚咽、絶叫、苦悩。
とめどなく溢れて来るマイナスの感情が、洪水のように心を押し潰した。
隣にいた赤坂にも当然、大石、そしてアルルゥの死を悲しむ気持ちが無かったと言えば嘘になる。
だが、同時に自分まで悲しみの海その身を沈めてしまう訳にはいかなかった。

護る。
とてもシンプルな言葉。
言葉にするのは簡単だが、ソレを実現する事は本当に難しい。
なぜなら、既に自分は一人の少女を護れなかったのだから。
だから今度こそ。次こそはこんな悲しい結末は見たくない。


アルルゥ、君はどんな最期を迎えたんだろうか。
心ある人間に看取られて笑顔のまま逝く事が出来たのか。それとも――。
それ以上先の事まで考えようとしたが、止めた。
そして赤坂の心に生まれる主催者である鷹野三四に対する激しい怒り。
こんな争い事とはまるで無縁の普通の女の子を殺し合いの場に放り込むという残虐さ。

「……よかった、でも辛くなったら遠慮せずに言ってくれ。
 激励の言葉だって、裸踊りだってことりを元気付けるためなら何だってやるから」
「もう……赤坂さんったら。その……あんな、あんな格好で」
「いや、ゴメンゴメン。アレは僕も気が抜けていたというか……その、ね」

頬を赤らめ、視線を反らしながらそう呟くことりの姿を見て、赤坂は苦笑するしか無かった。
いや、自分が彼女にそんな態度を取られても仕方の無い事をしたのは紛れも無い真実なのだが。

197 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 21:15:15 ID:0Y7FeyW8


198 :わたしの救世主さま ◆tu4bghlMIw :2007/08/11(土) 21:16:12 ID:C0XTPzhw
はっぱ一枚だけを身に着けた姿は、旧約聖書のアダムとイヴから繋がる由緒あるスタイル。
だがさすがにそんな深く刻まれた歴史の息吹も、この現代においては"変態"の二文字で片付けられてしまう。
それに赤坂自身にも負い目があった。
ことりと初めて出会った時の自分はブリーフ(しかも白の)だけを身に着けた酷く独創的な格好であった。
いわば変態的な姿に前科がある訳だ。
しかもブリーフ→葉っぱという推移は身体を隠す面積がますます少なくなっている。
もしもこれ以上、似たような変化を辿るとすればもはや全てを脱ぎ捨ててしまうような展開しか残らない。

「でも、良かったですね。ちゃんとした服が見つかって」
「そうだね。ちょっとだけ変な感じもするけど」

赤坂が泉の近くにあったプレハブ小屋で見つけたのはカーキ色のツナギだった。
ブリーフ一枚で森林を練り歩いていた事を考えると凄まじいまでの進化。
素肌の上にツナギを着ているので何故か身体がムズムズするような気もするが、まぁコレは仕方が無い。
胸の部分には瞬時に着脱出来るようチャックが付いているし、もっと扱いやすい服を手に入れたらもう一度着替えればいいだけの話だ。

「だけど、ことり。このまま神社に向かってしまって本当にいいのかい」
「どういう事ですか?」
「ん、一応僕の仲間と合流するのは正午、って話になっていたんだ。もう一時を回ってしまっているだろう?
 しかもまだまだ掛かりそうだ。君が行きたい場所があるなら、先にそちらを優先してしまってもいい」

ことりは迷った。
今誰に会いたいかといえば、ソレは朝倉純一、そして川澄舞だ。
先に市街地に向かった千影も心配である。
だが三人の行方はまるで分からない。
唯一、有効であろう『第三回放送の時に神社に居るようにする』という情報も役に立つのはまだ先の話。
無闇やたらに探し回ったとしても効果は上がらないだろう。ソレならば確実なソースに従って行動するのが道理。

199 :わたしの救世主さま ◆tu4bghlMIw :2007/08/11(土) 21:16:58 ID:C0XTPzhw
「いえ、大丈夫です。トウカさん……でしたっけ。その方に会いに行きましょう」
「分かった。それじゃあそろそろ――」
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

思わず赤坂とことりは声のした方向を振り向く。
やって来たのは――男?
高価そうなスーツで全身をコーディネイトした若い男性だ。
整髪剤がビッシリとついた髪がテカテカと光って、やけにうざったい。
奇声は止まず、両手には――

「ことり下がっているんだ!!」
「赤坂さん!?」

赤坂は気付いたのだ。
男が振り回しているそのツルハシに人間のものと思しき血が付いている事実に。
ここから導き出される結論は唯一つ。
つまりあの男は殺し合いに乗っている、と言う事だ。

赤坂は支給されたトンファーを構え、迎撃の体勢を取る。
このトンファーは普通イメージされるようなソレとは違って、腕を覆う部分が非常に大きく盾代わりになる優れものだ。
その代わり、材質は何らかの金属で出来ており、非常に重い。
持った人間がある程度の達人でなければ、まともに扱う事も出来ずに振り回されるだけだろう。
だが、刑事として数々の修羅場を潜り、格闘技の経験もある赤坂にとってこの武器はまさに鬼に金棒だった。

「ひゃっはあああっー!!」
「ッ!!」

初撃を上手くトンファーの盾の部分でけ止め、赤坂は軽く距離を取る。
男も追撃の手を緩めない。
縦、横、斜め様々な角度からツルハシが振るわれる。


200 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 21:17:20 ID:dkC09x76
  

201 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 21:17:20 ID:0Y7FeyW8


202 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 21:17:49 ID:0Y7FeyW8


203 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 21:18:35 ID:0Y7FeyW8


204 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 21:19:46 ID:0Y7FeyW8


205 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/11(土) 23:38:36 ID:EqpHsVJi
タイトル 『魔法少女の探索。』


「これほどの大きさとは、思ってもいませんでした……」

今、ネリネの眼前にはあまりにも場違いな建物がそびえている。
休息を終えてからネリネの向かった先、そこはホテルだった。
あの放送を聞いたつぐみが博物館に現われる可能性はやはり限りなく低い。
彼女の性格からすれば、音夢の首無し死体を弔ったりするとは到底思えない。

あるとすれば、つぐみが音夢の兄である朝倉純一を発見しており、その上で放送を
聞いていた場合だろうが、その可能性はもっと低いはず。
それならば、いっその事他の場所へ移動し、そこで探索なり潜伏している他の参加者を
殺害するほうが効率ははるかにいい、というのが彼女の導き出した結果だった。

さらに、博物館を除外した残る二つの選択肢――ホテルと学校――のうち他の参加者が
潜伏あるいは拠点として用いる可能性が高いのはどちらかと言えば建物の用途からすれば
当然ホテルということになる。

結果、ネリネは森を南に歩き続け、ホテルに到着した。
だが到着してみるや、その大きさに思いっきり呆れてしまったのである。

地図上では森の中にポツンと存在するだけであったから、その大きさはせいぜい場末の
安ホテル程度と思っていた。
しかし、そこにあったのは大都市や一流リゾート地にでもあるような高さ数十メートル、
階数にして15階はあろうかという巨大なホテルだったからだ。

そんな建物が道路もロクにない森の中にいきなりドカンと建っているのを見ればネリネで
なくとも思いっきり呆れるに違いない。

(でも、これだけ大きいなら隠れる場所にも困りませんね……)

206 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:39:12 ID:0Y7FeyW8
 

207 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/11(土) 23:39:57 ID:EqpHsVJi
呆れたのは一時の事。
気を取り直したネリネは、そう考えると右手にデザートイーグルを、左手に“献身”を
それぞれ手にしてホテルの裏側より侵入していく。
その行動は博物館の時と同じ様に見えるが、あの時とは目的が全く違う。
博物館の時は、音夢との不和からあの様にしたが、今回は周囲を警戒しての事だ。

(今思えば、あの場所からでも目立ったのですから既に誰か侵入していてもおかしくは
ないでしょう)

ネリネの言う「あの場所」とは一時の休息をとった神社の外周のことだ。
あのときは神社の方ばかりを見ていたが、考えてみればあの場所からでもホテルの外観が
確認できた。
大きさがこれほどのものと思わなかったのは、多分生い茂った木々のせいだろう。

(ですが……森の中にこれほどの大きなホテルを建てるというのは、何か意味があるの
でしょうか?とりあえず入ったらホテル内の構造を把握しておく必要がありますね)

目立たない従業員用の出入り口から、内部へ侵入したネリネの目についたのは、ドアに
「コントロール室」のプレートが貼られた部屋だ。
デザートイーグルを構えながら扉を開き、室内へ入っていくと、そこは無数のモニターと
複数のコンピュータが設置されていた。

ネリネがコンピュータの画面を覗き込むと、画面上には「空調」「照明」「防犯カメラ」
といった文字が多数並んでいる。
どうやら、このコンピュータでホテル内の各設備をコントロールしているらしい。
続いてネリネは、壁面に埋め込まれたモニターへ目を向け、そこに映し出される画面から
モニターの意味をすぐ理解した。

208 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:40:16 ID:Vv54gsUV


209 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:40:29 ID:0Y7FeyW8


210 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:41:18 ID:0Y7FeyW8


211 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/11(土) 23:41:42 ID:EqpHsVJi
「なるほど……、これは使えますね」

モニターの正体は、ホテル内の各部を監視する防犯カメラ用だった。
流石に客室内までは監視していないが、それ以外のパブリックなスペースについては
ほぼ全域を監視しているのが分かる。
これを使えばホテル内に誰が入ったか、あるいは既に誰がいるかを簡単に把握する事が
出来る。
ここを拠点にすれば、ホテルでの戦いは自分が一方的に主導権を握る事も可能だろう。

「あとは、建物内の見取り図があるといいのですが……」

そう言いながら、ネリネは室内の書類棚を調べていく。
直接建物内を歩いて調べていくのも手だが、見取り図があるのと無いのでは話が違う。
探す事数分、ネリネはようやく目当てのものを発見した。

「……お客様の目に触れないスペースがこんなにあるなんて、思いもしませんでした」

見取り図に目を通したネリネはそう呟く。
建物の図面など見るのはこれが初めてだが、見取り図には色々と彼女の知らなかった事が
書かれていた。
宿泊客の目に触れないところへ配置された各階の機械室や分電盤室、倉庫に従業員用の
エレベーター、パイプスペース、天井裏に入る為の隠しハシゴ……。
客としてホテルに入っていれば、絶対に気が付かない場所ばかりだ。

212 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:41:44 ID:Vv54gsUV


213 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:41:48 ID:kVmspRuS
   

214 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:42:19 ID:0Y7FeyW8


215 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:42:55 ID:0Y7FeyW8
 

216 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:43:02 ID:Vv54gsUV


217 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/11(土) 23:44:00 ID:EqpHsVJi
これらも使い方によっては待ち伏せや移動、身を隠すのに使うことが出来る。
倉庫も調べれば使える物が眠っているだろう。
慎重に裏側から侵入した事が、ネリネに思わぬ宝の山をもたらすことになったといえる。

「さて、まずは地下から調べましょうか」

見取り図のファイルを手にしたネリネは、コントロール室をあとにしようとする。
調べたところ、地下はテナントと従業員のエリア、そして駐車場になっているみたいだ。
駐車場は無視するとして、ネリネが最初に目指すはテナントエリアである。

「その前に、鍵をかけておく必要がありますね」

ネリネは部屋を出る前にキーボックスから一本の鍵を取り出すと、コントロール室を施錠する。
これで、この部屋にあとから来た者が入る事は出来なくなった。

(もし、戻ったとき扉の前に誰かいたらその時は……殺しちゃいましょう)

218 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:44:26 ID:huE1lJQh


219 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:45:00 ID:0Y7FeyW8


220 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:45:59 ID:0Y7FeyW8


221 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/11(土) 23:45:59 ID:EqpHsVJi
「いい物が並んでますね」

地下のテナントエリアに降りたネリネは、その品揃えの良さを前にして少し笑った。
流石に武器は売ってないものの、洋服類に飲食物の類は結構な数が売られている。

「とりあえずはこの中からいくらか持っていった方がいいでしょう」

思えば、ここまでの連戦で、服は自分の血と返り血で徐々に汚れている。
支給品の食料もいずれは底を尽きるのが目に見えている。
ならば、ここで手っ取り早く補給を済ませてしまうのがいいだろう。

そう考えたネリネは、まずブティックに入り服を手に入れることとした。
並んでいるのはいずれも高級品ばかり、その中から今身に付けている物と似ていて、
より生地のいい服と下着を選び出す。
他にも複数の洋服やアクセサリーを入手し、ディパックへと詰め込んでいく。

(状況に応じて服装を変えれば、他の参加者を混乱させられるでしょう)

そんなことをネリネは考えた上で新たな洋服を手に入れたわけだが、これはある意味
おしゃれに気を使う女性ならではの発想かもしれない。

次に入ったのはすぐ隣の化粧品販売店だ。
高級な香水や化粧品には目もくれず、ネリネが手にしたのは染髪剤である。
そこに並んでいた様々な色の洗髪剤を片っ端から手に取り、まとめてディパックに突っ込む。

最後に入ったのは食料品店。
ここで、食糧と飲料物と補給していく。
もし、参加する前のネリネならば高級食材や菓子類を確保しようとしたかもしれない。
しかし、ここまでの経験がそういったものよりも少量で十分な栄養を得られる携行食糧や
栄養ドリンクを彼女に選ばせていた。

222 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:46:52 ID:huE1lJQh


223 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:47:40 ID:kVmspRuS
   

224 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/11(土) 23:47:44 ID:EqpHsVJi

(稟さまと合流したあとのことも考えて、十分な量を補給しなければなりませんね)

その中で洋酒の並んだコーナーがふと目に入った。
何を思ったのか、ネリネはそこに近づくとラム酒の瓶を手に取り、ディパックから音夢の生首が
入ったビニール袋を取り出す。

「昔、こんな話を聞いた事があります」

ビニール袋から血まみれになった音夢の制服を取り出し、それをディパックへ放り込むネリネ。
そして彼女はラム酒の瓶を開けると、その中身を生首の入ったビニール袋へ注ぎ込んでいく。


225 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:47:50 ID:Vv54gsUV


226 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:47:58 ID:0Y7FeyW8


227 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/11(土) 23:48:23 ID:EqpHsVJi
「ある国で解体中の家から出てきた樽に入ったラム酒を飲んだ大工は、樽の中から死体が出て
きたのを見て最後に最悪の気分を味わったと……」

2本3本とラム酒をビニール袋へ注ぎ込み、音夢の生首が完全にラム酒へ浸ったのを見て、
ネリネは満足そうに呟く。

「その時のラム酒は、なんでも『特別な味』がしたそうですよ。あなたの首を浸したラム酒は
どのようなお味がするのでしょうかね」

ラム酒の中でプカプカと浮かぶ音夢の生首がネリネに答えるはずも無い。
その姿はまるでホルマリン漬けの標本みたいでどこかおかしかった。

「あなたのお兄さんである純一さんと二回目の放送までにお会いすることはできませんでした。
ですが、その代わりにあなたの首を浸したお酒を飲んでいただこうかと思います」

そして、最後に音夢の生首を純一に見せ付けてやろう――

自分の妹、その生首を浸したラム酒を飲み、最後にその味の正体が何であったか知らされた時、
純一はどんな顔をするだろうか?
気分を悪くしてその場で吐き戻すだろうか?それとも狂わんばかりに泣き叫ぶだろうか?
どちらにしても想像するだけでゾクゾクしてくるものがある。

だが、それは朝倉純一と会ったときのこと。
補給は終わったが、まだ他にやることがネリネにはあった。

228 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:48:27 ID:0Y7FeyW8


229 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:48:59 ID:0Y7FeyW8


230 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/11(土) 23:49:32 ID:EqpHsVJi
テナントエリアをあとにしたネリネが次に向かったのは従業員用のエリアである。
彼女の目的地は、そこのシャワー室だった。

中に入るや、ネリネは服を脱衣場で脱ぎ捨ててシャワーを浴び始める。

(気持ちいい……)

ボディソープで体の汚れを落としながら、ネリネは微笑む。
思えばもう12時間が経過し、体はいたる所が汚れている。
その汚れが、血の臭いが洗い流されていく。
腹部に目を向けると、音夢によってつけらえた痣はかなり消えかけていた。

(ですが……心の汚れまでは洗い落とせるはずが無いですね……)

シャワーを浴びながらネリネはそう低く笑う。

だが、今の彼女はもう汚れる事を厭わない。
稟を守り抜く為には他の参加者を全員殺すつもりでいるのだから。
その為には心を暗黒に染める事となろうとも、決して止まるつもりなど無い……。

今のネリネはそういう覚悟を決めた少女なのだ。

231 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:49:42 ID:huE1lJQh


232 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:50:00 ID:0Y7FeyW8


233 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/11(土) 23:50:13 ID:EqpHsVJi
(でも、稟さまが亡くなったら?次の放送で稟さまの名前が呼ばれたら?)

一瞬、頭をよぎる想像。

それは、最悪の展開――

(稟さまが亡くなったら。その時は……)

かつてのネリネなら泣き喚くだけで、もはやこの世の終わりとばかりに稟の後を追うだろう。

だが、今のネリネはもはやそうではない。
なぜならここまでの戦いが、彼女の心を根本から強靭なものに変えてしまったのだから。
だからこそ、冷静に考えられる。

稟が死んだならば、それが誰かの手にかかるなり不慮の事故で命を落とすなりしたならば。

(その時は、稟さまの亡骸を持ち帰り、お墓に納めてあげる為にも優勝を目指しましょう)

そして、自分は稟と過ごした思い出を抱いて残りの人生を生きればいい。

そこまで考えると、ネリネはシャワーの蛇口を止めて脱衣場へ向かう。

234 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/11(土) 23:50:54 ID:EqpHsVJi
服を新しいものに着替え終わったネリネは、再び1階のコントロール室に戻ってきた。
監視モニターに目を通すが、どの階も人の動きはない。
自分以外の人間はこのホテルにはいないのか、それともカメラの届かないエリアにいるのか。

「もう暫くは監視をしたほうがいいでしょうね。その前に下準備だけでもしておきましょうか」

ディパックからオレンジ色の染髪剤を取り出したネリネはそれを手にとって髪に塗り始める。
徐々に、彼女の美しい青い髪が鮮やかなオレンジ色に変わってゆく。
この色をあえて選んだのは、神社の戦闘で稟への想いを胸に戦い、散っていった楓への
敬意を含んでいるからに他ならない。

最後に地下で入手した赤いリボンを髪に結びつけ、髪型をポニーテールにする。
この方が、狭いところなどに入ったとき、周囲へ引っかけずにすむという利点があるからだ。

「これで、準備は整いました。あとは、待つだけですね」

コントロール室の鍵を握り締めながら、ネリネは監視モニターに目を走らせる。
いつどこでどんな動きがあってもすぐ動けるように。


235 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:52:05 ID:huE1lJQh


236 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:52:16 ID:kVmspRuS
  

237 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:52:36 ID:0Y7FeyW8


238 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/11(土) 23:52:35 ID:EqpHsVJi
【D-5 ホテル1階コントロール室 /1日目 午後】



【ネリネ@SHUFFLE】
【装備:永遠神剣第七位“献身” コントロール室の鍵、ホテル内の見取り図ファイル】
【所持品1:支給品一式 IMI デザートイーグル 9/10+1 IMI デザートイーグル の予備マガジン10 九十七式自動砲 弾数2/7】
【所持品2:支給品一式  トカレフTT33の予備マガジン10 S&W M37 エアーウェイト 弾数1/5、洋服・アクセサリー・洗髪剤いずれも複数、食料品・飲み物多数】
【所持品3:出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 コンバットナイフ 朝倉音夢の生首(左目損失・ラム酒漬け) 朝倉音夢の制服 桜の花びら】
【状態:肉体的疲労はほぼ解消・魔力消費中、腹部に痣(消えかけ)、左腕打撲、右耳に裂傷、左足首に切り傷、非常に強い意志】
【思考・行動】
1:ホテルにやって来る者、あるいは既にいる者を監視。発見次第、稟以外は皆殺しにする
2:稟を探す。その途中であった人間は皆殺し。知人であろうとも容赦無く殺す(出来る限り単独行動している者を狙う)
3:ハイリスク覚悟で魔力を一気に回復する為の方法、或いはアイテムを探す
4:トウカを殺し、楓の仇を討つ
5:純一に音夢の生首を浸したラム酒を飲ませ、最後に音夢の生首を見せつけ殺す
6:つぐみの前で武を殺して、その後つぐみも殺す
7:亜沙の一団と決着をつける
8:桜の花びらが気になる
9:稟を守り通して自害
10:最悪、稟が死亡した時は稟の遺体を持ち帰るために優勝を目指す。


239 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:53:11 ID:0Y7FeyW8
 

240 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/11(土) 23:53:45 ID:0Y7FeyW8


241 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/11(土) 23:53:47 ID:EqpHsVJi
【備考】
現在は髪を鮮やかなオレンジに染め、髪は赤いリボンでポニーテールにしています。
私服(ゲーム時の私服に酷似。ただし高級品)に着替えました。(汚れた制服と前の私服はビニールに包んでデイパックの中に)
ネリネの魔法(体育館を吹き飛ばしたやつ)は使用不可能です。
※これはネリネは魔力は大きいけどコントロールは下手なので、 制限の結果使えなくなっただけで他の魔法を使えるキャラの制限とは違う可能性があります。
※永遠神剣第七位“献身”は神剣っていってますが、形は槍です。

※永遠神剣第七位“献身”は制限を受けて、以下のような性能となっています。
永遠神剣の自我は消し去られている。
魔力を送れば送る程、所有者の身体能力を強化する(但し、原作程圧倒的な強化は不可能)。
魔力持ちの敵に突き刺せば、ある程度魔力を奪い取れる。
以下の魔法が使えます。

尚、使える、といってもウインドウィスパー以外は、実際に使った訳では無いので、どの位の強さなのかは後続の書き手に委ねます。
アースプライヤー  回復魔法。単体回復。大地からの暖かな光によって、マナが活性化し傷を癒す。
ウィンドウィスパー 防御魔法。風を身体の周りに纏うことで、僅かな間だけ防御力を高める。
ハーベスト     回復魔法。全体回復。戦闘域そのものを活性化させ、戦う仲間に力を与える。

242 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/11(土) 23:54:34 ID:EqpHsVJi
※古手梨花を要注意人物と判断(容姿のみの情報)
※音夢とつぐみの知り合いに関する情報を知っています。
※音夢の生首はビニール袋へ詰め込みラム酒漬けにした上、ディパックの中に入れてます。
※魔力が極端に消耗する事と、回復にひどく時間がかかる(ネリネの魔力なら完全回復まで数日)という事に気が付きました。
※トウカと、川澄舞(舞に関しては外見の情報のみ)を危険人物と認識しました。
※千影の“時詠”を警戒。ただし“時詠”の能力までは把握していません。
※魔力持ち及び永遠神剣の持ち主を献身で殺せばさらに魔力が回復する仮説を思いつきました。
※ある程度他の永遠神剣の気配を感じ取れます。
※桜の花びらは管理者の一人である魔法の桜のものです。
※見取り図によってホテルの内部構造をかなり熟知しています。
※現在、コントロール室の鍵は内側からかけられています。


ホテルについて
建物は高さ数十メートル、地上15階建てぐらい。
1階のコントロール室からはホテル内の照明、空調などを制御可能。
さらに監視カメラで人間の動きを知る事が可能。
地下はテナントエリアと従業員のエリア、他に駐車場や倉庫が存在する。

ホテル内に誰か既にいるのかどうかは次の書き手さんに任せます。

243 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/12(日) 23:32:48 ID:GrOFglWN
芙蓉楓
その名前はどのような意味を持っているのだろうか。
悲しみを覚える者、安堵を覚える者、何の感慨も抱かない者、名前に関係なく悼む者、
とにかく様々であろう。
では島の中央、ホテルの中に居る二人の少女にとって、その名前は何をもたらすのだろうか

「嘘……楓が、そんな……」
時雨亜沙にとってその名前は大事な友人の名前である。
だから彼女はその死を悼む。 彼女がその名前から得るのは悲しみという感情、ただそれだけであった。
亜沙はベッドにうずくまり、ただただ悲しみにくれていた。

しかし、彼女と同行している少女.―大空寺あゆにとってその名前は、別な意味を持っていた。
元より彼女は赤の他人の死になど何の興味もない。 (まあ呼ばれてくれたら嬉しいと思う相手はいたが)
隣で亜沙がうずくまって泣いていても、特に感慨も抱かない。
だから彼女が考えたのはその名前が呼ばれたタイミングについてだった。
(アイツは恋太郎とかいうのを殺したのは、芙蓉楓と言ってた。 そしてその芙蓉楓は既に死んでいた……ね)
いくら何でも出来すぎではないか。
殺人者と思われる相手が告げた容疑者の名前、その相手は既に死んでいた。
ならば
(死人に口無し……ってことかね)
別の場所で殺した相手に自分の罪を擦り付ける。 それは無害な人間を装うには極めて有効な方法だ。
(まあ、亜沙はそんなことは無いって言うだろうけど)
実際に、その芙蓉楓がことみと出会い、恋太郎を殺して、その後どこかで殺されたというのは十分にあり得る話ではある。
だが、
(そもそも、あんな事出来る相手に遭遇しておいて自分は無傷、とかありえないしね)
仮に、ことみの話を信じるならば、マシンガンを所持していて既に何人か殺している危険人物に遭遇して、初めて出会ったその相手から名前と他の参加者を殺していることを聞いて、何故か同行していた恋太郎だけ離れた場所で殺して、ことみは怪我一つしていない。
そんな事があり得るだろうか。
(ま、もともと疑わしいヤツがほぼにクロになっただけだけさね)


244 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/12(日) 23:34:52 ID:GrOFglWN
そこまで考えると彼女は腰掛けていたベッドから立ち上がり、備え付けの冷蔵庫の傍まで歩くと、置いてあるグラスを取り氷を入れ、中にあったミネラルウォーターを注ぎ込んだ。
 
因みにこの部屋はホテルはホテルでもその最上階、ロイヤルスイートだったりする。
 放送前、危険人物のことみと、どこかイカレてる良美から離れたあゆ達は休憩の為にホテルへとやって来た。
 そして、あゆはそのまま当然のように最も高級な部屋に陣取ったのであった。
 なお、このホテル自体この島には似つかわしくない立派なホテルなので、そのロイヤルスイートルームといえば、
パンピーの作者にはくわしく描写出来ないほど豪華な部屋なのではあるが、傍若無人な令嬢であるあゆは、微妙に気後れする亜沙を気にもかけずに堂々と陣取ったのである。
 そうして陣取った部屋で休憩しながら流れて来たのが先ほどの放送だった。

豪華な部屋をゆっくりと歩きまわりながら、ミネラルウォーターに口をつけ喉を潤す。
そうしながら彼女は先ほどの放送で呼ばれた別の名前について考えた。
(くたばりやがったか……あの糞虫は)
 この島で最初に出会った相手。
 知り合いと同じ名前だからといって馴れ馴れしく名前でよんできた男
(まあ、あんな甘ちゃんじゃあ仕方ないか、一応冥福ぐらいは祈ってやるかね)
 短い間だったが明らかに相容れない相手、だから別れた。
なのでその事には何の後悔もないのだが……一応少しは悼んでやることにした。
(そういや、あのヘタレはまだ残ってるんだっけね)
 その事になぜか安堵している自分に腹がたったが、深くは考えなかった。
 そして
(あの亜沙ってのはどうしようかね)
 今一番重要な事に意識を向けた。
 もともとあゆには誰かと手を組む意思はないのだ、亜沙とここまで来たのもただの成り行きに過ぎない。 このまま置き去りにする――のは流石に後味が悪いが。
 とはいえ、もともと特に目的地というものすらない(強いていうなら休憩するための場所つまり今居るホテル)ので、別段移動する理由もないのだ。
(まあ、ここより快適そうな場所もなさそうだし、しばらくはここにいてもいいか)
 
 

245 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/12(日) 23:36:20 ID:GrOFglWN
 色々聞いておきたい情報もあるので、ひとまずはホテルにとどまる事にしよう。
 そう思い、とりあえず亜沙が泣き止むのを待っているのも暇なので、シャワーを浴びることに決め移動する。
 その後でのんびりと色々考えればいいか、と思いながら
 (とりあえず前の禁止エリアと、それから……魔法とかいってたっけ?)
 質問の内容だけは考えていた。
(ついでにあのことりとかいうヤツのことも聞いておくかね)
 そんなことを考えながら、下着を脱ぎ捨てバスルームへの扉をくぐった。
 
そんなある意味のんきな思考のあゆは、その場所に危機がせまっている事など考えもしなかった。
当然亜沙にはそんなことを考える余裕はなかった。

【D-5 ホテル(最上階・ロイヤルスイート/1日目 日中】
【大空寺あゆ@君が望む永遠】
【装備:S&W M10 (2/6) 防弾チョッキ】
【所持品:予備弾丸17発・支給品一式 閃光弾セット(発煙筒(白)x1 催涙弾x1)】
【状態:肋骨左三本骨折・右一本骨折、肉体的疲労軽度】
【思考・行動】
0:シャワーを浴びてすっきりする
1:亜沙が落ち着くのを待って情報交換。 その後当面の目的地を決める(ホテルに留まる気持ち大)
2:なるべく神社方面には行かない
3:良美を警戒
4:一応殺し合いに乗るつもりはない

【備考】
※あゆは放送の一部を聞き漏らしています。 その為禁止エリアがC-2と言う事は知らず、Cのどこかであるとしかわかっていません。 亜沙が落ち着いたら聞く予定。
※赤坂が遥を殺したかもしれないと疑っています(赤坂と遥の名前は知りません)
※ことみが恋太郎を殺害したと判断しています
※亜沙を信用。ことみが人殺しという疑惑が強まっています。良美も危険人物として警戒。
※ハクオロを危険人物と認識。
※閃光弾セット
発煙筒(白)二本と催涙弾一本、閃光弾一本のセット。

246 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/12(日) 23:36:58 ID:GrOFglWN
【時雨亜沙@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【装備:無し】
【所持品:支給品一式、C120入りのアンプル×8と注射器@ひぐらしのなく頃に】
【所持品2:イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×4、ゴルフクラブ】
【状態:悲しい、体力限界(少し回復)、精神的疲労大、魔力消費大。左肩軽傷。ロングヘアー】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:楓……
2:ことみを心配
3:ネリネを止める
4:可能ならば稟と合流
5:同志を集めてタカノたちを倒す

【備考】
※あゆを信用。ことみと微妙なすれ違い。良美に対しては困惑の感情。
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※楓が恋太郎を殺したという事実を認める事が出来ていません
※C120は『雛見沢症候群』治療薬だが、健常者に使用すると10分以内に全身の発疹、発熱、瞳孔の拡大、妄想を引き起こす薬です。
症候群を抑えるには1日数回の注射が必要です。
亜沙・ことみはC120の効果を知りません。

※亜沙の回復魔法は制限を受けて以下のような感じになっています。
回復魔法の発動には、魔力と体力の両方を大きく消費する。
治す怪我が酷ければ酷いほど、亜沙の消耗は激しくなる。
命に関わるような重傷は治せない。また切り落とされる等して、失った部位も治せない。

※設定はゲーム版。よってアニメ版の黒楓は知らず。

247 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/12(日) 23:38:52 ID:GrOFglWN
一方あゆが関心を寄せた相手はそれどころではない状態だった。
 突然起こってしまった戦闘状態、その状態から抜け出し、とりあえず逃げのび、あゆと亜沙の事について考えようとしていた時、放送は始まった
 そのまま足を止めずに、放送に耳を傾けた事によって、彼女の最大の武器は失われてしまった。
(朋也……さん?)
 彼女の最大の武器である頭脳は、全く機能していなかった。
(そんなの)
 先ほどの放送には考える事項がいくつも含まれていた
(嘘……)
 だがその事には全く頭が働かなかった。
 それどころか行うべき事、考えるべき事、心配すべき事、それら全てが何も思いつかなかった。
 彼女は何も出来なかった。
 だから彼女の肉体は無意味な動作を継続させる。
 何の意味も無いまま、彼女はどこへともなく移動し始めた。



248 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/12(日) 23:39:45 ID:GrOFglWN
【E-4とE-5の境目/1日目 日中】

【一ノ瀬ことみ@CLANNAD】
【装備:イングラムM10(9ミリパラベラム弾17/32)】
【所持品:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』、四葉のデイパック、イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×4】
【状態:自失、肉体的疲労中、腹部に軽い打撲、精神的疲労中】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:亜沙を心配
2:身体を休ませる
3:神社から離れる
4:楓に恐怖
5:工場に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
6:鷹野の居場所を突き止める
7:朋也たちが心配
8:ネリネとハクオロを強く警戒
9:ハクオロに微妙な罪悪感

※自失状態のまま移動しています、外部からの干渉があれば自失状態は回復します。
※ことみがどちらに向かうかは次の書き手さんにまかせます。
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています。
※首輪の盗聴に気付いています。
※魔法についての分析を始めました。
※あゆは亜沙とっては危険ではない人物と判断。自分にとっては危険人物。
 良美に不信感。
※良美のNGワードが『汚い』であると推測

249 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:19:20 ID:WDvp3c2p
「あひっ、あかかかかかかかかかかかか」

また、深い森の中に彼の奇妙な声が響いた。

鳴海孝之は狂っている。
ソレは常日頃の彼を知っている人間であれば誰であろうと気付く事実だ。
だが、それはあくまで彼の"普通"を知っている人物にとっての話。
つまりは彼を激しく罵倒し、失望のあまり侮蔑の視線で彼を射抜いた涼宮茜。
汚い言葉で彼の事を馬鹿にしながらも、どこか彼を見捨て切れていない大空寺あゆ。
もっとも彼女に関しては、未だこの島において鳴海孝之と接触していない事がその原因なのだが。
今の彼が彼女にとって、何の感慨も生み出さない肉のような存在である事を否定する要素は一つも無い。

そう、そんな彼女達が、この変わってしまった鳴海孝之と出会ったとしたら、どのような反応を取るか。
近いようで遠いその未来を見渡せるものは、誰も居ない。





喋るオウムこと土永さんは目の前で訳の分からない事を呟き続ける男、鳴海孝之に呆れていた。
自分は人ならざる生き物。そしてその身ながら人と同じくらいの知能を有した、ある意味矛盾した存在である。
それは十分に理解しているつもりだ。
だからこの島の戦いにおいて勝ち残るため、最も利用しやすそうな男に近付いた。そのはずだった。

「かかかかかかかか、神様。もっと、もっと食べていいですか」

孝之が支給された食品に噛り付きながら問い掛ける。
体裁など何も考えず、目の前の食物を自らの胃の中に放り込む事しか考えていないその姿。
それは皮肉な事にソレは与えられた餌に群がる家畜、鳥としての仲間である鶏のようであった。

『……後のことを考えて、少し取っておけ。それよりも放送を聞き逃さないよう、注意しろ』
「はいはいはいはい。わか、わかり、わかりました」

250 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:19:34 ID:a0qorMRo
 

251 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:20:03 ID:WDvp3c2p

まるで壊れたネジ巻き時計のように同じ台詞を呟く孝之。
残った食品を蓋もせずにデイパックの中に戻す。
遠くから眺めているとはいえ、少しだけ嫌悪感が湧いた。


――参加者の皆さん、ご機嫌如何かしら?


……始まった。
時は丁度正午。このゲームが始まってから十二時間が経過した。
六時間前の放送では死者は十一人だった。知り合いの死者は対馬レオただ一人。
土永さんにとって自らのアドバンテージを最大に生かすためには、その正体を知る人間が一人でも減るのは望ましい事だった。





――では、今回の放送はここまでよ。
次の放送は今から六時間後、十八時に行われるわ。
一切の躊躇も情けも必要無い。
この島には法律なんて存在しないのだから、思う存分殺し合いなさい』


三人、か。
嘲笑めいたその言葉を土永さんは嘴の中で噛み殺した。
挙がった名前は鉄乙女、伊達スバル、そして霧夜エリカ。
自らの知り合いの中でも特に実力者であったと思われる三人の死亡はある意味朗報であり、そして驚きでもあった。

なぜならそれは、この島に彼女達でさえ十分に殺し得る実力者が闊歩している事の裏付けでもあるのだから。
もしも素面の彼女達を殺るだけの能力がある人間と遭遇したらどうなるだろう。
この力と本能に従って、凶器を振るうしか能の無い男にそんな人間の相手が務まるとは思えない。

252 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:20:30 ID:a0qorMRo
 

253 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:20:43 ID:FTAaHfgE



254 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:21:03 ID:WDvp3c2p

「……神様? なにをぼんやりしているんですかぁ。早く行きましょうよぉ」
『いや……おい、人間。どうして名簿にチェックを入れていないのだ』
「名簿ぉ? 名簿って何のことですかぁ」

孝之が気の抜けるような間抜けな声を上げた。
もしや、放送の内容を書き留めていないのか?
まさかそんなはずは、と思ったものの土永さんはデイパックから参加者の名簿を取り出し、それを開くように指示する。
孝之はまるで映画に出てくる幽霊のような声を出し、首を上下左右にカクカクと動かしながらその命令に従った。


嫌な予感が的中した。
孝之の名簿は一回目の禁止エリアこそ書き記してあったものの、死亡者には一切チェックが入っていない。
リストは支給された時と同じで、ほとんど真っ白いままだった。

同時に土永さんは孝之に対して強い失望と絶望を感じた。
まさかコイツがこの島で生き抜くための最低条件である放送の確認すら怠るような人間だったとは。
操り人形に意思などない方が扱い易いとはいえ、一切の知的行動を取れないようでは人形としてもジャンクとしか表現出来ない。

『……仕方ない。人間、今から言う名前に全部×印を付けろ』
「は、い。わかりました。よくわからないけど、わかりましたぁ」

今まで挙がった死亡者の名前を一つ一つ声に出して読み上げる。
まずは第二回放送時点で死亡した人間、そして第一回放送時点で死亡した人間という順番でだ。
この名簿にチェックを入れるという作業には何の問題も無いはずだった。
知り合いの名前が出て来れば動揺こそするかもしれないが、それ以外の名前は自分とはまるで関係の無い人間。
工場で刺身の上に黄色い蒲公英を乗せる作業と同じで、何の感慨も無く行われる工程のはず。



255 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:21:11 ID:a0qorMRo
 

256 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:21:35 ID:WDvp3c2p
『……理
 涼宮遙
 水澤摩央
 藤林杏
 四葉
 対馬レオ
 竜宮レナ
 園崎詩音
 白鐘双樹……これで全部だな』
「……神様ぁ、これってどんな意味があるんですかぁ? どうして遙や双樹ちゃんの名前が出てくるんですぅ?」
『それはだな……待て、人間。最後の名前は白鐘"沙羅"では無くて"双樹"だ。それに涼宮遙にも印が付いていないではないか』
「双樹……ちゃん? 遙……が死んでいる?」


孝之の様子が変わった。
白鐘双樹と涼宮遙の名前が出た途端、彼はその瞳を大きく見開き、だらしなく口を開けたままボンヤリと何かを考え始めた。
数秒後、彼はにたぁと口元を醜く歪ませ、大空に向かって吼えた。


「違いますよ、神様。あはははははははははははははは!
 沙羅ちゃんと遙ちゃんは起きただけなんです、この長い永いながい夢から。
 あひゃひゃ、そうですよ。俺が俺が俺が? 起こしてあげたんです。
 綺麗だったなーっ、双樹ちゃん。真っ赤に染まって、イチゴジャムの上で泳ぐ双樹ちゃん。
 髪の毛がぶわっーって広がって、ゆらゆら蠢いて。
 沙羅双樹の花の色とか言いますよね、ひひ。源氏物語でしたっけ。
 見た事無いですけど、きっとそんな色なんだろうなぁ、はははは。赤かかか、赤い赤い」


何処を見ている、何を見ているのだろう。
土永さんは思った。いや、ついに確信した。

この男は狂っている。

257 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:21:36 ID:a/CZZeEq


258 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:21:56 ID:a0qorMRo
 

259 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:22:18 ID:Xe1r18Wg
 

260 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:22:36 ID:a0qorMRo
 

261 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:22:37 ID:WDvp3c2p
違う、考えてみれば初めからこの男はこんな感じだった。
既に完全なキチガイとしか表現のしようが無い。
猟奇的で病的な本能。言葉を喋るだけの知性はあるものの、理性という要素が見事なまでに欠如してしまっている。


「神様ぁぁぁ、聞いてますか? 聞いてますか?
 ははは、反応が無いなぁ! これは好きなようにしてみろって事ですね!
 嬉しいなぁ、ひゃはははははははは。
 ああ、そういえば双樹ちゃん言ってたなぁ。双子の姉妹がいるって。
 それってつまり、双樹ちゃんと同じ顔、身体って事なのかなぁぁぁあ。
 会ってみたいなぁ、刻んでみたいなぁ、あかかかか。
 身体の中身まで一緒なのかなぁ、興味あるなぁ!」


孝之は奇声を発しつつ、名簿を投げ捨て、ツルハシを振り回し始めた。

ダメだこいつ……早く何とかしないと、とは思わない。
もうこんな人間には付き合っていられないというのが紛れも無い本音。
情報も分別も無い愚図がいかに組みし易いとはいえ、ただのキチガイを操っていてはいつその牙を自分に向けるか分からない。
マトモな人間こそ、突き付けられた現実を大きく受け止め、冷酷に、そして確実に仕事をこなす。
そう、同じ事をするのならあの銀髪の女のように憎悪を糧として行動する人間の方がよっぽど適している。

もうこの男に利用価値は無い。
土永さんは未だ大騒ぎを続ける孝之を放置して、その羽根を広げ北の空へ向けて翼を羽ばたかせる。



262 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:22:51 ID:a/CZZeEq


263 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:22:57 ID:Xe1r18Wg
 

264 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:23:27 ID:WDvp3c2p
勿論孝之は自分が土永さんに見捨てられた事など露知らない。
自分は神に見初められた戦士、何をしても許されると思い込んでいるのだから。
今の彼を支配するのは純粋な欲望、そして本能。
すなわち食う、寝る、犯す、そして殺すと言った純粋な衝動だけ。
ある意味において、彼の行動は土永さんが居ようが居まいが関係ない。
ただ彼は自分のしたい事をするだけ。
ひたすら欲望に忠実なままに。

「神様、神様ぁぁぁ? 何処です、何処に居るんですかぁ!
 ひゃはははははははははははは! はは……は? 
 あれ、アレアレ? あそこに居るのは……くくくく、あははははははははは! 見つけた、見ぃつけたぁ!」





【C-4 北部/1日目 日中】

【土永さん@つよきす−Mighty Heart−】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:最後まで生き残り、祈の元へ帰る
1:北へ向かう。
2:もっとまともな操り人形を探す。争いの種をまく。
3:自分でも扱える優秀な武器が欲しい、爆弾とか少量で効果を発揮する猛毒とか。
4:どこか一箇所留まったままマーダー的活動が出来る場所を探す。
5:基本的に銃器を持った相手には近づかない。
【備考】
土永さんの生徒会メンバー警戒順位は以下の通り
よっぴー>>>>(越えられない壁)>カニ

265 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:24:03 ID:WDvp3c2p





「……少しは落ち着いたかい」
「はい大丈夫、です」

赤坂が出来るだけ優しく、相手を気遣うようにことりに話しかける。
ことりも顔色こそ優れないものの、必死に表情を取り繕いその質問に応える。


――アルルゥ、朝倉音夢、芳乃さくら、杉並、大石蔵人


コレが今回の放送で名前を呼ばれた赤坂とことりの知り合いの名前だった。
特にショックが大きかったのがことり。
朝倉音夢、芳乃さくら、杉並。どちらも大切な大切な友人である。
一方で赤坂の昔からの知り合いで名前を呼ばれたのは大石蔵人ただ一人。
未だ古手梨花の名前は呼ばれていない。

特に放送直後のことりは酷く取り乱して涙で散々頬を濡らした。
嗚咽、絶叫、苦悩。
とめどなく溢れて来るマイナスの感情が、洪水のように心を押し潰した。
隣にいた赤坂にも当然、大石、そしてアルルゥの死を悲しむ気持ちが無かったと言えば嘘になる。
だが、同時に自分まで悲しみの海その身を沈めてしまう訳にはいかなかった。

守る。
とてもシンプル、とはいえ言葉にするのは簡単だが、ソレを実現する事は本当に難しい。
なぜなら、既に自分は一人の少女を護れなかったのだから。
だから今度こそ。次こそはこんな悲しい結末は見たくなかった。


266 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:24:03 ID:a0qorMRo
 

267 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:24:06 ID:Xe1r18Wg
   

268 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:24:34 ID:WDvp3c2p

アルルゥ、君はどんな最期を迎えたんだろうか。
心ある人間に看取られて笑顔のまま逝く事が出来たのか。それとも――。
それ以上先の事まで考えようとしたが、止めた。
そして赤坂の心に生まれる主催者である鷹野三四に対する激しい怒り。
こんな争い事とはまるで無縁の普通の女の子を殺し合いの場に放り込むという残虐さ。

「……よかった、でも辛くなったら遠慮せずに言ってくれ。
 激励の言葉だって、裸踊りだってことりを元気付けるためなら何だってやるから」
「もう……赤坂さんったら。その……あんな、あんな格好で」
「いや、ゴメンゴメン。アレは僕も気が抜けていたというか……その、ね」

頬を赤らめ、視線を反らしながらそう呟くことりの姿を見て、赤坂は苦笑するしか無かった。
いや、自分が彼女にそんな態度を取られても仕方の無い事をしたのは紛れも無い真実なのだが。

はっぱ一枚だけを身に着けた姿は、旧約聖書のアダムとイヴから繋がる由緒あるスタイル。
だがさすがにそんな深く刻まれた歴史の息吹も、この現代においては"変態"の二文字で片付けられてしまう。
それに赤坂自身にも負い目があった。
ことりと初めて出会った時の自分はブリーフ(しかも白の)だけを身に着けた酷く独創的な格好であった。
いわば変態的な姿に前科がある訳だ。
しかもブリーフ→葉っぱという推移は身体を隠す面積がますます少なくなっている。
もしもこれ以上、似たような変化を辿るとすればもはや全てを脱ぎ捨ててしまうような展開しか残らない。

「でも、良かったですね。ちゃんとした服が見つかって」
「そうだね。ちょっとだけ変な感じもするけど」

赤坂が泉の近くにあったプレハブ小屋で見つけたのはカーキ色のツナギだった。
ブリーフ一枚で森林を練り歩いていた事を考えると凄まじいまでの進化。
素肌の上にツナギを着ているので何故か身体がムズムズするような気もするが、まぁコレは仕方が無い。
胸の部分には瞬時に着脱出来るようチャックが付いているし、もっと扱いやすい服を手に入れたらもう一度着替えればいいだけの話だ。


269 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:25:03 ID:Xe1r18Wg
  

270 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:25:04 ID:WDvp3c2p
「だけど、ことり。このまま神社に向かってしまって本当にいいのかい」
「どういう事ですか?」
「ん、一応僕の仲間と合流するのは正午、って話になっていたんだ。もう一時を回ってしまっているだろう?
 しかもまだまだ掛かりそうだ。君が行きたい場所があるなら、先にそちらを優先してしまってもいい」

ことりは迷った。
今誰に会いたいかといえば、ソレは朝倉純一、そして川澄舞だ。
先に市街地に向かった千影も心配である。
だが三人の行方はまるで分からない。
唯一、有効であろう『第三回放送の時に神社に居るようにする』という情報も役に立つのはまだ先の話。
無闇やたらに探し回ったとしても効果は上がらないだろう。ソレならば確実なソースに従って行動するのが道理。

「いえ、大丈夫です。トウカさん……でしたっけ。その方に会いに行きましょう」
「分かった。それじゃあそろそろ――」
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」


思わず赤坂とことりは声のした方向を振り向く。
やって来たのは――男?
高価そうなスーツで全身をコーディネイトした若い男性だ。
整髪剤がビッシリとついた髪がテカテカと光って、やけにうざったい。
奇声は止まず、両手には――

「ことり下がっているんだ!!」
「赤坂さん!?」

赤坂は気付いたのだ。
男が振り回しているそのツルハシに人間のものと思しき血が付いている事実に。
ここから導き出される結論は唯一つ。
つまりあの男は殺し合いに乗っている、と言う事だ。


271 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:25:06 ID:a0qorMRo
 

272 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:25:12 ID:a/CZZeEq


273 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:25:50 ID:WDvp3c2p
赤坂は支給されたトンファーを構え、迎撃の体勢を取る。
このトンファーは普通イメージされるようなソレとは違って、腕を覆う部分が非常に大きく盾代わりになる優れものだ。
その代わり、材質は何らかの金属で出来ており、非常に重い。
持った人間がある程度の達人でなければ、まともに扱う事も出来ずに振り回されるだけだろう。
だが、刑事として数々の修羅場を潜り、格闘技の経験もある赤坂にとってこの武器はまさに鬼に金棒だった。

「ひゃっはあああっー!!」
「ッ!!」

初撃を上手くトンファーの盾の部分で受け止め、赤坂は軽く距離を取る。
男も追撃の手を緩めない。
縦、横、斜め様々な角度からツルハシが振るわれる。

「どうだ、どうだ、どうだああっ!! 当たると痛いぞぉ!!」
「こいつ……!!」

乱撃。容赦の無い踏み込み。その行動は明らかに常人のソレではない。
相手の男が武術の心得が無い事は隙だらけの動作から容易に見て取れる。
ツルハシを振るう腕の動きから体裁き、太刀筋と何から何まで素人の動き。間違いない。
だが男の身体能力は赤坂の常識と照らし合わせてみても、異常だった。
その動作には"型"というものが無い、完全なフリースタイルだ。
男は移動、攻撃、防御といったあらゆる側面においてある種緩慢であり、また機敏でもあった。

そしてもう一つ、特筆すべき点としてその腕力が挙げられる。
襲撃者の男は二十代前半だろうか、それよりも若干若く十代のようにも思える。
肉体的な成長のピークこそ、十代に訪れるのが普通だが、最も身体・技術が成熟するのはやはり二十代。
コレでも自分は警官であるし、毎日のように身体は鍛えている。武術も会得している。
その自分と比べて見ても男の力は圧倒的だった。
もはや、これは同じ人間とは思えない。自然と心のどこかで認めてしまうようなある種の驚きを秘めた感想だった。

「話を聞けッ!! こちらは戦いには乗っていない。お前の目的は何だッ!?」
「知ったこっちゃないよおおおおおお!! 目的が無いのが目的さああああ!!」

274 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:25:58 ID:a0qorMRo
 

275 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:26:05 ID:a/CZZeEq


276 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:26:11 ID:Xe1r18Wg
   

277 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:26:21 ID:WDvp3c2p

話に、ならない。
赤坂は唇をかみ締め、そして速攻。
男の傾向、どう見てもパターンは見えないと感じたソレにも規則性が感じられた。

それはつまり、武器であるツルハシに関係する。
ツルハシは先端こそ鋭利で、殺傷能力を持っていると言えるが金属などとぶつかり合うには決定的に強度が不足している。
つまり、武器として脆い。加えてあの独特の形状。
振り回して扱う獲物としてはバランスが悪過ぎるのだ。

正直赤坂はこの男を見くびっていた。
最初は顔つきや仕草、持っていた武器から判断してもただの精神異常者、言うなれば『キチガイに刃物』程度の感想しか抱かなかった。
だけど違ったのだ。実際に拳を合わせて見なければ分からない事もあった。
形こそ不確かではあるが、この男は強い。圧倒的な身体能力に重きを置いたパワータイプだ。
だが戦いにおいて『ツルハシ』という武器は非常に扱いづらい獲物だ。そこを、突く。

「はああああっ!!」
「なななな!?」

左で受けて、力に逆らわずにそのまま流す。
先端に重量が集中した武器に対しては持って来いの対処法だ。
案の定、男は体勢を崩され前につんのめる。
がら空きになった後頭部に向けて――、一撃。



「ことり。もう片付いた、来ても平気だよ」
「赤坂さん!! 大丈夫ですか!!」


278 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:26:39 ID:a0qorMRo
 

279 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:26:49 ID:a/CZZeEq


280 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:26:52 ID:WDvp3c2p

ことりがひょっこりと木の陰から顔を覗かせる。丁度赤坂の真後ろの方向。
ことりの視界に入ったのは若干呼吸を乱した赤坂と、俯けに倒れ伏すあの襲撃者の男の姿だった。

「あの、この人……」
「ああ、殺しちゃいないさ。軽く気絶させただけだ」
「赤坂さんって……強いんですね」

ハハハ、と赤坂は苦笑を浮かべる。
金属製の合金トンファーで後頭部を殴りつけた。手応えも完璧。
おそらく数十分は目を覚まさないだろう。
だけど強いと改まって言われるとさすがに微妙に恥ずかしい。
若い女の子に面と向かってそんな事を言われた経験は勿論ほとんど無い。

「でもどうするんですか? この人、このままにしておく訳にもいかないでしょう?」
「いや、かなり錯乱しているのは確かだし……とりあえず、武器だけ取り上げて移動しよう」
「分かりま――!? 赤坂さん、後ろ!!」
「な――」
「何お話してるのかなああああ!? 俺も混ぜてくれよぉぉぉおお!!」



絹を裂くようなことりの声、瞬間的に赤坂は反応し後ろを振り向こうとする。
否。少しだけ、ほんの少しだけ赤坂の行動は遅かった。
後頭部に強烈な衝撃が走る。
ツルハシの……これはおそらく木製の柄の部分。

「うっ!!」
「いやあああああ!! 赤坂さん!!」
「けけけけけ、こここコイツ、よくも、よくもやったなぁっ!!」


281 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:27:26 ID:WDvp3c2p

間髪いれず見舞われる打撃の嵐。
武器を使った殴打。蹴り。地面に沈み込んだ赤坂を襲う容赦の無い暴力の数々。
赤坂は知らなかった。
既に襲撃者、鳴海孝之は『普通の人間ではない』という事を。
彼は完璧に痛覚が麻痺しているため、余程のダメージを与えなければ昏倒させる事は出来ない。
いかに完全に入った打撃であろうとも足りなかったのだ。

「あ、あ、…あか、赤坂さん……」
「はぁっ、はぁっ……。どどどうだ、俺はお前なんかよりよっぽど強いんだ。かか、神の戦士だからな」

ことりはその眼を今すぐにでも閉じてしまいたくなった。
初めて赤坂に出会った時から、ほんの少し前。
この男が現れる直前までの彼の姿が脳裏を横切る。
あの時も眼を覆いたくはなったものの、今回のソレとはまるで意味合いが異なる。

暴行はほとんど男の拳で行われたため、目立った出血は無い。
それでも最初に殴られた後頭部からはドクドク血が流れ出ているし、ツナギがカバーしていない素肌が露出している所にはいくつも青痣が見て取れる。
服の下の身体は一体どうなってしまっているのか。考えるのも恐ろしい。


「あああアレ、アレ? おおおおおおお、女?」


男の視線が怯えることりを捉えた。その瞳の色が変わる。
怒りや憎悪、相手を攻撃する復讐者のソレから、情欲に湿った薄汚い野獣の眼に――。
ことりは悟った。
今度は自分の番。自分が男から追い回される番だという事を。





282 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:27:32 ID:Xe1r18Wg
 

283 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:27:33 ID:a0qorMRo
 

284 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:27:39 ID:a/CZZeEq


285 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:28:07 ID:WDvp3c2p

「やめて、やめてくださいっ!! 痛い、放して!! こんな、こんな事っ!!」
「ひひひひひひひひ、聞こえないなあああああ!!」

本当にこんな事があっていいのか。
ことりは今どうして自分がこんな目に遭っているのか分からなかった。


逃げた。もちろん全力で、外聞も考えずにひたすら逃げた。
だけど捕まった。追いつかれた。
自分は所詮女の身、怪我をしているとはいえ年頃の男に足の速さで敵う訳が無いのだ。
今は完全に逃げ道を失った状態で追い詰められ、組み敷かれそうになっている。

赤坂は男に後ろから殴打され、ピクリとも動かなくなってしまった。
必死に逃げて来たので視界の中に赤坂の姿は無い。
もしかして死んでしまったのか、そんな考えが頭に浮かぶがすぐさま振り払う。
赤坂さんが簡単にやられる訳が無い。必ず、必ず自分を助けてくれる。ことりはそう願った。

そうだ、決して相手に飲み込まれてはならない。
出来るだけ抵抗するのだ、ことりは自分を組み敷こうとしている男の顔を払いのけようと必死でもがいた。
左の手首は物凄い力で男に抑え込まれてしまっている。肉と皮に抉り込む指が痛い。
男だから、女だから。
そんな陳腐な理由ではなくて、何か得体の知れない存在が男の後ろに憑いているような気がした。


構図は分かり易い。
端的に言うとレイプ、つまり強姦だ。
犯そうとする男と犯されまいと足掻く女。二者間においてこの争いは究極的なまでに原始的なやり取り。
力のある者が自らのより力の劣る者を屈服させ、その欲望の捌け口とする、あまりにも単純な行為。
そして力関係は歴然だった。
男・鳴海孝之と女・白河ことりにおいて、肉体、装備どちらの条件でも勝るのは鳴海孝之。
どんなに抵抗したところで、いつか必ずその花は折られてしまう事は確実。

286 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:28:19 ID:a0qorMRo
 

287 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:28:21 ID:Xe1r18Wg
 

288 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:28:22 ID:a/CZZeEq


289 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:28:59 ID:a0qorMRo
 

290 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:29:03 ID:a/CZZeEq


291 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:29:04 ID:Xe1r18Wg
  

292 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:29:19 ID:WDvp3c2p
ただ一つ。そんな状況でことりに出来るのは信じる事だけだった。
自分の同行者である赤坂衛。先程武器の不利を物ともせずに、襲撃者を一度は撃退した彼の力に頼る事。
もはやそれしか男から自らの身を守る手段は存在しない。

情けない、悔しい、そんな気持ちを十分過ぎるほど噛み締める。
今のことりはただ赤坂の復活を信じて待つ事しか出来ない。何て、無様。
護られているだけの存在なんて、ただの足手まといだ。それは痛いほど分かっている。
それに赤坂がこんな事になったのも元々は自分が気を抜いたせいなのだ。
全部、自分が悪い。全部、全部。
だけど自分を責めても始まらない事も十分に理解している。とにかく、この状況を何とかしなければ。

そうしてあるプランを実行に移すため、ことりはフッと身体の力を抜いた。
掴まれていた左手が勢い良く地面に叩き付けられる。男の顔が近づく。
馬乗りの体勢が完成した。


顔と顔が近い。男の生温かい息が降りかかる。
それは直線距離にして数十センチという所。
本来なら愛し合う恋人達にだけ許された尊い数十センチ。
だが今自分と男の間に存在するのは、そんな甘い感情ではなくて、どす黒い一方的な肉欲だけだった。
怖い。
純粋な恐怖がことりの脳髄を支配する。自分はどうなってしまうのだろうか。
……いや、分かってはいる。心の奥底、本能はその危機を悲しいくらい悟って今も警鐘を鳴らしている。
だって、もう自分は無知で無垢な子供ではないのだから。

「どうして、っ……どうして……こんな事を、するんですか」


293 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:29:43 ID:a0qorMRo
 

294 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:29:46 ID:a/CZZeEq


295 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:29:47 ID:Xe1r18Wg
 

296 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:29:58 ID:WDvp3c2p

ことりはカタカタ骸骨を鳴らす口元と身体を必死に奮い立たせ、問い掛ける。
今は、時間を稼ぐしかない。
幸いな事に男は言動共に相当おかしな所がある。そこに付け込めば事態が好転する可能性もあるのだ。
無闇に抵抗した所で相手の神経を逆撫でしてしまうかもしれない。
力では絶対勝てない事も分かっている。
ソレならば逆に無抵抗を貫く事で男に不信感を抱かせ、会話をするチャンスを模索した方が得策だと判断した。

「どうしてか、だって……? くくくう、それはねぇぇぇぇぇぇ」

突然ことりの左手首を束縛していた男の手がパッと放された。
両手が自由になる。お腹の上に男が乗っているため、腹部に重圧こそ掛かるが痛みは先程と比べて大分軽減される。

でもどうしてだろう、ことりは考える。だって不可解ではないか。
相手を束縛しておく事が大切なのはそういう知識がほとんど無い自分にも分かる。
自分の身体を穢されて黙っているような女性などいるはずが無いのだから。
それならば、このような状況でレイプする側が両手を自由にしなければならなくなる場合とは――?


「こういうことがしたいからさぁぁぁ!! ひゃはははははははははは!!」
「――ッ…………え?」


ことりは自分が何をされたのか一瞬、全く分からなかった。
なぜなら、今男がした行為はあまりにも直情的で、そしてあまりにも悪意に満ちたものだったからだ。

確かにこの島に連れて来られてから、ことりは何人もの死を体験した。
いや、厳密には体験したとは言い難い。
彼女はまだ一度も人間の死体を見てはいないし、命のやり取りをした事も無い。
ただ身近な人間が命を落とした、という事実を機械的な音声情報として消化しただけだ。
だから彼女は本来尊いものであるはずの命が散る瞬間や、人間という生き物がどこまで残酷になれるのか、という事を知らない。
全て、何もかもがことりの想像を超えていた。

297 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:30:24 ID:a0qorMRo
 

298 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:30:27 ID:a/CZZeEq


299 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:30:29 ID:WDvp3c2p


「はははははははははは、白いなぁ!! 綺麗だなぁ!! 大きいなぁ!!」


ビリビリという、小気味良い布の切り裂かれる音が森林に木霊する。
男が興奮した叫び声を上げる。
ことりは必死に口をパクパク動かす。出てこない、言葉が何一つ紡げない。

ことりが身につけていた風見学園本校の制服は非常に特徴的なデザインをしている。
メインは身体にピッタリとフィットする青いボーダーのワンピース。
その上からクリーム色のボレロタイプの上着を羽織る、という形だ。
ボレロは冬服仕様なので長袖、加えて胸元にあしらわれた赤いリボンが目にも鮮やか。
女子生徒にも人気があるという噂も頷ける。

そんな年頃の女生徒の羨望を集めたような魔法の衣服は引き裂かれてしまった。
征服欲と肉欲に支配された、狂える一人の男の手によって。
力任せに引き千切られたソレは本来の役割を果たさず、左右にだらりと花弁を開く。
布地の侵略は胸元からヘソの辺りで止まった。
上下の衣服がくっ付いている構造上、これ以上切り裂かれれば両方の下着を露出してしまう事になる。
もっともこの状況から想像できる未来において、それ以上の陵辱が行われるであろう事は想像に難くないのだが。


「ここここ、この身体が今から俺に蹂躙されるなんて……もう、もう興奮してくるなぁ!!!
 あはははははははははははははは!!」
「あ、あ、あ、あ、」


ことりの黒い下着が露出する。
世間一般的な感覚からすると、平均かソレより若干上程度のサイズの胸。
瑞々しくも艶美な膨らみがこの青空の下に晒された。


300 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:30:51 ID:Xe1r18Wg
   

301 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:31:14 ID:a0qorMRo
 

302 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:31:18 ID:a/CZZeEq


303 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:31:45 ID:Xe1r18Wg
  

304 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:31:58 ID:a0qorMRo
 

305 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:32:02 ID:a/CZZeEq


306 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:32:04 ID:WDvp3c2p
もう、ことりは平静を保てなかった。
どんなに喉に力を入れても声が出てこない。奥歯がカチカチと音を立てて、ぶつかり合う。
信じる? 待つ? 時間稼ぎ?
そんな概念頭の中から何処かへと飛んでいってしまった。

怖い。頭の中で想像していた事と現実とが一気に肉薄する。
レイプ、強姦。
そんなお昼のドラマか映画の中だけの話、少なくとも自分とはまるで関係ないと思っていた概念が突然存在感を増した。

ことりは限界まで見開かれた瞳で男の顔を凝視する。
もう数十センチ所の話ではない。数センチ、いや男の顔が鎖骨に触れた。
そして男は鼻先をギリギリまでことりの首筋に近づけ、まるで発情した野良犬のようにその匂いを、嗅いだ。

「あひっひっひっひ、いい匂い……だなぁ」

目の前には名前も知らない男。初めて会っただけの男。
まるで妊婦がするソレのように乾いた空気がことりの唇から絶え間なく吐き出される。
男の荒い息遣いはまさに興奮した陵辱者のソレ。
ここまで接近したから分かった。今ことりを犯そうとしている男からは"血の匂い"がするのだ。
外見こそ高価なスーツを着込んでいるが、身体に染み込んだ血液の鉄臭さは嗅覚を刺激する。

それが誰の血なのかは分からない。
だけど、何となくだけど、察しは付いた。
ああ、この人は誰か他の人間を殺しているんだろうな、と。
這い回るように首筋から胸元にかけて、息をたっぷりと吸い込んだ男がニマァと笑みを浮かべる。
男の舌がことりの身体に触れた。
まるでそれは目の前に置かれたお菓子を味見する子供のように。
唯一つ違ったのはソレがとびきり邪悪な笑顔だったという事ぐらい。


――その瞬間『何かが』入って来た。


307 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:32:27 ID:Xe1r18Wg
 

308 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:32:35 ID:WDvp3c2p
それは意志。侵略者、鳴海孝之の意志。
相手の考えている事象を読み取るテレパシー能力。一度は失われたはずのその力。
だが『枯れない桜』の魔力が根幹に息づくこの島において、白河ことりの特殊性は再び息を吹き返している。

ただ一つの制約、『読み取る相手と接触する事』を条件としてだが。

男の意志はこれ以上無いほど分かり易かった。
どす黒い幾何学模様と麻薬中毒者が見る幻覚に似たサイケデリックな世界。
そして中央に位置する最も大きな願望、それこそが――


男に無残にも組み敷かれ、レイプされる自らの姿―未来―だった。


耐えられなかった。
限界。故に、崩壊。理性が浸食される。脳髄が犯される。飲み込まれる。
そして、絶叫。


「いやあああああああああああああ!!! やだ、やだああああ!!」
「ひゃはははははははははははははは!!」 


無抵抗を貫き通すなんて薄っぺらな考えは脆くも崩れ去った。
この男に言葉は通用しない。
それを五感から精神領域に至るまで余すことなく理解した。
ことりは自らの上に跨る男を振り落とすべく必死に、必死にもがく。

「やだやだ、やだぁっ!! 嫌なの!! 触らないで、放して!!」
「うううううううう、うるさい!! 少しは黙ってろ!!」
「きゃあッ!!」


309 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:32:54 ID:a0qorMRo
 

310 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:32:58 ID:a/CZZeEq


311 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:33:05 ID:WDvp3c2p
男は自らの身体の下で暴れることりの頬を平手で思い切り引っ叩いた。
痛い。
思わずことりの大きな瞳が涙で滲む。
視界がぼやける。頭が痛くなる。
自分の中から何かが抜けて行くような不思議な感触。ウィルスのように一瞬で拡散する苦痛。
こんな行動、自分の中の常識からは考えられない。

自分の頬を叩いた掌には、一切の手加減や配慮が感じられなかった。
いっそコレが握り締めた拳で無かっただけ幸せだったのかもしれない。
このような女性に乱暴を働く人間の中には純粋に相手を痛めつけ恐怖と苦痛に顔を歪ませる姿にだけ、ひどく興奮を覚える者もいるのだから。

「やだあああ!! 助けて、助けて赤坂さんっ!! 赤坂さんっ!!」
「黙れ黙れ黙れっ!! うるさいって言ってんだろ!!」

更なる痛み。興奮した男の掌がまたことりの頬を叩いた。
しかも今度は二回。先程と同じ、一切手加減無しの純粋な暴力の塊。
涙が溢れた。止まらない。湧き水のように次から次へと流れ出す。

「っ、痛……い。やだ、たす……けて、ぅ……だれ、か……」
「助け? 助けなんて来る訳無いじゃぁぁぁぁぁん!! お前は黙って喘いでいればいいんだっ!!」

男の手がブラジャーにかかった。
もはや自分の中には抵抗する気力も失せてしまっていた。……だから思わず瞳を閉じてしまった。
こんな現実を直視する事はもはや不可能。

もう、無理だ。何もかも終わり。
自分はこのままこの男に身体を好きなように弄ばれて、最後には殺されてしまう、そうに決まっている。
赤坂も目覚めない。死んでしまったに違いない。


312 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:33:42 ID:a0qorMRo
 

313 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:33:47 ID:a/CZZeEq


314 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:33:47 ID:WDvp3c2p
ただ気掛かりな事が二つだけ。
一つは純一の事。
この島に集められた自分の知り合いの中で最後に残った一人。
彼は一体どうしているのだろうか。危険な目にあったりしてはいないだろうか。
信用出来る人間とは出会えたのだろうか。もう自分は駄目だ。だからせめて彼には生き残って欲しい、そう思う。

そしてもう一つ気掛かりな事。それは――


パンッ、パンッ、パンッ、パンッ。

……え?

聞き慣れない乾いた音がすぐ傍から響いた。
何かが爆発するような音。
初めて……じゃない。自分はコレとまったく同じ音を聞いたことがある。しかもほんの数時間前に。

ポタリ。

ポタリ。

ポタリ。

ポタリ。

自分の顔の上に、何か熱い液体が降り注いだ。
サラサラしていて、それでいて粘着質な――。

ことりは恐る恐る瞳を開く。
目の前は男の顔。眼は見開かれ、自分ではなくてどこか訳の分からない場所を見ているように感じた。
何かが、垂れて来ている。
右手の指先を頬に沿わせる。粘つくソレは――赤い赤い血液だった。

315 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:34:23 ID:WDvp3c2p

「……ことり」
「ぁ……」

声。
視界の中の男がグラリと体勢を崩した。
ゴトリ、と鈍い音と共に私の上から転がり落ちる。
男の身体が宙を舞った。現れたその人物が思い切り、彼を蹴り飛ばしたのだ。

光が満ちた。
その先、思わず眉を顰めてしまうような逆光を背に、彼女が立っていた。

涙が溢れた。
でもコレは今まで流してた痛みと苦痛と恐怖から出来た涙なんかじゃない。
喜び。ただその感情だけを表現した雫。
自分の前から放送を境に消えてしまった仲間に再会出来たという奇跡。
それは心からの嬉し涙。

「嘘……」

思わず立ち上がる。
下着が見えてしまうくらい短くなったスカート。血塗れの制服。
その姿はどう見てもボロボロで満身創痍。
だけどことりは嬉しかった。本当に嬉しかった。
一度目の前から消えた大切な仲間、川澄舞がそこにはいた。





「舞!!」


316 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:34:25 ID:a0qorMRo
 

317 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:34:28 ID:a/CZZeEq


318 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:35:00 ID:WDvp3c2p
自分の下着が丸見えになっている事なんて、まるで気にならなかった。
いっそ『あはは、二人とも物凄い格好だね』とでも笑い飛ばしてしまえば良いとさえ思った。
自分を襲おうとした男に何があったのか、何となく分かってはいたもののソレさえ気にならなかった。

舞を慰める事が出来ず、それ所か恐怖を感じて最後の一歩を踏み出せなかったという事実。
もちろん負い目がある訳だが、今はそんなプレッシャーも感じない。
もう一度舞に出会えた。この事実だけで自分の心は満たされたのだから。
だから今すぐにでも駆け寄って、舞に抱き付きたかった。

「ゴメン……ことり」
「……え」

鉄と鉄が触れ合う音が響いた。
黒鉄の塊。吸い込まれそうなポッカリと空いた空洞が自分を見ていた。
彼女が自分の前から消えた時と同じ。舞が拳銃を私に向けて、その接近を抑止する。


「ど、どうしたの舞? ……あ、わ、分かった。まだ、怒ってるんだね。
 あの時、私が舞の事をちゃんと、ちゃんと気遣ってあげられなかったから。
 ゴメン、本当にゴメン。私が馬鹿だったんだ。
 舞が本当に私を撃つんじゃないかとか、間抜けな妄想に取り付かれたりして。
 ……あはは、笑えないよね、ホント」


なんで、なんで、どうして。
どうして、自分だけが喋っているのだろう。

舞は確かに無口だ。口数も少ないし、声も小さい。
自分から率先して会話の主導権を握るタイプでもない。
だけどこんな風に私だけをひたすら喋らせるような真似は絶対しない。
会話の節々でリアクションをしっかり返してくれるし、それ以上に話していてコチラが楽しくなる。
どこか安心するような一面の向日葵。ソレが私の舞に対するイメージだった。

319 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:35:11 ID:a0qorMRo
 

320 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:35:15 ID:a/CZZeEq


321 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:35:38 ID:WDvp3c2p
だけど今の舞は違う。黒色、まるで出口の無い寂しげな古井戸みたい。
別れる直前の空虚な印象ともまた違う。表情に差した陰、乱れた髪。
まるで別人のような感じを受ける。

「佐祐理が……」
「……佐祐理、さん?」
「佐祐理が生きていたの」
「ほ、本当にっ!?」

喉だけから出した音波、淡々とした意思の無い声。
だけど『佐祐理』と言う言葉を発した時だけ、舞の表情が心なしか明るくなった気がした。
しかし倉田佐祐理が生きているという情報はとても信じられないものだった。
なぜなら彼女は一回目の放送で名前を呼ばれている。
この島の定義に重ね合わせるとすれば、既に"死んだ"人間の一人なのだ。

つまり彼女が生きているという事は今まで名前を呼ばれた全ての人間の死に疑問符が付く事になる。
コレを驚きと呼ばずして何と呼ぶか。

「な、なんで!! 舞はどうしてそんな事を知っているの?」
「……鷹野三四が言っていた。他の人間は知らないけど、佐祐理だけは生きているって」

鷹野三四。
ここでまさかこの名前が出てくるとは。だが、考えてみると確かに納得は行く。
主催者である彼女ならば、参加者の死を偽る事もその事実を他の参加者に伝える事も簡単なはず。
一つだけ疑問が湧くとすれば、"どうして"そんな事をする必要があるのかどうか――

そのとき、固めのスイッチを押すような音が聞こえた。
発生源は……舞が右手に持った拳銃。それは、舞が銃のハンマーを動かした音だった。
ことりは自らの目を、耳を疑った。銃の事についてもちろんことりは詳しくは知らない。
どうすれば銃が発射できるのか、その機構がどうなっているか全くの無知だ。
だけど、何となくだが悟ったのだ。
今の舞の動作が『銃を発射するために必要な行動』だと言う事を。

322 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:36:01 ID:a0qorMRo
 

323 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:36:03 ID:a/CZZeEq


324 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:36:12 ID:WDvp3c2p


「佐祐理を救うためには他の参加者を全て殺さなくちゃならない」


ボソッと吐き出すように告げられたその台詞は、ことりにとって死刑宣告に等しかった。
舞の瞳は何も映さない、まるでソレは古ぼけたガラス玉のよう。
こんなに近くにいるはずの私の姿さえ、舞にとっては目に入っていないのかもしれない。
彼女が見ているのは――倉田佐祐理、ただ一人だけ?

「ゴメン……ことり」





「逃げるんだ、ことり!!」
「――ッ!?」

ことりと舞の丁度死角から声と――そして何故か、椅子が飛んで来た。ソレは見事までに舞の頭に直撃する。
椅子。どう見ても椅子だ。
四本足の茶色い木製の椅子。
しかし中国人がコレをみたとしても座る以外の行動は取らないと確信出来る一品ではある。

何か投げるにしても、もう少しマシなものは無かったのか。
聞こえて来た声に思わず安堵したことりはそんな事をふと思った。
この道具の最も正しい使い方こそが、相手に向かって投擲する事であると彼女が知る由も無いのだ。

「赤坂さん!!」
「……死ね」


325 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:36:47 ID:WDvp3c2p
あまりにも間抜けな物が飛んで来て頭に血が昇ったのか、それともことりと赤坂を天秤に掛けたのか、それは分からない。
舞はニューナンブM60にすぐさま弾丸を装填し発砲。
バン、バン。放たれた二発の鉛弾はどちらも赤坂の身体を掠めるにとどまる。
赤坂はトンファーを構え、舞に向かって突進。
当然、舞もそれを迎撃すべく拳銃を構え、ことりをチラリと一瞥し距離を取るため走り出す。

両者の位置が入れ替わった。
大木を背にしてことり。そのことりを守るように仁王立ちする赤坂。
両者から数メートル離れた場所にたたずむ舞。
孝之は全身から血を流し、これまた数メートル離れた場所に倒れている。

「赤坂さん、傷は……?」
「……平気さ。まだ少しクラクラするけどね。それより逃げるんだ、ことり。ここは僕が食い止める」
「違うんです、舞は――」
「ことりっ!!」

赤坂の語気が一瞬強くなる。
今までの優しげな声ではなくて、少し重々しくイラついているような、そんな声。
ことりはビクッと背筋を震わせ、その潤んだ瞳で赤坂の背中を見つめる。

「君がいると……邪魔なんだ。上手く戦えない。正直、足手まといだ」
「赤坂……さん」
「早く行くんだ。一時間後、例の場所で落ち合おう」

ことりは縋るような眼で赤坂を眺める。……赤坂は振り返らない。
分かっている。彼はこんな乱暴な言葉を吐くような人間ではない。
背中は傷だらけで、ツナギはボロボロ。ああは言っていたが、立っているのさえ辛いはず。

それならば、どうして彼がこんな事を言うのか。
本当に、自分がいては舞と戦えないから? それとも舞と戦う姿を見せたくないから?
違う……どちらも決定的じゃない。だったら――


326 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:36:48 ID:a0qorMRo
 

327 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:36:52 ID:a/CZZeEq


328 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:37:17 ID:WDvp3c2p

「分かり……ました」
「……ああ。気をつけて」

ことりは瞳に溜まった雫を拭うと、傍に落ちていたツルハシを拾い上げると一目散に駆け出した。

もちろん赤坂は振り返らない。舞も走り去ることりを撃とうとはしない。
既に両者の視線は対峙する相手だけを向いている。





「さて、お待たせしたね」
「……私が、ことりを先に狙うとは考えなかったの」
「君が本物の人殺しなら、とっくに彼女を殺しているさ」
「……どういう意味」

舞は不愉快だった。
それはまるで『お前には人を殺す事は出来ない』と宣告されたのと同じ事だったから。
つまりソレは『お前には佐祐理を救う事は出来ない』という意味に直結する。
殺せなければ救えない。
参加者を皆殺しにしなければ、佐祐理が死ぬ。それだけは、絶対に駄目だ。

確かに自分はことりを殺す事に失敗した。
いや、あの時赤坂が来なければ引き金を引いていた自信はある。
だが、それは結果論に過ぎない。
全ての人間を殺し尽くすとの誓いを自分は反故にした。
あの時、下劣な男もろともことりを撃ち殺してしまうべきだったのかもしれない。


329 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:37:40 ID:a0qorMRo
 

330 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:37:47 ID:a/CZZeEq


331 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:37:48 ID:WDvp3c2p

もう一人のまともな知り合い、相沢祐一も死んだ。
彼がどんな最期を迎えたのか自分には分からない。
放送では生きているか死んでいるかの機械的な情報しか伝わらないからだ。
だけどもはや彼に未練も無いし、関心も無い。
この島においてその存在を認識したのが約十二時間前。たった半日。
その程度の時間しか経っていないのに、彼に対する私の中の興味がごっそりと消えてしまった。
どういう事なのだろう、この感覚は。

逆にますます昂ぶるのが佐祐理に会いたい、という想い。
極限的な状況は精神状態に深い影響を及ぼすと言われるが、きっとソレは真実だったのだろう。
関心が、周りの人間を生きている正常な人間と捉える感覚がぼやけている。
排除すべき障害としてしか相手を見られなくなっているのかもしれない。

でもことりが血塗れの男に組み敷かれている姿を見た時、自分には両者を撃ち殺すという概念が浮かばなかったのも事実。
しかも男の身体を打ち抜いた四発の射撃はひどく正確で、これ以上無い程完璧に男の身体だけを射抜いたのだから。
コレが何を意味するかも分からない。

「舞ちゃん、でも君がことりを殺すのを躊躇したのは確かさ。
 君のその……姿を見るに、何度か修羅場をくぐって来たんだろう?
 何人殺しているかは分からない。ただ君はことりは殺せなかった。機会はいくらでもあったはずなのに」

赤坂は少し言葉を濁しながら応える。
その視線はどうも自分のスカートの奥に注がれているらしかった。
……ああ、そういえば完全に下着が見えてしまっているんだっけ。
ミニスカートなどというレベルを通り越したスーパーミニ。
水平な角度から見ても下着が露出しているというのは過激から何段階も階段をすっ飛ばして、いっそ痴女的と言えるのかもしれない。

「……余裕?」
「余裕なんて無いさ。でも正直な話、目のやり場には困るかな。僕も一応男だからね」
「……そう」


332 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:38:25 ID:a0qorMRo
 

333 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:38:29 ID:WDvp3c2p
見たければ見ればいい。
どうせこれからすぐに死ぬのだ。
赤坂の武器は見る限り、両手に付けたトンファーのみ。
あの状況で何故か椅子を投擲して来た事からも銃や爆弾などを持っているとは思えない。
自分の敵では無い。

「僕はね、舞ちゃん。君がどうしてこんな事をするのか分からない。だって佐祐理さんは――」
「佐祐理は生きている」

赤坂は怪訝な表情のまま片方の眉を上げた。
眼球がゆらりと動く。視線が舞の顔、その更に奥。その真意を探るため向けられる。

「全ての参加者を殺せば佐祐理に会える」
「……本気で言っているのかい」
「冗談なんか言わない……確かに出会っていきなりことりを殺す事は出来なかった。でも、」

舞は手に持っていたニューナンブM60を仕舞うと、デイパックから鉄塊を取り出す。
否、それは鉄の塊ではない。ただそう見えただけ。
全長156cm。少女、もしくは少し小柄な成人男性と同じだけの長さを持つ超巨大機関砲。
あまりにも無骨、比類なき破壊の化身、絶対の死を運ぶ魔剣。

最狂、最悪、最期の兵器――ブラウニング M2 "キャリバー.50"


「……これまた物凄いものを持ち出してきたな」

赤坂が口元引き攣らせる。当たり前だ、赤坂は知っている。この兵器の力を。
舞は40kgはあるはずのこの機関銃を軽々と持ち上げている。つまり彼女は"撃てる"のだ。この黒鉄の化け物を。
一度この銃の力が解き放たれれば、生身の人間など容易くミンチになるだろう。
ならば、逃げるか? いや、それは有り得ない、赤坂は心に湧き出た弱音を放り投げる。
まだことりが近くにいるはずなのだ。自分が逃亡しては彼女にターゲットが移る可能性もある。
そんな選択はナシだ。

334 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:38:30 ID:a/CZZeEq


335 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:39:05 ID:WDvp3c2p

そしてもう一つ。どう考えても逃げられる訳が無い。
自分と舞との距離は約数メートル。機関銃にとっては格好の標的である。
背中を向けて逃げ出したとしても蜂の巣になるのは確実。
ある意味、この構図が完成してしまった以上、赤坂の死は確定事項なのかもしれない。
だけど彼にはやり残した事があった。
梨花をこのゲームから救い出さなければならないし……何よりもこの哀れな少女を救ってやりたい。
友人の死を受け入れる事が出来ず、"殺し"の匂いに取り込まれてしまった少女を。
そうだ、一掴みの希望に活路を見出すとすれば――突貫するしかないのだ。

森が、風が、空が。ザワメキを止める。
赤坂も舞も見つめる先は互いの相手のみ。
殺しの匂いに息が上がる。舞が息を吸い込み、開幕の言葉を呟く。


「でも、あなたを殺すのに躊躇はしない」


魔剣が火を吹いた。
凄まじい爆音と共に飛び出す弾丸は既に人が視認出来る領域を突破している。
銃の軌道から飛んでくる場所を推測する事も不可能。流星の如く発射されるソレに死角は無い。
目の前の男は成す術も無く、肉塊に変わる。
それは自分と赤坂との距離が数十メートル離れた時点で確定された未来。
100%遂行されるであろう絶対の結末。

「……な、に!?」

舞のキャリバーを持つ手が震える。

はじいた。


336 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:39:10 ID:a0qorMRo
 

337 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:39:14 ID:a/CZZeEq


338 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:39:40 ID:WDvp3c2p

確実な死を与えるはずのキャリバーの弾丸を赤坂は両手に装備したトンファーで防御したのだ。
そして一歩、また一歩と弾丸を弾きつつ、こちらに向かって来る。
傍目には到底信じられない光景。
機関銃と対峙して真っ直ぐ向かってくる人間なんて舞の想像の範疇には無い。

頭の隅でこのキャリバーを使って日本刀の耐久度を調べる実験をやったテレビ番組を思い出す。
曰く『日本刀とマシンガンどっちが強いか?』という何ともくだらない内容だった。
その時の勝者は当然マシンガン。
鋼鉄製の日本刀は七発の弾丸を受け止めたものの、最終的にはただの鉄片に成り果てた。

赤坂のトンファーは見る限り、金属製ではあるようだ。
しかも腕を完全に覆う相当大型のもの。つまり、両腕への直撃を避ける事だけは出来る訳だ。
だがトンファーを持っている本人は生身。伝わってくる衝撃はとんでもないレベルのはず。しかもカバー出来る範囲は限られている。
その証拠に赤坂が着ていたツナギは所々が千切れ、真っ赤に染まっている。
トンファーにしても一発受け止めただけでも神経が千切れ、肉が軋み、骨が砕けるのは確実。
だけど赤坂は向かって来る。頭を覆い、全身に被弾しながらもまっすぐ。


どうしてそこまで出来るのだろう。
絶え間なく続く火薬の爆発音のせいで頭がぼおっとして来た。
マシンガンにトンファーで向かってくる? そんなの狂気の沙汰だ。まるで勝機が見出せない。
あの男がキャリバーを目にした時浮かべた苦笑、それが全てを物語っていたではないか。


―……き…………た―


赤坂の唇が動いた。
凄まじい機関銃の掃射音で何を言っているかはまるで分からない。
舞はキャリバーを撃ち続ける。


339 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:39:51 ID:a0qorMRo
 

340 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:39:54 ID:a/CZZeEq


341 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:40:14 ID:WDvp3c2p

―み……を……す……け……―


何を言っている。何が言いたい。分からない。気味が悪い。
こっちに、来るな。また、唇が動いた。


―きみをたすけたい―


男の唇は確かにそう言っていた。

「あああああああああああああああっ!!!」

絶叫。
もう一度、舞はキャリバーの発射トリガーを掌の肉が擦り切れるくらい、強く握り締めた。





男がいる。
知り合いが見ても彼の名前が『赤坂衛』である事を確かめる術が無いくらい、全身血塗れで死んでいる男が。

女がいる。
ボロボロになった制服に身を包んだ寡黙そうな少女。両手で抱えた巨大な機関銃が妙にミスマッチだ。


前のめりに倒れている男と銃を持ったまま立ち尽くしている少女。
二人の距離は一メートルも無い。
男の両腕だったものには何か不思議な金属の塊がくっついている。

342 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:40:32 ID:a0qorMRo
 

343 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:40:36 ID:a/CZZeEq


344 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:40:45 ID:WDvp3c2p

少女は動かなかった。
何十キロもあるだろうその鉄の凶器を構えたままじっと男の死体を眺めていた。


どれだけ時間が経ったのだろうか。
少女は機関銃を自らのデイパックに仕舞うと、森の奥へと消えた。
初めてその手を他人の血で汚した少女が何を思うのか、それは誰にも分からない。





「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」


誰もいなくなった森の中、男の奇声が静寂を侵略する。
生きている。
彼、鳴海孝之は確かに生きていた。

舞の機関銃と赤坂のトンファーが激しくぶつかり合った舞台裏、彼はその激突の隙を付いて退却していたのだ。
いつ舞の銃撃が自分に向けられてもおかしくは無かった。
もしも彼の身体が正常に動作していれば、立ち上がった瞬間撃ち殺されていた事だろう。

だが彼は異常なのだ。理性ではなくて感覚で生きている。
彼の第六感は意識を覚醒させると同時にその場の状況から最も好ましい行動を選択し、そのまま脊髄に指令を出した。
つまり『這って逃げろ』という事。
彼はまるで自らの通った痕跡を残しつつ這い回るナメクジのように、真っ赤な絨毯を敷きながら逃げおおせたのだ。



345 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:41:12 ID:a0qorMRo
 

346 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:41:17 ID:a/CZZeEq


347 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:41:21 ID:WDvp3c2p
彼が負った傷は常人であれば、否超人であっても確実にショック死を起こしているだろうレベルの重症だ。
北川潤とのカーチェイス、坂上智代との戦い。
その両者で負った傷に加えて、今回は銃弾を四発叩き込まれた。
受けたダメージは今回こそ深刻。
いかに痛みを痛みと認識しないとはいえ血を失い過ぎれば死ぬし、生命維持に必要な器官が死滅すれば自然と息絶える。

「あああああの女、もう少し、もう少しだったのに……糞おおおおおおお!!」

孝之は血だらけになったスーツを引きずりながら、立ち上がる。そして周りを確認。
数々の武器の中でも特にお気に入りだったツルハシだけが無い。どうやら争っていた誰かに持っていかれたらしい。
少し残念だが、まぁ問題ない。まだまだ獲物は沢山あるのだ。殺戮に不備が生じる事も無いだろう。

「あひひ、あかっ? どどどど、どうしたんだぁ〜?」

一歩、足を踏み出した。その瞬間、身体の重量に耐え切れず身体が地面に叩き付けられた。
俗な表現をすればつまり、足が砕けたという事。
もちろん孝之は自分の身体がとうに限界を迎えている事など露知らない。
彼が口にする『痛い』は所詮、まともな肉体を持った人間であった時の癖のようなもので、実際には痛みなど感じていないのだから。

孝之はもう一度立ち上がる。そして一歩、足を前方に踏み出す。
――今度は大丈夫。
身体が沈み込む事も無い。
そうだ、迷うことは無い。
まだ殺せる、犯せる。何でも出来る。
白鐘沙羅の身体の中も見てみたいし、茜やあゆにやってみたい事も沢山ある。
行ける。問題は無い。自分に出来ないことなんて何一つない。


なぜなら。自分は神に見咎められた戦士。
自分は世界を良い方向に導くための恩恵を得た人間。
そして、自分はこの島にいる全ての人間を救う救世主なのだから。

348 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:41:53 ID:WDvp3c2p





【D-4 森/1日目 日中】

【白河ことり@D.C.P.S.】
【装備:竹刀 風見学園本校制服(縦に真っ二つに破けブラジャー露出)】
【所持品1:支給品一式 バナナ(台湾産)(4房)虹色の羽根@つよきす-Mighty Heart-、ツルハシ】
【所持品2:ヘルメット、発炎筒(×4本)、懐中電灯(×2本)、単二乾電池(×6本)】
【状態:疲労(小)極度の興奮状態、精神的疲労大、レイプ未遂のショック、両方の頬に酷い痛み、軽い頭痛、深い悲しみ】
【思考・行動】
基本方針:ゲームには乗らない。最終的な目標は島からの脱出。
1:15時まで赤坂を神社で待つ。
2:仲間になってくれる人を見つける。
3:朝倉君たちと、舞と、舞の友達を探す。
4:千影の姉妹を探す。

※虹色の羽根
喋るオウム、土永さんの羽根。
この島内に唯一存在する動物、その証拠。

【備考】
※テレパス能力消失後からの参加ですが、主催側の初音島の桜の効果により一時的な能力復活状態にあります。
 ただし、ことりの心を読む力は制限により相手に触らないと読み取れないようになっています。
 ことりは、能力が復活していることに大方気付き、『触らないと読み取れない』という制限についてはまだ気づいていません。
※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化) つもりですが、 状況によってはどうなるか分かりません。
※坂上智代から、ボイスレコーダーを発端とした一連の事件について、聞きました。


349 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:42:03 ID:a0qorMRo
 

350 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:42:14 ID:a/CZZeEq


351 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:42:35 ID:WDvp3c2p

【C-5 山頂側湖周辺(マップ中央)/1日目 日中】

【川澄舞@Kanon】
【装備:ニューナンブM60(.38スペシャル弾5/5) 学校指定制服(かなり短くなっています)】
【所持品:支給品一式 ニューナンブM60の予備弾67 バナナ(フィリピン産)(3房)、ブラウニング M2 “キャリバー.50”(ベルト給弾式、残弾55) 】
【状態:疲労(中)肋骨にひび、腹部に痣、肩に刺し傷(止血済。痛いが普通に動かせる)、
 太腿に切り傷(止血済。痛いが普通に動かせる)、後頭部にたんこぶ、掌から軽い出血】
【思考・行動】
基本方針:佐祐理のためにゲームに乗る
0:北上する。
1:佐祐理を救う。
2:全ての参加者を殺す。ことりも殺す。
3:相手が強い場合、無理はしない。
4:赤坂の行動に衝撃。

【備考】
※デリホウライのトンファー@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄 は破壊。
 椅子@SHUFFLE! ON THE STAGE はC-5に放置。
 赤坂のデイパックも銃撃で使い物になりません。

【C-5 西部 /1日目 日中】

【鳴海孝之@君が望む永遠】
【装備:レザーソー】
【所持品:支給品一式、多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、斧2本、両手持ちの大型ハンマー、レザーソー2本、フック付きワイヤーロープ(5メートル型、10メートル型各1本)】
【状態:俺には神の啓示と加護がある!皆待ってろよ!!】
【思考・行動】
1:ひひひひひひひひひひひひひ(移動する、犯す、殺す)


352 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:43:04 ID:a0qorMRo
 

353 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/13(月) 19:43:10 ID:a/CZZeEq


354 :私の救世主さま(修正版) ◆tu4bghlMIw :2007/08/13(月) 19:43:11 ID:WDvp3c2p

【備考】
そろそろ肉体の方が限界です。
精神的にはまだまだ元気ですが、思うように身体が動きません。
出血は酷く、いつ出血多量で死んでもおかしくありません。
孝之のスーツは全身が消化剤や自分の血等で汚れています。
自分が神の加護を受けていると思い込んでいるので、酷い出血も痛みもまったく気にしていません。
祈の棒キャンディーを消費しました。
レオを除く生徒会メンバーの名前を情報として知っています(良美については声、髪の色など土永さんが知る限りの情報を全て知ってます)。
移動する方向は次の書き手さんにお任せします。

【備考その2】
孝之の「実際の」状態は以下の通り
肉体…疲労は通常なら人間の限界点突破、後頭部より大量の出血、肋骨右3本&左1本骨折、右足首捻挫、右太腿負傷 弾丸四発被弾(右腕、右足、背中、左肩)弾は全て体内、左肩骨粉砕
奥歯1本へし折れ、全身擦過傷及び裂傷多数、脳内より大量のエンドルフィン分泌により痛覚完全に麻痺
精神…完全にハイモード及び絶賛発狂中


新しく入手した得物について

大型ハンマー:ミンチ作るのに向いてますね。でも、即死させるならこめかみへの一発だ!
ツルハシ:五寸釘のごとく胸に一発突き立ててやりましょう。
斧:スプラッタ映画みたいに脳天かち割りたいね!
レザーソー:マフラー巻いていても鎧袖一触、頚動脈を掻き切って鮮血の結末を!
フック付きワイヤーロープ:フックが体に突き刺さったら、すごく……痛いです。


【赤坂衛@ひぐらしのなく頃に 祭 死亡】

355 : ◆/P.KoBaieg :2007/08/14(火) 12:48:30 ID:QvfIX4DP
住宅地の中を一人の少女が足を引きずりながら走り続ける。

少女の名は月宮あゆ。

目的地は海の家。

なぜ走り続けているかって?

それは極めて単純明快。
彼女は逃げているのだ。

自分自身の犯した罪から。

(もう……もう嫌だよ……。全部もう嫌…………)

彼女の心は悲鳴を上げ、疲れ果てていた。

体が痛い。
左肩が、右足が痛む。

だが、それ以上に心が痛かった。

もう自分は名雪には許してもらえない。
それどころか自分を守ってくれた美凪や圭一に武、沙羅ですら今の自分が戻ったところで許してはくれないだろう。
そう考えるだけであゆの心はその苦痛に悲鳴をあげていたのだ。



356 : ◆/P.KoBaieg :2007/08/14(火) 12:49:01 ID:QvfIX4DP
理性では逃げるべきではないというのを判っていた。
だが、あゆは逃げてしまった。
名雪の眼を見た時、言葉を聞いた時、もう許してはもらえないと判断してしまったから。

ゆえに彼女は逃亡し、今「海の家」を目指していた。

海の家にたどり着いたら、そこに引きこもって誰とも会わないようにする。
そうすればこの殺し合いが行なわれている現実から逃げられるのだから。

そして、「海の家に誰かいたらどうするのか」という文字はあゆの辞書には無い――。

加えて「そこに到るまでの道程でどんな目に遭うか」という思考もまた無かった。


▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


357 : ◆/P.KoBaieg :2007/08/14(火) 12:51:29 ID:QvfIX4DP
今の土見稟は間違いなく「鬼」だった。
放送によって「芙蓉楓の死」という受け入れがたい事実を知らされたというのもあったが、それは彼を鬼と変える一要因に過ぎない。

決定的だったのは本来病院で合流するはずだった蟹沢きぬを発見したこと
――より正しくは彼女の持っている金属バットと血染めの制服を持った彼女の姿を――だった。

もし、いつもの彼ならばきぬが持っている制服がバーベナ学園のそれではないことは判ったはずであり、
彼女に疑心を抱く事もなかったかもしれない。

だが、それらは仮定に過ぎず、今の彼はH173によって判断力が大幅に低下した状態にあり、冷静さも欠如していた。
そうだったからこそ認識したのだ。

「楓を殺したのは蟹沢きぬである」と。

だからこそ彼は単車を加速させる。
恐らく今日までの人生で最大級の殺意を彼女に向けたまま。

「おおおおおおおおぁぁぁぁぁあっ!!!」

騙された。
蟹沢は殺し合いに乗っていた。
病院へ現われなかったのも最初から来る気なんてなかったからだ。

喉が痒い。
その為に血が流れるのも気にせず、左手で喉をかきむしりながらも稟は単車を減速させようとはしない。


358 : ◆/P.KoBaieg :2007/08/14(火) 12:52:35 ID:QvfIX4DP
「かぁぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃさぁぁぁぁぁわぁぁぁぁぁああああッッ!!」

殺す。
楓を殺した蟹沢だけは絶対に殺してやる。

殺意が凝縮され、灼熱する。

右手に麻酔銃を握り締め、稟は単車をきぬ目掛けて突っ込ませようとする。
だが、次の瞬間単車が不意にバランスを崩す。
それにより、単車は横滑り状態となり本来の軌道を大きく外れて横転した。

横転によって稟は地面に叩きつけられたが、それでも右手の麻酔銃は手放さなかった。

「なんの……、こんな事で……」

全身が痛む、それでも稟は体に鞭打って立ち上がろうとする。
彼の目に、きぬがこちらへ近づいてくるのが見えたのはその時だった。


▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


嬉しかった。
病院へ向かう途中、こちらに向かってくる稟の姿を見たきぬはただただ嬉しかった。

(あのヘタレ……心配になってボクをむかえに来てくれたんだな……)


359 : ◆/P.KoBaieg :2007/08/14(火) 12:53:06 ID:QvfIX4DP
思わず涙が出た。
2回目の放送で時間帯が正午であることは改めて確認できた。
友人たちが大勢死んだ事を知ったとき、自分では泣いてないと言いながら本当は涙を流していた。

だが、ようやく単車にまたがってこっちに来る稟の姿を認めたとき、本当に嬉しくて涙が出た。
稟はずっと待っていてくれたのだ。
夜明け前に病院で合流するという約束を忘れてはいなかったが、レオの死を知ってショックも受けたし寄り道もしてしまった。

もう病院に向かったところでもう待ってくれてはいない――

病院を目指していてもそう思っていた。

だけど、違った。

稟はずっと待っていてくれたのだ。
一人で待ち続けて、そして迎えに来てくれたのだろう。

叫ぶような声から明らかに怒っているのはハッキリわかる。
ああ、待たせすぎたからだろう。
自分もすぐ駆け寄らなければ。

その時、目の前で単車が横倒しになり、稟が投げ出される。

それを見た直後、きぬは稟の方へむかった。
体はずっと走り続けていた事で酷く疲労しているのが判る。
もう既に体が重く感じられ、限界に近いのも理解できた。

360 : ◆/P.KoBaieg :2007/08/14(火) 12:53:38 ID:QvfIX4DP
それでも、稟のもとに向かうのは変わらない。
今、自分がするべきことはまさしくそれだったのだから。

「おい……ヘタレ、シッカリしろよぉ……」

起き上がろうとする稟に近づいたきぬはその姿を見て驚いた。
無理も無い。
稟の体は病院の倒壊による埃や煤、それに加えて倉成武を攻撃したときに浴びた返り血であちこちが汚れている。
特に酷いのは首で、流れ出た血で真っ赤になっていた。

(なんだよこれ、傷だらけじゃん。もしかして……こんな目にあってまでボクのこと待っていてくれたのか?)

まさか、それが稟本人の手でつけられた掻き傷によるものとはきぬが知る由も無い。
彼女からすれば、それは誰かにつけられたものであって、稟はこれだけの傷を負ってなお病院で待ち続けていたと思わせるのに十分だったから。

思わず、立ち上がらせる為に稟へと手を差し出すきぬ。
その返答は、稟が彼女の差し出した手ではなく手首を握るというものだった。
手首を握られたのは驚いたが、稟が立ち上がってきたのは嬉しかった。

そうだ、すぐに首の傷をどこかで手当てしてやらないと。
そこまで思った時、稟が口を開いた。

「か、に、さ、わ……」
「そうだよ。ボクだよ、このヘタレ……」

だが、返事は無い。
その代わりに首筋へ何かが当てられるのを、彼女はハッキリと感じた。

361 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/14(火) 12:55:36 ID:DpkySUgt
 

362 : ◆/P.KoBaieg :2007/08/14(火) 12:55:45 ID:QvfIX4DP
「え?一体なにす……」

言葉は続かなかった。

次の瞬間響いたのは、とても銃声とはいえない軽い発射音。

そして、次にきぬが感じたのは鋭いものが突き刺さる――そう、学校で砕けた鉄の破片を指で触れたときを思い出させる――感触と、
直後に襲ってきた急激な意識の喪失だった。




「蟹沢、お前は……ッ!」

稟は自分の前に倒れこんだきぬを見下ろしていた。
その左手にはきぬの持っていた金属バットが握られている。

このバットで蟹沢は楓を殴り殺して制服を奪った――

それが稟の揺るがぬ答えであり、殺意の根源。
だが、楓の仇である彼女は既に麻酔で眠らせた。

あとはこのバットで殴り殺す――

稟はそう思い、金属バットを振り上げる。

そして、彼がきぬの頭目掛けて渾身の力を込めてバットを振り下ろさんとした時――――。


363 : ◆/P.KoBaieg :2007/08/14(火) 12:56:16 ID:QvfIX4DP
「アアッ!!」

どこからともなく悲鳴が聞こえた。

稟がその声に顔をあげると、10メートル程離れたところに上半身を、そして顔を血で汚した少女が立っていた。


▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


月宮あゆにとって悲鳴をあげたのは、惨劇を止めたかったからではない。

ただ、海の家に行く途中の道で見てしまった事の一部始終を前に硬直し、次の瞬間
何が起こるのかを脳が知覚した瞬間、思わず声をあげたに過ぎない。

男の人が近づいてきた女の子を銃で撃ったら、女の子が倒れた……そしたら男の人が立ち上がってバットで殴ろうとした――

だから、その後に続く悲劇を前にして、思わず目を両手で覆い声をあげただけだった。

あゆはもう見たくなかった。
誰かが死ぬところも殺すところも見たくはなかったのだ。
自分が殺されるのは恐ろしいし、そんな経験は先ほどの乱戦で名雪に襲われたアレだけで十分すぎる。

純粋な恐怖ゆえに口から出た叫び。
あゆは叫んだ時のまま、目を手で覆いその場に跪く様に崩れ落ちていた。


364 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/14(火) 12:56:17 ID:DpkySUgt
 

365 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/14(火) 12:56:19 ID:pbAso2E1


366 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/14(火) 12:56:57 ID:DpkySUgt
 

367 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/14(火) 12:57:05 ID:pbAso2E1


368 : ◆/P.KoBaieg :2007/08/14(火) 12:57:28 ID:QvfIX4DP
(どうして?どうして平気でそんな簡単に人を殺せるの……?ボクにはわからない……わからないよ!!)

名雪が怒りから自分に対する殺意を抱いたのは恐ろしいが理解できた。
だが、他の人間がホイホイと殺し合いに乗る事が理解できない。
理解したくもなかった。

それらも拒絶する為に、海の家へ行きたかったのにどうして、こんな光景を目にしなければならないのか。

そんなあゆに出来ることは一つ。
これから起きる惨劇を見ないように目を閉じ、耳をふさぐだけだった。

「……?」

だが、いつまで経ってもバットで人を殴るような音は聞こえてこない。
どうしたのだろうか?

おそるおそる目を開いたあゆは、顔をあげることができない。
だが、おかしい。
自分の頭上に影が差している。

影?

頭を上げたあゆは影の正体を見た瞬間、名雪の口から告げられた復讐の内容を聞かされたときに匹敵する衝撃と恐怖を感じた。

そこにいたのは、先ほど女の子にバットを振り下ろさんとしていた男――土見稟――だった。



369 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/14(火) 12:57:43 ID:DpkySUgt
 

370 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/14(火) 12:57:45 ID:pbAso2E1


371 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/14(火) 12:58:29 ID:DpkySUgt
 

372 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/14(火) 12:58:31 ID:pbAso2E1


373 : ◆/P.KoBaieg :2007/08/14(火) 12:58:40 ID:QvfIX4DP
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


なんだあいつは、あの女は?

何時からあそこにいた?

何をしているんだ?

よく見れば体が、顔が、足が血にまみれているじゃないか。
ああ、そうかあの女も蟹沢と同じ人を殺したのか。
だからあんなに血まみれなのだろう。

なぜ叫んだ?
そんなの決まっている。
自分が叫び声をあげることで、俺が蟹沢から目を反らすようにしたかったのだ。

ああ、それならお前から殺してやる。
蟹沢は気絶している、こいつを殺すのは後回しにしてやればいい。
だからまずはあいつからだ。





374 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/14(火) 12:59:19 ID:DpkySUgt
 

375 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/14(火) 12:59:22 ID:pbAso2E1


376 : ◆tu4bghlMIw :2007/08/15(水) 18:42:39 ID:S1/ppCD9
「つぐみ、少し周りを見てくるから。ここで休んでいてくれ」
「なら一緒に行くわ。誰か他の参加者がいたらどうするの」

私がそう返すと、純一は微妙に応えづらそうな表情をしながら左の頬を指で軽く掻いた。

「いや……さ。つぐみに色々迷惑かけちゃっただろ? それにこの辺りに誰もいないのは感覚的に分かるんだ」
「そりゃあ……ね。でも、気にしてなんていないわ」

逡巡。
私達の現在地はA-2 スクラップ山。島内の端の端になる場所だ。
篭城するにしても条件が悪い事は容易に推測できるポイント。こんな所に長々と滞在したがる人間はそうそういないだろう。

純一は申し訳なさそうな顔でキョロキョロと視線を動かしている。
私はと言うと気の利いた台詞も思いつかないし、そんな事に頭を捻る気も無い。
ただ彼が何を考えているかは大体察しが付いたから、少しだけ胸が痛くなった。

「いいよ。外、行って来たら」
「……悪いな」

純一は自分のデイパックを一度背負い直すと、車のドアを開けて瓦礫山の奥へと消えた。
まだ彼の眼は少し赤かった。自分一人で話し合う時間が必要なはずだ。

気が付けば私と純一はそれなりに長い時間を共有して来た事になる。
朝倉音夢の死、彼はソレを受け入れる事が出来るのだろうか。妹であり、最愛の恋人でもある人間の死。
その悲しみはどれ程のものなのだろうか。私には分からない。いや、分かりたくないのかもしれない。
だって、もし私が同じような経験をするとすれば、それは――


377 : ◆tu4bghlMIw :2007/08/15(水) 18:43:11 ID:S1/ppCD9
私はハッと我に返る。
犬が身体に付いた水分を吹き飛ばす仕草のように、頭を左右に大きく振る。黒髪がバサバサと音を立てた。
……駄目だ。そんな事を考えるのは止めよう。
そんな最悪の未来、想像してはならない。戯れや仮定という接頭語がついても許せはしない。
確かに、武が簡単に誰かにやられるとは考えにくい。
だけど一切の常識が通用しない体験を嫌というくらいして来た私達にとって、絶対的な安全が保証されていない事もまた事実なのだから。

そんな事よりももっと建設的な事を考えよう。
誰かが死ぬだとか、死んだとか、そんな思考は何のプラスにもならない。
望ましいのはやはり現状分析。
こんな時間になるまで、落ち着いて身体を休ませる機会も無かったし、じっくりと思案を練る余裕も無かった。


私にはキュレイウィルスがある。
強靭な肉体と再生能力、ここではあまり直接的には役に立たないが停止した老化現象など、多くの力を持っている。
文字通り身体を切り刻まれても死ぬ事は無かったし、銃弾を食らっても本来ならそんな傷はあっという間に治ってしまう。
だがこの島に来てからはキュレイの働きが若干弱まっている気がする。
身体能力に関しては際立った変化は無いが、特に再生能力の衰えは顕著。
この状態ならば普段は不死に近い私にとっても『死』は現実的な問題となる。
だがここで一つだけ、気になる事があった。

指先に冷たい金属の感触が走る。ヒヤリと瞬間的に指紋が冷却される。
これでコチコチという爆弾の鼓動でも伝わって来たら分かりやすいのだが。

首輪を弄くりながら私が考える事はただ一つ。
つまりは『本当にこの"首輪"は私を殺せるのか』という事。
まずキュレイの状態が万全ならば死ぬ訳が無い。ホールで見た程度の爆発は所詮児戯に等しい。
とはいえ、主催者側も馬鹿ではないはずだ。
どうやったかは知らないが、こうして私や武を拉致し、そして不可解な能力でバラバラに転送――。
超自然的な何かか、もしくはファンタジー小説に出てくるような魔法という奴かもしれない。
普段ならば一笑で切って捨てたくなる仮説なのだが。
だが、彼女らが大きな力を有している事も事実。この首輪はおそらく『爆発すれば必ず私を殺す事が出来る』のだろう。

378 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 18:44:10 ID:o3jk0MOg


379 : ◆tu4bghlMIw :2007/08/15(水) 18:44:19 ID:S1/ppCD9


首輪の爆発力に関して、考えられるケースは二つ。
まず私の治癒能力があの爆発でもキッチリ死ぬ程度まで抑制されている、というパターン。
だがコレは正直馬鹿らしい分析だ。

純キュレイ種である自分でさえ、この不死に近い再生能力は計り知れずにいる。
この殺し合いをゲームに見立てた彼女達をゲームメイカーとするならば、こんな厄介な参加者はいないだろう。
万が一にでも首輪が爆発したにも拘らず、私が死ななければソレは主催側にとって脅威となる。

それに病原菌などの抗体機能をとってもキュレイには絶対的な力がある。
どのような手段で私のキュレイの力を抑止しているのかは分からない。
だがそんな秤で薬品をミリグラム単位まで調節するような具合に、能力の抑制が出来るとは思えない。
それに私の場合、頭を潰せば必ず死に絶えるという訳でもない。
不死に近いとはいえホラー映画に出てくるゾンビでも無いのだ。

ならば正解はおそらく二つ目の仮説。
つまりキュレイの再生能力を何らかの手段で大まかながら抑制。
そして強力無比な爆弾を私の首輪にだけ内臓するというパターンだ。
再生される前に爆殺する。しかも圧倒的火力をもって。あんなオモチャみたいな爆発ではなくて。
コレならば全て説明がつく。
首輪製作の作業を考えればキュレイ種である武の首輪も私と同じタイプのものである可能性が高い。


そしてこの仮説に基づいて首輪を分析する。
まず思い出されるのが鷹野三四が言った『首輪が爆発する条件』についてだ。
曰く、

・無理に外そうとしたり、破壊しようとして一定以上の大きな衝撃を与えた場合。
・禁止エリアに進入した場合。
・殺し合いに参加する事を放棄して会場から逃げ出そうとしたり、脱出しようとした場合。
・二十四時間死亡者が出なかった場合。

380 : ◆tu4bghlMIw :2007/08/15(水) 18:45:04 ID:S1/ppCD9

これらの条項から首輪に遠隔操作機能、発信機、時限装置が付いている事は確定的。
盗聴器……も怪しい線ではある。他には何が付いているか分からない。
だがこの中で注目すべきは『無理に外そうとしたり、破壊しようとして一定以上の大きな衝撃を与えた場合』という部分についてだろう。

爆弾に下手な衝撃を与えれば爆発する。
それは考えようによっては当たり前に思えるが、実は違う。
例えば手榴弾はピンを抜いてハンドルを外さない限り、サッカーボールの代用品にしても爆発しない。
心情的なものを排せば、スイカをボール代わりにした方が危険なくらいだ。
つまりはこの首輪に内臓されている爆弾の機構にある程度の想像が付く訳だ。

あの鷹野三四の何気ない一言が、実際は様々な裏事情を示唆していたという事になる。
彼女の支配から脱出するためにはこの首輪を外す必要がある。


ここでもう一つの仮説と行こう。
化け物のようにしぶとい人間を殺すため、わざわざ爆薬を増量して作った首輪。
普通の人間を当たり前のように爆殺するための首輪。
どちらが道具として洗練されているだろうか。

答えは迷う理由も無く、後者。
私の首輪と音夢やネリネの首輪のサイズは全く一緒だった。
個人個人で首輪の見た目に違いがあるのは群集心理的にプラスでは無い。
自分達は均一。この場に集められた全ての人間が等しいゲームの駒、そういった意識が働きにくくなる可能性がある。

ここで浮上するのが構造上の不備である。
爆薬を多く積めてあるからとはいえ、衝撃に弱くては話にならない。
彼女達の目的がその言葉通り『私達に殺し合いをさせる事』であるならば首輪の不備で退場、というのは面白い話ではないだろう。
放送の際に、鷹野三四が言っていた台詞とも合致する。



381 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 18:45:26 ID:o3jk0MOg


382 : ◆tu4bghlMIw :2007/08/15(水) 18:45:45 ID:S1/ppCD9
ここまで推測を進めると、私の背筋に冷たいものが走った。
悪寒? いや違う、これは戦慄だ。
この島における全ての参加者を縛っているのはこの首輪である。
首輪があるから死の恐怖に怯え、精神に異常を来たす者が現れる訳だし、大規模な主催者に対する反抗も起こせない。
もしも、コレを解除する方法が見つかったとしたら? それはゲームから脱出するまさに起死回生の一手となる。

「これなら、ゲームを……潰せる…………ッ!?」

そこまで口に出して、私はある事に気付く。
反射的に自分の唇に蓋をする。

……聞か……れた?

誰かに見られているはずが無いのに周囲に視線を送る。
忘れる所だった。
――盗聴されている危険性があるのだ。


数秒の空白。爆発は……しない。
盗聴自体が杞憂なのか、管理者側が聞き逃したのか、それとも虫の羽音だと無視されたのかは分からない。
でも、もしかしたら私は期待されているのかもしれない。そんな事をふと思った。
何故か背中の辺りがムズムズした。

このデスゲームで健闘するだろう人物として、注目を置かれている。
確かにそれは事実なのだから。
正午前、プールのファイルが置かれていたパソコンから唯一繋がったサイトの事を思い出す。






383 : ◆tu4bghlMIw :2007/08/15(水) 18:46:36 ID:S1/ppCD9
『少年少女殺し合い、優勝者は誰だ!?』

何気なくクリックしたアドレスには二つの投票フォームがあった。
その内"事前投票"と書かれた項目は既に投票を終了しており、名簿で見かけた名前が十人ズラッと並んでいた。


【川澄舞】【国崎住人】【佐藤良美】【杉並】
【園崎詩音】【高嶺悠人】【ハクオロ】【芙蓉楓】【古手梨花】【宮小路瑞穂】


実際に出会った出会って名前を知っている人間は一人もいなかった。
この中で既に放送で名前を呼ばれた人間が三人。コレを多いと見るか、少ないと見るか。
まぁある程度の信憑性はあるのかもしれない。

だが私の目を引いたのはその隣の『最終中間投票』という項目だった。期限は第二回放送が終わるまで、とある。
投票自体の締め切りは第三回放送まで。だが順位は第二回放送時点からは更新されない、という感じらしい。
興味本意でリンクをクリックする。

「へぇ……」

その結果に私は苦笑するしか無かった。
このランキングは上位十名だけがバラバラに表示されるという形式で詳しい順位は分からなかった。
現れた名前は先程のものと半分は変わらない。
つまりあの事前投票は中々的確な所を突いていたらしい。
ランキングの上位者は、


【北川潤】【川澄舞】【佐藤良美】【国崎住人】
【高嶺悠人】【ネリネ】【宮小路瑞穂】【前原圭一】【坂上智代】、そして――


「私、か」

384 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 18:46:53 ID:Hjecs+NW
 

385 : ◆tu4bghlMIw :2007/08/15(水) 18:47:22 ID:S1/ppCD9

【小町つぐみ】の名前がそこにはあった。
名前の横には様々なコメントが書き込まれており、私の隣にも様々な短文が並んでいた。
『外見十代なのに実は人妻とか滅茶萌えます』など、中々エキセントリックな内容のものが主流なのは微妙な気分になる。

他の参加者にも一風変わったコメントが多い。
『最高』という言葉が欄のほとんどを埋める人物。
『げぇ!』や『ヤンデレ』などの単語が散見される人物。
『男でも構いません』などの意味深な一文が眼を惹く人物、など多岐に渡る。

しかしこの『北川潤』という人物が一番人気らしく、最も多くの書き込みがあった。
だが並ぶのは『( ゚∀゚)彡童貞!童貞!』やら『梨花ちゃんや風子ちゃんと仲良くなれて羨ましい』などの如何わしい文章ではあったが。
コレだけでは一体どんな人間なのか評価の下しようが無い。
とはいえ事前投票に載っていた人物よりも彼の欄が盛り上がっているのは確か。つまりはそれだけの実力者であるという事だ。
しかもこの梨花というのが【古手梨花】ならば、彼は前評判の高かった人物と同行している事になる。
おそらく強力なパーティを組んでいる。侮れない。

その他の項目にも目を通そうとしたが、どれも工事中で役には立たなかった。

中々楽しませてもらったが、一つだけ不満な所を挙げるとすれば、それは上位十人に【倉成武】の名前が無かった事くらい。
本当に、本当に何気ない戯れなのだが、私は彼の名前に一票を投じてからパソコンの探索を再開した。





この後少ししてゴミ箱のファイルに気付いた訳だが、このホームページの情報を鵜呑みにして良いのか分からなかったため特に問題視はしていなかった。


386 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 18:47:41 ID:o3jk0MOg


387 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 18:47:47 ID:Hjecs+NW
 

388 : ◆tu4bghlMIw :2007/08/15(水) 18:48:14 ID:S1/ppCD9
……まぁ。とりあえず盗聴には気を使う必要がある事は確か。
再認識する。
ここまで考えると、後は首輪を何とかするための具体的なプランを考えたくなる。
だが大雑把に考えてもソレは難易度の高い行程だ。
まず直接的な首輪の分析となれば、さすがに主催者も黙認はしないだろうという事。
最低、首輪を取り外すには内部構造の分析やそれ専用の器具、そして協力者が欠かせない。
作業中に遠隔操作で首輪を爆破される危険性を考えると、その辺りの対策も考えなければならない。

「前途多難ね……」

独り言。
まだ純一は帰って来ない。そろそろ彼が一人で出掛けてから十五分という所か。
まぁ、いい加減戻って来る頃だろう。


このゲームが何を目的として行われたのか、どうしてこの島が会場となったのかなど、謎は多い。
だがゲームメイカーの後ろには確固たる組織が付いている事は疑う余地が無い。
とはいえこの首輪の出来はそれほど宜しいものではない気がするし、島に『脱出の手掛かり』と思しきものがいくつも散見するのはどう見てもおかしい。

ポケットからプールで見つけたテキストファイルの暗号文を写したメモを取り出す。
仰々しい文体で全文が構成されているが内容は至極単純。
『正義を持つ虫を食べた魔物、神の使いの羽、国を裂く事ができる最高の至宝』を集める。
そして神を封印した場所に行けばそれが何かの手掛かりになる、という事らしい。

現代的な殺人ゲームに、どうしてこんな古文書のような暗号文書が関係してくるのか。
そもそも『神』あのファイルによると『大神』だったか。それは何なのか。


この中だと『正義を持つ虫を食べた魔物』という単語だけが不可解だ。
他の二つの単語は何となくだが、想像がつく。少なくとも暗礁に乗り出してしまう程ではない。
『神の使いの羽』はおそらく天使であるし、『国を裂く事ができる最高の至宝』も頭の中で何かが引っ掛かっている気はする。


389 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 18:48:36 ID:Hjecs+NW
 

390 : ◆tu4bghlMIw :2007/08/15(水) 18:49:35 ID:S1/ppCD9

正義を持つ虫を食べる、つまり殺してしまうという事なのだろうか。
魔物という単語が出て来ている以上、『虫』という言葉は人間の比喩のような気もするが。
強い正義の心を持った人間さえ殺してしまう、取り込んでしまう魔物。
それは一体どんな存在なのだろうか。

だが、こんな露骨な『脱出のヒント』と思われるような情報を島内の端末に主催者が置き忘れる事など有り得るのかという意見も当然ある。
確かに彼女らの組織に造反者がいてその人物の仕業、というラインも考えられなくは無い。だけど――


「つぐみ、帰ったぞー」

少し遠く、瓦礫の向こうから純一の声が聞こえる。
間延びした声から感じるのは若干の疲れ。目ぼしい収穫は無かったのかもしれない。

とりあえず、ここで思考は一旦停止。
首輪に関する事も純一に伝えなければいけないし、伝え忘れていたランキングの事も話半分で言っておくべきだろうか。
ポケットの中に暗号文書を戻しながら、私は一度車のクラクションを押した。




【A-2 スクラップの山・前/1日目 午後】

【小町つぐみ@Ever17】
【装備:スタングレネード×9】
【所持品:支給品一式 天使の人形@Kanon、釘撃ち機(20/20)、バール、工具一式、暗号文が書いてあるメモ】
【状態:健康(肩の傷は完治)】
【思考・行動】
基本:武と合流して元の世界に戻る方法を見つける。

391 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 18:49:45 ID:Hjecs+NW
 

392 : ◆tu4bghlMIw :2007/08/15(水) 18:50:15 ID:S1/ppCD9
1:純一と共に百貨店に行く。
2:純一と共に武を探す。
3:首輪を解析する準備を整える。暗号を解読する。
4:ゲームに進んで乗らないが自分と武を襲う者は容赦しない
5:稟も一応探す。
6:北川潤に関心。
【備考】
赤外線視力のためある程度夜目が効きます。紫外線に弱いため日中はさらに身体能力が低下。
参加時期はEver17グランドフィナーレ後。


※音夢とネリネの知り合いに関する情報を知っています。
※純一 とは音夢の死を通じて絆が深まりました。
※音夢と純一の関係に疑問を持ってます。
※純一には博物館の戦闘を話していません。
※暗号について
 暗号に書かれている3つ集めると主催者達への道がつうじると考えていますが、他の書き手の皆さんが変えてもかまいません。
 正義を持つ虫を食べた魔物=オオアリクイのヌイグルミ@Kanon
 神の使いの羽=天使の人形@Kanonか羽リュック@Kanonと考えていますが他の書き手の皆さんが変えてもかまいません。
 国を裂く事ができる最高の至宝=国崎最高ボタン
 と全体的には考えていますが、他の書き手の皆さんが変えてもかまいません。
※つぐみと武の首輪はキュレイ対策のため、爆薬が他の首輪よりも多く積載されている可能性があります。
 そのため他の首輪と比べて構造に不備が出来ている可能性があります。
※北川潤、川澄舞、国崎住人、佐藤良美、高嶺悠人、ネリネ、宮小路瑞穂、前原圭一、坂上智代を強力な参加者かもしれないと認識。
 純一にはまだこのランキングについて話していません。

※「少年少女殺し合い、優勝者は誰だ!?」について
殺害数ランキング、最新死者一覧などは第二回放送前の時点では未更新。
優勝者予想の最終中間投票だけが更新されています。投票はまだ出来ます。
時間帯としては楓が死亡した直後を想定。優勝者予想の最終結果が出るのは第三回放送以降です。


393 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 18:50:25 ID:Hjecs+NW
 

394 :代理トウカ ◇tu4bghlMIw:2007/08/15(水) 18:55:26 ID:Hjecs+NW
※プール内のパソコンについて。
ゴミ箱の中にNO1からNO100のフォルダがあります。
NO17のフォルダにテキスト「大神への道」が入ってます。
他のフォルダに何か入ってるかどうかは他の書き手しだいです。


【朝倉純一@D.C.P.S.】
【装備:ミニウージー(24/25) 大型レンチ】
【所持品:支給品一式 エルルゥの傷薬@うたわれるもの オオアリクイのヌイグルミ@Kanon】
【状態:健康・強い決意・血が服についている】
【思考・行動】
基本行動方針:人を殺さない 、殺し合いに乗ってる人間を止め全員での脱出
1:つぐみと共に百貨店に行く。
2:つぐみと共に武を探す。
3:つぐみを守り通す
4:暗号を解読する。
5:ことりを探す。
6:殺し合いからの脱出方法を考える
7:さくらをちゃんと埋葬したい。
【備考】
芙蓉楓の知人の情報を入手しています。
純一の参加時期は、音夢シナリオの初キス直後の時期に設定。
※つぐみとは音夢の死を通じて絆が深まりました。
※つぐみとは年が近いと思ってます


395 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:32:59 ID:/3KHNctA
ひとまずは新市街に出て情報を集めることに決めた智代とトウカ、二人は現在C−3の森を北上している。
もちろん移動しながらの情報交換は欠かしていないのだが――いまいち捗っていない。。
まずはお互いの出自からと始めたのがまずかった。
なにしろ片や小国トゥスクルの忠臣、片や日本の一高校の生徒会長、話が噛みあうはずがない。
さらに二人とも生真面目な性格であるため、相手の話で分からない箇所があれば遠慮せずに質問をする。
その結果現在までの移動時間の大半をお互いの自己紹介に使う羽目になってしまった。
しかも、トウカは智代の立場を「遠国日本の一集落、光坂高校の長」と解釈し、
智代はトゥスクルやエヴェンクルガの名称や文化に聞き覚えが無いのを自分の無知故と片付けると何かずれている。
しかし話は理解できなくとも、お互いについての理解は問題なく深まった。
目を輝かせて語るトウカの姿は、彼女がハクオロ皇とその彼が治めるトゥスクルをどれだけ愛しているのかを伝えていたし、
何かを堪えるように俯きながらも恋人の話をする智代の姿は、恋人の死で彼女が受けた衝撃の大きさを如実に物語っていた。
何はともあれ自己紹介によって距離を縮めた二人。
続いてこの島に来てからの事を話しあおう、と決めた…………第三者が現れたのはそんな時だった。

遠くから誰かが走ってくる足音にいちはやく気づいたのはトウカ。智代に注意を促し、本人も目を細めて神経を尖らせる。
トウカから来訪者の旨を伝えられた智代、彼女も口を閉ざしてあたりに気を配る。二人揃って構えをとり、襲撃者に対する備えは万全だ。
だがそれは念のために過ぎない、なにせ派手に足音を立てながら迫ってくる襲撃者というのは考えがたいからだ。
果たして姿を見せたのは襲撃者などではなく、智代のよく知る男――春原陽平だった。

396 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:33:17 ID:Hjecs+NW
 

397 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:33:49 ID:/3KHNctA
懐かしい顔に出会えた事で智代の頬が緩む。相手が知り合いである事を告げ、対応を自分に一任して欲しいと智代はトウカに求める。
しかし返ってきた答えはどうも煮え切らない。竹を割ったような性格のトウカにしては珍しい事だ。
どうやらトウカは春原と出会った事があるらしい。しかもその時に春原はトウカを欺こうとしたとの事だ。
付き合う相手は選んだ方がいいとトウカは智代を諭す。小悪党のような行動、呆れるほどいつも通りの春原に智代は苦笑する。
「ああ、たしかにあいつはしょうがない奴なんだ。でも悪い奴じゃない、私が保証する」
ここは私に免じて退いてくれないかと智代は頼みこむ……今度はトウカも断らなかった。
(春原――朋也の親友だったお前なら私と共に朋也の死を悼んでくれるだろう、おまえに会えて私は嬉しいぞ――)


 ◇ ◇ ◇


眩しい――燦燦と注ぐ日光に耐え切れず目が覚めた、気分は最悪だ。
何せ僕の身体は見覚えの無い芝生の上に横たえられていて、寝慣れたベッドは影も形もない。
身体の節々が痛みを訴え、背中に刺さる芝生もチクチクと僕の痛覚を刺激する――これは紛れもない現実だ。
さらに僕に夢遊病の癖はないし、もちろん地べたで寝る趣味もない。だがこんな辺鄙な所で寝ている理由は一つだけ思いつく。
その一つを否定する材料を脳内から探してみる、だが見つかるのは肯定する情報ばかりだ。
最早ごまかしようがない……今までの事は全て現実、僕は殺し合いのゲームに巻き込まれている。
現状を理解はした。次に知らなくちゃいけないのは何でこんなところで寝ていたかだ。記憶の整理を始める。
(瑞穂さん達を見捨てて逃げ出して、逃げた先で観鈴達に出会って、そしたら放送が始まって――)

「そっか、岡崎はもういないのか……」


398 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:34:13 ID:Hjecs+NW
 

399 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:35:06 ID:/3KHNctA

岡崎と二人でなら何かを成し遂げられる気がしていた。岡崎がいるからつまらない学校にも通い続ける事ができた。
だがそれももう終わり、岡崎は死んでしまったらしい。残された春原は哀れな一匹狼に逆戻りというわけだ。
しかし、一度眠ったからだろうか、僕の与り知らない場所で起きた事だからだろうか、岡崎の死がなにか他人事のように思える。
岡崎はたしかに親友だった。当然彼の死は悲しい、悲しくないはずはない。
だが仇を討とうと思う、突然の訃報に慟哭する、……そういう気分になれない。死という現象にいまいち実感がわかない。
それこそ僕が生き残るための方法を考えなくてはいけない事に比べたら、岡崎の死なんて大事の前の小事だ、とすら思えてしまうくらいに。
もの悲しいものがある、親友として失格だとも思う。
しかし同時に考えてしまう、もしかしたらこれが人間として普通の反応なのかもしれないと。
仲間が死ぬたびに絶望や挫折を味わっていては生きていけない。特に今のこの島のような闘争の場ではなおさらだ。
そして儚すぎる岡崎の死は計らずも僕の考えを肯定してくれた。やはり死んだら何も残らない――死んだら終わりなのだ。

(だから僕は生きる、どんな手を使ってでも生き残ってやる! 岡崎の死を悲しむのは後だ、今は生き残ることだけを考えるべきなんだ!)

改めて決心をした僕はすごい、すぐに一つの重要な事が分かった。それは放送直後の錯乱状態では気づけなかった事だ。
敵だらけのこの島で、武器を持たない無力な僕が生き残る。そのためには僕の事を守ってくる人、所謂仲間が必要不可欠。
そして本来ならその仲間を慎重に選びたいところだが、今の僕は選り好みできる立場じゃない。
僕が見捨てた三人の中で放送で死亡が告げられたのはアルルゥだけ、瑞穂さんと茜ちゃんは生き残っている――僕への恨みを抱きながら。

400 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:35:15 ID:Hjecs+NW
 

401 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:35:40 ID:/3KHNctA
その他にも冷酷な殺戮者国崎往人、僕に良い感情を抱いているとは思えないトウカ、と出会った敵は多い。
それに対して出会った味方は皆無だ、味方と呼べるのは武くらいだろうか。だがその武も頼れない。
貴子が死んで武だけが生き残っているのは不自然極まりなく信用し難いし、そもそも明朝まで会えない者に僕を守ることはできない。
ならば誰に守ってもらうのか――気は進まないがハクオロ達に守ってもらうしかないだろう。
なぜなら彼らは殺し合いに乗っていない。メモの件もあるし、彼らを襲った僕がまだ生きているのが何よりの証拠だ。
そして路上で気絶させられたはずの僕を公園まで運んできてくれているという事実、それはまだ話し合う余地があるという事だ。
それなら僕の得意の話術で何とかする自信がある。しかし……何度もいうが気が進まない。
仲間を見捨てた僕を非難した二人、
鋭い眼で睨み、人を心から震え上がらせる怒号をぶつけてきたハクオロ。
ゴミを見るかのような酷薄な眼を向け、関わりたくないという態度を貫いた二見瑛理子。
あれはすでに非難ではなく糾弾だった。今もあの時のことを思い出すと震えが止まらない。
けれども今の僕には彼らが必要だ。僕を一蹴する実力者ハクオロ――彼といればしばらくは安泰だろう。
だから、土下座してもいい、靴を舐めろと命じられれば舐める。生き延びるためなら何だってやる。
何としてでも仲間に加えてもらわなければならない。

だがここで疑問が一つある。彼らはどこにいるのだろうか?
僕が目を覚ましたのに一向に接触してこないのはおかしい。
運ばれただけ運ばれて放置されたのだろうか? もし置いていかれたのだとしたら大問題だ。
守ってくれる仲間とかそれ以前の問題で、食料の入っているデイパックを取り上げられる事は命に直結する。
しかしわざわざここまで運んだ上で置いていくとは考えがたい。まだ近くにいると考えるのが自然だ。

402 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:36:11 ID:Hjecs+NW
 

403 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:36:17 ID:/3KHNctA

そしてその予想は当たっていた。
耳を澄ましながら周囲を歩き回ったところ、茂みのむこうから物音が聞こえてきた。
早速影から覗いてみると、休憩所の机でハクオロと二見が何か作業をしているのが見えた。
声をかけるのを躊躇うほどに、二人は何かをいじるのに熱中している。
彼らをそれ程までに真剣にさせる物とは何なのだろうか? 身を乗り出してそれが何だかを見極める。
(何だあれ、つるつるした輪っかってところか? 見覚えがあるような感じもするけど……そうか!)

それは『首輪』だった。

見覚えがあって当然だ、実際にそれは今も僕の首にも嵌っているのだから。
だが正体が分かった事で逆に不安になる。なぜ彼らは首輪を持っているのだろうか?
一人に一つしか首輪はない、なら答えは簡単だ。彼らは他の誰かから奪ったに違いない。
しかし問題のブツは首輪だ。首と首輪は密着している、首か首輪を切り取らなければ首輪は奪えない。
そして首輪には爆弾が仕掛けられているため切断は不可能だ。つまるところ?

ハクオロと二見瑛理子は人を殺した経験がある――彼らは紛れも無い人殺し!

「う、あ、ぁぁぁぁぁ」
信じていた相手が実は危険人物だったという衝撃の事実に息が詰まる。
無意識に後ずさってしまう。茂みは葉を揺らし、足音が鳴る。
春原の存在に気づいた二人が共に驚いたような顔をする事で疑心はどんどん膨らんでいく。

404 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:36:55 ID:Hjecs+NW
 

405 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:37:18 ID:/3KHNctA

(僕を連れてきたのはお前らだろ、何でそんなに驚くんだよっ!
 それに何で二人しかいないんだよ、観鈴ちゃんはどこに…………ってまさか!!)

二人の怪しい態度、いなくなった観鈴、不自然に存在する首輪――結びつく答えは一つ。

(はははっ、そんなはずないよ。だって三人とも仲良さそうだったじゃん。
 こ、殺すだなんて、あはははは。第一にあんな可愛い子を殺す理由が無いじゃないか)

怖ろしい考えを否定したい、それは当然の欲求。だが春原は知っているのだ。
たった今、ハクオロが自分に任せろとでも言うように、目で二見に合図を送った。
これと同じ光景を以前にも見ている。国崎が殺し合いに殺し合いに乗っている事を告げた時、

――ハクオロと二見瑛理子は神尾観鈴に隠れてアイコンタクトをとっていた――

ハクオロと二見は組んでいる、間違いない。だが観鈴は彼らに利用されていただけだったのではないか……?
利用目的があって一時的に組んでいたが、観鈴の探し人が殺戮者だと知るやいなや危険分子として切り捨てた。
辻褄はあう。冷静に考えればあんな冷たい目を持ってる奴らが善人のはずが無かったんだ。まんまと騙された。
そして理解する。このままだといつかは僕まで同じように捨てられて殺されてしまう。逃げないといけない。
しかし果たしてあの手練のハクオロから逃げられるのか? 逃げるのに失敗したら即座に殺されるのではないか?
ハクオロが薄っぺらな笑顔を浮かべながら、観鈴がどうたらと話しかけてくる。だが僕は耳を傾けない。
(ぼ、僕を油断させようったってそうはいかないぞ。僕は観鈴とは違うんだ、お前らの思い通りになるものか!)
よく観察すると好漢ぶってるハクオロの後ろでは二見が僕を睨んでいる事が分かる。やはり彼らは害意しか持っていないのだ。

406 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:37:42 ID:Hjecs+NW
 

407 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:38:13 ID:/3KHNctA
だが二人の思惑が分かったところで打つ手がないのが悔しい。なけなしの勇気を振り絞って睨みつけるのが春原の限界だ。
しかしその勇気すらも長くは続かなかった。
僕が口を噤み続けていることに業を煮やしたハクオロが立ち上がってこちらに向かってきたのだ。
そして僕は初めてハクオロと正面から向き合うことになって――

――彼の衣服、その一部が血で紅く染まっているのを見た。
形ばかりの笑顔を浮かべながら迫ってくる血染めの男、その姿は不気味な面とあいまって……

「お、鬼だぁぁぁぁぁぁ! ひぃ、殺されるぅぅぅぅぅ」

振り返るやいなや一目散にその場から逃げ出した。
これ以上彼らの前に立っていると殺される前に恐怖でおかしくなってしまう。限界だった。
(良い人に見せかけて人を襲う鬼、そんな奴が他にいない保証はない。もう他人をなんか信じちゃ駄目なんだ――!)
サッカーで鍛えた脚だけを頼りに、後ろから聞こえる足音から春原は全力で逃げ続けた。


 ◇ ◇ ◇


去るものは追わず、春原にとって幸運な事にハクオロは春原を追いはしなかった。
逃がすまい、と一度は追う体勢はつくったものの、十歩も追わないうちに断念した。
それはなぜか? もしかして春原の足が速すぎたからなのだろうか?
たしかに理由の一つに春原の足の速さが水準以上だった事は挙げられる。だがそれは決定打ではない。

408 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:38:22 ID:Hjecs+NW
 

409 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:39:03 ID:Hjecs+NW
 

410 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:39:16 ID:/3KHNctA
姿の見えない観鈴の事を心配する気持ち、瑛理子を無防備な状態で残す訳にはいかないという責任感。
仲間を想う気持ちがハクオロをその場に押しとどめたのだ。
そして決断したハクオロの行動は迅速だった。ただちに瑛理子の下へと戻りまずは観鈴の安否を確認する。
「瑛理子、観鈴はっ!?」
「まだ見つかっていないわ。無事だといいんだけど……」
「くそっ、やはり二人きりにしてはならなかった。判断を誤ったか――!」
「観鈴に何かあったら……あいつ、許さない……」
珍しい事に冷静沈着なハクオロが取り乱している。尤もそれは無理もない。
短い間とはいえ同じ時間を共にし、同じ志を持つ大切な仲間。そんな仲間の安否が不明――心が騒ぐのは当然だ。
しかもハクオロにとっての観鈴は必ず守り通すと心に誓った仲間以上の存在だ。不安で気が気ではない。
さらにそもそも春原と美鈴を二人きりにしてしまった事の一因はハクオロの見通しの甘さだ。

少し前に起きた春原の扱いについての一悶着。
ハクオロと瑛理子は彼を包帯で厳重に拘束した上で目の届く場所に置いておくつもりだった。
だが観鈴はその案に猛反対した。
「縛るなんて酷いです」
「ハクオロさんだって言ってたじゃないですか、春原さんは大切な人が死んじゃた悲しさで錯乱してただけなんです」
「悲しんでる人にそんな事したら可哀相です……私は春原さんを慰めてあげたい」
さらにその上で、春原が落ち着くまで自分が一人で面倒を見ると主張した。
もちろんハクオロと瑛理子は大慌てで諌めた、危険だからやめなさいと。だが観鈴は折れなかった。
「私に任せてください、必ず春原さんを説得してみせます!」

411 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:39:45 ID:Hjecs+NW
 

412 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:39:49 ID:jy3hGmI6


413 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:40:01 ID:/3KHNctA
何か仲間の役に立ちたいという考え。そして春原を、往人を、つらい思いをしている人達を放っておけないという想い。
瞳を通して伝わってくる観鈴の決心、ハクオロにはそれを否定する事ができなかった。
ハクオロが折れてしまえば決着はついたようなものだ。しょうがないなぁとばかりに瑛理子も観鈴の案を是認した。

状況を楽観視していた事は否定できない。
春原が再び思い切った行動に出る可能性は低いと見積もっていたし、観鈴も危険になったら自分達に助けを求めるだろうと思っていた。
だから春原を全面的に観鈴に任せ、ハクオロと瑛理子は首輪の調査に集中していたのだ。
だが問題は発生した。春原は観鈴を連れずに一人で自分達の下に姿を見せたのだ。
それだけでも不安を煽るのには十分、しかも春原は挙動不審な行動をとった上で逃走した。
観鈴の身に何かあったとしか思えない状況だ。最悪の事態さえ考えなくてはならないのかもしれない……
二人の焦燥は際限なく積もっていく。

しかし当事者はそんな彼らの心配をよそに、五体満足でマイペースに現れた。
「ハクオロさーん、春原さんがいなくなっちゃんですけど何か知りませんかー?」
何もなかったと如実に語るその姿。最高の事態を前に二人は喜ぶより先に呆然としていた。
「魘されてたから、タオルを濡らしてあげようと思って水飲み場に行ったんです。
 でも帰ってきたら春原さんいなくなってて……ってハクオロさん、瑛理子さん、聞いてますかー?」
間違いなく観鈴だ。ハクオロと瑛理子は二人揃って胸を撫で下ろし、向き合って苦笑した。

414 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:40:29 ID:Hjecs+NW
 

415 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:40:33 ID:/3KHNctA
「彼なら起きた途端どっかに行っちゃったわよ」
「あー、二人とも春原さんを恐がらせましたね。春原さん、可哀想です」
「人聞きが悪いわね、私達の顔を見て勝手に逃げてったのよ。
 第一に観鈴がどうしても面倒見たいって言うから任せたのに……目を離したら駄目じゃない」
「がお……だってタオルを……」
「水ならペットボトルに入っているわ。たくさんあるのだからそれを使えばいいでしょ」
「が、がお……観鈴ちん、ぴんち」
安心したのか一気に饒舌になる瑛理子、観鈴を叱るその姿はどこか楽しそうだ。
叱られている方の観鈴も困ってはいるものの嫌がってはいない。
傍から見ると、しっかり者の姉とおっちょこちょいの妹のようだ。
二人の様子を優しく見守りながらハクオロは改めて誓う。
オボロ――カルラ――大切な部下であり良い仲間だった。彼らがいなければ今のトゥスクルはなかっただろう。
エルルゥ――アルルゥ――掛け替えのない娘達。命の恩人でもある彼女達を自分は守れることができなかった。
死んでいった彼女達の分も観鈴と瑛理子を守る。二人を必ず元の世界に返してみせる――!
「まあまあ、瑛理子も観鈴を苛めるのはそれくらいにしておくんだ。
 何事もなかったんだ、それでいいじゃないか。それよりもそろそろ二人ともお腹が減っているだろう、食事にしないか」
もちろん文句は出なかった。


416 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:41:12 ID:jy3hGmI6


417 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:41:52 ID:Hjecs+NW
 

418 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:41:55 ID:jy3hGmI6


419 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:42:20 ID:/3KHNctA
衛がスーパーから持ってきてくれた惣菜とジュースの御蔭で豪華な昼食となった。
三人とも朝から碌に食べていなかったので箸が進む、机を埋める食べ物がどんどん減っていく。
歓声をあげながら嬉しそうに唐揚げを頬張る観鈴、そんな彼女の目に瑛理子のデイパックから覗く首輪が映る。
「そういえば瑛理子さん、く」
食事中で気が緩んだのか、思わず首輪の事を口走りそうになり食卓に緊張が走った。
「――! ……衛ちゃんから貰ったものはどんな感じですか」
だが既の所で持ち直し、緊張は安堵へと移り変わる。そして恒例の筆談が開始される。
「ええ、とってもおいしいわ。外でとる食事も案外いいものね」
『首輪の解析は正直なところあまり進行していないわ。大まかな構造しか予測できない上に道具も足りていないのよ。
 だから今できるのは爆薬を刺激しないようにおっかなびっくり外壁を削ることくらいなの』
そう綴る瑛理子の顔には在り在りと不機嫌が浮かんでいる。頭の良い彼女でも首輪の解析は難問らしい。
『見ていた感じは確かにそのようだな。私も何か手伝えればよかったんだが……役に立たなくてすまない』
『別に誰も悪くないわよ、悪いのはあの首輪。そもそも継ぎ目がないなんてふざけてるとしか思えないわ!』
感情を露にして殴り書きをする瑛理子、これは随分とフラストレーションが溜まっているのかもしれない。
楽しそうだった解析を始める前とは大違いだ。でも……、観鈴の頭には疑問が浮かぶ。
『そういえば、なんでいきなり首輪を調べ始めたんですか? たしか工場についてからゆっくりやるって前に……』
痛い所を衝かれたと困った顔をする瑛理子。しかし小考後何を思ったのか、笑顔で軽快に鉛筆を走らせた。
『それはね、貴方達と一緒に博物館に行くからよ。だから今のうちに少しでも調べておきたかったの』
そして笑顔のまま顔をあげてハクオロと観鈴に話しかけた。

420 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:42:41 ID:Hjecs+NW
 

421 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:42:42 ID:jy3hGmI6


422 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:43:21 ID:/3KHNctA
「この数時間を一緒に過ごしてよく分かったわ。私はあなた達といるのが楽しいの」
勢いで言ったはいいものの、後から恥ずかしくなってきたのか赤面して俯いてしまった瑛理子。
意外そうな顔で呆けたのは一瞬、すぐに満面の笑顔を浮かべてはしゃぎだした観鈴。
終始浮かべていた笑顔は一段上のものに、二人を優しく見守るハクオロ。
公園で食事をとる三人、それは仲の良い家族がピクニックに来ているかのようだった。



「そういえば彼がメモを回収をしていたのは手間が省けてラッキーだったわ、あんな人間でも何かの役には立つものね」
「春原さん……一人で大丈夫かな……」
「あら、私はむしろ他の人が彼に襲われないかの方が心配よ」
「いや、おそらくその心配は必要ない」
「いやに自信満々ね……」「どうしてですか、ハクオロさん?」

「あのタイプの人間は一度手酷く叩けば容易く自信を喪失する、怯えがつき纏う以上彼はもう人を襲う事はできないはずだ」


 ◇ ◇ ◇

423 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:43:22 ID:Hjecs+NW
 

424 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:43:25 ID:jy3hGmI6


425 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:44:02 ID:/3KHNctA


走る、走る走る――春原陽平はひたすらに走っている。
最初は走る事はハクオロ達から逃げるための手段でしかなかったはずだ。
だが十分に彼らから離れた今も春原は闇雲に走り続けている、それは得体の知れない何かに突き動かされているかのよう――。
手段と目的が一体化した、いわば走るために走っているように見える状態。何が春原をそうさせているのか?
それは人間不信からくる他人に対する恐怖と、居場所をなくした焦燥、
そして以上二つから導き出される希望のない未来……所謂『絶望』だ。
躊躇なく他人の命を奪う殺戮者国崎、善人のふりをして他人を貪り尽す殺人鬼ハクオロ、彼らに対する恐怖は春原の中に深く根づいている。
またこれまでに出た死者は二十名以上、いくら二人が凶悪であろうとも彼らだけで殺せる人数ではない。
つまり二人のような危険人物がこの島にはまだ何人も潜んでいる――! 
偶然出会った相手が偶然人殺しかもしれない……そんな状況で確実に生き延びるには信用できる者以外の人との接触を断つしかない。
だが春原は瑞穂達を見捨てて、ハクオロ達から逃げた。その二つの行為で春原が島に来てから築いた人間関係は脆くも崩れ去っている。
そして春原には元の世界での信頼できる顔見知りも一人しか残っていない。
そう、人間不信に陥った今の春原が少しでも心を許せる人間は広い島でたったの一人しかいないのだ。
だから他の人間達から逃げながらその一人を探す、そのために走る。
会える確率がどれだけ低かろうと関係ない。元より春原には希望がそれしか残されていないのだから。
だからほんの僅かな可能性を信じて、傍からすると無謀にしか見えない賭けを春原は続け――――幸運な事に賭けに勝った。



426 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:44:04 ID:Hjecs+NW
 

427 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:44:06 ID:jy3hGmI6


428 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:44:36 ID:/3KHNctA
疲労でぼんやり霞む視界、それでも彼女の特徴ある銀の長髪は春原の眼に鮮明に映った。
杏が、岡崎が、二人がいなくなった今は春原の唯一の知り合いであり、頼れる後輩。
足が上げる悲鳴もお構いなしに全力で駆け寄り、彼女の元へと倒れこむ。

「助けてくれ、智代っ!」

春原には智代しか見えていない、彼女と共にいるもう一人の人物には気づかない。
そして瞳を見つめ、彼は心の底からの思い――嘘偽りのない純粋な願いを訴える。

「僕を悪い殺人鬼達――国崎やハクオロから守ってくれ!」




【D-2 西部 公園内/1日目 午後】


【工場探索チーム】
基本方針1:現在地で偵察チームと合流。その後、博物館行くチームと待機するor工場へ向かうチームでチーム別け。
基本方針2:首輪の解析をする。
思考: 悠人と衛が心配。
【備考】
※首輪の盗聴と、監視カメラが存在する可能性を考えています。
※禁止エリアについて学んでいます。(禁止エリアにいられるのは30秒のみ。最初は電子音が鳴り、後に機械音で警告を受けます)
※博物館で悠人たちを襲撃した相手(ネリネ)の外見と、その仲間と思われる相手の乗っている車について聞いています。
※悠人から、ファンタズマゴリア、永遠神剣、スピリットについて学んでいます。
※島内部の電話が使えることを知っています。
※陽平から博物館での戦闘について聞いています。
※車に乗った襲撃者の一団を警戒しています。



429 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:44:44 ID:Hjecs+NW
 

430 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:44:46 ID:jy3hGmI6


431 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:45:08 ID:/3KHNctA
【ハクオロ@うたわれるもの】
【装備:Mk.22(7/8)、オボロの刀(×2)@うたわれるもの】
【所持品:投げナイフ×2、支給品一式、ランダムアイテム(0〜2)】
【状態:精神をやや疲労】
【思考・行動】
基本方針:ゲームには乗らない。
1:観鈴と瑛理子を守る。
2:悠人と合流後は博物館へ、往人と話がしたい。
3:仲間や同志と合流しタカノたちを倒す。
4:トウカがマーダーに間違われるようなうっかりをしていないか不安。
5:悠人の思考が若干心配。(精神状態が安定した事に気付いてない)
【備考】
※校舎の周辺の地形とレジャービルの内部状況を把握済み。
※中庭にいた青年(恋太郎)と翠髪の少女(亜沙)が殺し合いに乗っているかもしれないと疑っています。
※銃についてすこし知りました。また、悠人達から狙撃についても聞いています。
※往人を危険人物として認識しています。


【神尾観鈴@AIR】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式×2、予備マガジン(40/40)、スーパーで入手した品(日用品、医薬品多数)、タオル】
【状態:健康、緊張及び若干の恐怖】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:ハクオロと瑛理子と行動する。
2:悠人と合流後は博物館へ、往人の人殺しをやめさせる。
3:陽平の事が心配。
【備考】
※タオルは衛から受け取った日用品の一つです。
※スーパーで入手した品(食料品、飲み物)は消費しました。


432 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:45:27 ID:Hjecs+NW
 

433 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:45:39 ID:/3KHNctA

【二見瑛理子@キミキス】
【装備:トカレフTT33 8/8+1、ビニール傘】
【所持品:支給品一式、ブロッコリー&カリフラワー@ひぐらしのなく頃に祭、空鍋&おたまセット@SHUFFLE! ON THE STAGE
     首輪、映画館にあったメモ、家庭用工具セット】
【状態:左足首捻挫、軽度の疲労】
【思考・行動】
基本:殺し合いに乗らず、首輪解除とタカノの情報を集める。
1:とりあえず公園で待機。 悠人と合流後はハクオロと観鈴と共に博物館へ。
2:車に乗った襲撃者の一団が工場に陣取った時、或いは工場が禁止エリアに指定された時の首輪解析方法を思案中。
3:孝之や陽平のように錯乱している者や、足手まといになりそうな者とは出来れば行動したくない。
4:孝之と陽平には出来れば二度と出会いたくない。
【備考】
※往人を危険人物として認識しています。
※パソコンで挙がっていた人物は、この殺し合いで有益な力を持っているのでは? と考えています。
※首輪が爆発しなかった理由について、
1:監視体制は完全ではない
2:筆談も監視されている(方法は不明)
のどちらかだと思っています。
※電話についても盗聴されている可能性を考えています。
※家庭用工具セットについて
観鈴が衛から受け取った日用品の一つです。
ドライバー、ニッパー、ペンチ、ピンセットなどの基本的な工具の詰め合わせである。
なお全体的に小型なので武器には向いていないと思われます。


【C-3 森/1日目 午後】



434 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:45:58 ID:jy3hGmI6


435 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:46:14 ID:/3KHNctA
【春原陽平@CLANNAD】
【装備:無し】
【所持品:無し】
【状態:肉体的疲労大、重度の人間不信、朦朧状態、空腹、右手首に手錠、上はTシャツ、下はジーンズを着用】
【思考・行動】
基本方針:死にたくない。
1:智代、助けてくれ! ヘルプミー、智代!
2:智代に会えてよかった……これで一安心だね!
3:智代なら……智代なら何とかしてくれる!
4:ああ智代、今は君が女神に見えるよ!
5:いやっほーう! 智代最高ー!
【備考】
往人とハクオロと瑛理子を危険人物と認識しています。


【坂上智代@CLANNAD】
【装備:無し】
【所持品@:支給品一式×3、サバイバルナイフ、トランシーバー×2、多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、十徳工具@うたわれるもの、スタンガン、
 催涙スプレー(残り4分の3)、ホログラムペンダント@Ever17 -the out of infinity-】
【状態:中度の疲労、血塗れ、左胸に軽度の打撲、右肩刺し傷(動かすと激しく痛む・応急処置済み)、少量の失血、ゲームに乗った人間に対する深い憎悪】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いに乗っている人間を殲滅する(無謀な行為は極力避ける)。一応最終目標は主催者の打倒。
0:???
1:体調が回復するまでは、トウカと行動を共にする。(回復後は不明)
2:ひとまず新市街に出て情報を集める。
3:自身の基本方針に、僅かながら迷いがある。
【備考】
※蟹沢きぬが殺し合いに乗っているかもしれないと疑っていますが、疑惑は薄れています。
※ネリネと舞を危険人物として認識しています。
※『声真似』の技能を持った殺人鬼がいると考えています。
※トウカからトゥスクルとハクオロの人となりについてを聞いています。


436 : ◆rsExvlHLf. :2007/08/15(水) 22:46:46 ID:/3KHNctA

【トウカ@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
【装備:舞の剣@Kanon(少々の刃こぼれ有り)】
【所持品:支給品一式、永遠神剣第七位『存在』@永遠のアセリア−この大地の果てで−】
【状態:全身に軽い打撲、胸に中度の打撲、右脇腹軽傷(応急処置済み)、中度の肉体的疲労】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いはしないが、襲ってくる者は容赦せず斬る。
0:某は――!
0-1:言うに事欠いて聖上が悪道に身を染めただと! 性懲りもなく下劣な嘘をっ!! 
0-2:しかし、今のこの男の眼は嘘を言っている眼とはとても思えない。それにオボロの例もある……。
1:ハクオロと千影、千影の姉妹達を探し出して守る。
2:ネリネを討つ。
3:命の恩人である智代を守る。
4:ひとまず新市街に出て情報を集める。
5:可能ならば赤坂と合流。
6:次に蟹沢きぬと出会ったら真偽を問いただす。
【備考】
※『声真似』の技能を持った殺人鬼がいると考えています。
※蟹沢きぬが殺し合いに乗っていると疑っていますが、疑惑は薄れています。
※陽平を嘘吐きであると判断しています。
※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※永遠神剣第七位"存在"
 アセリア・ブルースピリットが元の持ち主。両刃の大剣。
 魔力を持つ者は水の力を行使できる。
 エターナル化は不可能。他のスキルの運用については不明。
 ウォーターシールド…水の壁を作り出し、敵の攻撃を受け止める。
 フローズンアーマー…周囲の温度を急激に低下させ、水分を凍結させ鎧とする。

437 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:46:57 ID:Hjecs+NW
 

438 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/15(水) 22:47:00 ID:jy3hGmI6


439 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:23:00 ID:WjPz7Zxp
猛り狂う太陽の光が、殺人遊戯の舞台となった孤島へと降り注ぐ。
中規模のビルが立ち並ぶ一帯を、三つの人影が進んでゆく。
宮小路瑞穂とその仲間達は博物館を迂回する形で、一路神社に向かおうとしていた。
比較的緩やかな速度で歩いていた為に、アセリアの体力は大方回復したものの、一行の間には重苦しい雰囲気が漂っていた。

「ねえ……瑞穂さん、大丈夫?」
「…………」

涼宮茜が気遣うような声で問い掛けるが、瑞穂は生気の抜けた顔をしたまま黙り込んでいる。
それは今回に限った事では無く、道中アセリアと茜が情報交換している際も、瑞穂だけは終始無言であった。
瑞穂の瞳からは既に光が失われており、おおよそ意志というものを感じさせない。
命を賭して国崎往人に立ち向かった時の彼女(彼)とは、まるで別人のような姿であった。

「……ミズホ、少し休むか?」
「いえ、必要ありません」
「ん」

アセリアの申し出も、取り付く島すら無くただの一声で撥ね付けられる。
別に、体力的に問題がある訳では無いのだ。
瑞穂をこれ程までに弱らせている要因はただ一つ、厳島貴子の死のみ。
そして愛する人の死によって穿たれた心の空洞は、休憩如きで到底埋められるものでは無い。
後悔と喪失感だけが心を埋め尽くし、必然的に周囲への対応はおなざりなものとなってゆく。
それでも、茜もアセリアも瑞穂を見限ったりはしなかった。
それは瑞穂が一貫して貫いてきた、自身の身すら顧みずに仲間を守ろうという、献身的な姿勢の賜物だろう。
皮肉な事に、これまで築き上げてきた信頼が――貴子と別行動を取っている間に行った善行が、瑞穂の命を繋いでいた。

しかし今の瑞穂は、とことん運に見放されているのだろうか。
弱り切った精神に追い打ちを掛けるように、ソレは現われた。
ゆっくりとしたペースで歩を進めていた三人だったが、森に差し掛かった辺りで、先頭を往くアセリアが突然足を止めた。

「……来る」
「――――え? 来るって何が……」

440 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:24:07 ID:WjPz7Zxp

茜の言葉が終わるのを待たずして、アセリアは弾かれたように動き出した。
足元に落ちてあった直径三十センチ程の石を拾い上げ、振り向きざまに茜の前方へと投擲する。
次の瞬間には派手な銃声がして、投げ放たれた石が砕け散っていた。

「――――ッ!?」

茜が目を見開くのとほぼ同時、アセリアは鉄パイプを構えて疾駆する。
アセリアの進行方向、鬱蒼と木々の生い茂る一帯に、何時の間にか一人の少女が屹立していた。
襲撃者――川澄舞はすぐさまニューナンブM60を構え直し、二度目の銃撃を行おうとする。
茜と瑞穂は未だ大きな隙を晒しており、舞からすれば絶好の的に他ならない。
だが舞の目論みは、恐るべき勢いで突撃を仕掛けてきたアセリアによって遮られる。

「せやああああぁぁぁっ!」
「っ――――!」

アセリアが振り下ろした長さ二メートル程の鉄パイプを、済んでの所で横に跳ねて躱す舞。
標的を失っても尚鉄パイプの勢いは収まらず、軌道上にあった背の低い小木を根元から粉砕した。
両者の距離は僅か数メートル、アセリアの真横に舞が位置する形。
飛散した木片が降り注ぐ中、舞は冷静にニューナンブM60の銃口をアセリアの側頭部へと向ける。
空振りの隙を狙った、これ以上無い程に的確なタイミング、最高の位置取りでの反撃。
視界外より放たれる銃撃は、視認する暇も無く標的を貫くだろう。

されどアセリアとて百戦錬磨のスピリット。
不用意な攻撃がどのような結末を招くかなど、予測出来ない筈も無い。
ましてや舞とは一度戦っているのだから、力量的に大振りの攻撃が通用しない事など、先刻承知している。
そして攻撃を躱した相手は、間を置かずに反撃して来るであろう事も想像に難くない。
ならば相手の姿、行動を、わざわざ目で確かめる必要など無い。
アセリアが今やるべき事はただ一つ、全身全霊を以って一秒でも早く回避に移るのみ――!

「…………っ」
「――――躱、した!?」

441 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:24:57 ID:joChJH1Z
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442 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:25:42 ID:joChJH1Z
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443 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:26:32 ID:joChJH1Z
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444 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:26:34 ID:WjPz7Zxp
正しく刹那のタイミングでアセリアが屈み込み、唸りを上げる銃弾は空転するに留まった。
横を向いたままの態勢にも関わらず、極めて正確な回避動作を行ったアセリアに、舞は驚きの表情を隠し切れない。
そんな舞の顔面に照準を定めて、無骨な鉄の凶器が斜め下方より振り上げられる。
それは旋風を伴う程の凄まじい一撃だったが、舞は持ち前の反射神経を活かし、後方にステップを踏んで何とか回避した。
舞はそのまま後ろ足で後退を続けながら、ニューナンブM60の銃口を持ち上げて牽制する。
こうなってしまってはアセリアも迂闊に飛び込めず、二人は距離を置いた状態で睨み合う。


そして、常識では考えられぬ高次元の戦闘を尻目に、茜は瑞穂を奮起させるべく悪戦苦闘していた。

「お願い瑞穂さん、一緒にアセリアさんを助けようよ!」
「茜さんもくどいですね……。申し訳ありませんが、僕にそんなつもりはありません」

茜はアセリアと情報交換を行った際、襲撃者――川澄舞に関する話も聞いていた。
アセリアの話によれば、舞は銃を持っているだけでなく、並外れた身体能力も兼ね備えた難敵。
アセリアもまた桁外れの実力を備えてはいるものの、いかんせん装備面が問題だ。
純粋に人を殺すという目的で造られた拳銃と、そもそも闘争に用いる想定すら為されていない鉄パイプでは、性能に差があり過ぎる。
だからこそ必死の形相でアセリアへの加勢を訴える茜だったが、瑞穂はまるで取り合わない。

「云った筈ですよ? 僕は貴子さんに会いに行くと……此処で時間を浪費する訳にはいきません」
「もう、今はそんな事言ってる場合じゃないでしょ!」
「そんな事……ですか。茜さんにとってはそうかも知れませんが、僕にとっては何より大事な事なんです。
 僕は愛する貴子さんを救えなかった……だから何を差し置いてでも、謝罪しなければならないんです」


445 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:26:44 ID:WnMI0qIt


446 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:27:07 ID:joChJH1Z
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447 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:27:32 ID:WjPz7Zxp

落ち着いた口調の、しかしはっきりとした拒絶の言葉を吐く瑞穂。
抜け殻同然の瑞穂を突き動かすのは、貴子への想いのみ。
雨の日も、風の日も、辛い時も、苦しい時も、貴子が傍に居てくれさえすれば幸せだった。
瑞穂にとっては貴子が全てであり、生きる意味そのものですらあった。
そしてそれだけ愛していた貴子を守れなかった事は、どれだけ悔やんでも悔やみ切れぬ失敗。
どれだけ謝っても謝り足らぬ程の罪。
ならば貴子への謝罪以上に優先すべき事柄など、この世に存在する筈も無い。

「――話は以上です。アセリアさんを助けたいのなら、ご自身の手でどうぞ」
「み、瑞穂さん……っ!!」

冷たく言い放つと、瑞穂は踵を返して森の奥へと歩き始めた。
背中越しに茜の悲痛な聞こえてきたが、決して足を止めはしない。
今自分が戦わなければ、アセリアも茜も殺されてしまうかも知れないが、構っていられない。
瑞穂は己の優先順位に従って、躊躇わずにその場を離れていった。



「そんな……瑞穂さん……」

置き去りにされる形となった茜は、深い悲しみの籠もった眼差しで、瑞穂が立ち去った方向を眺め見ていた。
恨み言を吐くつもりは無い。
自分だって大切な姉に先立たれたのだ。
掛け替えの無い存在を失った瑞穂がどれ程悲しんでいるのか、どれ程深い失意の底に居るのか、ある程度は分かるつもりだ。
現実に絶望し、死者への盲念に取り憑かれてしまったとしても、仕方の無い事だろう。
そうだ――理性的な部分では納得出来る。
それでもあの瑞穂が春原陽平と同じような行為に及んだのは、茜にとって精神的ショックが大きかった。

「瑞穂さんも……鳴海さんも……どうして……皆どうして……」

448 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:27:38 ID:joChJH1Z
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449 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:28:08 ID:joChJH1Z
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450 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:28:21 ID:WnMI0qIt


451 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:28:26 ID:WjPz7Zxp

鳴海孝之は精神に異常をきたしてしまった――恐らくは涼宮遥の死が引き金となって。
宮小路瑞穂もまた、厳島貴子の死を知った途端に豹変してしまった。
信頼していた者達が現実から目を逸らし、自分の世界に閉じこもってしまう様は、何よりも悲しい光景だった。
だが何時までもこうやって、独り物思いに耽っている訳にはいかない。
今は自分がすべき事をしなければならないだろう。

ようやく気を取り直した茜は、未だ戦い続けているアセリア達の方へと視線を移した。
見れば圧倒的な装備差にも関わらず、アセリアは互角以上の戦いを繰り広げていた。
アセリアは舞の銃撃を正確に見切って、要所要所で斬撃を繰り出してゆく。
舞も類い稀な身のこなしで凌いではいるものの、アセリアの素早い動きを捉えきれぬ様子。
アセリアも舞も決定打を持ち得ない、所謂均衡状態が続いている。
これなら自分が加勢に入りさえすれば、間違いなく勝てるだろう。
そう考えた茜は懐より投げナイフを取り出し、右手でしっかりと握り締めた。
相手が明確な殺意を持って襲撃して来ている以上、正々堂々正面から戦ってやる義理は無い。
極力足音を立てぬよう、ゆっくりとした動きで舞の後方へと回り込む。
だが茜は重大な事実を見落としていた。
襲撃者は舞一人とは限らない。
舞の撃ち放つ銃声は周囲一帯に響き渡り、新たなる厄災を呼び込んでいたのだ。
茜が腰を深く落とし、一気に駆け出そうとしたその時、落ち葉を踏みしめる音が後方より聞こえてきた。
すぐさま反応して音のした方へと振り向いた茜は、呆然とした声を喉奥から洩らした。

「…………なる、み、さん……?」

何故疑問形になってしまったのだろうか。
絶対に見間違える筈など無いのに。
視界に映っているのは、良く見知った人物の筈なのに。
二度と会いたくないと思っていた――けれど本当は凄く会いたかった、鳴海孝之の筈なのに。
その余りの変貌振りが、周囲に撒き散らされる狂気が、決して拭い去れぬ違和感を与えていた。

452 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:29:00 ID:joChJH1Z
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453 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:29:10 ID:WnMI0qIt


454 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:29:17 ID:WjPz7Zxp

――後頭部を発生源とする大量の血液が、服までをも赤く染め上げている。
――穿たれた左肩の奥からは、朱に塗れた白骨が見え隠れしている。
――にも関わらず、口元には吐き気を催す醜悪な笑みが貼り付いている。
――そして何よりも目が、異様な輝きと何処までも昏い闇を併せ持った瞳が、現実離れし過ぎている。

疑う余地すら存在しない。
精神に異常をきたしただとか、現実逃避しているだとか、そんな次元はとうに飛び越えている。
目の前の男は――鳴海孝之は、どう見ても完全な狂人と化していた。
その事実を裏付けるかのように、孝之は正しく奇声と呼ぶに相応しい声を張り上げる。

「ヒャアッ、ハッハッハッハッハッハァァァァッ! ややややっと会えたね茜ちゃん」
「…………」

茜は何も答えられない。
異常過ぎる事態に、脳が上手く機能してくれない。
一目で見て取れる孝之の狂態と、酷く汚れた濁声が、茜から冷静さを奪い去っていく。
図らずして全身の表面に鳥肌が立ち、喉は呼吸を忘れてしまったかのように動かない。
冷たい汗だけが無尽蔵に湧き上がり、頬や背中を濡らしてゆく。

「ひひひひっ……茜ちゃんは最後にしようと思ってたけど、出会ったからには仕方ないよな?
 もう『起こし』ちゃっても良いよなッ!?」
「…………私、起きてますよ?」

よくやくそれだけ、声を絞り出す事が出来た。
起こす?……まるで意味が分からない。
自分は眠ってなどいない。
そんな事は、それこそ一目見れば理解出来る筈だ。
だというのに、孝之は諭すような口調で同じ主張を繰り返す。

「起きてる……? 茜ちゃん、それは違うよ。茜ちゃんは未だ眠っているんだよ」
「何を……鳴海さん、貴方が何を言ってるのか分かりません」

455 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:29:21 ID:YiLhd4iw


456 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:29:30 ID:joChJH1Z
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457 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:30:00 ID:joChJH1Z
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458 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:30:06 ID:uF5eZYiZ
 

459 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:30:19 ID:WjPz7Zxp

茜がそう言うと、孝之は愉しげな――本当に、これ以上無いくらい愉しげな、そして不気味な笑顔を浮かべた。

「きひっ、あひゃひゃひゃひゃっ! 分からない? なら俺が教えてあげるよ! 茜ちゃん、君は悪い夢を見てるだけなんだよ。
 この世界で死ねば、目が覚めて現実に戻れるんだよ――遥や双樹ちゃんみたいにさあ!」
「――――――――ッ!!」

そこまで告げられた茜は、ようやく孝之が構築した狂気の理論を理解する事が出来た。
要するに孝之は――この世界を夢だと思い込む事で、知人の死を否定しているのだ。
遥の、双樹の死を受け入れられず……己が築き上げたルールに従って、人を殺そうとしているのだ。

「だから俺が皆を起こしてあげるんだよ。殺して、現実世界に戻してあげるんだよ!
 神に認められた俺なら、それが出来るッ!!」
「う…………あ…………」
「さあ、もう説明は良いだろ? ウヒャヒャヒャヒャヒャッ!!」

孝之が歪んだ笑みを浮かべながら、レザーソー片手に近付いてくる。
茜はガクリと地面に膝をついて、迫り来る絶対の死を見つめていた。
心の内に沸き上がるは形容し難い程の恐怖と、それを更に上回る諦観。
涼宮遥は死に、春原陽平にも宮小路瑞穂にも見捨てられてしまい、挙句の果てには孝之に命を狙われる始末。
異常過ぎる……この世界は余りにも異常過ぎる。
誰も彼もが狂ってゆき、自分の味方をしてくれる者など誰もいない。
もうこのまま自分も狂ってしまいたいと、この世界を悪夢だと信じ込みたいと、そんな気持ちにすらなってくる。

「じゃあまずは両腕を剥いで、犯して、それから起こしてあげるよ! クヒヒヒ……ケエッケケケケケッ!」

茜の眼前まで迫った孝之は、天高くレーザーソーを振り上げた。
狙いは茜の両腕。
先程はことりの抵抗と、襲撃者――今もすぐ近くで激戦を繰り広げている川澄舞――の所為で、強姦出来なかった。
ならば今度は邪魔者達が戦っている隙に、標的の自由を奪って確実に犯そうという算段だ。
だがレザーソーが牙を剥く寸前、茜の聴覚は一際大きな声を捉えた。

460 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:30:22 ID:YiLhd4iw


461 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:30:57 ID:WnMI0qIt


462 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:31:23 ID:uF5eZYiZ
 

463 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:31:42 ID:WjPz7Zxp

「アカネ、しっかりする!」
「……アセリア……さん……?」

茜が振り向いた先には、首だけこちらへ向けているアセリアの姿があった。
アセリアは舞のニューナンブM60が弾切れを起こした隙に、茜へ言葉を投げ掛ける。

「アカネが死んだら私は悲しい……アルルゥも悲しむ。だから――」

それ以上は話を続けられなかった。
銃弾の装填を終えた舞が再び動き始め、アセリアは回避を強制させられたのだ。
伝えられた言葉は僅か二つだけに過ぎぬ。
だが、それだけで十分。
正常な人間がまだ居るという事を知らせるには、茜を想う者が居るという事実を伝えるには十分。
折れかけていた茜の心を奮い立たせるには、忘れかけていた茜の決意を思い出させるには、多くの言葉など要らない。
茜は両の足に力を込めて、思い切り真横に跳躍する。
天空より降り注ぐレーザーソーの刃は、茜の髪を軽く掠めるに留まった。

「あひゃっ!? 何で避けるんだよォォォォッッ!」
「忘れてました……私は諦める訳にいかないんです。鳴海さんみたいに、夢の世界に逃げる訳にはいかないんです」

茜は膝に付着した土を払い落としながら、眼前の狂人へと告げる。
そうだ――自分はアルルゥが死んだ時、必ず生き延びると誓ったのだ。
そして自分が居る世界は紛れも無く現実世界で、全ての人間が狂っている訳でもない。
ならばこんな所で諦める訳にはいかない。
狂人の勝手な思い込みに付き合って、アルルゥとの約束を放棄するなど出来る筈も無い。
たとえどのような結末が待っていようとも、自分は最後まで一生懸命生き抜いてみせる。

「抵抗する気かい? 良いよ、嫌がるとこを無理やりってのも楽しそうだしさあっ!」
「鳴海さん……最低ですね」

464 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:31:46 ID:YiLhd4iw


465 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:31:51 ID:WnMI0qIt


466 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:32:35 ID:GljeF5+K
 

467 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:33:00 ID:WjPz7Zxp
茜は小さな投げナイフを握り締め、孝之は無骨なレザーソーを堅持する。
アセリアは両手で鉄パイプを構え、ニューナンブM60で武装した舞と対峙している。
生い茂る木々により陽光が遮られた薄暗い森の中で、決戦の火蓋が切って落とされた。


    ◇     ◇     ◇     ◇


茜と別れた場所から、然程遠くない位置にある雑木林。
断髪的に鳴り響く銃声を背に、瑞穂は歩き続けていた。
銃声が聞こえてくる以上、未だアセリア達は襲撃者と戦っているのだろう。
アセリア達は勝てるだろうか?
たった二人だけで、生き延びられるだろうか?
そんな思考が全く無いと言えば、それは嘘になるだろう。
にも関わらず瑞穂はただひたすら、次の目的地である神社を目指し続ける。
貴子に会って謝罪する――それが何の意味も無くなった人生で、最後にしなければならない事だからだ。
だが責務を果たすべく瑞穂が歩き続けていたその時、唐突に声がした。
思い出すだけでも怒りが沸き上がってくる、絶対悪の声が。

『――待ちなさい、そこの貴女。死体を探し回る必要なんて無いわ』
「――――ッ!? この声は……鷹野……三四……?」

それで、合っている筈だった。
殺人遊戯の開幕時を合わせれば、既に三度も声を聞いているのだから、聞き間違えたりはしない筈だ。
瑞穂の確信を肯定するかのように、声の主が愉しげに語り掛けてくる。

『フフフ、ご名答。察しが早くて助かるわ』
「……僕に何か御用ですか?」

それで、合っている筈だった。
殺人遊戯の開幕時を合わせれば、既に三度も声を聞いているのだから、聞き間違えたりはしない筈だ。
瑞穂の確信を肯定するかのように、声の主が愉しげに語り掛けてくる。

468 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:33:12 ID:WnMI0qIt


469 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:34:12 ID:joChJH1Z
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470 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:34:42 ID:uF5eZYiZ
やな悪感…

471 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:34:43 ID:WjPz7Zxp
すいません、>>467コピペミスです>>467は無効でお願いします

472 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:35:01 ID:WnMI0qIt


473 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:35:43 ID:joChJH1Z
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474 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:36:22 ID:WjPz7Zxp
茜は小さな投げナイフを握り締め、孝之は無骨なレザーソーを堅持する。
アセリアは両手で鉄パイプを構え、ニューナンブM60で武装した舞と対峙している。
生い茂る木々により陽光が遮られた薄暗い森の中で、決戦の火蓋が切って落とされた。


    ◇     ◇     ◇     ◇


茜と別れた場所から、然程遠くない位置にある雑木林。
断髪的に鳴り響く銃声を背に、瑞穂は歩き続けていた。
銃声が聞こえてくる以上、未だアセリア達は襲撃者と戦っているのだろう。
アセリア達は勝てるだろうか?
たった二人だけで、生き延びられるだろうか?
そんな思考が全く無いと言えば、それは嘘になるだろう。
にも関わらず瑞穂はただひたすら、次の目的地である神社を目指し続ける。
貴子に会って謝罪する――それが何の意味も無くなった人生で、最後にしなければならない事だからだ。
だが責務を果たすべく瑞穂が歩き続けていたその時、唐突に声がした。
思い出すだけでも怒りが沸き上がってくる、絶対悪の声が。

『――待ちなさい、そこの貴女。死体を探し回る必要なんて無いわ』
「――――ッ!? この声は……鷹野……三四……?」

それで、合っている筈だった。
殺人遊戯の開幕時を合わせれば、既に三度も声を聞いているのだから、聞き間違えたりはしない筈だ。
瑞穂の確信を肯定するかのように、声の主が愉しげに語り掛けてくる。


475 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:36:35 ID:WnMI0qIt


476 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:36:35 ID:joChJH1Z
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477 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:37:43 ID:joChJH1Z
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478 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:38:16 ID:joChJH1Z
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479 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:38:27 ID:WjPz7Zxp

『フフフ、ご名答。察しが早くて助かるわ』
「……僕に何か御用ですか?」

極めて無愛想な返事を返しながら、瑞穂は声の主の姿を探した。
だが声がした方向には、木々が生い茂っているだけで、人の姿らしきものは見当たらない。
恐らくはスピーカーか何かで話し掛けてきているのだろう。

『あらら、そんなに邪険にしないで欲しいわね。折角好意で、良い事を教えてあげようとしてるんだから』
「……良い事?」
『ええ、とっても良い事よ。少なくとも貴女にとってはね……くすくす』

笑いを洩らす声の主とは対照的に、瑞穂は難しい表情をしていた。
主催サイドの人間が言う『良い事』――正直、悪い予感しかしない。
その瑞穂の予感はある意味正しくもあり、間違いでもあった。

『本当はもう暫く秘密にするつもりだったんだけど……貴女にだけは教えてあげる。
 このゲームの優勝者は、好きな願いを一つだけ叶えられるのよ』
「な――――ッ!?」

告げられた信じ難い事実に、二の句が告げない瑞穂。
好きな願いを叶えられるというのなら、まさか――
瑞穂が結論に思い至るよりも早く、声の主は言葉を続けてゆく。


『あ、勿論私達に害を成すような願いは駄目だけどね。私達に出来る範囲なら何でも自由。
 巨万の富を得る事も、高い地位を得る事も――そして、厳島貴子さんを生き返らせる事も可能よ』
「――――ッ!!!」

480 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:38:44 ID:WnMI0qIt


481 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:39:52 ID:WjPz7Zxp

瑞穂は自身の心臓がドクンと大きく脈打つのを感じた。
貴子を生き返らせれる――そう考えただけで、全身の血流が一気に早くなったような、そんな錯覚を覚える。
守れなかった誓いを、再び果たせるかも知れないのだ。
失ってしまった生きる意味を、再び取り戻せるかも知れないのだ。
だが逸る気持ちを抑え冷静になってみると、幾つかの疑問が浮かび上がってきた。

「……確証は? 人を生き返らせれるなんて、正直信じられません。それに何故僕にだけ教えてくれるんですか?」

怪しむべき点はその二つだろう。
死んでしまった人間を生き返らせれるなど、メルヘンやファンタジーの世界での話だ。
常識的に考えれば、有り得ない。
それにわざわざ、自分にだけ教えた意味も分からない。
声の主は暫く黙り込んでいたが、やがて質問の答えが返ってきた。

『まずは一つ目の質問に答えてあげる……確証は未だ見せてあげられないわ。
 けど貴女も知ってる筈よ? 私達が超常的な力を持っているって』

それはその通りだった。
殺人遊戯の開幕時、自分は何時の間にかワープさせられていた。
それに獣の耳を持ったアルルゥのような、明らかに別世界の住人だと思われる存在も混じっているのだ。
それらの事実を踏まえれば、常識的な概念から真偽を推し量るのは、無意味だと言わざるを得ない。
既に自分の置かれている状況そのものが、一般的な常識から大きく逸脱している。
ならば本当に人を生き返らせれる可能性だって、十分に考えられるだろう。
勿論、可能だったとしても――主催サイドが本当に願いを聞き入れてくれるのか、という疑問は残るが。

『次に二番目の質問ね。答えは簡単、勿体無いと思ったからよ』
「……勿体無い?」
『ええ、そうよ。このまま放って置けば、貴女はただ無意味に死ぬだけ。
 でも願いを叶えられると知ったら違うでしょ? 貴女は人を殺してでも、貴子さんを生き返らせようとするわよね……くすくす』
「…………」

482 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:40:00 ID:joChJH1Z
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483 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:40:35 ID:joChJH1Z
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484 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:40:50 ID:b8eKMAL0
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485 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:41:23 ID:WjPz7Zxp

嘲笑交じりの声に、瑞穂は答えない。
答えないが、この状況での無言は、相手の言葉を肯定しているのとほぼ同意義だ。
もしもう一度やり直せるのならば、今度こそ方法を間違えたりはしない。
貴子の為に、全てを棄てる。
貴子の為に、殺す。
勿論、人を殺したくなどはない。
アセリアや茜、倉成武を殺したいとは露程にも思わない。
それでもやらなければならない。
当然だろう。
宮小路瑞穂は――否、鏑木瑞穂は厳島貴子の為だけに存在するのだから。
自分の髪の毛の一本、血の一滴までも、全ては貴子の為に在る。
決意を固めた瑞穂は、もう鷹野の言葉を待たずして走り出した。


そしてその背中を、秘密裏に追跡する人影が一つ。
いや、正確には人影と表現するべきでは無いだろう――何しろ彼は、鳥なのだから。
先程瑞穂に話し掛けていたのは、鷹野の声を真似た土永さんだった。

少し前……アセリアと舞が戦いを開始した直後。
銃声を聞きつけ飛んできた土永さんは、銃で狙われぬよう身を隠しながら、瑞穂と茜の会話を盗み聞きしていた。
その時に得た情報から、『瑞穂』が先の放送で呼ばれた『厳島貴子』に対して、深い愛情を抱いているのが分かった。
死者への愛情程、利用しやすいものも珍しい。
そう判断した土永さんは、舞を騙した時と同様の手法で、瑞穂に話し掛けたのだ。
しかし手法こそ似通っているものの、舞の時とは決定的に違う点がある。
今の土永さんにとって、一番欲しいのは意のままに動く操り人形。
そして優勝時の褒美をちらつかせれば、瑞穂を服従させるのは容易だろう。

だからこそ土永さんは瑞穂の後を追尾し、今も黙々と様子を伺っている。
優勝時の褒美を交換条件としている以上、途中で貴子の死体を発見してしまっても問題無い筈。
このまま操り続けるのに、何も支障は無い筈だった。

486 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:41:26 ID:joChJH1Z
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487 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:41:29 ID:WnMI0qIt


488 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:41:56 ID:joChJH1Z
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489 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:42:23 ID:b8eKMAL0
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490 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:42:55 ID:WjPz7Zxp


    ◇     ◇     ◇     ◇


巨大な鉄パイプが一閃され、宙の空気を切り裂く。
二メートル超の得物を縦横無尽に振るうアセリアだったが、未だ舞の守りを崩せないでいた。

「……甘い」
「く――――」

打ち終わりの瞬間を狙って、舞がニューナンブM60による銃撃を仕掛けてくる。
回避の為に、アセリアは後退を余儀なくされた。
舞と戦い始めてからもう、数え切れない程鉄パイプによる斬撃を繰り出してきた。
それらの全てが、常人では決して見切れぬ速度と強大な破壊力を兼ね備えた、正しく必殺の一撃。
自分と同じスピリットや、若しくはエトランジェで無ければ決して防げない疾風。
だが目の前の女は――川澄舞は、不可避の筈の攻撃を正確に躱してゆく。

「たああああっ!」

アセリアは大地を蹴り飛ばして、一息で間合いを零にまで詰める。
舞が振り上げた銃口の斜線から身を捩って逃れ、逃れた時にはもう鉄パイプを振り始めていた。
いかに舞が優れた身体能力を持っていようとも、この距離なら躱せない――此処が森でなければ。
舞はすぐさま軽快なステップを踏んで、後方に聳え立つ大木を盾として利用する。
アセリアの得物が永遠神剣なら、若しくは制限が無ければ、大木ごと舞を倒す事も可能だろう。
だがとにもかくにも、今のアセリアは鉄パイプが武器であり、身体能力の制限も被っている。
必然的に鉄パイプは大木に遮られ、舞の身体を捉えるには至らない。
そしてこちらが攻撃を振り終わった瞬間こそ、敵にとっては最大の好機。
ニューナンブM60を握り締めている舞の右腕が、ぴくりと動く。
アセリアも攻撃が来る事は分かっているので、迷わずその場から後退する。
だが今回は、その素早い判断が仇となった。

491 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:43:02 ID:b8eKMAL0
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492 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:43:46 ID:b8eKMAL0
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493 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:43:52 ID:WjPz7Zxp

「…………っ!?」

距離を離したアセリアの目に飛び込んできたのは、ニューナンブM60に銃弾を装填する舞の姿だった。
フェイント――舞は攻撃すると見せ掛けて、弾丸補充の時間を生み出したのだ。
両者の距離は開き、再び仕切り直しの形となる。

アセリアは乱れる呼吸を整えつつも、苛立ち気味に奥歯を強く噛み締めた。
平時ならばこの強敵との再会を喜び、熾烈な戦いを楽しみもしただろう。
だが今は、だらだらと小競り合いを続けているような場合ではない。
自分がこうしてる間にも茜は、見知らぬ――しかし一目で狂人と分かる男に襲われているのだ。
理性を失った人間は、往々にして信じ難い程の力を発揮する。
投げナイフで武装した程度の女性が敵うとは、到底思えない。
早く助けに行かなければならない。
アセリアの頬を一筋の汗が伝い、それは空気に触れて乾燥した瞬間、金色のマナと化していった。



――そして、アセリアの危惧は正しかった。
アセリア達が戦っている場所から数十メートル程離れた所で、茜は苦戦を強いられていたのだ。

「ひゃっはあああああ!!」
「あぶなっ…………!」

振り下ろされる斧を、茜は紙一重の所で回避する。
執拗に攻撃を仕掛けてくる孝之の得物は、何時の間にかレザーソーから斧に変わっていた。
その理由は至極単純。
レザーソーの細い刀身如きでは、狂人の腕力にとても耐え切れなかったのだ。
人間の脳に本来備えられている、自身の肉体を保護する為のリミッター。
そのリミッターがある所為で、人間は自身が持ち得る筋力の三割程度しか発揮出来ぬ。
だが今の孝之には、リミッターがまるで働いていない。
だからこそ孝之の筋力は、常人の数倍となっていた――その代償として、動く度に余命が削られてゆくのだが。

494 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:44:40 ID:WnMI0qIt


495 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:44:43 ID:b8eKMAL0
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496 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:45:13 ID:b8eKMAL0
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497 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:45:26 ID:WjPz7Zxp

「ほら、ほらほらほらああああっ! 」

孝之が斧を振り下ろす度に、周囲の空気が震える錯覚さえ覚えさせられる。
正しく戦槌と呼ぶに相応しい一撃は、投げナイフ如きで受け止められるような代物では無い。
茜は小躯の利点を活かして、小刻みに左右へとステップを踏み、何とか命を繋ぎ止める。

「このお……逃げるなよおおお!」

業を煮やした孝之は大きく振りかぶって、斧を横凪ぎの形で一閃した。
だが重力に従って振り落とす時に比べ、横方向に払われたその斧は明らかに遅い。
茜は腰を低く落として、薙ぎ払いの一撃を回避。
直接触れていないにも関わらず、巻き起こされた風によって前髪が舞い上がる。
思わず背筋が寒くなる程の豪撃――まともに食らってしまえば、まず助からない。
だがとにかく回避に成功した以上、次はこちらのチャンス。
今まで守勢を強いられていた茜に訪れた、唯一にして絶好の機会。
屈みこんだままの態勢で上を見上げると、孝之の無防備な腹部が視界に入った。

「こんのぉぉぉぉぉっ!」

全身全霊の力を両膝に込めて、上体を起こしながら、茜はナイフを突き出した。
茜はそのまま孝之の腹部を貫こうとして――刹那の判断で、脇腹を軽く切り裂くに留めた。
それは仕留める為の攻撃で無く、あくまで戦闘能力を奪い去る為の一撃。
最早修復不可能な程に狂ってしまったのは明らかだが、それでも茜に孝之は殺せなかったのだ。
姉の恋人であり、自身の想い人でもある男性を殺す気には、なれなかったのだ。
そしてその躊躇が命取り。
痛覚が麻痺している孝之にとって、この程度の攻撃では足止めにすらならない――!

「つぅぅぅぅかまえた!」
「きゃっ!?」

498 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:45:35 ID:WnMI0qIt


499 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:46:39 ID:WjPz7Zxp

孝之の右手が伸び、茜の右腕をガッチリと掴み取る。
茜の腕を締め付ける力が、見る見るうちに強まってゆく。

「う………ああっ……」

茜の喉元から、酷く苦しげな声が絞り出される。
男性と女性の差、どころでは無い。
今の孝之と茜の腕力は、それこそ大人と子供程に違いがある。
茜は右手にナイフを持ってはいるものの、腕を固定されている所為で振り回す事は出来ない。

「いひひひひ、あひゃひゃひゃひゃひゃ!」
「うわあああああああっ…………!」

下手すれば意識を失いかねない程の激痛が、茜の脳髄に襲い掛かる。
間近に迫った孝之の濁った瞳が、茜に耐え難い恐怖を与える。
茜は形振り構わず、何度も何度も孝之の右足を蹴り飛ばした。
それはただの苦し紛れ。
平時なら何の意味も成さぬ抵抗だったが、満身創痍の孝之相手ならば違う。

「ひぎっ!?」

幾ら痛覚を感じないとは言え、二度の銃撃によって傷付いた右足を、集中的に攻撃されては堪らない。
本人の意識とは無関係に、孝之の身体が大きく揺らぐ。
その隙に茜は孝之の懐から飛び出して、何とか窮地を脱していた。

「あれれれ? おかしいなあ、痛くも何とも無いのに転びそうになるなんて」
「…………」

500 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:46:50 ID:WnMI0qIt


501 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:47:53 ID:joChJH1Z
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502 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:47:58 ID:WjPz7Zxp

右足から止め処も無く血を垂れ流しながら、心底不思議がっているような表情をする孝之。
それは明らかに異常な光景だったが、茜にはその事を気にかけている余裕など無い。
茜の呼吸は乱れ、右腕には青い痣がくっきりと刻み込まれている。
この身体では長く戦い続けられぬし、この腕では以前程鋭い攻撃は繰り出せぬだろう。
自分は孝之と違って、身体的損傷を無視出来る程の狂気など持ち合わせてはいない。
どう考えても、茜の不利は明白だった。
このままでは負ける――そしたら、犯される?
言葉では言い表せぬ程の恐怖が、茜の心に湧き上がる。

そんな時だった。
立ち去った筈の人物が、駆け足で戦場に戻ってきたのは。
激しい足音に反応して、振り向く茜と孝之。
アセリアと舞も丁度距離を置いている状態だった為、状況確認すべく視線を動かした。
四人の視界に入ったのは、金色の長髪を湛えた見目麗しき女性。
それは間違いなく、宮小路瑞穂その人だ。
その姿は窮地に陥っていた茜にとって、どれ程頼もしいものだったのだろうか。

「――瑞穂さんッ!!」

二度と戻って来ないと思っていた瑞穂を視認し、茜は心の底から叫んだ。
顔に浮かび上がるは、満面の笑み。
これで助かるといった気持ちも少しはあるが、それ以上に仲間が戻って来てくれたという事実が嬉しかった。
だが瑞穂は茜に笑み一つ返す事無く、無表情のままに一人の狂人を指差した。

「茜さん……この方は?」
「……その人は鳴海さん。私の知り合いで……死んだ姉さんの恋人。
 姉さんが死んだ所為で狂ってしまって、今は殺し合いに乗っているわ。痛覚が無くなってるみたいだから注意して」
「そうですか、説明有り難う御座います」

503 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:47:59 ID:uF5eZYiZ
 

504 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:49:07 ID:WjPz7Zxp

説明を求められた茜は、必要最低限の事項だけを口にした。
自分が孝之に対して抱いていた想いなど、わざわざ話す必要性は皆無。
殺し合いに乗っている事と、狂っている事、そして痛覚を失っている事。
その三点さえ伝えられれば、取り敢えずこの場では十分な筈だった。
ともすれば溢れ出しかねない私情を押さえ込み、チームの一員としての役割を果たす茜。
だがそんな茜に贈られたのは、凍り付くような瑞穂の視線だった。

「殺し合いに乗った単独行動の方が一人ずつと、徒党を組んだ二人の参加者。
 なら――始めに、最大勢力である茜さん達を殺した方が良さそうですね」
「……………………え?」

瑞穂の言わんとする意味がまるで理解出来ず、茜は場違いな間の抜けた声を零してしまう。
そして、言葉の意味を聞き返す暇すら与えられない。
呆然と立ち尽くす茜目掛けて、瑞穂が投げナイフ片手に疾駆する。
瑞穂の行動には純然たる殺気が宿っており、それは硬直した場の状況を再び動かすに十分なものだった。

「アヒャ? よく分からないけど……茜ちゃんは俺の獲物だぞう!」

孝之からすれば、茜を殺害するのがこの場での最優先目的。
手傷を負わされた舞も憎いが、茜程ではない。
神の戦士である自分を拒絶した茜は、絶対にこの手で断罪しなければならない存在。
ならばこんな所でぼやぼやとしている暇など無い。
孝之は白骨の見え隠れする右足を奮い立たせ、一直線に茜の方へと駆け出した。

「え、えっ……!?」

505 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:49:22 ID:WnMI0qIt


506 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:50:02 ID:joChJH1Z
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507 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:50:34 ID:joChJH1Z
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508 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:51:33 ID:WjPz7Zxp

未だ状況の変化に思考が追い付いていない茜に対して、二人の狩人が迫る。
混乱した今の茜では、それこそ数秒と保たずに殺されてしまうだろう。
否、たとえ茜が正気だったとしても、二人掛かりの猛攻はとても防ぎ切れまい。
しかしそこで茜の前に、青色の疾風が吹き荒れる。
恐るべき速度で駆けつけたアセリアは、茜を庇うような位置取りで、長柄の鉄パイプを深く構えた。

「――――フ!」
「つあっ……!」
「うひゃああッ!?」

奔る剣戟。
目にも留まらぬ動作で振るわれた鉄パイプが、孝之の斧を弾き飛ばして、返す刃で瑞穂の投げナイフすらも受け止めた。
鍔迫り合いの形で顔を突き合わせながら、瑞穂とアセリアは視線を交錯させる。

「ミズホは……私を仲間と言った。なのに、どうして?」
「……アセリアさんには謝らないといけませんね。ですが仕方無いんです。
 僕はこの殺し合いで、優勝しないといけなくなりました」

何故、と問い掛ける暇は無い。
此処は戦場であり、悠長に会話している暇などある筈も無い。
これまで何故アセリアが、茜に助太刀しなかったのか。
それはこの場で最強の火力を誇る、川澄舞を封じておく為に他ならない。
そしてアセリアが茜の救助を優先した所為で、今や舞は完全にフリーの状態だ。
アセリア達が密集している地帯に向かって、ニューナンブM60が何度も何度も放たれる。
アセリアは茜を抱きかかえて跳躍し、瑞穂もまた素早い動きで難を逃れる。
二人共が最大限に神経を張り巡らせていた為、第三者に狙われている事実を素早く察知し得たのだ。
この場で舞の銃撃を躱せなかった人間は、たった一人。

「……ぐぎゃああああああっ!!」

509 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:51:43 ID:WnMI0qIt


510 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:52:12 ID:joChJH1Z
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511 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:52:36 ID:zzF3oRVe
   

512 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:52:46 ID:joChJH1Z
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513 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:53:04 ID:WjPz7Zxp

森の中に響き渡る、濁った叫び声。
只一人逃げ遅れた孝之は、左肩を完全に撃ち抜かれていた。
元よりズタボロだった孝之の左肩は、今の攻撃で完全に限界を迎えた。
骨は完全に砕け散り、肉も大方引き裂かれ、何時肩から先が千切れ落ちても可笑しくない状況。
今すぐに出血大量で死んだとしても、何の不思議も無い状態。
だが当然ながら、この場に彼を気遣ったりするような者は居ない。
油断してしまえば何時急襲を受けてしまうか分からないのだから、余分な事は考えられない。
誰一人として孝之の怪我を気にも留めず、次なる行動へと移ってゆく。

「逃がさないっ…………!」

茜を抱きかかえて後退するアセリアの下へ、投げナイフを握り締めた瑞穂が疾駆する。
幾らアセリアといえども、人一人抱きかかえた状態では、まともな反撃など出来る筈も無い。
アセリアは茜を地面に下ろし、続いて鉄パイプを構えようとする。
だがそれはあくまで、一般的な女性相手と想定した時の動き。
実際には男性であり武術の心得もある瑞穂は、アセリアの予測を大幅に上回る速度で、距離を詰め切った。
アセリアが鉄パイプを構えるよりも早く、瑞穂の投げナイフが横凪ぎに振るわれる。
アセリアは後ろに数歩下がってナイフの軌道から逃れたが、そこに追い縋る瑞穂。
瑞穂はナイフをポケットに戻し、それと同時に密着状態になるまで踏み込んだ。

「柳のように、風になびくんだ……っ!」
「――――!?」

互いの吐息を感じ取れる程の距離で、瑞穂はアセリアの右肘を掴み取る。
そのままアセリアの腕を井桁に組んで、捻って極めようとする。
幾らスピリットであろうとも、関節を完全に極められてしまえば、そのまま投げ飛ばされてしまうだろう。
だがアセリアは咄嗟の判断で鉄パイプを左腕に持ち替えて、それを瑞穂の腕目掛けて振り下ろした。
こうなっては瑞穂もこれ以上攻撃を続行する訳にはいかず、素直に腕を離して後退する。

「どうして……ミズホは戦う? 私やアカネを殺そうとする?」

514 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:53:14 ID:Hou1UR16
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515 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:53:23 ID:r7jPb+2h
   

516 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:53:49 ID:zzF3oRVe
   

517 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:54:25 ID:r7jPb+2h
   

518 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:54:29 ID:Hou1UR16
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519 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:54:37 ID:WjPz7Zxp

再度質問を投げ掛けるアセリア。
彼女の声には僅かながら、悲痛な色が混じっていた。

「……簡単な事ですよ。鷹野三四は、この殺し合いで優勝すれば願いを叶えられると云いました。
 それが嘘か本当か、僕には分かりません。ですが可能性が1%でもあるなら、僕は貴子さんを生き返らせる為に戦いますっ……!」
「ん……タカノが、そう言ったのか?」
「はい、そうですよ」

衝撃的としか言いようが無い事実を口にしながらも、瑞穂は投げナイフを構え直す。
それに応えるようにして、アセリアも鉄パイプを握る手に力を篭めた。
力量的には圧倒的に上回るアセリアだったが、今の彼女に瑞穂を殺す気は無い。
そして鉄パイプの長過ぎるリーチと大きな質量が、障害物だらけのこの森ではハンデとなる。
扱い辛い武器で手加減を強いられるアセリアと、心置きなく全力で戦う事が出来る瑞穂。
二人の戦いは、どうも長引きそうだった。


「こんな……こんなのって……」

かつて手を組んで戦ったにも関わらず、敵味方に分かれて対峙するアセリアと瑞穂。
茜はその光景を、嫌な夢でも見ているかのような気分で眺めていたが、その時視界の端に何かが映った。
それは銃を構えようとしている舞の姿。
誰にもマークされていなかった舞は銃弾の再装填を終えて、今にも瑞穂とアセリアに銃弾を浴びせようとしていたのだ。
それを目の当たりにした茜は、ようやく今自分が成すべき事に思い至り、手にしていた投げナイフを投擲した。
投げナイフが舞に躱されるのを待たずして、茜は全力で前方へ駆ける。

「たああっ!!」
「…………くぁッ!?」

520 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:55:10 ID:WnMI0qIt


521 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:55:16 ID:Hou1UR16
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522 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:55:48 ID:WjPz7Zxp

茜はスライディングの要領で大きく跳躍して、舞の腰に組み付いた。
そのまま二人は縺れ合い、大きくバランスを失ってしまう。
茜の視界に、茶色い地面と木々の緑が交互に映し出されてゆく。
次の瞬間には茜も舞も、乾いた土の感触を頬で確かめる羽目となる――詰まる所、二人は転倒したのだ。

「くぅ――――このっ……!」

舞は未だ自分の腰を掴んで離そうとしない茜目掛けて、ニューナンブM60を放とうとする。
だがこの状態で銃を撃ってしまえば、自分自身にも被害が及ぶかも知れなかった。
銃を撃てば確実に茜は殺せるが、こんな所で無駄な怪我を負う訳にはいかない。
舞は即座に狙いを切り替え、左拳を茜の背中に思い切り振り下ろした。
不十分な態勢である為、一発では威力が足りなさ過ぎるし、その程度では茜とて抵抗を弱めたりしないだろう。
故に舞は何度も何度も、茜の力が弱まるまで同じ動作を繰り返す。

「あぐっ……」

十発程拳を打ち込んだ所でようやく、舞の腰を締め付ける力が弱まった。
その隙に素早く茜を振りほどき、舞は両の足でしっかりと起き上がった。
間髪置かずにニューナンブM60の銃口を、未だ倒れたままの茜に向ける。

「……これで終わり」

冷たい殺気を灯した舞の双眸が、倒れ伏す標的を射抜く。
茜も何とか立ち上がろうとはしているものの、背中を強打された所為で、その動きは酷く緩慢だ。
だがそこで、舞は背後から何かが忍び寄ってくるのを察知した。
直感に従ってサイドステップを踏むのとほぼ同時、それまで舞が居た空間は鋭利な斧によって切り裂かれていた。

「何度も何度も邪魔しやがって、このクソアマがあああ!」

523 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:55:49 ID:r7jPb+2h
   

524 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:55:57 ID:zzF3oRVe
   

525 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:56:50 ID:joChJH1Z
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526 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:56:55 ID:r7jPb+2h
   

527 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:57:09 ID:zzF3oRVe
   

528 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:57:20 ID:joChJH1Z
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529 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:57:31 ID:WjPz7Zxp

斧の使い手は、狂人鳴海孝之。
白河ことりを強姦しようとした時も、アセリアと戦っている時も、同じ女に妨害された。
数度に渡る横槍を入れられた孝之は、舞に対して激しい怒りを抱いていた。
千切れかけている左腕程では無いにしろ、ボロボロな右腕を酷使して力任せに斧を振り回す。
その動きは決して俊敏とは言えず、とても舞を捉えきれる程のものでは無い。
だが鮮血を撒き散らしながら暴れ回る孝之の姿に、舞は驚きを隠せなかった。
前回の戦いと今回で、既に自分は五発も銃弾を撃ち込んでいるのだ。
にも関わらず戦い続ける孝之の耐久力は、尋常でないと言わざるを得なかった。

「身体を撃っても止まりそうに無い……なら!」

本体を倒すのが難しいのならば、まずは得物を弾き飛ばした方が利口だろう。
舞は狙いを孝之本体から斧へと切り替えて、ニューナンブM60の引き金を絞った。
銃口から吐き出された38スペシャル弾が、正確に孝之の斧へと突き刺さる。
飛び散る火花、空気を震わせる程の振動――常人なら間違いなく衝撃に耐え切れず、斧を手放してしまうだろう。
だがそんな常識、この狂人には通じない。

「ひゃっはあああっー!!」
「…………ッ!?」

孝之は斧を撃たれても、衝撃で右人差し指の骨に皹が入っても尚、その手を離さなかった。
一発、二発と斧が振り下ろされ、その度に舞は回避を強要される。
予想を外された動揺もあり、反撃する程の余裕が生み出せない。
このまま近距離で戦っても不利だと判断した舞は、身体を孝之に向けたまま後ろ足で後退する。

「この、待て……ぐうっ!?」

530 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:57:37 ID:WnMI0qIt


531 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:58:14 ID:Hou1UR16
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532 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:58:32 ID:r7jPb+2h
   

533 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:58:35 ID:zzF3oRVe
   

534 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 19:59:22 ID:WjPz7Zxp

追い縋ろうとした孝之だったが、怪我している足の所為でバランスを崩し、傍にあった茂みの中に頭から倒れ込んでしまう。
それを確認した舞は孝之から視線を外し、茜の方へと首を向けた。
茜は背中のダメージがようやく抜けたのか、しっかりと立ち上がり、先程投げ捨てていたナイフも回収していた。
しかしその視線は舞にでは無く、別方向――即ち未だ一騎討ちを続けている瑞穂とアセリアに向けられている。
この状況ならば、誰を狙うべきかなど決まり切っている。
難敵アセリアや、俊敏な動きを見せる瑞穂、ゾンビの如き孝之よりも、隙だらけの茜を狙うに決まっている。
今度こそ獲物を仕留めるべく、ニューナンブM60を握り締めた舞の腕がゆっくりと上がってゆく。


しかしそれをアセリアが見過ごす筈も無い。
アセリアは即座に瑞穂との戦いを放棄して、またも茜を救うべく疾走する。
その事に気付いた舞は標的を切り替え、アセリアに照準を合わせようとするがなかなか上手く行かない。
舞の視点からすれば、不規則にステップを踏みながら迫り来るアセリアは、分身しているようにすら見える。
距離がある状態で銃弾を撃っても、この敵に当たらない事など明白だ。
引き付けて引き付けて、それこそアセリアの鉄パイプが届きかねないくらいの間合いで、舞は初めて引き金を絞った。

「っ――――」

至近距離で牙を剥く銃弾。
アセリアは回避に全力を注ぎ込んだものの、完全に躱し切るには至らず、頬を僅かながら裂かれてしまった。
火薬の匂いが鼻腔を刺激し、痺れるような痛みが脳髄に伝えられる。
しかし無論その程度では、致命傷になるどころか戦力が低下する事すら無い。
間合いを詰めきったアセリアは、再び舞との戦いを開始した。



そしてアセリアが舞と戦い始めたという事は、瑞穂をマークする人間がいなくなったという事。
優勝を目標としている瑞穂からすれば、出来る限りこの場の人間は殲滅しておきたい。
この場で最も脅威となるのは、唯一徒党を組んでいる茜とアセリアに他ならない。
そして尋常でない戦闘力を誇るアセリアよりも、只の女子高生である茜の方が遥かに倒しやすいだろう。
故に瑞穂は目標を茜に定め、一歩一歩足を進めてゆく。

535 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:59:36 ID:r7jPb+2h
   

536 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 19:59:39 ID:zzF3oRVe
   

537 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:00:40 ID:joChJH1Z
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538 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:00:41 ID:zzF3oRVe
   

539 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:00:43 ID:r7jPb+2h
   

540 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:00:51 ID:Hou1UR16
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541 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:00:51 ID:WjPz7Zxp

「…………瑞穂さん」

茜も瑞穂の接近には気付いており、投げナイフを右手で握り締める。
狼狽する暇も、目の前の現実を――瑞穂が殺し合いに乗ったという事実を否定する猶予も無い。
此処で応戦しなければ、呆気無く殺されてしまうだけだろう。

「茜さん……貴女を殺します」

それが、開始の合図。
弾けるように瑞穂が動き、それと同時に茜もまた武器を振るった。
同じ投げナイフ――元は厳島貴子に支給された物――が衝突し、激しい火花を散らす。
同じ武器を用いているのだから、得物の差による優劣は存在しない。
だが得物が同じであろうとも、瑞穂と茜では腕力に大きな違いがある。

「――あつっ…………!」

茜は敵の一撃を何とか受け止めたものの、被害無しという訳にはいかない。
得物越しにも激しい衝撃が伝わり、右腕に痺れるような痛みが奔った。
茜の回復を待たずして、瑞穂の第二撃が横凪ぎに放たれる。

「このっ――――」

茜は即座に後方へ退避し、猛り狂う死の旋風から逃れようとする。
だが完全には躱し切れず、腹部を軽く切られてしまう。
内臓には届かず、致命傷にも至らぬであろう傷――しかし、決して軽傷では無い。
紅い鮮血が傷口より漏れ出て、茜の制服にじわりじわりと染み込んでゆく。
そして茜が痛みに顔を顰めたその瞬間、叩き込まれる中段蹴り。

「フッ――――!」
「う……ああっ……!」

542 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:01:30 ID:r7jPb+2h
   

543 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:01:42 ID:zzF3oRVe
   

544 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:01:48 ID:joChJH1Z
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545 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:01:54 ID:Hou1UR16
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546 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:02:16 ID:r7jPb+2h
   

547 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:02:22 ID:WjPz7Zxp

傷口の上から腹部を強打され、茜はたたらを踏んで後退してゆく。
態勢を立て直す暇など与えぬと言わんばかりに、瑞穂が前方より迫る。
瑞穂の表情には、何の躊躇の色も在りはしない。
このまま追い付かれてしまえばとても防ぎ切れぬと判断し、茜は左手をポケットの中に突っ込んだ。
右手に握り締めている物とは別の――二本目の投げナイフを取り出し、瑞穂の胸目掛けて投擲する。
突っ込んでくる敵に対して、カウンター気味に放たれたナイフ。
面積の大きい胴体部を狙ったそれは、茜にとって正しく会心の一撃と呼ぶに相応しいものだ。
だが――

「――――遅い!」
「そんなっ…………!?」

それもあっさりと、防がれてしまった。
ナイフ同士がぶつかり合い、高い金属音が響き渡る。
茜の投げたナイフは、瑞穂の身体を捉える事無く地面に吸い込まれていった。
躱し切れぬと判断した瑞穂は足を止めて、迫る攻撃をナイフで叩き落したのだ。

貴重な武器を放棄してまで放った攻撃ですら、傷一つ負わせられない。
どうにか距離を開く事には成功したが、それだけだった。
満身創痍の様相を呈してきた茜とは対照的に、瑞穂は未だ息一つ乱していない。
幼い頃より鏑木の家で鍛えられてきた瑞穂には、常人とは一線を画すだけの力がある。
その実力たるや、修練を積んだ男が四人掛かりで襲い掛かっても勝てぬ程だ。
瑞穂と茜の戦力差は明らかだった。
茜は肩で息を整えながら、苦しげな表情で言葉を発する。

「ハ――フ――――ハア、――――――ハア……。瑞穂さん……貴女は貴子さんを生き返らせる為に、殺し合いに乗ったのね?
 この殺し合いを仕切っている連中に、優勝すれば願いを叶えてやるって言われたのね?」

548 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:02:29 ID:Hou1UR16
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549 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:03:15 ID:joChJH1Z
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550 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:03:21 ID:r7jPb+2h
   

551 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:03:43 ID:Hou1UR16
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552 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:03:43 ID:WjPz7Zxp

問い掛けられた瑞穂は、涼しい顔をしたままコクリと縦に頷いた。
かつての仲間と戦っているというのに――眉一つ動かさず、機械的に。
一切の感情を見せぬ瑞穂の表情は、茜にとって酷く悲痛なものだった。

「瑞穂さんはそれで良いの……? 主催者の言いなりになって、全てを棄てて、本当にそれで満足なのっ!?」
「……………っ」

叩き付けられる言葉。
その言葉には怒りよりも寧ろ、悲しみの色が強く入り混じっていた。
裏切った仲間を罵るというより寧ろ、気遣うような想いが篭められていた。
瑞穂は一瞬表情に翳りを見せたが、すぐに元の無表情を装う。
自分の目的は一つ、それを成し遂げる為には迷ってなどいられない。

「……ええ、構いません。僕にとっては貴子さんが全てですから。貴子さんの為なら僕は、鬼にも悪魔にもなってみせる!」

一際大きい声で叫ぶや否や、瑞穂はかつてない気迫で駆け出した。
あっという間に茜の眼前まで詰め寄り、投げナイフを乱暴に振り落す。
茜はその一撃を受け止めたものの、得物越しに伝わる衝撃は先程の倍以上だった。

「僕は貴子さんを守ると決めた!」
「――――くああっ……」

瑞穂は自分自身に言い聞かせるように叫びながら、容赦の無い攻撃を繰り出していく。
肩を突き出す形で放った瑞穂の当身が、茜の胸部辺りに打ち込まれる。
胸を強打された茜は一瞬呼吸が出来なくなってしまい、動きが大幅に鈍る。
続いて繰り出される、斜め下方から振り上げる軌道での一閃。
死に物狂いで躱そうとした茜だったが、到底間に合わない。

「だから貴子さんの為に、彼女を生き返らせる為に、僕は戦わなければいけないっ!」
「……あぐううっっ!!」

553 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:03:46 ID:joChJH1Z
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554 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:04:17 ID:joChJH1Z
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555 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:04:51 ID:Hou1UR16
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556 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:05:09 ID:r7jPb+2h
   

557 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:05:43 ID:Hou1UR16
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558 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:05:46 ID:WjPz7Zxp

茜は左肩を大きく斬り裂かれ、激痛に悲鳴を洩らす。
そんな茜の腕を、引き寄せるように瑞穂が掴み取る。
ナイフを捨て、両手でしっかりと茜の腕を固定して、渾身の一撃を放つ。

「――僕は貴子さんの為に、人を殺さなければいけないんだあっ!!!」
「う……あああああぁぁっ!!!」

瑞穂の全身のバネを総動員して放たれた技は、所謂背負い投げと呼ばれるものだった。
視界が大きく一周した後、茜の背中に強大な衝撃が襲い掛かる。
それは下手をすれば、後遺症が残りかねない程の一撃。
瑞穂は先程手放したナイフを回収し、仰向けに倒れ込む茜を複雑な表情で見下ろした。

「――――アカネ!」

茜の窮地に反応したアセリアが、またも対峙する舞を放置して駆け出そうとする。
だがそう何度も何度も、上手く舞を振り切れる筈はない。
同じ行動を繰り返せば、いずれ敵に読まれてしまうのは自明の理。

「……行かせない」
「…………ッ!!」

アセリアの行動を予見していた舞は、素早くその進路上に回り込んだ。
舞にとってもこの場で最大の脅威は、徒党を組んでいるアセリアと茜のペアだ。
ならばみすみす見逃してやる道理など、何処にも在りはしない。
茜と瑞穂の勝敗は最早確定した。
後は瑞穂が倒れている茜に向けてナイフを振り下ろせば、それで終わりだろう。
茜がトドメを刺される時まで、このまま此処でアセリアを足止めしておくべきだ。
だがその直後、舞はアセリアが驚愕の表情を浮かべているのに気付いた。
その視線の先を確認すべく、後ろへ振り向くと――――未だ勝負は付いていなかった。

茜はよろよろと、しかし確かに自分の力で起き上がって、取り落としたナイフも拾い上げていた。

559 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:05:54 ID:uF5eZYiZ
 

560 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:06:16 ID:r7jPb+2h
   

561 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:06:24 ID:joChJH1Z


562 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:06:58 ID:Hou1UR16
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563 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:07:02 ID:WjPz7Zxp


「――――茜、さん」

瑞穂は驚きを隠し切れない様子で、呆然と茜を眺めていた。
有り得ない。
起き上がれる筈がない。
さっきの背負い投げは、これ以上無いくらい完璧に決まった。
背骨に皹が入っても、神経が何本か千切れても、まるで不思議でない一撃。
仮に自分が逆の立場で同じ技を受けたなら、間違いなく起き上がれないだろう。
それに左肩の斬り傷も、かなり深く刻み込まれている筈だ。
なのにどうして、茜は立ち上がれたのだ?
どうして未だ戦意の衰えぬ瞳で、こちらを見つめているのだ――?

「――貴子さんの……為?」

ぼそりと、茜の口から言葉が漏れ出た。
茜はガクガクと揺れる膝を叱り付け、瑞穂の方へと向き直る。
喉元まで混み上げてきた血塊を飲み下し、左肩と背中の痛みは強引に噛み殺した。
所詮自分は非力な女だ。
この場に居る誰よりも弱いし、当然瑞穂にも敵わないだろう。
それでも、まだ負けられない。
孝之は完全に狂ってしまったが、瑞穂は正気を失ってはいない。
孝之はもう救いようが無いが、瑞穂はまだ引き返せる筈だ。
ならば自分が倒されるのは、伝えるべき事を全て伝えてからだ。
瑞穂を止めてからだ。
姉も救えず、好きだった人も救えず、仲間すらも救えないまま終わるなど、絶対に認めない――!

564 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:07:24 ID:WnMI0qIt


565 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:07:43 ID:uF5eZYiZ
 

566 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:08:01 ID:Hou1UR16
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567 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:08:43 ID:WjPz7Zxp

「貴子さんの為――そんなの嘘よ!」

茜は残る全ての力を振り絞って、瑞穂に斬り掛かった。
満身創痍の身体から繰り出される斬撃は、特筆すべき点など無い。
速さの面でも、威力の面でも、技術の面でも、まるで取るに足らないものだ。
だがその斬撃を受け止めた瑞穂は、何故か胸がズキズキと痛むのを感じた。

「嘘……ですって?」

茜の動きは隙だらけだ。
反撃しようと思えば、何時でも仕留める事が出来るだろう。
しかし瑞穂はもう少しだけ、防御に徹しようと思った。
茜が何を伝えようとしているか、聞き届けなければいけない気がしたのだ。
アセリアと舞も何か特別な物を感じたようで、瑞穂と茜の戦いに魅入っている。

「皆の命と引き換えに生き返らせて貰って、貴子さんが喜ぶとでも思ってるの?
 瑞穂さんが逆の立場なら、貴子さんにそんな事をして貰って喜べるの!?」
「――――――――っ」

一発、二発。
脇腹と右肩に向けて放たれた連撃を、瑞穂はあっさりと弾き返す。
だが告げられた言葉に対してはそうもいかなかった。
何の言葉も返せない。
自分が逆の立場なら、喜べる筈が無い。

「結局貴子さんの為だとか愛だとかって、自己満足でしかないよね? ただの偽善よ……そんな事をしても皆不幸になるだけ!
  瑞穂さんも貴子さんも、罪悪感に押し潰されちゃうだけよ!!」
「っ……そうかも、知れませんね……」

568 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:08:46 ID:joChJH1Z
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569 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:08:52 ID:zzF3oRVe
   

570 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:08:57 ID:r7jPb+2h
   

571 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:09:10 ID:Hou1UR16
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572 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:09:19 ID:joChJH1Z
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573 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:09:42 ID:r7jPb+2h
   

574 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:09:57 ID:WjPz7Zxp

今度は、左肩、右足、左腕、計三箇所に向けて攻撃が放たれた。
先程より幾分か早くなっているが、まだ見切れるレベル。
しかし攻撃を防ぎながら瑞穂は思う――茜の言う通りだと。

砂時計の砂は決して逆流しないように、犯した大罪が消える事も無い。
愛する者を生き返らせる為だけに、多くの人々を殺し続ける。
自分自身の為だけに、数え切れない程多くの大切なものを奪い続ける。
そんな事をした所で、罪悪感に苛まれ地獄の責め苦を味わう羽目になるだけだ。
それでも――

「それでも……それでも僕は、貴子さんを守ると誓ったから! 一生を賭けて愛すると誓ったから!」

瑞穂の身体が前傾姿勢となり、その右肩がピクリと揺れる。

「僕は貴子さんを生き返らせる! たとえそれが……僕の自己満足だったとしてもッ!!」

今度は瑞穂がナイフを奔らせた。
自身の決意を籠めた、正真正銘全力での薙ぎ払い。
最小限の動作で放たれた斬撃は、正確に茜の喉元に向かって突き進む。
五体満足の状態でも、茜の実力ではまず防げぬであろう鋭い一閃。

「くっ…………!!」

しかし茜は、それを受け止めた。
決して防げぬ筈の一撃を、己の得物で確かに受け止めた。
瑞穂のナイフを押さえたまま、告げる。

575 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:10:15 ID:Hou1UR16
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576 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:11:11 ID:Hou1UR16
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577 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:11:14 ID:joChJH1Z
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578 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:11:18 ID:WjPz7Zxp

「自己満足の為に皆を傷付けて、自分自身も傷付けて……。そんなの……そんなのアルルゥちゃんが……余りに可哀想!!」
「…………アルルゥちゃん……が……?」

瑞穂の瞳が大きく揺らぐ。
ナイフを握り締める手の力が、瞬く間に緩んでいく。
茜は何時の間にか、瞳一杯に涙を溜め込んでいた。

「酷いよ……瑞穂さんは酷いよ…………アルルゥちゃんは瑞穂さんを庇って死んじゃったのに! 
 それでも瑞穂さんに笑っていて欲しいって、そう言ってたのに!」

もう、堪え切れない。
瞳から大粒の涙を零しながら、茜は絶叫する。

「瑞穂さんがそんな事じゃ……アルルゥちゃんは……何の為に死んだのよおおおおっ!!」

それはきっと、様々な想いが入り混じった叫び。
言葉では表し切れぬ程、多くの想いが篭められた絶叫。
ポロリ、と瑞穂の手からナイフが落ちた。

「アルルゥ……ちゃん……茜さん……貴子さん……僕は…………僕はっ……!
 うあ……あああああああっ……」

一筋の涙が瑞穂の頬を伝い落ちてゆく。
瑞穂はよろよろと二、三歩後退し、そのまま膝から地面に崩れ落ちた。
自分はこれまで、何をしていたのだろうか。
人を殺して、貴子を生き返らせるなんて、そんなの誰も――アルルゥも、貴子自身も望んでいなかった筈だ。
アルルゥは身を挺して、自分を助けてくれたのに。
自分の力量が足りなかった所為で、アルルゥは死んでしまったのに。
それも恨み言一つ遺さず、皆の幸せだけを願ってくれていたのに……!
瑞穂の心に、途方も無い後悔と自責の念が押し寄せてくる。

579 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:11:52 ID:joChJH1Z
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580 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:12:30 ID:WjPz7Zxp


アセリアも、茜も、舞すらも、泣き崩れる瑞穂をただ眺めている。
それでも、場の状況は刻々と動き続けていた。
アセリアがその事に気付いた時には、もう手遅れだった。
何かが、空を切る音。

「――――アカネ、避ける!!」
「え…………」

アセリアの声に反応して、瑞穂が顔を上げたその時。
グシャリと、近くで何かが潰れるような音がした。
瑞穂が音のした方へ視線を向けると、そこでは――

「茜……さん?」

目に映る、赤、朱、紅。
茜の背中に、鋭利な斧が突き刺さっていた。
血の霧が大きく空中に広がり、周辺の木々まで赤く染め上げてゆく。
茜は口から盛大に吐血した後、こま落としのようにガクンと仰向けに倒れ込んだ。
茜が倒れ込んだ周囲の草々も、瞬く間に真っ赤になってゆく。

呆然としたまま、その光景を眺め見る一同。
そこに気を違えたような――否、正しく狂っているとしか表現しようが無い、醜悪な笑い声が響き渡る。

「ハハハハ……ヒャハハハハハハハハッ!!」

近くの木陰から、一人の狂人がゆっくりと姿を現す。
哄笑を上げながら現われた人物は、鳴海孝之その人だった。

「やった……遂にやったぞ! 茜ちゃんを起こしてやったぞォォォォォッ!!」

581 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:12:34 ID:joChJH1Z
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582 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:12:42 ID:Hou1UR16


583 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:13:01 ID:zzF3oRVe
    

584 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:13:08 ID:joChJH1Z
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585 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:13:09 ID:r7jPb+2h
   

586 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:13:39 ID:joChJH1Z
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587 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:13:40 ID:Hou1UR16
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588 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:13:57 ID:zzF3oRVe
   

589 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:14:18 ID:Hou1UR16
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590 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:14:20 ID:WjPz7Zxp

本当に嬉しそうに、口元を綻ばせる孝之。
何故孝之が、アセリアにすら察知される事無く、茜を仕留められたのか。
孝之は戦いの途中で一旦身を隠し、反撃の機会を伺っていた。
そして舞とアセリアの動きが止まり、瑞穂と茜の戦いも終わった瞬間こそが決定的な好機だった。
最早その時には、全員が孝之の存在など忘れ去っていたのだ。
攻撃する際直接斬り掛かるのではなく、斧を投擲したのも大きい。
いかなアセリアと言えど、予測し得ぬ人物による突然の投擲攻撃からは、茜を守り切れなかったのだ。
そこで、一同の鼓膜を震わせるか細い声。

「……瑞穂、さん、何処……?」

全員の視線が声のした方へと集中する。
注意していないと聞き逃してしまいそうなくらい小さな声で、茜が呟いていた。
最早どうにもならない致命傷だったが、それでも茜はまだ生きていたのだ。
すぐさま瑞穂が大地を駆けて、茜の下へと急行する。

「アカネッ……」

そんな中、アセリアは苦々しげに奥歯を噛み締めていた。
今、自分は『悲しい』という感情を感じている――茜に駆け寄りたかった。
今、自分は『憎い』という感情を感じている――孝之を殺したかった。
だがすぐ傍に居る川澄舞は、銃器で武装した強力無比な敵。
今は大人しくしているが、何時銃撃を再開しても可笑しくは無い。
ならば此処で舞のマークを外す訳にはいかなかった。


「――――茜さん!」

瑞穂は右腕を茜の腰に回して、その身体を抱き起こした。
茜の制服にたっぷり染み込んだ血が、瑞穂の腕を濡らしてゆく。

591 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:14:46 ID:uF5eZYiZ
 

592 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:15:11 ID:Hou1UR16
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593 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:15:31 ID:r7jPb+2h
   

594 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:15:39 ID:joChJH1Z
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595 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:15:53 ID:WjPz7Zxp

「瑞穂さん……そこに居る、の……?」
「居るよ! 僕は此処に居るよっ!!」
「…………? あは、あはは…………ゴメン、もう、良く聞こえないや……」

語る茜の視線は虚空を彷徨っている――聴力だけでなく、視力までも失っているのだ。
だから瑞穂は茜の手を握り締めた。
自分の存在を伝えるように、心を伝えるように、懸命に握り締めた。
茜の手はとても小さく、頼りなさげなものだった。
だが確かに茜はこの手で、自分を深い闇の底から救ってくれた。
目を逸らしていた現実と、忘れかけていたアルルゥの願いを思い出させてくれたのだ。

瑞穂の腕の中で、茜が静かに言葉を紡ぐ。

「瑞穂さん……どうして……だろうね…………? 私、は…………ただ、お姉ちゃんと鳴海さんの傍に居たかっただけなのに……。
 私の想いが叶わなくても、お姉ちゃんと鳴海さんが笑っていてくれれば、それだけで良かったのに……」

幸せそうな孝之と遥の姿さえ見ていられれば、茜はそれで良かった。
一度は交通事故により砕かれてしまった、儚い夢。
事故にあった遥は眠ったまま目を醒まさなくなり、孤独に耐えられなくなった孝之は別の女の下へと走ってしまった。
でも三年の月日を経て、遥の意識が戻った。
孝之も遥の下に戻って来てくれた。
やり直せる筈だった。
再び皆、幸せになれる筈だったのに――そこで突然、このような殺人遊戯に放り込まれたのだ。

「お姉ちゃんは死んじゃって……鳴海さんは、狂っちゃって……。どうしてこんな事に……なっちゃったん、だろうね……」

瑞穂はその問いに対する答えを、持ち合わせてはいなかった。
自分達が何故連れて来られたかなど、分かる筈も無い。
瑞穂に分かるのは一つだけ。
茜やアルルゥはこんな所で殺される謂れなど無い、心優しい少女だという事だ。

596 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:15:57 ID:zzF3oRVe


597 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:16:47 ID:zzF3oRVe


598 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:16:56 ID:Hou1UR16
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599 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:16:56 ID:joChJH1Z
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600 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:17:39 ID:uF5eZYiZ
 

601 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:17:42 ID:WjPz7Zxp

「鳴海さんも……お姉ちゃんも……瑞穂さんも……貴子さんも……アセリアさんも……アルルゥちゃんも……皆が悲しまなくて良い世界があったら……。
 皆で一緒に笑い合える世界があったら、良いのに、ね……」

その言葉を最後に、茜は口を閉ざした。
戦いでは余り役に立てなくて、遥も孝之も助けられなくて、それでも精一杯生き続けた末、その生涯を終えた。

茜の両頬には、細い涙の筋が浮かび上がっている。
瑞穂は茜の涙をふき取り、瞼を閉じさせてやってから、ゆっくりとその身体を抱き締めた。
瑞穂の瞳からは、止め処も無い涙が溢れ出ていた。

そんな瑞穂の頭上から、この場に居る全員の記憶にある声が響いてくる。

『――瑞穂さん、これで分かったでしょう?』

嘲笑うような声は、鷹野三四の物。
正確には、鷹野三四の声を真似た土永さんの物だった。

『殺し合いを否定しても、その子のように殺されてしまうだけよ。
 先手必勝――生き延びたければ、欲しい物を手に入れたければ、殺し合いに乗るしかないのよ』
「…………」

土永さんは木の上に身を隠しながら、瑞穂を扇動しようとする。
本来ならこんな大人数に近付きたくは無いが、今回は仕方ない。
折角手に入れた瑞穂という操り人形をこのまま逃すのは、余りにも惜し過ぎる。

『だから殺し合いなさい! 憎しみ合いなさい! そうすれば…………!?』

土永さんが話し終わるのを待たずして、一つの大きな銃声が木霊した。
驚愕に土永さんの目が大きく見開かれる。
銃声の主は川澄舞。
鷹野の――即ち土永さんに踊らされている筈の舞が、突如天空に向けて銃を放ったのだ。

602 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:18:43 ID:joChJH1Z
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603 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:18:45 ID:WnMI0qIt


604 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:18:55 ID:Hou1UR16
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605 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:19:00 ID:3R1xHQNr


606 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:19:22 ID:joChJH1Z
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607 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:19:36 ID:WjPz7Zxp

「……五月蝿い。少し黙ってて」

舞はそう呟きながら、鷹野の声がした方向を睨み付けた。
自分でも莫迦な行動をしたとは思う。
殺し合いに乗った人間が多ければ多い程、自分の負担は軽減する。
あのまま扇動を行わせた方が――成功するとは、とても思えないが――得策だった筈だ。
だけど、我慢出来なかったのだ。
茜という少女は非力ながらも必死に戦い続け、誇り高き死を遂げた。
その死を穢す様な真似は、どうしても見過ごせなかった。

『ぐっ……きさっ、いえ、貴女……私に歯向かう気? 佐祐理さんがどうなっても良いの?』
「……逆らう気はない、ちゃんと人は殺す。だけど――」

詐術で舞を屈服させようとする土永さんだったが、脅し方が致命的なまでに拙かった。
舞の瞳に明らかな怒気が宿る。
周囲の気温が数度下がったかと思わせる程の、凄まじい殺気が放たれる。

「許さないから! 佐祐理を傷付けたら……絶対に許さないから……っ!!」
『……………ッ!!』

土永さんは悲鳴が漏れそうになるのを、必死の思いで耐え凌いだ。
駄目だ――こんな所に留まっていたら、命が幾つあっても足りない。
あの少女は銃を持っているのだから、何時銃撃してくるか分からない。
操り人形を失うのは惜しいが、此処は保身を最優先すべきだ。
そう判断した土永さんは、羽音を立てぬよう、ゆっくりとその場を後にした。

608 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:19:45 ID:WnMI0qIt


609 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:19:52 ID:joChJH1Z
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610 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:20:15 ID:3R1xHQNr


611 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:20:28 ID:joChJH1Z
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612 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:20:45 ID:WjPz7Zxp


茜が倒れ、土永さんが飛び去った戦場に未だ残っているのは四人。

狂人、鳴海孝之。
魔物を狩る者、川澄舞。
ブルースピリット、アセリア。
そしてエルダー・シスター、宮小路瑞穂。


「茜ちゃん……そうね……こんな悲しい世界は、もう終わりにしなくちゃね……」

茜の亡骸を優しく地面に横たえてから、瑞穂は静かに立ち上がった。
その瞳は貴子の死を知る以前と同じ――否、それ以上の光が宿っていた。

自分は……鏑木瑞穂は、貴子を守れなかった。
鏑木瑞穂は貴子の死に耐え切れず、道を踏み外して、茜までも死なせてしまった。
学園で皆の羨望を集めているのは自分自身でなく、あくまで宮小路瑞穂という幻影に過ぎぬ。
本当の自分はどうしようも無いくらい脆弱で、皆に支えて貰わねば何も出来ない人間なのだ。
それは覆しようの無い事実。
それなら、もう本当の自分なんて捨て去ってしまえ。
エルダー・シスター宮小路瑞穂を演じきってしまえ。
この場で、エルダー・シスターである宮小路瑞穂がやるべき事は一つ。

「アセリアさん……本当に申し訳ありませんでした。一つお願いがあるんですけど、舞さんを食い止めて頂けませんか?」
「ん……分かった。けど……ミズホはどうするつもりだ?」
「私はこちらの方を――鳴海孝之さんを倒します。この方は、私が倒さなければいけないんです」

613 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:21:31 ID:WnMI0qIt


614 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:22:00 ID:Hou1UR16
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615 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:22:18 ID:WjPz7Zxp

そう言って瑞穂は、少し離れた所に直立している孝之を眺め見た。
見れば孝之は何時の間にか、長柄の大型ハンマーを手にしていた。
顔が真っ青に染まっても、全身の至る所から血が噴き出していても、左腕が千切れ落ちかけていても、尚孝之は哂っていた。
その姿は明らかに異常、異質、異様。
最早完全に精神が崩壊し切った、異世界の住人だ。

「……ミズホ、気をつけろ。あの男は、普通じゃない」
「はい、分かっています。それでは――行きましょうか」

視線は各々の敵に固定したまま、二人は頷き合う。
多くの言葉は要らない。
今は目の前に立ち塞がる敵を、自分達が持ち得る全戦力で排除するのみ。
アセリアが大地を蹴ると同時、瑞穂は投げナイフを構えて縦一文字に疾走した。

「鳴海さん――貴方は私が止める!」
「ヒャハッ? お前も起こされたいのかあああ!?」

陽光すら届かぬ森の中で、二つの影がぶつかり合う。
先に攻撃を繰り出したのは、リーチで大幅に勝る孝之の方だった。
孝之は右腕一本で大型ハンマーを振り上げて、迫る瑞穂目掛けて思い切り叩き落す。
それは余りに単純な動作。
何の技術も知性も感じさせぬ、子供でも出来る原始的な動作。
だがその動作も、圧倒的な腕力と武器の質量を兼ね備えていれば、必殺の一撃となる。

「っ…………!?」

616 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:22:33 ID:WnMI0qIt


617 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:22:41 ID:3R1xHQNr


618 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:23:02 ID:joChJH1Z
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619 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:23:35 ID:WjPz7Zxp

轟く爆音。
攻撃を躱した瑞穂の顔が、驚愕に大きく歪む。
孝之の振り下ろした大型ハンマーは、瑞穂の傍にあった大木を幹から砕いていた。
それは、大口径の拳銃すらも凌駕する威力。
通常の人間では決して出し得ない破壊力。
これ程の威力があるのならば、掠っただけでも間違いなく死んでしまう。
それでも瑞穂は勇気を振り絞り、ナイフが届く間合いまで接近してゆく。
横一文字に振るわれた大型ハンマーを掻い潜り、身体を起こしながらの反撃。

「はっ…………!」

三発。
瑞穂は旋風の如き速度で、次々と剣戟を繰り出してゆく。
孝之の身体に、瑞穂の放った斬撃が叩き込まれた。
決して浅いとは言えぬ裂傷が、孝之の身体に刻み込まれる。
だが孝之は止まらない。
どれだけ己の身を傷付けられようとも、彼にとっては夢の中の出来事に過ぎぬのだ。
だから、まだまだ戦い続けられる。
哂いながら、狂いながら、目に映る全てを破壊し続けられる。

「アハハハハ……アーハッハッハッハッハッハッ!!」

瑞穂の攻撃が旋風だとすれば、孝之の攻撃は全てを巻き込む暴風だ。
大型ハンマーによる、落雷さながらの一撃が振り落とされる。
こんな物はナイフ如きで受け止められる筈が無いし、たとえ瑞穂の武器が頑強な名刀であったとしても、それは同じだろう。
ならば受け止めなければ良い――瑞穂は刹那のサイドステップで、孝之の攻撃を掻い潜る。
恐怖心に負けて下がるのでは無く、あくまで前に進みながら、ぎりぎりの所で回避する。
ダンと一歩深く踏み込んで、全身全霊の力でナイフを一閃する――!

620 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:23:46 ID:nn0hDMIr
 

621 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:23:52 ID:WnMI0qIt


622 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:25:08 ID:joChJH1Z
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623 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:25:14 ID:3R1xHQNr


624 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:25:27 ID:WjPz7Zxp

「セッ――――!」
「ガアアアアアアアアッッ!?」

狙いは左肩口。
千切れ落ちかけていた孝之の腕を、とうとう斬り落とす事に成功する。
左腕は心臓からそう遠くない――それを切断されてしまえば、どうなるか。
孝之の左肩から滝のような鮮血が勢い良く噴き出す。
人間の生命を維持するのに絶対必要なモノが、零れ落ちてゆく。
それでも狂人は最後まで、自身に課した任務を遂行しようとする。

「ききき、貴様ァッ! なななな何するんだよぉ!!!」

一発、二発、三発――孝之は縦横無尽に大型ハンマーを振り回した。
緩慢に過ぎるその攻撃は、俊敏な動作を見せる瑞穂に命中したりはしない。
ハンマーは空しく空転し、大地や近くの木を粉砕し、その度に孝之の右手の指が、一本、また一本とひしゃげる。
指が折れた所為でハンマーの柄を固定し辛くなり、孝之の攻撃は速度も威力も弱まってゆく。

「…………」

瑞穂は回避を続けながら、哀れみの目で孝之を眺め見ていた。
今の孝之を人が見れば何と表現するだろうか。
狂人、狂戦士、精神異常者、恐らくはその辺りだろう。
だが自分は、そう思わない。
茜の話によれば、孝之もある意味自分と同じ――恋人が死んだ所為で、狂気に飲み込まれてしまったのだ。
そして恐らくは自分と違って、誰にも救いの手を差し伸べて貰えなかったのだろう。
目の前の男は、只の、犠牲者だ。
誰にも助けて貰えず、理解して貰えず、止めて貰えず、狂気の世界に逃げ込んだ、只の哀れな男だ。
終わらせなければならない。
此処で、終わらせて上げなければならない。

625 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:25:38 ID:joChJH1Z
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626 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:26:05 ID:3R1xHQNr


627 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:26:09 ID:zzF3oRVe


628 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:26:14 ID:joChJH1Z
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629 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:26:31 ID:Hou1UR16
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630 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:27:32 ID:Hou1UR16
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631 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:27:56 ID:WjPz7Zxp

「糞! 糞糞糞ぉぉぉぉ!! 俺は神の戦士なんだ!!! 絶対に負ける訳が無いんだ!!!」

孝之は尚も諦めずに、嵐の如き連撃を繰り出してゆく。
残り少ない己の余命を犠牲にしながら、何度も何度も大型ハンマーを振り下ろす。
それを確実に見切って、最小限の動作で躱してゆく瑞穂。
このまま回避し続けていれば、瑞穂の勝利は疑いようが無い。
しかし敢えて瑞穂は、時間切れによる、ある種他力本願的な勝利を否定する。
翻る金色の長髪、大地を駆け抜ける疾風。
瑞穂はナイフを鞄に戻し、自分から孝之の間合い深くへと踏み込んだ。
しっかりと孝之の目を見据えて、告げる。

「鳴海さん――貴方は負けます。貴方の悲しい夢は……此処で終わります」
「ふざけるなああああ!!! お前も双樹ちゃんと同じようにグッチャグチャにしてやるぅぅぅ!」

激昂した孝之が一際大きな動作で、思い切りハンマーを振り上げる。
今までの攻防よりも、両者の距離が遥かに近い。
後一歩踏み込めば、お互いの肌が触れ合う程の距離。
この状態では、幾ら瑞穂でも孝之の攻撃を避け切るのは難しい。
勢いが随分衰えたとは言え、それでも孝之の振るうハンマーは信じ難い破壊力。
僅かでも先端が掠ってしまえば、それは即致命傷に繋がるだろう。
回避は困難、ナイフを取り出した所で良くて相打ち。
だが瑞穂には確かな勝算がある。
正面から孝之を打倒し、彼の創り上げた苦界を終わらせる算段がある。

孝之の右腕がピクリと動き、眼前の瑞穂を打ち砕くべくハンマーが振り落とされる。

そこで瑞穂は後方に大きく跳躍する。

「貴方の悪夢は、私が終わらせるっ…………!!」

天空より迫り来る凶器に向けて――切り札を、投擲した。

632 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:28:00 ID:joChJH1Z
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633 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:28:05 ID:r7jPb+2h
   

634 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:28:58 ID:joChJH1Z
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635 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:29:13 ID:WjPz7Zxp

瑞穂が投げたのは、参加者に取り付けられていた爆弾内蔵型の首輪。
大き過ぎる衝撃を与えれば、爆発してしまう首輪だ。
一秒後には首輪とハンマーが衝突して、激しい爆発が巻き起こされた。

「うぎゃあああああああああァァアアァァっ!!!」

予め爆発に備えていた瑞穂と違い、孝之は何の対策も打てなかった。
開け放たれたままの瞳を爆風が襲い、孝之の双眸は悉く破壊し尽される。
唐突に視界を奪われ、爆発で武器も吹き飛ばされ、獣のように暴れ回る孝之。


――その胸に、すとんと小さな衝撃が奔った。


「……お休みなさい、鳴海さん」

哀れみの色が入り混じった声で、呟く瑞穂。
瑞穂の手に握り締められたナイフは、正確に孝之の心臓を貫いていた。
それを引き抜くと、これまで以上の勢いで孝之の身体から血が噴き出した。
見る見るうちに、地面に血溜りが形成され、孝之はその中心に倒れ込んだ。
木々の間から漏れ出た陽光が、血色を失った孝之の顔に降り注ぐ。
孝之の両目からは、血で形成された紅い涙が零れ落ちていた。
恋人を失い、正気を失い、左腕を失い、それでも尚無意味な戦いを続けた、哀れな男。
鳴海孝之は、ようやく休息の時を迎えた。

636 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:29:14 ID:Hou1UR16
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637 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:29:20 ID:nn0hDMIr
 

638 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:29:47 ID:zzF3oRVe


639 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:29:59 ID:3R1xHQNr


640 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:30:07 ID:Wot4wUQm


641 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:30:24 ID:Hou1UR16
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642 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:30:47 ID:zzF3oRVe


643 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:30:54 ID:WjPz7Zxp



だが生き残った者には休んでいる暇も、感傷に浸っている暇も無い。
瑞穂はすぐさま次の行動を開始する。
まずは周囲を見渡してみたが、アセリア達の姿は何処にも見当たらない。
断続的に聞こえてくる銃声から察するに、少し離れた場所へと戦場を移したのだろう。
急いで駆け付けて、加勢しなければならない。
瑞穂は素早く孝之のデイパックを回収し、茜の元へと駆け寄る。
茜のデイパックと武器を拾い上げて、そのまま走り始めようとし――足を止めた。
改めて見下ろすと、茜の寝顔は酷く悲しげなものだった。
茜の両手を胸の前で組ませてから、静かに言葉を紡ぐ。

「茜さん、今まで有り難う御座いました。それでは行ってきます。
 悲しみの連鎖を、終わらせてきます」

簡素な、けれど万感の想いが篭められた、別れの挨拶。
そして瑞穂は駆け出した。
その目尻に浮かぶは、今日だけでもう何度流したか分からない涙。


    ◇     ◇     ◇     ◇


瑞穂が孝之と決戦を行っている場所から、少しばかり移動した森の中。
その地を舞台として、青の妖精と赤い装束を纏った少女が鬩ぎ合う。
頑強な鉄パイプと、絶対の死を齎すニューナンブM60――凌ぎを削る二つの凶器。
狙いは全て急所。
容赦も躊躇も無い攻撃が、何度も何度も必殺の意思を持って放たれる。

644 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:31:02 ID:WnMI0qIt


645 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:31:05 ID:joChJH1Z
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646 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:31:22 ID:3R1xHQNr


647 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:31:30 ID:zzF3oRVe
     

648 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:31:58 ID:Hou1UR16
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649 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:32:21 ID:WjPz7Zxp

「…………っ!!」

全力で上体を捻る。
アセリアの頭上付近を、黒い殺意の塊が通過してゆく。
ぎりぎりの所で銃弾を回避したアセリアは、何とか敵の間合いへと侵入した。

「ぃやあああああっ!!」

アセリアは雄叫びを上げて、鉄パイプによる斬撃を次々と打ち込んでゆく。
それは一発一発が確かな技術に裏付けされた、流れるような連撃。
無駄の無い動きで行われる剣舞は、見惚れてしまいそうな程に美しい。
だが繰り出された攻撃の数々は、一発として舞の身体を掠めもしない。
それどころか、守勢に回らせる事すら出来ていない。

「……遅い」

アセリアが放った刺突の一撃を、舞はくるりと身体を廻してやり過ごす。
そのまま横に一回転して、アセリアの脳天にニューナンブM60を向ける。
轟く銃声。

「――――――――!」

至近距離から襲い掛かる銃撃を、咄嗟に跳躍して躱すアセリア。
その後を追うようにして、二発目、三発目の銃弾が放たれ、アセリアは後退を余儀無くされる。

「ハア…………ハ、――――ハァ――――ハァ――――」

650 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:32:22 ID:r7jPb+2h
   

651 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:32:46 ID:joChJH1Z
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652 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:33:10 ID:r7jPb+2h
   

653 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:33:21 ID:zzF3oRVe


654 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:33:45 ID:Hou1UR16
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655 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:33:48 ID:WjPz7Zxp
危機的状況を脱し、アセリアは乱れる呼吸を鎮める事に専念する。
拮抗した勝負を続けてきた二人だったが、勝敗の趨勢は徐々に舞の方へと傾きつつあった。
アセリアの疲労が原因な訳ではない。
疲弊し始めているのは舞も同じ。
アセリアの執拗な連撃を捌き続けるのは、常人には計り知れぬ程重労働だ。
では何が二人の戦力に、明確な差を生み出しているのか。
それは得物の違いに尽きるだろう。
どれだけ疲弊していようとも、ニューナンブM60の引き金を絞るだけならば問題無い。
使い手がどのような状態かなど関係無く、必殺の威力を伴った銃弾が放てるだろう。
だがアセリアの持っている鉄パイプは、非力な者では扱えぬ程に高重量。
疲弊した状態で振るおうとすれば、それだけ速度も威力も格が落ちる。
当然ながらアセリア自身も、その不利は感じ取っていた。
このまま正面勝負を続けるだけでは、いずれ敗れてしまう。

「……それなら、やり方を変えるだけ」

アセリアは腰を低く落とし、地面に手を突き、所謂クラウチングスタートの態勢となった。
クラウチングスタート――陸上の短距離走で、スタート時に用いられる方法。
瞬発力を最大限に引き出すという意味では、これ以上無い程に優れたスタート法。
アセリア程の瞬発力を秘めた者が行えば、正しく矢の如き速度で疾駆出来るだろう。
だが標的とされている舞に、焦りの色は一切見られない。

「…………」

舞は無表情を崩さぬまま、アセリアに向けてニューナンブM60を構えた。
こんな遠距離から銃弾を撃って、貴重な弾丸を無駄にするような愚は犯さない。
相手が向かってくるというのなら迎え撃つだけだ、と言わんばかりに待ち構える。
両者の距離は三十メートル。
この島でも屈指の実力を持った戦士達が対峙する。
周囲に漂う緊張感が極限まで膨れ上がり、木々に生い茂る葉がざわざわと揺らぐ。
睨み合う事、数秒。
そしてアセリアの足元が、爆ぜた。

656 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:35:15 ID:3R1xHQNr


657 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:35:34 ID:r7jPb+2h
   

658 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:35:42 ID:Hou1UR16
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659 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:36:04 ID:zzF3oRVe
    

660 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:36:06 ID:WjPz7Zxp


「たあああああああああっ!!」

アセリアはあらゆる物を吹き飛ばす彗星と化し、眼前の難敵目掛けて疾駆する。
十分な予備動作を経たその動きは、間違いなくこの島で最速。
視界に映る景色が一瞬で流れてゆき、舞の姿だけがどんどん近付いてくる。

「アセ、リア――――!」

此処でようやく舞が動く。
照準をしっかりと敵の胴体中心に合わせる。
牽制など不要。
この敵を沈め得るのは、万全を期した必殺の一撃のみ。
アセリアの鉄パイプが届く距離になる寸前で、引き金を絞ろうとして――
そこで舞の眼前に、何か茶色い霧のような物が飛来してきた。

「――――つあっ!?」

アセリアの放り投げた土――クラウチングスタートの際に拾い上げていた物――が、舞の目に降りかかる。
舞は驚異的な反射速度で瞼を閉じたが、それでも一瞬視界は奪われる。
そしてその一瞬はアセリアからすれば、勝負を決するのに十分過ぎる時間……!

「あぐっ…………!」

鉄パイプが奔る。
甲高い金属音と共に、舞の手からニューナンブM60が弾き飛ばされた。
得物を失った舞は懸命に後退するが、追うアセリアの速度はそれを上回っている。

「フ――――」

661 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:36:12 ID:WnMI0qIt


662 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:37:33 ID:WjPz7Zxp

アセリアは一歩、また一歩と間合いを詰める。
既に鉄パイプを振るえば届く距離だが、確実に仕留めるべく更なる接近を試みる。
そこで突如舞が、自身のデイパックに手を伸した。

取り出すのは拳銃の類いか――問題無い、照準を合わせる余裕など与えはしない。
取り出すのは刀剣の類いか――問題無い、斬り合いなら自分は絶対に負けない。

この状況で有利なのは、誰がどう見ても自分の方だ。
アセリアは一気に勝負を決すべく、更に大きく一歩踏み込んで――――脳裏に、決して無視出来ぬ悪寒が奔った。
数々の戦場を渡り歩いたアセリアだからこそ感じ取れた、死の予感。

「アアアアァァァッ――――!!」

その原因が何なのか、確かめている時間など無い。
アセリアは自身の直感に身を任せ、全力でその場を飛び退いた。
受身も何も考えず、ヘッドスライディングの要領で形振り構わず地面に滑り込む。

そして直後、背後から全てを飲み込むような爆音が響き渡った。
吹き荒れる破壊の嵐は周囲の木々を薙ぎ払い、犠牲となった木片がアセリアの背中に降り注ぐ。

「ク…………」

身体を起こし、じりじりと間合いを広げるアセリア。
その視線の先には、巨大なナニカを抱え上げている舞の姿がある。
舞の持っている物体は、重機関銃ブラウニング M2 “キャリバー.50”。
この島で初めて銃の存在を知ったアセリアは、銃火器に関して詳しい知識など持ち合わせてはいない。
だが舞の前方では、複数の木が無残にも破壊し尽されている。
その光景を見ただけでも、舞の持っている巨大な銃器がどれ程凶悪な物か、容易に推し量る事が出来た。
アレは、悪魔の武器だ。
こんな鉄パイプ一本程度で、対抗出来るような代物ではない。

663 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:37:49 ID:WnMI0qIt


664 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:38:43 ID:Hou1UR16
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665 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:38:53 ID:3R1xHQNr


666 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:39:09 ID:WjPz7Zxp

「…………っ」

一方舞の方も内心穏やかでなく、ぎゅっと唇を噛んでいた。
これまで自分が、最強の切り札であるキャリバーを使用しなかったのは何故か。
それは一重に、キャリバーの弾薬を温存する為だ。
先の乱戦時、キャリバーを使えば全員纏めて屠り去る事は出来た。
アセリアも、瑞穂も、狂人も、一人残らず殺す事は出来た。
だがまだまだ先は長い。
生き残りは三十人以上も居るのだから、こんな所で全てを出し尽くす訳にはいかないのだ。
だからこそ、限界ぎりぎりまでニューナンブM60だけで戦った。
敵が勝利を確信し、防御を軽視したその瞬間に初めてキャリバーを取り出した。
その状況でキャリバーを撃ち放てば、最小限の弾薬消費で難敵アセリアを屠れる筈。
それは絶対の確信、決して変わらぬ筈の定められた運命。
しかしその運命を、目の前の女は――アセリア・ブルースピリットは覆した。
攻撃を完全に放棄し、全ての能力を回避に注ぎ込み、絶対の死を覆したのだ。


睨み合った状態のまま、深く身構える二人。
舞もアセリアもお互いに対し、かつてない程の戦慄を覚えていた。
そんな時、戦場に新たなる戦士が駆けつけた。

「――アセリアさん!」

立ち並ぶ木々の間より現われたのは、斧で武装した瑞穂だった。
瑞穂は舞の手に握り締められている兵器を見て、背筋が寒くなる感覚を覚えていた。
それでもすぐに歯を食い縛って、アセリアの横に並びかける。
アセリアと瑞穂は肩を並べて、前方の舞に鋭い視線を注ぎ込む。

「…………」

667 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:39:22 ID:WnMI0qIt


668 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:39:40 ID:3R1xHQNr


669 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:39:52 ID:Hou1UR16
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670 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:40:40 ID:WjPz7Zxp

新たな敵の出現に、選択を強いられたのは舞だった。
足元に転がっているニューナンブM60を見据えながら、冷静に思案を巡らせる。
ニューナンブM60だけで戦えば、あの二人相手にはとても勝てないだろう。
とは言えキャリバーを使えば、両者纏めて打倒するのは可能だが――まだ早い。
何も貴重な弾薬を大幅に消費してまで、此処で強敵二人と決着をつける必要は無いのだ。
舞はキャリバーをデイパックに戻して、それからニューナンブM60を拾い上げた。

「……此処は引く。また出会う事があったら、その時に決着をつける」
「……ん」

淡々と告げる舞に対し、軽く頷くアセリア。
アセリアからすれば、今舞を引き留める理由など無かった。
もっと強力な武器を手に入れなければ、勝てぬのは明白なのだ。
アセリアの返事を確認した舞は、そのまま戦場から離れていこうとする。
だがそこで瑞穂が、心の中に湧き上がっていた疑問を投げ掛けた。

「舞さん……私にはどうしても貴女が悪い人だと思えない。
 貴女、佐祐理さんという方を人質に取られているのね? それで仕方無く、殺し合いに乗っているのね?」

それは、先程行われていた鷹野と舞の会話から推測したもの。
恐らくはほぼ間違いないであろう、確信だった。
舞は少し考え込むような仕草を見せたが、やがて首を縦に振った。


「一度は殺し合いに乗った私が言えた義理じゃないかも知れないけど……もう、どうにもならないの?
 殺し合いなんてしないで、皆で助け合う――そんな道は選べないの?」
「……選べない。私は、貴女や茜程強くないから。佐祐理が居ないと生きていけないから――」

舞はくるりと踵を返し、背中を向けた状態で告げる。

「次に私と出会ったら、絶対に容赦しないで。私もそうするから、本気で殺しに来て」

671 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:40:47 ID:WnMI0qIt


672 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:41:21 ID:Hou1UR16
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673 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:41:47 ID:r7jPb+2h
   

674 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:41:47 ID:WjPz7Zxp

それで最後。
破壊の跡が深く刻み込まれた木々の間を、少女が独り歩いてゆく。
舞はもう振り返る事無く、森の奥へ――方角的には新市街地の方へと消えていった。
瑞穂は舞が立ち去ったのを確認してから、隣に居るアセリアへと視線を移した。

「アセリアさん……私は……」

謝らなければならない。
アセリアも、茜も、抜け殻同然だった自分を支えてくれていたのに。
自分はアセリアと茜に対して、酷い裏切り行為を働いてしまった。
自分が暴走した所為で、茜は死んでしまった。
だが自分が取った行動は幾ら謝った所で、決して許されるような物では無い。
どのように償うべきなのか――

「ん……いい」
「――――え?」

瑞穂が話を切り出す前に、アセリアが突然口を開いた。
呆然とする瑞穂をよそに、アセリアは続ける。

「ミズホが元気になったなら……それで良い。アカネも……アルルゥも、きっとそれを望んでる」
「……アセリアさん」

告げられた言葉は、片言の、けれど真摯な想いが籠められたものだ。
瑞穂は、アセリアの美しく澄み通った青い瞳を眺め見た。
アセリアは表情の変化に乏しく、良く知らない者が見れば、ある種機械的な冷たさすら覚えるだろう。
だが瑞穂には、アセリアの瞳に暖かい感情の色が秘められているのを見て取れた。

「……ん。行こう」

675 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:41:48 ID:3R1xHQNr


676 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:42:39 ID:WjPz7Zxp

そして、二人は歩き出す。
次々に仲間が死んでしまった。
アルルゥも、茜も、もう居ない。
それはとても悲しい事で、辛い事だ。
だが幾度にも渡る凄惨な戦いを経て、二人の絆は確かに深まっていた。



【涼宮茜@君が望む永遠 死亡】
【鳴海孝之@君が望む永遠 死亡】


【C-3 森/1日目 午後】

【土永さん@つよきす−Mighty Heart−】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:最後まで生き残り、祈の元へ帰る
1:もっとまともな操り人形を探す。争いの種をまく。
2:自分でも扱える優秀な武器が欲しい、爆弾とか少量で効果を発揮する猛毒とか。
3:どこか一箇所留まったままマーダー的活動が出来る場所を探す
4:基本的に銃器を持った相手には近づかない
5:川澄舞を警戒
【備考】
土永さんの生徒会メンバー警戒順位は以下の通り
よっぴー>>>>(越えられない壁)>カニ

677 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:43:01 ID:WnMI0qIt


678 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:43:29 ID:Hou1UR16
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679 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:43:38 ID:WjPz7Zxp

【川澄舞@Kanon】
【装備:ニューナンブM60(.38スペシャル弾5/5) 学校指定制服(かなり短くなっています)】
【所持品:支給品一式 ニューナンブM60の予備弾32 バナナ(フィリピン産)(3房)、ブラウニング M2 “キャリバー.50”(ベルト給弾式、残弾45) 】
【状態:疲労(大)、肋骨にひび、腹部に痣、肩に刺し傷(止血済。痛いが普通に動かせる)、太腿に切り傷(止血済。痛いが普通に動かせる)、後頭部にたんこぶ】
【思考・行動】
基本方針:佐祐理のためにゲームに乗る
0:新市街地に向かう。
1:佐祐理を救う。
2:全ての参加者を殺す。ことりも殺す。
3:相手が強い場合、無理はしない。

680 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:43:48 ID:WnMI0qIt


681 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:44:20 ID:r7jPb+2h
   

682 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:44:42 ID:WjPz7Zxp



【C-3 森/1日目 午後】
【女子二人】
1:今後の方針は不明

【アセリア@永遠のアセリア】
【装備:鉄パイプ(頑丈だがかなり重い、長さ二メートル程、太さは手で握れるくらい)】
【所持品:支給品一式 鉄串(短)x1、ひぐらし@ひぐらしのなく頃に、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:悲しみ、肉体的疲労大。右耳損失(応急手当済み)。頬に掠り傷。ガラスの破片による裂傷(応急手当済み)。殴られたことによる打撲】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
0:エスペリア以外にも知り合いがいるかも
1:仲間を守る
2:無闇に人を殺さない(但し、クニサキユキトとエスペリアを殺した相手と襲撃者は殺す)
3:ハクオロに蜂の巣を届ける
4:ハクオロと戦う(ただし殺さない)
5:強者と戦う
6:永遠神剣を探す
7:もっと使い勝手の良い武器を手に入れる
【備考】
※茜と情報交換を行いました

※フカヒレのコンドーム
アレでナニをする時に使う道具。12個入り。
パッケージの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してある。
レオがエリカルートの屋上でフカヒレから手渡された思い出の品。
薄型がウリでフィット感が凄い、らしい。
※ひぐらし
雛見沢に生息するひぐらしを瓶に無理やり詰め込んだもの。
全て生きています。

683 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:45:04 ID:WnMI0qIt


684 : ◆guAWf4RW62 :2007/08/16(木) 20:45:25 ID:WjPz7Zxp

【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:斧】
【所持品:支給品一式×3、フカヒレのギャルゲー@つよきす-Mighty Heart-、多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、斧、レザーソー、投げナイフ3本、
 フック付きワイヤーロープ(5メートル型、10メートル型各1本)、国崎最高ボタン、茜手製の廃坑内部の地図(全体の2〜3割ほど完成)】
【状態:悲しみ、決意、血塗れ(孝之の返り血によるもの)、中度の肉体的疲労】
【思考・行動】
1:エルダー・シスターとして、悲しみの連鎖を終わらせる(殺し合いを止める)
2:アセリアを守る
3:川澄舞と国崎往人を強く警戒
【備考】
※陽平には男であることを隠し続けることにしました。
※蟹沢きぬにも男性であることは話していません。
※アセリアにも男性であることは話していません。他の人にどうするかはお任せ

※フカヒレのギャルゲー@つよきす について
プラスチックケースと中のディスクでセットです。
ケースの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してあります。
ディスクの内容は不明です。


【備考】
※レザーソー1本、両手持ちの大型ハンマーは大破。

685 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 20:45:46 ID:WnMI0qIt


686 : ◆Noo.im0tyw :2007/08/16(木) 23:32:03 ID:9swzZa8P
紅に染まる髪を振り乱し、後ろを振り返ることもせず、暑い日差しを浴びながら
抱えきれない不安を抱いて『白河ことり』はただ走る。
息を切らして森を抜ければ、そこに広がるのは半壊している神社であった。

ことりは胸の動機を押さえながら、そっと中を覗いてみる。

「ひどい…・・・なんで、こんな……」

ことりは余りの恐怖にその場に膝をつく。
そこにあるのは、男と女の死体が1つずつ。どちらの死体も血の水溜りを形成し、その周りには使ったであろう武器が散乱していた。
鉈に銃、そしてそれに込める弾丸。挙句の果てには、ジャムや図鑑、リボンなんて物もあった。
大量の武器を使った死闘の成れの果て……。
ことりの眼下にはその光景のみが広がっていた。

(いつまでも、このままじゃだめだよね……)
未だ恐怖で震えるその膝をどうにか押さえつけ、ことりは立ち上がる。
できるだけ死体そのものを見ることをせず、ことりは死者の瞼を手で閉じる。
永遠の眠りを願うように……。

それからことりは死者に黙祷をささげ、散らばっている支給品を回収する。
死者から金品をとることは、極悪非道の行いだと教わってきたが、今はそんなことを言ってる状況ではない。
残念なことに剣はあまりにも重く、それを運べるほどの余力は残っていなかった。




687 : ◆Noo.im0tyw :2007/08/16(木) 23:32:53 ID:9swzZa8P
◇   ◇   ◇


すべてをバッグの中に入れたところで、私は来た道の方向を真っ直ぐにみつめる。
放送直後、私たちは災難、いや、災難なんて呼べるほどやわなものじゃないほどの事件に出会った。
ツルハシを片手に持ち、私と赤坂さんを襲ったあの青年。
赤坂さんが身を挺して私を護ってくれたおかげで、私は事なきを得たはずだった。

最初に赤坂さんが青年に放った一撃は、誰がどう見ても完璧に決まっていた。
彼が、ただの一般人であれば。
思えば、始めから青年が気が狂っていると気づくべきだったのだ。

それは、戦っている赤坂さんの役割ではなく、ただ何もできず震えていた私の役目だったはずだ。
私がいち早く、彼の尋常さに気づき、教えていれば今の状況はなかったかもしれない。だけど、
“あの日 出逢っていなければ”・・・とか
“時が 巻き戻せたなら・・・”とか叶いはしない“if”はきっと未来さえ摘むんでしまう。

だから、私はただただ祈った。赤坂さんとの約束を信じて。






688 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 23:33:20 ID:b8eKMAL0
,

689 : ◆Noo.im0tyw :2007/08/16(木) 23:34:05 ID:9swzZa8P
◇   ◇    ◇




規則正しく時を刻む、その針が15と12を指し示す。
――――彼、赤坂衛さんとの『約束』。たった今、それは果たされることなく散ってしまった。
散ってしまったものは二度と戻ってくることはない。
それはまるで、桜の花びらのように……。

あの時彼は私にこう言った。

「早く行くんだ。一時間後、例の場所で落ち合おう」と……。

1時間、それは私にとって短いようで永遠に感じた、そんな時間だった。
約束の時間を過ぎても彼がここに来ない。それは、つまり彼の『死』を意味していることは間違いないだろう。
そんなこと、誰でもわかるのだ。ただ、理解したくないだけ……。

――――私が1人でいる時に颯爽と現れ、笑顔を振り撒いた彼。

――――精神が動揺しているときに私を励ましてくれた彼。

――――どんな時でも、私のことを一番に考えてくれた彼。

初音島でも、ここまで私のことを考えてくれる人はそうもいなかった。
親友である、みっくんやともちゃん、それに朝倉君を始めとしたその友達、それに大事な私のお姉ちゃん。
長い時間をかけて培ってきた友情に匹敵するものを、赤坂さんは出会ってからたった数時間で作り上げてくれた。
――――私を護るために。


690 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 23:35:09 ID:b8eKMAL0
,

691 : ◆Noo.im0tyw :2007/08/16(木) 23:35:16 ID:9swzZa8P
一筋の涙が頬を伝い、床にシミを作る。
赤坂さんの存在は、私の中でこんなにも大きくなっていたのだと、改めて思い知る。

「うっ…ひっく…どうして………」
どうしてそんなにも優しい人が、死んでしまわなければならないのだろうか?
それがここでのルールだからなのか?

「嫌だ、嫌だよ、そんなの……!!」
他人を殺してでも、頂点に立ち、生を得る。
そんな不条理なルールの元で、私はあとどのくらい生きられるのだろうか?

(だったら会いたい。どうしても、朝倉君に。)
私が、初音島で絶対無二の信頼を置き、そして恋を「していた」彼に。

私がどんなに彼を愛していても、彼は妹である音夢さんを見ていた。
2人は私の目から見ても、お似合いのカップルに見えた。
そんな2人間に私の付け入る隙はない、だから彼のことを諦めたはずだった。

だけど、今更またその感情が蘇ってきたのは何故なのだろうか?

――――頼れる人物が彼しかいなくなったから?

――――音夢さんが死んでしまったから?

理由はどうであれ、私の考えていることは非道であることは百にも承知していた。
彼にけなされてもいい、突き放されてもいい。今思えば、いつでもこの体は彼を愛していたのだから。
逢いたくて、ただ彼に逢いたくて。
彼に助けを求めたい、震えるこの体を抱いて欲しい。例え、そこに愛がなくても……。




692 : ◆Noo.im0tyw :2007/08/16(木) 23:36:04 ID:9swzZa8P
「でも…私が行ったら足手まといになっちゃうよね……」
彼に会いたい、という思考が支配しつつある中で彼女は、自分がお荷物だということも理解していた。
自分が行けば、赤坂さんと同じ目に遭わせてしまう可能性は大いにある。
武器を大量に保有した今でさえ、それを満足に使うことすらできない私は、結局のところ少し前の私となんら変わりはないのだから。


ただ、ここに来て変わったこともある。
……それは、私自身の能力について。
この島で復活した、私のテレパシーのような力。
それが、依然と同じように使えるのではなく、限定された時でないと使えないと言うことは、うすうす理解していた。

舞と会ったときは、手が触れた瞬間、彼女の思考が流れてきた。
名前のわからない青年のときもそう、体が触れ合った瞬間に黒い感情が流れてきた。

2つの自体から導かれる結論は、『触れている』という限定内で私の力は復活するということだ。
もちろん、自分から相手の思考を読み取ろうとすれば、頭痛がするだけで、何も得られない。
何と不便な能力だろう、と、ことりは思う。

(あの時のように私はまたレイプまがいのことをされなきゃいけないの…?)

愛してもない人に無理やり襲われる。それはことりにとって、大変な事件であり、また忘れ去りたい過去でもあった。
ことりも『学園のアイドル』と呼ばれているからには、男子学生から性の対象としてみられたこともしばしばあった。
だけど、もちろん実力行使にでてくる人はもちろんいなかったし、無視をしてれば良かった。
――――ただ、ここは風見学園とは違う。
あの青年のように、突如、見境なく襲ってくる可能性もある。
まして、今のこの格好だ。これでは自分が痴女です、と言ってるも同然だろう。
相手に襲われることによって、相手の気持ちを知る。それはことりにとって余りにも皮肉なことであった。



693 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 23:37:01 ID:b8eKMAL0
,

694 : ◆Noo.im0tyw :2007/08/16(木) 23:37:07 ID:9swzZa8P
(嫌なことは忘れよう、もう……。新しい服も欲しいな……)
ことりはブンブンと首を振って、ため息をつく。
そしてまた、自分の能力の使い方を思考し始める。

「相手に近づかなければ、意思を汲み取ることもできないんだもね……」
自分の本性を隠して、近づいてくる殺人者に対しては有効かもしれない。
でも、あの青年や、今の舞に対してはあまり有効に活用できそうもない……。

(舞……)
ふと、舞という言葉がでてきたことで、ことりは舞のことを思い出す。

「佐祐理を救うためには他の参加者を全て殺さなくちゃならない」

あの時の舞は私のことをどう見ていたのだろう…?必死に怯えるウサギにでも見えただろうか?

『一緒にご飯を食べたことも、笑いあったこともすべて忘れちゃったのかな…』
そう思うと、胸が苦しくなる。
(一緒に行動した時間は短かったけど、いろいろあったよね…。千影ちゃんに会ったりもしたし)

――――千影ちゃん?
ことりの脳内に閃きという衝撃が走る。
(私たちは、千影ちゃんと約束したんだ! 次の放送のときに神社で遭うって。
 だったら舞が来る可能性もある。その時に千影ちゃんが狙われたら……! )
ことりの頬に嫌な汗が流れる。
(初めのころの舞ならそんなことは絶対にしない。でも今の舞は…?)
友人のために躊躇いなく引き金を引いてしまう彼女なら、千影も例外ではない。
舞との再接触、そして説得を試みれるその機会は、千影が亡き者になる可能性もある。
そのことに気づいたことりは、いそいでバックを背負うともう一度死者に黙祷をし、走り始めた。



695 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 23:38:08 ID:b8eKMAL0
,

696 : ◆Noo.im0tyw :2007/08/16(木) 23:38:29 ID:9swzZa8P
(舞と会う前に、千影ちゃんを探さなくちゃ……!!!)

――――ことりは当てもなく走る。朝倉純一、千影の2人を探して。



◇   ◇   ◇



赤坂さん、あなたは今どこで何をしていますか?

この空の続く場所にいますか?

今まで私の心を埋めていたこと失って初めて気付きました。

こんなにも私を支えてくれていたこと。

こんなにも笑顔をくれていたこと。

失ってしまった代償はとてつもなく大きすぎます。

孤独と絶望に胸を締め付けられ心が壊れそうになるけれど

思い出に残るあなたの笑顔が私をいつも励ましてくれるので大丈夫です。

――――私、頑張ります。





697 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 23:38:42 ID:b8eKMAL0
,

698 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 23:39:30 ID:b8eKMAL0
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699 : ◆Noo.im0tyw :2007/08/16(木) 23:39:57 ID:9swzZa8P
【D-4 神社/1日目 午後】

【白河ことり@D.C.P.S.】

【装備:竹刀 風見学園本校制服(縦に真っ二つに破けブラジャー露出)】

【所持品1:支給品一式 バナナ(台湾産)(4房)虹色の羽根@つよきす-Mighty Heart-、ツルハシ】

【所持品2:ヘルメット、発炎筒(×4本)、懐中電灯(×2本)、単二乾電池(×6本)】

【所持品3:ベレッタ M93R(2/21)、鉈@ひぐらしのなく頃に祭、支給品一式x3、ベレッタ M93Rの残弾20、
レインボーパンwith謎ジャム(半分)@CLANNAD&KANON、昆虫図鑑、.357マグナム弾(40発)、
スペツナズナイフの柄 クロスボウ(ボルト残26/30)、カルラの剣@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、果物ナイフ、エルルゥのリボン】

【状態:疲労(小)、精神的疲労、レイプ未遂のショック、軽い頭痛、悲しみ】
【思考・行動】
基本方針:ゲームには乗らない。最終的な目標は島からの脱出。
1:朝倉純一、千影の探索。
2:仲間になってくれる人を見つける。
3:朝倉君たちと、舞と、舞の友達を探す。
4:千影の姉妹を探す。
5:舞の説得。
6:服が欲しい。



700 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/16(木) 23:40:03 ID:b8eKMAL0
,

701 : ◆Noo.im0tyw :2007/08/16(木) 23:40:31 ID:9swzZa8P
※虹色の羽根
喋るオウム、土永さんの羽根。
この島内に唯一存在する動物、その証拠。

【備考】
※テレパス能力消失後からの参加ですが、主催側の初音島の桜の効果により一時的な能力復活状態にあります。
 ただし、ことりの心を読む力は制限により相手に触らないと読み取れないようになっています。
※ことりは、能力が復活していることに気づきました。
※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化) つもりですが、 状況によってはどうなるか分かりません。
※坂上智代から、ボイスレコーダーを発端とした一連の事件について、聞きました。
※音夢ルートからの参加
※次の行き先は後続の書き手さんに任せます。


702 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:30:15 ID:ryiUKOi3
 D-3地区にある施設、映画館。
『闘争進化論〜人類が繁栄した理由』などという、この島にいる大部分の人間が興味を持たないであろう内容の映画が上映されている施設に、今三人の人間がいた。
無論、その映画が目的ではない。
彼らの内二人は、非日常が支配するこの島において、ようやく再会できたという喜びを噛みしめており、残る一人はその邪魔にならないようにしながらも、その再会を祝福していた。

その残る一人、高嶺悠人は、先ほど知り合った相手――千影が持っていた短剣を手に取りながら思考に耽っていた。
この短剣は、間違いなく「永遠神剣」である。
契約者のマナ(精霊光)と引き換えに莫大な力を与える剣。
異世界ファンタズマゴリアにおいて、同種の剣を手に、望まぬ戦闘を強要されていた悠人には、間違えようのない武器である。(最も、短剣型というのは初めて見るが)
 短剣の持ち主である千影は、悠人の同行者である衛との再会を喜び様々な話をしている最中であり、こちらに意識を向ける様子は無い。
 なので悠人は手持ちぶたさもあいまって、色々と思案していた。

(この剣から感じられる力は、考えたくないけど・・・・・・バカ剣よりも上だ)
 ファンタズマゴリアで悠人が手にしていた神剣「求め」、その力は人よりも遥かに高い戦闘力を持つスピリット達の中にあっても、更に高い力を持っていた。
 だが、
(この剣からは「求め」よりも遥かに強い力を感じる。多分、俺とバカ剣ではこの剣の使い手には勝てない)
 そうなると、未だ再会出来ていないアセリアでも、この剣の使い手には敵わないだろう。
(いや・・・・・・アセリアだけじゃない)
 自分がこの島に来てから出会った相手の顔を思い浮かべる。
 
 博物館で出会った、殺し合いに乗っている二人の少女――片方は献身を手にしていたが、どちらも身のこなしはほとんど素人のそれだった。
心強い仲間であるハクオロ――身体能力においては悠人と大差はないだろうが、技量と経験においては悠人よりも上だろう。
 そのハクオロと共にいる仲間、瑛理子と観鈴――あの二人は戦闘力という点では大した事は無い。
 そして今も共に居る衛とその姉である千影――やはり普通の女の子といって差し支えはない。


703 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:30:54 ID:ryiUKOi3

(遥さんは車椅子とか言っていたし、そもそも論外。近くで死んでいた二人は何ともいえないけど、少なくとも化け物じみてはいなかった)
 悠人がこの島に来てから出会った相手は死体を含めて10人。(もう一人いたが遠目なので詳しくはわからない)
その中で、戦闘能力者と呼べるのはハクオロ一人、死んでいた二人が仮に戦う力を持っていたとしても、三人。
つまり
(この島にいる人間は、普通の人間のほう圧倒的に多い――って事になるのか)

少々強引な理論だが、余り間違ってはいないのではないかと思う。
 仲間達の知り合いの話を聞いても、戦う力を持っているのはハクオロの知り合いの人間(?)のみ、つまり戦うことが日常な世界と、そうでない世界があるということになる。
 そして、
(名簿に載っている名前を見ても、ほとんどが日本人だ)
 
今まで出会った中で名前がわかっている人間は、ハクオロを除いて全員日本人。
 その日本人全員が、平和な日常の中にいたらしい。
 そもそも悠人自身、ファンタズマゴリアに召喚されるまでは、日本で平和な日々を過ごしていたのだ。
 ならばこの島にいる人間のほとんどが、ごく普通の一般人と考えて良いのではないだろうか。(最も悠人自身という例外が存在している以上、油断は禁物だが)

(まあ銃火器が存在している以上は、その程度の優位は簡単にひっくり返るんだけどな)
狙撃を行ってきた相手からは逃げるしかなかったし、近い距離でも銃が相手では正面から勝つのは難しい。
そしてエスペリアを含めて、戦闘に秀でた人間――ハクオロによれば、カルラ、オボロ――もこの島では死んでいる以上、そこまでの優位性はない。
つまり油断は禁物ということだ。

しかし、悠人が考えるべきなのは、そんな当たり前のことではない。
(問題は・・・・・・強い力を持っていても、「その程度」でしかないということだ)
 ハクオロにしろ、悠人が「求め」を手にしている限りは敵にはなりえない。
 エスペリアが殺されたとはいえ、その手に「献身」がなかった事は悠人自身が確認している。
 そして、銃火器程度では、神剣を手にしたスピリットやエトランジェには対抗出来ない。


704 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:31:39 ID:ryiUKOi3
 つまり、この島のほとんどの人間(いやもしかすれば全てかもしれないが)は、神剣を手にした悠人やアセリアには敵わないのである。

 そして本題はここから、つまり、
(この神剣の持ち主が仮にこの島に居て、この剣を手にした場合、それに匹敵する力を持つものはいない、ということだ)
 そういう結論になる。
 それはつまりその持ち主が殺し合いを肯定した場合、それを止められないという事。
(少なくともこの剣は、目の届く範囲に置いておくべきだな)
 幸いなことに、現在の持ち主である千影は衛の姉であり、仲も良い。
 この場で同行を申し出れば、恐らく了承してもらえるだろう。
 まあ、残るもう一人の姉妹――咲耶といったか、を探しに行くと言い出すかもしれないが、それに同行したってかまわない。
 一度ハクオロ達に会うために公園に行かなければならないが、そのぐらいの回り道なら了解してもらえる、と思う。(最も、千影が工場に行かないと言い出した場合は瑛理子の説得が難しい気もするが)

(そうと決まれば早速、そういえばこの剣をどこで手に入れたのかも聞かないとな)
と思い、立ち上がろうとしたとき、
「悠人さん、お待たせ!」
話が一段落着いたのか、衛と千影が声をかけてきた。
 
 
一通り再会の喜びを噛みしめた後、衛くんは同行者――悠人くんというらしい、に声をかけた。
衛くんの話では、この島に来て比較的早くに出会って、力を貸して貰えるように頼んで以来、共に行動している相手らしい。
先ほどは驚かされたが、あの場合は仕方のない対応だと思う。
 そういう意味では、頼りになる事がわかったという事でむしろ良かったのかもしれない。

 その悠人くんは
「えっと、高嶺悠人だ。さっきはすまなかった」
 と丁寧に挨拶をしてくれた。


705 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:32:17 ID:ryiUKOi3
「私は千影。呼び捨てにしてくれてかまわない・・・。
先ほどの事は気にしなくていいよ・・・。あの場合は仕方のない事だからね・・・。
 むしろ礼を言わなければいけないね、これまで衛くんのことを守ってくれて有り難う、おかげでこうして再会することが出来た・・・」
 こちらからも挨拶をしておいた。
 ・・・・・・まだどんな相手なのかはわからないけど、衛くんはあれで中々鋭いところもある。
 その衛くんが信頼している相手(話によれば襲撃者からも守ってくれたらしい)なら、多分信用してもいいと思う。
 
「いや、俺も衛には色々と助けてもらっている。
 多分、衛がいてくれたから、ここまで無事で居られたんだと思う。」
 ・・・先ほど衛くんと話していたとき思ったけど、衛くんは悠人くんのことを大分(それこそ兄くんと変わらないぐらいに)信頼しているみたいだ。
 そして、どうやら悠人くんも衛くんのことを同じくらい信頼しているように見える。

「えっ? ボクは悠人さんに助けられてばかりだよ?」
・・・・・・最も、オボロ君のようなこともあり得る。
 彼も間違いなく善良な人間だったのだろう。だが彼には譲れない目的があって、その為に四葉くんをその手にかけた。
 だから、信頼出来る相手でも、信じきるわけには・・・・・・いかない。
「ん・・・そんなことはないさ、俺は衛が一緒にいてくれたから、頑張ってこれたんだ。
 ・・・・・・衛がいなかったら、こんな風に落ち着いてはいられなかった。
衛のおかげで、・・・・・・エスペリアの事も乗り越えられた。
 だから衛にはとても感謝している」
 ・・・・・・はずなんだけど。
 
「え、いやボクは、その、悠人さんに慰めてもらったから、その・・・・・・悠人さんのことを支えてあげなくちゃ、って思っただけだよ・・・」
 ・・・・・・ここまで衛くんと仲が良いのを見ていると、あまり警戒しようという気がしなくなってくるね。
「それが、とても救いになったんだ。
 衛のおかげで俺は、俺のままでいられた。
 だから、ありがとうな、衛」


706 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:32:57 ID:ryiUKOi3
 
・・・・・・しかし、なんていうのかな。
「う、うん。
 えっと、悠人さんもありがとう」
微妙に居心地が悪いような気がするのだけど。
というか衛くんの頬が、微妙に紅潮しているように見えたんだけど・・・・・・・・・・・・気のせいかな。
 
 
悠人さんと千影ちゃんの自己紹介が終わったところで、悠人さんにお昼ご飯にしよう、と言い出してみた。
 千影ちゃんは、ここにくるまでに色々大変なことがあって、とっても疲れてしまったんだって。
 だから、ハクオロさん達のところに行く前に、丁度いい時間だし色々とお話をしながら、ご飯を食べておきたいといったら、悠人さんも賛成してくれた。
 それで今は映画館の廊下にある椅子に座りながら、少し遅めのお昼ご飯を食べていた。
 スーパーで色々な食べ物をディパックに入れておいたから、千影ちゃんにもわけてあげた、パンだけじゃ力もでないしね。
 それで色々と話をしたんだけど、まず
 
「とりあえず、千影はもう一人の・・・・・・咲耶って子を、探しに行きたいんだと思うんだけど、とりあえず俺と衛もそのつもりだったから、一緒に行動しないか」
 って悠人さんは言い出した。
「と言っても、当てがあるわけじゃないから、一度北にある公園に向かって、仲間達と合流して、そのまま工場に向かう予定になっているんだが」
 とボク達の予定を告げた。
 それを聞いた千影ちゃんは、ちょっと困った顔をになった。
「出来るなら、共に行きたいのだけれど、・・・・・・この近くに仲間がいるはずなんだ。
 ・・・・・・襲撃にあって離れ離れになってしまったけど、名前は呼ばれていないから、無事でいてくれていると思うんだ。
 ・・・・・・衛くんと離れたくはないけどね。
それと・・・・・・・・・・・・いや、なんでもないよ」
 ・・・千影ちゃんにも仲間がいるみたいだ、それじゃあ心配だろうけど、でも折角再会できたのに、別れたくはないよ。


707 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:33:38 ID:ryiUKOi3
そう思っていたら悠人さんが、
「じゃあ、とりあえず伝えないといけない事があるから、一度公園までは行くけどその後、俺と衛、千影でこの近くで人探しをすることにするか。
 衛もそれでいいか?」
 って言ってくれた。
 それはとても嬉しい・・・だけど。
「悠人さん、それは大丈夫なの?」
 ボク達は首輪を外す為に工場に行かないといけないはずなんだけど。
「・・・・・・私としては願ってもないことだけど、本当にいいのかい?」
 千影ちゃんも嬉しそうな反面、不思議そうにしている。
 そう言ったら悠人さんが、
「まあ、瑛理子さんを説得出来ないことにはどうしようもないんだけどな。
 ・・・・・・衛だって折角再会出来たんだから一緒に居たいだろ。
 それに、仲間を探すのは無駄にはならないと思うしな」
 
そう言った後、悠人さんは一息ついて、
「それに、この剣を見える範囲に置いておきたいっていうのもあるんだ」
 と言った。
 
 
正直に言おう、悠人くんの提案はとても嬉しかった。
私も、出来れば衛くんと、悠人くんには同行して欲しいと思っていた。
ただ、その反面、あっさりと承諾してくれた事に意外さを感じていた。
だから判りやすい(?)理由が出たことにむしろ安心を感じた。
「・・・・・・その剣が欲しいのかい?」
 とりあえず「時詠」とは言わず、ただ剣とだけ告げた。
「欲しいってわけじゃないんだけど、なんていうのかな。
 ああ、そうだ、そもそも千影はこの剣をどこで手に入れたんだ?」
 何やらよく分からない答えが返ってきた、
なので
「その剣は私の支給品だけど、それが何だい?」
 普通に答えておいた。


708 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 00:33:40 ID:6ViVJSLy
 

709 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:34:09 ID:ryiUKOi3
支給品・・・・・・か」
 悠人くんは何やら難しそうに考えこんでいる。
 何だかよくわからないけど、とりあえず話を進めてもらうために質問しようとしたとき、
「それがもしかして悠人さんの言っていた、神剣ってものなの?」
 横から衛くんが質問をしていた。
 そしてその質問は、私が聞きたい事に近いものだった。
「ん、ああ、見たことのないタイプの剣なんだが、この剣から感じる力は間違いなく永遠神剣のものだな。
 それで、千影はこの剣について何か知らないか?」
 その、悠人くんの答えは、私にとっては予想外のものだった。
私は、あの神社で出会ったネリネくんのように、悠人くんも永遠神剣を支給されていて、それで時詠を――正確に言えばその魔力を狙っているものだと思っていたのだが、この反応はもしかすると、
「・・・・・・強い力を持っている魔具ということはわかってる。・・・あと永遠神剣第三位「時詠」という名前の書かれた紙が一緒に入っていたよ」
 ・・・「時詠」については知らないようだけど、この神剣について詳しく知っているのかもしれない。
「・・・第三位・・・・・・か、それならこの力も納得いく・・・な」
 そしてその答えで、私は自分の考えが間違っていないと確信した。
「すまないけど、詳しい話をしてもらえないだろうか」

そうして、それはかなえられた。
 悠人くんの語った、異世界ファンタズマゴリアの物語。
 永遠神剣、エトランジェ、スピリット、マナ、ドラゴン、魔法、そういった様々な神秘が織り成す物語。
 それは、私にとっては――苦労したらしい悠人くんには悪いけど――とても楽しいと思う話だった。
 魔法という力が日常的に存在して、空想の中の生き物が生きていて、人々が皆そのことを知っている世界とは、なんて心が躍る世界だろう。
 そして悠人くんは「時詠」の事を警戒しているということで話は終わった。
その、とても楽しい話ではあったけど、一つ気になることがあった。
「その話を聞いた限りだと、私がこの「時詠」の契約者ということになるのかな」
 神剣の力を使うには、スピリットかエトランジェが神剣と契約しなければならないらしい(スピリットの方は生まれながらに契約しているらしいが)
 つまり、「時詠」の力を使った以上、契約者は私ということになる。


710 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 00:34:12 ID:6ViVJSLy
 

711 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:34:44 ID:ryiUKOi3
だが、
「・・・千影が契約者・・・のわりには、その、あまり強くなかったような気がしたんだけど」
 と、失礼な答えが返ってきた。
「ああ、そういえば力が使えるなら、剣の声が聞こえるはずなんだが」
 ・・・剣の・・・・・・声?
「・・・・・・この剣は喋るのかい?」
 これだけの力があるのだから喋るくらいはしてもおかしくないのだけど、剣が喋るというのは微妙に想像し辛いね。
「ああ、喋るといっても他人には聞こえないけどな。
第三位というくらいなら、普通に人格があるはずだと思うんだけど。
それで「マナを・・・マナをよこせ」とか「妖精を犯せ・・・マナを奪え」とか言ってこないのか?」
 ・・・・・・たとえ喋れるのだとしても、そんな声は聞きたくないね。
 見ると、隣で衛くんも顔を真っ赤にしている。
 それで漸く悠人くんも失言だった事に気づいたらしい。

 少しの間、痛い沈黙が流れた。
 が、衛くんが頑張って声を上げた。
「ひょっとして、誰でも使えるんじゃないの?」
「・・・・・・それは、ありそうではあるんだけどな・・・そうなると俺は何のために・・・・・・・・・・・・いやいい」
 その内容は大分悠人くんにはキツイようだった。
 だが、まあデリカシーに欠ける相手を慰める気は無い。
「そういえば、神社で襲撃してきた相手も神剣を使っていたよ。
彼女が言うには魔力を込めれば力が使えるらしい。
名前は確かネリネくんに「献身」と言ったかな」
なので追い打ちをかけておいた。



712 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:36:55 ID:ryiUKOi3
「・・・「献身」ってことは緑色の槍で、持ち主は耳のとがった女の子じゃなかったか」
 しかし失敗した。
「そうだけど、知っているのかい?」
 だがまあ重要な話なので答えておく。
「ああ、俺と衛もその子と仲間に襲われたんだ。そのときは「献身」っていう確証はなかったんだけど」
 どうやらかなりの危険人物らしい、よく無事だったものだ。
 トウカくんも大丈夫だろうか。
「なら、試しに悠人さんが使ってみたらいいんじゃないの?」
 そこに衛くんが追撃をかける、まあ本人にその気はないのだろうけど。
「そうだね、私も「時詠」の事をもう少し詳しく知りたいしね」
 という本心もあったので同意しておいた。
 それを聞いて悠人くんは微妙な表情をしていたけど、
「まあ、それが一番解りやすい方法だな」
 重要な事なので、駄々は捏ねなかった。
 
 
「さて、食事も終わったし、早速試してみるか」
と言って悠人さんが立ち上がった、
その後の話で、千影ちゃんの仲間の人は、ハクオロさんの知り合いのトウカっていう人だって判った。
羽みたいな耳らしいから間違いないと思う。
それで食事も終わって、「時詠」を使ってみることになった。
でもその前に気になる事が一つ。


713 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 00:37:08 ID:6ViVJSLy
 

714 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:37:30 ID:ryiUKOi3
「悠人くん・・・まだニンジンが残っているようだけど」
 先に千影ちゃんが言ってくれた。
「あー、その、なんだ、これはな」
 その悠人さんの反応はとても解りやすかった。
 つまり、
「悠人さん・・・ニンジン嫌いなの?」
 ということ。
「いや、その嫌いというわけじゃあないんだけどな、その、なんていうか苦手なんだよ」
 なんて子供みたいな言い訳をした。
 それが何となく可愛かったので
「だめだよ悠人さん、好き嫌いをしたら大きくなれないよ」
 からかってみた。
「・・・・・・今は、好き嫌いを言っていられる状況ではないと思うけどね」
 千影ちゃんも、味方をしてくれた。

――因みに、この食べる食べないの騒動で彼らは30分以上の時間を費やした――

「さて、それじゃあやってみるか。 衛、千影、一応離れておいてくれ」
 悠人さんのニンジン騒動もおさまって、いよいよ「時詠」を試してみることになった。(ニンジンがどうなったのかはヒミツだよ)
 それでなにがあるか分からないので、千影ちゃんと一緒に離れておくことにした。
 それで十分に距離をとったところで
「・・・・・・「時詠」よ・・・力を」
 と悠人さんが言った。
 その瞬間、悠人さんの姿がテレビみたいに、一瞬ぶれた・・・・・・ような気がした。
 と思ったら次の瞬間、
 
 悠人さんの正面、廊下とホールの壁がバラバラになった。


715 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 00:38:15 ID:6ViVJSLy
 

716 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 00:39:52 ID:WVmXlZ5R


717 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 00:40:37 ID:tcuBvj2P
.

718 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 00:41:03 ID:6ViVJSLy
 

719 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 00:42:17 ID:tcuBvj2P
,

720 :代理◇/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:50:09 ID:6ViVJSLy
「・・・・・・すごい」
 なにがあったのかわからないけど、一瞬で壁にあんな大きな穴を開けるなんて、テレビでみたバズーカーでもなければ無理だと思う。
 それをあんな小さな剣でなんて。
「・・・「タイムアクセラレイト」・・・まさかこれほどのものとはね、恐ろしいほどの力だね」
 千影ちゃんもとても驚いているみたいだった。
 これなら、多分どんな人が相手でも、何とかなると思う。
 
 けど、そこで悠人さんが動かない事に気づいた。
「・・・? どうしたんだい、悠人くん?」
 千影ちゃんも気になったみたいなので、二人で悠人さんのそばによっていった。

721 :代理◇/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:50:42 ID:6ViVJSLy
・・・・・・衛と千影が近寄って来た事で、俺はようやく緊張を解いた。
「どうしたの、悠人さん」
 ・・・・・・ここで下手な反応を返すわけにはいかない。
「ん、いや、今のは実は失敗なんだ」
 なので、緊張している間に考えていた言い訳をすることにした。
「失敗? とてもそうは見えなかったけど」
「いや、俺は千影が言っていた能力を使うつもりだったんだけど、全然使えなくて、あげくマナだけが飛び出してあんなことになったんだ」
「え、でもあれはあれで成功に見えるけど?」
「衛・・・あれは制限出来ない爆弾みたいなものだ、危険すぎる。
 ・・・・・・それぞれのスピリットの色ごと得手不得手があるみたいに、俺と「時詠」は相性が悪いんだと思う。
 千影のほうが制御できる分、使いこなしているんじゃないかな」
 
 そう言って、千影のほうに向いて、「時詠」を差し出す。
「・・・・・・威力では俺のほうが上だけど、危険すぎるからな。
 千影が持っていたほうが役に立つんじゃないかな」
 それを聞いて千影は少し考えていたようだった。
「だけど、使いようによっては役に立つのではないかな・・・」
「ん・・・それもそうだな、じゃあ危険な相手がいたときは、千影に借りる、ってことでいいか」
 そうして待つこと数秒、千影は「時詠」を手に取った。
「うん・・・じゃあ私が持っていよう」

 千影が「時詠」を手にしてから数秒たって、俺は二人に気付かれないように息を吐き出した。
(何とか誤魔化せたか・・・)
 悠人は途方も無い恐怖を感じていた。
 暴走? そんなものではない。


722 :代理◇/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:51:39 ID:6ViVJSLy
悠人は「完全」に「時詠」の力を引き出したのだ。
 
目の錯覚にしか見えないほどの一瞬、「時間を加速し」、壁に無数の斬撃を放ち、元の場所に戻ったのだ。
 だが、
(あれは・・・危険すぎる。 あれを使えばこの島に敵なんて存在しない。
 それは間違いない。
 けど)
 あの瞬間、剣は莫大なマナを要求した。
 恐らくもって数分、それで悠人のマナは尽きる。
 だが、恐ろしいのそんなことではない。
 マナが尽きて、それで悠人が消えるというなら、悠人は「時詠」を持ち続けただろう。
 しかしその程度ではない。
(俺は多分、アセリアのような・・・いやもっとまずい)
 悠人は恐らくこの島にいる全ての人間を殺しつくし、マナを奪うだけの存在になる。
 敵も味方も関係ない、そもそもそうなった悠人にとって敵など存在しない。
 あるのは微小な魔力の塊のだけになる。
(俺と、多分アセリアの二人、体がマナで出来ている人間は、あの剣を持ってはならない)
 そう結論付けた
 
しかし、悠人の苦悩はその程度では終わらない。
(もし、もしだ、仮に「時詠」の力を使うしかないとなったら・・・・・・俺はどうすればいい)
 使わなければ、衛や千影が死ぬ。
 だが、使ってしまえばこの島の全ての人間が死ぬ可能性が生まれる。
(そうなった時、俺は・・・・・・・・・・・・・・・・・・)


723 :代理◇/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:52:45 ID:6ViVJSLy
【D-3 新市街・映画館/1日目 午後】

【千影@Sister Princess】
【装備:永遠神剣第三位『時詠』@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【所持品:支給品一式 バーベナ学園の制服@SHUFFLE! ON THE STAGE
     銃火器予備弾セット各100発(クロスボウの予備ボルトのみ残数80/100)、バナナ(フィリピン産)(2房)
     倉成武のPDA@Ever17-the out of infinity-】
【状態:左肩重傷(治療済み)、肉体的疲労大、魔力消費大、時詠使用による虚脱感、スカートに裂け目、精神的疲労小】
【思考・行動】
 基本行動方針:ゲームには乗らないが、襲ってくるものには手加減しない。時詠の能力使用は極力控える
 0:失敗? そんなはずは・・・ 
1:衛くん……何だか仲が良いね。
 2:咲耶を探し出して守る
 3:永遠神剣に興味
 4:北川潤、月宮あゆ、朝倉純一の捜索
 5:魔力を持つ人間とコンタクトを取りたい
 6:『時詠』を使って首輪が外せないか考える

※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※トウカの事は確実に信用できると評価しました。
※時詠を使用すれば首輪を外せるんじゃないかと考えています(ただし可能性は低いと考えています)
※千影は『時詠』により以下のスキルが使用可能です。 但し魔力・体力の双方を消耗します。
 タイムコンポーズ:最大効果を発揮する行動を選択して未来を再構成する。
 タイムアクセラレイト…自分自身の時間を加速する。他のスキルの運用は現時点では未知数です。 詳しくはwiki参照。
 またエターナル化は何らかの力によって妨害されています。
※未来視は時詠の力ではありません。
※銃火器予備弾セットが支給されているため、千影は島にどんな銃火器があるのか全て把握しています。
 見た目と名前だけなので銃器の詳しい能力などは知りません。

724 :代理◇/Vb0OgMDJY :2007/08/19(日) 00:54:03 ID:6ViVJSLy
※倉成武のPDA
 情報携帯端末。簡単に言えばネット通信機能搭載の超小型パソコン。携帯電話も内臓されている。
 また、静電充電機能で身に着けて歩行などすれば充電可能。ちなみに完全防水である。
※ネリネを危険人物と認識しました
※四葉とオボロの事は衛と悠人には話してません(衛には話すつもりは無い)
※オボロの事があったので悠人を一応警戒しておく・・・のだがその気はほとんどない。


偵察チーム】
【思考、行動】
基本方針1:襲撃者の北上につき急遽予定変更。映画館へ立ち寄ったあと、北上しD-2エリアの公園に移動し首輪チームと合流。
基本方針2:その後、トウカを探すため島の中央部へ。
基本方針3:映画館、学校、神社、新市街を経由して参加者の捜索、情報収集を行いながら15時までに工場へ。
ただし時間の経過によっては何箇所か立ち寄らずに、時間までに工場に着くことを優先。

思考1:映画館からD-2の公園へ移動し、ハクオロ達3名と合流。今後について話し合う
思考2:有益な情報を集める、特にタカノの事を知ると思われる4人を重視。また、可能なら鳴海孝之が持っているというノートパソコンを入手。
【備考】
※ハクオロ、観鈴、瑛理子と協力状態。
※北へ向かった車の襲撃者を警戒。探索はキャンセルし、映画館でメモの件を終えたら再度北上してD-2の公園にて三人と合流。
※D-2が禁止エリアに指定された場合は映画館、C-3北のスーパーで合流。
※工場にハクオロ達が居ない可能性も考慮。その場合レジャービル、プラネタリウムの順に移動。
※首輪の盗聴と、監視カメラが存在する可能性を知りました。
※禁止エリアについて学びました。(禁止エリアにいられるのは30秒のみ。最初は電子音が鳴り、後に機械音で警告を受けます。)
※島内部の電話が使える事を知りました(現在、レジャービルの電話番号を知ってます)。
※車の一団はゲームに乗った者が徒党を組んでいると思ってます。

725 :代理投下:2007/08/19(日) 01:28:05 ID:tcuBvj2P
【高嶺悠人@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【装備:今日子のハリセン@永遠のアセリア、トウカの刀@うたわれるもの、ベレッタM92F(9mmパラベラム弾14/15+1)】
【所持品:支給品一式×3、バニラアイス@Kanon(残り9/10)、ベレッタM92F(9mmパラベラム弾15/15+1)、
予備マガジン×7、暗視ゴーグル、FN−P90の予備弾、電話帳】
【状態:精神状態は普通、疲労軽程度、左太腿に軽度の負傷(処置済み・歩行には支障なし)、「時詠」に対する恐怖】
【思考・行動】
基本方針1:衛と千影を守る
基本方針2:なんとしてもファンタズマゴリアに帰還する
0:俺はどうすれば……。
1:北上した襲撃者を警戒。三人が心配。
2:アセリアと合流
3:咲耶を含む出来る限り多くの人を保護
4:ゲームに乗った人間と遭遇したときは、衛や弱い立場の人間を守るためにも全力で戦う。割り切って容赦しない。
5:ネリネをマーダーとして警戒
6:地下にタカノ達主催者の本拠地があるのではないかと推測。しかし、そうだとしても首輪をどうにかしないと……
7:エスペリアを殺した相手を積極的に探すつもりはない、但し出会ったら容赦するつもりはない
8:涼宮茜については遙の肉親と推測しているが、マーダーか否かについては保留。

【備考】
※バニラアイスは小型の冷凍庫に入っています。
※衛と本音をぶつけあったことで絆が強くなり、心のわだかまりが解けました。
※上着は回収しました。
※レオと詩音のディパック及び詩音のベレッタ2丁を回収しています。
※遺体を埋葬、供養したことで心の整理をつけました。
※ハクオロとの会話でトウカをマーダーでないと判断、蟹沢きぬについては保留
※エスペリアを殺した相手を殺すつもりは(一応)ない
※原作の四章、アセリアルートから連れてこられた、アセリアはハイロゥが黒く染まった(感情が無い)状態だと思っている
※千影から、ネリネの名前を聞きました



726 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:28:36 ID:tcuBvj2P
【衛@Sister Princess】
【装備:TVカメラ付きラジコンカー(カッターナイフ付き バッテリー残量50分/1時間)】
【所持品:支給品一式、ローラースケート、スーパーで入手した食料品、飲み物、日用品、医薬品多数】
【状態:精神状態は正常、疲労軽程度】
【思考・行動】
基本方針1:死体を発見し遙や四葉の死に遭遇したが、ゲームには乗らない。
基本方針2:あにぃに会いたい
基本方針3:これからは自分も悠人さんの支えになってあげたい
0:悠人さん……なんか様子が。
1:プラネタリウムで別れた三人が心配。
2:悠人の足手まといにならぬよう行動を共にする。
3:咲耶にも早く会わなきゃと思う。
4:ネリネをマーダーとして警戒。
5:鳴海孝之という人を悠人と共に探して遙が死んだことを伝える。

【備考】
※悠人の本音を聞いた事と互いの気持ちをぶつけた事で絆が深まりました。
※遙を埋葬したことで心の整理をつけました。
※瑛理子から、鳴海孝之の情報を得ました。
※TVカメラ付きラジコンカーは一般家庭用のコンセントからでも充電可能です。充電すれば何度でも使えます。
※ラジコンカーには紐でカッターナイフがくくりつけられてます。
※スーパーで入手した食料品、飲み物は二日程度補給する必要はありません。
※医薬品は包帯、傷薬、消毒液、風邪薬など、一通りそろっています。軽症であればそれなりの人数、治療は可能です。
※日用品の詳細は次の書き手さんにまかせます。


727 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:45:40 ID:aNQ8uBar
タイトル 『戦の前。』


「あれから10分、動きはありませんね……」

ホテルのコントロール室に戻ったネリネは、室内の照明を落とし防犯カメラモニターと
システム制御用コンピュータのディスプレイを交互に見て各階の状況を監視していた。
だが、いずれの階にも動きは無い。
やはり自分以外の人間はこのホテルにいないのだろうか……。

(そんなことは無いはずです。これだけの規模ならば休息の場として何人かがすでに
隠れていると考えるべきでしょうね)

だが、客室から誰かが出てくる様子は無い。
これだけの客室があるホテルならどこかの階の廊下に誰かの姿が映ってもいいはずだ。

「もし出てこられないのでしたら……いやでも出てきていただきましょうか」

そう言うやネリネは制御コンピュータの空調を受け持つ一台のマウスを握り、
マニュアルにあったとおりの操作を行ないはじめた。

数分後、ネリネは全ての作業を終えたのか再び監視モニターの前にある椅子へ座り、
モニターを眺める。

「これで、嫌でも出てくることになりますよ……」

728 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:46:46 ID:aNQ8uBar
ネリネが操作した空調制御コンピュータの画面上にはどのエリアの空調がON/OFF
のいずれになっているのか表示されている。
その画面をよくみると、客室の空調部分は全て「OFF」の文字を表示していた……。

どれほど冷房がきいていたところで、遠隔操作で空調のスイッチを切られては、客室の
中は蒸し風呂状態となるだろう。
そうなったら、客室内にいる者達は皆暑さに耐え切れず廊下に出てくるのは確実だ。
客室内の窓を開けるという方法もあるだろうが、コントロール室にあったマニュアルに
よると、このホテルの客室階については基本的に事故防止の為、窓を開けると客室から
このコントロール室に警報が飛んでくる仕組みになっているそうだ。

つまり、客室にいる人間はどんな行動をしても、ネリネに自分の居場所を知られる事に
なるのだ。
ネリネは自分からホテル内をしらみ潰しに調べることもなく一直線に目的地へ向かえば
それで事足りるというわけだ。

「情報を制するものは戦場を制する。という言葉がありましたね……」

コントロール室の鍵を握り締めるネリネはそう呟く。

「このホテルという戦場の情報を握っているのは私……。つまり、この
ホテルに限れば、勝者は私をおいて他にいないでしょう」

美しくオレンジに染めた髪をポニーテールにまとめたネリネは、そこで言葉を切ると
モニターの一つに注目する。

遂に先客が動いた。

729 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:47:25 ID:TupQdXIn
.

730 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:47:56 ID:TupQdXIn
.

731 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:47:56 ID:aNQ8uBar
「あぢぃ……。一体どうなっていやがる?」

同じ頃、先客である大空寺あゆと時雨亜沙の両名は極めて不快だった。
特にあゆの方は、客室備え付けの冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを消費し、
ベッドの上に寝転んでいたが、やはり暑さには耐えられないのか空調用のリモコンを
しきりに操作し始めた……。



ここで幾らか時間をさかのぼると、シャワーを浴び終わったあゆがようやくの事で泣き
止んだ亜沙から第一回の放送で呼ばれた禁止エリアその他もろもろについて聞き出した。
もっともそれは「情報交換」というよりも、あゆによる一方的な亜沙に対する質問攻めと
でも称すべきものだったが。

そもそも、あゆの方は持っている情報が少なかった事もある。

あゆは開始からごく短時間、相沢祐一と行動を共にした他は亜沙達と出会うまでの間
ずっと単独行動をとっていたし、他の出来事といえば若い男が女の子を殺して埋めて
しまおうとしているのを目撃したぐらいだ。

亜沙の方は泣き止んだものの、まだ楓の死というショックから抜け出せてないのか、
あゆの質問には素直に答えるものの、あゆからの情報については生返事を返すばかりで
あった。

(とりあえず禁止エリアがわかっただけでも収穫かね)


732 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:48:27 ID:TupQdXIn
.

733 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:48:41 ID:aNQ8uBar
情報交換を終えたあゆの感想というのは以上のようなものだった。
禁止エリアがわかった以上は移動の上で色々と厄介ごとが少なくなる。

一方、魔法を使える参加者がいるという話についてはそれほど信用していない。
亜沙の話によると、少し前に一ノ瀬ことみが話したとおり、彼女が一緒に行動していた
という恋太郎という男の失明を魔法で治療したとのことだが、その恋太郎も先ほどの
放送で名前がよばれた以上、真実を確かめる事もできないからだ。

(あのことみとかいうヤツはともかく時雨が嘘をついているとは思えないけど、実際に
目の前で見るまでは魔法がどうとかいう話は信用できないさ……)

そして彼女が亜沙から聞いたもう一つの情報、一ノ瀬ことみに関する情報とここまでに
到る一連の出来事。
むしろあゆにとって重要なのは、こちらの方だったと言える。

亜沙がことみと恋太郎に四葉の三人と出会ってから、仲間だった四葉という少女が
ハクオロという人物に殺された上、その場に現われた大石という男の撃った銃が暴発し
恋太郎がその為に失明したこと。

更にその後、彼女の後輩であるというネリネという少女と一戦交えた後、恋太郎の目を
魔法で治療したことで魔力と体力を消耗して気絶してしまい、あゆと佐藤良美が現われ
る直前まで眼を覚まさなかったというところまでのほぼ全てを聞く事ができた。

734 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:48:58 ID:TupQdXIn
.

735 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:49:15 ID:aNQ8uBar
(気絶するまでの話は、あの一ノ瀬ことみが言っていたのとほぼ同じということか)

魔法云々についてはやはり信用できないが、四葉という子を殺したのがハクオロという
人物であり、他にネリネという亜沙の後輩が危険人物であると判明したのだから、結果は
上々というところか。

気絶していた間の出来事については覚えてなくて当然だが、そうなるとその間に起こった
「恋太郎の殺害」と「彼を殺したのは(先ほどの放送で名前が流れた)芙蓉楓」という
一ノ瀬ことみの発言には彼女の証言のほかにそれを証明できる人物がいないということに
なる。
なにより、亜沙は芙蓉楓のことを「虫も殺せない」と言っていたではないか。

(こりゃますますクロってことかね……。時雨が殺されなかったのは多分あの性格と気絶
していたからか……まぁ、気絶している人間を運んで殺すのは一苦労だろうさ)

真相はどうであれ、他に証人がいない以上最も怪しいのはことみということになる。
それがあゆの出した結論であった。

(でも、何か忘れてないか?)

あゆはそこまで考えて何か思い出そうとする。
どうしても心の奥底に引っかかることがあったのだ。

部屋の空調が切れたのは丁度その時のことであった。

736 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:49:38 ID:TupQdXIn
.

737 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:49:55 ID:aNQ8uBar
そして話は再び今に戻る。

「あ〜〜〜〜〜、まったくどうなってんのさ!」

空調用のリモコンを操作しても一向に冷風が流れてこないことに腹を立てたあゆは
とうとうリモコンを放り出すと、床にあったディパックを手にすると扉の方に向かう。

「あ、あゆちゃんどこ行くの?」
「ルームチェンジするのさ。時雨、アンタもこんな蒸し風呂みたいなところにいたら
体力も回復しないし、ついて来た方がいいさ」
「うん、そうだよね……」

確かに空調が止まってから部屋の温度は急速に上昇していった。
亜沙にすれば窓を開けて換気すれば済む事と思ったが、それはあゆに止められたからだ。

「窓を開ければ警報が出るらしい、そうなったらこっちの居場所を他の連中に知らせる
事になっちまう。止めといた方がいいさ」

あゆが彼女に言った言葉である。

結局、亜沙もあゆの後を追って少しだけ名残惜しそうにロイヤルスィートルームをあとにする。

「ほらな、やっぱりあの客室のエアコンは壊れちまったのさ」

二人が客室階の廊下に出ると、そのは入室前と変わらず涼しい風が流れていた。
あゆにしてみれば最上階の客室は全て最高級のロイヤルスィートであるから、少し前まで
滞在していた部屋が駄目なら他の部屋に移ればいいだけのことだった。

だが、二人は気付いていない。
自分たちの姿が廊下に出たところで監視カメラによって捉えられ、その画像がコントロール室の
モニターへ映し出されているということに。

738 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:50:08 ID:TupQdXIn
.

739 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:50:27 ID:6ViVJSLy
 

740 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:50:39 ID:TupQdXIn
.

741 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:50:44 ID:aNQ8uBar
「先客は、時雨先輩でしたか……」

モニターに映る二人の姿を見たネリネはそう呟く。
確認できたのは、亜沙と金髪の見知らぬ少女。
多分、途中で合流したのであろうが、その一方で亜沙と戦った時一緒にいた男と少女の
姿が見当たらない。

(もし、時雨先輩達をおいてホテル内を探索しているなら、残る二人がここに来る可能性も
ありますね)

ならば、両者が合流する前に各個撃破するのがいいだろう。
そう考えたネリネが、その残る二人が何処にいるのかと他のモニターへ目を向けた時、
ホテル外周の監視モニターがこちらに向かってくる人物を映し出す。

モニターに映し出されたその人物にネリネは見覚えがあった。

「なるほど、館内ではなく外にいたのですね」

モニターに映っているのは少女が一人、男の姿は見えない。
大方更に外で二手に分かれて外周を見回っているのか、或いは探索しているのか。
どっちにしろ単独行動しているのなら、倒しやすくなる。

そう思ったネリネはもう一度モニターで相手の位置を確認すると、ディパックを手にして
コントロール室を後にする。
もちろん、鍵をかけるのは忘れずに。

742 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:51:05 ID:6ViVJSLy
 

743 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:51:10 ID:TupQdXIn
.

744 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:51:31 ID:aNQ8uBar
(朋也くん……)

その頃、自失状態となったことみはどこへともなく歩き続けていた。
坂上智代にとってもそうであった様に、岡崎朋也の死は彼女の精神に大きすぎるダメージを
与えていた。
それゆえに彼女は今、頭がまるで回らず自分がどこをどう歩いているのかも判らない
まま、このホテルの近くにまで来ていたのである。

だが、彼女はホテルの存在に気付いてないのか、ホテルの側を素通りする格好で南へと
歩き続ける。
まるで夢遊病者のような歩調で。

(おかしいですね。どういうことでしょうか?)

一方、ホテルの外に出てことみの後をつけていたネリネは、その様子がおかしい事に気付いた。
相手がサブマシンガンを持っていることから足音を立てぬよう慎重に近づきつつ様子を伺って
いたが、ことみの歩みがひどく機械的なものである事に気が付いたのだ。

それに加えて、ホテルの横を素通りするような歩き方。
もし外周を探索、監視しているのならばホテルの方を振り返ってもいいのにそんな様子も
感じられない。

何より周囲の様子に注意する様な感じも無い。

745 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:51:43 ID:TupQdXIn
.

746 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:52:21 ID:TupQdXIn
.,

747 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:52:22 ID:aNQ8uBar
(どんどんホテルから遠ざかりますね……。どうしましょう?)

ことみの明らかに変な様子を見ながら、ネリネは思案する。
このまま彼女の後をつけてホテルを離れるのも限度がある。
それに、もう一人行方のわからないあの男がホテルに戻って亜沙達と合流する可能性も
捨てきれないし、今彼女が向かっている先にいる可能性もある。

(ならば、ここで襲った方がいいでしょうね。それに……あの武器は惜しいです)

ネリネの視線はことみの右手に握られたイングラムM10に向けられる。
あれがあれば、今まで以上に戦いやすくなるだろう。
しかも、それなりの時間をかけて追跡したが、彼女はこちらに気付く様子も無い。

仕掛けるならば今しかないだろう。
そう考えたネリネは隠れていた木陰から一気に飛び出し、ことみの背後に迫る。

そして、手にしていた“献身”の柄でことみの後頭部を思いっきり殴りつけたのである。

一方、殴られたことみは遂に最後までネリネの方を振り返ろうとはしなかった。
殴られるやイングラムを取り落とし、後頭部に右手をあててうつ伏せに倒れ、そのまま
気絶してしまったのである。

「ここまで上手くいくと、なんだが拍子抜けしますね……」

地面に落ちたイングラムを拾い上げ、ことみの持っていたディパックを回収したネリネは、
まだ倒れたままのことみを見下ろしながら呟く。

748 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:53:35 ID:aNQ8uBar
背後からの一突きで仕留めなかったのは血の臭いで他の参加者を呼び寄せたくなかったからである。
シャワーを浴びてから気付いた事だが、やはり血の臭いというのは時間が経ってもかなり臭うものだ。
それなら、心臓への一突きよりもむしろ打撃によって気絶させた方がいいというもの。
ネリネの判断はそういうものだったのである。

「さて、どうしましょうか?この方を」

ネリネは“献身”をことみの後頭部へむけたまま考える。
本来の目的からすれば、ここで後腐れなく殺してしまうのが普通。
だが、武器をとりあげた以上は抵抗されても簡単に排除できるだろう。
それに、あの男がいつこちらに来るかわからないというのもある。

(死体を発見してホテルに戻られるより、負傷したこの少女を介抱するのに時間を潰してくれれば、
こちらとしても時間稼ぎができますね)

時間稼ぎというのは、勿論ホテル内にいる亜沙ともう一人の少女を始末する為の時間である。

(ですが……、ここに転がしておいてはすぐ発見されますし……)

それならばとネリネはことみの背中、その首根っこを掴むとズルズルと茂みに引きずり込んだ。
ここだったらまず見つかることはないだろう。

(本来なら殺しているところですが、今回だけはこの銃に免じて見逃してさしあげますわ)

ことみを一瞥したネリネはその場から足早に離れ、ホテルへと戻っていった。

749 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:54:05 ID:6ViVJSLy
 

750 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:54:45 ID:aNQ8uBar
コントロール室に戻ったネリネはすぐに奪い取ったディパックの中身を確認する。
入っていたのは支給品一式にイングラムの予備マガジンが4本、オレンジ色のジャムと
さらにもう一つのディパック。
そして最後に『参加者の術、魔法一覧』とタイトルのついたファイルが出てきた。

(これはまた……すごいものですね)

そのファイルを開いたネリネは思わず笑みをこぼす。
ファイルにはタイトルに違わず、参加者の使う術や魔法に関してが細かく記されている。
リストの中で魔法を使えるものを倒して魔力を奪いとれば、自分の魔力を回復するのも
容易いだろう。

「それならば、まず最初は時雨先輩の魔力をいただきましょうか」

そう言ったネリネはディパックからウィンドブレーカーを取り出すとそれを私服の上に
羽織る。
せっかく着替えた服をまた血で汚すのはいい気がしないし、なにより変装にもなる。

既に髪を染め、髪型も変えたのだから亜沙といえどもそう簡単に今の自分の姿をみて、
ネリネその人であると見破る事は出来ないであろう。

そして、武器類を除く他の支給品を一つのディパックにまとめたネリネは再び制御コンピュータの
前に座り、再び制御システムの操作を開始したのである。

751 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:55:03 ID:tcuBvj2P
,

752 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:55:36 ID:TupQdXIn
.

753 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:55:39 ID:6ViVJSLy
 

754 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:55:40 ID:aNQ8uBar
【ネリネ@SHUFFLE】
【装備:永遠神剣第七位“献身” コントロール室の鍵、ホテル内の見取り図ファイル】
【所持品1:支給品一式 IMI デザートイーグル 9/10+1 IMI デザートイーグル の予備マガジン10 九十七式自動砲 弾数2/7
S&W M37 エアーウェイト 弾数1/5 出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 コンバットナイフ イングラムM10(9ミリパラベラム弾17/32)
イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×4】
【所持品2:支給品一式  トカレフTT33の予備マガジン10 洋服・アクセサリー・洗髪剤いずれも複数、食料品・飲み物多数】
【所持品3: 朝倉音夢の生首(左目損失・ラム酒漬け) 朝倉音夢の制服 桜の花びら】
【所持品4:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』、四葉のデイパック】
【状態:肉体的疲労はほぼ解消・魔力消費中、腹部に痣(消えかけ)、左腕打撲、右耳に裂傷、左足首に切り傷、非常に強い意志】
【思考・行動】
1:ホテルにやって来る者、あるいは既にいる者を監視。発見次第、稟以外は皆殺しにする(当面の標的は亜沙とあゆ)
2:稟を探す。その途中であった人間は皆殺し。知人であろうとも容赦無く殺す(出来る限り単独行動している者を狙う)
3:ハイリスク覚悟で魔力を一気に回復する為の方法、或いはアイテムを探す
4:トウカを殺し、楓の仇を討つ
5:純一に音夢の生首を浸したラム酒を飲ませ、最後に音夢の生首を見せつけ殺す
6:つぐみの前で武を殺して、その後つぐみも殺す
7:亜沙の一団と決着をつける
8:桜の花びらが気になる
9:稟を守り通して自害
10:最悪、稟が死亡した時は稟の遺体を持ち帰るために優勝を目指す。

755 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:55:43 ID:tcuBvj2P
,

756 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:56:20 ID:TupQdXIn
.

757 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:56:26 ID:tcuBvj2P
,

758 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:57:01 ID:aNQ8uBar
【備考】
現在は髪を鮮やかなオレンジに染め、髪は赤いリボンでポニーテールにしています。
私服(ゲーム時の私服に酷似。ただし高級品)に着替えました。(汚れた制服と前の私服はビニールに包んでデイパックの中に)
ネリネの魔法(体育館を吹き飛ばしたやつ)は使用不可能です。
私服の上からウィンドブレーカーをはおっています。
※これはネリネは魔力は大きいけどコントロールは下手なので、 制限の結果使えなくなっただけで他の魔法を使えるキャラの制限とは違う可能性があります。
※永遠神剣第七位“献身”は神剣っていってますが、形は槍です。



※永遠神剣第七位“献身”は制限を受けて、以下のような性能となっています。
永遠神剣の自我は消し去られている。
魔力を送れば送る程、所有者の身体能力を強化する(但し、原作程圧倒的な強化は不可能)。
魔力持ちの敵に突き刺せば、ある程度魔力を奪い取れる。
以下の魔法が使えます。

759 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:57:12 ID:tcuBvj2P
,

760 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:57:39 ID:6ViVJSLy
 

761 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 01:57:59 ID:TupQdXIn
.

762 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 01:59:01 ID:aNQ8uBar
尚、使える、といってもウインドウィスパー以外は、実際に使った訳では無いので、どの位の強さなのかは後続の書き手に委ねます。
アースプライヤー  回復魔法。単体回復。大地からの暖かな光によって、マナが活性化し傷を癒す。
ウィンドウィスパー 防御魔法。風を身体の周りに纏うことで、僅かな間だけ防御力を高める。
ハーベスト     回復魔法。全体回復。戦闘域そのものを活性化させ、戦う仲間に力を与える。



※古手梨花を要注意人物と判断(容姿のみの情報)
※音夢とつぐみの知り合いに関する情報を知っています。
※音夢の生首はビニール袋へ詰め込みラム酒漬けにした上、ディパックの中に入れてます。
※魔力が極端に消耗する事と、回復にひどく時間がかかる(ネリネの魔力なら完全回復まで数日)という事に気が付きました。
※トウカと、川澄舞(舞に関しては外見の情報のみ)を危険人物と認識しました。
※千影の“時詠”を警戒。ただし“時詠”の能力までは把握していません。
※魔力持ち及び永遠神剣の持ち主を献身で殺せばさらに魔力が回復する仮説を思いつきました。
※ある程度他の永遠神剣の気配を感じ取れます。
※桜の花びらは管理者の一人である魔法の桜のものです。
※見取り図によってホテルの内部構造をかなり熟知しています。
※現在、コントロール室の鍵は内側からかけられています。
※回収したディパックは武器を入れたものに丸ごと突っ込んで移動に支障が無いようにしています。

【D-5 ホテル1階コントロール室 /1日目 午後】 (入力し忘れておりましたが、ネリネの現在位置はコレです(汗))

763 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 02:00:10 ID:aNQ8uBar
【D-5 ホテル(最上階・ロイヤルスイート/1日目 午後】



【大空寺あゆ@君が望む永遠】
【装備:S&W M10 (2/6) 防弾チョッキ】
【所持品:予備弾丸17発・支給品一式 閃光弾セット(発煙筒(白)x1 催涙弾x1)】
【状態:肋骨左三本骨折・右一本骨折、肉体的疲労軽度】
【思考・行動】
0:空調のきいた部屋へルームチェンジする
1:当面の目的地を決める(ホテルに留まる気持ち大)
2:なるべく神社方面には行かない
3:良美を警戒
4:一応殺し合いに乗るつもりはない

【備考】
※亜沙から第一回放送の禁止エリアについて聞きました。
※赤坂が遥を殺したかもしれないと疑っています(赤坂と遥の名前は知りません)
※ことみが恋太郎を殺害したと判断しています
※亜沙を信用。ことみが人殺しという疑惑が強まっています。良美も危険人物として警戒。
※ハクオロを危険人物と認識。
※閃光弾セット
発煙筒(白)二本と催涙弾一本、閃光弾一本のセット。

764 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 02:00:47 ID:aNQ8uBar
【時雨亜沙@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【装備:無し】
【所持品:支給品一式、C120入りのアンプル×8と注射器@ひぐらしのなく頃に】
【所持品2:イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×4、ゴルフクラブ】
【状態:悲しい、体力限界(少し回復)、精神的疲労大、魔力消費大。左肩軽傷。ロングヘアー】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:楓……
2:ことみを心配
3:ネリネを止める
4:可能ならば稟と合流
5:同志を集めてタカノたちを倒す

【備考】
※あゆを信用。ことみと微妙なすれ違い。良美に対しては困惑の感情。
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※楓が恋太郎を殺したという事実を認める事が出来ていません
※C120は『雛見沢症候群』治療薬だが、健常者に使用すると10分以内に全身の発疹、発熱、瞳孔の拡大、妄想を引き起こす薬です。
症候群を抑えるには1日数回の注射が必要です。
亜沙・ことみはC120の効果を知りません。

※亜沙の回復魔法は制限を受けて以下のような感じになっています。
回復魔法の発動には、魔力と体力の両方を大きく消費する。
治す怪我が酷ければ酷いほど、亜沙の消耗は激しくなる。
命に関わるような重傷は治せない。また切り落とされる等して、失った部位も治せない。

※設定はゲーム版。よってアニメ版の黒楓は知らず。

765 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 02:00:49 ID:TupQdXIn
.

766 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 02:01:27 ID:TupQdXIn
.

767 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 02:01:51 ID:aNQ8uBar
【D-5の茂みの中/1日目 午後】



【一ノ瀬ことみ@CLANNAD】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:気絶中、肉体的疲労中、腹部に軽い打撲、精神的疲労中、後頭部に打撲】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
0:気絶中
1:朋也くん……
2:亜沙を心配
3:身体を休ませる
4:神社から離れる
5:工場に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
6:鷹野の居場所を突き止める
7:ネリネとハクオロを強く警戒
8:ハクオロに微妙な罪悪感



※現在気絶しています。目が覚めれば自失状態は回復します。
※ことみがどちらに向かうかは次の書き手さんにお任せします。
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています。
※首輪の盗聴に気付いています。
※魔法についての分析を始めました。
※あゆは亜沙とっては危険ではない人物と判断。自分にとっては危険人物。
 良美に不信感。
※良美のNGワードが『汚い』であると推測

768 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 02:02:13 ID:TupQdXIn
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769 : ◆jWwIlynQcU :2007/08/19(日) 02:02:30 ID:aNQ8uBar

ホテルについて
建物は高さ数十メートル、地上15階建てぐらい。
1階のコントロール室からはホテル内の照明、空調などを制御可能。
さらに監視カメラで人間の動きを知る事が可能。
地下はテナントエリアと従業員のエリア、他に駐車場や倉庫が存在する。


770 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 14:46:02 ID:B97YXLtj
「じゃあ風子、後は任せた」
「北川さんはどうするんです?」
「梨花の所へ行って来る」
「?梨花ちゃん、寝てますよ?」
「解ってないなぁ」
「?」
「死がいつ襲い来るかも知れないゲームに寝付けない梨花ちゃん。
そこへ不安を取り除こうと現れる俺。
『梨花ちゃん、眠れないの?』
『潤…。はいなのです。(あ、ちなみにこの時の梨花ちゃんは天使モードね)』
『大丈夫、何も恐くない。俺が護ってあげるから。
こうして手を握っていれば安心だろ?』
『はい。…潤、御願いがあるのです』
『?』
『ボクが寝るまで、その…抱きしめててくれませんか?』
『えっ!?』
『そ、その…そうしてくれればもっと安心出来そうで…』
『仕方ないな、この甘えん坊さんは』
『わぁ』
俺の承諾に顔を綻ばせた梨花ちゃんは体を起こし、梨花ちゃんが寝ていた横のスペースをポンポンと叩く。
しょうがない子だ、と軽く溜め息を吐き、俺は布団の中へ…」


771 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:46:51 ID:A7ODIh8N
  

772 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 14:47:01 ID:B97YXLtj
スパコーーーン!!!

「何て妄想してんのよ、変態」
「あ、梨花ちゃん。起きてたんですか」
「ちょっと喉が渇いたんで降りてきたの」
「そうですか。…ところで梨花ちゃん?」
「何?」
「北川さん、さっきからピクリとも動かないんですけど」
「………」
「………」
「………あ」



【北川潤 死亡】



「少し強く叩き過ぎたかしら」
「みたいですね」


773 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:47:29 ID:A7ODIh8N
   

774 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:47:45 ID:qnHy1/Mp
 

775 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 14:48:18 ID:B97YXLtj
「ちょっと待て、お前ら」
「あ、北川さん」
「潤?」
俺の声に二人して振り向く。
俺は上のトラップを仕掛け終え、二人の担当である一階の様子を見に降りて来た。
そしたら、二人は真面目にやっているのかと思えば、妄想ゲームに浸ってやがった。
「何?その俺のマヌケな死に様」
「あぁ、このチームに迫る危機をシミュレーションしていたの」
「危険や死ぬ可能性を予測していれば、未然に防げますからね」
梨花にハリセンで叩かれて死ぬ俺って、どんだけ脆いんだよ。
「兎に角、遊ぶ前に手を動かせ。俺の担当は終わったんだから」
「此方も終わったわよ」
そう言って、梨花が指差す先には…
「うわ、何?この明らかに『トラップです』と言わんばかりの糸は」
縦横無尽に糸が張り巡らされていた。
「引っ掛かってからのお楽しみです。あれ?北川さん。それ何ですか?」
風子が目ざとく、俺の右手にあるビニール袋を発見した。
「あぁ、飲み物持って来たんだ」
「気が利くわね。じゃあ、休憩にしましょうか」
そして俺達は、近くの椅子に座って休憩する事にした。
「で、どうせなら潤も考えてみて。私達に迫る危険」
「ただの遊びだろ?」
「そんな事ありません。これからの事をきちんと予測立てておかないと」
「ったく、そうだなぁ…。
こんなパターンはどうだ?仲間割れなんだが」

『梨花ちゃん!風子の北川さんを奪わないで!』
『それは出来ない相談ね。私だって潤の事…』
「「却下」」

776 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:49:13 ID:A7ODIh8N
   

777 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:49:16 ID:qnHy1/Mp
 支援

778 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 14:49:35 ID:B97YXLtj
「何でだあああぁぁぁ!!!」
「現実味がありませんから」
梨花にハリセンで叩かれて死ぬのは現実味があるのかよ。
「せめて0.0000000000001%でも可能性のある予見を模索して頂戴」
…お前らが俺の事をどう見てるか、ようく解ったよ。
「…あれ?」
その時、梨花が変な声を出す。
「どうした?」
そう訊ねるが、その原因に俺もすぐ気付いた。

ヴォ〜〜〜ン… キッ!

これは…車が店の前に止まった音か!
咄嗟に探知機を出すと、確かに店の前に二つの反応が現れる。
「まずい!二人とも、隠れろ!」
そう言って二人を奥へ追いやろうとするが、二人とも動かない。
「おい、急げ!」
「危機、ケース291」
「え?」
「誰かが来た時、一階のトラップ内容を知らない北川さんが出迎えた場合が一番危険です。
此処は風子に任せて下さい」
「バカ!女一人に任せられるか!」
「だったらせめて、風子と北川さん二人で出迎えましょう。
梨花ちゃんは切り札って事で隠れて下さい、ね」
「…解ったわ」
そして風子は、奥へ向かった。

779 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:49:55 ID:A7ODIh8N
   

780 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:50:14 ID:qnHy1/Mp
 

781 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 14:50:31 ID:B97YXLtj

 * * *

「じゃあ、行きましょう」
「あぁ」
店の前に車を止め、“それ”を探すために百貨店へ着いた私達。
“それ”を探そうと云う事になったのは、店へ向かう車中での事である。

―――十分ほど前。
「!!!」
盗聴されている。
その事実を純一に教えた時の純一の驚きようは目に余るほどだった。
本当に?と、目で問い掛けてくる純一に、私は無言で肯く。
「…」
暫く無言のまま考え込む純一。
そして再び顔を上げた時、純一は一つお願い事を持ち掛けてきた。
『つぐみの首輪、少し調べさせてくれ』
…私はもう一度肯いた。
ブロロロロ…
「…」
「…」
私が車を走らせている間、私の首輪を念入りに見る純一。
これは…
盗聴器を探しているだけじゃないようね。
それならこんなに長時間調べたりしない。
その予想は当たっていた。
しかし、その後純一が教えてくれた事実は、私の予想を遥かに超えていた。

782 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:51:03 ID:qnHy1/Mp
 

783 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:51:23 ID:A7ODIh8N
    

784 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:51:44 ID:qnHy1/Mp
 

785 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 14:52:16 ID:B97YXLtj
調査を終えた純一は、何やら紙に書き始める。
その内容を見て、今度は此方が驚いた。



『首輪を外す事は、可能だ』



「!!!」
私は唖然とする。
「つぐみ!前!」
「…え?きゃっ!!!」
茫然自失のあまり、ハンドルを切るのを忘れていた。
危うく単独事故を起こす所だった。
「ったく、ボーッとしてんなよ」
「ごめんなさい」
謝りながらも、純一が書いた紙を指差す。
『どう云う事?』と訊ねんばかりに。
『杉並の奴が色々と変な知識を持っていてな。
指紋の焙り出し方や幽体離脱の方法、ラフレシアの調理法とか
訳解らん事を色々と教わった。
この手の爆弾の解除の仕方も、その一つだ』
そう書きながら、純一の表情が僅かに曇る。
恐らく、杉並の死を悼んでいるのだろう。
でも…

786 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:52:27 ID:A7ODIh8N
 

787 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:52:45 ID:qnHy1/Mp
 

788 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 14:54:04 ID:B97YXLtj
『ならばなぜさっさと外さないか、を疑問に思ったな?』
純一の続く言葉に、私は前方を注意しながら肯く。
正にその通りだ。
『残念ながら、盗聴が厄介だ。外すのに数分掛かる。
その間カチャカチャしていたら、鷹野は先ず間違いなく首輪を爆破する。
盗聴器のマイクを押さえても、首輪そのものを弄るのだから、音は向こうに伝わる。
杉並も恐らくそれに気付いていたから首輪を外さなかったんだろう。
ちなみに“杉並は首輪を外そうとして爆破されたのでは?”なんて考えは無しだからな?
それなら第一放送で死んでる筈だし、何よりあいつは頭が切れる。その程度に気付かない筈がない』
何か、首輪の話が、途中から杉並賛歌になってるわね。
でも、今の話は有益だった。
盗聴の所為で首輪を外せない。なら、逆にそれさえクリア出来れば首輪を外せるのだ。
純一も全く同じ事を考えていたらしい。
最後にこう締め括った。
『百貨店に、電波を妨害する何かがあるかも知れない。
それを探そうと思う』
私はその案に深く肯き…

そして今、店の前で硬直していた。
どうも中に入るのが躊躇われる。
それもこれも、扉の前に貼られている一枚の紙の所為だ。

789 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:54:20 ID:A7ODIh8N
  

790 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:54:22 ID:qnHy1/Mp
 

791 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 14:54:48 ID:B97YXLtj



『ようこそ 風子の館へ

風子達の協力を望む善人さんたちは
『らぶり〜風子、貴方のヒトデパワーを貸して下さい』
と、大きな声で呼んで下さい。風子が助けに参ります。
風子達を襲おうという悪人さんたちは、こっそりと入ってきて下さい。
風子がとっちめてあげます。

                                   』



「…」
言える訳ないでしょ、こんなの。
どうやら店の中には(おつむの弱い)人がいるようだ。
「どうする?」
取り敢えず純一に訊ねる。
「普通に入ろうぜ。中に居るのはゲームに乗った奴ではないようだし」
「…賛成」
そして一言、
「ごめん下さい」
とだけ言って扉を開ける。
そして…
「何?この糸」
店内は糸が縦横無尽に張り巡らされていた。
明らかに罠としか思えない糸に気後れして、入り口で佇んでいると、
「触れれば発射されるシューティングヒトデの結界は!」
奥から何やら可愛らしい声が聞こえてきた。

792 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:55:02 ID:qnHy1/Mp
 

793 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:55:14 ID:A7ODIh8N
   

794 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:55:42 ID:qnHy1/Mp
 

795 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 14:56:10 ID:B97YXLtj

 * * *

俺とつぐみが声のする方を同時に向くと、そこには女の子が…

スパコーン!

隣の男にハリセンで頭を叩かれていた。
「痛っ。北川さん、何するんですか」
「何で姿現して挑発してんだよ!
あの人達、俺達と同じように脱出考えてる人だったら協力出来るし、
ゲームに乗ってる人だったら一発ズドンで死ぬだろうが!」
「!」
今のせりふで理解した。
この人達は、仲間になる可能性がある。
そう考え、つぐみの方を向くと、
「北……川?」
あの、男の方の名に驚いていた。
「知り合いか?」
「いえ、ちょっと名前を目にした事があるだけ」
俺達がそんなやり取りをしている間、向こうは向こうで俺達そっちのけで漫才を始めていた。
ってか、俺達の事放っておいて良いのかよ、オイ。
「そんな事ありません。あの人達は悪人さんです。
風子を呼ばずに入ってきたんだから」
「何だよ、それ。また電波か?」
どうやら北川とか云う奴は、扉の張り紙の事を知らないらしい。
「これの事じゃないかな」
と、扉の張り紙を紙飛行機にして飛ばす。

796 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:56:41 ID:qnHy1/Mp
 

797 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:56:47 ID:A7ODIh8N
    

798 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 14:57:14 ID:B97YXLtj
「あ、スンマセン」
と言って男は紙を拾い上げ、その内容を眼にして…

「言えるかあああぁぁぁ!!!こんなセリフ!」

咆哮していた。
うんうん。
そして同時に肯く俺達。
「って事は、北川さんも悪人さんですか。
ヒドい。今まで風子の事騙してたんですね」
「違うっつ〜の!」
「風子に恋してしまった北川さんはその常軌を逸した思考を張り巡らせ、
度重なる災いから風子を護ろうと風子に気付かれないように悪の道に手を染めてしまったんですね」
「常軌を逸してんのはお前の頭だ!
ってか、騙すってそういう意味でかよ!」
「それは決して報われる事の無い恋…」
「人の話を聴けえええぇぇぇ!!!」
「あのさ…」
終わらない漫才に割り込んで、俺は声を掛ける事にした。
二人は揃って俺達の方を向く。
「あんた達、結局何がしたいのかな」
「あ、そうそう、そうでした。
今から貴方達をゲームに乗る気なんかさせないよう更生してあげます」
「ハァ。スミマセーン!そこの人達!
コイツの戯れに付き合ってくれますか?
どうせ子供の悪戯程度の事しか出来ないんで!」
「…」
「…」
つぐみと二人で絶句。
二人のペースって、独特過ぎる。
ってか、こんな調子でよく今まで生きて来られたな。

799 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:57:25 ID:A7ODIh8N
     

800 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:57:38 ID:qnHy1/Mp
 

801 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:58:18 ID:qnHy1/Mp
 

802 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 14:58:36 ID:B97YXLtj
「悪戯とは何ですか!悪戯とは。
北川さんも更生させますよ?」
「解った、悪かったって。それよりあちらさんが待ちくたびれてるぜ」
「そうでしたね。
では、改めて…
触れれば発射されるシューティングヒトデの結界は!!!」
何やら決めポーズまでつける風子って子。
ちらっとつぐみのほうを見ると、ちょうどつぐみも此方を横目で見ていた。
「「ハァ」」
そして同時に溜め息。
俺達って確か、生きるか死ぬかのゲームに巻き込まれているんだよな。
「店内一帯、貴方達の動きも手に取るように探知出来る!
喰らえ!………」
「…」
「…」
「…」
そして、風子のセリフは突然止まった。
「どうしたの?」
「あの、お名前を教えて下さい。
あ、人に名前を訊ねる時にはまず自分からですね。
風子は伊吹風子と言います。
風子と呼んで下さい。
で、貴方達は?」
「朝倉純一。こっちは小町つぐみ」
風子のペースに気圧されながらも、一応返事はする。
「朝倉さんにつぐみさんですね。
では、
喰らえ!朝倉さん!
半径20mヒトデスプラッシュを〜〜〜っ!!!」
俺を指差しながら声を張り上げる風子。
そして…

803 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:59:02 ID:qnHy1/Mp
 

804 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 14:59:34 ID:B97YXLtj
「…」
「…」
「…」
何も起こらなかった。
「え〜と…」
「朝倉さん。スミマセンが糸に触ってもらえます?
トラップ発動しますから」
「…」
つまり罠に引っ掛かって下さいって事?
そんなお願いに応じるのって、どんなバカだよ。
「あのさ」
「ハイ?」
「半径20mエメラルド…」
「ヒトデスプラッシュです!HI☆TO☆DE!!!
愛くるしいヒトデが無数に歓迎する、夢のような罠なんですよ」
トラップに夢も何もあったモンじゃないと思う。
「お前、そんな罠仕掛けてたのかよ」
横に居る北川がそう呟いた。
どうやら、彼もこの罠の事は知らないみたいだ。
「あ〜、うん、ヒトデね。ヒトデスプラッシュ。
それってさ、糸に触れなくても発動するモンじゃないの?」
「…」
「…」
「(´・ω・`)」
「あ〜!ゴメン!
そ、そうだよね。これだけ糸張ってりゃ、一つ位引っ掛かるよね」
落ち込む風子に慌ててフォロー。

805 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:59:42 ID:qnHy1/Mp
 

806 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 14:59:52 ID:A7ODIh8N
  

807 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:00:23 ID:qnHy1/Mp
 

808 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:01:11 ID:B97YXLtj
「ちょっと、良いの?わざわざこんな茶番に付き合って」
いい加減、つぐみも呆れたらしい。
けど、
「あんな顔されちゃ仕方ないだろ?
北川の言ってた通り、どう考えてもいたずらレベルみたいだし」
「はぁ〜。どうなっても知らないわよ。
自己責任でお願いね」
「うぃ」
そう言って俺は糸に触れ…



ポン



頭に何か柔らかい物がぶつかって来た。
「…ヒトデ?」
それは星、いや、ヒトデ型のクッション(手作りっぽい)だった。
何?この可愛らしい罠。
「改心しました?もうゲームに乗ろうだなんて考えませんね?」
「え?あ、ハイ」
取り敢えず肯く。元からそんな気ないし。
「やった♪更生完了です」
風子は満足げにガッツポーズしていた。

809 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:01:36 ID:qnHy1/Mp
 

810 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:01:45 ID:A7ODIh8N
   

811 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:03:22 ID:qnHy1/Mp
 

812 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:03:53 ID:B97YXLtj
「そろそろ良いかしら?色々と話し合いたいのだけれど」
「あ、ハイ。スミマセン。コイツの児戯に付き合ってくれて」
「…」
ポン ポン
「つぐみさん達は二人だけ?」
「えぇ、そうよ。そちらは?」
「…」
ポン ポン ポン ポン
「俺達は三人。俺と風子と古手梨花って小さな女の子。
あ、俺の名は北川潤。ヨロシク」
「此方こそ。それで、詳しい話の前に、中にお邪魔して宜しいかしら?」
「…」
ポン ポン ポン ポン ポン ポン ポン ポン
「はい。どうぞこっちへ。今、梨花ちゃん呼んで来ます」
「有難う」
「…」
ポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポ
ポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポ
ポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポ
ポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポ
「………あのさ」
俺の声に、一同振り向く。
「このトラップ、いつ止まるの?」
俺は、絶え間なく降り注ぐヒトデに下半身が埋まっていた。
「ヒトデの数は、合計492です」
………全身埋まるわ。

813 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:04:02 ID:A7ODIh8N
  

814 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:04:08 ID:qnHy1/Mp
 

815 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:05:02 ID:B97YXLtj
「ったく」
そして俺は抜け出そうと近くの糸を掴んで身を乗り出し…
「あ!それに触ってはいけません!!!」
「は?」
「純一!上!!!」
つぐみの声に反応して上を見上げ…
………俺は見た。
体に『ぼでぃぷれす』と書かれた巨大なヒトデが俺目掛けて落下するのを。



ズウウウゥゥゥン!!!



俺は意識を失った。
そして、再び目が覚めた時、地獄の宴を目の当たりにする事になる。
………………
………


816 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:05:26 ID:qnHy1/Mp
 

817 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:05:50 ID:A7ODIh8N
 

818 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:06:06 ID:B97YXLtj
「助けてくれぇ!!!」
「ハッ!」
叫び声に意識を取り戻すと、隣から悲鳴が聞こえてきた。
「止めろ!!!お前ら!何の恨みがあって!」
この声は…北川と言う奴の声?
「ダメよ。大人しくしなさい」
………………え?
今の声………つぐみ?
あれ?どういうことだ?
つぐみと北川が争っている?
というか、つぐみが一方的に弄ってる様に聞こえた。
「風子!梨花!お前らも、俺の事を裏切ったのか!?」
「仕方ありません。誰かが犠牲になる必要があるのですから」
「犠牲者に北川さんが選ばれた。それだけの事です」
ヤバイ!!!
何があったか解らないが、北川が他の三人に責められている!
争い事は止めねば!!!
「お前ら!何をしている!」
俺はすぐさま隣の部屋へなだれ込み…
「………………………………
………………………………変態」
その一言が漏れた。
いや、だって仕方ないじゃん。
北川って奴、



ラ・ン・ジ・ェ・リ・ー・姿・だ・っ・た・ん・だ・か・ら


819 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:06:12 ID:qnHy1/Mp
 

820 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:06:27 ID:A7ODIh8N
   

821 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:06:45 ID:xw+RIKoJ
 

822 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:06:53 ID:qnHy1/Mp
 

823 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:07:37 ID:qnHy1/Mp
 

824 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:08:06 ID:B97YXLtj
此処までが前編です。
引き続き、中編をどうぞ。


∧_∧
( ´・ω・) みなさん、お茶が入りましたよ・・・・。
( つ旦O
と_)_) 旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦



…マウスの調子がおかしいっす。
突然止まったら、マウスが壊れたと判断して下さい。

825 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:08:25 ID:A7ODIh8N
  

826 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:08:29 ID:qnHy1/Mp
 

827 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:09:29 ID:B97YXLtj
「汚された」
ソファーに顔を突っ伏して、さめざめと泣く北川。
服は、出会った時の姿に戻っていた。
ちなみに、なんで北川が女性下着を身に着けていたのかというと、
「何で…何で俺の罰ゲームが
ノーブラなんだよおおおぉぉぉ!!!」
今、北川が悲痛の叫びを上げた通りである。
俺が寝ている間、店内探索やトラップ再設置を終えた皆は、呑気に麻雀していたのだ。
「男がブラしてる訳ねぇだろうが!!!」
「あら。だから三人がかりでつけてあげたんじゃない」
「でもつぐみ。だからって…下も履き替える必要…無いだ…ろ」
必死にフォローを入れる。
が、北川にとっては逆効果だったようだ。
「純一。テメェ、さっきから口の端がひくついてんぞ?」
やっぱバレた?
いや、だってケッサクなんだもん、ププ。
思い出すだけでウヘヘとなっちまう。
あ、ダメ。笑いが堪えられない。腹筋痛ぇ。

828 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:10:06 ID:qnHy1/Mp


829 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:10:08 ID:A7ODIh8N
   

830 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:10:38 ID:B97YXLtj
「あ〜〜〜っ!皆して笑いやがる!
どうせ俺は、一枚絵の地味キャラだよ!
うわあああぁぁぁん!!!」
どっかの週間まとめのようなセリフを吐いて、ソファのクッションに顔をうずめる北川。

ポフポフ

そんな北川の頭を、小さな女の子(梨花ちゃんと紹介された)が優しく撫でていた。
「元気出すですよ、北川さん」
「あぁ。梨花ちゃんが天使モードだ」
そう言って、泣き腫らした顔を上げる北川。
良し、俺もフォローを…
「そうだよ。一枚でも立ち絵があれば良いじゃないか。
俺なんてゼロだぜ?」



ピキィーーーーーーーーーーーーン!



「…」
「…」
「…」
時は止まる。
「…純一。それ、ダウト」
つぐみの声と共に、時は動き始めた。

831 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:11:00 ID:A7ODIh8N
     

832 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:11:22 ID:qnHy1/Mp
 

833 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:11:42 ID:B97YXLtj
久しぶりに時を止められたぜ………じゃなくて!
ヤベェ。失言だったか。
立ち絵が一枚も無い。
それは(男の場合)超特別なポジションにいる事を指す。(例外あり)
“主人公”
つまり俺は、北川をフォローするつもりで、とどめを刺しちゃったのだ。
北川は肩を震わせ、
「………て」
「て?」
「テメェなんて、元の世界に戻ってハーレム世界でも構築してろ!
こんちくしょおおおぉぉぉ!!!」
いまいち悪態になっていない捨てゼリフを残し、脱兎のごとく駆け出していた。
そして…



ビイイイィィィン!
ドテェ!
ポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポ…
ぼでぃぷれす!!!



…半径20mヒトデスプラッシュを喰らっていた。
北川、済まないwww
じゃなかった。
北川、済まない。

834 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:12:02 ID:A7ODIh8N
 

835 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:12:45 ID:xw+RIKoJ
純一ww

836 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:13:18 ID:qnHy1/Mp
 

837 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:14:37 ID:qnHy1/Mp


838 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:15:00 ID:B97YXLtj

 * * *

「えっと、これをココに置いて…」
俺が今している事。
それはトラップの仕掛け直し。
俺が引っ掛かったんだから自分で治せとの事らしい。
鬼。
こんなんだったら、俺も純一みたいに気絶すれば良かった。
「ハァ」
深く溜め息を吐き、ヒトデを拾い上げた所で、
「手伝うわ」
後ろから声が掛かった。
「小町さん?」
「つぐみで良いわよ、潤。後どれ位?」
「残す所100個位って所かな。他の連中は?」
「あそこで三麻やってるわ。私は少し抜けさせて貰ったの」
つぐみが指差す先では、確かに三人がジャラジャラやっている。
「そうか。サンクス」
「いえ」
そして二人してトラップの仕掛け直しを始める。
「良い所ね」
と、つぐみが不意に一言呟いた。

839 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:15:31 ID:A7ODIh8N
 

840 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:15:38 ID:B97YXLtj
「え?」
意味が解らず聞き返す俺。
つぐみは俺の方を向き直って静かに語り始めた。
「実はね、私は北川潤と云う人間をマークしてたの」
「え?俺?」
俺をマーク?どうして?
「このゲームね。傍観者がいるみたいなの。
この腐ったゲームで優勝者が誰か、トトカルチョするような腐った人間が、ね」
「…」
「そして、今一番人気が…」
………うそ、だろ?
「…貴方よ」
「ちょっと待て。何だよ、それ。俺、こんなゲームで優勝する気なんてさらさらねぇぞ?」
「話は最後まで聴いて。で、その人気内容を見ると、
貴方の優勝を考えている人は皆無のようだったわ。
コメントは、風子や梨花といるのがうらやましいとか、
童「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁ!」
…私のセリフを悲鳴で遮る潤。
あぁ、確かに男の子の沽券に関わる内容だったわね。

841 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:16:19 ID:B97YXLtj
「コホン。兎に角、貴方が優勝を狙えそうと云うコメントは無かった。
でも、一応一番人気のようなので注意してたの」
「聴きたくない、そのセリフを吐かないで…」
「でも、本人に会ってびっくりしたわ。
何でこんな人間が人気を集めるのかって」
「さては、今回の書き手は“乾坤一擲”を書いた奴だな!パターンが一緒だ!
風子のリア電で調べてやる!!!」
「でも、ココに居て確信出来た。
貴方が人気を集める理由」
「やめろ貴様!俺の目の前でチェリーをちらつかせるな!」
「………」
パシンッ
「………はっ。俺は何をして居たんだ?」
「目、覚めた?」
「あ、あぁ。済まない。何か恐ろしい白昼夢を見た気がする」
「…」
この子に“あのセリフ”はタブーね。
「兎に角ね。私にとって、貴方が人気ある理由はこの雰囲気だと思うの」
「雰囲気?」
「私達ね、此処に来るまで色々な人達に会ったわ」
「あぁ。さっき(麻雀時に)話してたな」
「色々な人達に会ったけれど、その人達は必ず
“ゲームに乗る”“ゲームに反抗”のどちらかの行動を取っていた。
私たちも含めてね。
私が知る限り、貴方達だけよ。“日常を続けている人達”は」
「…」
「だから、良い所ねと言ったの」

842 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:16:33 ID:qnHy1/Mp


843 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:16:37 ID:A7ODIh8N
  

844 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:17:22 ID:qnHy1/Mp
 

845 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:17:23 ID:B97YXLtj

 * * *

つぐみの話は色々と胸に沁みた。
そうだな。こんなゲームに一人で居たら、俺は殺伐としていただろう。
下手したら、ゲームに乗っていたかも知れない。
それを防いでくれたのは
「きゃぁ♪風子、ドラを三つも持ってます♪」
あの、風子のおかげかもしれないな。
それに梨花も。
散々お荷物だと悪態吐いたが、感謝するべきなのかもな。
…と、そういえば。
「そういえば、アンタ達に聞きそびれてた事があるんだけど」
「何かしら?」
「ホンイツって、何翻でしたっけ」
「三翻よ」
ちょうど良いタイミングで漏れ聞こえた声に律儀に返事するつぐみ。
「違う!今のは風子の声だ!俺じゃねぇ!
さっきお前達と麻雀してた時に訊きたい事があったの思い出したの!」
「何が?」
「何でその国士無双、西が三つあるんだ?」
「チョンボでしょ。どう考えても」
「今のは純一の声だろうが!
俺の気にしているのは何でつぐみ達が百貨店に来たのかって事!」
「あぁ、その事」
つぐみは一度深く頷き、再び顔を上げた。

846 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:18:04 ID:A7ODIh8N
     

847 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:18:21 ID:B97YXLtj
「その前に、知っていて貰いたい事があるの」
「ん?」
「ボクが負けた時の罰ゲームは、潤のホッペにキスですか」
「ウヒョ━━━━━━━(。A。)━━━━━━━━ッ!!!!!!」
パシンッ
「痛っ」
「貴方も、お約束の反応するんじゃないの」
…怒られた。
「でも、そうね。私で良ければ今してあげるけど?」
「………え?」
マジっすか?
「どうするの?」
「うおおおぉぉぉ!!!是非是非是非!!!」
「………仕方ないわね」
意気込む俺に呆れ声を出したつぐみは、俺の頬、いや、耳元に唇を近づけ…
「そのまま、何があっても静かにして」
耳元ですら聞き取りづらいほどの小さな声で囁いた。
「?」
つぐみの意図が読めずにじっとしていると、
「この首輪、盗聴器にもなっているわ」
「!!!」
あまりにも衝撃的な内容の暴露に、俺は思わず後ずさってしまった。

848 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:19:05 ID:qnHy1/Mp
 

849 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:19:33 ID:A7ODIh8N
 

850 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:19:47 ID:qnHy1/Mp
 

851 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:19:55 ID:B97YXLtj
なるほど。脈絡無く嬉しい展開になったと思ったら、これを伝えたかったのか。
「あら、びっくりした?ウブね。
もしかして、キスして貰うの、初めて?」
「…あぁ」
つぐみに辛うじて話を合わせる。
「いきなり後ずさるものだから、ちゃんと出来なかったじゃない。
もう一度してあげるわ」
そう言って、再度口を耳元へ近付けるつぐみ。
そして、再び小声で話し始めた。
「でね。純一が、と或る条件さえ満たせばこの首輪を外せるらしいの」
「!!!」
「条件は、首輪を外している最中爆破信号を受け付けないようにする事。
そのための妨害電波を発生するものを探しに来たの」
そこまで話し、漸く俺の耳元から離れるつぐみ。
「…」
「…」
場を、沈黙が完全に支配した。
「リーチ!」
「ダブルリーチ!」
「トリプルリーチ!」
「うるせえええぇぇぇ!!!」
緊張感を一瞬にして台無しにしてくれやがる。
ってか、お前らのやってるの、麻雀じゃないだろう。
『で、目ぼしい物はあったのか?』
俺は紙に書いてつぐみに見せる。
つぐみは首を横に振った。
そうか。
だが、これはとてつもない朗報だ。
電波妨害さえすれば、首輪を外せる奴が仲間に居るのだ。
何でも良い。何か方法は無いのか?
鷹野に気付かれても爆破信号を受け付けないようシールドをはるか、
外す作業を気付かれないよう、鷹野を煙に巻くか。

852 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:20:19 ID:A7ODIh8N
   

853 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:20:41 ID:B97YXLtj
………………待てよ。



煙!?



「!!!!!!」
そうか!その手があった!
かなりハイリスクな賭けだが、やる価値はある!
「…つぐみ」
俺の呼び声に、最後のヒトデを設置したつぐみが振り返る。
「一つ、賭けに乗らないか?」
俺の提案に、つぐみは俺の真正面に座り込む。
「賭けるのは?」
つぐみの言葉に、俺は自分の心臓を指す。
「何を使うのかしら?」
今度は店の床を。
「見返りは?」
…首輪を。
そして、つぐみは返答した。



「乗った」

854 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:21:14 ID:qnHy1/Mp
 

855 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:21:25 ID:6ViVJSLy
 

856 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:21:30 ID:A7ODIh8N
  

857 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:21:54 ID:qnHy1/Mp
 

858 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:22:02 ID:B97YXLtj
中編終了。後編に続きます。


  モマイラ モットノミヤガレ
    ∧_∧    ____ミ
|  |( `・ω・) /    / ○\ミ  =≡旦~−=≡旦~−=≡旦~
|  |(  ⊃  ( ◎  (○  ○)   −=≡旦~−=≡旦~−=≡旦
|  | ∪ ∪ |\   \ ○/ =≡旦~−=≡旦~−=≡旦~
|  |            :::::::旦/
|  |           ::::::::旦/    チュドドドドド
|_|          ::::::旦/
|茶|         :::旦/
| ̄|≡ 旦::旦::::旦::旦/
""""""""""""""""""""""


マウス復活!!
ただの電池切れでした…

859 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:22:16 ID:A7ODIh8N
 

860 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:22:40 ID:B97YXLtj
「ゴホッ、ゴホッ…つぐみ、これで良いか?」
「えぇ。すぐに出ましょう、純一」
店にあったマスクとゴーグルをしているとは云え、
この、ガスの充満した店内は一刻も早く出なくちゃならない。
俺達のやってた事は、まず店内の一斉捜索。
これから失う事になるこの拠点で、有用なものを入れておこうと全員で探し回った。
その後、俺とつぐみは店内のガスを全て開け、
その間、北川達は車のセッティングをしていた。
目的は………………百貨店の破壊。
(全く。北川もとんでもないことを考えてくれるぜ)
そう思いながらも、俺の口元は緩んでいた。
こう云うバクチは嫌いじゃない。
準備は完了。
後、俺のやる事は一つだけだ。

861 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:22:54 ID:qnHy1/Mp
 

862 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:23:09 ID:A7ODIh8N
    

863 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:23:25 ID:B97YXLtj

 * * *

こっちの準備を終えると同時に、純一とつぐみの二人が此方へ向かってきた。
「準備は?」
「万端。そっちは?」
「いつでもいけるぜ」
そう答え、車を思い切りふかす。
俺の乗ってる運転席は、扉が開いたまま。
ハンドルは真っ直ぐにしか進まないよう紐で縛り、アクセルも全開で固定されている。
後は、俺がこのブレーキを離すだけだ。

ヴォン!ヴォン!ヴォン!

「じゃあ、みんな。良いな」
俺の声に全員が肯く。
そして俺は、
「行け!!!」
ブレーキを離すと同時に車外へ躍り出て、
ヴォーーーーーーン!!!
車は開けっ放しの正面扉をくぐって、店の中へ突っ込み…



ドッグオオオオオオォォォォォォンンン!!!!!!!!!!!!




864 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:23:34 ID:qnHy1/Mp
 

865 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:24:05 ID:B97YXLtj

 * * *

「百貨店が爆発?」
部下の報告に、私は眉を顰める。
「はっ。北川潤が、店内へ車を突っ込ませたようです。しかも…」
「続けなさい」
「はっ。爆発が収まると同時に、北川潤、朝倉純一、古手梨花、伊吹風子、小町つぐみの五名が店内へ向かいました」
「何それ?」
わざわざ拠点を崩壊させて、その中へ突入?
意味が無いどころか、二次爆発の危険すらあるのに?
何を考えてるの?
いやな予感がする。
「何か、変わった事は?」
「いえ、今の所は…」
「鷹野様!」
その時、部下の一人が割り込んで来る。
「解ったわ。何か異常事態があったら報告しなさい」
そう言って、爆発報告をした部下を元の配置へ戻し、
「何があったの?」
新たに報告に来た部下に訊ねる。
そして、その部下の報告内容は、
「実は…」
私の予感を的中させるものだった。



「北川潤、朝倉純一、古手梨花、伊吹風子、小町つぐみの五名の首輪の反応が消失しました」




866 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:24:14 ID:qnHy1/Mp
 

867 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:24:58 ID:qnHy1/Mp
 

868 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:25:07 ID:B97YXLtj

 * * *

〜俺こと北川潤の計画〜
『一番手っ取り早い無線妨害って知ってる?』
俺が紙に書いた内容を見て、純一とつぐみは首を横に振った。
ちなみに風子と梨花は、ヒトデのクッションで遊んでいる。
『土煙だよ。
砂塵で電波が通じなくなるなんて事は良く聴くし、
ある高層ビルが崩壊した時、舞い上がった土煙で現地への連絡がつかなくなった事もあるらしい』
「「!!!」」
此処まで話せば、二人とも俺の狙いは読めたようだ。



『つまり俺達は、
この百貨店をつぶして………煙幕を張る』




869 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:25:38 ID:qnHy1/Mp
 

870 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:25:42 ID:A7ODIh8N
 

871 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:25:53 ID:B97YXLtj

 * * *

「どうしたの!この首謀者は北川潤なのよ!
さっさと奴の首輪を爆破しなさい!」
部下に怒鳴りつけるも、返ってくる返事は苛立つものばかり。
「やっておりますが、土煙の所為で確認が取れません。
恐らく、土埃が原因で、電波が遮断されているものと思われます」
「くそっ!」
想定外の事態だ!
何とかして、奴等の確認を取るすべを…
「鷹野様!」
「何!?」
「五人の反応が再び現れました。ですが…」
「何!?勿体つけてないで、さっさと言いなさい!!!」
「はっ。五人の反応が以上に接近しています。
その…五センチと離れておりません」
それって、もしかして…
「鷹野様!」
「次は何!?」
「首輪反応部分を捉えました。モニターに映し出しますか!?」
「さっさとしなさい!!!」
「はっ」
そして映し出された画像。
それは、首輪とレコーダーが括りつけられた、ラジコンだった。

872 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:26:38 ID:qnHy1/Mp
 

873 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:26:40 ID:B97YXLtj
「鷹野様。ラジコンに括りつけられてるレコーダーが再生されている模様です」
「此処に繋ぎなさい!」
「はっ」
そして、レコーダーから発する声が聞こえてきた。
「…かのさんよ」
この声、朝倉純一!
「鷹野様!!!」
その時、部下の声が聞こえてきた。
だが、今はそんな事を聴いている余裕は無い。
「後にしなさい!」
「ですが…」
「うるさい!!!後にしろって言ってんでしょ!!!」
「は、はっ」
そうしている間にも、朝倉純一と北川潤のレコーダーの声は続いていた。
「こうして俺達の声を聴いてるって事は、アンタは俺達に一杯喰わされたって訳だ」
「息苦しい首輪を外させてもらった以上、俺達は自由に動かせてもらうぜ」
「そうそう。ゲームのルールになんか縛られない、完全にフリーな行動を、ね」
「ま、せいぜいまた煙に撒かれないよう気をつける事だな」
「純一と」
「潤の」
「「ダブルJより愛を込めて」」

ガン!!!!!!

力任せに、私の座ってる椅子を叩く。

874 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:27:25 ID:B97YXLtj
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
くそっ!くそっ!くそっ!
何よ!この有様は!
こいつら!ただで済ますか!!!
「アンタ達!この五人をすぐに探しなさい!!!」
「鷹野様。その事ですが…」
「何!!?」
口を挟む部下を睨み付ける。
コイツは、レコーダーを聞いている時にも口を挟もうとしていたな。
「いちいち口を挟むな!!!」
そうやって、怒鳴りつけるが、
「で、ですが…。北川潤、以下四名の事で報告が…」
ビクつきながらもそう言ってくる。
って、何ですって!?
「どうかしたの!!?」
「はっ。北川潤、伊吹風子、古手梨花、小町つぐみの四名、既にこの世界の脱出を終えました」



………………………………え?



「な、何ですって………?」
「はっ。百貨店にあったビニールボートを用い、海からこの世界を脱出しました」

875 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:27:26 ID:qnHy1/Mp
 

876 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:27:42 ID:A7ODIh8N
 

877 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:28:02 ID:B97YXLtj
ビニールボートで………海へ?
何なのよ、それ。
対岸が全く見えない海を、ビニールボートで漕ぎ出すなんてバカなまねをしたというの?
それとも…
“海に出て数百メートルで、この世界を抜け出せる事を知っているものが居た”とでも云うの!!!?
「何ですぐに報告しないの!!!
奴等が逃げ出す前にさっさと報告すれば、捕らえる事が出来たでしょう!!!」
「ですが、鷹野様が『後にしろ』と仰ったので…」
レコーダーを聴いている時か!
「バカモノ!そこで後にすべき内容か、すぐにでも言わねばならない内容かの区別も付かないの!!?」
何て無能なんだ、こいつら!!!
「兎に角!逃げられた四人を何とかして…」
…あれ?
「四人?」
「はっ」
「朝倉純一は?」
「依然場所は掴めておりません。ただ、北川潤達とは別行動をとった模様です」
「探しなさい!!!何としてでも!」
「はっ」

878 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:28:06 ID:qnHy1/Mp
 

879 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:28:25 ID:A7ODIh8N
 

880 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:28:47 ID:qnHy1/Mp
 

881 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:29:10 ID:B97YXLtj

 * * *

「皆。お願いがある」
首輪を外し、俺は最後の仕上げを行う事にした。
そう、みんなへのお願いを。
「首輪解除に成功したら、風子の言う通り脱出をしてくれ。北川達、四人で」
「朝倉さんは?」
「此処に残る。まだ、やる事があるからな」
「だったら…!」
つぐみの言わんとする事は解っていたので、先手を打って、その答えを口にする。
「武や圭一達の捜索も俺がやる。
だからつぐみ達は、先に行って待っていて欲しい」
「どうして?皆でやった方が効率的じゃない。北川も風子も梨花も、かなりの戦力になるでしょう」
「理由は三つある。
一つ。俺達は鷹野を敵に回した。
つまり居場所がばれたら鷹野達に何らかのアクションがあることは間違いない。
だから、少人数で隠密行動を取るべきなんだ。出来れば一人で」
「…」
「二つ目。この土煙が治まるか、ここを禁止エリアにされない限り、他の参加者の首輪を外せる。
だが、その技術を持っているのは、この中で俺だけだ。
残る一人は、俺が一番適している」
「…」

882 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:29:19 ID:6ViVJSLy
 

883 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:29:33 ID:qnHy1/Mp
 

884 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:29:35 ID:A7ODIh8N
 

885 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:30:12 ID:B97YXLtj
「そして三つ目。これはただの我侭なんだがな。
北川、梨花、風子は確かに有能だ。
四回戦闘して、総合結果が味方の犠牲ゼロ敵の死者数ゼロなんて、奇跡的な戦績だ。
だが、俺は“有能な北川達”を求めている訳じゃない。
“日常で笑っている北川達”の方が大切なんだ」
さすがにこのセリフは少し照れるが、俺の本心である事は間違いない。
このゲームでさ、本当に心地良かったんだよ。
北川達と一緒に居る時は。
「…解ったわ」
つぐみがそう答える。
「!つぐみ!俺は…」
「潤。悪いけど、私は純一の意見に全面的に賛成よ。
貴方達が此処に残る事で救われる人間がこれから出て来るかもしれない。
でも、それ以上に貴方達を死なせたくない。
ここは、純一の事を信じましょう」
「…」
つぐみの言葉に、何か言い掛けた北川は黙る。
そしてつぐみは俺の方を振り返り、じっと見据えた。
「純一。間違っても死なないわよね」
「当たり前だ。今度お前らに会う時は、武や圭一達も連れて来てやるよ」
その言葉に、つぐみはフッと薄く笑う。
そして梨花が俺の前に出る。
「何かあったら、すぐに禁止エリアに入りなさい。それと、一人の相手には近付いてはダメ。
必ず複数の人間を探しなさい」
「ご忠告どうも。参考にするよ」
そう言って、梨花の頭を撫でる。
次に目の前に出たのは、風子。
「さっきの麻雀、まだ勝負ついてないんですから、逃げちゃいけませんよ」
「あぁ。必ず戻って、続きをするさ」

886 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:30:13 ID:qnHy1/Mp
 

887 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:30:51 ID:A7ODIh8N
 

888 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:30:55 ID:qnHy1/Mp
 

889 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:31:22 ID:B97YXLtj
そして最後に…
「…」
潤が立っていた。
「…」
「…なあ、潤」
何も言わない、いや、言えないのだろう潤に、俺の方から声を掛ける。
「…」
「一言だけ言わせてくれ。俺さ…」



   …お前に出会えて、良かったよ



………………
………

「さて、行くか」
そう言って、俺は背伸びをする。
一人でも多くの人を救うために。
アイツラとの約束を守るために。
そして、アイツラには言えなかった第四の理由。



鷹野を倒すために。




890 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:31:39 ID:A7ODIh8N
 

891 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:31:40 ID:qnHy1/Mp
 

892 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:31:56 ID:6ViVJSLy
 

893 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:32:19 ID:B97YXLtj

 * * *

「わぁ」
風子の言う通りだった。
海に出て、百メートルばかり進むと、私達はこの世界を脱出した。
何故そんな事が解るかというと、
「何なの?この場所」
そう、私達は海とは全く別の地に立っていたのだ。
何もない更地。
それが延々と続いていた。
いや、前方に何か柱のようなものが幾つか見える。
それ以外は何も無い。
「取り敢えず、あそこへ行ってみようか」
潤が柱を指し、皆肯く。
そして数十分歩き続けて、
「………扉?」
柱に見えたものの目の前に居た。
それは扉。
何も無い更地にただポツンと立っているだけのもの。
それが幾つも起立していた。
「………ねぇ」
梨花が声を上げる。
梨花の言わんとしている事は解ってる。
本能的に、何か扉と引き合うものがある。

894 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:32:41 ID:A7ODIh8N
 

895 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:32:42 ID:qnHy1/Mp
 

896 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:32:51 ID:6ViVJSLy
 

897 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:33:20 ID:B97YXLtj
「私、この扉に引かれているみたい」
「俺はこれだ」
「風子はこれです」
そう言う事。
恐らく、この扉をくぐれば、それぞれの元の世界に戻れるのだろう。
けど…
「妙ね」
疑問に思った事がつい口を付いて出てしまった。
「何が?」
すかさず潤が訊ねる。
「この扉の数、多くない?」
そう、参加者の事を考えると、明らかに多い。
私達の世界、純一の世界、ネリネの世界、潤、梨花、風子…
他の人間達の事を考えても、一つの世界から数人引き抜かれている事を考えると、
その数は扉より少ない気がする。
その事を潤達に説明すると、梨花がその考えを口にした。
「もしかしたら、同じ世界のようで、違う世界の人間も居るのかもしれないわね。
例えばつぐみ。ゲームに参加してた武は、貴方の世界の武ではないかも知れないって事」
「そんな事…」
私は反論しようとして、と或る事実に思いつく。
音夢は“純一を泥棒猫に盗られた”と言っていた。
だが純一は、“音夢と恋人になった”と言っていた。
この食い違い、

“純一と音夢は別の世界から来たから”って事では?

だとしたら、純一が帰る先には、純一の恋人である音夢が待っている事になる。
この事実は、純一に会ったら話さなくてはね。

898 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:33:34 ID:qnHy1/Mp
 

899 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:33:45 ID:A7ODIh8N
 

900 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:34:09 ID:B97YXLtj
「そうね。多分梨花の仮説が正しいと思うわ。
で、どうする?自分の世界へ戻る?」
答えは分かっているのだけど、一応皆に訊ねる。
案の定、全員首を横に振った。
「待ちますよ、朝倉さん達が戻って来るまで」
「そうね。じゃあそれまで、ここで休憩としましょうか」
次は全員首を縦に振り、地面に腰を下ろした。



「はぁ〜っ。それにしても、漸く脱出できたのね。あの島を」
「色んな所を通りましたね。
脳の中から夢の中まで」
「脳?夢?何それ?風子」
「あ、そうか。つぐみさんは知らないんでしたね」

901 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:34:14 ID:qnHy1/Mp
 

902 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:34:22 ID:A7ODIh8N
 

903 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:34:40 ID:B97YXLtj
【A-3 百貨店跡地 夕方(第三放送直前)】

【朝倉純一@D.C.P.S.】
【装備:ミニウージー(24/25) 大型レンチ 首輪探知レーダー】
【所持品:支給品一式 エルルゥの傷薬@うたわれるもの オオアリクイのヌイグルミ@Kanon 百貨店内で入手した物多数】
【状態:健康・強い決意・血が服についている】
【思考・行動】
基本行動方針:人を殺さない 、殺し合いに乗ってる人間を止め全員での脱出
1:煙幕が張っている内に、自分が使ったのと同じ手段を用いて可能な限り多くの人の首輪を外す
2:鷹野に場所を気付かれないよう注意を払って行動する
3:四人との約束を果たす。(必ず生きて脱出する)
4:ことりを探す
5:さくらをちゃんと埋葬したい
6:打倒鷹野
【備考】
芙蓉楓の知人の情報を入手しています。
純一の参加時期は、音夢シナリオの初キス直後の時期に設定。
※つぐみとは音夢の死を通じて絆が深まりました。
※つぐみとは年が近いと思ってます。
※北川潤、伊吹風子、古手梨花と情報交換しました。彼等とその周囲の情報を得ています。
※百貨店は崩壊しました。爆音は島の半分以上に行き渡りました。現在、土煙が舞っています。
※百貨店で何を所持品としたかは、次の書き手さんに任せます。取り敢えず沢山仕込んだようです。
※首輪探知レーダーを、北川潤より譲り受けました。

904 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 15:34:55 ID:qnHy1/Mp
 

905 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:35:20 ID:B97YXLtj


【北川潤@Kanon   脱出】
【伊吹風子@CLANNAD   脱出】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭   脱出】
【小町つぐみ@Ever17   脱出】

※四名の居る場所に付いて
現在北川達の居る場所(便宜上、“境界”と呼びます)は、ロワ世界と原作世界を繋ぐ場所です。
地図の外に出れば、境界に辿り着きます。
扉をくぐる事でそれぞれの世界へ戻り(境界⇒元世界の一方通行)、
逆にボートの置いてある場所にまで戻り、来た道を引き返せばロワ世界に戻ります(境界⇔ロワ)。
ですので、北川達の戦線復帰も考えられます。
「タイトルは『童貞男、戦線復帰』で決まりですね」
風子、ちょっと黙ってて。
兎に角、それぞれの人間が、自分のくぐるべき扉を直感的に悟る事が出来ます。
純一、音夢の例のように、同じ原作のキャラでも、別の扉である可能性はあります。
鷹野は現在この世界へ干渉出来ない模様です。
直接殴り込みに来られたら、その限りではありませんが。

906 : ◆QJWUEHXtwM :2007/08/19(日) 15:35:54 ID:B97YXLtj


【QJWUEHXtwM】
【装備】:???
【所持品】:???
【状態】:???
【思考・行動】
0:そろそろメインロワに帰る
1:北川の脱童貞だけはさせない
2:いい加減、CLANNADやひぐらしのなく頃に祭やらないとなぁ



「…なあ、何か状態表に余計なの無かったか?ってか、ケンカ売られた気がする」
「よそ見している暇はありませんよ、北川さん。ツモ」

907 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/08/19(日) 22:22:13 ID:9+X4DNvc
新スレはこちら。

ギャルゲ・ロワイヤル 作品投下スレ7
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