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ギャルゲ・ロワイアル 作品投下スレ4

1 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 00:55:08 ID:/5y+wFSC
ここは、「ギャルゲーキャラでバトルロワイヤルをしよう」というテーマの下、
リレー形式で書かれた作品を投下するための専用スレです。

前スレ
ギャルゲ・ロワイヤル 作品投下スレ3
http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gal/1181225914/

投下前の予約はしたらば掲示板の予約スレで行なってください。
ギャルゲロワ専用したらば掲示板
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/8775/

作品に対する批評感想、投下宣言は雑談感想スレで行なってください。
ギャルゲ・ロワイアル感想雑談スレ3
http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gal/1181484629/

基本ルールその他は>>2以降を参照してください。
sage進行でお願いします。

2 :ルール:2007/06/22(金) 00:56:03 ID:/5y+wFSC
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → 舞台である島の地図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。

【禁止エリアについて】
放送から2時間後、4時間後に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。

【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。

3 :ルール:2007/06/22(金) 01:04:51 ID:/5y+wFSC
【舞台】
http://www29.atwiki.jp/galgerowa?cmd=upload&act=open&pageid=68&file=MAP.png

【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24

【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述する。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

4 :ルール:2007/06/22(金) 01:06:23 ID:/5y+wFSC
【首輪】
参加者には生存判定用のセンサーがついた『首輪』が付けられる。
この首輪には爆弾が内蔵されており、着用者が禁止された行動を取る、
または運営者が遠隔操作型の手動起爆装置を押すことで爆破される。
24時間以内に死亡者が一人も出なかった場合、全員の首輪が爆発する。
実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
放送時に発表される『禁止エリア』に入ってしまうと、爆発する。
無理に外そうとしたり、首輪を外そうとしたことが運営側にバレても(盗聴されても)爆発する。
なお、どんな魔法や爆発に巻き込まれようと、誘爆は絶対にしない。
たとえ首輪を外しても会場からは脱出できない。

【デイパック】
魔法のデイパックであるため、支給品がもの凄く大きかったりしても質量を無視して無限に入れることができる。
そこらの石や町で集めた雑貨、形見なども同様に入れることができる。
ただし水・土など不定形のもの、建物や大木など常識はずれのもの、参加者は入らない。

【支給品】
参加作品か、もしくは現実のアイテムの中から選ばれた1〜3つのアイテム。
基本的に通常以上の力を持つものは能力制限がかかり、あまりに強力なアイテムは制限が難しいため出すべきではない。
また、自分の意思を持ち自立行動ができるものはただの参加者の水増しにしかならないので支給品にするのは禁止。

5 :参加者リスト :2007/06/22(金) 01:09:26 ID:/5y+wFSC
4/6【うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
  ○ハクオロ/●エルルゥ/○アルルゥ/○オボロ/○トウカ/●カルラ
3/3【AIR】
  ○国崎往人/○神尾観鈴/○遠野美凪
2/3【永遠のアセリア −この大地の果てで−】
  ○高嶺悠人/○アセリア/●エスペリア
2/2【Ever17 -the out of infinity-】
  ○倉成武/○小町つぐみ
1/2【乙女はお姉さまに恋してる】
  ○宮小路瑞穂/●厳島貴子
4/6【Kanon】
  ●相沢祐一/○月宮あゆ/○水瀬名雪/○川澄舞/●倉田佐祐理/○北川潤
3/4【君が望む永遠】
  ○鳴海孝之/●涼宮遙/○涼宮茜/○大空寺あゆ
1/2【キミキス】
  ●水澤摩央/○二見瑛理子
4/6【CLANNAD】
  ●岡崎朋也/○一ノ瀬ことみ/○坂上智代/○伊吹風子/●藤林杏/○春原陽平
3/4【Sister Princess】
  ○衛/○咲耶/○千影/●四葉
4/4【SHUFFLE! ON THE STAGE】
  ○土見稟/○ネリネ/○芙蓉楓/○時雨亜沙 
2/5【D.C.P.S.】
  ○朝倉純一/●朝倉音夢/●芳乃さくら/○白河ことり/●杉並
4/7【つよきす -Mighty Heart-】
  ●対馬レオ/○鉄乙女/○蟹沢きぬ/●霧夜エリカ/○佐藤良美/●伊達スバル/○土永さん
4/6【ひぐらしのなく頃に 祭】
  ○前原圭一/●竜宮レナ/○古手梨花/●園崎詩音/○大石蔵人/○赤坂衛
2/3【フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
  ○双葉恋太郎/○白鐘沙羅/●白鐘双樹

【残り52/63名】 (○=生存 ●=死亡)

6 :Sacrifice of maiden(修正) ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/22(金) 01:11:52 ID:/5y+wFSC
コップはサイドテーブルにそれとなく置いてみた。
その後、片腕の使えない大石のもとへ皿を運ぶ。
乙女と同じように渡されるものだと思い込んでいた大石は、あゆが大石のベットに座り込んで不思議に思う。
だが次の行動で、あゆが何をしたいのか即座に理解した。
「あ、あのぉ〜つ、月宮さん?」
「駄目だよ大石さん。あーん」
苦笑いを浮かべる大石の口に、スプーンを差し出す。隣で見ていた乙女は、思わず吹き出してしまう。
なんとか自分で食べられるとアピールするが、あゆは断固として譲らなかった。
そして数秒後には、照れながら口を開く大石の姿がそこにあった。
「ふむ。高望みはしていなかったが、これはありがたいな」
「え、ええ。そう、ですね」
「うぐぅ……料理出来なくてごめんなさい」
泣きそうになるあゆに、乙女は笑って弁解する。
「違うぞあゆ。私が言っているのは、この状況下で肉が食べられる事を高望みしていなかったと言う事だ」
「え?」
大石にスプーンを差し出すあゆを見つる乙女は、温かい目をしている。
「お前には感謝している」
大石も、乙女と同じような瞳であゆを見ていた。
なんだか恥ずかしくなったあゆは、誤魔化すように二人にコップの麦茶を促す。
食事もあらかた済んでいたためか、大石は疑問を持たずに動く方の左手でサイドテーブルからコップを手に取る。
シンクロしたように、乙女も喉を潤すためコップを手に取る。
そしてほぼ同時に、二人はコップを一気に傾け……それが合図だった。
喉を押さえだ苦しみだした二人は、口に含んでいた麦茶を赤く染めて吐き出す。
大石から吐き出された麦茶と思えないぬめった液体が、あゆの顔に飛び掛かる。
「え? ぁれ?」
そして、状況が把握できないあゆの背後の扉がゆっくりと開く。



     ◇     ◇     ◇     ◇

7 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:12:06 ID:C465K/vo
>>1
遅くなったけどスレ立て乙。
さっそく支援です。

8 :Sacrifice of maiden(修正) ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/22(金) 01:13:03 ID:/5y+wFSC



周辺の民家から包帯やガーゼを集めていた名雪は、予想以上に時間が掛かって不安になっていた。
(あゆちゃん、二人の看病出来てるかな)
早く怪我した二人やあゆのもとに戻り、自分も看病してあげたい。
それに、誰かのためとは言え一人で走っているのは正直怖いものである。
だからこの一仕事が終わり次第、名雪はみんなの傍で安心したかった。
そんな事を考え玄関の戸を開けると、中からは芳ばしい匂いがしてきた。
どうやら、食事の用意でもしたらしい。
(そう言えば、私まだご飯食べてないよぉ〜)
お腹をさすり、名雪は寝室へと足を急がせる。仲間は扉の向こう側だ。
だが、扉を開けようとした瞬間、部屋の中から二つの呻き声が挙がる。
(え? な、なに?)
ドアノブに手を掛けた体が硬直する。名雪は音を立てないよう、ドアを少し開けた。
隙間から飛び込んできた光景は、一瞬では理解できなかった。
口から血を流す大石と、それを押さえつけるようなあゆの姿。
なにより意味が分からないのは、あゆの顔に掛かった誰かの血。
と、あゆに押さえつけられている大石と目があった。
(タ・ス・ケ・テ?)
名雪には、大石の口がそう動いたように見えた。そして、こちらに手を伸ばしながら事切れた。
手を伸ばした先を確認するため、あゆは静かに後ろを振り返る。
「ひっ!」
ただ一人無傷だった少女を見て、包帯やガーゼを落としてしまう。
「な、ゆき……さん?」
あゆの顔もそうだが、服にも血がべったりと付着していた。
こんな大量の血を浴びる状況がどうやって出来上がるのか、名雪は考えたくなかった。
あゆを視界に捕らえたまま、乙女の方も確認する。
彼女も、大石とほとんど同じような状態で事切れていた。

9 :Sacrifice of maiden(修正) ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/22(金) 01:14:13 ID:/5y+wFSC
苦悶の表情で天井を仰ぎ、口から血を吹き出す所まで一緒である。
名雪の心に新しく出来た仲間の面影が、血で覆いつくしたように染まって消えていく。
最後に残ったのは、血まみれでこちらを見つめるあゆだけだった。
「あ、あの、名雪さん」
赤く染まったあゆの両手は、名雪に更なる衝撃を与える事となる。
その不気味な光景に絡め取られたのか、逃げ出そうにも体が動かない。
この二人を殺したのはあゆではないかという、認めたくない結論が足元まで迫ってくる。
そして、恐怖を疑惑に決定付けたのはあゆの表情だった。
(なんであゆちゃん泣いてないの?)
仲間だったはずの二人が死んだのに、あゆは泣き叫ぶ事無く平然としていた。
仮にあゆが悲鳴をあげていたのならば、名雪とて外部犯の可能性を考えた。
だが、彼女は名雪が居ないと思っていたのか悲鳴をあげなかった。
つまり、あゆはこの事態を想定していた事を物語っている。
必死に自分の見解を組み立てる名雪の視界に、近くまで迫っていたあゆが飛び込む。
名雪が考えている間に一歩一歩近付いていただけなのだが、そうとは知らない名雪は怯えて突き飛ばす。
冷静になる事が出来ない緊迫した精神状態では、あゆが襲い掛かってきたとしか見えない。
(にげ、なきゃ……)
気が動転した名雪は、部屋を出るのを忘れ転がるように部屋の奥へと走り出す。
逃げるつもりだったはずが、慌て過ぎて逃げ場のない場所を選んでしまう。
けれど、運は彼女を見放してはいなかった。
名雪の傍で死んでいる乙女の隣に、槍が立てかけてあったから。
ポケットにしまったメスでは頼りない。けれどこれならば牽制できる。
手に持った槍の重さに驚くが、勇気を振り絞ってあゆに向かい合う。矛先を向けたまま。



     ◇     ◇     ◇     ◇




10 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:14:16 ID:C465K/vo
支援

11 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:15:24 ID:KkNkJ2Gm
   

12 :Sacrifice of maiden(修正) ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/22(金) 01:15:52 ID:/5y+wFSC
あゆは、二人の死体と槍を構える名雪を交互に見て混乱していた。
(なんで? 何がどうなってるの?)
涙を流すという思考より、現状を把握しなければと言う気持ちが優先される。
けれど、考えても考えても答えが導き出される事はなかった。
助けを求めるように、部屋の隅で槍を構える名雪に手を伸ばした。
「来ないで!」
その叫びは、あゆを転倒させるほど鋭かった。
「ど、どうしたの名雪さん」
尻餅をつきながら、あゆは名雪を見上げた。彼女は、なぜこちらに槍を構えているのだろうか。
そろそろと立ち上がり、あゆが右に移動すると、槍の先端も右を向く。
元の位置に戻ると、槍もまた元の位置に戻った。
ここに来て、名雪が武器を突きつけていると言う事実を認めた。
「お、落ち着いてよ名雪さん」
恐る恐る、手を伸ばして理解を得ようとする。
だが、差し出された手を目掛けて名雪は無我夢中に槍を突き出した。
「お願い! 来ないで!」
「ぅわあッ」
再び尻餅をついてしまう。それに気付かぬまま、名雪は槍を振り回し続けた。
「どうして!? どうしてそんな事するの!?」
「それは私が聞きたいんだよ! どうして二人を殺したの!?」
「え」
「なんで二人とも同じように死んでるの? なんで二人とも抵抗しなかったの?
  なんで誰もいた形跡がないの? なんで……なんであゆちゃんだけは無事なの!?」
「ぁ」
求めていた答えの一つは与えられた。けれど、それは決して望まない答えだった。
「ねえ! 犯人がいるって言ってよ! お願いだから!」
名雪は大粒の涙を零しながら、すがる様な気持ちであゆに訴え掛ける。
けれど、名雪の問いかけに答える事は出来ない……この部屋には「三人以外」誰も居なかった。

13 :Sacrifice of maiden(修正) ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/22(金) 01:16:53 ID:/5y+wFSC
「ねえ! あゆちゃん!!」
「ぼ、ボク殺してないよ! 本当だよ!」
「じゃあ、犯人はどこに行ったの!? それとも、二人が自殺したって言うの!?」
「そ、それは」
畳み掛けるように押し寄せる質問に、あゆは何一つ答えられなかった。
ただ、自分は殺していないとアピールするしかないのだ。
何度か続いた怒声のような問答の末、名雪は諦めたように呟いた。
「出てって」
「ぇ」
「出てって! 私の前から居なくなって!!」
「や、やだよ!」
このまま誤解されたまま別れるなんて、あゆには出来なかった。
だから、つい力んでさらに一歩踏み込んでしまう。ただ信じて欲しかっただけだから。
だがその一歩が引き金となり、名雪は槍を振り上げあゆの心臓目掛けて突撃してきた。
まさか突撃してくると思っていなかったあゆは、突然すぎて反応できない。
そのままあゆの心臓を槍が抉るかと思われたが、重心に振られ狙いがずれる。
「痛ぃッ!」
「きゃぁ!」
槍があゆの左肩の肉を削り取るが、名雪はそのまま勢いを殺せずあゆと絡まるように転倒する。
床に寝転ぶあゆと、それに覆いかぶさるようにもたれる名雪。
先に状況に気付いたのは、あゆだった。
「お願い名雪さん! ボクの事信じて!」
「信じてたよ! 信じてたんだよ! それのに……それなのにぃ!」
あゆの首を絞めて、名雪は泣き叫ぶ。
「乙女さんも大石さんもあゆちゃんも、せっかく出来た仲間だったのに! 嬉しかったのに!」
「かはっ……ぉ、お願い、だよぉ!」
「どうして!? どうしてなのあゆちゃん!?」
あゆの叫びは、取り乱した名雪を冷静にする事は出来なかった。
ここに誰かいれば仲裁してくれたかもしれないが、いるのは自分達だけ。
目の前の名雪が霞んでいくなか、あゆは祐一の事を思い出していた。
(祐一君……助けて)

14 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:17:08 ID:C465K/vo
sienn

15 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:17:17 ID:KkNkJ2Gm
   

16 :Sacrifice of maiden(修正) ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/22(金) 01:17:56 ID:/5y+wFSC
だが、その考えをすぐ振り払う。
(違うんだ。助けられてばかりじゃ駄目なんだ)
乙女を助けるときに誓ったのだ。助けられるばかりでは駄目なのだと。
手足をばたつかせ、名雪を押し返そうと踏ん張る。
しかし、左肩の痛みもあって力が思うように出ない。
(なにかで……怯ませなきゃ)
頭の傍に落ちていた包帯を名雪に投げつけるが、効果はない。
そうしている内に、意識は遠のき視界が暗く沈んでいく。
最後触れた硬いものに願いを込め、名雪に投げつける。
「ぎゃう!」
喉を締め上げる力が急に弱まり、酸素が体内を一気に駆け巡る。
酸素を欲していた体について行けず、あゆは激しく咳き込む。
そんなあゆを放置して、名雪はあゆから離れ右目を抑えて床に転がっている。
「目が! 痛いよ! イタイイタイ! あぁぁッぁああ!!」
あゆが咄嗟に握ったそれは、名雪のポケットから滑り落ちたメスだった。
転倒した際ポケットから飛び出たのを偶然にも掴んだらしい。
そしてそのメスは、名雪の右目に深々と突き刺さっていた。
左目からは透明な涙、右目からは赤い涙を流し、彼女は立ち上がる。
「私も、私も殺すの!? この人殺しぃぃぃぃぃぃいい!!」
「ぁ……ぼ、ボク……」
確かに、名雪の目を潰したのはあゆだ。けれど、殺したのは違う。
それだけを言葉にしたかったのに、あゆの口からは何も出てこない。
槍を手放してしまった名雪は、右目のメスは抜かずもう一本のメスを取り出す。
「……なない。私……から」
「ぇ、ぁ、な、何て言ったの?」
くぐもった呟きを馬鹿正直に聞き返してしまう。
「私は死なない! 私が祐一を守るんだから!」
怒りや悲しみや苦痛でない、燃えるような瞳であゆを睨む。
「だから……だから! 祐一を殺すかもしれない人殺しなら、例えあゆちゃんだって」
喋り終わる前に、名雪はあゆに飛び掛ろうと足を踏み出す。
「私が殺すんだよぉぉぉぉぉぉぉ!」

17 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:18:23 ID:KkNkJ2Gm
   

18 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:18:53 ID:C465K/vo
sien

19 :Sacrifice of maiden(修正) ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/22(金) 01:19:38 ID:/5y+wFSC
が、叫びは空しく名雪は転がっていた槍の柄に足をすくわれる。
あゆにあと一歩という所でうつ伏せに倒れこむ。
「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
倒れると同時に、名雪は今迄で一番の悲鳴をあげた。
あゆは、一瞬虫の潰れたような音を聞いた気がする。
「な、なゆき……さん?」
警戒しながらも、かがんで名雪の顔を見る。
「ぃゃ」
名雪の右目のメスは、柄が見えないくらい潜り込んでいた。
「いやぁぁぁ! 名雪さぁぁぁぁぁん! やだやだやだやだやだやだァァァァァァァァ!!」
名雪の最期は、偶然の重なりによってもたらされた。事故と言えば事故である。
一人きりになったあゆは、ここで初めて泣き叫ぶ。
部屋で物言わなくなった亡骸が、生前の彼らを思い出させる。
(何も心配はいらないぞ、私がお前を守ってやるからな)
(こんな男、しんよ、う、なさるんで、すか?)
(無事でよかったよぉ〜)
三人と交わした言葉が脳裏に浮かぶ。それは一つずつあゆの心を締め上げる。
「あ、ぁぁ、ぅぁ、ぃゃ……」
デイパックを握り締めると、あゆは民家から飛び出した。
頼もしくて優しい乙女は死に、逞しそうな大石も死に、友達である名雪も死んだ。
死亡の理由はとても簡単だ。簡単な答えだからこそ、あゆは理解したくない。




――自分が手に掛けたなどと認めたくないから





【F-4 住宅街北部エリア/1日目 朝】

20 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:20:33 ID:C465K/vo
sien

21 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:20:38 ID:KkNkJ2Gm
   

22 :Sacrifice of maiden(修正) ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/22(金) 01:21:14 ID:/5y+wFSC

【月宮あゆ@Kanon】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダムアイテムの内容は不明】
【状態:疲労大。混乱。恐怖。喉に紫の痣。左肩に抉り傷(左腕に力が入らない)】
【思考・行動】
1:ここから逃げたい
2:早く祐一と会いたい
3:往人を説得したい
【備考】
※名雪は死んだと思っています
※佐藤良美を疑ってはいません
※芙蓉楓を危険人物と判断
※前原圭一・古手梨花・赤坂衛の情報を得ました(名前のみ)
※ハクオロという人物を警戒(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※名雪の第三回放送の時に神社に居るようようにするの情報を得ました
  (禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)





23 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:21:45 ID:KkNkJ2Gm
   

24 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:22:10 ID:MY5h3B79
 

25 :Sacrifice of maiden(修正) ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/22(金) 01:22:16 ID:/5y+wFSC

「うまくやってくれみたいだね」
四人と別れてから、良美は着替えつつ身を隠して休んでいた。
こちらを信じきったあゆならば、少なくとも乙女と大石には飲料水を飲ませる事が出来ただろう。
前もってペットボトルの臭いは確認しておいたが、無臭なので問題ない。
あゆと名雪の関係は詳しく知らないが、隣に居た人間が死んだ状況下で二人が疑心暗鬼に陥るのも必然だ。
仮に良美を疑おうとしても、飲んでしまった証拠はどうしようもない。
そのため、毒の効果を確かめるため近くで監視しようとも考えたが、乙女に気取られては危険だ。
だから、離れた場所で悲鳴が聞こえてくるのを待っている事で妥協する。
結果として、四人が入った民家から泣き叫ぶ声と悲鳴が漏れてきた。
「無事ならともかく、怪我した鉄先輩なんてねぇ」
大石という男も、あの怪我では満足な『駒』にはなるまい。
第一、圭一の顔を知っている以上、生かす価値はない。
それでも、接触して有力な情報は手に入れられた。
「相沢祐一と赤坂衛……ね」
名簿を確認すると、良美は森の中へと消えていった。



【F-4 雑木林/1日目 朝】


26 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:22:21 ID:C465K/vo
sien

27 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:22:41 ID:KkNkJ2Gm
   

28 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:23:03 ID:MY5h3B79
 

29 :Sacrifice of maiden(修正) ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/22(金) 01:23:42 ID:/5y+wFSC
【佐藤良美@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:S&W M36(2/5)、破邪の巫女さんセット(巫女服のみ)】
【所持品:支給品一式×2、S&W M36の予備弾15、錐】
【状態:やや疲労、手首に軽い痛み、重度の疑心暗鬼】
【思考・行動】
基本方針:エリカ以外を信用するつもりは皆無、確実にゲームに乗っていない者を殺す時は、バレないようにやる
     利用できそうな人間は利用し、怪しい者や足手纏い、襲ってくる人間は殺す。最悪の場合は優勝を目指す
1:エリカ、ことみを探して、ゲームの脱出方法を探る
2:『駒』として利用出来る人間を探す。優先順位は赤坂衛と相沢祐一
3:少しでも怪しい部分がある人間は殺す
4:もう少しまともな服が欲しい
【備考】
※メイド服はエンジェルモートは想定。現在は【F-4】に放置されています。
※良美の血濡れのセーラー服は【E-5】に放置されています
※芙蓉楓を危険人物と判断(名前のみ)
※ハクオロという人物を警戒(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※名雪の第三回放送の時に神社に居るようようにするの情報を得ました
  (禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)






30 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:24:02 ID:MY5h3B79
 

31 :Sacrifice of maiden(修正) ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/22(金) 01:24:41 ID:/5y+wFSC
あゆは誤解していた。最後に手に掛けたと思い込んだ名雪は生きていたのだ。
誰もいなくなった室内で一人、嗚咽を漏らし拳を握る。
メスは脳をそれて頭蓋骨に突き刺さっていた。取り出す事はもはや不可能だ。
死ぬことはなかったが、この痛みは一生抱えて生きなくてはならない。
涙を流しながらも、彼女は痛む右目を押さえ何とか立ち上がる。
顔を押さえる手から肘を伝い、赤い涙が途切れる事無く垂れ落ちる。
「あゆちゃん……祐一……」
あんなに信じていた友達は、人殺しと成り果てた。いつの間にか彼女はこの殺し合いに乗っていたのだ。
乙女や大石を引き連れていたのは、一気に殺すつもりだったからだろう。
そこに、名雪も居合わせたから一緒に殺されそうになったのだ。
この真実を、早く祐一に伝えなければならない。そうしないと、祐一があゆに殺されてしまう。
勇気を振り絞る。乙女と大石の治療のため持ってきたはずの包帯を、なんとか顔に巻きつける。
目の前の半分が暗闇となった今……誰よりも早く祐一を探して、優しく包んで欲しかった。
その甘い気持ちを無理矢理押さえ込み、しなければならない事を胸に誓う。
二人の死体を新しい毛布で包み、床に落ちていた槍を拾い頭を下げて部屋を出ようとする。
と、そこで壁に掛けられたコルクボードに目が留まった。
それは乙女と大石の残した何枚かのメモだった。コルクボードから引き剥がす。
(乙女さん、大石さん。短い間でしたけど、ありがとう御座いました)
寝室の扉を閉めて、名雪は民家を飛び出した。短い間だったが彼らは大切な仲間だった。
右目があった部分は歩くたび痛むし、包帯はすぐに赤く染まっていく。それでも、彼女は走り出した。
……早く、祐一を助けたいから。



【F-4 住宅街北部エリア/1日目 朝】


32 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:25:01 ID:C465K/vo
sien

33 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:25:15 ID:KkNkJ2Gm
   

34 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:25:25 ID:MY5h3B79
 

35 :Sacrifice of maiden(修正) ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/22(金) 01:25:48 ID:/5y+wFSC
【水瀬名雪@kanon.】
【装備:槍 学校指定制服(若干の汚れと血の雫)】
【所持品:支給品一式 破邪の巫女さんセット(弓矢のみ(10/10本))@D.C.P.S.、乙女と大石のメモ、大石のデイパック、乙女のデイパック】
【状態:疲労大。かなりの出血。右目破裂(頭に包帯を巻いています)。頭蓋骨にひび。軽欝状態。強い決意】
【思考・行動】
1:早く祐一を探す
2:あゆちゃん……
3:祐一を襲いそうな人殺しは殺す。
4:衛と咲耶も探す
5:1〜4のために人のいる場所に向かう
【備考】
※芙蓉楓を危険人物と判断
※名雪が持っている槍は、何の変哲もないただの槍で、振り回すのは困難です(長さは約二メートル)
※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※前原圭一・古手梨花・赤坂衛の情報を得ました(名前のみ)
※ハクオロという人物を警戒(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※乙女と大石のメモは目を通していません。


※【F-4】一面に悲鳴が響きました。隣接するマスに届いたかは不明。
※月宮あゆ、水瀬名雪がどこに向かったかは次の書き手さんにお任せします。
  ただ二人の通った後は、注意すれば血痕が残っているのが分かります。


【鉄乙女@つよきす -Mighty Heart- 死亡】
【大石蔵人@ひぐらしのなく頃に 死亡】

36 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 01:26:35 ID:MY5h3B79
 

37 : ◆Noo.im0tyw :2007/06/22(金) 22:13:36 ID:C465K/vo
カチ、コチ、カチ、コチ……。
秒針の進む音が3人の耳に響く。
――――カチ。
長針が12を指し、短針が8を指す。それを機に『ハクオロ』、『神尾観鈴』、『二見瑛理子』は一斉に立ち上がり、一階へと繋がる階段を上り始めた。階段を上りきり観鈴以外はそのまま出口を抜ける。
しばらくした後、観鈴が追いつき、3人で外に出る。そして3人とも神妙な顔である場所を目指し、歩き始める。
――――禁止エリアとなってしまった『C-2』へと向かって……。



◇  ◇  ◇



―――時は遡ること数十分。そこにはテレビでよく見るコメディーな風景が展開されていた。

「早くっ…水を……」
悶えながらハクオロは観鈴と瑛理子に向かって懇願する。だが、少女2人組は…
「ハクオロさん……ぷぷぷぷぷ……」
「クククククっ……あははははは」
笑い方は違うが、二人とも手をおなかに当てこれでもかというくらい笑い転げている。
少女達とは打って変わって、仮面の男はだんだんと麻痺していく舌に恐怖を覚えていた。
「頼むっ…!!観鈴、瑛理子…。お願いですから……」
自分のデイパックから水を出せばいいのだが、あいにくハクオロのデイパックは観鈴が管理していた。
「ごめんね、ハクオロさん…。はいっ」
最初は笑ってみていた観鈴だが、ハクオロが地面を這い蹲う姿を見てとうとう水を渡す。
それを脱兎のごとく奪い取り、観鈴から渡された水を口に含み終え、ハクオロはやれやれと言わん顔で2人を見る。
「全く…。お前らは人が困ってるのに助けようともしないのか…」
ため息をつきながらつぶやく。
「ごめんなさいね。あまりにも貴方が滑稽だったから…ふふ」
先程の光景を思い出し、瑛理子はまた笑う。


38 : ◆Noo.im0tyw :2007/06/22(金) 22:14:46 ID:C465K/vo
「あれは、ハクオロさんが悪いよ。面白すぎたもん」
ハクオロは2人の言葉に多少驚愕しつつも、
(これで、瑛理子に警戒心は解いてもらえたか…)
と、思考する。この程度の辛さで信用を得られるならたやすいことである。

「さて、一息ついたし、そろそろここから出ようか」
自分のデイパックをしっかりと確保しつつハクオロは提案する。
「うん、もうたっぷりここにいたもんね」
観鈴もハクオロに賛同するように立ち上がる。それを見て、ハクオロは瑛理子を促すように彼女の顔を見た。――――だが、
「ちょっと待って欲しいわ。今はまだ早すぎる」
瑛理子から返ってきた答えは、ハクオロの想定の範囲外であった。
「早すぎるとはどういうことだ……?」
瑛理子の意図が判らず、彼女に質問する。
「今、時刻は7時20分。そして、最初の禁止エリアが発動されるのは8時00分。今までとルールが変わるのだから、しっかりと準備をしてこれからを望みたいの」
「ふむ…」
確かに、とハクオロはこの少女に脱帽した。
「鷹野という女性によれば、この首輪は禁止エリアに接触してもすぐには爆発しないはず。なら、まずはこれを確かめたい。けど……」
そこまで言うと瑛理子はこちらを一瞥し、話を続ける。

「それをするには、3人のうち誰かが禁止エリアに入らないといけなくなるわ……」
淡々と告げる瑛理子にゴクリ、と観鈴がつばを飲み込む。
「それは、私たちの誰かが死んじゃうかもしれないんですよね…?」
今まで黙って話を聞いていた観鈴が、俯きながらたずねる。
「そうね…。その可能性も否定できないわ」
現実的な答えが観鈴の心に突き刺さる。
「……だったら、私は絶対反対です!! せっかくできた友達が死ぬなんて、そんなの私には耐えられない……」
肩を震わせながら、観鈴は瑛理子に叫ぶ。その姿を見て、瑛理子は苛立ちを覚えた。
「………でしょ」
蚊の鳴くような声で瑛理子が何かをつぶやく。


39 : ◆Noo.im0tyw :2007/06/22(金) 22:16:05 ID:C465K/vo

「えっ…?」
何を言ったか聞き取れず、観鈴は聞き返す。
「……しょうがないって言ってるの!! 私だってこんな案は認めたくない!! でも、今やらなきゃ首輪を調べるチャンスはなくなるかもしれない。……だったらやるしかないでしょ?!」
今度は瑛理子が肩を震わせながら絶叫する。その瞳にはうっすらと涙が見えた。
「でも、でも……そんなのって……!!」
頭では理解してても、観鈴は認めたくなかった。――――この中から誰かがいなくなる。そんなの絶対に嫌だった。
少女たちがお互いに涙し、叫びあう。願っていることは同じなのに、どうしてこんなことになってしまったのか? 涙しながら、互いをにらみ合う二人。
――――そのにらみ合いにピリオドを打ったのは、ハクオロだった。

「もういい、二人とも!!もう、やめてくれ…!!」
突然の声に驚き、2人がハクオロを見る。
「……禁止エリアには、私が接触する」
「そんなっ、ハクオロさん、ダメだよ!!」
ハクオロの一声に観鈴は必死になってとめようとする。
「いや、観鈴、これでいいのだ。首輪はすぐには絶対に爆発しない、これは確かだ」
真剣な顔で観鈴を見つめる。
「エリアに踏み込んだ瞬間、首輪が爆発するわけじゃない、けど……安易に近づくのはお勧めできない。こちらとしてもそんな無様な死に方は面白くない。そう、鷹野は言っていたはずだ。ならば、踏み込んだだけならば爆発はしない、……そうだろ瑛理子?」
放送の言葉を1つ1つ思い出しながらハクオロは言葉をつむぐ。
「えぇ。……でもそれならば私がエリアに入っても変わらないわ」
「そうだよ!別に私が入ったって変わらな…」
「いや、ダメだ。私がやる」
ハクオロが瑛理子と観鈴の言葉を遮る。


40 : ◆Noo.im0tyw :2007/06/22(金) 22:17:06 ID:C465K/vo
「この中で一番身体能力が高いのは私だ。ならば、私がやるのが道理だろう?」
ハクオロは笑顔で瑛理子と観鈴に言葉を投げかける。
「「……ごめんなさい」」
「なに、謝ることはない。だから二人とも仲直りだ。ほれっ」
ハクオロは瑛理子のほうを向いて、彼女の手をとる
「瑛理子…お前の判断は正しい。だから自分を恨むな。私に任せろ」
そして、今度は観鈴のほうを向き、彼女の手をとる。
「観鈴…。お前は優しすぎるからこの判断は辛いかもしれない。でも、これはやらなきゃならないことなんだ、すまない。判ってくれ」
観鈴の頬を伝う涙を拭い、観鈴の手と瑛理子の手を繋ぎ合わせる。
「二人とも、私を信じてくれ……」
「頼んだわ、ハクオロ。それと観鈴、ごめんね……」
「ごめんね瑛理子さん。私が子供だったよ」
二人が仲直りしたのを見て、ハクオロは満足する。

「さて、ではこれからについてもう一度話そうか……」





41 : ◆Noo.im0tyw :2007/06/22(金) 22:17:46 ID:C465K/vo
◇   ◇   ◇



一悶着あったあと、私たちはハクオロを中心に硬い信頼が結ばれた。初めて会ったあの『鳴海孝之』とは全く違い、この男は全面的に信用できる。観鈴は多少メンタルが弱いのが目立ってしまうが、そこは幼さゆえ、と言えよう。
ともかく、私たちはこれからの予定についてこと細かく話し合った。―――もちろん筆談で。

『新市街地へ向かうのは確定ね?』
『あぁ、もちろんだ。そしてその前にC-2に接触を図る。』
C-2という文字に瑛理子のペンが止まる。それを見てハクオロはポンっと瑛理子の肩を叩く。
「なに、大丈夫だ。お前の作戦を私は信頼しているからな」
「……えぇ」
本当にハクオロは凄い男だと瑛理子は感心した。どんなことがあっても、人を疑うことをせず、寧ろ暖かく包んでくれる。それが、とても心地よかった。
(観鈴が惚れ込むのも無理はないか……)
フフっと二人を見て笑う。二人ともわけがわからない、という顔をしていた。
『そして、その後は工場に向かう』
『そこで、首輪の解除のための道具を手に入れる』
ハクオロと瑛理子が顔を見合わせ頷きあう。―――その時、突然。
「ちょっと待ってくださいよー!!」
と、観鈴が声を発した。観鈴の役目は、二人のメモをわかりやすく書き直すと言うことだった。二人が中断しているうちに必死に書き記す。そしてそれに伴い筆圧がつよくなっていく。
必然的にそれに耐えられなくなったメモがビリリという音と共にやぶれさる。


42 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 22:19:01 ID:YY4ZDXcQ
支援

43 : ◆Noo.im0tyw :2007/06/22(金) 22:19:08 ID:C465K/vo
「がお……」
信じられない光景に観鈴の表情が崩れ始める。
「わぁっー!!泣くなっ観鈴!!」
ハクオロが必死に観鈴をあやし、瑛理子が素早く観鈴の代わりにメモをまとめる。
「いい?情報っていうのは、こういう風に必要なことだけをまとめればいいの」
はいっと観鈴の手に自分のまとめたメモを渡す。
彼女の顔がぱぁーっと明るくなり、ほっとし、筆談を再開する。

『さて、あとは…8時になるのを待つのみね』
『あぁ、準備は怠らないようにな』
『そうね。ここらへんにあった救急道具は全てデイパックの中にいれたしもう大丈夫でしょ?』
『あぁ。観鈴、そっちは大丈夫か?』
『にはは……ぶい』
書きながら観鈴はこちらにむかってピースをしてくる。ふと、ハクオロを見ると彼もまた観鈴に向かってピースをしていた。
「なに、してんのよ……?」
正直、大の男がピースをしているのは見ていてあまり心地の良いものではなかった。
それどころか、
「なんだ、瑛理子はやらないのか?」
と、まで聞いてくる。ウっ…とあとずさるが、それと同時に観鈴が迫ってくる。
「瑛理子さん、やらないの……?」
――――うるうるとした瞳に上目遣いのコンボ。瑛理子の敗北は必然だった。
ぎこちないピースサインにひきつった笑顔。
(これで……満足でしょ!?)
「瑛理子さん……≪ぶい≫は…?」
この時の私の顔はたぶん、全世界で誰よりも悲惨な顔をしていただろう…。
頬を染め、もうピースと判断できるかわからない手の形で私は、
「…………ぶい」
と呟いた。観鈴も満足したらしく、キャッキャッと騒いでる。ハクオロもハクオロで私をみて笑っていた。
今までの私だったら、怒りここから抜けていたかもしれない。でも、今はそんな気は全く起きなかった。
――――冷え切った心を、この二人が溶かしてくれた。そんな気がした。


44 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 22:19:47 ID:LlR8AcDw
支援

45 : ◆Noo.im0tyw :2007/06/22(金) 22:21:52 ID:C465K/vo
◇  ◇  ◇



――――そして、現在(いま)に至る。
私、『神尾観鈴』が二人から一端離れたのは、ロビーに先程のメモを置いてきたからだ。
メモには、

『・これからのルート
 C-2→プラネタリウム→レジャービル→プール→廃墟群→工場
 ・目的
 首輪解除/ゲームからの脱出/そのための仲間探し
 ・探している友人
 アルルゥ/オボロ/トウカ/国崎往人
 ・これを書いた人
 ハクオロ/神尾観鈴/二見瑛理子

※このメモはもっていかないでください。
私たちと同じ意思を持つ人はどうか私たちを追ってきてください。(2日目・現在時刻8:00)』



46 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 22:22:00 ID:YY4ZDXcQ
支援

47 : ◆Noo.im0tyw :2007/06/22(金) 22:22:37 ID:C465K/vo
と、書いてある。私たちの行き先を晒すのは少し危険だと思うけど、ハクオロさんと瑛理子さんが考えたんだから間違いはない、と思う。
駆け足で二人の元に近づき、そのまま3人で歩き始める。
――――目標であるC-2に向かって。


そして歩くこと数十分。とうとう私たちは、D-2とC-2の境界線付近まで来た。
1歩踏み越えればそこはもう禁止エリア。その恐怖のせいで、知らず知らずのうちに額から汗が流れ出す。
「それじゃあ、行ってくる……」
ハクオロさんは自分のデイパックを地面へと降ろし、目の前をまっすぐ見据える。
「ハクオロ……危ないと思ったらすぐに戻って来い」
言葉は刺々しいけど、瑛理子さんは身体を震わせて激励していた。
瑛理子さんの手を握り、私もハクオロさんに何かを言おうとするが、なかなか言葉にならない。
言いたいことはいっぱいあるけど、なかなか上手く纏められなくて……。
―――――結局私の口から出た言葉は

『ハクオロさんにいてほしいな… ずっといてほしいな…』

なんて、幼稚な言葉だった。
でも、ハクオロさんは判ってくれたみたいで、笑顔でピースをしてくれる。
「二人とも離れていてくれ。万が一もあるからな……」
ハクオロさんの言葉に私と瑛理子さんは安全だと思われる位置まで下がる。そしてそれを確認したハクオロさんが意を決して禁止エリアへと踏み込む。


48 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 22:23:09 ID:LlR8AcDw
…このほのぼな雰囲気が逆に怖い支援

49 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/22(金) 22:23:38 ID:YY4ZDXcQ
支援……!

50 : ◆Noo.im0tyw :2007/06/22(金) 22:23:47 ID:C465K/vo

―――その瞬間。
数十メートル離れたこの地点からでも確認できる電子音が、ハクオロさんの首輪から発せられる。
「「ハクオロ(さんっ)!!」」
電子音が鳴っているのにも関わらず、いまだその場に立ち尽くしているハクオロに観鈴たちは戻ってくるようにと叫ぶ。
エリアに侵入してから10数秒がたった後、今まで立ち尽くしていたハクオロが、ゆっくりとこちらに向かい歩いてきた。
そして、私たちの前まで来ると地べたへと寝転ぶ。

「ハクオロさん、どうしてすぐに戻ってこなかったの?」
私たちがいくら叫んでも戻ってこなかったあの時間。そこで何をしていたのか知りたかった。
「あぁ……。最初に電子音が流れた後に、機械音が流れたんだ」
上半身だけを起こしながらハクオロは説明を始める。
「機械音…?」
新たなキーワードに瑛理子が食いつく。
「そうだ。禁止エリアに進入している、30秒以内に出ないと爆発する。とな……」
「…なるほど」
ハクオロさんの言葉を一つ一つメモをしていく瑛理子さん。
瑛理子さんと違って私は、ただハクオロさんの身体をぺたぺた触っていた。
「ハクオロさん、怪我はないよね?」
「あぁ、大丈夫だ」
ハクオロさんはにっこりと微笑み返してくれる。
「ハクオロ……礼を言うわ。ごめんなさい、危険な真似をさせて……」
瑛理子はメモをしまい、ハクオロに一礼する。
「あぁ、構わないさ。これでまた1つ脱出に関して進展したんだからな」
瑛理子さんにも笑いかけ、ハクオロさんは立ち上がる。
「さぁ、そろそろ出発だ。今は時間が惜しいからな」
そして、ハクオロさんの号令に私たちは続く。
「えぇ……そうですわね」
「うん、まずはプラネタリウムだねっ!!」


51 : ◆Noo.im0tyw :2007/06/22(金) 22:25:04 ID:C465K/vo


――――3人揃って、プラネタリウムへと向かう。
その行く先々で何が起こるか……それは誰にもわからない。


【D-2 C-2との境界線近く /1日目 午前】
【ハクオロ@うたわれるもの】
【装備:Mk.22(7/8)、オボロの刀(×2)@うたわれるもの】
【所持品:支給品一式(他ランダムアイテム不明)】
【状態:精神をやや疲労】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:観鈴と瑛理子と工場へ向かう(北部を経由して)
2:アルルゥをなんとしてでも見つけ出して保護する
3:仲間や同志と合流しタカノたちを倒す
4:観鈴と瑛理子を守る。
5:首輪の解析をする。
【備考】
※校舎の屋上から周辺の地形を把握済み
※中庭にいた青年(双葉恋太郎)と翠髪の少女(時雨亜沙)が観鈴を狙ってやってきたマーダーかもしれないと思っています。
※放送は学校内にのみ響きました。
※銃についてすこし知りました。
※大石をまだ警戒しています
※目つきの悪い男(国崎往人)をマーダーとして警戒。
※観鈴からMk.22を受け取りました
※首輪の盗聴と、監視カメラが存在する可能性を知りました。
※禁止エリアについて学びました。(禁止エリアにいられるのは30秒のみ。最初は電子音が鳴り、後に機械音で警告を受けます。)


52 : ◆Noo.im0tyw :2007/06/22(金) 22:26:03 ID:C465K/vo
【神尾観鈴@AIR】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、予備マガジン(40/40)】
【状態:健康、元気一杯】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:ハクオロと瑛理子と行動する。
2:往人と合流したい
3:首輪の解析をしたい。
【備考】
※校舎内の施設を把握済み
※大石に苦手意識
※ハクオロにMk.22を預けました
※首輪の盗聴と、監視カメラが存在する可能性を知りました。
※禁止エリアについて学びました。
※映画館に自分たちの行動を記したメモをおいていきました。



53 : ◆Noo.im0tyw :2007/06/22(金) 22:26:48 ID:C465K/vo
【二見瑛理子@キミキス】
【装備:トカレフTT33 8/8+1】
【所持品:支給品一式 ブロッコリー&カリフラワー@ひぐらしのなく頃に祭 空鍋&おたまセット@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【状態:左足首捻挫】
【思考・行動】
基本:殺し合いに乗らず、首輪解除とタカノの情報を集める。
1:ハクオロと観鈴と共に工場に向かう。
2:仮に仲間を作り、行動を共にする場合、しっかりした状況判断が出来る者、冷静な行動が出来る者などと行動したい。
3:(2の追記)ただし、鳴海孝之のように錯乱している者や、足手まといになりそうな者とは出来れば行動したくない。
4:鳴海孝之には出来れば二度と出会いたくない。
【備考】
※首輪の盗聴と、監視カメラが存在する可能性を考えています。
※目つきの悪い男(国崎往人)をマーダーとして警戒。
※ハクオロと神尾観鈴の知り合いの情報を得ました。
※パソコンで挙がっていた人物は、この殺し合いで有益な力を持っているのでは?と考えています。
※観鈴とハクオロを完全に信頼しました。
※禁止エリアについて学びました。



54 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:37:23 ID:1tyy9JFF
東より顔を見せた太陽が、殺人遊戯の場と化した孤島を黄金色に照らし上げる。
朝凪近くの微風に、木立が静かな葉擦れの音を奏でている。
双葉恋太郎とその仲間達は、木々の隙間より陽光が漏れる森の中を、緩やかな速度で歩いていた。

「――――ッ、ハ、ハア…………」
「……恋太郎さん、大丈夫?」
「余り無理しないで、一度休んだ方が良いと思うの……」

苦しげな恋太郎を見かねて、時雨亜沙と一ノ瀬ことみが気遣うように声を投げ掛ける。
視力の大半を失った状態での移動は、予想以上に困難を極めていた。
ことみの手を借りているお陰でどうにか進めてはいるものの、整備されていない道の凹凸が、生い茂る雑草が、今の恋太郎にとっては凶悪な障害物だ。
だというのに、恋太郎は一向に立ち止まろうとしない。

「休んでなんかいられない……早くハクオロという男を止めないと……四葉みたいな犠牲者が、また増えちまう……。
 あんな危険な男を放っておけば、観鈴って子も、俺達の仲間も、どうなってしまうか分からないじゃないかっ……!」

語る恋太郎の声には、鬼気迫るものがある。
それも無理は無いだろう。
ハクオロという男は、戦わずして大石と自分に深手を負わせた程、頭の切れる男。
それに加えて、四葉のような人畜無害な少女を、躊躇わずに殺せる冷徹さも持ち合わせている。
そのような男を放置しておけば、神尾観鈴だけでなく、白鐘沙羅や白鐘双樹までもが、殺されてしまうかも知れないのだ。
だから、目が見えなくとも恋太郎は歩き続ける。
実際には疲れ切った身体で凶悪犯と対峙しても、殺されるだけに決まっているのだが――そこまで考えられる程の冷静さが、今の恋太郎には無かった。
積み重なる疲労が、閉ざされた視界が、募る焦燥感が、恋太郎から判断力を奪ってゆく。
更に。

『――皆、もう待ち切れないって感じね』


弱り目に祟り目という諺もあるが、突如鳴り響いた第一回定時放送は正にそれだろう。
それは一ノ瀬ことみにとって、数少ない友人である藤林杏の死を報せる凶報。
そして恋太郎にとっては――

55 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:39:19 ID:1tyy9JFF

「――――オイ、冗談だろ……?」

沈黙の落ちた森の中で、恋太郎が独り呟いた。
呆然としているような、訝しむような、そんな声だった。
尋常でないその様子を受け、ことみも亜沙も何も言えなくなってしまった。

「双樹が……死んじまった、だって…………? 訳、分かんねーよ…………」

告げられた死者達の中には、恋太郎の半身とも云うべき存在――白鐘双樹の名前があったのだ。
何時までも一緒に過ごしたいと思っていた少女の名前が、確かにあったのだ。

「双樹が…………そう、じゅ……が…………あああ……ああァアアアァアアあァアアアッッ!!!」

恋太郎の悲痛な叫びが、辺り一帯に空しく響き渡る。
計らずして全身から力が抜けてゆき、膝から地面に崩れ落ちた。
白鐘双樹の死は、恋太郎の精神を極限まで削り取ってしまったのだ。





そして放送から2時間近くが経った今も、ことみ達はその場から動けないでいた。
恋太郎が体育座りの格好で沈み込んでいる為、動くに動けなかったのだ。
ことみも亜沙も、恋太郎に対し何度か呼び掛けてみたが、返事は無かった。
今の恋太郎は、抜け殻のような状態となってしまっていた。

故にことみと亜沙は今出来る事――まずはメンバーの持ち物について確認し合う。
この殺し合いの場に於いて、自分達が持ち得る戦力の把握は必要不可欠な事だった。

「――ことみちゃんの荷物で使えそうなのは、鉈くらいだね……」

56 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:41:26 ID:1tyy9JFF

亜沙が顎に手を当てながら、冷静に思案を巡らせる。
ことみの持っていた道具は鉈と、得体の知れぬパンやジャムだった。
人が生きていくのに栄養補給は重要だが、少なくとも鉈以外戦闘には役に立たないだろう。

「亜沙さんの荷物は、イングラムM10に、ゴルフクラブに――――これは?
 ……こんなの、ご本にも載ってなかったの」
「何だろうね? ボクにも良く分からないんだ」

亜沙の鞄から出てきたのは、『C120』と書いたラベルの貼ってある、小さな注射器だった。
しかし亜沙は勿論、凄まじい知識量を誇ることみですらも、『C120』とは一体何の薬であるのか分からなかった。
説明書も付いていないし、下手に用いぬ方が良いだろう。
続いてことみは、恋太郎のデイバックへと手を伸ばした。

「恋太郎さんの荷物は確認済みだけど、一つ気になる物が有るの」

そう言ってことみが取り出したのは、『参加者の術、魔法一覧』と銘うってあるファイルだった。
その名前を見た瞬間、亜沙の眉がピクリと動いたが、ことみはそれに気が付かなかった。

「普通なら魔法なんて有り得ないの。けれどこの殺し合いが始まる時、私はホールの外にワープさせられた……。
 だからきっと、魔法のようなものが本当に存在すると思うの。それなら、対策を練らなくちゃいけない」

自らの考察を述べながら、ことみはファイルに目を通してゆく。
そこには、常識では考えられぬような様々な能力が羅列してあった。
読心能力、法術、超人的な身体能力――そして。

「え――亜沙さんも魔法を使えるの?」
「…………っ」

ファイルの中には、時雨亜沙の名前もあったのだ。
それによるとどうやら、亜沙は回復魔法の優れた使い手である様子。
そこでことみの脳裏に、一つの疑問が浮かび上がる。

57 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 20:41:47 ID:mS1L9ba9
支援。


58 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 20:43:13 ID:mS1L9ba9
支援。

59 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 20:43:23 ID:kqIz5qoo


60 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:43:35 ID:1tyy9JFF
「……どうして魔法で恋太郎さんを治してあげないの?」

ことみが疑問を持つのも当然だ。
回復魔法がどの程度効力がある物かは知らないが、少なくとも全く無意味という事は無いだろう。
にも関わらず、どうして回復魔法が使える事を黙っていたのだろうか?
だが亜沙は、ゆっくりと首を横に振った。

「ごめん……魔法なんて使えないよ……」
「―――え?」
「ボクは、人間なんだから…………人間で在り続けなければいけないんだから……」
「……亜沙さん?」

呟く亜沙の表情は昏い色に染まっており、確かな拒絶の意が伝わってくる。
対することみは、訳も分からずただ困惑するばかりだった。
そんな時である。


「――――時雨先輩ッ!」

片手に槍を持ち、所々に血の付着した服と、長い髪を携えた少女――ネリネが、生い茂る木々の向こう側から歩いてきたのは。
それを見たことみは、半ば反射的に鉈を構えそうになった。
だがすぐさま亜沙が手を伸ばし、ことみを制止した。
続けて亜沙は腰を起こし、先程までとは一転して、花が咲いたような笑顔を浮かべた。

「リンちゃ〜んっ! 無事だったんだね!」

知人に会えて余程嬉しかったのだろう、亜沙は無防備にネリネへと近付いてゆく。
そう、信じられないくらい無防備に。
折角のイングラムM10を、構える事すらせずに。

直後、渦巻く疾風。
鳴り響く金属音。

61 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 20:43:53 ID:mS1L9ba9
支援。

62 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:45:12 ID:1tyy9JFF

「…………つうっ!」

ネリネがおもむろに槍を一振りし、亜沙のイングラムM10を弾き飛ばしていた。
イングラムM10は少し離れた場所にある、茂みの中へと吸い込まれていった。

「リンちゃん、何を……!?」
「――余り騒がないで下さい。人が来ては面倒ですから」

亜沙が言い終わるのを待たずして、その喉元に槍が突き付けられた。
ネリネは氷の仮面を纏いながら、ことみと恋太郎の方へと視線を向け、告げる。
とても、冷たい声で。

「貴女達も動かないで下さいね。下手な事をすれば、その瞬間時雨先輩の喉に風穴が開きますから」

失意の底に居る恋太郎は当然として、その一言でことみも動けなくなってしまった。
凍り付くようなネリネの瞳が、何よりも雄弁に物語っていた――今の台詞は、虚言などでは無いと。
亜沙は肩を震わせながらも、懸命に言葉を搾り出した。

「リンちゃん…………殺し合いに、乗っちゃったの?」
「ええ、私は殺し合いを肯定しました。ですから此処で、時雨先輩達を殺させて頂きます」

何の躊躇も疑問も見せず、ネリネは堂々と言い放った。
亜沙はそんなネリネに対し、多分に怒りの混じった眼差しを向ける。

「そんな……何言ってるのよっ! この殺し合いには、稟ちゃんだって参加させられてるんだよ!?
 殺し合いに乗っちゃったら、一人しか生きて帰れないんだよ!?」
「――稟さまが参加させられているからこそ、殺し合いに乗るんじゃないですか。
 私は稟さま以外の全員を殺し尽くして、最後の二人になったら自害するつもりです。私何か、間違っている事を言ってますか?」

亜沙の必死な訴えを、今更何を言ってるのかという風に一笑に付すネリネ。

63 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 20:45:13 ID:mS1L9ba9
支援。

64 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 20:46:13 ID:kqIz5qoo


65 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:46:41 ID:1tyy9JFF

「間違ってるに決まってるじゃない! 皆で力を合わせて頑張れば、殺し合いなんかしなくても何とかなるよ!」
「……時雨先輩は放送をお聞きにならなかったのですか? 
 この島では確かに殺し合いが行われており、人が次々に死んでいっていると教えられたばかりじゃないですか。
 そんな状況で協力し合おうだなんて、未だ寝惚けているんですか?」

ネリネは呆れた顔を浮かべ、諭すように言葉を並べてゆく。
ネリネからすればこの状況で誰かと協力し合うなど、有り得ない事だった。
朝倉音夢は自分と行動を共にした所為で、命を落としてしまったのだ。
自分だって小さな少女――古手梨花――に情けを掛けた途端、不意打ちを食らってしまった。
この島で誰かと組むという行為は、自分自身の命を縮める愚行に過ぎない。
だというのに、それまで沈黙を守っていたことみが、突如反論の言葉を口にした。

「亜沙さんの言う通りなの! 押し付けられたルールなんかに、従う必要なんて無いよっ!」

向けられた瞳は、汚れの無い純粋なものだった。
亜沙に続いて別の女まで――立て続けに的外れの説教をされたネリネは、苛立ちを感じ始めていた。

「……どなたかは存じませんが、貴女も馬鹿な空想に取り憑かれているようですね。良いでしょう――私が現実を教えて差し上げます」

ネリネはそう言って、亜沙に槍を突きつけたまま、もう片方の手をデイパックに入れる。
そして中から、とある物を取り出して見せた。
瞬間、亜沙が絶叫する。

「……きゃああああああああっ!!」

ネリネが亜沙に示したのは、鮮血に塗れた人間の生首だった。
生首の顔は土気色に染まっており、その表情は苦悶に歪んでいる。
亜沙の悲鳴を認め、ネリネはとても満足げに微笑んだ。

「……これが誰かと行動を共にした人間の末路です。この方――朝倉音夢さんは、私を利用しようとして逆に殺されてしまった。
 死人は何も出来ないのですから、先に裏切った者勝ちなんですよ」

66 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 20:47:13 ID:mS1L9ba9
支援。

67 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:48:15 ID:1tyy9JFF

それに、と続ける。
 
「この殺し合いを開催した人間は、恐るべき力を持っています。そうでなければ、とっくに魔界と神界の救助部隊が駆けつけている筈ですから。
 参加者が徒党を組んだ所で、到底敵う相手ではありません」
「うっ…………」

亜沙は反論が思いつかず、唾を飲み下すしかなかった。
普段はつい忘れてしまいがちだが、ネリネは魔界の王の娘なのだ。
魔王を敵に回せる程の存在に対し、自分達だけで抗うのは確かに無謀かも知れなかった。

ネリネは音夢の首を鞄に戻し、槍を深く構え直した。

「さあ、無駄話はそろそろ終わりにしましょう。聞きたい事は一つだけ――時雨先輩は稟さまを何処かで見かけましたか?」
「ううん……ボクは見てないよ」
「――――ああ、成る程。それはそうでしょうね」

ネリネはすぐに、質問する相手を間違ったという事に気付いた。
亜沙が稟と出会っていれば、行動を共にしない筈が無いのだ。
ならば、と首を回し、ことみの顔を眺め見た。

「そこの方は、稟さまとお会いになりましたか?」

稟と知り合いで無い者ならば、出会ってもお互いに信用し合うとは限らない。
ならばことみが稟と出会っている可能性もあると考えたのだが、残念ながらネリネの期待は外れだ。
ことみは土見稟と出会った事は愚か、顔を見た事すらないのだから。

――だというのに、ことみは言った。

68 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:49:49 ID:1tyy9JFF

「稟って……土見……稟さん……?」
「――――知ってるんですか!?」
「うん、土見稟さんなら、少し前に見たの」
「何処でっ! 何処で稟さまを見たのですかっ!!」

これまでの冷静な態度から一変して、ネリネは大きく叫んでいた。
ネリネは稟の事に関してだけは、冷静でいられない少女なのだ。
ネリネにとって人を殺して回るのは、あくまでも二次的な目的に過ぎない。
最優先目標は稟を探し出し、何としてでも守り続ける事だ。
しかしその決意、その想いこそが、致命的な隙を生み出す原因となる。

「ええええええいっ!!」
「――――キャッ!?」

気付いた時には完全に手遅れだった。
ことみの話に集中する余り、眼前の亜沙に対する注意が疎かとなっていたのだ。
ネリネが前方に視線を戻すと、亜沙に槍の柄の部分を掴まれていた。
二人はそのまま縺れ合い、地面へと倒れ込んだ。

「――リン、ちゃんっ、大人しく……して貰うよ……!」
「く……うっ…………」

押し倒されたネリネは、馬乗りの形を取られてしまっていた。
槍越しに思い切り押さえつけられ、身体を自由に動かせない。
ひ弱な自分程度の膂力では、亜沙を跳ね飛ばすなど到底不可能だし、槍を奪い返す事さえままならない。
ネリネは悔しげに、ただ奥歯を噛み締める事しか出来なかった。

(力が……力が欲しいっ……! 稟さまを守り抜けるだけの力がっ……!!)

69 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 20:50:04 ID:mS1L9ba9
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70 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 20:51:38 ID:mS1L9ba9
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71 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:51:50 ID:1tyy9JFF

このままではすぐに武器を奪い取られ、殺されるか或いは拘束されてしまうだろう。
そんな事になってしまえば、稟を守ってあげられなくなる。
稟を生き延びらせるべく覚悟を決めた自分が、未だ夢見事を吐いている亜沙如きに敗れてしまうのだ。
もう少し自分に『力』があればと、強靭な肉体があればと、そう思わずにはいられない。
だが、そこでネリネは気付く。
自分は誰よりも強い『力』を持っている事に。

(そうです……何を勘違いしていたのですか、私は。強靭な肉体なんて必要無い――私は、魔王の娘なんですから)

ネリネは解放する。
プリムラという例外を除けば、恐らくは魔界でもトップクラスに分類されるであろう、強大な魔力を。
途端に、身体の奥底から際限無く力が溢れ出して来た。
槍を握り締める手に力を込め、上に圧し掛かっている亜沙を思い切り突き飛ばす。

「――――ハァァァッ!!」
「ー―――うわわわっ!?」

凄まじいまでの力で押し上げられた亜沙は、呆気無く弾き飛ばされた。
優に2−3メートルは宙を舞い、どすんと地面に尻餅をつく。
それでも何とかすぐに腰を起こし、眼前のネリネを睨みつけた。

「リンちゃん、貴女そんなに力持ちだったっけ……?」

それは当然の疑問だった。
亜沙はネリネが非力なのを知っていたからこそ、敢えて馬乗りになったのだ。
まずはネリネの自由を奪い取り、それから説得しようと、そう考えていたのだ。
しかし突然、猛獣の如き膂力で弾き飛ばされてしまった。
あんな力、ネリネには出せる筈が無い。

亜沙の疑問を見透かしたネリネが、余裕の態度で口を開く。

72 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 20:52:35 ID:UWPwEZtK
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73 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 20:52:41 ID:mS1L9ba9
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74 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:53:20 ID:1tyy9JFF

「分かっていませんね、時雨先輩。確かに私は非力ですが、街一つ消し去れる程の魔力があります。
 そしてどうやらこの槍は、魔力を『力』に変えてくれるようです」

ネリネの持つ槍――永遠神剣第七位“献身”は、契約者の身体能力を強化する機能を持つ。
ネリネが槍に魔力を送った事で、初めてその機能が発動したのだ。
ネリネは自身が得た力を確かめるべく、前方へと疾駆した。

「――――ッ!?」

正しく疾風の如き速度で突っ込んでくるネリネに対し、空手の状態である亜沙は碌な対応が出来ない。
そのまま亜沙の胸を白刃が貫くかと思われたが、そこでことみが現れた。

「……危ないっ!」
「チィ――――」

ことみは手に持った鉈で、ネリネの槍を何とか受け止めていた。
直後亜沙がゴルフクラブを取り出し、横凪ぎに振るった。
ネリネは後方に飛び退く事で、迫る危険より身を躱す。
ことみは後退するネリネに目もくれず、亜沙へと視線を移した。

「亜沙さん。あの人を止めるのは、もう生半可なやり方じゃ無理だと思うの」
「うん……そうだね」

それが二人の共通した見解だった。
先程垣間見たネリネの動きは、明らかに尋常でない。
武器を奪って押さえ込むなどという生易しい選択肢は、もう潰えてしまったと考えるべきだ。
ならばどうするべきか――二人が結論を出すよりも早く、ネリネの足元が爆ぜた。

「二人纏めて――死んでくださいっ!!」

75 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 20:53:47 ID:UWPwEZtK
支援

76 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 20:54:47 ID:gVjbYYWT
しえん

77 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:54:53 ID:1tyy9JFF

先の突撃に倍する気合、倍する迫力。
益々勢いを増し、ネリネが殺気を剥き出しにして亜沙達に襲い掛かる。
真空波を伴って迫る白刃を、亜沙はゴルフクラブでどうにか受け止めた。
凄まじい衝撃に、計らずして亜沙の手が強い痺れに襲われる。
続いて、ネリネの打ち終わりの隙を狙って、ことみが鉈を振り下ろした。
狙いは細い首筋――二人掛かりとはいえ、手加減している余裕など微塵も無かった。

だがネリネは恐るべき速さで横にステップを踏み、ことみの攻撃から逃れた。
間髪置かずに、がら空きとなったことみの腹部目掛けて、鋭い中段蹴りを放つ。

「あぐっ……!」

唸りを上げる蹴撃は十分な破壊力を有しており、ことみがたたらを踏んで後退する。
その後、ネリネは唐突に上体を低く屈めた。
直後、それまでネリネが居た空間をゴルフクラブの先端が切り裂いていた。
手の痺れが回復した亜沙が、背後からネリネを狙ったのだ。
そして攻撃を空転させた亜沙は、今や致命的なまでの隙を晒している。
ネリネは上体を起こしながら、後方へと槍を振るった。

「……ああぁっ!」

亜沙は咄嗟の判断で上体を反らしたものの、左肩を浅く斬られてしまった。
それでも亜沙にとって幸運だったのは、ネリネが未だ槍の扱いに慣れていない事と、制限があった事だろう。
ネリネが槍の扱いに熟達していれば、身体能力への制限が無ければ、今頃亜沙の身体は真っ二つに裂かれている筈だった。
必死の思いで後退する亜沙達を眺め見ながら、ネリネは凍て付くような声で言った。

「私の目的――稟さまの生還を妨げようとする者に、捧げる太陽の光はありません。
 此処で朽ち果てて下さい」

78 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 20:55:33 ID:UWPwEZtK
支援

79 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 20:55:42 ID:mS1L9ba9
支援

80 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:55:57 ID:1tyy9JFF

それは紛れも無い死刑宣告。
大した身体能力を持たぬ亜沙とことみでは、今のネリネに対抗し得ない。
イングラムM10を拾いに行く時間など与えて貰える訳が無いし、近接戦闘では勝ち目など無い。
説得だって、間違いなく不可能だろう。
それでも――それでも亜沙は叫んだ。
友人に向けて、精一杯の想いを込めて。

「……そんなの駄目だよ! 稟ちゃんだって……死んじゃったシアちゃんだって、そんな事望んでないよ!」

その言葉は、ネリネの心にまで届かないだろう。
ネリネはその程度十分に承知した上で、殺し合いに乗っているのだから。
だが――


◇  ◇  ◇


亜沙達が苦戦している最中、双葉恋太郎は未だ放送のショックから立ち直れないでいた。
それも仕方の無い事だろう――絶対に必要な存在を、失ってしまったのだから。
自分達は三人で一つだった。
自分と、沙羅と、双樹の三人で一つの存在――双葉探偵事務所を成していた。
三人が揃っていたからこそ、どんな困難にだって立ち向かえたし、毎日が楽しかった。
自分にとって沙羅と双樹は掛け替えの無い存在であり、絶対に手放したくなかった。
一人として欠けては駄目な筈だった。
たとえこの身を犠牲にしてでも、守りたいと思っていた。
双樹はおっとり笑ってるだけのように見えるけど、何時も誰かの事を考えている娘だった。
こんな所で死んで良い人間じゃなかった。
それなのに、それなのに――

81 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 20:56:22 ID:mS1L9ba9
支援。

82 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 20:56:36 ID:gVjbYYWT
しえん

83 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 20:57:02 ID:mS1L9ba9
支援。

84 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:57:06 ID:1tyy9JFF

双樹は死んでしまった。
自分は双樹を見つけてやれなかった。
自分は双樹を守ってやれなかった。
自分達の正三角形から、双樹は抜け落ちてしまったのだ。
もしも学校の屋上にワープさせられた時に、脇目も振らず双樹だけを探し回っていれば――
もしもこの島に連れてこられる前日に、もう少し身辺に注意を払っていれば――
そんな後悔が、雪崩の如く押し寄せてくる。
もうこのまま何もせず、ただ盲目の闇の中で佇んでいたい。
そんな諦念が、止め処も無く溢れてくる。

だがそこで、闇を乗り越え一つの声が聞こえてきた。

『……リンちゃんは間違ってる! 稟ちゃんだって……死んじゃったシアちゃんだって、そんな事望んでないよ!』

その言葉を聞いた瞬間、恋太郎は痺れにも似た感覚を感じた。
言葉自体は、自分とは別の人間に向けられたものだろう。
だがこの言葉に籠められた想いは、そのまま今の自分にも当て嵌まる。
そうだ――双樹は、こんな事を望んでいない。
あの心優しい少女が、何時だって周りの事を考えてきた少女が、こんな結末を望む筈が無い。

双樹が望むのは、残された者達――即ち自分と沙羅の幸せに決まっているのだ。
それなのに自分は、自身の命も沙羅の救助も放棄して、こんな所で終わる気か?

目が見えずとも、今亜沙とことみが必死に戦っているのは分かる。
非力な少女の身体で、それでも勇気を振り絞って戦っている。
それに比べて、自分は何だ?
こんな所でへタレ込んでいる男は、何者だ?

(そんなの決まってる……俺は探偵――双葉恋太郎だ!!

85 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 20:58:09 ID:UWPwEZtK
支援

86 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:58:18 ID:1tyy9JFF

もしもなんて無い、あるのは今だけだ。
自分は二度とあの日々を取り戻せないが、まだやるべき事はある。
沙羅も、亜沙も、ことみも、まだ生きている。
目が見えずとも、動く事は出来る。
目が見えずとも、音を頼りに戦う事は出来る――!


◇  ◇  ◇


――必死の説得を試みた亜沙だったが、ネリネの返事は冷たいものだった。

「……そんな事は判っています。ですが他に稟さまをお守りする方法など無いのですから、仕方無いじゃないですか。
 もう御託は結構です――さようなら、時雨先輩」

それで最後。
今度こそ決着をつけるべく、ネリネは三度目の――そして最後の突撃を敢行する。
ネリネは槍の長いリーチを活かして、亜沙とことみの射程外から攻撃を繰り出した。

「ヤアアアアアアアアアッ!!」

かつてない気迫で打ち込まれる振り下ろしの一撃は、亜沙を狙ってのものだ。
相当な破壊力を誇るソレは、受け止めた所で衝撃までは殺し切れぬだろう。
だが亜沙程度の運動神経でこの攻撃を躱し切るなど、絶対に無理だ。
故に受ければ不利になると分かっていても、選択肢は一つしか有り得ない。

「くぁ……!」

87 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 20:58:27 ID:mS1L9ba9
支援。

88 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 20:59:09 ID:mS1L9ba9
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89 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 20:59:34 ID:1tyy9JFF

受け止めた亜沙の腕に、脳髄まで痺れさせるような電撃が奔る。
ネリネの打ち終わりを狙って、ことみが攻撃を仕掛けようとするが、前の激突時とは大きく状況が違う。
今回ネリネは自身の間合いぎりぎりから攻撃した為、両者の距離はまだ大きく開いていた。
そして距離が開いていれば、余裕を持って回避に移れるのは自明の理。

ネリネは闘牛士のようにことみの突撃をいなし、空いている手でその背中を思い切り押した。
ことみが前のめりに転倒するのを確認しないままに、ネリネは前方――亜沙の方へと踏み込む。
亜沙はまだ手の痺れから立ち直ってはおらず、ゴルフクラブを構える事すら出来ていない。


「――チェックメイトですッ!!」
「あ……」

ネリネと目が合った瞬間、亜沙は自身の死を確信した。
ネリネの瞳には、敵を殺すという明確な殺意しか籠められていない。
自分はこのまま、何の抵抗も出来ずに胸を貫かれてしまうのだ。
硬直した亜沙の視界の中、ネリネが恐るべき速さで攻撃動作に移ってゆく。

そんなネリネを止めたのは、誰もが予想し得なかった人物だった。


「――――やめろおおおおおおおおおおっ!!!」
「えっ…………!?」

ネリネの横から、男――恋太郎が飛び込んできたのだ。
恋太郎はまるで勢いを緩めず、そのまま直進してくる。
慌ててネリネは足を止め、恋太郎の方に向けて槍を構え直した。
多少槍の扱いに慣れてきたのか、無駄の少ない動作で凄まじい突きを繰り出す。
刺突とは数ある技の中でも特に避け辛く、回避に徹さねば防ぎ切れぬ攻撃。
前進したまま避けれるような、甘い攻撃ではない。
……通常ならば。

90 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 21:00:37 ID:mS1L9ba9
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91 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 21:01:07 ID:1tyy9JFF

「な――――」

ネリネの顔が驚愕の色に染まる。
恋太郎が予測不可能な動きで、唐突に進路をズラしたのだ。
槍は恋太郎の脇腹を掠め、鮮血を撒き散らしたが、この程度では致命傷になどならないだろう。


――盲目状態の恋太郎は、『足音』と『声』を頼りに戦おうとしていた。
そしてネリネの足音が途絶えてしまった所為で、突撃の指針を失ってしまったのだ。
だからこその予測不可能な動きだったが、今回はそれが功を為した。
そしてネリネが驚きの声を上げた今、攻撃の照準は再び定まった。


恋太郎は苦痛に顔を歪めながらも突撃し続け、滑り込む形でネリネの足に飛びついた。

「今だ、亜沙ぁっ!!」

恋太郎の号令と同時、亜沙がゴルフクラブを横凪ぎに振るう。
ネリネにとっては、正しく絶体絶命の危機。
全力の刺突を放った直後な上に、足まで掴まれていてはどうしようも無い。
いくら身体能力を強化されていようとも、これだけの悪条件下では敗北は必死なのだ。

――されど、その結末を覆してこそ魔王の娘……!

「ク――――風よ、守りの力となれ! ウィンドウィスパーッ!!」

ネリネは回避を棄て、ウィンドウィスパー、即ち風を身体の周りに纏う防御呪文を発動させた。
そして、衝突。
ゴルフクラブは風の守りを打ち破り、ネリネの左腕へと吸い込まれていった。

「――――あつっ……!」

92 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 21:02:18 ID:mS1L9ba9
支援。

93 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 21:02:18 ID:1tyy9JFF

衝撃はかなり緩和出来たものの、それでも打撲程度の傷は負ってしまっただろう。
堪らずネリネは恋太郎を振りほどき、後ろへと跳ねてゆく。
その最中、もう一人の少女――ことみの後ろ姿が視界に入った。
ことみが駆けていく先には、先程イングラムM10が落ちた茂みがある。
考えるまでも無く、イングラムM10を回収するつもりなのだと判った。
その事実を認めたネリネは即断を下す――今回は退くべきだと。

「……此処は一旦退かせて頂きます。ですがこの決着は、いずれ必ずッ!」

博物館の時から戦い続けてきた所為で、自分の体力は大きく低下してしまっているし、マシンガン相手では分が悪過ぎる。
たちまちネリネは後ろへと振り向き、脇目も振らずに駆け出した。

「――待ってリンちゃん! もう殺し合いなんてっ……」


後ろから亜沙の声が聞こえてきたが、まるで意に介さずネリネは走り続ける。
何を言われようとも、道を変えるつもりなど毛頭無い。
たとえ稟に懇願されようともだ。
自分は悪鬼羅刹と化してでも、絶対に稟を生還させてみせる。
そして、目的を果たすのに必要な『力』も手に入れた。
永遠神剣第七位“献身”――これを完璧に使いこなせれば、稟以外の人間全てを打倒するのも十分に可能な筈。
何せこと魔力に関して、自分の右に出る者など世界でも数える程しかいないのだから。
とは言え、今の状態で戦い続けるのは余りにも下策。

……まずは、休息だ。
体力を回復させ、魔力を回復させ、傷を癒す。
それから稟を探し出すべく、そして次なる獲物を刈り取るべく行動を再開しよう。


◇  ◇  ◇

94 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 21:03:20 ID:1tyy9JFF

「リンちゃん……」

亜沙は哀しげな瞳で、遠ざかるネリネの背中を見守っていた。
自分達『土見ラバーズ』は恋のライバルであると同時に、とても強い友情で結ばれていた筈。
それがどうして、こんな事になってしまったのだろうか。
ネリネが自分に刃物を向けたという事実が、そして恐らく説得は不可能だろうという現実が、唯只悲しかった。

「ぐ……うっ……」
「――――恋太郎さん!」

そこで後ろから聞こえてきた呻き声が、亜沙の思考を現実へと引き戻す。
亜沙とことみは慌てて恋太郎に駆け寄って、その身体を支え上げた。
負傷箇所――赤く染まった脇腹の辺りを調べてみると、出血の割に怪我はそこまで酷く無かった。
だがそれはあくまでも運が良かっただけであり、一歩間違えば恋太郎は死んでしまっていただろう。

「恋太郎さん……目が見えないのに、どうしてあんな無茶したの?」

亜沙は聞かずにいられなかった。
目が見えぬ状態で乱戦に飛び込むなど、自殺行為も良い所だ。
少し前まで抜け殻同然の状態だった男が、やる行動とはとても思えない。
恋太郎は光の失った目を亜沙に向け、ゆっくりと口を開いた。

「あの時亜沙の声が聞こえたから……」
「――え?」

疑問の表情を浮かべる亜沙をよそに、恋太郎が続ける。

「『死んじゃったシアちゃんだって、そんな事望んでないよ!』って声が聞こえたから……それは双樹の叫びのような気がしたから……俺は再び立ち上がる事が出来たんだ。
 後は簡単、お前達の声を聞いてヤバイって思ったから、形振り構わず飛び込んだって訳さ。これ以上大切な仲間を失うなんて、絶対に嫌だったからな」
「な――――ボクを助ける、為に?」

95 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 21:03:46 ID:UWPwEZtK
支援

96 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 21:03:56 ID:mS1L9ba9
支援。

97 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 21:03:58 ID:kqIz5qoo
 

98 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 21:04:37 ID:1tyy9JFF

亜沙は胸が締め付けられるような思いだった。
自分の軽率な行動の所為で、恋太郎は光を失ってしまった。
自分が魔法を使わなかった所為で、恋太郎は失明したままだった。
にも関わらず恋太郎は、保身など一切考えずに、命懸けで自分を救ってくれたというのか。

(ボクは……馬鹿だ…………。恋太郎さんはあんなにも傷付いて、それでもボクを助ける為に頑張ってくれたのに……。
 ボクは自分の都合ばかり考えて……恋太郎さんに何一つしてあげれてない……!)

覚悟は決まった。
恋太郎は命を懸けてまで、自分を救ってくれたのだ。
ならば自分も、命と同じくらい大切な誓いを捧げよう。


「亜沙……?」
「亜沙さん……?」

恋太郎も、ことみも、揃って疑問の声を上げる。
亜沙が突然、恋太郎の身体を抱き締めていたのだ。
亜沙はとても穏やかな笑みを浮かべて、言った。

「恋太郎さん、今までごめんなさい……そして、有り難う。今までのお詫びとお礼に、貴方はボクが治します」
「え――――!?」

瞬間、辺りが暖かい光で包まれた。
見ているだけで心も身体も癒されるような、そんな光。
その中心で亜沙が――長髪となった亜沙が、天使のように微笑んでいる。
亜沙は己に課した誓いを破り、回復魔法を発動させたのだ。

99 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 21:05:51 ID:1tyy9JFF

恋太郎の視界に、徐々に光が戻ってゆく。
脇腹や額の傷はみるみるうちに塞がってゆき、出血も止まった。
暫く時間が経ち、光が止んだ時にはもう、恋太郎の目は万全の状態に戻っていた。
亜沙が疲弊しきった顔で、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。

「――恋太郎、さん……、目は治った……かな?」
「ああ。目だけじゃなくて、他の怪我もだいぶ良くなったぞ」
「……そう。良かっ――た……」
「――亜沙!? おい、しっかりしろ!」 

恋太郎の回復を確認するや否や、亜沙はドサリと地面に倒れ込んだ。
二人は大急ぎで亜沙を抱き起こす。
恋太郎が混乱する頭を必死に宥めながら、亜沙の呼吸や脈を確認すると、幸い異常は無かった。
同じ結論を得たことみが、冷静に症状を分析する。

「これは……きっと疲労による気絶なの。暫く休ませてあげれば良くなると思う」
「そうか……。となると、今のは多分魔法の一種で――対象の怪我を治す代わりに、大幅に疲労が蓄積してしまうって事か」

恋太郎がそう言うと、ことみはこくりと頷いた。
恋太郎は視線を下へと移し、寝そべる亜沙の頭を優しく撫でる。

「亜沙、お疲れ様……。お前は俺が絶対に守ってやるから、今はゆっくり休んでくれ」

自分を救ってくれた少女に感謝しながら、恋太郎は考える。
亜沙の回復魔法は極めて優れた効果を持ってはいるが、乱発するのはどう考えても無理だ。
それに今回は自分の怪我が比較的浅かったから良かったものの、もっと大きな怪我まで治せるかは分からない。
全く効果が無かったり、治癒の代償として、亜沙が大きな副作用に襲われるという可能性も有り得るのだ。
頼りにし過ぎるのは危険だろう。
やはり基本的には、極力怪我を負わぬよう立ち回るべきだ。

「……ん?」

100 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 21:05:52 ID:gVjbYYWT
しえん

101 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 21:06:01 ID:mS1L9ba9
支援。

102 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 21:06:59 ID:1tyy9JFF

そこでことみが一枚の紙を差し出してきた。
その紙の冒頭には、こう書いてあった。

『声を上げずに読んで欲しいの。多分――盗聴されてるから』
「――――ッ!?」

恋太郎は驚愕に声を洩らしたい衝動を抑え、鞄から筆記用具を取り出した。
たどたどしい手つきで、疑問を紙に書き綴る。

『それは本当か? どうしてそんな事が分かるんだ?』
『亜沙さんを抱き起こした時に、少し首輪を調べてみたら。集音用の小さな穴が開けてあったの。
 レンズは付いてなかったら、多分盗撮はされてない筈』
『成る程な……』

ことみの鋭い推理に、恋太郎は心底感嘆していた。
これではどちらが探偵か分からない。
恋太郎には知る由も無い事だが――ことみは全国でも有数の、天才少女なのだ。
その膨大な知識量は、一流の学者にも決して引けを取らぬだろう。

『それでね、これからの事なんだけど……恋太郎さんはどうするべきだと思う?』
『う〜ん、もうハクオロって奴を追っても間に合わないだろうし……。まずは仲間を探すべきだと思う』

双樹や、亜沙達の仲間が心配だし、戦力だってまるで足りていない。
この殺人遊戯を破壊するには、もっと人数が必要なのでは無いか。
それが恋太郎の判断だったが、ことみはゆっくりと首を横に振った。

『残念だけど、探し当てる方法が無いの。無闇に歩き回っても、時間を浪費するだけ』

それは、その通りだった。
有力な情報があるなら別だが、そうでない以上はアテも無く探し回るしかない。
この大きな島の中、そんな捜索方法で目的の人物を発見出来る可能性は、限りなく低い。

103 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 21:07:30 ID:UWPwEZtK
支援

104 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 21:08:18 ID:1tyy9JFF

『だからね、私は今自分が出来る事からしていこうと思うの。鷹野さんって人を倒せば殺し合いもしなくて済むし、皆助けられる』
『……と、言うと?』
『鷹野さんを直接倒すには、首輪を外さないといけない。でも今の所、首輪をどうやって外したら良いかは分からないの。
 直接戦えないんだったら、間接的に何とかするしかない。つまり――』

次の瞬間、恋太郎は驚愕に大きく目を見開いた。

『爆弾を作れば良いの』
『――爆弾ッ!?』
『英語で言うとボム、フランス語だとボンブ、イギリス語だと……』
『……いや、英語もフランス語もイギリス語もどうでも良い。それより爆弾なんて、本当に作れるのか?』

恋太郎が訝しげな視線を送ると、ことみは鞄から地図を取り出した。
その中の一点を指差しながら、紙に鉛筆を走らせる。

『この工場に行けば、多分必要な材料が手に入るの。作り方は私が知ってるから大丈夫』
『……そうか。だとしても、爆弾なんか何に使うんだ?』
『今はまだ分からないけど――鷹野さんが隠れている場所を見つけ出して、そこを爆破するの。
 まだまだ作戦を詰めてかないといけないけど、上手く行けば一網打尽に出来る』

爆弾を作成し、鷹野の本拠地を破壊する――それが、ことみの作戦だった。
鷹野はこの島の何処に隠れているのか?
隠れている場所が分かった所で、爆弾を設置する程近付く事が可能なのか?
鷹野の本拠地を破壊したとしても、それで全てが解決するのか?
それ以外にも、不安要素は数え切れない程多くある。
それでも現状では、これ以上に具体的な作戦など無かった。


『そうか――そうだな。他に方法なんて思いつかないし、俺もその作戦に乗るよ。
 でも少し休憩してからで良いか? 亜沙をもう少し休ませてやりたいし、それに――』

105 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 21:08:57 ID:gVjbYYWT
しえん

106 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 21:09:16 ID:1tyy9JFF

書き終る前に、恋太郎の腹の虫が鳴り響いた。
夜から緊張の連続で、碌に食事を取っていなかったのだ。
バツが悪そうに後頭部を掻いている恋太郎を眺め見て、ことみは柔らかい笑みを浮かべた。

「ええと……パン、食べる?」

そう言ってことみが取り出したのは、小麦色をした長い物体――通称、レインボーパンだった。
鮮やかなオレンジ色をした物体――通称謎ジャムを塗りたくり、半分に千切って恋太郎に手渡す。

「――サンキュな。じゃ、遠慮なく食わせて貰うぜ」

嬉々とした様子で、恋太郎はパンを貪ろうとする。
ことみもそれに倣い、パンを口に放り込んだ。
五秒後には、断末魔の悲鳴が森の中に木霊していた。

107 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 21:10:13 ID:1tyy9JFF




【D-4 森/1日目 時間 午前】
【ネリネ@SHUFFLE】
【装備:永遠神剣第七位“献身”】
【所持品1:支給品一式 IMI デザートイーグル 10/2+1 IMI デザートイーグル の予備マガジン10】
【所持品2:支給品一式  トカレフTT33の予備マガジン10 S&W M37 エアーウェイト 弾数1/5】
【所持品3:出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 コンバットナイフ 九十七式自動砲弾 数5/7(重いので鞄の中に入れています) 朝倉音夢の制服及び生首】
【状態:肉体的疲労極大・魔力消費大・腹部に痣、左腕打撲、右耳に裂傷、左足首に切り傷、非常に強い意志】
【思考・行動】
1:まずは安全な場所で休憩したい
2:稟を探す。その途中であった人間は皆殺し。知人であろうとも容赦無く殺す
3:出来れば次の定時放送までに純一を見つけ出し、音夢の生首を見せつけ最大級の絶望を味あわせた後で殺す。
4:つぐみの前で武を殺して、その後つぐみも殺す
5:亜沙の一団と決着をつける
6:稟を守り通して自害。
【備考】
私服(ゲーム時の私服に酷似)に着替えました。(汚れた制服はビニールに包んでデイパックの中に)
ネリネの魔法(体育館を吹き飛ばしたやつ)は使用不可能です。
※これはネリネは魔力は大きいけどコントロールは下手なので、 制限の結果使えなくなっただけで他の魔法を使えるキャラの制限とは違う可能性があります。

※永遠神剣第七位“献身”は神剣っていってますが、形は槍です。
※永遠神剣第七位“献身”は制限を受けて、以下のような性能となっています。
・永遠神剣の自我は消し去られている。
・魔力を送れば送る程、所有者の身体能力を強化する(但し、原作程圧倒的な強化は不可能)。
・以下の魔法が使えます。
尚、使える、といってもウインドウィスパー以外は、実際に使った訳では無いので、どの位の強さなのかは後続の書き手に委ねます。
アースプライヤー  回復魔法。単体回復。大地からの暖かな光によって、マナが活性化し傷を癒す。
ウィンドウィスパー 防御魔法。風を身体の周りに纏うことで、僅かな間だけ防御力を高める。
ハーベスト     回復魔法。全体回復。戦闘域そのものを活性化させ、戦う仲間に力を与える。

108 :魔法少女 ◆guAWf4RW62 :2007/06/23(土) 21:11:04 ID:1tyy9JFF

※古手梨花を要注意人物と判断(容姿のみの情報)
※音夢とつぐみの知り合いに関する情報を知っています。
※音夢の生首は音夢の制服と一緒にビニール袋へ詰め込みディパックの中に入れてます。






【D-4 森/1日目 午前】
【双葉恋太郎@フタコイ】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、昆虫図鑑、参加者の術、魔法一覧、.357マグナム弾(40発)、四葉のデイパック】
【状態:悶絶。額と脇腹に軽傷。肉体的に中度の疲労】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。探偵としての役目を果たす
1・どう見ても致死量です、本当にありがとうございました
2.まずは暫く休憩する
3.工場に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
4.鷹野の居場所を突き止める
5・可能ならば沙羅、四葉の姉妹達、ことみの知り合いや亜沙の知り合いを探し出してみんなで悪の秘密結社(主催)を倒す
6.ネリネとハクオロを強く警戒
【備考】
※校舎の屋上から周辺の地形を把握済み
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※首輪の盗聴に気付いています

109 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 21:11:06 ID:UWPwEZtK
支援

110 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 21:11:26 ID:mS1L9ba9
支援。

111 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 21:15:11 ID:gVjbYYWT
しえん

112 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 21:15:40 ID:mS1L9ba9
支援。

113 :魔法少女(代理投下) ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 21:19:25 ID:mS1L9ba9
【一ノ瀬ことみ@CLANNAD】
【装備:イングラムM10(9ミリパラベラム弾17/32)】
【所持品:鉈@ひぐらしのなく頃に】
【状態:悶絶・肉体的に中度の疲労、腹部に軽い打撲】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1.謎ジャムにレインボーパン……思い付つく限り最悪の組み合わせなの
2・まずは暫く休憩する
3.工場に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
4.鷹野の居場所を突き止める
5・恋太郎達と行動を共にする
6・朋也たちが心配
7.ネリネとハクオロを強く警戒
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※首輪の盗聴に気付いています


114 :魔法少女(代理投下) ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 21:20:06 ID:mS1L9ba9
【時雨亜沙@SHUFFLE!】
【装備:無し】
【所持品:支給品一式、イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×8、ゴルフクラブ、C120入りの注射器@ひぐらしのなく頃に】
【状態:肉体的疲労極大、精神的に中度の疲労、魔力消費極大、気絶。左肩軽傷。ロングヘアー】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1・???
【備考】
※恋太郎たちは危険ではないと判断しました。
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※C120は『雛見沢症候群』治療薬だが、健常者に使用すると10分以内に全身の発疹、発熱、瞳孔の拡大、妄想を引き起こす薬です。
亜沙・ことみ・恋太郎はc120の効果を知りません。

※亜沙の回復魔法は制限を受けて以下のような感じになっています。
・回復魔法の発動には、魔力と体力の両方を大きく消費する。
・治す怪我が酷ければ酷いほど、亜沙の消耗は激しくなる。
・命に関わるような重傷は治せない。また切り落とされる等して、失った部位も治せない。

115 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:31:03 ID:mS1L9ba9
【キ×ガイマーダー北へ】

頭のおかしい人間は何をするかわからない。
それは自分が「夢の中」にいるという勝手な理論を構築した鳴海孝之についても該当するらしい。

「うぁーひゃひゃひゃははははぁっ!これは夢、そう夢だから何をしてもいいんだぁ!!」
「そして俺はこの夢の世界の主!そう、支配者!!唯一神だぁぁぁぁぁぁっ!」
「だから目覚めさせる!皆を目覚めさせて最後に茜ちゃんををををををっ」

朝の新市街。
鳴海孝之は停車していたオートバイに跨り、その大通りを北上しながら大声を上げていた。

彼は爽快だった。
大通りで奇声を上げようと、盗んだバイクで走りだそうと「夢の中」ならば何をしても許される。
なんて都合のいい世界なのだろうか。
そして今、自分の手にはこの夢の世界にいる人間を発見する機械がある。
これこそ「神様が自分を応援してくれる証」に他ならない。

そう、俺は神の代理人なのだ――

有る時期の中学生が持つ、一種の万能感に酔いしれているのと同じ状態にある孝之は、既に有頂天を通り越していた。
もっとも、今の彼は壊れているのだから有頂天も何もない。

(皆を「起こさせて」あげれば、最後に自分が目覚めたとき皆が俺を祝福してくれるんだなぁ。そう、遙も双樹ちゃんも!!!!)

そんな事を考えていると左手に握っている発見器に二つの反応が表示される。

「おおっ!おおおっ!反応が二つぅぅぅぅっ!なんて幸先がいいいんだぁ」

大通りを北上した先にあるのは孝之の出発地点でもある役場。
自動制御で切り替わる大通りの信号も無視し、孝之はそこを目指す。
光点の主を「起こさせて」やる為に。

116 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:32:00 ID:1tyy9JFF
支援

117 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:32:40 ID:mS1L9ba9
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽

【招かれざる訪問者】

一方、役場。
自分たちに迫る危機も知らず、北川潤はこの役場から移動する事としていた。

「よい……しょっと……」
「Zzzzzzzz……」

肩にディパックをかけ、背中に相変わらず眠り続ける伊吹風子を背負って、北川は役場正面の扉に手をかける。
結局、この役場での収穫は少なかった。
探索して得られたものと言えば、仮眠室にギャルゲーがインストールされているらしいデスクトップと、冷蔵庫に入っていた
「ゲルルンジュース」ぐらいである。

厳密には、他に全く何もなかったわけでもない。
しかし、今の北川にとって市長室の飾り棚にある表彰状やトロフィー、事務室のワープロや事務用品はとても価値があるとは思えなかった。

(とりあえず、ここを出て百貨店に行くか)

2階の仮眠室に上がってから、今後どうするか風子と話して決めようとしていた北川だが、風子が完全熟睡モードに入っていた事もあり、自分だけで
考えた結果百貨店に向かう事とした。
やはり時間が経てば腹もすくし、あのディパックの中身も気になる。
それに、新市街に自分達以外の人間しかいないのならば、あのレナという女が死んだ今なら百貨店に行けるかもしれない。
確かにレナが回収した可能性や他の参加者に回収された可能性も捨てきれない。
だが、ここにいても何も変わらないし、どうせなら空腹で動けなくなる前にどこかへ移動したほうがマシ、というのが北川の出した結論だった。

扉を開き外に出る。
外は天気もよく、静かなものでここで殺し合いが行なわれているなんて到底信じられない。

118 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:33:21 ID:mS1L9ba9
扉を開き外に出る。
外は天気もよく、静かなものでここで殺し合いが行なわれているなんて到底信じられない。

「ん、なんだこの音??」

丁度、北川が役場の外へ出ようとしたときの事だった。
自動車のエンジン音らしき音がこっちに近づいてくるのが聞こえる。
もしかしてタクシー?などと、冗談みたいな事をえているうちにその音は大きくなり、役場前で止まる。

どちらにしても誰かがここに来たのは間違いない。
北川が顔をあげると、敷地外の道路に一台のバイクが停車している。
バイクにまたがっているのはスーツ姿の男……。
他にも人がいたのか。などと北川が考え、男に接触しようかと思った時、バイクに乗っていた男がこっちを見ながらディパックから何かを取り出し、嬉しそうに声をあげる。

「みぃーつけたぁーあははははははははははは!」
「んのっ!?」

男がディパックから取り出した物を見た北川は思わず声を挙げる。
その手に握られているのはチェーンソー。
それを確認し、男の顔を見てさしもの北川も悟った。

あいつは俺達を殺す気でいる――と。

そう、男の顔は明らかに異常だった。
狂ったような笑い声とそれにふさわしい表情を浮かべ、その眼は完全にそっぽを向いている。
このままではヤバいと確信した北川は、すぐ扉を閉めると内側から鍵をかけた。
だが、バイクから降りた男はそんなもの気にする様子もなく、チェーンソーの駆動音を響かせてこちらに向かってくる。

「逃げちゃダメだよぉ〜。俺が皆を起こしてあげるんだからさぁ〜」
「何言っているんだあいつは!」

119 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:33:38 ID:1tyy9JFF
 

120 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:34:25 ID:gVjbYYWT
しえん

121 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:34:36 ID:mS1L9ba9
男――鳴海孝之――の言葉に北川は恐怖した。
それもそうだろう、この島での出来事が夢の中というのは孝之の脳内にしか存在しない理論であり、他の人間に通用するモノではない。
ましてや、この馬鹿げたゲームに乗っていない人間にすれば孝之の発言は狂っている以外のなんでもない。

そうこうしている内に、孝之は役場の扉に近づいてくる。
北川も風子を背負ったまま役場内に後退するが、彼は完全に焦っていた。
もはや、先ほどまで風子に欲情していた空気は完全に吹き飛び、状況的には赤信号点灯といって差し支えない。
このままではあの男の持つチェーンソーで切り刻まれて終わりだろう。

(あのレナという女といい、チェーンソー持っている今の男といい、なんで俺が出会う人間にはロクなのがいないんだ!?)

ここまで出会った人間の事を考えつつ、北川は役場の奥へ奥へと後退する。
それにしても「ろくでもない人間」の中に風子を含んでないのは、彼の良心ゆえなのか。
だが、そんな事を愚痴ったところで状況が好転するわけではない。
男は扉にチェーンソーを突き立てているのだろう、先ほどから扉の向こうでチェーンソーの駆動音とともに、固いものが削られるような音が聞こえてくる。

(一体、どうすれば?どうすればいい……そうだ、裏口から逃げればいいんだ!)

そう考えるや北川は、すぐさま裏口に向かい扉を開く。

幸い、まだ男は役場の中には侵入していない。
裏口を閉めておけば、表から侵入した男はまず役場の中を調べるはずだと考えた北川は風子を背負い表へ回ろうとする。
が、しかし。

「逃がさないよぉぉぉぉぉぉぉん!」
「のわぁっ!なんでこっちから逃げようとした事がバレたんだ!?」

122 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:34:46 ID:1tyy9JFF
 

123 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:35:08 ID:gVjbYYWT
しえん

124 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:35:32 ID:mS1L9ba9
甘かった。
表へ回ろうとしたら、こちらに向かってあの男がチェーンソーを手に迫ってくるではないか。

ヤバい、ヤバすぎる。
なんで裏口から逃げようとしたのかはわからないが、このまま風子を背負って逃げるのは自殺行為だ。

北川は、心の底からこみ上げる恐怖を押さえつけながらも再び裏口に逃げ込み、鍵をかけた。
だが、その間にもチェーンソーの音がこっちに近づいてくる。
間違いなくあの男は表から侵入せず、裏口を破って自分たちを殺すと北川は確信した。

(め、滅茶苦茶マズい!このままじゃあのチェーンソーで三枚におろされてオシマイじゃないか)
(こうなったら風子を置いて……ダメだダメだ!そんなことできるか!)
(やっぱ、戦うしかないのか?だけどこっちは武器なんか持ってないぞ、どうすればいいんだ?どうすれば……)

裏口に通じる廊下の真ん中で、北川は焦りまくる。
しかし、ここには銃器はおろか刀剣類すらない。
チェーンソーを持った相手に対抗出来そうな武器は一つも無いのである。
表から逃げようとしてもさっきと同様に感づかれて回り込まれたらアウトだ。
裏口からは、チェーンソーで扉を切り裂く音が聞こえてくる。

もう時間が無い――。

覚悟を決めるしか無いと北川が思ったとき、廊下の片隅に置かれた「ある物」が眼に入った。
それは、この手の建物には必ず設置されている物だ。
これなら武器になるかもしれない。
そう思った北川は、風子を廊下に降ろし「それ」を手に取る。

(もう選り好みなんてしてられるか、こうなったら一か八かだ)

北川は覚悟を決めると「それ」を手にし、そのまま裏口側に向かった。

125 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:35:35 ID:1tyy9JFF
 

126 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:35:38 ID:2VS9PhKh
しえん


127 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:36:11 ID:gVjbYYWT
しえん

128 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:36:44 ID:1tyy9JFF
 

129 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:36:51 ID:mS1L9ba9
「おおおおおおおっ!一人こっちに来るぅぅぅぅぅ!そうか、そんなに起こしてほしいんだなぁぁぁぁぁぁ」

首輪探知レーダーの光点、その一つが自分の方へ向かってくるのを確認した孝之は、嬉しそうにもう片方の手で
握っていたチェーンソーを両手で握りなおすと、裏口の扉に向かって切りつける。

(自分からこっちに来るというのは俺が正しい事をしているという事だな!うん!!)

そんな事を考えながら、孝之がチェーンソーで扉を切り刻む内、ついに扉が音を立てて内側へ倒れる。
だが、意気揚々と乗り込んだ孝之を待っていたのは薄桃色の煙幕だった。

「うひゃあ、綺麗なピンク色だなぁ!でも、何だこりゃあぁぁぁぁぁぁ?」

煙幕の中へまともに突っ込む形になった孝之は思わず立ち止まり周囲を見渡す。
おかげで踏み込んでから先がどうなっているのかさっぱりわからない。
こんな時こそ、発見器の出番と孝之が首輪探知レーダーを取り出そうとした時、彼の眼前に何かが飛んでくるのが見えた。
その直後、顔面に強い衝撃を受けた孝之はそのまま床に崩れ落ちた。

▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽

130 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:37:46 ID:2VS9PhKh
sienn


131 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:37:59 ID:mS1L9ba9
【逃走劇】

「どうやら当たったみたいだな。それなら今のうちに……」

孝之が床に崩れ落ちた後、自身も所々が薄桃色に汚れた北川はすぐさま風子を背負い、今度は正面の扉を開いてようやく敷地の外に脱出した。
男が追いかけてこないところからすると、とっさの反撃は成功したらしい。
今頃、あの男は床にうずくまっているか気絶しているかのどちらだろう。

「アレだけ重いものをぶつけたら痛いのは当たり前だな」

北川が投げつけたもの、それは「粉末式消火器」だった。
男の侵入を前にして北川は消火器を手に取り、裏口の扉前に向かい、男が扉を破って侵入した直後に中身を放射したのである。
あの薄桃色の煙幕は消火器の中身である消化剤であり、最後に中身を放射し尽くして空になった消火器を男めがけて投げつけたのだ。

チェーンソーを振り回すあの男に通用するのかどうかわからなかったが、無防備に突っ込んできてくれたおかげで成功した。
今しばらくは逃げる時間を稼げるだろう。

だが、北川はそのまま逃走せず、役場とは道路を挟んで向かい側にある駐車場へ向かった。
駐車場には役場の駐輪場と異なり何台も自動車が置かれており、いずれにもキーがささっている。

(あの男はバイクに乗ってここまで来たんだから、今逃げても追いつかれちゃオシマイだ)

そう、相手がバイクで来たなら自分たちもそれなりの「足」を確保しないといけない。
何より、風子を背負って逃げていてはそれだけ早く疲れてしまう。

だからこそ、北川は役場を出るや目に付いた駐車場へ飛び込んだのだ。

132 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:38:21 ID:gVjbYYWT
しえん

133 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:38:49 ID:mS1L9ba9
彼が選んだのは駐車場の一番外に停まっていた外車だった。
左ハンドルだったが、この際右も左も無い。
鍵もついており、燃料も満タンであることを確認した北川は、風子を後部座席に押し込むと自身は運転席に乗り込んで車を発進させた。
自動車の運転など生まれてこの方した事が無かったが、案外すんなりと車は走り出した。

数分後、大通りを南に下りながら北川は車の中で安心していた。

(やれやれ、なんとか逃げ切れた)

どうやら追いかけて来る感じも無いことから完全に振り切ったらしい。
スピードを落とし、後部座席を見ると風子は寝転がったまま相変わらず寝息を立てている。

「zzzzzzzzzzz……」
「やれやれ、こっちが命がけで逃げていたというのに……」

その様子を見て北川は少々呆れたが、逆に寝ていてくれて助かったとも思う。
もしあの状況で起きられたらパニックになるか、あるいは状況も読めずにあの男に殺されていたかもしれない。
とりあえず、このまま百貨店を目指そうと思った時、助手席側の窓ガラスが派手な音を立ててぶち破られる。
その音にビックリした北川が音のした方を見ると、そこには駆動音を立てるチェーンソーが。
そいて、顔を少し上げると――

そこには、先ほどの男がバイクにまたがりチェーンソーを握っていた。

「な、何でお前が〜っ!?」
「逃げちゃ駄目だって言っているじゃないかぁ〜〜〜」

額から血を流しながらも「にたぁ〜」と笑う男に北川はただ、恐怖するしかなかった。
だが、チェーンソーの切っ先はまだ北川の体に届いていない。
有る意味、このときの彼には幾つかの「ツキ」があったといえる。

134 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:39:24 ID:1tyy9JFF
 

135 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:39:30 ID:mS1L9ba9
一つ目は、選んだ車が左ハンドルであった事。
もし、右ハンドルの車を選んでいたら、今頃チェーンソーは彼の体を切り刻んでいたはずだ。

二つ目は、風子を助手席に乗せず後部座席に乗せた事だ。
そのまま寝かせておけばという気持ちで後部座席に乗せた北川だったが、助手席に座らせていれば風子がチェーンソーの餌食になったのは間違いない。

三つ目は、追いかけてきた男――孝之――もバイクの運転については素人だった事。
男はチェーンソーで窓ガラスをぶち割ったものの、それ以上の攻撃は仕掛けてこない。
むしろ、かなりバランスを気にしているのか、こちらとの距離を一定に保つのも一苦労みたいだ。

両者は併走する形が暫く続いたが、北川はすぐさまアクセルを踏み込みバイクを引き離そうとする。
しかし、孝之もすぐにバイクのスピードをあげて併走し、両者の距離は縮まらない。
幸い、直接体にダメージを与えられたわけではないものの、北川は役場の時と変わらぬ焦りを感じていた。

(このままじゃ、燃料切れになったら車から引きずり出されるかしてチェーンソーでバラバラにされるのは間違いないぞ)
(まだ、燃料に余裕はあるけど一体どうすれば……おわぁ!)

「アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハー!」

次の瞬間、男の声と共に耳障りな音が響く。
男がチェーンソーで車のボディーを切りつけたのだ。
チェーンソーで車を切り刻むのは至難の業だから、まだ走行に支障はないだろうけれど、今頃車の側面は酷く傷ついていることだろう。

横を見ると、男は何度もバイクを車の方へ寄せてはチェーンソーで切り付け、離れるという動作を繰り返してくる。

136 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:40:04 ID:1tyy9JFF
 

137 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:41:01 ID:1tyy9JFF
 

138 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:41:06 ID:q0vQsBlZ
支援

139 :魔法少女(代理投下) ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:41:24 ID:mS1L9ba9
「そっちがその気ならこっちも!」

その動きを見た北川は車のハンドルを切るとバイクの方へ車を寄せる。
すると、バイクの男はぶつけられるのは勘弁と思ったか、車から離れていく。
北川はそのまま車を右に右にと寄せていき、男の乗ったバイクを中央分離帯と車の間に挟み込む。
あとはこのまま幅を狭めてバイクを中央分離帯にぶつけて転倒でもさせてやれば……と、思った時北川は我が目を疑った。

「きひひひひひひひ!きゃっほーーーーーっ!!」

なんと、男はバイクから自分の車の方に飛び移ってきたのだ。
ガラスの割れた助手席側のドアを足場にして車の屋根によじ登った男は、安定した足場を得られた事もあってか今まで以上の勢いでチェーンソーを振り回し、屋根に振りおろしてくる。

「なんて事しやがる!?」
「zzzzzzzzz……」

風子はこの状況下でも寝ていたが、北川はそれ以上に屋根からの攻撃に対して今まで以上に焦っていた。
スピードを上げたりして振り落とそうとしてみたが、相手はそんな事などお構いナシにチェーンソーを叩きつけてくる。

既に周囲の風景は建物の真新しい新市街からどこか寂れた感じの場所に入り込んでいる。
どっちにしてもこのまま南へ走り続ければ森に突っ込んでしまう。
とにかく、屋根の上にいる男をどうにかしないことには状況は好転しない。

その時、正面に突き当たりとなっている場所が見えた。
丁度、丁字路となっている箇所であり、このまま直進すれば壁に衝突するのは確実だ。

(いっそのこと、このまま猛スピードであの壁にぶつかってやったほうがいいのかな……)

140 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:41:53 ID:2VS9PhKh
sienn


141 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:42:41 ID:mS1L9ba9
状況が変わらぬ中で北川は一瞬そんなことを考える。
屋根の上では相変わらず男が奇声をあげてチェーンソーを振り下ろす音が聞こえており、状況はなんら変化無い。
だがその時、北川の脳裏にあるアイデアがひらめく。
消火器を使って難を逃れたとき以上に分は悪いが、多分今の自分に出来る数少ない手段。
すぐに北川はシートベルトを締めると、アクセルを踏み込み車を加速させる。
ほぼ同時に、屋根の上から響いていた耳障りな音が止んだ。
大方、スピードを上げたので屋根の上にしがみついているのだろう。

(そうやってしがみ付いていろよ!)

北川は更にスピードをあげて、そのまま突き当たりのブロック塀に向けて車を加速させる。
周囲の風景もまた加速していき、みるみるうちにブロック塀が目の前に迫る。

そして、その距離が10メートルを切った時――。

「これでっ!どうだぁっ!!」

北川は渾身の力を込めて一気にサイドブレーキを引いた!

直後、すさまじいブレーキ音と共に車体が前へつんのめるような衝撃、シートベルトが体に食い込む痛み、
更に何かが前に向かって投げ出され地面に叩きつけられるような音が一度に来た。

北川が、腹部の痛みに耐えながら恐る恐る顔を上げると、車は正面のブロック塀から2メートルほどのところで停まっていた。
前の方を見ると、壁の近くにあの男が倒れている。

勝負はついた。
起死回生の策は成功したのだ。

142 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:43:13 ID:2VS9PhKh
sienn


143 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:43:27 ID:1tyy9JFF
 

144 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:43:50 ID:mS1L9ba9
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽

【いざ、百貨店へ】

車を降りた北川は、男の方へ近づいてみた。
男は完全に気絶しているらしく、まったく動く気配が無い。
しかし、消火器をぶつけられても笑っているような人間なのだから用心に越した事は無い。

男が持っていたと思われるチェーンソーを拾い上げ、更に接近する北川。
身に付けているスーツは既に男自身の血や消化剤、地面に落ちたときの土ぼこりなどで見事に汚れておりもとの小奇麗な姿はどこにもない。
近くには男が持っていたと思われるディパックが落ちており、男が眼を覚まさないうちにと北川はディパックを開けて中身を確認し始めた。

「どれどれ……ノートパソコンにハリセン……を、食料品があるのか、貰っておこう……げげぇっ!」

中から出てきたのは支給品一式にノートパソコン、ハリセン、更に男が振り回していたのと同じ型の電動チェーンソーとそれに対応したバッテリーだった。

「まさにキ×ガイに刃物ってやつだな……。とりあえず、全部貰っておくか……」

ディパックを回収し、助手席に放りこんだ北川は再び気絶している男に近づく。
恐らく急ブレーキをかけた際に前へ放り出された時体をぶち当てたのだろう。
正面のブロック塀には派手にヒビが走っていた。

男の方は、頭から出血しており体はピクピクと痙攣している。
ここまで怖い目に遭わされたのだからいっそのこと後腐れなく殺したほうがいいんじゃないかという考えが頭に浮かんだが、それはやめた。
やはり、あのレナに追い回された時にも思ったことだったが、ゲームに乗って人を殺そうとは思わなかったからだ。

(やっぱ、このまま放っておこう……)

145 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:44:54 ID:1tyy9JFF
 

146 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:45:27 ID:gVjbYYWT
しえn

147 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:45:41 ID:ddTmWNGu



148 :魔法少女(代理投下) ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:46:03 ID:mS1L9ba9
(やっぱ、このまま放っておこう……)

その時、仰向けに倒れた男を見ていた北川は男の胸ポケットにある不自然な膨らみに気が付く。
どうやら、何かを突っ込んでいるみたいだ。
そっとそれを取り出してみると、それは液晶画面に白い光点を三つ映し出している機械だった。

「なんだこれ?ゲーム機か?」

とりあえず、貰っておくことにした北川は今度こそ車に戻ろうとする。
すると、画面上の光点の一つが動いているのが判る。

「え、どういうことだ?もしかしてこれって……」

もう一度画面を見ながら男の方に近づいてみると、画面上の光点がもう一つの光点の近くに移動した。

「なるほど、人間を探知するレーダーか……これを持っていたから俺達の居場所わかったのか」

どちらにしてもこれは有効な道具だ。
これがあれば他の人をもっと容易に発見できると思った北川は車に乗り込むと、早速百貨店を目指す事にした。

「これがあれば百貨店に誰かいてもすぐに分かるな」
「う〜ん」

すると、ずっと後部座席で眠り続けていた風子が目を覚ました。

149 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:46:18 ID:q0vQsBlZ
支援

150 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:46:45 ID:mS1L9ba9
「あ、やっと起きたか」
「北川さん、ここどこですか?ベッドじゃないですよね」
「車の中だ。お前が寝ている間大変だったんだ。これから百貨店に行くからな」
「そうですか。それなら百貨店まで風子はまた一眠りします……zzzzzz」
「やれやれ……」

だが、なんとか危機は脱した。
そう思うと自然と気が抜け、今更になって冷や汗がでてきた。


【A-4 廃アパート群の一角/1日目 時間 午前】

【北川潤@Kanon】
【装備:首輪探知レーダー】
【所持品:支給品一式×2、チンゲラーメン(約3日分)、ゲルルンジュース(スチール缶入り750ml×3本)、ノートパソコン(六時間/六時間)、
ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×7、ハリセン】
【状態:至って健康。若干空腹。冷や汗が大量に出てきた】
【思考・行動】
1:知り合い(相沢祐一、水瀬名雪)と信用できそうな人物の捜索。
2:とりあえずは百貨店に向かい、風子のディパックを回収する。
3:PCの専門知識を持った人物に役場のPCのことを教える
4:あの娘やさっきの男を見てしまった以上、殺し合いに乗る気にはなれない……
5:鳴海孝之をマーダーと断定(名前は知らない)

151 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:46:56 ID:1tyy9JFF
 

152 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:47:47 ID:ddTmWNGu



153 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:48:02 ID:mS1L9ba9
【備考】チンゲラーメンの具がアレかどうかは不明
 チンゲラーメンを1個消費しました。
【備考】
※パソコンの新機能「微粒電磁波」は、3時間に一回で効果は3分です。一度使用すると自動的に充電タイマー発動します。
 また、6時間使用しなかったからと言って、2回連続で使えるわけではありません。それと死人にも使用できます。
※チェーンソのバッテリーは、エンジンをかけっ放しで2時間は持ちます。
※首輪探知レーダーを入手しましたが、レーダーが人間そのものを探知するのか首輪を探知するのか判断がつきません。
※運転している車は外車で左ハンドル、燃料はガソリンで鍵がついています。
 また、一連の戦闘で車の助手席側窓ガラスが割られ、右側面及び天井が酷く傷ついています。


【伊吹風子@CLANNAD】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:睡眠中】
【思考・行動】
1:zzz
2:北川さん……お腹すいてます?
3:北川さんって……変態さんですか?
4:百貨店ですか……?
【備考】今のところ状況をあまり把握してません。

【備考】
※新市街での深夜から黎明に行われた戦闘、先ほどの戦闘については知りません。

▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽

154 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:48:18 ID:1tyy9JFF
 

155 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:48:44 ID:ddTmWNGu



156 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:49:23 ID:gVjbYYWT
しえん

157 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:49:27 ID:1tyy9JFF
 

158 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:50:05 ID:mS1L9ba9
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
【あっけない最後】

鳴海孝之が眼を覚ましたのは既に北川と風子を乗せた車がその場を離れて随分時間が経過してからだった。
かなりの出血をしているにもかかわらず、ムクリと起き上がった孝之はブツブツと何か呟き始める。

「なんで夢の中なのに思い通りにいかないんだろうなぁ?なんで夢の中なのにこんなに痛いんだろう??」
「夢の中なんだから全部思い通りになるはずなのになのになのになのになのに……」
「体中あちこち痛いのはもしかしたら夢の中だから痛いのかもしれないし、目が覚めたらどこにも怪我してないはずなんだろうしろうしろ」

どうやら、夢なのに体中が激しく痛む事がおかしいと思っているみたいだった。
だが、これが夢ではなく現実であることに気づくわけではなさそうだ。

そんな、孝之を遠くから見つめる目があった。

「大きな音がしたから飛んできてみれば、なんだあの男は?」

孝之へ目を向けていたのは一羽のオウム――土永さん――に他ならない。
あの少女――川澄舞――を騙し、自分にふさわしい拠点を探していた彼は、大きな音が聞こえるや翼を翻してここに向かってきた。
しかし、到着してみれば音のした地点には頭から血を流した男が倒れているだけ。
そして男は起き上がったかと思えばいきなりブツブツなにかわけの分からない事を呟いている。
とりあえず、土永さんは男の様子を観察する事とした。

「せっかく目覚めさせてあげようと思ったのに、逃げられてしまったけど一度はこっちに来てくれたはずなのに何で逃げ出すんだろうなぁ」
「おかげで夢の中の神様ががんばれるようにくれた発見器もなくしてしまった。神様が神様が神様が神様が神様が神様が神様が」
「そうだ、神様にお願いして力を分けてもらえばいいんだよなぁ。神様出てきてくださいお願いしますしますすすすすす」

159 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:50:55 ID:2VS9PhKh
sien

160 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:51:01 ID:mS1L9ba9
神の降臨を求める孝之の姿は、土永さんの目にはあまりにも滑稽に映った。

「どうやらあの男、神の存在を盲目的に信じているみたいだな。しかし、この状況で神にすがるとは……」
「だが、うまくいけば操ることができるかもしれんな。やってみるか……」

土永さんはすぐさま、孝之の背後に降り立ち、浮かんだアイデアを実行に移す。

『そこな人間!聞こえるか?』
「え、この声は一体誰なんだだだだだだ??」
『我輩は神である!我輩を呼んだ人間はお前か?』
「お、おおおすごい。願ってみたら本当に神様が来てくれたんだ。神様何処にいますか?どこですかーーーーー?」
『人間よ、我輩はここにいるぞ!お前の後ろである!』
「え、どこどこ……鳥?」

振り返ってみるとそこにいたのは一羽のオウム、思わず首をかしげる孝之。

『馬鹿者!なにが鳥だ!我輩は今お前と会う為にこの姿で出現してやったのだ!図が高い!!』
「あああ、さっきの神様の声だ。恐れ入りますうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

思わず、声を聞いて土下座する孝之。
一方、土永さんはその様子を見て更に言葉を続ける。

『ところで人間、我輩を呼んだからには理由があるのだろうな?』
「神様がせっかくくれた力がなくなってしまいました。だから、神様に新しい力を貰おうと思いましたましたました」
『(貰った力?一体何の事だ?まあいい)と、とりあえず我輩はお前に使命を与えるために来た。よく聞け人間、お前はこれから神の敵を倒すのだ』
「か、神様の敵っていうことはこの夢の世界で俺から逃げ回っている奴らのことですよねぇ。だれなんですか?」
『(夢?この男はこの世界を夢と思い込んでいるのか)今から我輩の言う名前を頭に覚えるのだ。今から我輩の言う者こそ、神にそむいた者どもだ』
「そ、そいつらを起こしてやれば、新しい力をくれるんですかかかかかか」
『まぁ、そういうことだ(せいぜい我輩のために働いてくれ、人間よ)』
「で、だれです。誰なんですかそいつらは?」

161 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:51:04 ID:ddTmWNGu



162 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:51:53 ID:ddTmWNGu



163 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:52:03 ID:mS1L9ba9
ここまで上手くいくとは思わなかった土永さんは、放送で死亡が確認されたレオを除く生徒会メンバーの名前を口にする。
それを聞いた孝之は名簿を開いて印をつけていった。

(強力な武器を持っている様子は無いが、これほどまで操り易い人間も珍しい。せいぜい操る事にするか)

自分は人間の様に銃を使うことは出来ないが、この男は銃を持つことが出来る。
しかも、先ほどの少女とことなり圧倒的に操り易い。
それならば、この男を裏から操り生徒会のメンバーを始末する『駒』にすればいい。
使えなくなれば捨ててしまえばいいだけだ……。

そこまで考えると、土永さんはその場から離れることとした。

『さて、我輩はここを去る事にする。指示はおって伝える。よいな?』
「あ、神様待ってくださいよぉぉぉぉ」

が、甘かった。
次の瞬間、土永さんは孝之にむんずと両手で押さえつけられてしまう。
この男を操れると思っていた土永さんはあまりにも無防備で、目の前の男がすでに狂っている故に何をするか分からないことを知らなかった。

『こ、こら人間!我輩に触れるな!何をする』
「おってつたえるなんて面倒なことするより、神様が直接俺の頭の中に命令を出してくれたらもっといいと思うんだけどなぁ」
『頭の中に?どういうつもりだ!?いい加減離せ』
「だから、こうすればいいんですよねぇ……あ〜ん」
『な、まさか……や、やめ……』

164 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:52:13 ID:1tyy9JFF
 

165 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:52:54 ID:1tyy9JFF
 

166 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:53:04 ID:mS1L9ba9
土永さんが、最後にみたもの。
それは、孝之の白い歯と赤い口腔だった……。


クチャクチャベリベリモグモグ……ゴクン
ガツガツクチャペチャガリガリバリバリ……ジュルジュル……
ゴリゴリビリバリガツガツガツガツ……ベチャベチャグチャ……


数分後、孝之の前には毟り取られた虹色の羽毛と骨片に銀色の首輪、そして主を失ったディパックが転がるだけだった。

「これで、神様から直接頭の中に指示が飛んでくるということだよなぁ。だけど神様と言っても鳥だからササミみたいな味だったんだぁ」

満足そうな顔で孝之は口元に付いた血をスーツの袖で拭い取る。
そこで、ハタと気が付く。

「神様を食べちゃったって事は……そうか、俺は今神様と一体になったんだ!俺は神の力を手に入れたんだ!これで何でもできるゥゥゥゥゥゥゥゥゥオィァアアアアアアアアッ!」

そう思うと、体中から力がみなぎってくる。
自分はこの夢の世界でついに神の力を手に入れたのだ。
ならば、もう怖いものは無い。
皆を起こさせてあげるのは神として当然の仕事なのだから。

もはや体中の痛みも気にならない。
なぜなら、これは夢。
そして今の自分は神となったのだ。
神は不死身なのだから痛くてもなんとも無い。

167 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:53:08 ID:ddTmWNGu



168 :童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg :2007/06/23(土) 23:53:45 ID:mS1L9ba9
「ああっはっはっはっはっははははは!!わはははははははは!!」
「ぐぎゃ〜〜〜〜〜っはっはっはっはっはっはっはっははっは!!」

自然と笑い声がこみ上げてくる。
孝之は狂ったように笑い続ける。
あたかも凶鳥が鳴くかの様に。

【土永さん@つよきす−Mighty Heart− 死亡】

【A-4 廃アパート群の一角/1日目 時間 午前】
【鳴海孝之@君が望む永遠】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、祈の棒キャンディー@つよきす−Mighty Heart− 多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き) スペツナズナイフ】
【状態:者どもひれ伏すがいい!俺は神の力を手に入れた!!】
【思考・行動】
1:ぎゃわはははははははー!(神の名の下に背徳者である生徒会メンバーを殺す)
2:あひゃひゃひゃひゃ!(一人の相手には名前を聞いてから殺す)
3:ひゃっはーーーーーーーーー!(大勢の場合、無害を装って一人ずつ時間をかけて殺す)
4:あんなこ〜とイイなッ!で〜きたらイイなッ!
5:最後は茜をひ、ひひ、ひひひ、ひひいひひひひひひひひッッ!
【備考】
孝之のスーツは全身が消化剤や自分の血、土永さんの血等で汚れています。
自分が神になったと思い込んでいるので、酷い出血も痛みもまったく気にしていません。
A-4 廃アパート群の一角に土永さんの毟り取られた羽毛や骨の欠片、首輪が散乱しています。

169 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:53:45 ID:2VS9PhKh
sien

170 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/23(土) 23:58:29 ID:2VS9PhKh
sien

171 :魔法少女・修正 ◆guAWf4RW62 :2007/06/24(日) 00:59:04 ID:x9/ihxVT
>>114の修正です


【時雨亜沙@SHUFFLE!】
【装備:無し】
【所持品:支給品一式、C120入りのアンプル×8と注射器@ひぐらしのなく頃に】
【所持品2:イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×8、ゴルフクラブ】
【状態:肉体的疲労極大、精神的に中度の疲労、魔力消費極大、気絶。左肩軽傷。ロングヘアー】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1・???
【備考】
※恋太郎たちは危険ではないと判断しました。
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※C120は『雛見沢症候群』治療薬だが、健常者に使用すると10分以内に全身の発疹、発熱、瞳孔の拡大、妄想を引き起こす薬です。
症候群を抑えるには1日数回の注射が必要です。
亜沙・ことみ・恋太郎はC120の効果を知りません。

※亜沙の回復魔法は制限を受けて以下のような感じになっています。
・回復魔法の発動には、魔力と体力の両方を大きく消費する。
・治す怪我が酷ければ酷いほど、亜沙の消耗は激しくなる。
・命に関わるような重傷は治せない。また切り落とされる等して、失った部位も治せない。

172 :復讐鬼とブリーフと ◆guAWf4RW62 :2007/06/26(火) 00:19:01 ID:NGoSai+A
たっぷりと血を吸い込んだ地面は、赤く変色しつつある。
周囲は死臭で満たされており、傍らには霧夜エリカと相沢祐一の亡骸が転がっている。
そんな中、坂上智代は大地に膝を付き、がっくりと項垂れていた。

衝撃的な事件から暫く時間が経ち、ようやく智代の思考は僅かばかりの機能を取り戻しつつあった。
あの時――気付いたらもう、エリカが殺されてしまっていた。
そしてエリカを殺害した襲撃者もまた、永久に動かぬ骸と化している。
この男は、自分が殺したのだ。
エリカの仇だとか、殺人鬼を打倒するだとか、そういった明確な意思によるものでは無い。
混乱する思考と恐怖に身を任せ、訳も分からぬままに引き金を引いただけだ。

今になって考えてみれば、様々な疑問が浮かび上がってくる。
何故この男は、すぐに自分を仕留めようとしなかったのだろうか?
やろうと思えば出来た筈だ。
何故この男は『危ない所だったな』などという、訳の分からない事を言ったのだろうか?
どれだけ考えても、見当すら付かない。

ともかく……いつまでも此処に居るのは不味過ぎる。
先の銃声を聞きつけた何者かが、襲撃を仕掛けにやってくるという可能性も考えられる。
手早く荷物を纏めて、場所を移らなければならない。
智代は地面に落ちている荷物を整理し始め――銀色に輝くボイスレコーダーの存在に気付いた。

「何だ……コレは?」

戦闘の役に立つとは思えぬが、何か重要なメッセージが入っているという事も考えられる。
一瞬の思案の後、右向き三角形のボタンを押すと、驚くべき内容が流された。
『霧夜エリカは殺し合いに乗っている』という旨のメッセージが、対馬レオと名乗る人物により、録音されていたのである。

「莫迦な……有り得ない」

173 :復讐鬼とブリーフと ◆guAWf4RW62 :2007/06/26(火) 00:20:11 ID:NGoSai+A

これは何かの間違いだ。
エリカは自分と行動を共にしていたし、殺し合いに乗っている訳が無い。
対馬レオだって、エリカとかなり親しい間柄である筈だから、彼女を貶めるような真似はしない筈。
そうだ――これは対馬レオでは無い何者かによって、仕組まれた物だ。
……何の為に?
そこまで考えた時、智代の脳裏に一つの推論が浮かび上がった。

「……そうか。全ては仕組まれていた事だったんだな」

無実の罪を被せる狙いなどただ1つ――何も知らぬ愚かな人間を騙してエリカと戦わせる、というものだろう。
恐らくは殺し合いに乗った人間が、ボイスレコーダーを『罠』として用いたのだ。
成る程成る程、確かにエリカは身体能力も知力も優れており、優勝を狙う者にとっては大きな障害だ。
エリカは有名財閥の跡継ぎ候補だという話だったし、彼女の実力を知っている者など幾らでもいるだろうから、『罠』の標的にされたのも頷ける。
では、何か。
先程の男は、ボイスレコーダーによりエリカを殺人鬼だと判断し、警告も無しに襲い掛かってきた。
恐らくは、エリカに圧し掛かられていた自分を救う為に。
だからこそ、『危ない所だったな』などという台詞を吐いたのだ。
そして、自分はその男を――

「……ああああああああああああああああああァァァァっ!!!」

全ての事実を正しく認識した瞬間、感情を抑えていた堤防が決壊した。
自分達は完全に嵌められたのだ。
一人として殺し合いに乗っていなかったのに、命を奪い合ってしまったのだ――『罠』を仕掛けた者の、目論見通りに。
これが、殺し合いだ。
ルール無用、何でも有りのデスゲームだ。
自分達は余りにも甘過ぎた。
まずは仲間を集めようなどと、寝惚けた考えを持ってしまっていた。
そんな事で、この殺し合いを止められる訳が無い。
卑怯極まりない外道共が生きている限り、主催者を打倒する以前の問題なのだ。
どれだけ大人数の集団を結成しようとも、そこに疑心暗鬼の種をばら撒かれては、どうしようも無いのだから。

174 :復讐鬼とブリーフと ◆guAWf4RW62 :2007/06/26(火) 00:22:25 ID:NGoSai+A

「……良いだろう――この島の趣旨、よく理解した。ならば私も、その趣旨に則って行動させて貰うぞ」

殺し合いが何故起きる?
簡単だ。
殺し合いに乗っている人間がいるから、悪意を持った卑劣な者が存在するから、起きるのだ。
ならば自分が、悪意ある鬼畜共を殺し尽くしてやろうではないか。
殺人鬼共に卑劣な策を練る猶予など、もう一秒たりとも与えはしない。
何処まで逃げようとも、地の果てまで追い縋って殺してやる。
主催者の打倒や脱出方法の模索など、他の者達に任せておけば良い。
適材適所、その任務に適した人間にやって貰うべきだ。
そして、鬼畜共を駆逐するという任務には、飛び抜けた運動能力と――絶対の憎悪を併せ持った、今の自分こそが相応しい。
最早泣いて詫びようとも改心しようとも、絶対に許さない。
殺し合いに乗った人間は、血の一滴、髪の一本に至るまで、この世から消し去ってくれる。

「すまない……私が愚かな所為で、お前達を死なせてしまった。だけど安心してくれ――島に巣食った悪鬼達は、私が倒してやるからな」

智代は二人の死体に向けて頭を下げた後、鬼気迫る形相でその場を後にした。


    ◇     ◇     ◇


薄暗い森の中で、天高く聳え立つ四角錐状の鉄塔。
多少古ぼけてはいるものの、この大きさなら送電設備としての役目を十分に果たせるだろう。
その膝元では、憂鬱な表情を浮かべた少女――白河ことりが佇んでいる。
儚いものだけが持つ、限りある美しさが、ことりの瞳の奥に見え隠れしていた。

175 :復讐鬼とブリーフと ◆guAWf4RW62 :2007/06/26(火) 00:23:38 ID:NGoSai+A

この島に連れてこられて以来、ずっと行動を共にしていた――そして友人になれた筈の、川澄舞と別れてしまった。
これからどうすれば良いのだろうか?
自分としては舞や純一を探し出したい所であるが、その行き先にはまるで心当たりが無い。
そして闇雲に動き回れば、殺し合いに乗っている人間と出会ってしまう可能性も高まるのだ。
僅か6時間で11人もの人間が死んでしまった以上、この島の至る所に殺人鬼が存在すると判断しざるを得ない。
万が一殺人鬼に出会ってしまえば、今の装備では――否、たとえ銃を持っていたとしても、自分では殺されてしまうだけだろう。
自分から動かなければ何も変わらないかも知れないが、動けば動く程危険は増す。
故に、完全な手詰まりだった。

「舞……大丈夫かな……どうしちゃったのかな……」

呟くことりの眼差しには、強い不安の色が映し出されている。
別れた時の舞の様子は、明らかに尋常で無かった。
あの状態で誰かに襲われでもしたら、ほぼ間違いなく殺されてしまうだろう。
それに運良く舞も自分も生き延びて、再会出来たとしても、また前のように仲良く過ごせるのだろうか。
あの時舞は、自分に対して銃口を向けてきた。
人に拳銃を突きつけるという行為が、この島ではどのような意味を持つか、十分に理解している筈なのにだ。
自分達はあの禍根を乗り越えて、再び友達になれるのだろうか。
そんな不安が、何度も何度もことりの脳裏を過ぎる。
その所為だろうか――肩を叩かれるまで、人が接近していた事に気付かなかったのは。

「そこの君……ちょっと良いかな?」
「――――ッ!?」

ことりは心臓が破裂しそうな感覚に襲われながらも、慌てて背後へと振り返った。
現れたのが襲撃者なら、間違いなく自分は終わりだろう。
この距離からではどうやっても逃げ切れまい。
逆に現れたのが善良な人間なら、現状を打開出来る好機かも知れない。
上手く協力し合う事が出来れば、きっと道は開けるだろう。

176 :復讐鬼とブリーフと ◆guAWf4RW62 :2007/06/26(火) 00:26:54 ID:NGoSai+A

だが現れた人間はそのどちらでも無い、ブリーフ一丁の男、赤坂衛だった。
筋骨隆々な肉体と貧相に過ぎる格好は、筆舌に尽くし難い程アンバランスである。
その身体にこびり付いた汗は、陽を反射して禍々しく光り輝いている。
その顔には愛想笑いが浮かんでいるものの、この状況ではそれすらも不気味に見える。
ことりにとって、今の赤坂は紛れも無く――


「キャァァァァァァァァァァァァァァァッ!! 変態っ!!」

森の中に、甲高い悲鳴が木霊する。
赤坂の放つ圧倒的違和感、圧倒的変態感が、一瞬にしてことりの冷静さを奪い去っていた。
それも当然の事だろう。
ブリーフ一丁でぎこちない笑みを浮かべる男の姿は、怖い程にシュールだ。

「――おっ、落ち着いてくれ! 僕は別に変態なんかじゃ……」
「イヤアアアアアアアアアッ、来ないでえ!!」

赤坂は一歩歩み寄って弁明しようとしたが、それは完全に逆効果だった。
ことりは首をぶんぶんと横に振り、悲鳴は益々音量を増してゆく。


(クソッ……参ったな……)

予想外の事態を受け、赤坂は内心毒づく。
アルルゥと出会った時は武器を構えた所為か、怖がらせてしまった。
だからこそ今回は、極めて友好的且つ平和的に、素手の状態で話し掛けた。
駄目押しと言わんばかりに、作り笑いだって浮かべてみせた。
完璧な作戦である筈だった。
自分が今、ブリーフしか着用していないという一点さえ除けば。

177 :復讐鬼とブリーフと ◆guAWf4RW62 :2007/06/26(火) 00:31:01 ID:NGoSai+A



――そして赤坂が打開策を考え出すよりも早く、それは現れた。

「――――ッ!?」

背筋に凄まじいまでの悪寒を感じ、赤坂は咄嗟に上体を捻った。
それとほぼ同時に銃声が鳴り響き、赤坂の背後にあった鉄柱が大きな衝突音を奏でた。
何があったか考えるまでも無い。
敵が現れ、今自分は狙われているのだ。
相手が銃まで持っている以上、此処は一旦引きたい所だが、そんな事をすれば傍にいる少女が殺されてしまうだろう。

(……やるしかないかっ!)

赤坂は目にも止まらぬ動作でトンファーを取り出し、続けて襲撃者の方へと視線を向ける。
するとそこには、拳銃を携えた――そして血塗れとなった制服を着た、一人の少女が立っていた。
少女の双眸には紅蓮の炎が宿っており、その殺気の凄まじさは肉食獣にも引けを取らぬだろう。
間違いなく、あの少女は殺し合いに乗っている。
そして、手加減が許されるような生易しい相手でも無い。
甘い感情に拘って、万が一にでも敗れてしまった場合、益々犠牲者が増えてしまう。
そう判断した赤坂は一切の躊躇無く、それこそ殺してしまうくらいのつもりで、前方へと駆けた。

「――フッ! ――ハッ!」

敵の――坂上智代の照準を定めさせぬよう、赤坂は小刻みに左右へと跳ねる。
銃の扱いに慣れぬ智代では、到底その動きを捉えきれない。
見る見るうちに二人の距離は縮まってゆき、手を伸ばせば触れれる程の距離となった。
瞬間、赤坂の鋭い眼光が、智代の瞳を射抜いた。

「――これ以上、人の命を奪わせはしないっ!」

178 :復讐鬼とブリーフと ◆guAWf4RW62 :2007/06/26(火) 00:33:31 ID:NGoSai+A

全力全開、掛け値無しで本気の一撃が、智代の左即頭部に襲い掛かる。
豪腕により振るわれるトンファーが直撃すれば、一撃で頭蓋骨は砕かれてしまうだろう。
少々大振りではあったが、一介の女子高生では決して逃れられぬ死。
……あくまで一介の女子高生なら、の話ではあるが。
智代の運動能力は、女子高生という括りなど遥かに凌駕し、地元では伝説となっている程だ。

「――甘いっ!」
「――――ッ!?」

智代は素早く上体を屈めて、迫る一撃から身を躱した。
そのまま大きく腰を捻り、旋風を伴った凄まじい足払いを放つ。
だが赤坂が後方へと飛び退いた為、刃物さながらの足が獲物に食らい付く事は無かった。
智代は後退する赤坂を睨みつけ、憎々しげに吐き捨てた。

「人の命を奪わせないだと……殺人鬼が出任せを吐くなっ!! お前のような奴がいるから、皆……皆っ……!」
「な、何だと――――」

的外れな罵倒。
赤坂は驚愕に目を見開いたが、智代からすればこの判断は仕方の無い事だ。
先程のことりと赤坂のやり取りは、遠目から見れば襲撃者と被害者のソレにしか見えなかった。
悲鳴を上げる少女と、迫り寄る半裸男の姿など見せられては、誰でも智代と同じ結論に至るだろう。


そして赤坂からすれば、智代の方こそ殺し合いに乗っているようにしか見えない。
トウカとは明らかに違う。
智代の服は血に塗れており、瞳は昏い憎悪に支配されている。
それでも赤坂の判断力を以ってすれば、時間があれば誤解だと気付けた筈だが、二人の装備差がそれを許さない。
拳銃で狙われている状態で、悠長に会話している暇などある訳が無い。

179 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/26(火) 00:34:43 ID:T8ca+AOg
支援。

180 :復讐鬼とブリーフと ◆guAWf4RW62 :2007/06/26(火) 00:35:47 ID:NGoSai+A

赤坂は真空を巻き起こす程の勢いで、斜め左前へと大きく踏み込んだ。
続けて上体を低く折り畳んだ体勢となり、秒に満たぬ時間で攻撃可能範囲まで侵入。
そして間合いに入った瞬間にはもう、トンファーを振り上げ始めていた。
対する智代は近距離で必殺の一撃を放つべく、下に潜り込んだ赤坂へ銃口を向けようとする。
後は赤坂がトンファーを振り切る方が早いのか、智代が射撃動作を終える方が早いのか、という勝負。

赤坂も智代も、冷静に判断力を働かせるだけの余裕など無い。
――だから二人の戦いを止めたのは、第三者だった。

「…………二人とも待ってくださいっ!!!」
「「――――ッ!?」」

赤坂のトンファーが、智代の腕の動きが、ピタリと制止する。
二人の興奮を吹き飛ばす程の声量で、白河ことりが叫んだのだ。
先に疑問の声を上げたのは、智代だった。

「……何故止める? お前はこの男に襲われていたんじゃないのか?」
「いえ、私は何もされてませんよ。服装には驚かされましたけど……」

言われて智代は、前方へと視線を移した。
すると赤坂が、申し訳無いといった感じの苦笑いを浮かべていた。
それで智代は、ようやく事態を理解する。
――自分は勘違いをしていたのだと。

「しかし……何故裸なんだ? お前は露出狂なのか?」
「ち……違うっ! これには深い理由がっ……!」

露出狂の汚名を晴らすべく、慌てて弁明しようとする赤坂。
だが智代は大きく溜め息をついて、言った。

181 :復讐鬼とブリーフと ◆guAWf4RW62 :2007/06/26(火) 00:37:09 ID:NGoSai+A

「まあ殺し合いに乗っていないなら、別に露出狂でも構わない。
 それより、知り得る限りの危険人物の情報を教えてくれないか?」
「……どういう事だ?」






「そうか……つまり蟹沢きぬと名乗る人物が、殺し合いに乗っているかも知れないんだな?」
「ああ。可能性があるってだけで、まだ確定じゃ無いけどね」

十分後、三人は地面に座り込んで会話していた。
この島で情報の有無は生死に直結する――だからこそ、まずは情報交換をしなければならないのだ。
最初に智代が自らの経緯と行動目的を語った後、赤坂が『蟹沢きぬ』に関する事柄を話した。
続けて赤坂は、他の情報も伝えようとしたのだが――それを遮るように、智代が腰を上げた。

「悪いが私はもう行かせてもらう。今この瞬間も、悪鬼共が人を襲っているかも知れないからな」
「……もし殺し合いに乗っている人間を見つけたら、殺すつもりなのか?」
「無論だ。この島に巣食う悪漢共、私が許しはしない」

じゃあな、と言って智代が立ち去ろうとする。
だが赤坂は、その背中へ辛辣な忠告を撃ち放つ。

「智代さん。君が歩もうとしているのは、修羅の道だ――きっと後悔するぞ」

智代はぴたりと足を止める。
自分が今から歩こうとしているのは、修羅の道――その程度の事、当然理解している。
それでも自分がやらねば、エリカの仇は取れぬし、この殺人遊戯も破壊し切れぬだろう。
僅かばかりの沈黙の後、何の迷いも無い、そして固い決意の籠もった声で告げる。

182 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/26(火) 00:38:07 ID:T8ca+AOg
支援。

183 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/26(火) 00:38:51 ID:JF0GkSlQ
支援

184 :復讐鬼とブリーフと ◆guAWf4RW62 :2007/06/26(火) 00:38:52 ID:NGoSai+A

「……善良な者達を救う為、そして私の友人の無念を晴らす為なんだ。後悔なんか、する筈が無い」

言い終えると、智代は振り返る事無く歩き去って行った。
赤坂には、去りゆく少女の背中が酷く儚げなものに見えた。
それでも何とか視線を横に移し、もう一人の少女――白河ことりへと語り掛ける。

「……ことり君、だったかな。さっきは驚かせて悪かったね」
「いいえ、私の方こそ取り乱しちゃってすいませんでした。赤坂さんはただ話し掛けてきただけなのに……。
 私が怖がりな所為で……危ない目に合わせてしまいました……」

言葉を返すことりは、幾分か沈んだ表情をしていた。
元はと言えば自分が悲鳴を上げた所為で、無駄な戦いが生まれてしまったのだ。
何とか事無きを得たものの、一歩間違えれば死傷者が出ていたかも知れない。
だからこそことりは、自分の軽率な行動を深く恥じていた。

「いや、仕方無いよ! ほら、僕はこんな格好だしさ……これじゃ変態扱いされるのも無理ないって!
 普段の僕がブリーフ一丁の奴なんて見つけたら、間違いなく逮捕するね、ハハハ……」

落ち込んだことりを励ますべく、赤坂は男としての尊厳をかなぐり捨てる。
身振り手振りを交えて、自身の服装の異常性を力説する様は、実に滑稽だ。
するとことりが、表情を一転させて笑い始めた。

「あは……あははははっ、貴方、良い人ですね」
「……そうかな?」
「はい、私には分かります。貴方の感じ、いつまでも割れないシャボン玉みたい」

笑ってくれたのは間違いなく僥倖だったが、発言の内容が理解出来ない。
赤坂は疑問の表情を浮かべ、ことりが言わんとしている事を確かめようとする。

185 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/26(火) 00:39:59 ID:T8ca+AOg
支援。

186 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/26(火) 00:40:02 ID:JF0GkSlQ
支援

187 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/26(火) 00:42:13 ID:JF0GkSlQ
支援

188 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/26(火) 00:43:26 ID:T8ca+AOg
支援

189 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/26(火) 01:03:36 ID:mVsuPQ8F
支援

190 :復讐鬼とブリーフと(代理) ◆/P.KoBaieg :2007/06/26(火) 01:04:26 ID:T8ca+AOg
「割れないシャボン玉? 何だいそれは?」
「屋根より高い所にあって、何時割れてしまうんだろうってつい気になっちゃうの」
「……ごめん、良く分からない」
「うふふふふ。説明すると私もよく分からないです、うん」

ことりがひとしきり笑って、小さく頷く。
こうやって話してみると、彼女は実に捉え所の無い少女だった。
とにかく赤坂は、ことりが落ち着いてくれたと判断し、本題に入ろうとする。

「まあそれはさておき、ことり君。一つ訊ねたいんだけど……」
「ことりって呼んで下さい」
「……ことり。一つ訊ねたいんだけど、良いかな?」
「はい、どうぞ」

ことりのペースに振り回されながらも、何とか話を進めていく。

「この鉄塔に、変な耳をした女の人達はいなかったかい? 仲間と此処で落ち合う予定だったんだ」
「いいえ、私が此処で出会ったのは、赤坂さんと坂上さんだけですよ」
「そっか……」

トウカ達と此処で合流出来れば良かったのだが、流石に戻ってくるのが遅過ぎたようだ。
まあこんな事もあろうかと、もう一つの集合場所・集合時間を指定してあるのだから問題無い。
放送でトウカ達の名前は呼ばれていなかったし、正午に神社へ行けば再会を果たせる筈。
赤坂はそれらの旨を、ことりへと伝えた。

「――そういう訳で僕は神社に行こうと思うけど、ことりはどうする? 一緒に来る?」
「はい、お邪魔にならないようでしたら是非っ!」

191 :復讐鬼とブリーフと(代理) ◆/P.KoBaieg :2007/06/26(火) 01:05:08 ID:T8ca+AOg
ことりの返答は迅速だった。
仲間を欲していることりからすれば、赤坂の申し出は正しく渡りに船だ。
赤坂は、見ず知らずの間柄に過ぎぬ自分を必死に励ましてくれた。
読心能力などに頼らずとも分かる――この男の人は、とても暖かい心の持ち主だと。
自分に何が出来るのか、誰かの役に立てるのかどうかすらも、まだ分からない。
それでも人を信じる事だけなら、出来る筈だから。
ことりは可憐な笑みを浮かべて、赤坂と共に歩き始めた。



――その道中で二人は情報交換を行っていたのだが、唐突にことりが頬を赤く染めた。

「あの――赤坂さん?」
「何だい?」
「神社に行く前に、服を手に入れた方が良いと思うんですけど、如何でしょうか?」
「……………………そうだね」

まずは、それが最初の課題だった。


192 :復讐鬼とブリーフと(代理) ◆/P.KoBaieg :2007/06/26(火) 01:05:50 ID:T8ca+AOg
【B-6 /1日目 午前】
【坂上智代@CLANNAD】
【装備:FNブローニングM1910 4+1発(.380ACP)】
【所持品:支給品一式×3、サバイバルナイフ、トランシーバー(二台)・多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)・十徳工具@うたわれるもの・スタンガン、ランダムアイテム不明】
【状態:軽度の疲労・血塗れ・ゲームに乗った人間に対する深い憎悪】
【思考・行動】
基本方針:まずは殺し合いに乗っている人間を殲滅する。一応最終目標は主催者の打倒
1:殺し合いに乗った人間を探し出して、殺害する。
【備考】
※智代は赤坂達から『蟹沢きぬ』に関する情報のみを入手しました。
※赤坂を露出狂だと判断しました。




【B-6 鉄塔/1日目 午前】
【白河ことり@D.C.P.S.】
【装備:竹刀 風見学園本校制服】
【所持品:支給品一式 バナナ(台湾産)(4房)虹色の羽根@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:ゲームには乗らない。最終的な目標は島からの脱出。
1:赤坂と一緒に行動する
2:仲間になってくれる人を見つける。
3:朝倉君たちと、舞と、舞の友達を探す。
4:千影の姉妹を探す。


193 :復讐鬼とブリーフと(代理) ◆/P.KoBaieg :2007/06/26(火) 01:06:31 ID:T8ca+AOg
※虹色の羽根
喋るオウム、土永さんの羽根。
この島内に唯一存在する動物、その証拠。
【備考】
※テレパス能力消失後からの参加ですが、主催側の初音島の桜の効果により一時的な能力復活状態にあります。
ただし、ことりの心を読む力は制限により相手に触らないと読み取れないようになっています。
ことりは、能力が復活していることに大方気付き、『触らないと読み取れない』という制限についてはまだ気づいていません。

※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化) つもりですが、
赤坂の判断や状況次第で変化するかも知れません
※坂上智代から、ボイスレコーダーを発端とした一連の事件について、聞きました。


【赤坂衛@ひぐらしのなく頃に】
【装備:デリホウライのトンファー@うたわれるもの】
【所持品:支給品一式、椅子@SHUFFLE!】
【状態:疲労、左腿に怪我、首筋に軽い傷、ブリーフと靴のみ着用】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:ことりと一緒に行動する
2:まずは服を取りに戻る
3:正午までに神社に向かいトウカ・アルルゥと合流
4:大石さんと合流したい。
5:梨花ちゃんが自分の知っている古手梨花かどうか確かめる。

【備考】
※赤坂の衣類はC-4の遥の墓のそばに放置
※あゆが遥を殺した人間である可能性を考えています(あゆと遥の名前は知りません)
※坂上智代から、ボイスレコーダーを発端とした一連の事件について、聞きました。


194 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 14:48:59 ID:RY7b8AP0
――殺した。
あんなに小さな子供を。
しかも、明らかにユズハよりも年下の少女を、だ。
俺は戦士だ。
無抵抗であれ、目的のために男を殺す事に躊躇はしない。
今までもそうやって生きて来た。

だが、何の抵抗もしない人間を殺した事は今まで一度も無かった。
当たり前だ。俺はそこらの蛮族とは違う。
兄者に出会う前は義賊として、そして出会った後はトゥスクル国の将軍として働いて来たのだ。
そして、その行程には確かに信念があった。正義があった。それも大義の中の死、と全てを割り切ることが出来ていた。

では今の俺は何なのだ。
最後に彼女、四葉のために自分が"兄"であると偽り、笑顔で逝った彼女を見てちっぽけな良心を満たしている。
これを偽善と言わずして何と言うべきか。
兄者のために捧げた剣を本当にこんな事のために使ってしまって良いのか。

「くそッ!!」

思わず足元の石を全力で蹴り飛ばした自分自身に嫌悪感を覚える。
コレではまるで、どこぞのチンピラだ。
ハクオロのため、そしてユズハのため、そのために俺は一人の少女をこの手に掛けた。
だがそれはある意味、二人を人を殺すための免罪符にしているだけではないのか。
そんな反意論が生まれてくる。
義の中から生まれた死でも無く、自らの生と直接的に関わってくる死でも無い。
当面俺が生き抜くために、彼女の死が本当に俺にとって必要だったとは思えない。
兄者を守るために危険な人物を排除する、と言う事に疑いは無い。
だが明らかに無力な人間を殺める必要があるのか――。



195 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 14:49:54 ID:RY7b8AP0

――ん?

気配。人の気配だ。
頭の中が一瞬でクールを取り戻す。
誰かの接近を感じ取った瞬間、冷静さを取り戻す自分が悲しくも、虚しくもある。
自らが積上げてきた戦い、命のやり取りの経験に助けられたという実感。
俺がどれだけ激情に身を焦がしても、頭の中ではどこか常に冷めた眼で辺りを見回しているのでは無いかと考えるとゾッとする。

だがオボロはボリボリと頭を軽く掻いて、そしてもう一度神経を研ぎ澄ました。
今やるべきことをやる。
ウダウダ言うのはもう少し余裕のある時だ。
更に耳を澄ませてみると、逆方向から耳に入る風の音に混じって、コツコツという何か硬いもので地面を叩いているような音が聞こえて来た。
心臓が一度、ドクンと大きく拍を打った。

この無用心な靴音だけで分かったことがある。
明らかにこの音の主には戦闘経験が無い、そんな事実だ。
普通隠密行動や従軍経験などがある者は必ずソレ相応の歩き方、というものを修得している。
長い距離を歩行しても疲れない歩法、足音を立てない特別な歩法など歩き方といっても幾つもの種類がある。
"歩行"は戦闘の基本だ。どんな分野であると足遣いを疎かにする流派は無い。
故に聞こえてくるソレは幾分の迷いも無く、素人のものだと断定出来る。

どうする、どうするべきだ。
ひとまず、相手がどんな人物なのかを確認するべきなのだろう。
知り合いである可能性も……無くは無い。
先程の放送で読み上げられた『エルルゥ』と『カルラ』を除いて、やって来たのが武人では無いアルルゥの可能性もあるのだから。


若干の間を置いて、オボロは自分が身を隠している場所を相手が通り過ぎるのをじっと待った。
足音からその他に、相手が女であること。
そしてある程度年齢のいった落ち着いた女性、と評しても良い人物ではないかと言う予想を立てる。


196 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 14:50:48 ID:RY7b8AP0

相手が通り過ぎた。注意深く対象を確認する。
彼女の左斜め後方、数メートルの距離を保ちながら分析する。
足音からはある程度歳を取った落ち着いた女性をイメージしたのだが、意外なことにまだ相手はあどけない年頃の少女だった。
やや紫がかった髪を頭の高い位置でまとめ、裾が長いヒラヒラした服を着ている。
右手には飾り物のような茶色の掛かった短剣。
ナイフとも違う。あんなもので人が殺せるのかというくらい無骨で"斬る"という能力に欠けた剣のように見えた。
だがその面持ちはまるで整った氷像。
外見から判断できる年齢以上に少女は大人びて見えた。
彼女の見慣れな衣装から先程自分が殺した四葉の事を思い出してしまう。
また、少し胸が痛んだ。

だが。
既に俺は、戻れない場所まで来てしまった。
俺はもう無力な少女を一人、殺してしまったのだ。
ここで妙な良心に捉われて、己の意志を曲げるような行動を取ることが本当に最善なのか、断定は出来ないがコレだけは言える。


――今更、後悔しても遅い。
ボウガンに矢を装填する。

――誰かに言われた訳でも無い。
矢ばねを巻く。

――俺は"俺の意思"で四葉を殺した。
準備完了。よく狙え。
ボウガンは連射が効かない。コレを外したら後が無い。

197 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 14:51:30 ID:RY7b8AP0

――これから先、華やかに咲き乱れるであろう大輪の芽を摘み取ったのだ。
背後から数メートルの距離……。
確実に取れる、はずだ。

――だから、もはや後戻りは出来ない。
いけ。





瞬間、俺は自分の目を疑った。
思わず乱暴に瞼を手でゴシゴシと擦る。
だが当然目の前の事実に変化は無い。
当たり前だ。起きてしまった事象を改変することなど不可能だ。
そうだ、認めるしかない。

避けられた。馬鹿な、有り得ない。悪態が心の中を駆け回る。
矢は狙いと寸分違わず、少女の後頭部目掛けて飛んで行った。
急所から逸れていても致命傷は確実、一瞬で命を奪い去る可能性が多分に含まれる会心の一撃だった。
だが。
少女は『旋風が通り抜けるのを見ている』ような、凄まじい身のこなしで狙撃を回避したのだ。

「誰だッ!!」

狙い撃たれた少女が振り返り、甲高い声で叫ぶ。
オボロは焦った。そして逡巡する。

198 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 14:52:28 ID:RY7b8AP0

失敗した。マズイ、何だこれは。
もう一度狙撃する?いやボウガンの矢を装填している時間が無い。
ならば接近して、あの支給品を使うか……?
だが化け物ように重量のある剣だ。カルラならばともかく、俺では完全に使いこなすことは出来ない。これも駄目だ。
……肉弾戦?アホか、リスクがでか過ぎる。
あの男のように妙な武器を相手が持っていたらどうする?わざわざ殺されに行くようなものだ。
ただでさえ少女は、こちらの完全な死角からの狙撃を回避している。
目測を誤った。足音だけで相手を戦闘の素人だと侮って油断をした俺の失態だ。
相手はああ見えて相当なやり手。下手な攻撃は自身に危険を招く可能性が高い。

「ちッ!!」

オボロは咄嗟に顔を隠し、その身を翻す。
逃げる。
奇襲に失敗した以上、これしかあるまい。
自分達の外見はどうやらこの島にいる他の人間と比べて目立つものらしい。
顔を見られる前に、俺自身を認識される前に、逃げるしかない。

「待つんだッ!!」

もう一度、女の声が今回は後ろから響いた。
次は俺が背中を向ける番だ。






199 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 14:53:11 ID:RY7b8AP0
大声で止まるように呼びかけて、『はい、分かりました』と素直に立ち止まる馬鹿がいたら見てみたいものだ。
例に漏れず、細身の男にこちらの声に応える様子は無い。完全に逃走の形に入っている。
早い。
この森の鬱蒼とした道を凄まじいスピードで走る、走る、走る。
私の足ではどう考えても間に合わない、直感的にそう思った。



確かに千影はオボロの放った弓矢を回避した。
これは全く持って嘘偽りの無い真実だ。
目の前を弓矢が通過していった時、心臓が止まってしまうのではないかと思った。
だが、現に私はこうして生きている。それは結果的な真実だ。
とはいえ私には後方から超スピードで飛んでくるボウガンを避けるような特技は無い。
また獣じみた感覚で危険を察知したという訳でもない。衛でもそんな芸当は不可能だろう。

何と言うか。予感が、したのだ。
日頃から占いをよくする私だが、時々『神のお告げ』のようなものを受け取る事がある。
動物的ではなく、神託的な感覚である。
具体的な事は分からなかったのだが、強烈なまでの身の危険に自然と私の身体が動いた。
振り返ろうとした。
何かが飛んでくる、そんな気配だけ、曖昧だが感じ取った。
しかしそんな啓示のような物を受け取った所で、私の身体が現状に反応出来るか否かは別問題だ。
私は自慢ではないが体力が無い。運動神経も同年代の女子と比べてさえ大して良くはないだろう。

だから、逆に私は絶望した。
飛来する弓矢の存在に気付いたと同時に『自分がその矢を回避する能力を持ち合わせていない』ことも強く悟ったからだ。
こんな短い時間では結界を張ることも、力をぶつけて撃ち落とす事も出来ない。
既に万策は尽きていたのだ。

200 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/26(火) 14:56:44 ID:JF0GkSlQ
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201 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 14:57:28 ID:RY7b8AP0

何と言う皮肉だろう。
自分自身の能力で、待ち受ける未来を把握したまでは良かった。
そのせいで私はその先に霞んでいる、あまりにも絶望的な未来に全心を撃ち抜かれることも理解してしまったのだ。
圧倒的なまでの死の予感。まさに筆舌し難い。
小さな女の身である自分にとって、この短い未来において待ち受ける逃れようの無い死。

だが。
自分でもよく分からないが不思議な事に私の身体はいつもとは違った。
早かった。あの男が野を駆ける速度すら比べ物にならない程に。
考えられないようなスピード、反応速。
まるで『私の中の時間だけその流れが速くなってしまった』ように。
加速。言葉で例えるならばこの単語しか思いつかない。
そう、私はあの瞬間"加速"したのだ。



男の背中はドンドン遠くなっていく。当然追いかける。
私も走る、走る。
慣れない事はするものじゃない。枝木に引っかかってスカートの裾が少し裂けた。まるで元々スリットが入っていたみたいだ。
走る。
男はまだ視界の中だ。息が上がる。
……駄目だ、まるで追いつける気がしない。

202 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 14:58:13 ID:RY7b8AP0

しかし、このまま追いかけるのを止めてしまっていいのか。
いや、このまま放置する訳にはいかない。
あの男はおそらく、殺し合いに乗った類の人間だ。
そんな人間を野放しにすれば確実に被害は広がる。姉妹にも危険が及ぶかもしれない。
私が男を倒す事が出来なくても、もし近くに人がいるのならば注意を促さなければならない。
だが私の貧弱な身体は既に疲労でクタクタだ。
このままでは地面に座り込んでしまうのも時間の問題。
ならばもう一度あの"加速"の力が使えないか。
チラリと手元の剣に視線を移す。

あの突然の現象がこの剣の力であることはもはや自明の理。
やはり、コレは魔具だったのだ。しかも相当にハイレベルな。
自分ではコレの力を引き出す自信が無かったのだが、まさかこんな土壇場になって自然にそれが出来てしまうなどとは思わなかった。
『永遠神剣第三位"時深"』一緒に付いてきた説明書にはただソレだけしか書かれていなかった。
名前の通り、おそらくその力は"時間"を操る事なのだろう。

時を操る神と言えば、思いつくのはギリシア神話のクロノス。
そしてゾロアスター教の時間神ズルワーン。
ならば、このどちらかの力を汲んだ魔具の可能性が高い。
クロノスにしても大地神ウラヌスの子であるし、ズルワーンはあのアフラ・マズダとアンリ・マユの上に立つ神である。
時間を操るという、圧倒的な力を持つに相応しい上位神なのだ。
実在する魔具だと……カイロスの時計ぐらいか。
時と関係した魔具ほはとんど確認されていない。
『時を越える能力』はまさに禁忌に近い果てしない力だ。

だがこの儀礼剣はどちらの神ともおそらく関係していない。
明らかに日本神話の流れを組んだ形状をしているからだ。この剣が大陸魔術の影響を受けているとは考え難い。
だが古事記から成る日本の神話において、時間の神の存在は確認されていなかったはずである。
それに第三位という事は他にもこの剣とは位の違う亜種が存在する可能性が高い。
ならばこの剣は一体何なのだろう。そしてそれら全てが高位の魔具だという事か……?


203 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/26(火) 14:58:59 ID:JF0GkSlQ
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204 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 14:59:14 ID:RY7b8AP0

「ん、おお!オボロではないか。まさかこんな場所で会えるとは思わなかったぞ」
「な……トウカッ!?」

ハッと我に帰る。声だ。男の走って行った方向から女の声が聞こえた。
思わず貴重な魔具の力を目の当たりにして、その分析で頭が一杯になっていた。
詳しい会話の内容は分からない。聞こえたのは男女の出会い頭の脊髄反応のような会話のみ。
幸いな事に、追い掛ける自分の脚だけは止まっていなかったらしい。

視界の一端、男がその脚を止め立ち止まっていた。
その目の前には刀を腰に差した女性。
いけない、このままでは彼女が危ない。
それだけは直感的に悟る。

千影はあらん限りの声でトウカとオボロに向けて叫ぶ。
まさか、二人が同じ君主に仕える同郷の者だと知ら訳も無く。

「逃げるんだッ!!その男は殺し合いに乗っている!!」





「某としたことが……申し訳ない!!
 ……しかし、千影殿。オボロが殺し合いに乗っているなんてありえない。
 それは某が保証いたそう。動物か、もしくは他にも襲撃者がいたのでしょう」
「……いや、だけど矢が飛んで来たのは事実なんだ。
 避ける事が出来なければ、確実に私は……死んでいた」

少し恨めしそうな顔で二人を見つめる。
先程までとは違って一メートル以内の本当に近い距離。
オボロが沈痛な面持ちで、トウカが何とも申し訳無さそうな面持ちで千影の前に立っている。

205 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/26(火) 14:59:44 ID:JF0GkSlQ
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206 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 15:00:09 ID:RY7b8AP0

先程は大変な目にあった。
私が大声で忠告をした後、いきなりこのトウカという女性が『某の仲間を侮辱するつもりか!!』と叫びながら切り掛かって来たのだ。
正直な話……あまりの超展開にマトモな反応を取る事が出来ず、私は本当に死にかけたと言って良い。
咄嗟に身体を捩って刃をかわさなければ確実に刀身が皮膚を突き破り、肉を裂いていたはず。
当たり前だが自分に剣術の才能は無い。
この『時深』も直接斬り合う武器としては明らかに不向きだ。
返す刀で切られる寸前、使いこなせるか分からない永遠神剣の力を使いそうになった――その時。
『トウカ、待ってくれ!!俺が全部悪いんだ!!』と言う声。
私は耳を疑った。まるで予想していなかった人間の言葉が私の命を繋ぎとめたのだ。

「それはおそらく……うっかりしていたのではないかな。
 オボロの本来の得物は刀。石弓など使っている姿はこのトウカ、一度も見た事が無い。
 オボロ、そのような具合でござろう?」
「あ、ああ……そうだ。スマン、完全に狙いが……逸れた」

千影は二人の言葉に本気で悩んでいた。
……分からない。
まさか本当に誤射だったとでも言うのか?
だがオボロが殺意を持って撃ったと仮定すれば、あのまま私が切り捨てられるのを眺めていればいいのだ。ソレを制止する道理は無い。
それに知り合いであるトウカにならば、何とでも言い訳が出来るはずだ。

「……分かった。信じる事にするよ。
 そうだ……二人に聞きたい事があるんだけどいい……かな」
「おお、某達に答えられる事ならば何でも答えよう」
「……ありがとう。今、私は姉妹を……探しているんだ。
 咲耶……衛、それと……」

207 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/26(火) 15:00:23 ID:JF0GkSlQ
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208 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 15:00:49 ID:RY7b8AP0

咲耶、衛と来てここで言い淀む。
……そんな簡単に認められる訳が無いじゃないか。
私達は十二人いてこその姉妹なのだから。
まさか一人でも欠ける人間が出てくるなんて考えた事も無くて。

「……まさか」

トウカがハッと息を呑む。
隣のオボロも更に表情を険しくする。
悟ったのだろう。話を持ち掛けたのは自分。少しだけ悪い事をした気分になる。

「四葉は……もう……いないんだ」

四葉。
自分の妹を殺した人間への強い恨みを込めた声で、私はそう吐き出すように呟いた。





頭がグルグル回る。
頭蓋骨を切り開いて中から脳漿を引っ張り出して捏ね繰り回したくなる。
俺は……俺は……。

「永遠神剣……ですか」
「……そう。もし君達にそれが支給されていたら……是非、見せて欲しいんだ」


千影。
俺が殺し損ね、皮肉にも命を救った少女の名だ。
そして俺が殺し"損ねなかった"四葉の姉でもある。

209 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/26(火) 15:01:05 ID:JF0GkSlQ
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210 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 15:01:32 ID:RY7b8AP0


もしも俺が本当に修羅の道に身を委ねた戦士だったならば、何とかして彼女を殺そうとするだろう。
自分が人を殺したと言う事実が他の人間に広まるのは出来る限り避けたい事態だ。
ならば関係人物は全て抹消しておきたいと思うだろう、ソレが普通だ。

「待てよ、もしやあの大剣……」
「……これは」
「付随していた紙によると『永遠神剣第七位"存在"』という名の剣らしい。
 こちらよりは、もう一つの細めの剣の方が某には丁度良い故、使っていなかったのだ」
「……少し、借して貰ってもいいかい」

二人は何やら剣を手にとって、水の力がどうだの、魔力がどうだのと意味の分からない話をしている。
位置的には近くにいるはずなのに、会話の内容が耳から耳へと抜けて行く。
まるで思考力が追いついていない。

俺は今の今まで兄者のため、あらゆる障害を取り除くつもりだった。
だが結果はどうだ。
殺し合いが始まってから約八時間。その間に一人の無力な少女を不意打ちで殺しただけ。
そして次に出会ったのはその少女の姉。
しかも一度はその事を知らずに彼女を殺しかけた。
トウカが千影に切り掛かって行った時、俺は無意識のうちにトウカを制止していた。
この時点では二人が肉親であると言う事は知らなかったはずなのに。
何故だろうか。
一人の少女の死。
その事実がここまで俺に圧し掛かってくるとは思わなかった。


「オボロ、おいオボロ聞いているのか!!」
「……う……ああ、スマン……ぼんやりしていた」


211 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/26(火) 15:01:47 ID:JF0GkSlQ
支援

212 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/26(火) 15:02:56 ID:JF0GkSlQ
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213 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 15:02:57 ID:RY7b8AP0
強めの声で耳元で怒鳴られたおかげで意思が覚醒した。
ノイズにまみれ、まるで機能していなかった脳がようやく少しはマトモに働き出す。

「しっかりしろ。千影殿は武人ではござらん。
 我々が守って差し上げなければいけないのだぞ」
「守って……?どういう事だ?」

俺がそう聞き返すとトウカは心底呆れた様な表情でため息をついた。
千影も苦笑する。

「はぁ……お前と言う奴は。全く話を聞いていなかったのだな。
 いいか、某達はこれから神社へ向かう。某が先程知り合った仲間と一端合流するためだ。
 そして、千影殿もそれにご同行される」
「……私は特に……明確な…目的地があるわけじゃないから。
 だけどひとまずは……信頼出来る人間と情報を交換したいんだ」

おかしい。
何故いつの間にか俺も神社へ向かう事になっているんだ?

「な……ちょっと待て!!
 俺は兄者と会うために西へ行かなければならない。
 神社と言うと……明らかに正反対の方向だろうが」
「西……?オボロ、聖上が何処にいるのか知っているのか!!」

トウカに言われて気付いた事。
……そういえば俺はどうして西へ向かっているのだろう。
確かどこかで兄者の声を聞いたような気がして、それで……。

「いや……何と言うか、E-4エリアで兄者の声が西から聞こえた……ような」

俺がそうシドロモドロに答えるとトウカは先程以上に呆れたような表情でため息をつく。
千影も苦笑する。口元が先程以上にぎこちない。

214 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 15:03:39 ID:RY7b8AP0

「……まったく」
「E-4か……ここがC-4とC-5の丁度間ぐらいだから……。
 多分……もう入れ違いになってるんじゃないかな」

千影の台詞にオボロは愕然とする。
膝から崩れ落ちてしまいそうな、そんな感覚だ。
確かに"西から兄者の声が聞こえた"という適当な理由で自分はここまで来た。
だが、俺の脚で散々探した挙句全く見つからなかったのだ。
ソレすら気のせいだったのではないかと思えてくる。

「落ち込んでいる場合では無いぞ、オボロ。
 こんな場所で油を売っている暇は無い。行くぞ」
「あ、ああ……」

既にトウカと千影は歩き出していた。
俺は既に自分の手を他の参加者の血で染めた人間だ。
そんな俺が二人と一緒に行動していて良いのか、正直分からない。
例えば今目の前に剣を持った不信な人物が現れたら、俺は精一杯、命の限り戦うだろう。
だがもしも。
それが何の力も持たない無垢な少女だった場合。
俺にはその相手の命を奪う意志は、もう無い。



215 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/26(火) 15:03:53 ID:JF0GkSlQ
支援

216 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 15:04:26 ID:RY7b8AP0
【C-4 マップ左隅森/1日目 朝】

【千影@Sister Princess】
【装備:永遠神剣第三位『時詠』@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【所持品:支給品一式 バーベナ学園の制服@SHUFFLE! ON THE STAGE 銃火器予備弾セット各100発 バナナ(フィリピン産)(2房)】
【状態:疲労(中) 魔力若干消費 スカートに裂け目】
【思考・行動】
1:オボロを若干警戒 トウカは呑気な人間だと評価
2:四葉を殺した人間に強い恨み
3:衛、咲耶の捜索
4:永遠神剣に興味
5:相沢祐一、北川潤、月宮あゆ、朝倉純一、朝倉音夢、芳乃さくら、杉並の捜索
6:相沢祐一に興味
7:魔力を持つ人間とコンタクトを取りたい
8:神社へ向かう

基本行動方針
ゲームには乗らないが、襲ってくるものには手加減しない。
第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)

【備考】
千影は『時詠』により以下のスキルが使用可能です。
未来視は時詠の力ではありません。

タイムコンポーズ:最大効果を発揮する行動を選択して未来を再構成する。
タイムアクセラレイト…自分自身の時間を加速する。

他のスキルの運用は現時点では未知数です。
詳しくはwiki参照。
またエターナル化は何らかの力によって妨害されています。

217 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 15:05:07 ID:RY7b8AP0

銃火器予備弾セットが支給されているため、千影は島にどんな銃火器があるのか全て把握しています。
見た目と名前だけなので銃器の詳しい能力などは知りません。


【オボロ@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
【装備:クロスボウ(ボルト残7/10)】
【所持品:支給品一式 不明支給品1(本人確認済み)、カルラの剣@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、エルルゥのリボン】
【状態:全身に擦り傷・中程度の疲労・困惑】
【思考・行動】
基本行動方針:ハクオロの声の聞こえた方向(西)を目指す。
1:千影の扱いに迷い、彼女の妹を殺した事に対する強い良心の呵責(殺す意志は消失)
2:エルルゥを殺した犯人を殺す。
3:敵意を持つ参加者の排除。
4:ハクオロ、アルルゥと一度合流。(殺し合いに進んで参加していることは黙秘)
5:神社へ向かう

※四葉を殺した事をいっそう後悔しています


218 :シャムロックを散らした男 ◆tu4bghlMIw :2007/06/26(火) 15:06:34 ID:RY7b8AP0

【トウカ@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
【装備:舞の剣@Kanon】
【所持品:支給品一式、永遠神剣第七位『存在』@永遠のアセリア−この大地の果てで−、不明支給品1(本人確認済み)、スペツナズナイフの柄】
【状態:精神的疲労】
【思考・行動】
基本:殺し合いはしないが、襲ってくる者は容赦せず斬る
1:アルルゥを探し出す
2:アルルゥを探すが、見つからない場合は一度昼の12時に神社へ向かう
3:ハクオロ、エルルゥと早急に合流し守る
4:オボロ、カルラと合流、協力しハクオロ等を守る
5:先程の二人組から情報を得る
6:次に蟹沢きぬと出会ったら真偽を問いただす
7:ひとまず神社へ
【備考】
蟹沢きぬが殺し合いに乗っていると疑っています
舞の剣は少々刃こぼれしています

※永遠神剣第七位"存在"
アセリア・ブルースピリットが元の持ち主。両刃の大剣。
魔力を持つ者は水の力を行使できる。

219 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 18:49:54 ID:bGbVdadR
【キ×ガイマーダー北へ】

頭のおかしい人間は何をするかわからない。
それは自分が「夢の中」にいるという勝手な理論を構築した鳴海孝之についても該当するらしい。

「うぁーひゃひゃひゃははははぁっ!これは夢、そう夢だから何をしてもいいんだぁ!!」
「そして俺はこの夢の世界の主!そう、支配者!!唯一神だぁぁぁぁぁぁっ!」
「だから目覚めさせる!皆を目覚めさせて最後に茜ちゃんををををををっ」

朝の新市街。
鳴海孝之は停車していたオートバイに跨り、その大通りを北上しながら大声を上げていた。

彼は爽快だった。
大通りで奇声を上げようと、盗んだバイクで走りだそうと「夢の中」ならば何をしても許される。
なんて都合のいい世界なのだろうか。
そして今、自分の手にはこの夢の世界にいる人間を発見する機械がある。
これこそ「神様が自分を応援してくれる証」に他ならない。

そう、俺は神の代理人なのだ――

有る時期の中学生が持つ、一種の万能感に酔いしれているのと同じ状態にある孝之は、既に有頂天を通り越していた。
もっとも、今の彼は壊れているのだから有頂天も何もない。

(皆を「起こさせて」あげれば、最後に自分が目覚めたとき皆が俺を祝福してくれるんだなぁ。そう、遙も双樹ちゃんも!!!!)

そんな事を考えていると左手に握っている発見器に二つの反応が表示される。

「おおっ!おおおっ!反応が二つぅぅぅぅっ!なんて幸先がいいいんだぁ」

大通りを北上した先にあるのは孝之の出発地点でもある役場。
自動制御で切り替わる大通りの信号も無視し、孝之はそこを目指す。
光点の主を「起こさせて」やる為に。

220 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 18:50:34 ID:bGbVdadR
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
【招かれざる訪問者】

一方、役場。
自分たちに迫る危機も知らず、北川潤はこの役場から移動する事としていた。

「よい……しょっと……」
「Zzzzzzzz……」

肩にディパックをかけ、背中に相変わらず眠り続ける伊吹風子を背負って、北川は役場正面の扉に手をかける。
結局、この役場での収穫は少なかった。
探索して得られたものと言えば、仮眠室にギャルゲーがインストールされているらしいデスクトップと、冷蔵庫に入っていた
「ゲルルンジュース」ぐらいである。

厳密には、他に全く何もなかったわけでもない。
しかし、今の北川にとって市長室の飾り棚にある表彰状やトロフィー、事務室のワープロや事務用品はとても価値があるとは思えなかった。

(とりあえず、ここを出て百貨店に行くか)

2階の仮眠室に上がってから、今後どうするか風子と話して決めようとしていた北川だが、風子が完全熟睡モードに入っていた事もあり、自分だけで
考えた結果、百貨店に向かう事とした。
やはり時間が経てば腹もすくし、あのディパックの中身も気になる。
それに、新市街に自分達以外の人間しかいないのならば、あのレナという女が死んだ今なら百貨店に行けるかもしれない。
確かにレナが回収した可能性や他の参加者に回収された可能性も捨てきれない。
だが、ここにいても何も変わらないし、どうせなら空腹で動けなくなる前にどこかへ移動したほうがマシ、というのが北川の出した結論だった。

扉を開き外に出る。
外は天気もよく、静かなものでここで殺し合いが行なわれているなんて到底信じられない。

221 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 18:51:10 ID:gBPzZhu4


222 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 18:51:15 ID:bGbVdadR
「ん、なんだこの音??」

丁度、北川が役場の外へ出ようとしたときの事だった。
自動車のエンジン音らしき音がこっちに近づいてくるのが聞こえる。
もしかしてタクシー?などと、冗談みたいな事を考えているうちにその音は大きくなり、役場前で止まる。

どちらにしても、誰かがここに来たのは間違いない。
北川が顔をあげると、敷地外の道路に一台のバイクが停車している。
バイクにまたがっているのはスーツ姿の男……。
他にも人がいたのか。などと北川が考え、男に接触しようかと思った時、バイクに乗っていた男がこっちを見ながらディパックから何かを取り出し、嬉しそうに声をあげる。

「みぃーつけたぁーあははははははははははは!」
「んのっ!?」

男がディパックから取り出した物を見た北川は思わず声を挙げる。
その手に握られているのはチェーンソー。
それを確認し、男の顔を見てさしもの北川も悟った。

あいつは俺達を殺す気でいる――と。

そう、男の顔は明らかに異常だった。
狂ったような笑い声とそれにふさわしい表情を浮かべ、その眼は完全にそっぽを向いている。
このままではヤバいと確信した北川は、すぐ扉を閉めると内側から鍵をかけた。
だが、バイクから降りた男はそんなもの気にする様子もなく、チェーンソーの駆動音を響かせてこちらに向かってくる。

「逃げちゃダメだよぉ〜。俺が皆を起こしてあげるんだからさぁ〜」
「何言っているんだあいつは!」

男――鳴海孝之――の言葉に北川は恐怖した。
それもそうだろう、この島での出来事が夢の中というのは孝之の脳内にしか存在しない理論であり、他の人間に通用するモノではない。
ましてや、この馬鹿げたゲームに乗っていない人間にすれば孝之の発言は狂っている以外のなんでもない。

223 : ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 18:51:56 ID:bGbVdadR
そうこうしている内に、孝之は役場の扉に近づいてくる。
北川も風子を背負ったまま役場内に後退するが、彼は完全に焦っていた。
もはや、先ほどまで風子に欲情していた空気は完全に吹き飛び、状況的には赤信号点灯といって差し支えない。
このままではあの男の持つチェーンソーで切り刻まれて終わりだろう。

(あのレナという女といい、チェーンソー持っている今の男といい、なんで俺が出会う人間にはロクなのがいないんだ!?)

ここまで出会った人間の事を考えつつ、北川は役場の奥へ奥へと後退する。
それにしても「ろくでもない人間」の中に風子を含んでないのは、彼の良心ゆえなのか。
だが、そんな事を愚痴ったところで状況が好転するわけではない。
男は扉にチェーンソーを突き立てているのだろう、先ほどから扉の向こうでチェーンソーの駆動音とともに、固いものが削られるような音が聞こえてくる。

(一体、どうすれば?どうすればいい……そうだ、裏口から逃げればいいんだ!)

そう考えるや北川は、すぐさま裏口に向かい扉を開く。

幸い、まだ男は役場の中には侵入していない。
裏口を閉めておけば、表から侵入した男はまず役場の中を調べるはずだ、と考えた北川は風子を背負い表へ回ろうとする。
が、しかし。

「逃がさないよぉぉぉぉぉぉぉん!」
「のわぁっ!なんでこっちから逃げようとした事がバレたんだ!?」

甘かった。
表へ回ろうとしたら、こちらに向かってあの男がチェーンソーを手に迫ってくるではないか。

ヤバい、ヤバすぎる。
なんで裏口から逃げようとしたのがバレたのかわからないが、このまま風子を背負って逃げるのは自殺行為だ。

北川は、心の底からこみ上げる恐怖を押さえつけながらも再び裏口に逃げ込み、鍵をかけた。
だが、その間にもチェーンソーの音がこっちに近づいてくる。
間違いなくあの男は表から侵入せず、裏口を破って自分たちを殺すと北川は確信した。

224 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 18:52:51 ID:bGbVdadR
(め、滅茶苦茶マズい!このままじゃあのチェーンソーで三枚におろされてオシマイじゃないか)
(こうなったら風子を置いて……ダメだダメだ!そんなことできるか!)
(やっぱ、戦うしかないのか?だけどこっちは武器なんか持ってないぞ、どうすればいいんだ?どうすれば……)

裏口に通じる廊下の真ん中で、北川は焦りまくる。
しかし、ここには銃器はおろか刀剣類すらない。
チェーンソーを持った相手に対抗出来そうな武器は一つも無いのである。
表から逃げようとしても、さっきと同様に感づかれて回り込まれたらアウトだ。
裏口からは、チェーンソーで扉を切り裂く音が聞こえてくる。

もう時間が無い――。

覚悟を決めるしか無いと北川が思ったとき、廊下の片隅に置かれた「ある物」が眼に入った。
それは、この手の建物には必ず設置されている物だ。
これなら武器になるかもしれない。
そう思った北川は、風子を廊下に降ろし「それ」を手に取る。

(もう選り好みなんてしてられるか、こうなったら一か八かだ)

北川は覚悟を決めると「それ」を手にし、そのまま裏口側に向かった。

「おおおおおおおっ!一人こっちに来るぅぅぅぅぅ!そうか、そんなに起こしてほしいんだなぁぁぁぁぁぁ」

首輪探知レーダーの光点、その一つが自分の方へ向かってくるのを確認した孝之は、嬉しそうにもう片方の手で
握っていたチェーンソーを両手で握りなおすと、裏口の扉に向かって切りつける。

(自分からこっちに来るというのは俺が正しい事をしているという事だな!うん!!)

そんな事を考えながら、孝之がチェーンソーで扉を切り刻む内、ついに扉が音を立てて内側へ倒れる。
だが、意気揚々と乗り込んだ孝之を待っていたのは薄桃色の煙幕だった。

225 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 18:53:59 ID:bGbVdadR
「うひゃあ、綺麗なピンク色だなぁ!でも、何だこりゃあぁぁぁぁぁぁ?」

煙幕の中へまともに突っ込む形になった孝之は、思わず立ち止まり周囲を見渡す。
おかげで踏み込んでから先がどうなっているのか、さっぱりわからない。
こんな時こそ、発見器の出番と孝之が首輪探知レーダーを取り出そうとした時、彼の眼前に何かが飛んでくるのが見えた。
その直後、顔面に強い衝撃を受けた孝之はそのまま床に崩れ落ちた。

▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
【逃走劇】

「どうやら当たったみたいだな。それなら今のうちに……」

孝之が床に崩れ落ちた後、自身も所々が薄桃色に汚れた北川はすぐさま風子を背負い、今度は正面の扉を開いてようやく敷地の外に脱出した。
男が追いかけてこないところからすると、とっさの反撃は成功したらしい。
今頃、あの男は床にうずくまっているか気絶しているかのどちらだろう。

「アレだけ重いものをぶつけたら痛いのは当たり前だよな」

北川が投げつけたもの、それは「粉末型消火器」だった。
男の侵入を前にして北川は消火器を手に取り、裏口の扉前に向かい、男が扉を破って侵入した直後に中身を放射したのである。
あの薄桃色の煙幕は消火器の中身である消化剤であり、最後に中身を放射し尽くして空になった消火器を男めがけて投げつけたのだ。

チェーンソーを振り回すあの男に通用するのかどうかわからなかったが、無防備に突っ込んできてくれたおかげで成功した。
今しばらくは逃げる時間を稼げるだろう。

だが、北川はそのまま逃走せず、役場とは道路を挟んで向かい側にある駐車場へ向かった。
駐車場には役場の駐輪場と異なり何台も自動車が置かれており、いずれにもキーがささっている。

226 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 18:55:04 ID:ZHsprmGa
しえん

227 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 18:55:23 ID:gBPzZhu4


228 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 18:58:49 ID:gBPzZhu4


229 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:00:11 ID:ZHsprmGa
 

230 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:04:10 ID:6oPSZLs9
 

231 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:05:59 ID:gBPzZhu4


232 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:06:11 ID:6oPSZLs9
 

233 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:13:01 ID:gBPzZhu4


234 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 19:18:29 ID:bGbVdadR
(あの男はバイクに乗ってここまで来たんだから、今走って逃げても追いつかれてオシマイだ)

そう、相手がバイクで来たなら、自分たちもそれなりの「足」を確保しないといけない。
何より、風子を背負って逃げていては、それだけ早く疲れてしまう。

だからこそ、北川は役場を出るや、目に付いた駐車場へ飛び込んだのだ。

彼が選んだのは駐車場の一番外に停まっていた外車だった。
左ハンドルだったが、この際右も左も無い。
鍵もついており、燃料も満タンであることを確認した北川は、風子を後部座席に押し込むと自身は運転席に乗り込んで車を発進させた。
自動車の運転など生まれてこの方した事が無かったが、案外すんなりと車は走り出した。

数分後、大通りを南に下りながら北川は車の中で安心していた。

(やれやれ、なんとか逃げ切れた)

どうやら、追いかけて来る感じも無いことから完全に振り切ったらしい。
スピードを落とし、後部座席を見ると風子は寝転がったまま相変わらず寝息を立てている。

「zzzzzzzzzzz……」
「やれやれ、こっちが命がけで逃げていたというのに……」

その様子を見て北川は少々呆れたが、逆に寝ていてくれて助かったとも思う。
もしあの状況で起きられたらパニックになるか、あるいは状況も読めずあの男に殺されていたかもしれない。
とりあえず、このまま百貨店を目指そうと思った時、助手席側の窓ガラスが派手な音を立ててぶち破られる。
その音にビックリした北川が音のした方を見ると、そこには駆動音を立てるチェーンソーが。
そいて、顔を少し上げると――

そこには、先ほどの男がバイクにまたがりチェーンソーを握っていた。

「な、何でお前が〜っ!?」
「逃げちゃ駄目だって言っているじゃないかぁ〜〜〜」

235 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 19:19:49 ID:bGbVdadR
額から血を流しながらも「にたぁ〜」と笑う男に北川はただ、恐怖するしかなかった。
だが、チェーンソーの切っ先はまだ北川の体に届いていない。
有る意味、このときの彼には幾つかの「ツキ」があったといえる。

一つ目は、選んだ車が左ハンドルであった事。
もし、右ハンドルの車を選んでいたら、今頃チェーンソーは彼の体を切り刻んでいたはずだ。

二つ目は、風子を助手席に乗せず後部座席に乗せた事だ。
そのまま寝かせておけば、という気持ちで後部座席に乗せた北川だったが、助手席に座らせていれば風子がチェーンソーの餌食になったのは間違いない。

三つ目は、追いかけてきた男――孝之――もバイクの運転については素人だった事。
男はチェーンソーで窓ガラスをぶち割ったものの、それ以上の攻撃は仕掛けてこない。
むしろ、かなりバランスを気にしているのか、こちらとの距離を一定に保つのも一苦労みたいだ。

両者は併走する形が暫く続いたが、北川はすぐさまアクセルを踏み込みバイクを引き離そうとする。
しかし、孝之もすぐにバイクのスピードをあげて併走し、両者の距離は縮まらない。
幸い、直接体にダメージを与えられたわけではないものの、北川は役場の時と変わらぬ焦りを感じていた。

(このままじゃ、燃料切れになったら車から引きずり出されるかしてチェーンソーでバラバラにされるのは間違いないぞ)
(まだ、燃料に余裕はあるけど一体どうすれば……おわぁ!)

「アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハー!」

次の瞬間、男の声と共に耳障りな音が響く。
男がチェーンソーで車のボディーを切りつけたのだ。
チェーンソーで車を切り刻むのは至難の業だから、まだ走行に支障はないだろうけれど、今頃車の側面は酷く傷ついていることだろう。

横を見ると、男は何度もバイクを車の方へ寄せてはチェーンソーで切り付け、離れるという動作を繰り返してくる。

「そっちがその気ならこっちも!」

236 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:20:10 ID:xPzv8Lri


237 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 19:20:31 ID:bGbVdadR
その動きを見た北川は、車のハンドルを切るとバイクの方へ車を寄せる。
すると、バイクの男はぶつけられるのは勘弁と思ったか、車から離れていく。
北川はそのまま車を右に右にと寄せていき、男の乗ったバイクを中央分離帯と車の間に挟み込む。
あとはこのまま幅を狭めて、バイクを中央分離帯にぶつけて転倒でもさせてやれば……と、思った時北川は我が目を疑った。

「きひひひひひひひ!きゃっほーーーーーっ!!」

なんと、男はバイクから自分の車の方に飛び移ってきたのだ。
ガラスの割れた助手席側のドアを足場にして車の屋根によじ登った男は、安定した足場を得られた事もあってか今まで以上の勢いでチェーンソーを振り回し、屋根に振りおろしてくる。

「なんて事しやがる!?」
「zzzzzzzzz……」

風子はこの状況下でも寝ていたが、北川はそんなことより屋根からの攻撃に対して今まで以上に焦っていた。
スピードを上げたりして振り落とそうとしてみたが、相手はそんな事などお構いナシにチェーンソーを叩きつけてくる。

既に周囲の風景は、建物の真新しい新市街からどこか寂れた感じの場所に入り込んでいる。
どっちにしても、このまま南へ走り続ければ森に突っ込んでしまう。
とにかく、屋根の上にいる男をどうにかしないことには状況は好転しない。

その時、正面に突き当たりとなっている場所が見えた。
丁度、丁字路となっている箇所であり、このまま直進すれば壁に衝突するのは確実だ。

(いっそのこと、このまま猛スピードであの壁にぶつかってやったほうがいいのかな……)

状況が変わらぬ中で、北川は一瞬そんなことを考える。
屋根の上では相変わらず男が奇声をあげてチェーンソーを振り下ろす音が聞こえており、状況はなんら変化無い。
だがその時、北川の脳裏にあるアイデアがひらめく。
消火器を使って難を逃れたとき以上に分は悪いが、多分今の自分に出来る数少ない手段。
すぐに北川はシートベルトを締めると、アクセルを踏み込み車を加速させる。
ほぼ同時に、屋根の上から響いていた耳障りな音が止んだ。
大方、スピードを上げたので屋根の上にしがみついているのだろう。

238 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:20:40 ID:gBPzZhu4


239 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 19:21:12 ID:bGbVdadR
(そうやってしがみ付いていろよ!)

北川は更にスピードをあげて、そのまま突き当たりのブロック塀に向けて車を加速させる。
周囲の風景もまた加速していき、みるみるうちにブロック塀が目の前に迫る。

そして、その距離が30メートルほどまで近づいた時――。

「これでっ!どうだぁっ!!」

北川は渾身の力を込めて一気にサイドブレーキを引く!

直後、すさまじいブレーキ音と共に車体が急激な減速と、横へ大きく振られる事による激しい揺れ、シートベルトが体に食い込む痛み、
更に何かが前に向かって投げ出され地面に叩きつけられるような音が一度に来た。

北川が、腹部の痛みに耐えながら恐る恐る顔を上げると、車は正面のブロック塀から2メートルほどのところで停まっていた。
前の方を見ると、壁の近くにあの男が倒れている。

勝負はついた。
起死回生の策は成功したのだ。

▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
【いざ、百貨店へ】

車を降りた北川は、男の方へ近づいてみた。
男は完全に気絶しているらしく、まったく動く気配が無い。
しかし、消火器をぶつけられても笑っているような人間なのだから、用心に越した事は無い。

男が持っていたチェーンソーを拾い上げ、更に接近する北川。
身に付けているスーツは既に男自身の血や消化剤、地面に落ちたときの土ぼこりなどで見事に汚れており、もとの小奇麗な姿はどこにもない。
近くには男が持っていたと思われるディパックが落ちており、男が眼を覚まさないうちに北川はディパックを開けて中身を確認し始めた。

240 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 19:21:52 ID:bGbVdadR
「どれどれ……ノートパソコンにハリセン……お、食料品があるのか。貰っておこう……げげぇっ!」

中から出てきたのは支給品一式にノートパソコン、ハリセン、更に男が振り回していたのと同じ型の電動チェーンソー、それに対応したバッテリーだった。

「まさにキ×ガイに刃物ってやつだな……。とりあえず、全部貰っておくか……」

ディパックを回収し、助手席に放りこんだ北川は再び気絶している男に近づく。
恐らく急ブレーキをかけた際に前へ放り出された時、体をぶち当てたのだろう。
正面のブロック塀には派手にヒビが走っていた。

男の方は、頭から出血しており、体はピクピクと痙攣している。
ここまで怖い目に遭わされたのだから、いっそのこと後腐れなく殺したほうがいいんじゃないかという考えが頭に浮かんだが、それはやめた。
やはり、あのレナに追い回された時にも思ったことだったが、ゲームに乗って人を殺そうとは思わなかったからだ。

(やっぱ、このまま放っておこう……)

その時、仰向けに倒れた男を見ていた北川は、男の胸ポケットにある不自然な膨らみに気が付く。
どうやら、何かを突っ込んでいるみたいだ。
そっとそれを取り出してみると、それは液晶画面に白い光点を三つ映し出している機械だった。

「なんだこれ?ゲーム機か?」

とりあえず、貰っておくことにした北川は今度こそ車に戻ろうとする。
すると、画面上の光点の一つが動いているのが判る。

「え、どういうことだ?もしかしてこれって……」

もう一度画面を見ながら男の方に近づいてみると、画面上の光点がもう一つの光点の近くに移動した。

241 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 19:22:33 ID:bGbVdadR
「なるほど、人間を探知するレーダーか……これを持っていたから俺達の居場所わかったのか」

どちらにしても、これは有効な道具だ。
これがあれば他の人をもっと容易に発見できる。と思った北川は車に乗り込むと、早速百貨店を目指す事にした。

「これがあれば百貨店に誰かいても、すぐに分かるな」
「う〜ん」

すると、ずっと後部座席で眠り続けていた風子が目を覚ました。

「あ、やっと起きたか」
「北川さん、ここどこですか?ベッドじゃないですよね」
「車の中だ。お前が寝ている間大変だったんだ。これから百貨店に行くからな」
「そうですか。それなら百貨店まで風子はまた一眠りします……zzzzzz」
「やれやれ……」

だが、なんとか危機は脱した。
そう思うと自然と気が抜け、今更になって冷や汗がでてきた。


【A-4 廃アパート群の一角/1日目 時間 午前】

242 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 19:23:35 ID:bGbVdadR
【北川潤@Kanon】
【装備:首輪探知レーダー】
【所持品:支給品一式×2、チンゲラーメン(約3日分)、ゲルルンジュース(スチール缶入り750ml×3本)、ノートパソコン(六時間/六時間)、
ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×7】
【状態:至って健康。若干空腹。冷や汗が大量に出てきた】
【思考・行動】
1:とりあえずは百貨店に向かい、風子のディパックを回収する。
2:知り合い(相沢祐一、水瀬名雪)と信用できそうな人物の捜索。
3:PCの専門知識を持った人物に役場のPCのことを教える
4:あの娘やさっきの男を見てしまった以上、殺し合いに乗る気にはなれない……
5:鳴海孝之をマーダーと断定(名前は知らない)

【備考】チンゲラーメンの具がアレかどうかは不明
 チンゲラーメンを1個消費しました。
【備考】
※パソコンの新機能「微粒電磁波」は、3時間に一回で効果は3分です。一度使用すると自動的に充電タイマー発動します。
 また、6時間使用しなかったからと言って、2回連続で使えるわけではありません。それと死人にも使用できます。
※チェーンソのバッテリーは、エンジンをかけっ放しで2時間は持ちます。
※首輪探知レーダーを入手しましたが、レーダーが人間そのものを探知するのか首輪を探知するのか判断がついてません。
※運転している車は外車で左ハンドル、燃料はガソリンで鍵がついています。
 また、一連の戦闘で車の助手席側窓ガラスが割られ、右側面及び天井が酷く傷ついています。

243 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:24:03 ID:gBPzZhu4


244 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 19:24:36 ID:bGbVdadR
【伊吹風子@CLANNAD】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:睡眠中】
【思考・行動】
1:zzz
2:北川さん……お腹すいてます?
3:北川さんって……変態さんですか?
4:百貨店ですか……?
【備考】今のところ状況をあまり把握してません。

【備考】
※新市街での深夜から黎明に行われた戦闘、先ほどの戦闘については知りません。


▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽

245 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:24:47 ID:gBPzZhu4


246 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:25:32 ID:ZHsprmGa
 

247 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 19:26:05 ID:bGbVdadR
【凶鳥の操り人形】

鳴海孝之が眼を覚ましたのは、既に北川と風子を乗せた車がその場を離れて随分時間が経過してからだった。
かなりの出血をしているにもかかわらず、ムクリと起き上がった孝之はブツブツと何か呟き始める。

「なんで夢の中なのに思い通りにいかないんだろうなぁ?なんで夢の中なのにこんなに痛いんだろう??」
「夢の中なんだから全部思い通りになるはずなのになのになのになのになのに……」
「体中あちこち痛いのはもしかしたら夢の中だから痛いのかもしれないし、目が覚めたらどこにも怪我してないはずなんだろうしろうしろ」

どうやら、夢なのに体中が激しく痛む事がおかしいと思っているみたいだった。
だが、これが夢ではなく現実であることに気づくわけではなさそうだ。

そんな、孝之を遠くから見つめる目があった。

「大きな音がしたから飛んできてみれば、なんだあの男は?」

孝之へ目を向けていたのは一羽のオウム――土永さん――に他ならない。
あの少女――川澄舞――を騙し、自分にふさわしい拠点を探していた彼は、大きな音が聞こえるや翼を翻してここに向かってきた。
しかし、到着してみれば音のした地点には頭から血を流した男が倒れているだけ。
そして男は起き上がったかと思えば、いきなりブツブツなにかわけの分からない事を呟いている。
とりあえず、土永さんは男の様子を観察する事とした。

「せっかく目覚めさせてあげようと思ったのに、逃げられてしまったけど一度はこっちに来てくれたはずなのに何で逃げ出すんだろうなぁ」
「おかげで夢の中の神様ががんばれるようにくれた発見器もなくしてしまった。神様が神様が神様が神様が神様が神様が神様が」
「そうだ、神様にお願いして力を分けてもらえばいいんだよなぁ。神様出てきてくださいお願いしますしますすすすすす」

神の降臨を求める孝之の姿は、土永さんの目にはあまりにも滑稽に映った。

248 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◆/P.KoBaieg :2007/06/28(木) 19:26:47 ID:bGbVdadR
「どうやらあの男、神の存在を盲目的に信じているみたいだな。ディパックも持ってないみたいだ。しかし、この状況で神にすがるとは……」
「だが、うまくいけば操ることができるかもしれんな。やってみるか……」

土永さんは、浮かんだアイデアを実行に移すべく自分のディパックを孝之の後方へそっと下ろし、自身は孝之の背後にあるブロック塀の反対側へ下りる。

『そこな人間!聞こえておるか?』
「え、この声は一体誰なんだだだだだだ??」
『我輩は神である!我輩を呼んだ人間はお前か?』
「お、おおおすごい。願ってみたら本当に神様が来てくれたんだ。神様何処にいますか?どこですかーーーーー?」
『人間よ、残念ながら我輩はお前の前に姿を現すことは出来ぬ。とりあえず、そのまま話を聞くがいい』
「え、は、はいわかりましたですますすすす」

威厳ある声のトーンは十分な威圧になったのか、孝之はその場にかしこまる。
一方、土永さんは孝之の様子こそ伺えないものの大方萎縮しているだろうと判断し、そのまま言葉を続けた。

『ところで人間、我輩を呼んだからには理由があるのだろうな?』
「神様がせっかくくれた力がなくなってしまいました。だから、神様に新しい力を貰おうと思いましたましたました」
『(貰った力?一体何の事だ?まあいい)と、とりあえず我輩はお前に使命を与えるために来た。よく聞け人間、お前はこれから神の敵を倒すのだ』
「か、神様の敵っていうことは、この夢の世界で俺から逃げ回っている奴らのことですよねぇ。だれなんですか?」
『(夢?この男はこの世界を夢と思い込んでいるのか)今から我輩の言う名前を頭に覚えるのだ。今から我輩の言う者は、神にそむいた者どもだ』
「そ、そいつらを起こしてやれば、新しい力をくれるんですかかかかかか」
『まぁ、そういうことだ(せいぜい我輩のために働いてくれ、人間よ)』
「で、だれです。誰なんですかそいつらは?」

ここまで上手くいくとは思わなかった土永さんは、放送で死亡が確認されたレオを除く生徒会メンバーの名前を口にした。
それを聞いた孝之は言われた名前を暗記しようとブツブツ呟き始めた。

249 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:27:38 ID:ZHsprmGa
 

250 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:38:27 ID:gBPzZhu4


251 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:40:08 ID:gBPzZhu4


252 :童貞男の孤軍奮闘◇代理:2007/06/28(木) 19:42:35 ID:gBPzZhu4
まだ健在であろう生徒会メンバーの顔を思い出し、最初に狙わせる標的を誰にするか考え――。

(出来れば我輩でも十分使える武器が欲しい。そう、爆弾でなくても容易に持ち運びが出来て、食糧に混ぜられる毒物みたいな物を……)
「だけど、このナイフの刃はやっぱりいらないなぁ……神様には悪いけど捨てちゃおうかなぁ〜……」
(この男の武器については途中で落ちているものもあるだろう。そこへ上手く誘導してやればいい)

自らに向いた武器について考え、孝之の武器についても思案する――。

(とりあえず、あの男がここを離れたら我輩も場所を移すか)
「うん!もったいないけど捨てちゃおうか!そうしよう!」

だからこそ気づかない。孝之が本当に狂っている事にも、予想のつかない行動に出る事も――。

(さっさと、この男を移動させて我輩は上から様子を見る事にしよう)
「こんなモノは、こうだぁぁぁ〜〜〜っ!そ〜れっ!」

ぽいっ

そして、孝之がナイフの刃先をブロック塀の「向こう側」に放り投げた事にすら――。

(む、一体何をしたのだ。あの男……? なっ!!!)

土永さんが上を向いたところ、孝之が放り投げたナイフの刃先が一直線に自分へ向かって落下してくるのが見えた。

そして――――。


さくっ


253 :童貞男の孤軍奮闘◇代理:2007/06/28(木) 19:43:35 ID:gBPzZhu4

(…………あ、危なかった…………)

ナイフの刃先は土永さんから十数センチずれた地面に突き刺さった。
(あと少しずれていたら我輩はあのナイフで串刺しにされていた……。もしかしてあの男、我輩の居場所が分かったのか?)
(まさか!?いや、先ほどの正確さからして狙ったとしか思えん。それとも我輩の正体に気が付いているのか?)

自分を狙ったとしか思えないナイフの軌道を前に、土永さんは孝之へ一種の恐怖じみたものを感じる。
一方、そんな事は何処吹く風な孝之はディパックの中身確認が終わったのか、神の啓示の続きがないのを気にし始めた。

「あれ?神様の声が途絶えたんだけど帰っちゃったのかなぁ神様?それとも神様が起きちゃいましたかかかかか〜」
『馬鹿者ぉっ!危なかったではないかーーーッ!』
「神様があぶないぃって、何がでしたかぁ?あ、もしかしてさっき投げたナイフの刃がプスーって刺さってしまいそうだったとか?わはははははははぁひゃあぁぁ」
『(おわ、思わず口が滑った!しかし、なんて鋭い奴!いかんいかん!)い、今のは間違いだ!せっかく我輩がくれてやったものを!勿体ないではないかぁっ!』
「え〜〜〜、だけどあんなものじゃ神様の敵も殺されないじゃないですかぁ〜。もっといいもの恵んでくださいよぉぉぉぉぉぉ」

どう考えても神をなめているとしか思えない物言いをする孝之。
もっとも、ナイフの刃先で先ほど名前が挙がった面子を全員殺すのは不可能に近いのだが……。

(我輩のディパックをくれてやったのに、なんて奴……。だが、ここでこの男を手放すのは惜しい……まてよ、あそこなら)
『そ、それならこの近くに色々物が置かれた空き地が有る。そこに使えるものがあるはずだ。そこに行け』

孝之の態度に立腹しながらも、きっちりここまで飛んできた途中で見つけた空き地の事を教えてやる土永さん。
どうやら神様役にご満悦らしい。
それを聞いた孝之はディパックを手に立ち上がり、空き地を目指す。

「な〜んだぁぁぁぁぁ、神様もちゃんと武器のある場所知っているじゃないですかぁぁぁぁ〜」

254 :童貞男の孤軍奮闘◇代理:2007/06/28(木) 19:44:43 ID:gBPzZhu4

既に相当出血しているはずなのに、平然と空き地に向かって歩いていく孝之。
一定間隔を空けて後を追う土永さんはそんな孝之に驚愕する。
(あ、あれだけすさまじい怪我をしていながら、平然と歩けるとはなんという男だ!)
(しかも、勘も鋭いときた……単に信心深いだけの人間ではないみたいだな……)

完全に鳴海孝之という人間を勘違いしている土永さん。
そうこうしているうちに孝之は、解体用の機材や工具が置かれている空き地にたどり着いた。

「色々あるなぁ〜えへぇへへへへへへへへ〜。あ、チェーンソーもあればいいけどなぁ〜」
「あ、これよさそうだなぁ〜。うへへへへへへへ〜」

得物を物色していた孝之は、工具の中から長柄の大型ハンマーを引っ張り出す。

「じゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃ〜〜んん!ハンマハンマ〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
(あの男、早速武器をみつけたか。確かにあのハンマーは我輩では扱えないな)

嬉しそうに新たな得物を振り回して、そこらじゅうの機材をぶっ叩いてみせる孝之。
その様子を物陰から伺う土永さん。

「でもこれだけじゃ足りないなぁ〜、そうだ。もっと集めておこう!うん!そうすれば起こし方にも種類が増えて楽しいよな!」
(む、まだ新たに武器を得るつもりか……)

新たな得物に満足した孝之は自作の歌を口ずさみながら、ディパックへ次々に武器となるものを突っ込んでいく。

「寝ている子はハンマーで潰してミンチだよ〜♪つっつっツルハシで串刺しさ〜♪斧でザクザク刻みましょ〜ぉぉぉぉうぉっ!」
「レザ〜ソ〜で首チョンパ〜、鮮血噴き出し噴水だ〜♪フックをどてっぱらに突き刺して〜♪木の上からつるそうよ〜♪」
「最後はグッチャグッチャに混ぜ合わせてハンバ〜クのできあがり〜♪」

ディパックへお目当ての得物を全てつぎ込んだ孝之は再び、神の啓示を聞こうとする。

255 :童貞男の孤軍奮闘◇代理:2007/06/28(木) 19:46:32 ID:gBPzZhu4
「神様神様カミサマ、武器が新しく手に入りましたことを感謝しますですぅぅ」
『うむ、感謝するがよいぞ』
「ところで神様、こいつらの中で真っ先に殺すのは誰からですかぁ〜」
『(そうだな……先ほども思ったが、エリカについてはあの小僧次第だからこの男には……)お前が殺すべきはその中の佐藤良美という女だ!』
「へぇ〜、佐藤良美かぁ……平凡な苗字だなぁ……でも、この蟹沢きぬというのは名前からしてシワクチャのババアみたいだし、
伊達スバルというのは男だから、この二人よりはマシかなぁぁぁぁぁ〜」
『(今の言葉、本人達が聞いたらどんな顔をするか見ものだな……)で、今から佐藤良美がどんな容姿であり、どんな声か我輩が真似をしてやる。よく聞くがいい』
「おぉ〜、神様の声真似かぁ〜すげぇぇぇぇぇぇぇ」

早速、土永さんは孝之に良美の外見に関する説明と、どんな声であるかを披露してみせる。
一方の孝之はまだ見ぬ「佐藤良美」の外見とその声から色々とよからぬ妄想を行なっていた。

「水色の髪にその声かぁ……殺し甲斐がありそうだなぁぁぁぁぁぁ〜」
「あ〜、殺す前に足でも潰して身動き取れなくしてから犯すのが一番かな〜うぇへへへへへへへへ〜」
『人間よ、勝手に考えるのもいいが、とりあえずは森に入れ。事はそれからだ!(やはり身を隠すには森が一番だ。我輩にとっては特にな)』
「あぁぁぁい、それじゃ森入ります〜ぅえへへへへへ〜」

立ち上がった孝之は、自分が神の加護を受けているという絶対的な自信の元に森へ歩きだす。
土永さんも森を目指して孝之に見つからぬよう飛び立った。

「も〜りへ〜ゆきましょうよ、さ〜とう〜さん〜♪ケッケ〜ッケ!ハ〜ンバ〜グ♪」

体が自分の血で汚れ、全身に痛みが走っているのも気にせず孝之は森に踏み入って行く。
しかし、彼がそのことを気にしないのも当然かもしれない。
なぜなら、今の彼は神の啓示と加護を受けた神の代理人なのだから。

256 :童貞男の孤軍奮闘◇代理:2007/06/28(木) 19:49:08 ID:gBPzZhu4
(ま、せいぜい殺してくれよ。我輩が生きて祈の元へ帰る為にな……)
(さて、とりあえずはこの男を操って、我輩の事を知る者を全滅させるか……)

だが、狂っているからこそ彼は気が付かない。
自分が人間の尊厳を失い、オウムの操り人形に堕していることに。

そして、土永さんもまた気づいてない。
孝之がすでに狂っており、必ずしも自分の思い通りの行動をするとは限らない事を。

これが、互いにとって幸か不幸かは本当の神のみぞ知る……。



【A-4 廃アパート群の一角にある空き地/1日目 時間 午前】

257 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:50:36 ID:ZHsprmGa
 

258 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 19:57:39 ID:ZHsprmGa
 

259 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 20:06:17 ID:6oPSZLs9
 

260 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◇代理トウカ:2007/06/28(木) 20:08:40 ID:6oPSZLs9
【鳴海孝之@君が望む永遠】
【装備:両手持ちの大型ハンマー】
【所持品:支給品一式、多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、ツルハシ、斧2本、レザーソー3本、フック付きワイヤーロープ(5メートル型、10メートル型各1本)】
【状態:俺には神の啓示と加護がある!皆待ってろよ!!】
【思考・行動】
1:ぎゃわはははははははー!(森に入り、神の名の下に背徳者である生徒会メンバーを殺す+女は犯してから殺す。まずは佐藤良美とかからだ!!)
2:げへへへへへへっ!(殺したらミンチをこねてハンバーグだ!)
3:あひゃひゃひゃひゃ!(一人の相手には名前を聞いてから殺す)
4:ひゃっはーーーーーーーーー!(大勢の場合、無害を装って一人ずつ時間をかけて殺す)
5:あんなこ〜とイイなッ!で〜きたらイイなッ!
6:最後は茜をひ、ひひ、ひひひ、ひひいひひひひひひひひッッ!

【備考】
現在、南に向かって移動中。森に入ります。
森へ入った後、東に行くか南に行くか、はたまた西に進んで海にドボンするかは次の書き手次第。
孝之のスーツは全身が消化剤や自分の血等で汚れています。
自分が神の加護を受けていると思い込んでいるので、酷い出血も痛みもまったく気にしていません。
祈の棒キャンディーを消費しました。
レオを除く生徒会メンバーの名前を情報として知っています(良美については声、髪の色など土永さんが知る限りの情報を全て知ってます)。

【備考その2】
孝之の「実際の」状態は以下の通り
肉体…疲労は通常なら人間の限界点突破、後頭部より大量の出血、肋骨右3本&左1本骨折、右足首捻挫、
奥歯1本へし折れ、全身擦過傷及び裂傷多数、脳内より大量のエンドルフィン分泌により痛覚完全に麻痺
精神…完全にハイモード及び絶賛発狂中

新しく入手した得物について
・大型ハンマー:ミンチ作るのに向いてますね。でも、即死させるならこめかみへの一発だ!
・ツルハシ:五寸釘のごとく胸に一発突き立ててやりましょう。
・斧:スプラッタ映画みたいに脳天勝ち割りたいね!
・レザーソー:マフラー巻いていても鎧袖一触、頚動脈を掻き切って鮮血の結末を!
・フック付きワイヤーロープ:フックが体に突き刺さったら、すごく……痛いです。

261 :童貞男の孤軍奮闘(修正版) ◇代理トウカ:2007/06/28(木) 20:09:21 ID:6oPSZLs9
【土永さん@つよきす−Mighty Heart−】
【装備:鳴海孝之@君が望む永遠】
【所持品:なし 】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:最後まで生き残り、祈の元へ帰る
1:鳴海孝之(名前は知らない)を駒として操り、生徒会メンバーを皆殺しにする(孝之の前には姿を現さないように注意)。
2:自分でも扱える優秀な武器が欲しい、爆弾とか少量で効果を発揮する猛毒とか。
3:孝之が使えなくなったら、どこか一箇所留まったままマーダー的活動が出来る場所を探す
4:基本的に銃器を持った相手には孝之をぶつける

【備考】
鳴海孝之とは距離をおいて行動しています。
孝之の事は、信心深いくせに勘が鋭く、尚且つ驚異的にタフと思い込んでます(狂っていることに気づいてません)。
狂った孝之が、何かの拍子で自分の想像の斜め上を行く行動を取る可能性について考慮していません。
土永さんの生徒会メンバー警戒順位は以下の通り(レオを除く、放送後の死亡者についてはまだ知らない)
エリー>よっぴー>乙女さん>スバル>カニ

262 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 21:50:10 ID:TSHF2UpD

瑞穂のハンカチを涙と鼻水だらけにした蟹沢は、自己紹介を終えると、どうして叫びながら走っていたか語り始める。
最初にあっけなく殺されたフカヒレの死、そして出会う事無く放送で流れたレオの死。
さらに病院で待ち合わせるといった稟とも、未だ合流できないままでいる苛立ち。
大事な仲間の二人を失ったことや、約束に間に合わない焦りで、自分でもどうしたら良いか判断できなくなっていた。
抗う事の出来ない現実に、心は押し潰されつつある。
ようやく全てを吐き出した蟹沢は、堰を切ったように叫んだ。
「こんなん面白くもなんともねぇよ! 誰か何とかしろよー!」
精一杯の虚勢を張って瑞穂に八つ当たりする。
「お前何とかしろよぉ! だいたい、なんでボクがこんな目に会わなきゃいけないんだよ!」
誰かの所為にして楽になりたい。だから、身近に居た瑞穂に罵声を浴びせた。
彼女に文句を言うのは見当違いと分かりながらも、言葉は止まらない。
それなのに、泣き叫んだ蟹沢を瑞穂はそっと抱きしめた。
「なっ――」
罵倒した蟹沢を拒絶するでも、無視するでもなく、ただ強く抱きしめた。
「頑張ってって、気安く言うつもりはないけれど」
「……」
「でも、諦めたらそれで終わりよ」
「ッ……ぅぅ」
「ね。一緒に帰りましょう」
「ぐすッ……帰りてぇよぉ……ちくしょぉぉ……」
瑞穂の胸の中で、蟹沢は声を忍ばせ泣き続けた。
涙の中で受け入れる。レオには二度と会えない事を。
そして、涙を流し終えた時にはまた頑張ろうと心に誓う。
涙が枯れ、瑞穂の体からそっと体を離す。
そこで、一度も会話をしていなかったアルルゥと視線がぶつかる。
ずっと瑞穂に抱きしめられ、泣いていたのが恥ずかしいのか、誤魔化すように文句を口にする。
「んだよ、こっちみんなよぉ〜」
涙を袖で拭い、覗き見るアルルゥを手で追い払う。
「……」

263 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 21:51:07 ID:VKDYLCvn


264 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 21:51:37 ID:TSHF2UpD
だが、アルルゥは何も言わずただじっと蟹沢の顔を見ているだけ。
「おめぇ、ボクの顔がそんなに面白いかのよ! 泣いて悪いのかよ!?」
「アルルゥもお姉ちゃん死んだ」
「あ? 誰が死んだって?」
聞き間違いかと思った蟹沢は、以下の言葉をもう一度問いただす。
「お姉ちゃん。死んだ」
「……っ」
「カルラおねえちゃんも死んだ」
淡々と語る言葉に、蟹沢は何も答えられない。
この自分より一回りも小さいような少女も、大切な人間を失っていたのだ。
「でも」
その瞳は、全てを諦め始めた蟹沢と違い力強く感じられる。
だから、蟹沢は何も言い返さずアルルゥの言葉を聞き続けた。
「アルルゥおとーさんに会いたい。一緒に帰る」
「……」
「瑞穂おねーちゃんも、トウカおねーちゃんも、アカサカも、みんなみんな一緒」
「……」
「だから、カニっちも一緒に帰る」
「んだよぉ」
こんなに小さいのに、大好きだったであろう人を失ったはずだろうに。
彼女の笑顔は太陽のように暖かだった。
「ボクは蟹沢きぬだ!」
「だからカニっち。アルルゥあだ名付けた」
「じゃあお前はチビだな!」
「アルルゥとカニっち同じくらい」
「うるせぇダボが! ボクの方がさり気なく大きいんだよ!」
「アルルゥ、これからのびる」
「嫌味か!? 嫌味なのかこんにゃろぉぉぉ!」
逃げるアルルゥを、蟹沢は一生懸命追いかけ……気付いた。

265 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 21:53:46 ID:TSHF2UpD
(ボク、まだ元気じゃん)
と、悲劇のヒロインの如く苦笑いを浮かべた蟹沢の周囲が、突然暗くなる。
「あり」
太陽が隠れたのかと周囲を見渡すが、陰っているのは蟹沢のいる地点のみだ。
「カニっち」
追いかけていたはずのアルルゥが近寄ってくる。
「お、ようやく降参か? へへん。お仕置きしてやっからそこに座りな!」
「上」
「んぁ?」
アルルゥが上に向かって手を差し出すのにつられて、手の先を追うように空を見上げる。
視線の先にいたのは、空中から落下してくる青い髪の女。どう考えても避けられない。
「ばっ、オメーそう言う事は先に――」
文句を言い終わる前に、重い音を響かせて蟹沢は少女の下敷きとなった。
一連の出来事を遠くから見ていた瑞穂が、慌てて近付いてきた。
「だ、大丈夫!?」
「アルルゥ平気」
「下敷きになったボクを心配しろよな!」
「カニっち無事」
「無事じゃないだろダボ! てか、早くこのアマどかせよぉ〜」
「あ。はい!」
二人のコントの様なやり取りで噴き出してしまった瑞穂は、誤魔化すように青い髪の女をどける。
押し潰されたへばっている蟹沢を放置して、落ちてきた方に注目する。
「外人さん……かしら」
ここまで綺麗な青髪を、瑞穂は見たことがない。アルルゥも、興味深そうに覗き込んでいた。
「どりどり。おお、見たことねー外人だな」
淡く白い肌を突付きながら、目を閉じている女を見下ろす。
気絶しているのか、呼びかけてもなかなか反応しない。
すると、突然アルルゥが首を横に振り出す。そして、蟹沢の小指を掴むと一気に走り出した。
「アルちゃん!?」
「いだだだだだ! ちょ、いきなり何すんじゃボケぇ!」
「おしっこ」

266 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 21:53:47 ID:t5/L9hc7



267 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 21:54:34 ID:t5/L9hc7



268 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 21:55:24 ID:TSHF2UpD
その場で立ち上がる瑞穂と、小指を掴んで痛がる蟹沢に短く用件を伝える。
それを聞いた瑞穂は、不安になりながらも二人を送り出した。
本当は追いかけたいが、そんな事をしたらただの変態である。
「あまり遠くにいっちゃ駄目だからね!」
二人の姿は、木陰の中へと消えていった。



    ◇    ◇    ◇    ◇



トロッコで移動していたアセリアは、予想以上のスピードとうねりで頭がくらくらしていた。
戦場では縦横無尽に駆ける彼女も、こんな乱暴な乗り物に乗るのは生まれて初めてだ。
かれこれ一時間は走ったのだろうに、トロッコの勢いが止まる気配がない。
いつ到着するか解からない終着点まで、ただただ動き続けるのだろう。
そんな考えを考えながら、アセリアは今のうちにと休息を取るべく体を楽にした。
だが、タイミングの悪い事に、楽になった途端にトロッコは急停止してしまう。
そして、急停止した反動でアセリアの体は、空高く放り出されることとなった。
空を舞う力のないアセリアは、ただ地面へと落下していく。
落下するさなか、地面の方から二つの気配を感じた。気になったので、なんとか空中で首を捻り下を見る。
するとそこには、オルファと変わらないくらいの小さな少女達が大地を駆け回っていた。
一人はこちらに気付いていないが、黒髪の少女とは視線が重なる。
その瞬間、アセリアの中で何かが駆け巡った気がした。
瞳から目を逸らす事無く、アセリアは少女を見続けていた。
黒く輝く瞳の中に見える何かが、アセリアの警戒を解いていく。
少女の目を見ているだけで、どういうわけか胸がざわめく。
手を伸ばす少女につられて、アセリアもゆっくり手を伸ばす。あと少しで触れられる。
が、少女に触れる前にアセリアは地面へと墜落した。
目が回っていた所に加えられた衝撃に、視界がゆっくりと溶けていく。
全てが溶けきる瞬間、アセリアは少女と再び目が合った。

269 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 21:55:45 ID:yGgLij0d
    

270 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 21:56:46 ID:TSHF2UpD
(お腹すいた?)
つぶらな瞳は、何故かそう語りかけている気がした。
(ちょっと)
だがら、アセリアも答える。そして伝わるのを確認する前に視界から全てが消えた。



再びアセリアが目を覚ますと、青い空と鮮やかな木々が揺れ動いた。
すぐに自分が仰向けになっている事を理解した。それにしては地面が柔らかい。
目線をずらすと、長髪の女の顔がそこにあった。
(敵)
即座に動こうとしたが、どこか打ったのか起き上がれない。
アセリアが目を覚ましたのに気付いた長髪の女は、アセリアの青い髪を梳きながら口を開いた。
「お目覚めかしら」
その微笑みは、どこかエスペリアを連想させる。
襲ってくる気配も殺気もない。とりあえずもう少し様子を見ることにした。
女は何も語らず、ただアセリアの髪を梳き続けた。
(ん)
妙にくすぐったいが、悪い気はしない。
しばらく身を任せていると、小さな茂みが揺れる。
警戒するため立ち上がろうとするが、頭が痛んでよろめいてしまう。
「あ、まだ寝てなきゃ駄目よ」
女に支えられ、アセリアは再び膝枕の体制に戻る。
(ダメージの回復が遅い)
カルラとの戦いでも感じたが、肉体の損傷の回復が遅過ぎる。
それに永遠神剣が無いとは言え、身体能力もかなり低下しているようだ。
そんな事を考えていると、先程揺れた茂みから二人の少女が飛び出してきた。
「きゃっほぅ〜! アルルゥ一番」
「ゴラァ! このクソチビがぁ! のわぁぁ!」
後から来た少女は、怒りの表情で前の少女を追いかけて、石に躓いて転倒した。
(こいつも強そうじゃない)
一瞬でそう判断しつつ、最後にその前を走る少女を見てアセリアは目を大きく開く。

271 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 21:59:24 ID:TSHF2UpD
その顔は、気絶する前に見た少女だった。またも胸がざわめく。
「起きたか」
少女がこちらに気付いて走り寄ってくる。そして、ぺたぺたと体中を触りだす。
ただ触られているだけなのに、不快な感じはしない。
「痛い?」
「ん」
お互い言葉が伝わったのか、少女はアセリアの後頭部を撫で始める。
不思議と、頭の鈍い痛みが軽くなっていくように錯覚する。
しばらく続いた沈黙を破ったのは、倒れていた少女だった。
目尻に涙を浮かべ、両腕を挙げ突進してくる。
「おめぇら、ボクの心配もしろよな!」
「カニっち無事」
「だから無事じゃねぇーよ! 見ろよこの傷! どんだけ刺されたと思ってるんじゃい!」
「ど、どうしたのその傷!?」
「おー聞いちくれよ。実はな――」
威勢のいい少女は、早口で先ほどまでの出来事を語りだした。



    ◇    ◇    ◇    ◇



用を足すためと連れて来られた蟹沢は、大木の下で欠伸をしながらアルルゥを待っていた。
「おーい。まだかチビー」
「まだ」
「早くしろよなぁ。まさか、おっきい方じゃないだろーな! ボク紙持ってないぞ!」
これでもう何度目になるか分からないやりとりを、二人は続けていた。
待たされていてもご機嫌なのは、アルルゥがどこかから見つけた蜂の蜜をくれたからだ。
そんな蟹沢の周囲を、小さな蜂が威嚇するように飛んでいる。
「シィィィィィ! これはボクんだぞ!」

272 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 21:59:51 ID:yGgLij0d
    

273 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:01:06 ID:t5/L9hc7



274 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:01:31 ID:TSHF2UpD
威嚇返しをすると、蜂は恐れたのか遠くに飛んでいった。
が、また別の蜂が何匹か現れて、蟹沢を囲むように飛び回る。
「ケンカうってんのか? 来るなら来いやぁ!」
若干ビビリつつも、力んでみる。だが、数は減るどころか徐々にに増えていく。
冷静になった時には、蜂が群れて黒い塊となっていた。
「お、おい! チビ〜! 早くしろって……」
怖くなって急かそうと後ろを向いた蟹沢は、石を投げようとしているアルルゥと目が合う。
投げるモーションの最中だったのか、石はアルルゥの手を離れ蟹沢の真上にある蜂の巣に当たる。
そこから飛び出した何匹もの蜂が、黒い塊に潜り込んで行く。
「何しとんじゃボケェェ!!」
「カニっち前」
「あ?」
アルルゥから蜂の大群に目を移すと、さっきまで少し離れた場所にいた大群が迫ってきていた。
「のわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
慌てて逃げ出す蟹沢。それを追いかけるように蜂の大群は猛攻を続ける。
「いでぇ! やめ、ボクを刺すなぁ!」
その隙に、アルルゥは木にぶら下がっていた蜂の巣を取るとデイパックにさっさとしまう。
そして、デイパックを引きずりながらもと来た道に戻ろうとしたいた。
「カニっち。帰ろ」
「帰ろ……じゃねぇ! いだ! どうにかしろよこれぇ! あいでぇ!」
「走って振り切る」
「おお! よっしゃぁぁぁああ!!」
アルルゥと蟹沢は、力の限り森を駆け抜けた。
蜂の大群が、何故か蟹沢だけに標的を絞って攻撃を仕掛けたのは謎であるが。
そうしてなんとか蜂を振り切った二人は、ようやく瑞穂達の所に帰ってきたのである。



    ◇    ◇    ◇    ◇

275 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:02:19 ID:yGgLij0d
    

276 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:03:31 ID:t5/L9hc7



277 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:04:47 ID:TSHF2UpD



「って事でよぉ〜。まだヒリヒリするぜコンチクショウ」
「た、大変だったわね」
「面白かった」
「面白いかボケぇ! 刺されたボクの身にもなってみろや!」
「アルルゥも刺された」
「チビは2箇所だけだろ!? ボクなんか十何箇所も刺されたんだぞ!」
涙を浮かべながら文句を叫ぶ。
「カニっち泣いてる」
「泣いてない! 泣いてないもんね!」
こんな二人を、青い髪の女はただジッと見つめていた。
それに気が付いたアルルゥは、デイパックから蜂の巣を取り出す。
そして、近くにあった鋭い石で巣を割ると、女に差し出した。
「食べる」
ここにハクオロやエルルゥがいれば驚いたであろう。
瑞穂の時もそうだったが、極度の人見知り屋であるアルルゥが、初対面の相手に積極的なのだから。
アルルゥ自身も、なぜ怖がらないのか分かってはいない。
ただ、この青い髪の女に惹かれているのは事実である。
それを例えるなら、ムックルやガチャタラと接するように。
お互い無言のまま見つめあうが、アルルゥは気にせず女に差し出し続ける。
「ばっかおめぇ、こんな気色悪いもん食うかよ」
小馬鹿にする蟹沢をよそに、女はゆっくりと手を伸ばしてきた。
そして、躊躇う事無く半分を口に含んだ。
「美味い」
ただ一言そう呟くと、残った半分も口に放り投げる。
その様子を見ていた蟹沢は、興味を惹かれたように蜂の巣に手を伸ばす。
が、そのもぞもぞと蠢く幼虫を見て手を引っ込める。
「はい」
そんな事をしている間に、アルルゥは瑞穂にも蜂の巣を割って渡す。
貰ったときはどうしようか悩んでいた瑞穂だったが、目を瞑って口に含む。

278 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:05:18 ID:t5/L9hc7



279 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:06:09 ID:yGgLij0d
    

280 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:06:43 ID:TSHF2UpD
「あ。美味しい」
目を輝かせ、少しずつ割りながら口に含んでいく。
それを満足気に確認したアルルゥは、残った蜂の巣にむしゃぶりつく。
「んふぅ。まぁまぁ」
戦利品に批評をつけながら、小さな口で蜂の巣をかじる。
そんな三人を見て我慢できなくなった蟹沢は、もの欲しそうにアルルゥを見る。
「食べる」
その視線に気付いたアルルゥは、まだ大きな蜂の巣を割って蟹沢に差し出す。
「しょ、しょうがないから食べてやるよ」
そして、力一杯目を閉じると意を決して口に放り込む。
「お、なんだコレ。超うめぇ〜ぞ!」
見た目こそ気持ち悪かったが、食べてみるとそんな印象は一瞬で吹っ飛んだ。
一気に食べ終えると、まだアルルゥの手元で残っている蜂の巣に手を伸ばす。
だが、それを阻止するように蜂の巣をデイパックにしまうアルルゥ。
「だめ」
「ケチケチすんなよぉ」
アルルゥをくすぐりながら、なんとか蜂の巣を奪おうと必死になる。
が、アルルゥは首を横に振りそれを退けた。
「残りはおとーさんの分」
その言葉に、蟹沢は手を出せなくなる。そんな蟹沢に、瑞穂は自分の残りを差し出した。
「はい。私は十分堪能したから」
「お、さんきゅう」
瑞穂の手から受け取ると、蟹沢は一気にそれを食べ尽くした。



    ◇    ◇    ◇    ◇




281 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:07:44 ID:t5/L9hc7



282 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:09:00 ID:/Qz/LjG8


283 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:09:46 ID:TSHF2UpD
「えっと、自己紹介がまだだったわね。私は宮小路瑞穂です」
「かにさ――」
「アルルゥ。カニっち」
「てめぇ、ボクの自己紹介を勝手にやるなぁ! てか、それ名前じゃねーぞおい!」
「アセリア・ブルースピリット」
「おめぇも素通りするんなや!」
喚く蟹沢をなだめながら、瑞穂はアセリアに質問を投げかける。
「アセリアさんは、どうして空から降ってきたのかしら」
「ん……飛んだ」
「飛んだ?」
「トロッコに乗っていたら飛んだ」
「どゆこと?」
頭上にハテナマークを浮かべながら、蟹沢は首を捻る。
いまいち要領を得ない内容に、瑞穂は再び質問を重ねた。
「どうしてトロッコに乗っていたのかしら」
文句を言う事無く、アセリアはぶっきらぼうに語りだした。
自分がカルラと戦い敗れた事。その後トロッコに乗ってここまで来た事。
これから強い相手を探す事。強いと思われるハクオロを探す事。殺し合いに乗る事。
殺し合いに乗っていると聞いて警戒した瑞穂や蟹沢と違い、アルルゥは静かだった。
反応したのは、ハクオロとカルラの名前を聞いた時だけで、それ以外で騒ぎはしなかった。
全て語り終えたアセリアも、カルラが死んでいた事を残念に思っていた。
まだ負けた借りを返さないうちに、勝逃げされたと言う事になる。
ハクオロの名前が出てから黙り続けていたアルルゥは、質問を一つ投げかけた。
「おとーさんいじめるか?」
「?」
その「おとーさん」が誰を指す言葉か理解できない。その言葉を解説するように、瑞穂は言葉を繋げる。
「ハクオロさんって、アルちゃんのお父さんなの」
その事実を聞いて、改めてアルルゥを見つめる。
アルルゥは、ただただ先程の質問の答えを待っていた。
「強い相手と戦いたい」
アセリアは本音を語った。

284 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:10:19 ID:yGgLij0d
    

285 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:11:02 ID:t5/L9hc7



286 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:12:09 ID:TSHF2UpD
「おとーさん強い。けど死ぬのやだ」
こちらも、淡々と本音を語る。
瑞穂も蟹沢も、二人に割って入るような事はしない。
先に口を開いたのはアセリアだった。
「殺さなければ戦っていいか?」
「……みんな一緒に帰ったら後ならいい」
「ん」
「だから約束。この島でおとーさん殺さない」
アルルゥの出した条件は、最初に出された命令と相反するものだ。
そんな約束を飲み込めるはずがない。それなのに、彼女の言葉は有無を言わせない。
暫く悩んだ後、アセリアはゆっくりと答えを出した。
「この島から出たら必ず戦うか?」
「アルルゥ約束する」
力強い宣言に、アセリアは納得してしまう。
「約束」
二人は互いの目を見つめながら、その約束を心に刻んだ。
そんな二人を見ていた蟹沢が意を決したように呟く。
「おい瑞穂」
「あ、ごめんなさい。お腹すいたのかしら」
「ちげーよ! 欠食児扱いすんなや! ……ボクさ、病院に行くからな!」
「ど、どうして!?」
「あのヘタレと約束したんだ。病院で待ち合わせるって……約束だからな」
「でも、一人じゃ危険よ」
「大丈夫だって! ボクの瞬発力を舐めるなよ!」
「だけど!」
「……んだよ」
「え?」
「約束したっつってんだよ! 絶対に病院で待ち合わせるってよぉ!」
凄む蟹沢に、瑞穂は必死で食い下がる。この島で単独行動させるのは危険過ぎる。
それに話によれば、約束した時間はとうに過ぎてしまっているのだ。

287 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:13:30 ID:TSHF2UpD
それを理解しつつも、カニは折れる事無く瑞穂に食い下がり続けた。
あれだけ沈んでいた顔に、生気が宿っているのが良く解かる。
結局、瑞穂が全面的に折れる事となった。
「解かりました。けど、必ず戻ってくるって約束して頂戴」
「おお! 泥舟に乗ったように安心しとけ」
「……これを」
瑞穂は二本しかない投げナイフのうち、一本を蟹沢に託す。
「何があっても無理はしない事。必ず私達の所に戻る事」
「大丈夫だって。ボクを信じろよな……あ」
蟹沢は、大切にしまっておいたギャルゲーを瑞穂に手渡す。
「ナイフと交換でこれを預けとくからよ。無くすんじゃねーぞ!」
「ええ」
「じゃ、行って――」
「瑞穂おねえちゃんしゃがむ!」
全て言い終わる前に、アルルゥが瑞穂を押し倒す。
その直後、乾いた音が瑞穂の後ろにあった大木に突き刺さる。
それが何者かからの攻撃だとに気付いた瑞穂とアセリアは、即座に木陰へと避難した。
蟹沢とアルルゥも、瑞穂のスカートを掴んで同じところに隠れた。
冷静に周囲を見渡すと、視線の先では銃を構えた少女がこちらを睨みつけていた。



    ◇    ◇    ◇    ◇




288 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:13:32 ID:t5/L9hc7



289 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:13:58 ID:yGgLij0d
    

290 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:15:56 ID:t5/L9hc7



291 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:16:04 ID:TSHF2UpD
鷹野から指令を受けた舞は、標的を探すため走り続けていた。
のんびりしている時間などどこにもない。
早く佐祐理を助けるため一刻も早く他の参加者を殺さねばならないのだ。
そんな時、山のほうから叫び声が聞こえた気がした。
(誰かいる)
誰か生きている参加者がいるなら、すみやかに殺さねばならない。
舞は先程よりもさらに加速して山を駆け巡った。
一時間ほど走ったか、額に汗が滲み始めたところでようやく標的を発見する。
(四人)
まだ遠く離れているが、舞の視界には四人の女性が映っていた。
もう少し近づく事も考えたが、気付かれるのを警戒して踏みとどまる。
そして、躊躇なく木の茂みから狙いを定める。
(佐祐理のため、死んで)
一発で殺そうと慎重にトリガーを引いたが、狙っていた女が地面に倒れ外れてしまう。
さらに間の悪い事に、青い髪の女がこちらに気付いてしまった。
舞は奇襲を諦め、発砲しながら強襲する事にした。
銃声が響く中、着実に足を前に運ぶ。
相手からの反撃を警戒したが、こちらが誘い込むように発砲を控えても、動きがない。
(敵意がなくても容赦しない)
絶対に殺すと心に誓い、舞は殺意を銃弾に込め、一気に走り出した。



    ◇    ◇    ◇    ◇




292 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:16:50 ID:t5/L9hc7



293 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:17:38 ID:yGgLij0d
    

294 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:18:34 ID:TSHF2UpD
「あれは?」
瑞穂と別の木陰に隠れたアセリアは、見た事のない武器に興味を惹かれていた。
普通ならば銃を知らないのかと疑問に思う所だが、その疑問を飲み込み質問に答える。
「あれは銃です」
「銃?」
説明するため木の陰から顔を出すが、それを目ざとく見つけた女は銃口をこちらに向けて銃弾を放つ。
「あの女の子が持っている黒いものが銃です。あの先端から――」
瑞穂を覆い隠す大木に、次々と鋭い傷が付いていく。
「こうやって一瞬で遠くに攻撃できます」
「ん」
納得したのか、アセリアは一言呟いたあと押し黙った。そして、何度か首を出したり引っ込み足りを繰り返す。
そんな意味不明な行動を無表情で続けていたが、何度目かにしてその動きを止め呟く。
「あれなら倒せる」
「倒せるって……だって、銃ですよ!?」
「平気。目で追える」
「そんな馬鹿な」
アセリアの言葉に驚愕の表情を浮かべる。
一緒に聞いていたカニも、非常識な発言に眉をひそめる。
「おめー、ホントに見えてんのか?」
「ん」
嘘偽りなく、アセリアはただ一言だけ返した。
瑞穂は思案する。このまま持久戦に持ち込んでも誰かが助けてくれる訳でもない。
停戦を呼びかけたいが、いきなり撃ってきた上、未だに攻撃を続けている相手にそれは無理な話。
第一、今は一刻も早くカニを病院に向かわせ、自分達は茜と春原の二人と合流したいのだ。
それに、最悪この銃声を聞いて誰かがやってくるかもしれない。
殺し合いに乗っていない参加者ならば銃声を聞けば近寄る事はないだろう。
だが、その逆の参加者ならばどうするだろうか。
「……私も、及ばずながら協力します。その間に二人を逃がしましょう」
困惑するカニとアルルゥを抱きしめながら、別の木に隠れたアセリアに呼びかける。
だが、アセリアは瑞穂とアルルゥを見比べて呟いた。
「いらない」
「え?」

295 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:19:42 ID:yGgLij0d
    

296 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:19:58 ID:t5/L9hc7



297 :名無しくん、、、好きです。。。::2007/06/28(木) 22:20:27 ID:dryVek7Q


298 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:21:06 ID:t5/L9hc7



299 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:21:14 ID:TSHF2UpD
「私一人でいい……ミズホも行け」
「でも、銃相手に単独で危険過ぎます!」
「ん……飛んで来れば避ければ良いだけ」
「そんな――」
あくまで食い下がろうとする瑞穂を制したのは、アルルゥだった。
「アルルゥに任せる」
「?」
「アルルゥ達、博物館に行く?」
「あ、ええ」
突然の質問に困惑しながらも、瑞穂は答える。そして、それを確認したアルルゥはアセリアに向かって声を掛けた。
「アセっち。アルルゥ達博物館で待ってる。だから来る」
「おめー……こいつにもあだ名つけたのかよ」
いつの間にか、アセリアに対してもあだ名をつけていた。
けれど、アセリアはそんな些細な事で訂正する事は無かった。
「……ん」
理解したのか、コクリと頷く。
そんな二人を見て文句を言おうとしたが、アルルゥの無垢な瞳に反論できないまま口を閉じてしまう。
諦めた瑞穂は、アルルゥを抱きかかえつつ、カニに立ち去る準備をさせる。
そんな中、アルルゥはアセリアの瞳を見つめ、友達とお喋りする様に語りかけた。
「アセっち」
「……ん?」
「またアルルゥと蜂の巣食べる」
「……ん」
アルルゥの提案に小さく頷く。それだけで十分だった。
瑞穂も意を決してアルルゥを抱きかかえる。カニも荷物を持って万全の状態だ。
銃声が止んだのをきっかけに、瑞穂達は女を注意しつつ北へと向かって走り去っていった。
またそれとは別に、カニも東に向かって全力で駆け出していった。
二手に分かれて困惑する女を、隣の木陰から飛び出し牽制する。そして、鉄串で空気を薙ぎ払い戦闘の構えをとった。
命令でも強制でもない。それなのに、アルルゥの言葉はアセリアを虜にした。
自分よりも小さい姿をしていながら、その纏った不思議な雰囲気は彼女を大きく感じさせる。
アセリアを優しく包むそれは、海や川から得られる気持ち良さとはどこか違う。

300 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:22:03 ID:vsmrcils
 

301 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:22:04 ID:t5/L9hc7



302 :名無しくん、、、好きです。。。::2007/06/28(木) 22:22:21 ID:dryVek7Q


303 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:22:21 ID:yGgLij0d
    

304 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:24:00 ID:TSHF2UpD
そうして、知らないはずの母性愛を受け、アセリアの心は少しずつ変化していた。
けれど、その変化が何なのか分かるはずもない。今は目の前の敵に集中する。
(――強いものと戦えればいい)
本来の目的がようやく叶いそうなのだから。



    ◇    ◇    ◇    ◇



「佐祐理のため……」
「……行かせない」
逃げた三人を追いかけようとしたが、別の場所から飛び出した女に気を取られ逃がしてしまう。
舞は即座に気持ちを切り替えて、目の前の女を殺す事に集中した。
女は一定の距離を保ちながら木々の間を駆け巡る。
それを追うように距離を保ちながら、狙いを女の顔に定める。
だが動く的に対して反応が付いていかず、なかなか狙いが定まらない。
それに、銃をまともに扱った事などない舞にとって、走りながらの射撃は難しかった。
散弾銃や機関銃ではないこの銃では、大雑把に的を絞る事が出来ない。
何とか狙いを定めた一発目と二発目も、女の体を掠るどころか見当違いの方向に流れていく。
さらに面倒な事なのは、銃を警戒してなのかずっと木々を遮蔽物にして、こちらに場所を特定させない。
命中しなければ使い物にならない武器に怒りを覚えながらも、撃鉄を起こす。
女の姿が丸裸になるよう、舞は地を蹴り距離を詰めつつ三発目を撃つ。
相手が弾丸の軌道に目が捕らわれている隙を付いて、遮蔽物のない直線上に女を置く。
女の後ろには大木。逆に、左と右には樹木は存在しない。ここがチャンスだ。
確実に狙いを定めた銃口から、三発分の熱を帯びた銃弾が顔を出す。
それを確認する前に、女は何を血迷ったのか後ろの大木に力強く飛び掛かる。

305 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:24:10 ID:t5/L9hc7



306 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:25:01 ID:t5/L9hc7



307 :名無しくん、、、好きです。。。::2007/06/28(木) 22:27:16 ID:dryVek7Q


308 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:27:42 ID:yGgLij0d
    

309 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:27:44 ID:TSHF2UpD
そして、大木に蹴りを放ち三角跳びの要領で舞いに襲い掛かってきた。
「……っ!」
「せぇあ!」
女の蹴りは舞の居た地点の土を抉る。回避したのもも、二人の位置はほぼ零距離。
しゃがんでいた女は、腰から何かを抜き取ると、舞の喉目掛けて突き出した。
高速で迫る光の先端を防ぐため、咄嗟に銃のグリップで弾き返す。光の正体は鉄串だ。
女の攻撃はそれで終わらず、地面スレスレにあった左手が舞の腹部目掛けて昇りあがる。
「はっ」
腹部を防ぐため銃を持っていない片腕でそれを遮る。
だが、勢いのある一撃は腕の防御を貫通して腹部に押し込まれた。
「ごッ……ぉ」
揺らぎながら閉じかける意識を必死で繋ぎ、舞はトリガーを引く。
いくら素早いとは言え、至近距離で銃弾を避けるのは不可能。
思った通り、役に立たなかった鉛は五発目にしてようやく女の耳を削ぎ落とす。
「……」
悲鳴は聞こえなかったが、耳から迸る鮮血と若干変化した表情は、攻撃の成功を意味している。
この隙に、舞は距離を取るべく後ろへ大きく跳ぶ。だが、女はそれを許さない。
「くぅ!」
女の突き出した鉄串が、舞の太腿に傷をつける。貫通こそ避けたものの、太い血管が切れたらしい。
熱くも冷たい痛みを堪え、舞は大きく後ろに跳んでデイパックから呼びの弾丸を探り当てる。
弾丸を装填し終えるのと女の追撃は、女に軍配が上がった。
突き刺すだけと考えていた鉄串を横に薙ぎ、鞭で打った様な音が手の甲から響く。
銃を持っていた手の甲はすぐにみみず腫れとなり、そこに虫がいるよう錯覚させる。
距離を取るにも追撃で離れられない。近距離では銃を撃つタイミングが合わない。
いつの間にか追い詰められたのは、舞のほうだった。
と、視界の端に一本の太い木の棒を発見する。
(あれなら!)
再び横に薙いだ鉄串を後ろに回避して、太い枝に駆け寄って握ってみる。
(硬い……よし)

310 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:28:44 ID:t5/L9hc7



311 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:28:49 ID:TSHF2UpD
木の棒を握り締め、背後から迫る女に一撃を見舞う。
手刀と見誤ったのか、距離を詰めすぎた女の腰に木の棒がめり込む。
「はぁぁッ!」
「っ……」
力の限り横に振った木の棒は、女をしっかり捕らえた。
警戒した女は鉄串を構えなおす。一方の舞も右手に木の棒、左手に銃の構えをとる。
(相手は銃を持ってない……あの鉄串だけ)
お互いに相手目掛けて地を蹴る。


――第二ラウンドの開始は、わずかな砂埃と共に訪れた。



    ◇    ◇    ◇    ◇



アセリアは、相手の攻撃スタイルが変わった事を肌で感じ取っていた。
瑞穂が説明してくれた銃だけならば、集中すればなんとか避わせる。耳を削ぎ落とされたのも許容範囲。
だが、相手は棒切れを持った途端に戦い方を接近戦へと即座に切り替えた。
油断はしていないつもりだったが、一撃貰ったのは事実である。
身のこなしといい、木の棒による太刀筋といい、どうも素人とは考えられない。
それを理由に、脇腹にめり込んだ力は、無駄な部分がなく鋭かった。
少し前までは、接近戦に持ち込めば問題ないと思っていたが、戦い方を改める必要がある。
(力で押し切られる前に押し倒す)
鉄串を構え直し、女に向かって突撃する。
女は突き出した鉄串を弾き返し、中腰の構えから木の棒を横薙ぎに一閃する。
一瞬、鉄串で受ける事を考えたが、耐え切れない上折れては仕方ないので諦める。
女の狙う先は腰……アセリアは体を捻り回避に専念するが間に合わない。
力の掛かった芯こそ外れるが、棒の先端が腰の骨を勢い良く擦る。
体中の骨が一斉に痺れる感覚に陥る。追撃を避けたいアセリアは後ろに飛ぶ。

312 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:29:41 ID:t5/L9hc7



313 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:29:54 ID:TSHF2UpD
「ぁぐ」
「……逃がさない」
それより先に、女は木の棒を振り終わった反動で廻し蹴りを放つ。今度も避ける事が出来ない。
蹴りは見事にアセリアの下腹部を捉え抉り込む。
「……!」
「まだ……」
そして、蹴りを放ちつつ後ろへ飛んだ女は、狙いを定めずトリガーを引いた。
この距離ならば外さないと踏んだのだろう。
「せあぁ!」
「!」
それは女の誤算だった。アセリアは避ける事無く突撃したのだ。
銃弾がアセリアの居た位置を通り過ぎるより早く、アセリアの頭が額に突撃する。
「ぅぁ」
予想外の攻撃だったのか、女は木の棒を振りつつ後ろへと大きく距離を取る。
アセリアも、追撃せず一度距離を取った。
お互い息こそ上がっていないが、消耗はかなり激しい。
(力勝負でも分が悪い)
先程の女の一撃で、アセリアは相手に対する認識を再び改めた。
力で押し通すタイプだと思っていたが、どうにもそれは見当違いらしい。
力と力の間に重ねてきた技こそが、本来の戦闘スタイルと思われる。
だからと言って、力押しで勝たせてくれるほど非力でもない。
いくら木の棒相手とは言え、鉄串では鍔迫り合いにならないだろう。
(剣が欲しい)
だが周囲を見渡しても、女が持っているような丈夫な木の棒など見つからない。
鍔迫り合いは駄目。力勝負も分が悪い。離れれば銃弾が飛んでくる。
戦場に慣れているとは言え、この差を埋めるのは難しかった。
そんな考えとは知らず、女は距離を保った状態で銃口をこちらに向ける。
この距離ならば当たる事はないが、こちらが攻撃できないのでは意味がない。
と、そんな余計な考えを浮かべた隙に相手が距離を詰める。
「はぁ!」
「……ふっ!」
女の上段から振り下ろされる一撃を横に避け、女の横腹に鉄串を繰り出す。

314 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:30:21 ID:yGgLij0d
    

315 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:30:41 ID:t5/L9hc7



316 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:31:40 ID:TSHF2UpD
だが、その反撃も女に弾き返されてしまう。弾かれた腕は行き場を失い、体はがら空きとなる。
無防備となった姿を女が逃す筈もなく、蹴りによる追撃を重ねる。
が、そこまではアセリアの考えの内だった。

「てぇ!」
「――」

がら空きになった筈のアセリアと女の間に、一本の鉄串が現れる。
二人の距離が離れて行くのとは対照的に、鉄串は女目掛けて突き進む。
アセリアは、腕を弾かれると同時に持っていた短い鉄串を投擲したのだ。
女は飛び道具がないと思い込んでいたようで、瞳に驚愕の表情がハッキリと表れている。
それでも、女の心臓に刺さるはずだった鉄串は、肩に突き刺さるだけとなった。
一秒にも満たない時間の中で、女は無理矢理体を屈ませたのだ。
そして、避けたまま地面を転がり再度距離を取られてしまう。
(避けられた)
今の奇襲は、絶妙なタイミングと相手の判断ミスで成功した。二度目はない。
手札が尽きかけた今、あとは互いの武器と肉体が朽ちるまで戦いどちらかが死ぬだけだ。
もし自分が死んだとしても、それは戦場にいればいつかは訪れる最期。後悔はない。
なのに、アセリアの頭には自身の最期ではなく別の事が思い浮かんでいた。
それは、アルルゥの見せた自分を包み込むような瞳と表情。
(蜂の巣……)
もしカルラと戦わなければ。もしアルルゥに出会わなければ。彼女はここで戦いを選んだ。
だが、胸の内で響く二つの声がそれを押し留める。
(私に勝ちたかったら、戦い以外の自分を見つけて出直してくることですわね)
戦い以外の自分を探せと、強い戦士は言い放つ。
(アセっち。アルルゥ達博物館で待ってる。だから来る)
自分を待つと、無垢な少女は約束させる。
(次に会うときに、まるで成長してなかったらそのときは私があなたをぶち殺して差し上げますわ)
殺さずに立ち去った女戦士は、なにを望んだのだろうか。

317 :名無しくん、、、好きです。。。::2007/06/28(木) 22:31:58 ID:dryVek7Q


318 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:32:34 ID:t5/L9hc7



319 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:32:41 ID:yGgLij0d
    

320 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:34:16 ID:TSHF2UpD
(またアルルゥと蜂の巣食べる)
あの甘い気持ちは、蜂の巣を食べたからだろうか。
「……解からない」
ここに来る前も、来た直後も、そんな事で悩む必要な無かった。
けれど、今心の中を渦巻いて悩んでいるのは事実だ。それでも、この気持ちは決して嫌いではない。
鉄串を構えたまま、アセリアは初めて女に声を掛ける。
「……名前。アセリア・ブルースピリット」
「……」
「……名前は」
「……舞。川澄舞」
お互い武器を構えながら、体を動かさずに口だけでやり取りする。
と、アセリアは意を決して走り出した……舞とは反対側に。
「あっ」
「武器手に入れたら戦う。それまでおあずけ」
「逃がさない!」
突然の出来事に出遅れた舞だったが、次の瞬間には撃鉄を起こしていた。
だが、アセリアの投げた短い鉄串に気を取られトリガーを引くのが遅れる。
その隙を突いて、アセリアは木々の間へと駆け出していった。
追いかける気配を見せた舞だったが、結局追いかけて来る事は無かった。


木々の間を駆け抜けながら、アセリアは博物館を目指していた。
殺し合いを降りるつもりはない。戦いを放棄するつもりもない。
だが、あのアルルゥにもう一度会うまで、それは保留でもいいと考え始めていた。
あのアルルゥの瞳は、どう言う訳かアセリアの心を虜にする。
それは、永遠真剣を握っている時とも戦っているときとも違う。
その不思議な気持ちを確認したいがため、先の戦いを放棄した。
彼女の心は少しずつ……だが、確実に変わり始めている。
それが何をもたらすか、今はまだ誰も知らない。

321 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:34:47 ID:t5/L9hc7



322 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:35:05 ID:yGgLij0d
    

323 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:35:37 ID:TSHF2UpD



    ◇    ◇    ◇    ◇



最初は立ち去ったアセリアを追いかけるつもりだったが、肩と太腿の傷がそれを拒んだ。
あのまま追いかけて再戦したとしても、五体満足で勝てるとは思えない。
下手に固執するより、別の殺せそうな標的を探すほうが時間短縮になると考えたのだ。
デイパックから水を取り出し、首に巻いたスカーフをほどく。
太腿に水で湿らせたスカーフを巻きつけ、肩の傷はスカートを破いて縛る。
皮がめくれて血豆が破けた右手にも、スカートの切れ端で覆っておく。
応急処置だが、そのまま放置するよりましだ。
スカートが短くなり下着が見えてしまっているが、そんな事に構っている暇はない。
「佐祐理……待ってて」
銃と木の棒を持ち直し、舞も駆け出した。
たった一人の親友を救うため。そのためだけに、大勢の人間を殺す。
そこに後悔も罪悪感も持ち合わせたりはしない。
彼女はただ、誰かを殺すために生き続ける。






324 :名無しくん、、、好きです。。。::2007/06/28(木) 22:35:49 ID:dryVek7Q
 

325 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:36:55 ID:t5/L9hc7



326 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:37:20 ID:TSHF2UpD
【E-5 廃線上/1日目 午前】

【蟹沢きぬ@つよきす】
【装備:投げナイフ1本】
【所持品:なし】
【状態:精神安定。両肘と両膝に擦り傷。数箇所ほど蜂に刺された形跡。】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:待ってろよヘタレ(土見稟と合流)
2:稟と合流後、博物館へ急ぐ(宮小路瑞穂達と合流)
3:鷹野に対抗できる武器を探す。
4:スバル、乙女さん、姫、よっぴーのうち誰かと合流したい。
【備考】
※レオの死を乗り越えました
※アセリアに対する警戒は小さくなっています。



【C-4 森の北部/1日目 午前】


327 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:38:24 ID:TSHF2UpD
【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:投げナイフ1本】
【所持品:支給品一式、フカヒレのギャルゲー@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:アルルゥを絶対に守る
2:涼宮茜達と合流するため博物館へ(アセリアを待つ)
3:その後、新市街へ行き脱出のための協力者を探す。
4:再び博物館で蟹沢きぬを待ち、合流したら次の場所を目指す。
4:ハクオロ・トウカ・オボロ・赤坂を探す。
5:知り合いを探す。
【備考】
※陽平には男であることを隠し続けることにしました。
※アルルゥにも男性であることは話していません。
※蟹沢きぬにも男性であることは話していません。
※アセリアにも男性であることは話していません。他の人にどうするかはお任せ
※アセリアに対する警戒は小さくなっています。

※フカヒレのギャルゲー@つよきす について
プラスチックケースと中のディスクでセットです。
ケースの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してあります。
ディスクの内容は不明です。



328 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:38:59 ID:yGgLij0d
    

329 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:39:03 ID:t5/L9hc7



330 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:39:42 ID:TSHF2UpD
【アルルゥ@うたわれるもの】
【装備:ひぐらし@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式(コンパス、時計、ランタン以外)、ベネリM3の予備弾、蜂の巣(半分)】
【状態:健康。腕に二箇所蜂に刺された痕】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:瑞穂についていく。
2:おとーさんに会いたい。
3:アセリアと約束。
4:カニと再開。
5:知り合いと会いたい。
【備考】
※エルルゥたちの死を理解しました。
※アセリアが人間でなくスピリットである事を本能で理解しています。



【C-5 山頂付近/1日目 午前】

【アセリア@永遠のアセリア】
【装備:鉄串(長、かなり損傷)】
【所持品:支給品一式 鉄串(短)x1、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:疲労大。右耳損失(出血はおさまりつつある)。軽い頭痛。ガラスの破片による裂傷。殴られたことによる打撲】
【思考・行動】
1:アルルゥと再開するため博物館へ
2:ハクオロと戦う(ただし殺さない)
3:強者と戦う
4:殺し合いは取り合えず保留(相手がその気なら殺す)
5:永遠神剣を探す
6:丈夫な武器を手に入れる
【備考】
※アルルゥが「森の母」である事を本能で理解しています。

331 :無垢なる刃 ◆Qz0e4gvs0s :2007/06/28(木) 22:41:14 ID:TSHF2UpD

※フカヒレのコンドーム
アレでナニをする時に使う道具。12個入り。
パッケージの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してある。
レオがエリカルートの屋上でフカヒレから手渡された思い出の品。
薄型がウリでフィット感が凄い、らしい。

※ひぐらし
雛見沢に生息するひぐらしを瓶に無理やり詰め込んだもの。
全て生きています。



【C-6 橋の北側/1日目 午前】

【川澄舞@Kanon】
【装備:ニューナンブM60(.38スペシャル弾5/5) 学校指定制服(かなり短くなっています)】
【所持品:支給品一式 ニューナンブM60の予備弾74 バナナ(フィリピン産)(3房)】
【状態:疲労大。肋骨にひび、腹部に痣、肩に刺し傷(止血済。痛いが普通に動かせる)、太腿に切り傷(止血済。痛いが普通に動かせる)】
【思考・行動】
基本方針:佐祐理のためにゲームに乗る
1:佐祐理を救う
2:全ての参加者を殺す
3:相手が強い場合、無理はしない

332 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/28(木) 22:42:18 ID:t5/L9hc7



333 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/06/30(土) 23:52:30 ID:t8Y1U3Xy
――――――次の放送で会えることを祈っているわ。』


鷹野の悪趣味な放送が終わった。
けど、そんなものはとっくに頭の中を素通りしていた。
 禁止地帯とやらを記した地図を持ったまま、私は呆然と立ち尽くしていた。

「…………詩音、……レナ」
 私の最高の仲間たち――共に6月を越えたい思う友人たち――その仲間たちが――死んだ。
「……結局、私の望みは叶うものではなかったという事かしらね」
 仲の良い友人達と共に毎日を過ごしていきたい、ごく普通の人生を歩んでいきたい。
 そんなささやかな願いが、どんなに努力しても叶わないものだなんて、誰が思うのだろう。
 百年近くも努力し続けて、結局私は理想の未来を掴むことは出来なかった。

 ―――そう「出来なかった」、既に過去形だ。ここに羽入はいない、つまり起こってしまった結果は変えられない、――つまり私は詩音とレナの存在しない未来を生きていかなければならない――という事だ。

「百年、なんとかしようと必死で努力した事も、どうしようもなくて妥協したりした事も全て無駄だったという訳ね」
 どうにかして生き抜こうと様々な努力をした。何度頑張っても変えられない結果を受け入れ妥協したりもした、そうして少しづつ少しづつ生き抜く為のルールを理解していったというのに、最後に待っていたのは全く別のルールが支配するゲームだった。
 
――最初から古手梨花の望む未来など存在していなかったのではないか、私はただ絶望するためだけに百年を過ごしてきたのではないか――

「もう――終わりにするべきかしらね」
 鷹野の悪趣味を満足させる為に生きる気はしない。励ましてくれていた羽入には悪いけど、もう幕を閉じるべきなのかもしれない。
 理想の未来を掴めなかった以上、古手梨花の人生という長い物語は終わりにするべきなのかもしれない。
「圭一や魅音、沙都子が来るには時間があるだろうけど、レナや詩音とのんびり待つことにしよう。


334 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/06/30(土) 23:53:17 ID:t8Y1U3Xy
 生きている間は仲良く出来なかったお母さんとも、向こうでは仲良く出来るように頑張ってみようかしら」

と、そう口にしてから気がついた。
「…………向…こう?」
 
――無意識に、深く考えずに、向こうと、口にした、けど、―――けど、向こうって、何??どんなところ??そんなもの、わかるわけがない、わかるはずが、ない。
いや、そもそも、
ソ ン ナ モ ノ ハ ホ ン ト ウ ニ ア ル ノ ?


「…………え?」

いや、待って、そう、確か、確か、死んだ人間はあの世ってところへと行く……はず。

――ジャアアノヨッテドンナトコロ――

それは、それは……、それは、それ……は……。

――ソンナモノナインジャナイノ――

そんな筈は、

――ジャアドンナトコロナノ――

いや、 待て、 落ち着け、  そうだ落ち着け! 落ち着け古手梨花!! 
私は百年の魔女だ!!死なんかとうの昔に克服した!! そうだ! 落ち着け! COOLになれ!この百年数えきれないほどの死の山脈を越えてきたのだ!今更何を恐れることがある!死んだ後どうなるのかなんて考える必要もないくらい知っている!知って……いる??

――ナラコタエラレルヨネ――

 そうだ、答えはわかっている、雛見沢のみんなと、また、仲良く



335 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/30(土) 23:53:29 ID:GRxRxie7
 

336 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/30(土) 23:53:30 ID:y/hiE2kL
   

337 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/06/30(土) 23:54:39 ID:t8Y1U3Xy
「………………違う……」

そうだ、それは羽入の力で転生した結果だ。
 私が知っているのは死の結果ではなくて、死を逃れて再び雛見沢に戻ったという結果でしかない。
 死という状況、課程、感触、それらは鮮明に覚えている。
 でも、その後の結果、死んだ後どうなるのか、その一番大事な事は何一つ……知らない。

「え? そんな……そんな、それじゃあ、ここで死……死んだら、私は……どうなるの?」
                              ワカラナイ
 どんなところにいくの?                  ワカラナイ
みんなとはもう会えないの?                ワカラナイ
そもそも、どこかへいけるの?               ワカラナイ
死んだら……どうなってしまうの?             ワカラナイ

「そんな……こと……いや……違……でも……」

 意味の無い言葉が口から発せられる、けど、そんなこと全く気にもならない。
 私は――古手梨花は、恐怖、している。
 慣れ親しんだはずの「死」というものに、どうしようもないほどの未知の恐怖を感じている。


―――その時梨花が持っていた地図が足元に落ちて「バサァッ」という音がした。――


「ひっ!!」

何?落ち着け?何でもない、今のはただ、ただ手に持った地図を落としただけ。
誰か、誰か?――が近くにいるわけじゃない。
私を■そうとする誰かが近くにいるわけじゃない。

――ホントウニ?――


338 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/30(土) 23:54:45 ID:y/hiE2kL
   

339 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/30(土) 23:55:17 ID:3f/hxgqd
しえん

340 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/30(土) 23:55:43 ID:y/hiE2kL
    

341 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/30(土) 23:56:20 ID:3f/hxgqd
 

342 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/06/30(土) 23:56:31 ID:t8Y1U3Xy
「あ……誰か……誰かいるのですか!?」
震えている。
私はもう、疑いようも無いくらい恐怖に怯えている。
だから、役に立つかもわからない指輪をつけた手を、もう片方の手でしっかりと握って、辺りを落ち着き無く見回していた。

どのくらいの時間そうしていたのか、いつの間にか乱れていた呼吸が落ち着き始めた頃、ようやく何もなかったのだと頭が理解してくれた。
そうして、落とした地図を拾い上げた時、ふと、禁止地帯のことが頭に浮かんだ。

「C―……2?」
 C―2、それは今私のいるA―1から割と近い場所だ。
 近いからといって別に関係はない、関係ない?関係ない??違う!よく見ろ!
「もし、次にDの1か2が禁止されたら、ここは袋小路じゃない!」
 そうしてから気がついた、そもそもこの場所はA―3かC―1を禁止された時点で、逃げ道は一つしかなくなってしまう場所だということ。
 そして私は既に、槍を持った女に襲われて逃げてきたのだ。 あれがA―2、なら、私がこの危険地帯にいるということを知られてしまっている!
 つまり一刻も早く私はこの場所から逃げ出さなければならないのだ!
 そうでなければ私も■されてしまう。

「のんびりしてられない。早く、そう、とりあえずD―2まで行ければ逃げ場は沢山ある」
 そう、早く、逃げなければ。逃げて、逃げて…、逃げて……、どうするの?

 ……誰かに助けを求める。誰か、誰?仲間、そう仲間!
 まだ圭一は生きている、刑事で頼りになる赤坂と大石もいる! そう、特に圭一、圭一だ!運命を切り開く力を持つ仲間、最も頼りにすべき仲間がまだいる!
 圭一ならどんな運命でも打ち破ってくれる!

――どんな運命……でも?
既にレナと詩音が■されてしまっているのに?
そもそもかつてレナと■音を殺したのは圭一ではなかった?

いや、違う、あの時■されたのは■音だ!■音じゃない!!
それに圭一は、あの時のことを思い出すという奇跡を起こした!どんなことよりも素晴らしい奇跡!百年の中でも見たことの無い奇跡を!


343 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/30(土) 23:56:43 ID:y/hiE2kL
    

344 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/06/30(土) 23:57:15 ID:t8Y1U3Xy
――でも今いるここは百年の中でも見たことの無い場所。百年の奇跡ならまた百年の月日が必要なのではないのだろうか――


「そんなことはない!私は信じる!圭一は仲間だ!仲間は裏切らない!かつて圭一自身がそう言ったんだ!!」
 


消えることのない不安を打ち払う為に叫びを上げ、梨花は工場を離れ東へと進む。その胸に隠しきれない恐怖を抱えたまま。
彼女は気づかない、仲間達の疑心暗鬼を見続けていたため、自分自身がそれに囚われてしまっていることに。


【A-1 工場事務室/1日目 朝】

【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備:催涙スプレー@ひぐらしのなく頃に祭、ヒムカミの指輪(残り3回)@うたわれるもの 散りゆく者への子守唄
   紫和泉子の宇宙服@D.C.P.S.】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康、疑心暗鬼(中程度)】
【思考・行動】
1)D-2へ移動
2)圭一を探す
3)死にたくない
4)赤坂・大石の捜索
【備考】
皆殺し編直後の転生
ネリネを危険人物と判断(容姿のみの情報)
疑心暗鬼に囚われはじめてます。雛見沢症候群の症状に酷似していますが、女王感染者の為、症状が現れる事はないはずです。(なんらかの外的要因か、症候群と無関係かは後続の書き手さんににおまかせします。)


345 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/30(土) 23:57:46 ID:GRxRxie7
 

346 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/06/30(土) 23:57:50 ID:y/hiE2kL
   

347 : ◆/Vb0OgMDJY :2007/06/30(土) 23:59:28 ID:t8Y1U3Xy
※ヒムカミの指輪
ヒムカミの力が宿った指輪。近距離の敵単体に炎を放てる。
ビジュアルは赤い宝玉の付いた指輪で、宝玉の中では小さな炎が燃えています。
原作では戦闘中三回まで使用可能ですが、ロワ制限で戦闘関係無しに使用回数が3回までとなっています。

※紫和泉子の宇宙服
紫和泉子が普段から着用している着ぐるみ。
ピンク色をしたテディベアがD.C.の制服を着ているというビジュアル。
水に濡れると故障する危険性が高いです。
イメージコンバータを起動させると周囲の人間には普通の少女(偽装体)のように見えます。
(この際D.C.キャラのうち音夢と杉並は、偽装体をクラスメイトの紫和泉子と認識すると思われます)
純一とさくらにはイメージコンバータが効かず、熊のままで見えます。
またイメージコンバータは人間以外には効果が無いようなので、土永さんにも熊に見えると思われます。
(うたわれの亜人などの種族が人間では無いキャラクターに関して効果があるかは、後続の書き手さんにお任せします) 

宇宙服データ
身長:170cm
体重:不明
3サイズ:110/92/123

偽装体データ
スレンダーで黒髪が美しく長い美人
身長:158cm
体重:不明
3サイズ:79/54/80



348 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/01(日) 23:49:31 ID:LCfctKmr

傷を治療するため、商店街の南部の薬局に入った圭一と美凪は、包帯や消毒液を回収する。
圭一の肩にある刺し傷には、赤黒い塊が付着していた。
美凪は、そこに消毒液を染み込ませると、手早く包帯を巻いていった。
「遠野さん。ありがとうな」
「えっへん」
和ませるように、胸を張って自慢する。
先程まで沈んでいた圭一の心にも、温かい炎が宿る。
二人は薬局から出ると、大きく深呼吸して気持ちを改めた。
「よし! それじゃあ仲間を集めるために学こ――」
圭一の宣言を掻き消すような衝撃音が、二人の耳に届く。
「な、何だ!?」
「前原さん……あれ」
美凪が指差した先は、煙の上がった建物――自分達が行く先を残した場所だった。
「燃え、てる?」
「たぶん病院です」
圭一は悩むより走り出そうとしていた。
もし誰かいるならば、もしそこで誰かが争っているならば、そんな事はやめさせたい。
そんな圭一の袖を、美凪がギュッと掴む。
「待って下さい」
「止めないでくれ遠野さん! 誰かいるかもしれないんだ!」
「止めません」
「なら――」
「だから、これで行きませんか?」
美凪の掌の上には一本の鍵。そして、指差した先には一台の原付車。
どうやら薬局の主の物らしく、白いボディに薬局名がペイントされていた。
「遠野さん、運転できるのか!?」

349 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/01(日) 23:49:47 ID:DdJiIkce
支援

350 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/01(日) 23:51:38 ID:LCfctKmr
「いえ。残念ながら。だから、前原さんにお願いします」
「で、でもよ。それで遠野さんに怪我なんかさせたら」
「大丈夫」
美凪は圭一の拳を両手で包むと、労わるように触れた。
「私が後ろから支えます」
「遠野さん……」
「夜ではありませんが、盗んだバイクで走り出しましょう」
悪戯っぽく微笑むその姿に、圭一は破顔した。
「よっしゃぁ! しっかり掴まってくれよ遠野さん!」
「ごーごー」
勇気をもらった圭一は、運転席のシートに腰を下ろす。
その背中から支えるように、美凪は圭一の腰に手を回した。
二人を乗せた原付車は、任せろと言わんばかりに排気ガスを吐き出す。
バーハンドルを握った圭一は、臆する事無くフルスロットルで走り出した。



    ◇    ◇    ◇    ◇



崩壊しかけている病院内で争いが起きる少し前
咲耶は病院から離れ、次の目的地をどこにするか悩んでいた。
人が集まりそうで、かつ近い場所といえば住宅街だ。
だが、最初の地点から倉庫を経由し病院まで歩いた事で、体力を大きく消耗していた。
さらに、この島で動き回るには時間が掛かり過ぎる。
今この瞬間に、妹が危機に陥っているかもしれないのだ。
だから、時間も疲労も少なく出来る『足』が必要になる

351 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/01(日) 23:51:58 ID:DdJiIkce
支援

352 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/01(日) 23:52:47 ID:LCfctKmr
(ま、どっちにしても住宅街までは徒歩よね」
そんな事を考えていた咲耶の耳に、耳障りな音が届く。
敵襲かと周囲を警戒するが、誰かが近くにいる様子はない。
だが、音は段々と大きくなっている。
動くものが無いか注意深く凝視して、ようやく咲耶は音の正体に気付く。
それは、馴染みはないもののよく目にする原付車だった。
「バイクのエンジン?」
普通のバイクと原付車の違いが判らない咲耶は、遠目から見た原付車をそう判断した。
乗っている人間までは確認できなかったが、二人なのは間違いない。
その二人は原付車を降りると、片方が何か叫びながら病院内へと入っていった。
一人は残っているようだが、それならばむしろ好都合だ。
「飛んで火に入る夏の虫ね」
咲耶はデイパックから銃を取り出すと、再び病院へと近付いていった。
思わぬ『足』と『虫』が、文字通り炎に包まれた『病院』に飛び込んだのだから。



    ◇    ◇    ◇    ◇



それよりも少し前、病院の入り口では武が呆然と立ち尽くしていた。
貴子の遺体の前で佇む武は、自嘲的な笑みを浮かべている。
起こってしまった悲劇を認める自分と、あの時こうすればと言う後悔が心を揺さぶる。
後悔しても貴子は蘇らない。頭では理解できても、すぐに納得できるはずもないのだ。
もし奇跡があるのならば、武は全てを投げ出し、それにすがりたかった。
だが、首を切断されながらも気高く笑っていた貴子の姿が、心の奥底に沈殿した決意を呼び起こす。
「ああ……そうだったな」
貴子にも言ったではないか。自分はつぐみと合流し、子供達のもとに帰るまで死ねないと。
貴子の髪を結んでいたリボンの片方をほどき、それを拳で強く握ると、武は自身の顔面を殴った。
一度目は新たな決意表明。二度目は貴子への誓い。三度目は生き抜くという覚悟。

353 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/01(日) 23:53:08 ID:DdJiIkce
支援

354 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/01(日) 23:54:18 ID:LCfctKmr
殴っている最中折れた歯を口から吐き出すと、武は病院の中へと戻ろうとする。
貴子の死体を野ざらしには出来ない。だからせめて、シーツで覆っておく事にしたのだ。
だが、入り口に立ったところで気付く。中にはまだ土見稟という危険な男がいるのだ。
(慎重にいくか)
武器は投げナイフしかないが、素手で飛び込むよりマシだ。
いまだにあちこちで火の手があがる中、武は階段の手前まで進む。
どうやら、まだ一階まで降りてきてはいないらしい。
音を立てないように階段に足を掛けていく。
と、階段を登る最中、爆音が鳴り響き病院を大きく揺らす。
手すりに掴まりながら二階に到着して、音の原因に気付いた。
下の階から火が移ったのか、給水所らしき場所が黒い煙をあげて燃え盛っているのだ。
(こりゃ、早い所立ち去らないと不味いな)
階段の近くにあった備品室の扉に手を掛けるが、振動で歪んだのか扉が開かない。
仕方がないので、病室からシーツを拝借する事にする。
徐々に煙が充満しつつある廊下を走りながら、武は近くの病室へ入ろうとする。
その時、窓の外から炎とは少し違う音が微かに聞こえた気がした。
(何だ!?)
気になって窓に近寄ると、病院に向かって走ってくる原付車が目に映った。
運転しているのも、後ろに乗っているのも自分より小さな少年少女だ。
その後ろに乗っていた少女が、こちらに向かって指を差す。
運転していた少年も武に気付いたらしく、何かを叫んでいる。
「馬鹿! 入ってごほッ、ごほっ」
叫ぼうとしたものの、煙が気管に入り大きな声が出ない。
結果、武の声が聞こえていなかった二人は、原付車を降りて走り寄ってくる。
「何考えてんだ!」
崩壊しかかっている場所に入るなんてどうかしている。
武は急いで病室に入りシーツをデイパックに詰めると、病室から出た。
この時、早く二人を退避させる事で頭が一杯だった武は、警戒すべき人物を忘れていた。
病室から武が飛び出すのと、一直線に飛んでくる凶器が重なるのはほぼ同時。

355 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/01(日) 23:54:34 ID:DdJiIkce
支援 

356 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/01(日) 23:56:07 ID:LCfctKmr
「いッ、ぐぁ」
襲い掛かってきた投げナイフは、武の頬を貫通して口内まで侵入してくる。
「げはっ、っは」
突き刺さるナイフに気を取られて、近付いてきた稟の影に気が付かない。
「殺されてたまるかぁぁぁぁあああああ!!」
稟は鉄扇を畳んだまま、武の頭を力一杯殴りつけようとする。
痛みに負けそうになりながら、瞬間的に危機を感じた武は頭を伏せる。
鉄扇を持った腕は空振り、稟は勢い余って転倒してしまう。
「ごぉ……ぉぁあッ!」
頬のナイフを両手で抜き取る。抜き去った際に口の中に血の海となったが、吐き出して我慢した。
転倒した稟も、すぐさま立ち上がり鉄扇を武に向ける。
「やっぱり、殺し合いに乗ってたのか……」
「黙れ! お前さえいなければ! くそっ! どうあっても俺を殺す気だな!?」
血を抜いて冷静になった武と対照的に、稟の言動は支離滅裂だった。
武も抜き取った投げナイフを構え、稟を警戒する。
とは言え、投げナイフと鉄扇では、間合いも強度も違い過ぎる。
どちらも身動き一つせず睨み合い続けた。その最中、武の背中から別の声が響く。
「二人ともここは危険だ! 武器を収めて避難してくれ!」



    ◇    ◇    ◇    ◇


目的地に辿り着いた圭一と美凪は、最初とは全く違う病院の姿に驚いていた。
所々から火の手が上がり、窓ガラスは割れ、壁が崩壊しかかっている。
「遠野さんは、ここで待っててくれ」
「前原さん……」
「大丈夫。中にいる人を助けたら、すぐ戻ってくるから」
圭一の目をジッと見つめる。

357 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/01(日) 23:56:20 ID:MKyxzYhY
    

358 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/01(日) 23:56:34 ID:DdJiIkce
支援

359 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/01(日) 23:57:37 ID:LCfctKmr
死地に行く目をしていたら止めていたが、圭一の目はその逆で、曇りなく輝いていた。
「解かりました」
美凪は手を振り圭一を送り出す。
その視線を背に受けて、圭一は再び病院へと足を踏み入れた。
病院内は既に煙で覆われており、温度もかなり上がっている。
「ごほっごほっ」
油断して煙を吸ってしまったが、気にせず階段へと向かう。
途中、自分達が写真と名前を貼り付けた場所を見つけたが、ちゃんと残っていた。
(あの二階に居た人、この写真見てくれたのかな)
階段の一段目に足を掛けた所で、二階から二つの叫び声が聞こえてきた。
(二人いるのか!?)
悩むより前に、圭一は全力で階段を駆け上がっていた。
廊下に飛び出すと、二人の男が緊張の面持ちで睨み合っていた。
片方は見たこと無いが、もう片方は先程窓から顔を出した男だ。
その手には、赤く染まったナイフが握られている。
(まさか、殺し合いに乗ってるのか!?)
双方に危険を感じつつも、避難するほうが先だと結論付ける。
意を決して、大声で呼びかける。
「二人ともここは危険だ! 武器を収めて避難してくれ!」
圭一の声に先に反応したのは、奥に居た男だった。
「お前も、この男と同じく乗った人間かぁ!」
「な」
男の怒声に、圭一は一瞬怯んでしまう。
やはり、最初に見た男は殺し合いに乗ってしまっていたのだろうか。
「この男のように殺し合いに乗ったんだな!」
圭一を責める様に、男は憎しみを込めて言葉を発する。
「違うッ! 俺達は殺し合いなんか――」
「煩い! くそっ、そっちがその気なら」
こちらの話を一方的に断ち切った男が、デイパックから銃を取り出しこちらに向けた。
「うぉぉぉぉぉおおおおお!!」
その男に対して、ナイフを持った男が突撃を仕掛けていく。

360 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/01(日) 23:57:49 ID:MKyxzYhY
    

361 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/01(日) 23:58:17 ID:DdJiIkce
支援

362 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/01(日) 23:58:48 ID:MKyxzYhY
    

363 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/01(日) 23:59:41 ID:LCfctKmr



    ◇    ◇    ◇    ◇



(あの少年……確か前原圭一?)
背中越しにみたその顔は、一階に貼り付けてあった写真と同一人物だった。
その圭一に銃を向けた稟を止めるため、武は怯まずに正面から突撃した。
そして、銃を持つ左手と鉄扇を持つ右手を何とか押さえる。
もの凄い力で剥がしに掛かる稟に潰されそうな武は、背中の圭一に声を掛ける。
「神社行け!」
「え?」
「俺の仲間が……脱出しようと誓った仲間が、まだそこにいるかもしれない!」
「で、でもアンタを助けなきゃ」
「早くしろ!」
武の怒声に、圭一はどうするべきか悩んでしまった。
そんな中、圭一より先に稟がその言葉に反応する。
「神社かぁぁ! お前達殺し合いに乗った参加者全員神社にいるんだな!」
「しまっ――」
「そんな事させるか! 誰もお前達に殺させはしない」
焦っていた武は、自分の犯してしまった重大なミスに気付く。
押さえつけている稟にまで、集合場所を教えてしまったのだ。
こうなったら、絶対に稟を逃がすわけにはいかない。
「行かせる……か!」
口に溜まった血を吐きつけ、稟を怯ませようと試みた。
だが、それより先に喉に銃口が当てられる。
予想していた弾丸では無いものの、何かがチクリと突き刺さる感触。
同時に、体内を不気味な蟲に占領されていく錯覚を起こす。
その不気味な感触で、押さえつけていた腕から力が抜けたのを見逃さず、稟は鉄扇を武の額に叩き込む。

364 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:00:19 ID:MKyxzYhY
    

365 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:00:44 ID:DdJiIkce
支援  

366 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:01:17 ID:MKyxzYhY
    

367 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/02(月) 00:01:31 ID:LCfctKmr
「――」
額から鮮血を噴き出し、音も無く崩れ落ちる武。
そして、そのまま反応できないままの圭一を突撃して押し倒す。
左肩を怪我していたのか、押さえつけると苦痛で顔を引き攣らせた。
「お前もかぁぁぁぁぁああああ!!」
稟の振り上げた鉄扇が、圭一の頭上へと襲い掛かる。
「駄目!」
声挙げたのは、今までいなかった少女だった。
階段の影から突然現れた少女は、体ごと突撃して稟を突き飛ばす。
少女はそのまま廊下に転倒し、稟も遠くへ弾き飛ばされた。
「くそぉ! まだいたのかよ!」
よろめきながら立ち上がり、少女に銃を向ける。
だが、どこかで再び起きた爆発に、稟は頭を切り替えた。
(冷静になれ! ここでの無駄な時間は命取りだ!)
銃口を倒れる圭一と少女に向けながら、稟は階段へ向かい下へと降りていく。
襲い掛かってくると思い込んでいた圭一と少女は、稟がいなくなったの途端寄り合う。
「遠野さん! どうして付いてきたんだ!? 危ないからって――」
遠野と呼ばれた少女は、圭一が全てを言い終わる前に、武を指差した。
「それより、この人を助けましょう」
「あ、ああ」
二人が武に近付こうとする前に、倒れていた武は、壁を支えにしながらゆっくり立ち上がる。
「まてっ……ぐ」
立ち上がろうとするが、脳震盪を起こしているため膝に力が入らない。
「だ、大丈夫ですか!?」
圭一は、恐れる事無く武に肩を支える。
同じように、遠野と呼ばれた少女が反対側の肩を支えた。
ようやく立つ事が出来た武が窓の外を見ると、丁度稟が入り口に降り立った所だった。
そして、外に停めてあった原付車に飛び乗ると、即座に走り去っていってしまう。
(なんてこった)

368 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:02:22 ID:MKyxzYhY
    

369 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:03:03 ID:MKyxzYhY
    

370 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:03:12 ID:0LPWZCtU
 

371 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:03:19 ID:DdJiIkce
支援

372 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/02(月) 00:03:46 ID:LCfctKmr
武は二人に支えられながら、どうするべきか悩む。
そんな武を支えながら、二人は階段を下りて入り口を目指した。
現在の病院内は、殆どに煙が充満している。
風の流れで出口が判別できるが、扉が開いてなければ危険だった。
煙を必死で堪えながら、なんとか外に脱出したものの、すでに原付車の姿はどこにも無い。
(どうすればいい)
いくら原付車とはいえ、どんなに急いでも人間の足では追いつけるはずがない。
武は迂闊な発言をした自分に後悔していた。
「すみません。俺が飛び出さなけりゃ……」
隣で支えていた少年が、詫びるように言葉を掛ける。
「いや。むしろ助かった。ありがとうな前原圭一君。それに遠野美凪さん」
「ど、どうして俺達の名前を!?」
「びっくり」
「病院に顔写真を張ったのは君達だろ?」
まさか写真を見ていたとは思わなかったのか、圭一はかなり驚いていた。
「見てくれたんですね」
「素晴らしいで賞」
突然手渡されたお米券に戸惑いながらも、武は真剣な目で山のほうを見た。
「……ともかく、あの男を早く追わないとまずい」
「それより治療しませんか? 倉成武さん」
急ぐ武の頬に、美凪はそっとハンカチを当てる。
「っと、そいつはありがたいが……どうして俺の名を?」
「これです」
そう言って空いた手でデイパックを探る。
取り出したのは、島にいる参加者全員の顔写真付きのリスト。
「なるほどな。ああ、俺の傷なら心配しなくても平気だぜ」
「どうしてですか!?」
「ちょっと特殊な体でね。治りは遅いけど、ほれ」
二人に殴られた額を見せる。完治はしていないものの、出血は既に治まっていた。

373 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:04:46 ID:DdJiIkce
支援 

374 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:05:24 ID:MKyxzYhY
    

375 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/02(月) 00:06:13 ID:LCfctKmr
「だから、手当てよりも神社に向かうほうが先決だ」
「でも、頬の傷は危険です。せめて応急処置だけでも」
譲らない武と美凪を見ていた圭一は、どちらも可能な状況はないか悩んでいた。
「あの男を追いながら、応急処置するには……」
「おいおい、移動しながら手当てって――」
だが、その言葉に何か閃いたのか、武はそれが実現可能か思案する。
「ナイスだ圭一!」
それが可能と判断した武は、二人から離れ得意げに胸を張った。
「ちょっと待っててくれ」
「え、あ、ちょっと!」
そう言うと、武はふらつきながらも、足早に病院の建物を通り過ぎて、その奥へと走っていった。



    ◇    ◇    ◇    ◇



原付を目一杯加速させながら、稟は走り続けた。
倉成武という男の話が真実ならば、神社には危険な参加者が多く存在する事になる。
もしそんな場所に、楓やネリネや亜沙がいれば、巻き込まれて危険な目にあってしまうだろう。
そうなってしまう前に、誰よりも先に神社に到着して探さなければならない。
(頼むっ、三人ともいてくれるな!)
喉を掻き毟りながら、稟は走り続ける。
ふと、喉を掻いていた爪を見て、慌てて手を振り払う。反動で、思わずブレーキをかけそうになった。
一瞬、爪の隙間に赤い幼虫がこびり付いている様に見えたのだ。
しかもその幼虫が、稟の指を這いずり回り、体内に侵入して来たのである。
頭を振り、もう一度爪を見てみると、そこには幼虫などおらず、わずかに血が付着しているだけだった。
(気のせいか)
この島に来てから、あまり休んだ記憶がない。それで幻覚が見えたのだろうと納得した。
両手でバーハンドルを握ると、再び速度を上昇させる。
そんな稟の背中からは、大量の汗が流れ落ちていた。

376 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:07:04 ID:DdJiIkce
支援   

377 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/02(月) 00:08:02 ID:M+f0ymZj
風を切っているのに、熱を帯びた肉体は一向に火照りが治まらない。
それどころか、ますます呼吸が荒くなり汗が噴き出る。
頭痛も殴られた様に酷くなり、酔ってもいないのに酷い吐き気がする。
(病院で風邪にでも感染したか?)
だからと言って休む暇などない。稟は地図を頭に浮かべながら走った。
(ここを曲がれば)
住宅街を駆け抜け、見えた先は『通学路』と表示される看板。
一度停車して、武器の確認を行う。こちらに敵意は無いといって、相手もそうだとは言い切れないからだ。
デイパックから銃を取り出し、念のため片方の薬を装填しておく。
同時に重たい鉄扇も腰に差して、再びバーハンドルを握り走り出す。
ガリッ、ガリッ……と左手で喉を掻きながら。



    ◇    ◇    ◇    ◇


病院まで近付いていた咲耶は、原付車にまであと少しと言った所で慌てて立ち止まる。
爆発音と共に、病院内から一人の男が飛び出してきたからだ。
男は咲耶が攻撃を仕掛ける隙も与えぬまま、原付車に跨り立ち去ってしまった。
(油断したわ)
もっと早く到着すれば、原付車を奪えたうえ一人殺せたかもしれない。
移動手段が奪われた以上、ここにいる意味はない。
咲耶は踵を返して住宅街を目指そうとしたが、病院の奥にある建物に目が留まった。
同時に、煙の充満する病院内から三つの影が浮かび上がり警戒する。
ここでダイナマイトを投下しても良いが、その中に妹がいれば危険だ。
(ともかく、あれを確認するべきね)
三人の処理は後回しにして、咲耶は奥にあった倉庫に移動した。
そこには、三台の救急車が配備されており、どれもが真新しく輝いていた。
(目立ってしまうけれど、時間短縮にはなるわね)
その中の一台に駆け寄り、運転席のドアを開ける。
鍵は掛かっていないようで、すんなり進入する事が出来た。

378 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:08:48 ID:MKyxzYhY
    

379 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:09:11 ID:c1xKZk4H
支援

380 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:10:29 ID:7oRMeuqD
    

381 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/02(月) 00:10:40 ID:M+f0ymZj
だが、すぐさま別の問題にぶち当たってしまう。
「おかしいわね。ペダルを踏んでも動き出さないなんて」
車の運転などしたことが無い咲耶は、エンジンのかけ方すら解かっていない。
近くにあったサイドブレーキやギアを適当に動かすが、救急車は全く動いてくれない。
そもそも、車のエンジンキーが刺さっていない事に気付いていないのが失敗だった。
何かヒントは無いかと念入りに周囲を見渡す。
石油の入ったポリタンクは、今後利用価値がありそうなので回収したが、収穫はそれだけだ。
実は、咲耶の死角に小さなキーボックスがあるのだが、彼女はそれに気付いていない。
「中に何か無いかしら」
救急車で移動する事を半ば諦めた咲耶は、救急車の後ろの扉を空けて中に進入する。
中は意外と広く、作りもしっかりしていた。
右端には頑丈なベットが備えてあり、左端には山になった毛布が積まれている。
(役に立ちそうなものはない……か)
体を屈めて車内を点検していた咲耶の耳に、何かぶつける様な音が飛び込む。
(誰か来た!?)
思わず叫びそうになった口を両手で押さえ、積んであった毛布の中に隠れる。
こちらは見つかれば袋の鼠状態である以上、下手に動いて見つかってはマズい。
暫くすると、扉が開いて誰かが車内に入ってきた気配がする。
「これは……よっと」
何か割れる音がする。警戒し過ぎて動きそうになるが、必死で押さえる。
どうやらその人物はこちらに気付かなかったらしく、すぐに車内から出て行った。
だがその数秒後、咲耶を乗せた救急車が突然動き出してしまう。
(誰かが運転してる?)
毛布から運転席を確認すると、見たことの無い青年がハンドルを握っていた。
「これなら追いつけるな」
青年は独り言を呟くと、喉を掻きながらハンドルを切った。
「よっと。おーい二人とも!」
助手席の窓を開け、誰かに声をかけている。
(さっきの三人組ね)

382 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:11:00 ID:HUkprzPN
 

383 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:11:29 ID:7oRMeuqD
    

384 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:12:20 ID:c1xKZk4H
 

385 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:12:39 ID:HUkprzPN
 

386 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/02(月) 00:12:46 ID:M+f0ymZj
そのうち一人が、どうやってかは知らないが救急車を動かしたのだろう。
青年は車を停車させると、窓を開けて外の二人に声をかけた。
「これって」
「目立っちまうけど、徒歩よりは効率的だろ。治療器具も完備されてるしな」
窓の外から飛び込んできた声に、咲耶は複雑な表情を浮かべる。
(男が二人)
飛び出して虚を突く作戦も考えていたが、男が二人ではそれも難しい。
そもそも、車の外にいる男がどんな武装をしているかも判断できないのだ。
「圭一。悪いが後ろの扉を開けてきてくれ」
「あ、はい」
外に居た男の名は圭一と言うらしい。
毛布から後ろの扉を覗き見ると、自分と同じくらいの少年が姿を現す。
「この下は……何も無いんだな」
圭一と呼ばれた少年が、車内に入り右端のベットに掛けられたシーツをめくる。
ベットの下には、人が一人入れそうなスペースがあるだけで、他には何もない。
次に圭一が目をやったのは、運転席と後部席を隔てていたはずの窓だった。
「会話できないと寂しいだろ?」
車の外に降りたらしい青年の言葉は、おどけたような声だった。
「圭一はそこから毛布を二枚とってくれ。その間、美凪は手当てを頼む」
「はい」
「わかりました!」
車内から返事をした圭一は、自分の上に被さっている毛布を一枚、一枚と剥ぎ取っていく。
(こうなったら!)
緊張で息が詰まる中、咲耶は奇襲を仕掛けようと銃を強く握り締める。
だが、飛び出す前に圭一は車から降りてしまい、扉は一方的に閉められてしまう。
毛布から飛び出したときには、室内は暗くなっていた。
(出遅れた……)
ここまで思い通りにいかないと、さすがに腹が立ってくる。
いっそ飛び出してしまおうかと考えるが、唇を噛んで冷静さを保つ。
(下手に返り討ちされるよりも、この人達に付いて行くのが無難かしら)

387 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:14:27 ID:c1xKZk4H
  

388 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:14:53 ID:HUkprzPN
 

389 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/02(月) 00:15:41 ID:M+f0ymZj
外から聞こえてくる会話には、『仲間』と『集合』と『神社』という単語が多く含まれている。
現状の事だけを考えるならば、今すぐ三人を殺してしまうのが手っ取り早い。
だが、こちらの武装は十分とは言え、逃走手段が確実でない状態だ。
出来れば無傷で島から出たい以上、ここで三人を相手にする様な分の悪い賭けは出来ない。
やはり頃合を見て、三人が車から離れた隙に仕掛けるのが理想的か。
リーダー格らしい男の話が真実ならば、神社には相当の人数が集まるはず。
もしかしたら妹達がいれば合流できるし、いなければまとめて始末できる。
「よし、二人とも後ろに乗ってくれ!」
(マズい!)
少し考えているうちに、三人は出発の準備を整えてしまったらしい。
毛布の中に隠れるのをやめ、今度は右端に設置されたベットの下に潜り込む。
それと同時に、四本の足が自分に近付いてくる。
咲耶は飛び出しそうな心臓を押さえ、ジッと息を潜める。
そんな事とは露知らず、二人は自分の真上に腰掛けた。
(貴方達の命、到着まで預けておくわ)
ベットを支える柱に身を預けながら、咲耶は銃を真上に向けて笑った。
(それまで、よろしくね)



    ◇    ◇    ◇    ◇



「武さん、一体どうしたんだろ」
「わかりません」
二人に「ここで待ってろ」と残して病院の奥へと走っていった武。
かれこれ10分は経つが、いまだ現れる気配がない。
気になって仕方ない圭一は、武の登場を今か今かと待ち望んでいる。

390 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:16:13 ID:HUkprzPN
 

391 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:16:18 ID:7oRMeuqD
    

392 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/02(月) 00:16:51 ID:M+f0ymZj
数分後、圭一と美凪が病院から離れたところで待っていると、一台の救急車が近寄ってきた。
一瞬身構えてしまうが、運転席の窓が飛び出した手に安堵する。
「おーい二人とも!」
二人の傍で救急車を停止させると、武は運転席から顔を出した。
「これって」
「目立っちまうけど、徒歩よりは効率的だろ。治療器具も完備されてるしな」
車から降りた武は、圭一に声をかけた。
「圭一。悪いが後ろの扉を開けてきてくれ」
「あ、はい」
圭一は救急車の後ろまで近寄ると、勢い良く扉を開ける。
「へぇ〜。あ、こりゃベットか? この下は……何も無いんだな」
中を覗くと、消毒の匂いが鼻を突き抜ける。
驚いた事に、患者を乗せる席と運転席を遮る窓ガラスは取り外されていた。
「会話できないと寂しいだろ?」
おどけながら、小型のハンマーを見せる武。ガラスの破片は助手席に散乱しているらしい。
あまり馴染みのない救急車を覗き込む圭一に、武は声を掛ける。
「圭一はそこから毛布を二枚とってくれ。その間、美凪は手当てを頼む」
「はい」
「わかりました!」
車内から返事をした圭一は、左隅に詰まれた毛布を二枚剥ぎ取る。
(ん? なんか軟らかかった気が)
もう一枚めくろうと手を伸ばすが、先に毛布を渡すため急いで車内から出て扉を閉める。
頭に包帯を巻き、頬にガーゼを当てた武は、圭一から毛布を受け取ると、病院の入り口へ向かった。
そして、安らかに眠る貴子の死体に毛布を二枚重ね、手を合わせる。
(必ず瑞穂達と共に生きて帰るからな)
武に習い、圭一と美凪も手を合わせる。
「よし、二人は後ろに乗ってくれ!」
その言葉に、二人は同時に頷く。再び後ろの扉を開け、先に車内に入った圭一は美凪に手を貸す。
「行こう! 遠野さん!」
「はい!」

393 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:17:00 ID:c1xKZk4H
 

394 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:17:31 ID:7oRMeuqD
    

395 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/02(月) 00:17:58 ID:M+f0ymZj
その手をしっかりと握り、美凪も車内へと乗り込んだ。揺れても大丈夫なように、二人は寄り添うように腰掛ける。
「これから行く所は、相当危険だ。今のうちに休んでおけよ」
「だ、大丈夫です!」
「私もへっちゃらです」
元気だとアピールするように、二人は後部席から武に詰め寄る。
「……そっか。なら、しっかり掴まっててくれよ!」
何か驚いたような表情を浮かべる武だったが、気を取り直して前を向いた。
アクセルペダルを一気に踏み、救急車は勢良く動き出す。
(気のせいか? 一瞬だけこいつらから敵意を……ちっ、何考えてんだ俺は!?)
「どうしたんすか武さん?」
心配そうに覗き込む圭一の顔は、敵意がない少年の顔だった。
「あ、いや、何でもない」
武は気のせいだと頭を振りつつ、運転に集中する事にした。
今は一刻も早く土見稟を追わなければならないのだ。
まだ生きている仲間を信じ、彼は額に汗を流しながらハンドルを握る。
(瑞穂、陽平、茜。間に合ってくれ)
圭一も深くは問い詰めず、美凪と肩を並べるように右端のベットに腰掛ける。
その真下では、一人の少女が息を潜めていると気付かずに。
商店街を通過するとき、ミラーに写った圭一と美凪の顔が悪鬼のように見えた。
(なっ)
驚いて目を擦り再度確認する。が、次に見えた二人の顔は、最初に見たときと同じ年相応の子供の顔だった。
(どうしたってんだ……)
体に異常は無いはずなのに、心の危険信号は鳴り止まない。
服の袖で汗を拭う。気付けば、背中は水を浴びたように汗で湿っていた。



……無意識に喉へと左手を当てて。





396 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:18:10 ID:HUkprzPN
 

397 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:18:32 ID:c1xKZk4H
  

398 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:18:36 ID:JCAk+5H9
しえん

399 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:18:54 ID:HUkprzPN
 

400 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/02(月) 00:18:58 ID:M+f0ymZj
【E-4 学校への通学路 /1日目 午前】

【土見稟@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【装備:麻酔銃(IMI ジェリコ941型)】
【所持品:支給品一式x2、投げナイフ一本、ハクオロの鉄扇@うたわれるもの、拡声器、
     麻酔薬入り注射器×3 H173入り注射器×2、炭酸飲料水、食料品沢山(刺激物多し)】
【状態:L5侵蝕中。背中に軽い打撲。頚部にかなりの痒み(出血中)。腕に痺れ。酷い頭痛】
【思考・行動】
基本方針:参加者全員でゲームから脱出、人を傷つける気はない。
1:L5侵攻中(かなり危険)
2:襲ってくるならば戦うしかない?
3:神社へ向かう(ネリネ、楓、亜沙がいれば救出)
4:ネリネ、楓、亜沙の捜索
5:水澤真央が気になる
6:もう誰も悲しませない
【備考】
※シアルートEnd後からやってきました。
※H173が二本撃たれています。今後のL5の侵蝕状況は次の書き手さんにお任せします。
※倉成武を危険人物と断定
※稟の乗っている原付車の燃料は残り半分です。


【G-4 商店街北部 /1日目 午前】


401 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:19:58 ID:JCAk+5H9
支援

402 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:20:02 ID:c1xKZk4H
  

403 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:20:02 ID:HUkprzPN
 

404 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/02(月) 00:20:13 ID:M+f0ymZj
【倉成武@Ever17】
【装備:投げナイフ2本】
【所持品:支給品一式 ジッポライター】
【状態:L5侵蝕中。軽度の疲労。頭蓋骨に皹(内出血の恐れあり)。頬と口内裂傷(出血中)。頚部に痒み】
【思考・行動】
1:L5侵蝕中(軽度)
2:土見稟を追い神社へ、参加者殺害を防ぐ
3:知り合いを探す。つぐみを最優先
4:土見稟をマーダーと断定
5:金髪の少女(芳乃さくら)をマーダーとして警戒
6:佐藤良美を警戒
7:余裕があれば救急車の燃料を入れる。
【備考】
※キュレイウィルスにより、L5の侵蝕が遅れていますが、発症はしています。侵蝕状況は次の書き手さんにお任せします。
※前原圭一、遠野美凪の知り合いの情報を得ました。
※救急車(鍵付き)のガソリンはレギュラーです。現在の燃料は残り2/3です。


【前原圭一@ひぐらしのなく頃に祭】
【状態:精神安定、右拳軽傷、腹部に軽度の打撲、左肩刺し傷(左腕を動かすと、大きな痛みを伴う)】
【装備:柳也の刀@AIR】
【所持品:支給品一式×2、キックボード(折り畳み式)、手榴弾(残4発)】
【思考・行動】
基本方針:仲間を集めてロワからの脱出、殺し合いには乗らない、人を信じる
1:美凪を守る
2:美凪や武と共に稟を止めるため神社に向かう
3:知り合いとの合流、または合流手段の模索
4:良美を警戒
5:土見稟を警戒
【備考】
※倉成武を完全に信用しました
※宮小路瑞穂、春原陽平、涼宮茜、小町つぐみの情報を得ました

405 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:20:26 ID:23EpvxeW
 

406 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:20:42 ID:HUkprzPN
 

407 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:21:03 ID:7oRMeuqD
    

408 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:21:06 ID:c1xKZk4H
 

409 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:22:07 ID:23EpvxeW


410 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/02(月) 00:22:14 ID:M+f0ymZj


【遠野美凪@AIR】
【状態:健康】
【装備:悟史のバット@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:包丁、支給品一式×2、救急箱、人形(詳細不明)、服(詳細不明)、顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)】
基本方針:圭一についていく
1:知り合いと合流する
2:佐藤良美を警戒
3:土見稟を警戒
【備考】
※病院のロビーに圭一のメモと顔写真が残されています。
※倉成武を完全に信用しました
※宮小路瑞穂、春原陽平、涼宮茜、小町つぐみの情報を得ました



411 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:22:25 ID:HUkprzPN
 

412 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:22:35 ID:c1xKZk4H
    

413 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:22:56 ID:23EpvxeW


414 :聖者の行進 ◆Qz0e4gvs0s :2007/07/02(月) 00:23:20 ID:M+f0ymZj
【咲耶@Sister Princess】
【装備:S&W M627PCカスタム(8/8)地獄蝶々@つよきす】
【所持品:支給品一式 食料・水x4、可憐のロケット@Sister Princess、タロットカード@Sister Princess 
       S&W M627PCカスタムの予備弾61、肉まん×5@Kanon、虎玉@shuffle、ナポリタンの帽子@永遠のアセリア
       日本酒x3、工事用ダイナマイトx3、ポリタンク石油(10L)×3、発火装置、首輪(厳島貴子)】
【状態:身を隠しています。極度の緊張】
【思考・行動】
基本方針:自分と姉妹達が死なないように行動する
1:衛、千影を探し守る。
2:首輪を解析する能力を持つ参加者を探して利用する
3:三人(武、圭一、美凪)の向かう先に妹、もしくは利用できそう参加者がいなければ皆殺し
4:姉妹以外の参加者は確実に皆殺し
5:余裕がある時は姉妹の情報を得てから殺す
6:宮小路瑞穂に興味


※【F-6】病院は半壊しています。いつ全壊してもおかしくありません。

※【G-8】カルラの死体の近くに、羽リュック@Kanon、ボトルシップ@つよきす、
      ケンタ君人形@ひぐらしのなく頃に 祭、が放置されています。

415 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 00:24:45 ID:23EpvxeW


416 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:08:11 ID:TbJUKP40

稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。
稟くん。

稟くん、もうすぐです。もう少しで会えます。
右腕が物凄く痛いのが若干気に障ります。熱いです。
まるで炎が私の中で、メラメラと燃えているような嫌な感じです。

あの女性、ええと……何て名前でしたっけ。もう忘れてしまいました。
純一君が名前を呼んでいたと思ったんですが……。
あれ、純……一くん?彼、どんな顔をしていましたっけ。記憶があやふやです。


417 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:08:43 ID:Qr0cXGJC
  

418 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:08:58 ID:c1xKZk4H
 

419 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:09:19 ID:TbJUKP40
でもあの二人は許せません。
せっかく私が殺してあげようと思ったのに、まさか撃ち返して来るなんて。
銃弾がグジュリと制服を突き破って身体を貫いた感覚。
血がトクトクと噴き出し、まるで噴水のように腕を染め上げた光景。
全身に赤が拡散し、蔓延し、増殖し肉体を犯す嫌悪感。
弾丸は何とか抜き取りました。
上手く骨の部分で止まっていてくれたのが幸いだったようです。
その時、何かが切れるような、少しだけ変な音がしましたが、私には気にしている暇はありません。
利き腕とは逆ですし、銃のトリガーを引くのにも問題は無いですから。
"支え"が少しだけ、弱くなるのが気掛かり。とはいえ本当に些細な心配ではありますが。

でもこんな傷、あの時の稟くんの痛みに比べたら、気にするのも馬鹿らしいくらいです。
ええ、十分承知しています。
私は償わなければならない、捧げなければならない、委ねなければならない。
だから、こんな場所で立ち止まる訳にはいかないんです。


既に私という存在がこの世に在り続ける理由、目的も全部稟くんのためなんですから。
血が管を通り、全身を駆け回る事が当たり前のように。
太陽が毎朝昇る事に何の疑問も持たないように。
毎日、稟くんよりもずっと先に起きて、稟くんのために朝ご飯の仕度をする。
そして稟くんを起こして差し上げる。
そんなサイクル。稟くんのお世話をする事。ソレが全て。
稟くんさえ、稟くんが側に居てくれさえすればいいんです。

私が幸せになるなんて事、願う訳にはいかないんです。
そんな資格はもうとっくに、とっくに亡くしてしまったから。
稟くんを拒絶した、あの時。
後悔はいつも取り返しが付かないものだから。
私はただ、稟くんが幸せで、元気でありさえすればいいんです。



420 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:10:03 ID:TbJUKP40


右腕を滴る血も、荒々しくも艶かしい喘ぎ声も、上昇した体温も。
何もかもが私と、外の世界とを切り離そうとします。
一瞬でも気を抜いた身体だけで無く、意識まで墜ちてしまいそうな感覚です。
でも、大丈夫。私の中には稟くんがいるんです。
稟くんの声、稟くんとの思い出、稟くんの顔……。
一つ一つが私を強く、そして前に進ませる力になるんです。
その存在、そして今も誰かに襲われているんじゃないかいう懸念、それだけで愚鈍に劣化した意識も研ぎ澄まされるような気がします。

だから。
待っていてくださいね、稟くん。
もうすぐです。もう少しで会えます。





「うう……口の中にまだ何か入ってるみたいだ……」
「まったく、恋太郎はオーバーなの。
 こんなの、ただのパンとジャムなの」
「お前……人にあんな物食べさせておいて、よくもまぁヌケヌケと……。
 ……ほら、まだ半分残ってるぞ」

恋太郎は未だベットリとジャムがこびり付いたパンを顎で差し示す。
行間を読まなければ分からない事だが、当然彼はことみに対して『四の五の言わずに食ってみろ』と言いたい訳である。


421 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:10:05 ID:Qr0cXGJC
 

422 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:10:06 ID:c1xKZk4H
  

423 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:10:39 ID:Qr0cXGJC
                                                                           

424 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:10:48 ID:TbJUKP40
恋太郎が食した『謎ジャム』と『レインボーパン』のコンビネーションは、まさに見事の一言に尽きる。
裏の世界では誰もがその存在を知りながら、未だ誰も到達出来ないでいた神秘の領域。
一体どれだけの人間が求め、そして挫折して来た事だろうか。
そんな"奇跡"が今、目の前にある。しかも二つ揃って、だ。
世界を超越したその二つの食物の会合はまさに未知との遭遇。異次元への進行と揶揄されてもおかしくない。
味の文明開化、食のルネッサンスという価値観の完全なる転向を予期させる。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚と五感をフルに刺激するその取り合わせは、既存の『食べ物』という概念にメスを入れた、大変価値ある存在と評価されるべき一品だ。

だから恋太郎は思ったのだ。
この革命的な食べ物を、是非ことみにもご馳走してやりたい、と。
道連れが欲しい、などという俗物めいた考えは当たり前だが微塵も無い。
そこに在るのは新しい世界、そして感覚を共有したいという純粋な感情だけ。
死に際は独りで逝きたい、などという狼的な思考からはかけ離れた暖かい光に溢れた想いである。

「……ああ。食べ足りないなら喜んで差し上げるの。まったく欲張りな恋太郎。
 一応これは大切な支給品なの。だけど私は心が広いの。感謝するといいの」
「っ、違うわッ!!こんなもん、二度と食べるか!!
 う……おっぷ……大声出したらまた気持ち悪くなって来た……」

過剰に反応し過ぎたためか、恋太郎が地に膝をついて蹲る。
ことみはそんな彼の様子を不思議そうな目で見ていた。
パンとジャムを食してから既に10分近く経過しているはずなのだが、彼はずっと何かを我慢しているような感じなのだ。
食べた直後は気のせいか身体を痙攣させていた気もするが、まぁおそらく本当に気のせいなのだろう。
大体、自分も疲れている。
なにしろ完全に『殺し合いに乗った』人間をたった今、撃退した所なのだから。
こちらの被害はほとんど無かったに等しいが、その代償として未だ亜沙は眠ったままだ。
尤も命を失う可能性も多分にあったのだから、最小限のダメージで助かったと安堵するべきなのだろうが。

425 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:11:42 ID:TbJUKP40

「もう、うるさいの。そんなに気分が悪いならどこかで吐き出してくればいいの」
「いや……でも、な。
 まだあのネリネとかいう……その、女が辺りにいるかもしれないだろ?
 俺がここを離れたら二人を危険に晒す事になるし」

チラリと恋太郎がことみの膝の上で眠っている亜沙に目をやる。
"ネリネ"と言う単語を口にした際、思わず彼女の方を見てしまったのだろう。仕方が無い事ではあるが。

なにしろ、自分達を襲ったネリネという女性は、亜沙と同じ学校の生徒らしいのだ。
彼女が亜沙の事を"先輩"と呼んでいた事から、学年は違うものの、二人は親しい関係にあった事が推測出来る。
詳しい話は分からないが、そんな普通の学生だった人間が既に人間を殺している。
しかも生首を復讐のために持ち歩くという猟奇的な側面を垣間見せながら。

逆に亜沙が力を使って眠りに落ちてしまったのは幸運だったかもしれない。
もしもあの極限状態のまま、意識を保っていたとすれば
知り合いの想像も出来ない変化(しかも彼女は自分を殺そうとした)に酷く胸を痛めていたことだろう。

「……ううん、大丈夫。平気なの。
 いざとなったら武器もあるし、私一人でもへっちゃら」
「……本当に大丈夫か?うっ……お……」

心配そうに、尚も恋太郎は自分達から離れる事を拒む。
もしも最後に嘔いたりしなければ、多分カッコよく見えただろうに。コレでは台無しだ。

とはいえ、ことみには常識的に恋太郎が離れる距離にネリネがいる可能性はほとんど無い事が分かっていた。
まず襲撃者である彼女は相当なダメージを負って自分達に撃退されたと言う事。
そして自分達は銃器を持っているが、彼女は持っていないと言う事。特にコレは大きい。
亜沙に支給されたイングラムM10は明らかに"殺す"事に特化してマシンガンである。
もしも素人が持っても遠距離からはほぼ直撃は不可能な拳銃ならばともかく。
反動で自分が倒れでもしない限り、弾丸を絶え間無く撒き散らす事が出来るマシンガンの威力は驚異的だからだ。

426 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:11:51 ID:c1xKZk4H
   

427 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:12:23 ID:TbJUKP40

「しつこいの。早く行くの。私はこの『参加者の術、魔法一覧』に目を通すのに忙しいの」
「……そこまで、言うなら。
 ああ、一応俺のデイパックは持って行くよ。俺が襲われる可能性もある訳だし」
「了解なの。
 可憐な乙女達がすぐ側にいる事を念頭に置きながら、気の済むまで出してくればいいの」
「なんか……引っかかる言い方だな」


ブツブツ文句を言いながら一つのデイパックを背負った恋太郎が茂みの奥に消える。
この辺りは無駄に森が濃い。
恋太郎が向かったのは……確か神社がある方向だ。尤も次の目的地は遥か北に位置する工場。自分達に関係のある場所ではない。
そんな事を考えていると、すぐに恋太郎のデイパックは見えなくなった。

自分も一息付こう。ことみはそう思った。
とりあえず今は休憩だ。
恋太郎が戻って、亜沙が目覚めるまでここを動くわけにはいかないのだから。

「……それにしても、キレイな髪なの」

恋太郎を見送ったことみは、思わずそんな台詞を呟いた。
自分の髪について自惚れている訳では、勿論無い。
彼女が"キレイ"と評したのは自分の太股を膝枕にして眠っている亜沙の髪の事だ。

ほんの数分前まで彼女の髪は短かった。
一般的な女性の頭髪の長さと比較してもショートヘアーに分類されるものであったはずだ。
しかし今の彼女は煌くようにサラサラとしていて、流水のように流れる翠色の超ロングヘアーをしている。
同じ女性としても思わずため息をついてしまうくらい、見事な色艶。
髪が短かった時のボーイッシュなイメージは薄れ、大人の女性としての魅力が引き出されている。

428 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:12:51 ID:c1xKZk4H
    

429 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:13:05 ID:TbJUKP40

だが、彼女の毛髪に一体何が起こったのか。
とりあえず『伸びた』と言うしかない。もうソレは有り得ないくらいの早さで。
髪の毛は普通、毎日0.3mmから0.4mm程伸びるという。
つまり一ヶ月で1cm程度。だが彼女の髪は軽く7,80cmは伸びている。
彼女が"力"を使ったと同時に髪の毛も伸びた事から推測するに、溢れ出た魔力が髪の毛を通して発散されたのではないかと思う。
力。そう普通の感覚では考えられない力。
明らかに失明、医者の手に掛からなければ治り様がない傷を完治させた――。
完全に"奇跡"としか表現の仕様が無い。
いざ目の当たりにすると、"魔法"のあまりの力に驚きを隠せない。

魔法についての考察を更に進めなければいけない。
これは脱出のためにも必要になる事だ。なにしろ、あの鷹野という女性は魔法の力を確実に利用しているからだ。
こちらにも魔法を、しかも強力な魔法を扱える人物を味方に付けるべきだろう。
亜沙の持つ力も強大だが、用途が限られている上にリスクも大きい。
もっと体系的で、原理としての魔法に精通した人間と会えればあるいは……。


「……くん……り……ん……り……く……りん……」

瞬間、ことみは全身の毛が逆立ったような錯覚を覚えた。
声がする。
小さな……声。何かを呟いている……一体何を言っているのだろう。耳を澄ませる。

「稟くん。稟くん。稟くん。稟くん。稟くん。稟くん……」

り……ん……くん?
聞き取れた。その単語の完成に伴い、一つの名前が想起される。
稟。土見稟。
今しがた遭遇したネリネ、そして眠り続ける亜沙。その二人が共に口にした名前。
もしや、やって来た相手は――。

430 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:13:32 ID:Qr0cXGJC
     

431 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:13:43 ID:c1xKZk4H
     

432 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:13:49 ID:TbJUKP40

「亜沙さん、亜沙さん?起きるの、状況が変わったの」

眠る亜沙の頬をペシペシと叩くが、対する亜沙にまるで目覚める気配は無い。
足音は少しずつ近付いて来る。
スコップで土を掘り返す時に聞こえるような音、木の葉を踏みしめる音が響く。
普段は意識しても絶対聞く事が出来ないくらい小さな音。
それでも神経が過敏になっている今のことみには、ソレさえ聞き分ける事が出来た。

「誰か……そこに、いるんですか?」

現れたのは橙色の髪に赤いリボンを付けた、とても可愛らしい少女だった。
大きな瞳、整った顎のライン。100人に聞けば100人が美少女、と評価するに違いない。
ただそんな彼女にも二つ、明確に場違いとも思える要素が見て取れた。
一つ。彼女の制服に明らかに誰かに撃たれたものだと思える銃痕があった事。
そして血で真っ赤になった右腕に、左側の制服を破ってこしらえたと思える布が巻かれていた事。
二つ。彼女の左手に、その可憐な指先とは不釣合いで無骨な拳銃が握られていた事。

少女は呟く。
甘くも、儚い、甘美なその声で。

「亜沙……先輩?」






433 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:14:27 ID:c1xKZk4H
 

434 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:14:33 ID:TbJUKP40
場を重苦しい空気が包んだ。
ことみは理解している。
彼女がおそらく、亜沙の知り合いである事を。
だが同時にそれは"ネリネの"知り合いである可能性もあるという事。
彼女は一体どちらに近い人間なのか。
亜沙は眠ったままだ。
しかも未だ自分の太股に顔を押し付けた無防備な体制のままである。
自分が、見極め無ければならない。

「……腕、痛くないの?」
「腕……ですか?痛いですよ、勿論。
 でもこの程度の傷、稟くんの痛みに比べれば大した事ありませんから」

やはり"稟くん"か。
聞き間違いでは無さそうだ。
ならば次に知るべきは彼女がどちらの側に立っている人間か、という事だ。

「稟、土見……稟?」
「……やっぱり知っているんですね。
 まぁ、亜沙先輩のお知り合いならば、当然ですよね。
 亜沙先輩も稟くんを探しているに決まっていますから」
「そう……私達は土見稟を探しているの。だからあなたにも聞きたい事があるの」

丁度後ろ手の部分に置かれたイングラムM10に手を伸ばす。
気付かれないように、慎重に慎重を重ねて、だ。
彼女の返答次第で自分は動かなければならない。
先程はほとんど二人だった。だが今回、実質戦力になるのは自分一人。しかも相手は銃器を持っている。
緊張が走る。


435 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:15:21 ID:c1xKZk4H
  

436 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:15:54 ID:TbJUKP40
「ええ、どうぞ。ああ……その前に。
 私は楓、芙蓉楓と申します」
「……一ノ瀬ことみなの。今私が膝枕しているのが時雨亜沙さん。
 多分私よりも、楓さんの方が詳しく知っていると思うけど」
「勿論。私の大切な、昔からの知り合いです。
 料理部でも大分お世話になりましたし」

芙蓉楓。
確か恋太郎の持っていたリストに彼女の名前は無かったはずだ。
つまり、彼女は魔法が使える訳では無い。
身体能力的にはおそらく自分と大差は無い可能性が高い。

だが、体勢が悪い。
距離自体は大体数メートルといった所だが、私は座っていて彼女は立っている。
これは大きな違いだ。

「……私達は少し前、ある人間に襲われたの」
「――だから何です?冗長な話って好きじゃないんですよね。
 私は一刻も早く、稟くんの所にいかなければならないんです」
「まぁ、待つの。その人間の名前がネリネ、と聞いたらどう思う?」
「!?リンちゃんが……」

食い付いて来た。その名前を出した途端、明らかに彼女の眼の色が変わる。
ここからだ。眼を逸らすな。冷静に、冷静に対処しろ。

「彼女は言ったの。『稟様以外の全ての人間を殺して最後に自害するつもり』と」
「へぇ……リンちゃん"も"本気なんですね」

心臓の鼓動が早くなる。早くなる。
グルグル血液が身体を循環している事が今だけはハッキリと理解出来た。
ドクン、ドクンと心音が響く。口の中がカラカラになる。たった一語の助詞にここまで心が掻き乱されるなんて。
落ち着け、落ち着け。

437 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:17:08 ID:TbJUKP40
「何とか追い払ったけど、彼女は、殺し合いに……乗った人間だったの。あな……」
「すいません。気が変わりました。
 一つだけ。聞きたい事があるんですが、よろしいでしょうか」

『あなた』の次、本題に繋げるつもりだった部分を遮られる。
心臓は破裂しそうだ。
彼女の声のトーンが明らかに変わる。心なしか、口元が一瞬にやついたような気がした。話すスピードも突然速くなった。
こちらに聞きたい事?それはいったいなんだ?
そして今の態度の突然の変化は何なのだろうか。もしや言葉を間違えた……?
心が揺れる。

「簡単な質問です。
 あなた……と、亜沙先輩。他に"お連れの方"は……いないようですね。
 ことみさん。名簿の中に男性のお知り合いはおられますか?」





男性。当然、真っ先に恋太郎、続けて朋也の顔が思い浮かぶ。
次に目の前で腕が弾け飛んだ中年の男性。確か名前は大石。
そして情報だけの存在であるがハクオロ。仮面を被っていて、着物を着た人間という話だ。変質者かもしれない。

恋太郎が離れていてコレは幸いだったかもしれない。
彼はどう見ても男だ。女な訳が無い。
もしもこの場所に恋太郎がいたとしたら……?彼女の対応は百八十度違っていた可能性がある。
なぜなら彼女が男に拘る理由がまるで見出せ無いからだ。
以前、いやもしかしたらこの島に来てから男に何か酷い事をされた経験でもあるのか。

「どうしました?ことみさんも可愛らしいですからね。
 彼氏さんの一人くらい参加しているんじゃないですか?」
「どうして……そんな事聞くの?」

438 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:17:17 ID:c1xKZk4H
  

439 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:20:36 ID:HLETnOIX



440 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:20:49 ID:TbJUKP40

大石はともかくハクオロは知り合いでも何でも無い。だが問題は朋也と恋太郎。
この二人の存在を楓に隠すべきか否か、ここがある種のターニングポイントだ。
苦し紛れに彼女に質問の理由を尋ねる。今は少しでも思考の時間が欲しい。
だが。
突然、楓の様子が、豹変した。

「稟くんを襲ったのが男だからですよ」

その短い一言の台詞の中に今まで一度も感じた事の無いような、酷い憤怒と憎悪とそして殺意が込められていた。
ネリネのソレなど生温い、もっと根本的で純粋な殺意。
ただひたすら相手の事を憎いと思うあまり発せられる、負の感情の波。
そして妄執に近いような、異常な程の偏愛。



441 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:21:21 ID:HLETnOIX



442 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:21:30 ID:TbJUKP40
「可哀相な稟くん。大丈夫です、今すぐ私が側に行きますから。
 そしてお世話して差し上げるんです。
 守って差し上げるんです。
 いいえ、勿論稟くんが私が居無ければ生きていけないような弱い人間だなんてそんな事、これっぽちも思っていません。
 稟くんは強くて優しくて格好良くて、誰からも頼られるような素晴らしい方です。
 シアちゃんもリンちゃんも亜沙先輩も、麻弓ちゃんもリムちゃんも好きになってしまうのは仕方が無いんです。だって稟くんなんですから。
 でも稟くんにだって限界はあります。
 どんなに強くても凶悪な武器や意思を持った人間には敵わない事もあるんです。
 それに稟くんは誰も殺しはしない。稟くんはお優しい方ですから。
 どんな虫けらみたいで卑屈で最悪な人間であろうと情けをかけてしまう、そんな方なんです。
 でもそんな稟くんの意志を生きたゴミ達は無下にするんです。踏み躙るんです。
 傷付ける?稟くんを?
 殺す?稟くんを?
 そんな事、罷り通る訳が無いじゃないですか。
 何のために私がいるんですか。リンちゃんがいるんですか。亜沙先輩がいるんですか。
 守るんです。何を犠牲にしても。どれだけ血を流しても。
 私が、私達が代わりに、稟くんを嫌な気持ちにする人間を殺すんです。
 害を成す人間を消し去るんです。
 傷付ける人間を殺すんです。一人残らず、全部。
 まずは男です。
 稟くんに襲い掛かった男を殺します。一遍の情けも、容赦も無く、骨の髄まで。
 乙女先輩のように殺して差し上げます」


楓の言葉は止まらない。既に完全に会話の文脈からはハズレ、ひたすら喋り続ける。
誰に向けて話しているのかも既に分からない。独り言というレベルを完全に逸脱している。
まるで半ば演説を聞いているような気分になってくる。


443 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:21:58 ID:c1xKZk4H
   

444 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:22:55 ID:HLETnOIX



445 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:23:09 ID:TbJUKP40
ただソレは私も少し麻痺してしまっただけ。
彼女は言った。ハッキリ、人間を殺すと。
恐ろしい。彼女は違う。完全に離脱してしまっている。
狂っている、いや、そんな陳腐な言葉で表現は出来ない。
なぜなら彼女は精神異常者ではないから。
どう見ても普通の人間では無い。だが彼女は病気ではない。異常だが病気ではないのだ。
狂った人間はこんなにも一人の人間に固執、自分を犠牲にした行動を取ったりはしない。自らの行いを理性的な眼で見たりしない。

"サイコパス"これが最も適切な表現だ。厳密に言えば彼女はサイコパスでは無いだろう。
だが、とにかくその特徴がサイコパスのソレと酷似している。
ひたすらに正常な異常者。それがその真実。

どうする、どう動けばいい。考えろ。考えるしかない。
怖い。勿論怖い。
相手は妄執者。半ば偏愛の檻に閉じ込められた獄囚。
何をするか分からない。何をしても不思議ではない。
だが、完全に精神に害を及ぼしている人間と比べて彼女は恐ろしい程に冷静で、賢い。

この場を乗り切るための最善の策を考えろ。
彼女の一人の男性に対する執着心。
そしてその男性を傷付けた男に対する殺意。
この二つを上手く利用したプランは無いのか……。

そうだ。一つだけ、成功する可能性の高い案がある。
とはいえ、コレは実行に移すのを酷く躊躇ってしまうような……最悪の策だ。

(四葉ちゃん、ゴメンなさいなの。
 これからあなたの死を冒涜するような真似をする私を許して欲しいの)

「……楓さん、見るの」
「だから稟くんは…………え?」
「デイパック、三つあるの」

446 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:24:02 ID:TbJUKP40
その場には確かに三つのデイパックがあった。
ことみの物と亜沙の物と、そして『四葉のデイパック』が。
息を一度、大きく吸い込む。怯えるな。行け。

「私と亜沙さんも……仲間を殺されたの」
「……リンちゃん?」
「違うの。やったのは……ハクオロという男なの」

その名前を出すしかなかった。
今までの楓の独白から考えるのに、今現在彼女にとっての最大のNGワードは『男』だ。
やった人間が分からない、と言うのでは信憑性を疑われる。
しかし全く知らない人間をいきなり巻き込むのはいくらなんでも私には不可能だ。
だから、私が知っている唯一の"悪人に近い人間"の名前を出した。

「ハクオロですか。大丈夫ですよ、ことみさん。その男も私が殺して差し上げます」

楓が私に向かって微笑んだ。
まるで天使のようで、それでいて悪魔のようにも見える本当に魅力的な笑顔。
ゾッとした。痒い、全身が痒い。
どうしてあなたはそんなに笑っていられるの?
人を殺す事を肯定していながらも、どうしてそんなに平気な顔をしていられるの?

分かっている。私も最低だ。
おそらくハクオロが四葉を殺した……という可能性は極めて高い。
とはいえ、100%という訳では無いのだ。99%には近いが。
ほんの僅かな可能性ではあるが、他の人間がやったというラインも考えられなくは無い。

それに一人の少女を殺した殺人犯だと分かっていても、その人間を殺す事が是認されるかと言えばそんな訳が無い。
どこぞの教典では無いのだ。『目には目を、歯には歯を』ではいつまでたっても憎しみの連鎖は終わらない。
それでも。
今を生きるために、他人に他人を殺す事を懇願する……その選択肢を選ぶしか無い自分が情けなかった。

447 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:24:17 ID:HLETnOIX



448 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:24:57 ID:HLETnOIX



449 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:24:57 ID:Qr0cXGJC
   

450 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:24:59 ID:c1xKZk4H
   

451 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:25:09 ID:TbJUKP40
戦って勝とう、という意志は完全に消え失せていた。
感じる。彼女は強い。そして自分では絶対に勝てない事を。
そしてソレは身体的な何かでは無く、精神。
その心を支えるのはたった一人の男性への愛。だが単純で、それでいて純粋な愛。
唯一無二の存在のため、全てを駆けて戦う意志。
それが彼女、芙蓉楓。

「お願い……するの」





「そういえば……亜沙先輩はどうして眠っていられるんですか?」
「亜沙さんは魔法を使ったの。これはその影響なの」
「魔法?亜沙先輩が魔法?おかしいなぁ、先輩人間……ですよねぇ。
 亜麻さんもどう考えても神界や魔界の方には見えませんし。
 ……まぁいいか。それでは、私はそろそろ行きますので亜沙先輩に伝言をお願いします」

私はこくん、と頷いた。気が狂ってしまいそうなくらいの焦燥を隠しながら。
今一番大切な事は出来るだけ早く、彼女にこの場から消えてもらう事だから。

――もしも今、恋太郎が帰ってきたら。
最悪だ。考えるのも嫌になる。
おそらく彼女は自分も、恋太郎も殺すだろう。眠っている亜沙さんに関しては分からない。
だが、それだけは避けなければならない結末だ。

「私は稟くんのいる神社に向かいます。お二人の目的も稟くんを探す事ですから、先輩が目覚めたら追って来てください」
「了解なの」
「……そういえば、ことみさん。良いものを持っていますね」
「良いもの……?」
「ほらあなたの側にある、その……大鉈の事です」

452 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:25:50 ID:TbJUKP40

何故急に、そんな事を言い出すのだろう。
早く神社に向かわなければいけないのでは無かったのか。
どうしてそんな、デパートのおもちゃ売り場でゲームやカードに群がる純粋な子供のような目をしてこちらを見ているのだ。
いけない、早くこの話題を断ち切らなければ。

「コレに目を付けるとは中々お目が高いの」
「ええ……羨ましいです」
「でもあげないの。これは私のなの。でも、コッチならやらん事もないの」

そういって私は未だにオレンジ色のゲル状の物体が付着した小麦色のパンを差し出した。
さすがに鉈を差し出すのは最後の選択にしたい。
大体恋太郎はオーバーすぎるのだ。
このパンもジャムも、正直少々ファンシーな味をした人を選ぶ食べ物、と言った所だろう。

「わぁ、美味しそうなパンですね。ありがとうございます。
 でも……」
「わ、分かったの。そんな眼で見ないで……。
 これもあげるの。ほら、いいから早く行くの、稟が危ないの」

そう言って恋太郎がいる方向とは正反対の方向を指差す。
苦肉の策。
なぜなら恋太郎は今、"神社のある方向"にいるのだから。

「……嫌だなぁ。ことみさん。
 そっちは真逆じゃないですか。神社はこっち、ですよ。
 それでは、また」

楓は笑いながら私の指先とは反対の方向に向かって走っていく。
左手に拳銃を、右手に大鉈を持って。



453 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:26:10 ID:c1xKZk4H
     

454 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:26:15 ID:HUkprzPN
 

455 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:26:17 ID:HLETnOIX



456 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:26:59 ID:HUkprzPN
 

457 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:27:02 ID:HLETnOIX



458 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:27:04 ID:Qr0cXGJC
   

459 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:27:11 ID:TbJUKP40
駄目だ、そっちは駄目だ。駄目だ。その先には恋太郎がいる。おそらく、もうすぐ帰ってくる。
二人が出会ったらどうなる?
恋太郎はデイパックこそ持って行ったが、武器は何も持っていない。
対する楓は自動拳銃に大鉈。他にも何か持っているかもしれない。

地面に転がったマシンガンに手が触れる。銃を握る。
右手が震える。撃てる?今なら、背中を見せている今なら撃てる?
安全装置を外す。震える左手で外す。
構える。ブルブルと手が震える。
照準は合っているのか、分からない。でも、いい。関係ない。
撃て、撃て、撃て。ゴーファイア、だ。





「う……気持ち悪い。コレだけ出したのに……糞ッ」

恋太郎は丁度出す物を出して、ことみ達がいる場所に帰る途中だった。
去り際ことみにあんな事を言われたために、何となく遠くの方まで来てしまった。
まぁいざ三人で移動となって、自分の吐瀉物と出くわす羽目になるのだけは避けたかった、という理由もあるのだが。

「あのパン……人の食うもんじゃねぇ……ジャムもだ。
 作った奴の顔が見てみたいくらいだ」
「あの、すいません」
「え?」

突然、声をかけられる。振り向く。
少し先。四、五メートルくらいの距離だろうか。そこに一人の少女が立っていた。
オレンジ色の髪に細くて真紅のリボンを髪に巻いている。
俯いているために、顔はよく見えない。だが直感的にかなりの美少女だと推測出来た。

460 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:28:01 ID:JCAk+5H9
支援

461 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:28:23 ID:HUkprzPN
 

462 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:28:28 ID:HLETnOIX



463 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:28:31 ID:TbJUKP40
だが問題が一つ。彼女は帯銃している。左手に拳銃を握りこちらに向けているのだ。
右手は後ろ手に回され……何かを隠しているように見えた。

「お一人ですか?」
「……いや、すぐ近くに仲間がいる。ああ、そんな警戒しなくていいぜ。俺は戦う気なんてねーよ。
 だからその……銃?降ろしてくれねぇかな」

コレは恋太郎の本心だった。いきなりこんな森の中で男と会えば、警戒するなと言う方に無理がある。
それは分かっているが、流石に銃を向けられたまま会話をするのは難しい。
やはり何度撃っても気持ち悪いのだ。この"銃"という奴は。

「そうやって」
「え?」
「そうやって稟くんを騙したんですか。欺いたんですか。傷付けたんですか」
「ちょ、ちょっと待てよ!落ち着けって、な!
 大体俺は稟なんて奴会った事も……いや、稟?それって……」
「嘘だッ!!」

思わず萎縮してしまうような大声。
もしもこの森に鳥が居たとしたら、一斉に飛び上がってしまうかと言うくらい迫力に満ちた声。
そして、歪み上がった鬼神のような表情。
おかしい。何だこの娘は。
雰囲気が。
態度が。
声が。
様子が。
どう見ても正常な人間には見えない。
まさか、この状況で精神がどうにかしてしまったのか――。

「づッ!!な……が……」
「もういいです。死んで下さい」

464 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:28:46 ID:JCAk+5H9
支援。

465 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:28:50 ID:c1xKZk4H
    

466 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:29:08 ID:HUkprzPN
 

467 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:29:22 ID:TbJUKP40
空気の詰まった風船が割れるような、そんな乾いた音が三つ。立て続けに鬱蒼とした森の中に響いた。
一発は脇腹。
一発は肺。
一発は右肩。
痛みに膝を付く。左手は血の壁を撫でる様に這い、右肩を抑える。
それでも尚、血液が噴き出す。肺は空気を求め、喉を振るわせる。
来ない。入って来ない。空気が……抜けている?

「ぐぁ、あ……沙……ぁ……羅、双……樹ッ!!」
「痛いですか?恐ろしいですか?
 でも稟くんはもっと、もっと痛かったんです。辛かったんです」

気付けば蹲る恋太郎のすぐ側まで少女は接近していた。薄れゆく意識の中で朦朧と彼女を見上げる。
構えているのは……銃ではない?
銀色に鈍く光る、鈍重でそれでいて重厚な金属の固まり。
仲間が、ことみが持っていたはずの鉄の凶器。

「さようなら」

少女は大鉈で、恋太郎の頭蓋を打ち砕いた。





結局、走り去る楓を撃つ事は、自分には出来なかった。
彼女は人殺しだ。そしてこれからも人を殺す人間である事も分かっている。
乱戦状態で自衛のために相手を攻撃するのとは違う。
なぜなら、あの状況で自分が発砲するという事は明らかに能動的な攻撃だから。
恐慌状態とはいえ、ある意味理性的に彼女を殺す事は、私には出来なかった。
情けない、本当に情けない。自分で自分を怒鳴りつけてやりたい。
なんて無様。無力な自分が憎らしい。

468 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:29:27 ID:JCAk+5H9
支援

469 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:29:28 ID:HLETnOIX



470 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:30:06 ID:HLETnOIX



471 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:30:17 ID:c1xKZk4H
 

472 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:30:52 ID:HUkprzPN
 

473 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:30:56 ID:TbJUKP40
楓が目の前から消えて、数分が経った。
恋太郎は未だ帰ってこない。
不安が更に高まる。心臓が最大速で回る。

「恋太郎……早く、早く帰って来て……なの」

――パンッ、パンッ、パンッ。
え?

音。何か、空気の詰まった物が破裂したような。それでいてどこか呆気ない音。
近い、それも相当。
聞こえてきた場所は、楓と恋太郎が消えた茂みの奥。

「あ、あ、あ、」

何かが溢れて来た。止めなければ、止めなければいけない。
駄目だ、止まらない。どんなに瞼を閉じて、袖口を擦り付けても液体は流れ続ける。
まるで眼球が水道の蛇口にでもなってしまったような、そんな感覚。

死んだ、恋太郎が?本当に?
確かめに行くべきなのか、どうするべきなのか分からない。
四葉が死んだ時も自分は泣いた。でもあの時は恋太郎が側に居た。亜沙も起きていて、自分を励ましてくれた。

『だがな、ここで俺達がすることは泣き続ける事じゃない』

恋太郎は言った。涙を塞き止める事の出来ない自分に向けて。
そうだ、今私がするべき事。二人に頼る事の出来ない自分がやるべき事は――。

「亜沙さん、少し待っててなの」

もう一度、湿った目元を拭うと亜沙をそっと地面に寝かせる。
ことみは二人が消えた森の奥へと走り出した。

474 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:31:00 ID:HLETnOIX



475 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:31:33 ID:HUkprzPN
れんたろぉぉぉぉぉぉぉぉ!

476 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:31:41 ID:TbJUKP40
【双葉恋太郎@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン 死亡】


【D-4 神社目前/1日目 午前】

【芙蓉楓@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【装備:ベレッタ M93R(15/21) 鉈@ひぐらしのなく頃に 祭】
【所持品:支給品一式x2 ブラウニング M2 “キャリバー.50”(ベルト給弾式、残弾200) ベレッタ M93Rの残弾40、
 レインボーパンwith謎ジャム(半分)@CLANNAD&KANON、昆虫図鑑、.357マグナム弾(40発)】
【状態:神社に向け移動中 肉体的疲労(中)右腕に被弾(弾丸摘出済み・止血済み)制服左袖を切断】
【思考・行動】
基本方針:稟の捜索
1:何が何でも、最優先で稟を探す(神社へ)
2:稟を襲った可能性があるので、男性の参加者は皆殺しにする
(岡崎朋也の話を信用しているので彼は除くが、朋也の顔は忘れているのであくまで『春原陽平』を信用している)
3:その男性に知人がいる場合、分かる範囲でその人物も殺す
(竜鳴館のセーラー服を着衣している者は殺す)
4:リンちゃんも私と同じ……?
5:神社で出来れば亜沙とことみと合流したい。
6:朝倉純一、彼を守った少女を殺す。
7:ハクオロを殺す。
【備考】
稟以外の人間に対する興味が希薄になっている
朝倉純一の知人の情報を入手している。
水澤摩央を危険人物と判断
岡崎朋也を春原陽平と思い込む(興味がないため顔は忘れた)
朋也と(実際にはいないが)稟を襲った男(誰かは不明)を強く警戒→男性の参加者は稟と朋也(春原)以外全員警戒
鉄乙女は死んだと判断する
月宮あゆは自分に敵対しないと信用する(興味がないため顔は忘れた)
参加時期は原作シアルート終了時(Really?Really?は故に未通過)
※レインボーパンを食べた時、楓がどんな反応をするのかは次の書き手さんにお任せします。
※楓は左利きです

477 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:31:47 ID:c1xKZk4H
   

478 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:31:48 ID:JCAk+5H9
支援

479 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:32:14 ID:HUkprzPN
 

480 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:32:22 ID:TbJUKP40


【D-4 森/1日目 午前】

【一ノ瀬ことみ@CLANNAD】
【装備:イングラムM10(9ミリパラベラム弾17/32)】
【所持品:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』、四葉のデイパック】
【状態:肉体的に軽度の疲労、腹部に軽い打撲、精神的疲労極大】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:恋太郎の生死を確かめる
2:亜沙が目覚めるのを待つ
3:工場に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
4:鷹野の居場所を突き止める
5:朋也たちが心配
6:楓とネリネとハクオロを強く警戒

※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※首輪の盗聴に気付いています



481 :恋獄少女 ◆tu4bghlMIw :2007/07/02(月) 01:33:03 ID:TbJUKP40
【D-4 森/1日目 午前】

【時雨亜沙@SHUFFLE!】
【装備:無し】
【所持品:支給品一式、C120入りのアンプル×8と注射器@ひぐらしのなく頃に】
【所持品2:イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×8、ゴルフクラブ】
【状態:肉体的疲労極大、精神的に中度の疲労、魔力消費極大、気絶。左肩軽傷。ロングヘアー】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:???
【備考】
※恋太郎たちは危険ではないと判断しました。
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※C120は『雛見沢症候群』治療薬だが、健常者に使用すると10分以内に全身の発疹、発熱、瞳孔の拡大、妄想を引き起こす薬です。
症候群を抑えるには1日数回の注射が必要です。
亜沙・ことみ・恋太郎はC120の効果を知りません。



※亜沙の回復魔法は制限を受けて以下のような感じになっています。

回復魔法の発動には、魔力と体力の両方を大きく消費する。
治す怪我が酷ければ酷いほど、亜沙の消耗は激しくなる。
命に関わるような重傷は治せない。また切り落とされる等して、失った部位も治せない。


482 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:33:03 ID:HUkprzPN
 

483 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:33:20 ID:HLETnOIX



484 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:33:53 ID:HUkprzPN
 

485 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 01:34:35 ID:c1xKZk4H
   

486 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:19:42 ID:j6dbCxqS
薄暗い建物の中、金属の摩擦音だけが幾度と無く鳴り響く。

「――くそっ……、マジで硬いな……」

春原陽平は金物屋にて、特殊合金製のニッパーで手錠を断ち切ろうとしていた。
まだ手錠が切れていない所為で上半身こそ裸だが、腰から下はごく一般的なジーンズを履いている。

――陽平が涼宮茜と共にこの場所を訪れたのは、一時間程前の話だ。
市街地の中央部を出たとは言え、博物館に向かう道中には様々な建物が点在していた。
そこでまず陽平は手早く排泄を済ませ、続いて衣服を入手した。
そして手錠から解放されるべく、金物屋に立ち寄ったという訳である。

「……春原さん、まだなの?」

苛立ちを隠し切れぬ様子で、茜が問い掛ける。
彼女が憤るのも、至極当然の事だ。
手錠を切断するという作業は必要不可欠であるが、余りにも時間が掛かりすぎている。
宮小路瑞穂との約束がある以上、一刻も早く博物館に向かわなければならないのにだ。

「待ってくれ……もうちょっとだからっ……」

急かされた陽平は、滝のような汗を流しながらも、ニッパーを思い切り握り締める。
するとこれまでの努力の甲斐もあってか、バキンと大きな音を立てて、手錠の鎖が千切れ落ちた。
実に六時間振りの、自由の身。
計らずして、陽平は歓喜の声を上げる。

「やった! あんな頑丈な手錠を壊せるなんて、流石僕! そこに痺れる、憧れるぅ!」
「別に痺れないし憧れません! ほら、瑞穂さん達が待ってるだろうし、早く博物館に行くわよ」
「――わわっ、ちょっと待ってくれよ……!」

487 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:20:52 ID:j6dbCxqS

茜が早々に出発してしまった為に、陽平は慌てて荷物の整理に取り掛かる。
Tシャツを上半身に纏い、駆け足で茜の後を追う。
何処までも能天気な陽平を、年不相応に大人びた茜が引っ張っていく構図。
鎖が切れた所で二人の関係は変わりそうに無い――かのように思われた。




それから暫くして。
特に敵に出会う事も無く、二人は博物館の前まで辿り着いた。
二人共も大した武器は持っておらず、襲撃されれば一貫の終わりだったのだから、これは間違いなく僥倖と云える。
否――今回に限らず、これまで陽平と茜は一度も殺し合いに乗った人物と出くわしていない。
強いて言えば勘違いからトウカに襲撃された程度だが、あの時だって大きな苦労も必要とせずに凌ぐ事が出来た。
陽平も、茜も、信じ難い程に幸運だったのだ。
そして駄目な時は何をやっても裏目に出るというが、その逆もまた然り。

「あれは――」

何かに気付いた茜が、唐突に首を横へと回す。
陽平がその視線を追うと、その先から二人の少女――宮小路瑞穂とアルルゥが歩いてきていた。
陽平も茜も一目散に、瑞穂達の方へと走り寄った。

「……瑞穂さん!」
「陽平さん……茜さんも――ご無事で何よりです」

合流場所を決めていたとは言え、再び生きて会える保障など何処にも無かった。
故に一行は表情を緩めて、お互いの無事を祝い合う。
だがそんな中、一人だけ警戒心を露としている者が存在した。
その事にいち早く気付いた陽平が、疑問の言葉を発する。

488 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:23:15 ID:d5Sb5YGn
支援

489 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:23:46 ID:j6dbCxqS
「瑞穂さん、この子は――」
「あ、そうですね。……ほらアルルゥちゃん、ご挨拶して」
「…………」

促されたものの、アルルゥは瑞穂の背中に張り付いたまま離れようとしない。
極度に人見知りするアルルゥからすれば、この反応も仕方の無い事。
何しろ相手の一人は、数時間前に自分を驚かせた男なのだ。

「……困ったわね」

梃子でも動かないといったアルルゥの様子に、瑞穂も困惑気味の顔となってゆく。
だがそこで茜が、堂々とアルルゥの顔を覗きこんだ。

「――9点 10点 10点 10点 10点 9点 10点 10点 9点 10点! 合計97点!」
「あ、茜さん……?」

茜の顔には、今まで見せた事も無いような人懐っこい笑顔が浮かんでいる。
瑞穂が怪訝な表情となるが、構わず茜は軽快に言葉を続けてゆく。

「う〜ん、文句無しに可愛い子ねっ! 私は涼宮茜って言うの」
「………」
「ほら、何もしないからそんなに怖がらないで? 貴女の名前は?」

吟味するような視線を送ってくるアルルゥに対し、茜はあくまで優しく語り掛ける。
するとようやく少し警戒を解いたのか、アルルゥは一歩前に身を乗り出した。

「ん…………アルルゥ」

そうなってしまえば、後は簡単だった。
茜は持ち前の明るさ――この殺戮の島では、これまで影を潜めていたが――を存分に活かし、積極的にアルルゥへと話し掛ける。
瑞穂もそれを手助けする形で動いた為、すぐに茜達はアルルゥと打ち解ける事が出来た。
自己紹介や情報交換も滞りなく進んでゆき、四人は各々が辿ってきた道程や目的を話し終えた。

490 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:24:18 ID:HLETnOIX



491 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:24:43 ID:d5Sb5YGn
 

492 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:25:57 ID:j6dbCxqS
そこで陽平が、確認するように口を開いた。

「まずはこのまま此処で、アセリアって奴と蟹沢きぬって奴が、来るのを待てば良いんだね?」
「――はい、そうです。あれからだいぶ経っていますし、アセリアさんはそろそろ来る頃だと思いますよ」

……その筈だった。
アセリアが謎の襲撃者と一戦を交えたのは、2時間近くも前の話。
凶器を用いての戦いがそう長引くとは思えないし、もう博物館に到着しても可笑しくない時間だ――生きていれば、だが。

「そっか……それじゃ、僕はちょっとトイレに行ってくるよ。また前みたいな目に合うのは、ゴメンだからさ」
「あ、そうね。私も行こうかな……アルルゥちゃんも一緒に行っとこ。瑞穂さんはどうする?」

茜の言葉を受け、瑞穂は少し考え込んだ。
確かに行ける時に行っておいた方が良いのだろうが、出来れば女性と一緒に行きたくは無い。
普段から女装を強要されているのだから、女便所に行っても誤魔化す事自体は容易なのだが――まあ男として、極力避けたい行為ではあるのだ。
それにわざわざ一緒に行かなくても、近くにある民家やらで用を足せば事足りる。
そう結論付けた瑞穂は、『周囲の地形を把握しておきたい』といった言い分を用いて、その場を離れていった。


残された陽平とその仲間達は、特に瑞穂の行動を気にするといった風も無く、裏口から博物館の中へと侵入してゆく。
まず最初に、陽平達は職員用の事務室へと足を踏み入れた。
事務室の照明は灯されており、自分達が此処に来る以前に、誰かがこの部屋を訪れた事を暗示していた。
となると一応、襲撃される可能性も考慮しなければならない――故に陽平は、鞄の中からとある物を取り出した。

「――――フ、これっ……なら、敵が居ても…………ハア、一発、さっ…………!」
「「……………………」」

茜とアルルゥは心底呆れたといった様子で、目の前の光景を眺め見る。
陽平が取り出したのは、優に長さ2メートルはあろうかという巨大な鉄パイプ――博物館に来る道中、工事現場で入手したもの――だったのだ。
確かにその威力、その頑強さは、下手な刃物など比べ物にならぬだろう。
たっぷりと遠心力を上乗せしての一撃は、まともに当たれば敵を戦闘不能に追い込めるに違いない。
だが一つ、大きな問題がある。

493 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:26:51 ID:JCAk+5H9
支援。

494 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:27:13 ID:d5Sb5YGn
 

495 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:27:20 ID:j6dbCxqS
「…………アンタ、もしかしなくても馬鹿?」
「…………陽平お兄ちゃん、無理するの良くない」
「――――フッ、ハ、ハァ……平気……平気……僕の真骨頂は、ここからだぜっ……!」

茜とアルルゥの容赦無い言葉が、次々に陽平の胸に突き刺さる。
巨大鉄パイプの重量は凄まじく、陽平程度の膂力では持ち上げるので精一杯だ。
にも関わらず陽平は必死に鉄パイプを引き摺り、博物館の中を突き進んでゆく。
それは明らかに愚かな行為だったが、陽平としては少しでも強力な武器を携えて、仮初の安心を得たかったのだ。
陽平達は事務室を後にし、代わりと言わんばかりに展示場への扉を開け放つ。
瞬間、鼻をつく異臭が陽平の嗅覚を襲った。

「これは…………血の臭いっ!?」

この臭い、一度嗅いでしまえば忘れられる筈も無い。
新市街地で鳴海孝之を発見した時と同様に、展示場にも濃厚な死臭が満ちていた。
日の光が届かぬ薄暗い環境下では、遠目から部屋中の様子を全て把握しきる事は難しい。
故に陽平達は臭いの発生源を探るべく、慎重な足取りで歩いてゆく。
床は少し水で濡れていたが、歩くのに支障が無い程度には乾燥していた。
そして、陽平達は見てしまった。
赤い水溜りの上で寝そべる、首から上が消失した少女――朝倉音夢の死体を。
音夢の死体は無事な部位など何処にも無く、腹部からは内臓が零れ落ちていた。

「ぐっ……酷いな……」
「うぅっ……」

その光景を目の当たりにして、世界背景上死体を見慣れているアルルゥはともかく、陽平と茜は顔面蒼白となった。
新市街地で死体を見た時は、狂気に取り憑かれた鳴海孝之に意識がいっていたお陰で、多少は気を紛らわせれた。
だが今は違う。
陽平達はどんな映画よりもグロテスクな光景を、その双眸で直視してしまったのだ。
計らずして心の奥底から恐怖が沸き上がり、冷静な思考が奪い去られてゆく。
陽平と茜は唯只肩を震わせて、その場に立ち尽くす事しか出来ない。
その所為だろうか――正面玄関より侵入し、背後から忍び寄る存在にすら、気付けなかったのは。

496 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:27:39 ID:JCAk+5H9
支援

497 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:28:36 ID:JCAk+5H9
支援

498 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:28:46 ID:j6dbCxqS
「――動くな、武器を捨てろ」
「――――ッ!?」

突如後ろからかけられた、凍て付いた重い声。
陽平が巨大鉄パイプを捨て、背後へと振り返ると、そこにはコルトM1917を携えた死神が屹立していた。
男の銀髪はこの死地に於いても美しく輝き、身に纏った黒い服との対比がそれを一層際立たせる。
その男は、この島で一秒でも長く生き延びようと思うのならば、絶対に出会ってはならない存在だった。

「……国崎往人?」

茜が呆然と声を洩らす。
最高ボタンの説明書に、国崎往人の外見的特徴について書いてあったので、目の前の男が誰かは分かる。
かなりの長躯に、鋭い瞳、少し青みの混じった銀髪、そのどれもが説明書の記載と一致する。
だが説明書によれば国崎往人は、無愛想ではあるが心優しい人物の筈。
そんな男が何故、今自分達に銃口を向けているのだろうか。

「何故俺の名前を知っているかは知らないが、まあそんな事はどうでもいい。
 死にたくなければ、質問に答えろ」
「アンタ、殺し合いに……」
「――黙れ、お前達に質問する権利なんて与えるつもりは無い」
「う、ううっ……」

陽平は問い掛けようとしたが、言い切るよりも早く銃口を向けられてしまい、恐怖に顔が引き攣ってしまう。
こちらを射抜く絶対零度の視線、双眸の奥底に宿った紅蓮の炎。
こうやって対峙しているだけでも伝わってくる、圧倒的なまでの死の気配。
最早、訊ねるまでも無い。
眼前の男は間違いなく殺し合いを肯定しており、既に何人もの人間を屠ってきた屈強な殺戮者だ。
トウカと出会った時とは違い、説得など何の意味も為さない。
下手な言動、下手な行動を取ってしまえばその瞬間に殺されてしまうと、当然のように理解出来た。

陽平が萎縮したのを確認してから、往人は淡々とした口調で話し始める。

499 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:29:22 ID:JCAk+5H9
 

500 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:29:45 ID:7oRMeuqD
    

501 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:30:05 ID:j6dbCxqS

「俺は神尾観鈴という女を捜している。金髪にポニーテルの能天気そうな女だ」
「…………」
「観鈴の行き先に心当たりがあれば、包み隠さずに教えろ。嘘を吐くと自分の命を縮めるだけだと理解しろよ?」
「…………そんな奴、一度も見掛けてないよ」

陽平には、往人が観鈴を見つけてどうするつもりなのかは分からない。
もしかしたら何か恨みがあって、殺してしまおうと考えているのかも知れない。
だが見ず知らずの少女と自分達の命を天秤にかければ、どちらを優先するかなど決まりきっている。
だからこそ陽平は、素直に真実を口にした。
茜も陽平の言葉に対し、首を縦に振るばかり。

観鈴の居場所を知らないこの二人に、利用価値など欠片も無い――そう判断した往人は、何処までも冷徹に告げる。

「そうか――ならもう用は無い。悪いが死んで貰うぞ」
「――――ひ、うああっ……」

陽平の喉の奥底から、まるで自分のものでは無いような掠れた声が絞り出される。
陽平がちらりと視線を動かすと、朝倉音夢の惨死体が目に入った。
――自分もこうなってしまうのか?
そう考えると恐怖が際限無く膨れ上がってゆき、身体の震えがどんどん強まってゆく。
このままでは傍で寝そべる少女と同じように、自分も圧倒的な暴力の前に破壊し尽くされてしまうだろう。
そのような事態、絶対に許容出来ない。
自分にはまだまだやりたい事だってあるし、こんな所で殺されるような罪だって犯してはいない。

そんな陽平の内心を意にも介さず、往人が引き金を絞ろうとした時、事態は一変した。
薄暗い環境下である事に加え、陽平と茜に集中力を傾けていた往人は、もう一人の少女の存在を完全に失念していたのだ。

「……みんなをいじめるの、ダメ!!」
「ガ――――!?」

502 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:30:43 ID:JCAk+5H9
 

503 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:30:53 ID:7oRMeuqD
    

504 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:31:24 ID:JCAk+5H9
 

505 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:31:27 ID:j6dbCxqS

往人の即頭部を、大きな衝撃が襲った。
アルルゥが往人目掛けて、デイバックを思い切り投げつけたのだ。
往人は銃こそ取り落とさなかったものの、大きく体勢を崩してしまう。
そして、これは茜達に生まれた唯一にして最大の好機。

「――アアアアアアアッ!!」

恐怖を振り切り、甲高い雄叫びを上げて、茜が突撃を敢行する。
往人が苦し紛れに銃弾を一発放ったが、まともに照準をつけていない状態では、いかな強力な火器といえども敵を破壊する事は出来ぬ。
茜は大きな銃声にも足を止めず、武器を取り出す時間も惜しいと言わんばかりに、そのまま往人の腰に組み付いた。

「くっ、この――――」

茜は必死の思いで往人を押し倒そうとするが、予想以上に激しい抵抗を受け、なかなか狙い通りにはいかない。
いくら隙を突いたとは言え、そして茜は水泳部仕込みの優れた身体能力を持ってるとは言え、往人相手では体格が違い過ぎるのだ。
一人では、このまま往人を押し切るのは不可能だ。
……しかし二人掛かりなら別。
二人掛かりならこのまま往人を押し倒し、制圧しきれるだろう。
だからこそ、茜は仲間に向けて大きく叫び――――絶望した。

「春原さ――――っ…………!?」

有り得ない光景。
視界に映る背中。
茜が頼ろうとした仲間は――春原陽平は、出口に向かって一目散に逃げ出していた。
その事態を認めた瞬間、茜の頭は驚愕と絶望で埋め尽くされてしまう。
そして次の瞬間、腹部に奔る強烈な激痛。

「――仲間はもう少し選んだ方が良いぞ」
「う……あああ…………ぁ……」

506 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:31:58 ID:7oRMeuqD
    

507 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:32:13 ID:d5Sb5YGn
 

508 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:32:34 ID:JCAk+5H9
支援

509 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:33:07 ID:j6dbCxqS

往人の頑強な拳が、茜の腹をしっかりと捉えていた。
茜は苦しげな吐息を洩らしながら、大理石の床の上に崩れ落ちる。
茜が晒した隙を的確に突いたその拳撃は、一発で意識を刈り取るに十分なものだった。


    ◇     ◇     ◇     ◇


「――――ク、フ……ハ……、ハアッ……」

――死にたくない。
今陽平の思考を占めているのは、たった一つのシンプルなその思いだけだった。
生物の本能に従って生き延びるべく、陽平は一目散に博物館の外へ逃げ出そうとしていた。
裏口の扉を乱暴に押し開けて、脇目も振らずに敷地を出ようと走り続ける。
そして博物館の敷地から脱出を果たした辺りで、前方から一人の人物が駆けてきた。
それは銃声を聞きつけ、大急ぎ戻ってきた瑞穂だった。

「――陽平さん、何があったんですか!? 今の銃声は!?」
「……敵が博物館の中に現れたんだ! 銃だって持ってたし、今すぐ逃げないと危ない!」

銃を持っている――その言葉を聞いた瞬間、瑞穂の顔に強い焦燥の色が浮かんだ。
碌な武器も持っていない自分達では、銃に対抗するなど夢のまた夢。
万が一戦う事になってしまえば、結末は一つしか用意されていないだろう。
そう考えると陽平の言い分は妥当と判断しざるを得ないが、大きな問題がある。

「待ってください! 茜さんとアルルゥちゃんは、今何処に?」
「う…………」
「どうしたんですか!? 黙っていたら分かりません!」
「まだ、あそこに……」

510 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:33:22 ID:7oRMeuqD
    

511 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:34:06 ID:d5Sb5YGn
 

512 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:34:15 ID:j6dbCxqS

言い淀んでいた陽平だったが、瑞穂の気勢に押され、ようやく博物館の方角を指差した。
瑞穂は大きく息を飲んだ後、何かを堪えるような重苦しい声で、確認するように言った。

「……つまりこういう事ですか? 陽平さんは、茜さんとアルルゥちゃんを見捨てて逃げてきたと、そういう事ですか?」
「く――――だって仕方ないじゃないか! アイツ体もでけえし、すげえ恐ろしい目をしてた……逃げなきゃ殺されちまうよ!」
「…………」

瑞穂の返答を待たずに、陽平は早口で捲くし立てる。

「だから瑞穂さんも僕と一緒に逃げようよ! 今から助けに行ったって絶対間に合わないしさ!
 あいつらには悪いけど、自分の身には代えられねえよ! 知り合ったばかりの奴の為に、命なんて懸けられる訳がないからな! ほら、早く逃げよ――」
「……り……なさい……」
「――え?」

臆面も無く逃亡を主張してくる陽平だったが、瑞穂はそれを途中で遮った。
続けて心の奥底から、全力で叫んだ。

「――黙りなさいっ! 知り合ったばかりだろうと関係ない! アルルゥちゃんも、茜さんも、私の大切な仲間です!
 貴女は自分の安全しか考える事が出来ないのですかっ! 仲間を思い遣る事も出来ないのですかっ!」
「瑞穂……さん……?」

陽平の驚愕をよそに、瑞穂は凄まじい剣幕で続ける。

「分かっているの!? 今の貴方は最低です! 女の子を見捨てて逃げ出すなんて、それでも男ですかっ……。
 恥を…………恥を知りなさいっ!!」
「ちょ、ちょっと瑞穂さ――」

止める暇も無い。
瑞穂は己の内心を吐き出すと、もう陽平には目もくれずに博物館の中へと飛び込んでいった。
陽平はどうするか一瞬迷ったが、本能のままに博物館から離れるように走り始めた。

513 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:34:36 ID:7oRMeuqD
    

514 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:35:15 ID:7oRMeuqD
    

515 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:35:44 ID:JCAk+5H9
 

516 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:35:47 ID:j6dbCxqS

確かに瑞穂の言い分には一理あるし、この島に連れてこられる前なら共感出来ただろう。
勢いで口にした事とはいえ、瑞穂を守ると宣言した事だってある。
陽平にも仲間を守りたいという気持ちは当然あるのだ。
しかし、である。

「何が恥を知りなさい、だよ……死んじまったら、そこで終わりじゃないか!」

結局、先程味わった恐怖には打ち勝てなかった。
今博物館の中に戻ったら、またあの恐ろしい男と対峙しなければならない。
そして次はもう、逃げ切る事など適わぬだろう。
今仲間を助けに行けば、間違いなく自分は殺され、無惨な死体の仲間入りを果たしてしまうのだ。
そう考えると、自ら死地に身を投じるなど、絶対に有り得ない選択肢となっていた。

「うぅ――――クソ……、なんでこんな事に…………どうして僕が殺し合いなんか……! もう嫌だ、助けてくれ岡崎っ……!!」

顔を涙で汚しながら、親友の姿を求め、陽平は独り走り続ける。
瑞穂に対して抱いていた恋心も、仲間に対する思い遣りもかなぐり捨て。
不甲斐ない自分と理不尽な状況への怒りと、死に対する絶対的な恐怖を胸に秘めて。


    ◇     ◇     ◇     ◇


場所は移り変わり、博物館の展示場。
国崎往人は、倒れ伏す茜に対しコルトM1917の銃口を向けた。
また一人、この島から邪魔者を消し去る為に。
観鈴を守り抜く為に。
だがそんな往人を妨げる少女が、この場に一人存在している。
アルルゥは往人の前に立ち塞がり、真っ直ぐな視線を送った。

517 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:36:17 ID:7oRMeuqD
    

518 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:36:48 ID:j6dbCxqS

「……だめ! 茜お姉ちゃんが死ぬのやだ」
「――――ッ!? お、お前は……」

往人の心に動揺が走る。
先程まではじっくりと観察する余裕が無かったが、こうやって正面から対峙すると、目の前の少女は余りにも似過ぎていた。
自分が最初に殺した少女、エルルゥに。
となると、まさかこの少女はエルルゥの――
往人が結論に思い至るとほぼ同時、アルルゥが口を開いた。

「アルルゥのお姉ちゃん、死んだ。カルラお姉ちゃんも…………死んだ。これ以上……誰かがいなくなるの、やだ」

言葉を紡ぐアルルゥの声は、悲痛な響きを伴っていた。
聞いているだけで胸が張り裂けそうになるような、そんな声。
まだ年端もいかぬ少女のものとは思えぬ程、悲しい声。
それを耳にした往人は、自身の心が凄まじいまでの痛みに襲われるのを感じた。
自分は、この少女から姉を奪い取ったのだ。
一生掛けても癒し切れぬであろう、何処までも深い傷を、少女の心に刻み込んでしまったのだ。
アルルゥだけでは無い。
これまで殺してきた佐祐理にも、エスペリアにも、大切な人間は居ただろう。
自分は多くの人間から、掛け替えの無い存在を奪い取ってしまったのだ。

「お兄ちゃんは……どうして人を殺そうとする? 皆も――お兄ちゃんも悲しくなるだけなのに、どうして?」

どうして――決まっている、観鈴を守る為だ。
自分はその為に修羅になると、心に決めた。
今更道を変えるつもりなど毛頭無い。
相手が誰であろうとも関係無い。
観鈴が生き延びる為には、生き残りが一人にならなければならいのだから、無害な人間であろうとも殺す。
それが自分の決意。
自分には言い訳する事も、謝罪する事も、決して許されない。

519 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:37:15 ID:7oRMeuqD
    

520 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:38:09 ID:j6dbCxqS


「――おやめなさいっ!」
「……瑞穂お姉ちゃんっ!」

そこで、瑞穂が現れた。
その手には、小さな投げナイフがしっかりと握り締められている。
新たなる来訪者の登場を受けた往人は、一瞬だけ驚いたが、すぐに気を取り直した。
敵が一人増えた所で、自分の圧倒的優位は揺るぎようが無いのだ。
コルトM1917の銃口をすっと動かし、瑞穂に照準を合わせる。

「……誰だか知らないが、死にに来たのか? そんなナイフ一本で現れるなんて、正気の沙汰とは思えないな」
「正気でないのは貴方の方です! そんな子供を殺そうとするなんて、何を考えているんですか!」
「子供かどうかなんて関係無い。俺はどんな手を使ってでも、大切な人間――観鈴を絶対に守りたいと思う。だから観鈴以外は全員殺す、それだけだ」

心は痛むし、涙だって流したが、自分の選んだ道に迷いは無い。
だからこその言葉だったが、瑞穂は全力でそれを否定する。

「大切な人を守る為に戦う、ですか……。けれど貴方はその観鈴という方にまで、大罪を背負わせようとしているのですよ!」
「大罪――だと?」

往人の顔に、僅かな動揺の色が浮かび上がった。
瑞穂の澄んだ瞳と言葉が、往人の心を射抜いてゆく。

「この島に連れてこられた60人以上の命を引き換えに生き延びる――これを罪と云わずして、何と云うのですか?
 貴方はそれだけの重荷を、観鈴さんに背負わせる気ですか?」
「み……すずに……俺は……」

521 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:38:20 ID:7oRMeuqD
    

522 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:39:00 ID:d5Sb5YGn
 

523 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:39:20 ID:j6dbCxqS

これまで幾度と無く説教なら受けてきた。
人殺しなどもう止めろと、諦めずに皆で力を合わせようと、言われ続けてきた。
そして自分はそれらを全て振り切って、修羅として戦い続けてきた。
だが、観鈴に罪を背負わせているなどといった事には、考えが及ばなかった。
そうだ――自分が目的を果たした場合、観鈴は60人以上の命を犠牲にして生き延びる。
自分だけではなく観鈴もまた、どうしようもないくらい大きな罪を犯してしまう事になるのだ。

「私は観鈴という方がどんな人か知りません……。ですがそんな方法で命を救われても、その先に幸福などあるとは思えません」
「く…………うう……」

たとえ本人の意志で無かったとしても、多くの人間を死なせてしまった咎は、観鈴の心を締め上げ続けるだろう。
償う事すら許されない。
死んでしまった人間は決して蘇らない。
失われてしまった命は決して取り戻せない。
この殺戮の島から只一人生き延びた所で、観鈴の将来に輝きなど在りはしないだろう。
それでも――それでも自分は、観鈴に生きていて欲しいから。

「う……あああああああァァァァアアッあああ!」

往人は全てを振り切るように叫んだ後、引き金を引こうとして――

「やだあああああっ!!」

刹那のタイミングで、アルルゥが瑞穂の前に飛び出した。


    ◇     ◇     ◇     ◇

524 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:39:38 ID:7oRMeuqD
    

525 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:40:14 ID:7oRMeuqD
   

526 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:40:15 ID:j6dbCxqS


「―――――――――っ」

風を受けて靡く水色の髪に、美しく澄み通った青い瞳。
アセリアは一心不乱に、博物館目指して駆けていた。
制限されているとは言え、スピリットであるアセリアの身体能力は常人とは桁が違う。
その優れた聴覚が、博物館の方角から聞こえてきた銃声を拾い上げたのだ。
恐らくは、アルルゥ達が何者かに襲撃されているのだろう。

体力を相当消耗してしまったが、それでも急がねばならない。
自分はまだ、あの時の気持ちが何なのか確かめていない。
アルルゥのつぶらな瞳で見つめられた時に感じたものは、一体何だったのだろうか。
アルルゥや瑞穂、蟹沢きぬと一緒に蜂の巣を食べた時、自分は何を思ったのか。
どうして戦いに関係の無い事が、こんなにも気になるのか。

「……ん、分からない」

戦う事しか知らぬ筈の自分が、初めて戦い以外に興味を持てた。
だから自分はアルルゥとまた会って、確かめねばならないのだ。
それまで誰にも、アルルゥを殺させたりはしない。

アセリアは生い茂る雑木林を抜け、新市街の一帯に足を踏み入れる。
すると大きな博物館の姿が目に入った。
周囲に点在する建物などには一瞥もくれず、博物館の中に飛び込む。
それとほぼ同時にすぐ近くから銃声が鳴り響いた。
アセリアは展示場への扉を蹴破って――大きく目を見開いた。

「ミズホ…………アル……ルゥ………?」
「アセリア……さん…………アルルゥちゃんが…………私を、庇ってっ……!」

527 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:41:06 ID:JCAk+5H9
 

528 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:41:26 ID:7oRMeuqD
   

529 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:41:28 ID:j6dbCxqS

アセリアの視線の先で、瑞穂が泣いていた。
その腕の中で、血塗れとなったアルルゥが眠るように瞳を閉じている。
まだ呼吸はしているものの、その吐息はひどく弱々しい。
そこから少し離れた所で、見知らぬ男がこちらに向けて銃を構えていた。
考えるまでも無い。
あの男――国崎往人が、アルルゥを撃ったのだ。
その事実を正しく認識した瞬間、アセリアに激しい変化が訪れた。
永遠神剣に戦いを求められた時とは比べ物にならぬ程、激しい破壊の衝動が湧き上がってくる。
この気持ちが何なのか、分からない。
だが一つだけ、分かる事がある。
目の前の男は、確実に敵なのだ――ならば、破壊の衝動を抑える必要など無い。
アセリアの視線と往人の視線が衝突した。

「……敵。それなら倒すだけ」

体格が違う。
往人とアセリアは、身長にすれば実に30センチ近い差がある。
それに加えてアセリアは、此処に来るまでの過程で体力を大幅に消耗している。
得物が違う。
一撃で人を殺し切れるコルトM1917と、何時壊れても可笑しくない鉄串では、そもそも勝負にすらならない。
起こり得るのは一方的な虐殺だけの筈だ。
だというのに。
アセリアは何の迷いも無く、眼前の死神に斬りかかった。

530 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:42:06 ID:7oRMeuqD
   

531 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:42:17 ID:d5Sb5YGn
 

532 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:43:05 ID:j6dbCxqS


「……せやあああああっ!!」
「何ッ――――!?」

突風が渦巻き、展示場内の空気が振動する。
既にボロボロとなっている鉄串を手に、青い剣士が疾駆する。
余りにも現実離れした、有り得ない速度での突撃。
往人が照準を定めるよりも早く、アセリアはその懐へと潜り込んだ。
恐るべき勢いで鉄串が突き出される。
驚愕に顔を歪めた往人が必死に上体を傾けるが、遅い。
心臓目掛けて繰り出された刺突は、往人の左肩を掠めていた。

「ぐっ、ああああ……!」

アセリアは素早く鉄串を引き戻し、第二撃の準備に入る。
戻りの隙など何処にも存在しない。
圧倒的な身体能力と洗練された技術を持つアセリアは、間違いなくこの島で最速の剣士だ。
往人が銃を構えるよりも早く、それどころか呼吸をするよりも早く、アセリアの体勢は整った。
そして先の一撃が躱された以上、同じ方法で攻め続けなどしない。
刺突はその性質上、連続して攻撃を仕掛けるのは難しい。
故にアセリアは、剣を扱うかのように鉄串を振り回す。

「ハアアアァァァッ!!」
「うあっ、ぐっ、ガッ――――」

一発、二発、三発、四発――秒に満たぬ時間で繰り出された連撃は、全て往人の身体を捉えていた。
先の刺突が敵を仕留める為のものならば、今放たれた殴打は敵を弱め、後への布石とする為のもの。
たたらを踏んで後退する往人に対し、アセリアは鉄串を横凪ぎに振るう。

「……ガ、ハ――――」

533 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:43:09 ID:JCAk+5H9
 

534 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:43:35 ID:7oRMeuqD
   

535 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:44:28 ID:j6dbCxqS

胴体部を強打された往人は、後方へと大きく弾かれる。
往人の顔は激痛に歪んでおり、余裕など欠片も無いのが窺い知れる。
その機を外さず、青い影が往人に飛び掛る。
往人の横を疾風が通過するのと同時に、往人の左足に鈍痛が走った。
アセリアが目にも止まらぬ動作で、鉄串による殴打を繰り出したのだ。
続けてアセリアは横一文字に鉄串を振るったが、往人はぎりぎりのタイミングで後ろに飛び退いた。

「う……アアアアッ!!」

往人は激痛を噛み殺し、アセリアに向かって銃弾を放つ。
近距離で放たれる銃弾は、スピリットと言えど制限されている現状では回避不可能。
だがそれは、見てから躱そうとすればの話。
戦いに生きてきたアセリアが、優勢に慢心し、拳銃への警戒を怠るなど有り得ない。
往人が引き金を絞った瞬間にはもう、アセリアは横に飛び跳ねて、銃の射線から身を外していた。


「クソ……化け物めッ!」

往人は大きく間合いを取り、心底忌々しげに歯軋りした。
人外の実力を持った敵と対峙したのは、今回が初めてではない。
往人は鉄乙女と互角の戦いを繰り広げ、一度敗れたとは言えエスペリアだって倒してみせた。
その往人ですら、まるで手も足も出ない。

それ程に、アセリアは圧倒的だった。
まだ自覚していないとはいえ、流されるのではなく、己の意志で戦い始めた彼女に敵う人間など存在しない。
スピリットにはスピリットでしか対抗し得ない。
だが――余りにも得物の状態が、そして自身の体の状態が悪過ぎた。
傷付いた往人を仕留めるべく、アセリアが前傾姿勢を取った時に、それは起こった。

536 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:44:35 ID:JCAk+5H9
 

537 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:44:55 ID:eF/9VwhD
 

538 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:44:57 ID:7oRMeuqD
   

539 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:45:34 ID:d5Sb5YGn
 

540 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:46:03 ID:j6dbCxqS

「え……?」

戦いの顛末を見守っていた瑞穂が、呆然と声を洩らす。
アセリアの手にしていた鉄串が、突如音も立てずに砕け散った。
度重なる苦行の所為で、とうとう鉄串の耐久力が限界を迎えたのだ。
更に、不幸は連続して訪れた。

「…………う、ッ―――」

アセリアが僅かに顔を歪め、その身体が力無く傾く。
糸が切れた操り人形のような、ガソリンが切れた自動車のような、そんな様子だった。
アセリアの変調を察知した往人は、間髪置かずに銃弾を放った。
狙いは一番面積が広い、胴体部だ。
アセリアは刹那の判断で、身体を横に半回転させた。
的を失った銃弾は、アセリアの脇腹真横を通過してゆく。
だが、その程度で往人の攻撃は終わらない。

「……食らえっ!」
「ク――――!?」

今度は続け様に二回、銃声が鳴り響いた。
今まで初めての、連続攻撃。
一発目はともかく二発目の銃弾は、軌道を見切れなかった――故に、最低限の動作で躱すのは危険過ぎる。
アセリアは懸命に地面へと転がり込んで、何とか命を繋ぐ。
明らかに余裕の無い、綱渡り的な回避だった。


(おかしい……アセリアさんに何が……?)

541 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:47:51 ID:7oRMeuqD
   

542 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:47:57 ID:d5Sb5YGn
 

543 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:48:00 ID:j6dbCxqS

瑞穂の脳裏に、大きな疑問が浮かび上がる。
傍目から見ても、先程までのアセリアに比べ、大きく動きが落ちてしまっている。
一体何故――瑞穂は少し考えたが、乱れるアセリアの呼吸を見て取って、一つの答えに辿り着いた。

「アセリアさん…………まさか此処まで、一度も休まずに走ってきたの?」
「…………ん」

アセリアの返事は要領を得ないが、その頬を伝う汗が瑞穂の言葉を肯定していた。
此処に来た時点で既に、アセリアには長期戦に耐え切れる程の体力が残っていなかった。
そして一気に勝負を決めれなかった所為で、遂に体力が底をついてしまったのだ。

「……もう良いわっ! 此処は私が食い止めるから、アセリアさんだけでも逃げて!」

瑞穂がナイフを手に立ち上がり、アセリアに逃亡を促す。
これ以上仲間を死なせたくなった――たとえ自分の身を、犠牲にしてでも。
銃を持った往人に勝てる可能性など1%にも満たぬが、それでも戦うつもりだった。

「ミズホは私を……守る気?」
「ええ、そうよ――だから早く逃げて!」
「どうして、ミズホが戦う? ミズホ……スピリットじゃない」

アセリアには分からなかった。
瑞穂はどう見ても只の人間であり、高嶺悠人のようなエトランジェでは無い。
この場にはスピリットの自分がいる以上、人間が直々に戦う事など有り得ない。
少なくとも、自分が生きてきた世界ではそうだった。
しかし次の瞬間瑞穂が発した言葉は、アセリアの常識からは考えられぬような内容だった。

「スピリットだとか、人間だとかよく分からないけど……貴女は私やアルルゥちゃんの大切な仲間!
 守ろうとするのは当たり前じゃない!」
「私が……仲間……?」

544 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:49:20 ID:7oRMeuqD
   

545 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:49:55 ID:j6dbCxqS

そこまで言われてようやくアセリアは、自分がこれまで感じていた気持ちの正体を、少しだけ理解した。
この島の人間は、自分が元々暮らしていた世界の連中とはまるで違う。
アルルゥや瑞穂は、自分を対等な存在として、仲間として、大切にしてくれたのだ。
そんな彼女達と一緒に居ると、心が安らいだのだ。
だからこそ――アセリアは明確な意思を以って、瑞穂の言葉に抗う。

「ありがとう、ミズホ……。でも、消滅する時まで戦う……それが私だから、逃げる訳にはいかない」
「アセリアさんっ……!」

アセリアは傍に落ちていた巨大な鉄パイプ――陽平が捨てていったもの――を拾い上げた。
それは万全の状態ならばともかく、疲弊している今のアセリアでは扱い切れぬ得物だった。
試し切りと言わんばかりに数回振るったが、その速度は常人の剣戟にも劣る。

瑞穂とアセリアのやり取りを傍観していた往人が、すっとコルトM1917の銃身を持ち上げる。

「……まだやるつもりなのか。良いだろう――俺が全てを終わらせてやる」

往人の乱れていた呼吸は既に落ち着いており、銃に新たな弾丸だって装填した。
全身に鈍痛が残っているが、戦いに支障が出る程では無い。
最早往人とアセリアの戦力比は、完全に逆転していた。

対峙する二人の戦士。
巨大な鉄パイプを構えた少女と、圧倒的な死を運ぶコルトM1917により武装した男。
アセリアの残体力を考慮に入れると、次の一合が最後の戦いとなるだろう。
次の一合で仕留め切れねば、間違いなくアセリアは倒される。


――――――これが正真正銘、最後の衝突。

546 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:49:55 ID:d5Sb5YGn
 

547 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:50:14 ID:7oRMeuqD
   

548 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:51:15 ID:JCAk+5H9
 

549 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:51:16 ID:7oRMeuqD
   

550 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:51:44 ID:j6dbCxqS


「ヤアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

裂帛の気合を乗せた戦叫を上げ、アセリアが前方に駆けた。
間合いを詰められる事を防ぐべく、往人がコルトM1917のトリガーを絞る。
アセリアは地面に手を付き、上体を屈めてやり過ごした。
先程まではただの一飛びで躱せていたのに、今の状態ではそれが限界なのだ。
その動きは最早スピリットのソレでは無く、普通の人間と何ら変わらぬものだった。

対する往人は、幾ら相手が疲弊しているとは言え、一撃で勝負が決めれるなどとは思っていない。
体勢の崩れたアセリアに向けて、続けざまに二発の銃弾が放たれる。

アセリアは強引に地面を蹴り飛ばし、横に飛び跳ねる事で、迫る死からどうにか身を躱した。
だが往人は残酷なまでの冷静さで、その動きを予見していた。

「――――フィニッシュだ」

無茶な動きを繰り返した所為で、次の動作に移れないアセリアに、冷たい銃口が合わされる。
銃声が鳴り響き、勝負が決すると思われたその直前。

「アセリアさん――――!」
「…………っ!?」

アセリアの身体を抱き抱えて、瑞穂が跳躍した。
そのまま瑞穂は、アセリアの手の上から鉄パイプを握り締める。

「私も戦うわっ!」
「…………ん!」

551 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:52:05 ID:7oRMeuqD
   

552 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:52:18 ID:d5Sb5YGn
 

553 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:52:38 ID:j6dbCxqS

二人は疾風と化して、目の前の強敵に向け突撃する。

「何だ、と――!?」

先の一撃で勝負が決まると確信していた往人は、反応が大きく遅れてしまっていた。
たちまち瑞穂とアセリアは、往人を射程範囲内に捉えた。


「……あああああああああああああっっ!!!」
アセリアの叫び。
ようやく分かってきた――自分はアルルゥ達と一緒に居たかったのだ。
アルルゥ達と一緒にいると、心が暖かくなってくるのだ。
だから、これからは守る為に戦う。


「……このおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
瑞穂の叫び。
アルルゥはもう助からないかも知れない――けれどこれ以上、仲間を失いたくない。
自分の安全などどうでも良い。
何としてでも、残った仲間は守りきってみせる。

仲間を守りたい――今、二人の気持ちが重なった。

恐るべき勢いで、鉄パイプが横一文字に振るわれる。
往人が左腕でそれを受け止めようとしていたが、そんなものは関係無い。

往人がどれだけ強い想いを秘めていようとも、二人分の想いには敵わない――――!

554 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:53:16 ID:d5Sb5YGn
 

555 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:53:24 ID:7oRMeuqD
   

556 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:53:42 ID:j6dbCxqS


「……ぐがああああああっっ!!」

鉄パイプは防御して尚、十分過ぎる程の威力を発揮した。
往人の左腕の骨は砕かれ、且つ脇腹の骨にまで罅を刻み込まれた。
そして、それ程の衝撃ならば、その場で踏み止まれる筈が無い。
往人は大きく後ろに弾かれて、地下室へと通じる階段を転げ落ちてゆく。
常人なら戦意を失うどころか、意識を手放してしまっても不思議でない程の一撃。
それでも往人は、恐るべき執念を発揮する――右手に握ったコルトM1917だけは、未だ手放していなかった。

瑞穂は僅か数秒間で、次に何を為すべきか理解した。
一瞬の判断で、地面に落ちている首輪――朝倉音夢の物――を拾い上げてから、叫ぶ。

「アセリアさん、今よ! アルルゥちゃん達を連れて逃げましょう!」
「…………ん。分かった」

今追撃を仕掛ければ往人を倒せるかも知れないが、返り討ちにされる危険性も残っている。
そしてこの戦いは、敵を殺す為ではなく、仲間を守る為のものだ。
ならば無理にリスクを犯す必要は無い。
体力を消耗しきったアセリアでも、小柄なアルルゥ程度なら何とか持ち上げられる。
アセリアはアルルゥを抱き抱え、瑞穂は茜を抱き上げて、素早く駆け出した。
まずは安全な場所に避難して、それからアルルゥの治療を試みるのだ。


    ◇     ◇     ◇     ◇


「――――ぐあ、くぅ……盛大にやられたな…………」

557 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:54:05 ID:7oRMeuqD
   

558 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:55:02 ID:7oRMeuqD
   

559 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:55:26 ID:j6dbCxqS

瑞穂達が逃亡してから五分後に、ようやく往人は階段の上まで昇って来ていた。
正直な話、瑞穂達が逃げてくれて助かった。
先程追撃を仕掛けられていたら、自分は間違いなく敗北していただろう。
銃を握り締めた右腕だけは無事だったものの、骨を砕かれた左腕はもう碌に動かせない。
階段を転がり落ちた衝撃で、身体の至る所に打撲も負っている。

それでも、休んでいる暇などありはしない。
今この瞬間も、観鈴が危険に晒されている可能性があるのだ。
一刻も早く見つけ出し、保護してやらなければならないだろう。
その道中で見つけた人間は、全員殺す。
自分がどれだけ傷付いても構わない。
どれだけこの手を汚そうとも構わない。
観鈴が罪の意識に苛まれようとも、戦い続ける。

それが自分の決意――そしてこれまで殺してきた者達への、最低限の礼儀だから。
今更後戻りは許されない。
手を取り合って生きていくなど、許容される筈が無い。
自分は最期まで修羅として在り続けるのだ。


    ◇     ◇     ◇     ◇


「アルルゥちゃん、しっかりして!」

博物館から数百メートル程離れた民家の中で、瑞穂の悲痛な声が木霊する。
ベッドの上で寝そべるアルルゥを、瑞穂とアセリアと、意識を取り戻した茜が、看取ろうとしている。
簡単な治療道具は見付かったものの、アルルゥの怪我は最早手の施しようが無い状態だった。
銃弾は、アルルゥの腹部の中央辺りを貫いていた――誰がどう見ても、致命傷だ。

560 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:55:59 ID:7oRMeuqD
   

561 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:56:46 ID:d5Sb5YGn
 

562 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:56:52 ID:j6dbCxqS

「茜……お姉ちゃん…………」

アルルゥが弱々しい声で呼び掛ける。
茜はアルルゥの手を握り締める事で、その呼び掛けに応えた。

「茜お姉ちゃんとは、あまりお話出来なかったけど……。アルルゥ、茜お姉ちゃんに死んで欲しくない。
 茜お姉ちゃんが死んだら、瑞穂お姉ちゃんもきっと悲しむ。……だから、頑張って生きる」
「うん。有り難う――私、頑張るからね。たとえ泥水を啜ってでも、絶対に生き残ってやるんだから……!」

言葉を返す茜の瞳は涙で滲んでいたが、同時に強い意志の光も宿していた。
涼宮遥は死んでしまったし、鳴海孝之は狂気に飲まれてしまったが、それでも尚茜は正気を保っていた。
この島で出会った仲間達のおかげで、何とか耐え凌ぐ事が出来たのだ。
次にアルルゥは、アセリアの方へと首を動かした。

「アセっち、余り人を殺しちゃ駄目。アセっちがそんな事するのやだ」
「アルルゥ……。アルルゥは、私に人を殺さないでいて欲しいのか? 私は戦う為に生まれてきたスピリット――それでも、戦わないで欲しいのか?」
「生きてればきっと、戦い以外にもやる事見つかる。だから、戦う為だけに生きるの駄目」
「……ん、分かった。アルルゥがそう言うなら、努力してみる。クニサキユキトや敵は倒すけれど、それ以外は襲わない」

応えるアセリアの顔は相変わらずの仏頂面で、何の変化も無いようにすら見える。
だが注意して見れば、気づく事が出来るだろう――その瞳の奥底に、はっきりとした悲しみの色が宿っているのを。
それは少し前までのアセリアなら、絶対に起こり得ない変化だった。
アルルゥは最後に、瑞穂へと声を投げ掛ける。

「瑞穂、お姉ちゃん……」
「アルルゥちゃん……もうお別れ、なの……?」

瑞穂が訊ねると、アルルゥは小さく――しかし確かに頷いた。
瑞穂は大きな瞳から涙を零しながら、胸が張り裂けるような声で呟いた。

563 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:57:21 ID:7oRMeuqD
   

564 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 20:58:41 ID:j6dbCxqS

「……私、貴女に……ひっく、何もしてあげられ、ぐすっ、……なかった」
「そんな事無い。……お姉ちゃんは、アルルゥと一緒に居てくれた。エルルゥお姉ちゃんが死んじゃった時に、慰めてくれた。
 お姉ちゃんのお陰で、アルルゥ、これまで生きてこられた」
「そんな……」

瑞穂は思う――それは違うと。
自分はこれまで、アルルゥの為に何もしてあげられなかった。
アルルゥの知人は見つけられなかったし、守ってあげる事も出来なかった。
それどころか、逆に自分が守られている始末だ。
瑞穂はアルルゥの身体を抱き起こし、力の限り抱き締めた。

「アルルゥちゃん、……ひっく、ごめん、なさいっ……。私が……ひっく……もっとしっかり、していれば、こんな事には、ぐすっ……ならなかったのに……!」

憎かった――不甲斐無い自分が。
情けなかった――こんな時まで、逆に励まされている自分が。
いっその事、思い切り罵られたいくらいだった。
だというのに、アルルゥは言った。

「泣くのダメ、瑞穂お姉ちゃん……。アルルゥは瑞穂お姉ちゃんが好きだから、笑ってないとやだ」
「アルルゥ、ちゃん……」

そう言われても、瑞穂の涙が止まる事は無い。
寧ろ益々勢いを増して、瑞穂の頬を、そして胸元にいるアルルゥの顔を塗らしてゆく。
悲しみの結晶が、次々と瑞穂の瞳から零れ落ちる。

そんな時だった――突如アセリアが、凛とした声で歌い始めたのは。

「暖かく、清らかな、母なる光………すべては再生の剣より生まれ マナへと帰る」
「――アセリアさん、その歌は?」

565 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:58:49 ID:b0Wl1Ty2
 

566 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 20:59:04 ID:7oRMeuqD
   

567 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 21:00:02 ID:j6dbCxqS

涙で塗れた目を丸くして、茜が問い掛ける。
少なくとも茜が今まで生きてきた中では、聞いた事の無い歌だった。

「……ん。スピリット達の間に伝わる祈りの歌」

短く返事すると、アセリアは再び歌を歌い始めた。

「たとえどんな暗い道を歩むとしても……精霊光は必ず わたしたちの足元を照らしてくれる」

――瑞穂の嗚咽を伴奏として、アセリアは歌う。

「清らかな水、暖かな大地、命の炎、闇夜を照らす月……」

――綺麗な歌声が、部屋の中に染みこんでゆく。

「すべては再生の剣より生まれ マナへと帰る」

――スピリットの紡ぐ、祈りの歌。
――美しいけれど、少し悲しい歌。

「どうか私たちを導きますよう……マナの光が私たちを導きますよう……」

――その歌には、アセリアに芽生えた感情がたっぷりと籠められているから。
――きっと、アルルゥを天国まで導いてくれる。

568 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 21:00:23 ID:7oRMeuqD
   

569 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 21:00:47 ID:b0Wl1Ty2
    

570 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 21:01:13 ID:j6dbCxqS









【アルルゥ@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄 死亡】
【残り40人】


【C-3 博物館付近 /1日目 午前】
【春原陽平@CLANNAD】
【装備:投げナイフ2本】
【所持品:支給品一式 ipod(岡崎のラップ以外にもなにか入ってるかも……?)】
【状態:肉体的には中度の疲労、精神的疲労大、混乱、激しい怯え。右手首に手錠、上はTシャツ、下はジーンズを着用】
【思考・行動】
基本:死にたくない
1:もっと離れた所まで逃げる
2:岡崎を探し出して、助けて貰いたい
3:知り合いを探す
4:国崎往人に対する極度の恐怖

571 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 21:01:46 ID:7oRMeuqD
   

572 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 21:01:50 ID:d5Sb5YGn
 

573 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 21:02:37 ID:j6dbCxqS





【c-3 博物館 /1日目 昼】
【国崎往人@AIR】
【装備:コルトM1917(残り6/6発)】
【所持品:支給品一式×2、コルトM1917の予備弾40、木刀、たいやき(3/3)@KANNON】
【状態:精神的疲労・肉体疲労大。右腕と左膝を打撲・右手の甲に水脹れ・左腕上腕部粉砕骨折・左肩軽傷・脇腹に亀裂骨折一本・全身の至る所に打撲】
【思考・行動】
1:観鈴を探して護る
2:観鈴以外全員殺して最後に自害、説得に応じるつもりも無い
3:朝倉音夢・仮面の男(ハクオロ)・長髪の少女(二見瑛理子)・青い瞳と水色の髪の少女(アセリア)を危険人物と認識
4:状況が許せば観鈴の情報を得てから殺す






【B-3 民家 /1日目 昼】
【涼宮茜@君が望む永遠】
【装備:国崎最高ボタン、投げナイフ2本】
【所持品:支給品一式、手製の廃坑内部の地図(全体の2〜3割ほど完成)、左手首に手錠】
【状態:嗚咽、腹部打撲】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:アセリア、瑞穂と共に行動する
2:諦めずに、必ず生き残る
3:鳴海さんとは二度と会いたくない
4:国崎往人を強く警戒

574 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 21:03:06 ID:7oRMeuqD
   

575 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 21:03:49 ID:j6dbCxqS


【アセリア@永遠のアセリア】
【装備:鉄パイプ(頑丈だがかなり重い、長さ二メートル程、太さは手で握れるくらい)】
【所持品:支給品一式 鉄串(短)x1、ひぐらし@ひぐらしのなく頃に、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:肉体的疲労極大。右耳損失(応急手当済み)。軽い頭痛。ガラスの破片による裂傷(応急手当済み)。殴られたことによる打撲】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:仲間を守る
2:無闇に人を殺さない(但し、クニサキユキトと襲撃者は殺す)
3:ハクオロと戦う(ただし殺さない)
4:強者と戦う
5:永遠神剣を探す
6:もっと使い勝手の良い武器を手に入れる

※フカヒレのコンドーム
アレでナニをする時に使う道具。12個入り。
パッケージの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してある。
レオがエリカルートの屋上でフカヒレから手渡された思い出の品。
薄型がウリでフィット感が凄い、らしい。
※ひぐらし
雛見沢に生息するひぐらしを瓶に無理やり詰め込んだもの。
全て生きています。

576 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 21:03:57 ID:7oRMeuqD
   

577 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 21:04:21 ID:d5Sb5YGn
 

578 : ◆guAWf4RW62 :2007/07/02(月) 21:04:54 ID:j6dbCxqS


【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:投げナイフ1本】
【所持品:支給品一式、フカヒレのギャルゲー@つよきす-Mighty Heart-、爆弾付きの首輪(朝倉音夢が装着させられていた物)】
【状態:号泣、中度の肉体的疲労】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:まずはもう少し休憩する。
2:可能ならば博物館で蟹沢きぬを待ち、合流(挑戦するかどうか、その際の方法などは後続の書き手さん任せ)。
3:自分達の知人、アルルゥの知人を探す。
4:国崎往人を強く警戒
【備考】
※陽平には男であることを隠し続けることにしました。
※アルルゥにも男性であることは話していません。
※蟹沢きぬにも男性であることは話していません。
※アセリアにも男性であることは話していません。他の人にどうするかはお任せ
※アセリアに対する警戒は完全に消えました

※フカヒレのギャルゲー@つよきす について
プラスチックケースと中のディスクでセットです。
ケースの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してあります。
ディスクの内容は不明です。

579 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/02(月) 21:04:55 ID:7oRMeuqD
   

580 : ◆/P.KoBaieg :2007/07/04(水) 02:13:22 ID:WiMMei4o
「この辺りがよろしいでしょうね」

亜沙の一団との戦闘後、その場を離脱したネリネがたどり着いたのは、神社の南東側にあたる鬱蒼とした森の一角だった。
そこは丁度緩やかな上り斜面が一段落する場所であり、周囲を深い草木に覆われ、かなり近づいてみなければ、はたして人が
いるかどうか分からないという休息するにはこれ以上に無いうってつけの場所だった。

「ふう……」

周りに自分以外の人間がいないのを確認したネリネは、ディパックを地面に下ろし自らもその場に座り込む。
誰かに見つかることなくゆっくりと休息し、体力と魔力を回復するという目的を考えればここは絶好の場所と言えた。

(ここならば、そう簡単に見つかる事もないでしょう)

その考えの通り、ネリネは神社を無視してあえてここを休息の場に選んだ。
もし、これが以前の彼女ならばストレートに神社へ向かい、社務所か本殿のどこかで休息したはずである。
しかし、今の彼女はこれ以上になく慎重に行動していた。

(もし、神社で休息しているときに人が来たならばその時が一番危険です。それが複数だったならば……)

ネリネは、ここに到るまで何度かの戦闘を経験したが、最初の古手梨花を殺し損じた時を除けば、その後のつぐみ・音夢との遭遇、
二人組みとの博物館における戦い、そして先ほどの亜沙の一団との戦闘はいずれも複数の相手と戦い、いずれも彼女の敗北に終わっている。
「出会ったものは、誰であろうと皆殺し」という覚悟の一方で、ここまでに殺したのは身動きの取れなかった音夢一人だけ……。

そして今、ネリネは体力と魔力を大きく消耗し、これらの回復に稟探索の貴重な時間を割くこととなった。
だが、これらの戦いが単なる徒労に終わったわけではない。
ここまでの戦闘はネリネに経験を積ませ、彼女の冷静さと慎重さ、そして思慮深さを確実に鍛え上げてきたのだ。

その事は、此処を休息の場に選んだ事にもあらわれている。
森の中に存在する、特定のフィールドである「神社」あるいは「学校」には必ず人が集まるはず。
ならば、敢えてそのような場所に立ち寄らず、むしろその近辺で休息し、その場所へやってくる或いは出て行く人間を狙えばよい、というわけだ。


581 : ◆/P.KoBaieg :2007/07/04(水) 02:14:03 ID:WiMMei4o
支給品のミネラルウォーターを口に含み、喉を潤しながらネリネは思う。
考えてみれば、最初の失敗を除けばその後に遭遇したのはいずれも複数だった。
しかも、先程の戦闘では永遠神剣“献身”による身体能力の向上を行ない、あと一歩だったにも関わらず不意を突かれた事により後退を余儀なくされた。
結局、身体能力を向上したところで複数の敵を相手にするのは難しいということなのだろう。
ネリネはそう結論付けた上で、今後は一人で行動している者、または既に深い手傷を負っている人間を狙うのがベターだと考え始めていた。

(ですが、それ以上に大事なことがあります……)

ネリネの懸念すべき重要事項、それは「稟の発見」と「自身の魔力」――。

前者については何よりも優先するべき事項だが、ここに来てネリネは後者についても気にし始めていた。
それは「魔力の回復が遅すぎる」という事だ。

自身の攻撃魔法が何らかの手段で封印されている事については、早くから気が付いていたからそれほど気にしていない。
だからこそ、亜沙の一団との戦いで“献身”に魔力を送り込み身体能力を向上させて戦ったが、ここへ逃げてくる途中自身の魔力が
戻らない事をおかしいとネリネは感じていた。
最初は肉体の疲労が限界近くにあった為それほど気にしてなかったが、ここで休息するにあたってまだ魔力が戻ってこないのはおかし過ぎる。

いや、正格に言えば確かに魔力は徐々に回復してきている。
曲者なのは、その「徐々に」という部分だ。
ネリネは魔族でも屈指の魔力を持つ存在である。
その事はかつてバーベナ学園の体育館を吹き飛ばしてみせた事からも明らかだ。

そして、その魔力に比例して非常に高い魔力の回復能力も持ち合わせている。
本来なら、あの戦闘の後でも魔力はそれなりに回復していてもおかしくないはずなのだ。
にも関わらず、あれから戻ってきたと感じられる魔力は微々たる物でしかない。


582 : ◆/P.KoBaieg :2007/07/04(水) 02:15:29 ID:WiMMei4o
加えて、“献身”を使った後にネリネが感じた事だが、あまりにも魔力の消耗が早すぎる――。

あの時戦っていたのは時間にして十数分のことだったはず。
しかし今、ネリネの魔力は丸一日休みなしで魔法を使い続けたかの様に酷く消耗している。
それに対し、雀の涙程しか回復しない魔力……。

(どうやら、魔法だけではなく魔力そのものも制限が加えられているみたいですね……)

改めて、この殺人遊戯の主催者が持つ力を認識するネリネ。
しかしその一方で彼女は傍らの“献身”を見つめながら思う。

(魔力を制限する一方で、この様な魔力に深く関わる物を支給するというのなら、手っ取り早く魔力を回復する道具や手段もこの島にあるはずです)

確かに“献身”は、ただの槍としても用いることが出来るが、ネリネが知る限り“献身”の特性は「魔力を身体能力の増幅に変換できる」「“献身”を通じて魔法が使える」という事だ。
つまりは、所有者が魔力を持つか魔法を使える事が大前提であり、そうでなければ“献身”はただの槍としての意味しかない。
更に、自分の様に魔法を使える者が、何らかの制限が加えられながらも参加させられているというのは、主催者は「魔力を活用して戦ってみろ」と言っているのだろう。

だとすれば、なんらかの方法で驚異的に魔力を回復する支給品、或いは手段があると考えてもおかしくない――。
ネリネはその様に推測したのである。

(もしそのような方法があるのならそちらの探索も必要になります)

今のペースで魔力が完全に回復するのを待っていては、あと何日かかるか分からない。
それならば、おそらく存在すると思われる魔力の回復方法を探しだし、強引に魔力を回復するのも一つの手だ。
仮にそれが一生魔法を使えなくなる、あるいは寿命を大きく削るといったリスクの大きなものであっても構わないとネリネは思っている。
稟を守り通して最後に自決する事が自分の基本方針である以上、この島で戦っている間だけ生きていられればいいのだから。


583 : ◆/P.KoBaieg :2007/07/04(水) 02:16:10 ID:WiMMei4o
(そうなったら、暫くはこの槍を使うのはここぞという時だけにしたほうがいいでしょうね)

ネリネはそう考えながら“献身”を傍らに置いたままディパックから音夢の持っていたデザートイーグルを取り出す。
新市街で97式自動砲を使った時は初めて銃を撃った事とその反動もあって、狙った相手を仕留められなかったがこの銃なら相手に当てる事が出来るかもしれない。
弾も十分あり、魔力が回復するまでの間はこれを武器として使えばいいだろう。

(だけど、本当に扱いきれるのでしょうか、この銃を……)

デザートイーグルを片手で握りながらネリネは思う。
確かにこの銃を「撃つ」ことは自分でも出来るだろう。
しかし、それを「命中させる」となったら不安がある。
どんなに強力な武器を持とうと、それを命中させられねば弾の無駄使い、無用の長物に他ならない。
やはり、ここは体力の回復に専念するしか無いのだろうか……。

(体力……? そう、その方法が有りましたわ!)

何かに気づいたのか、ネリネは右手にデザートイーグルを持ったまま、左手に“献身”を握る。

(そう、自身の体力が無ければそれを他の方法で補えばいいのです)

ネリネが思いついたのは「射撃の間だけ“献身”によって身体能力を向上する」というものだった。
“献身”による身体能力の向上は単に膂力や脚力だけにとどまらない。
それらには聴力や動体視力も含まれてくるのだ。


584 : ◆/P.KoBaieg :2007/07/04(水) 02:17:23 ID:WiMMei4o
(この槍で身体能力を強化し、その間に銃を撃てば相手に命中させる事は可能でしょう)

身体能力が向上していれば、銃の反動は膂力で押さえ込めるし、動体視力も向上するわけだから動いている相手にも弾丸を
命中させられる事は出来るだろう。
確かにネリネは魔力をコントロールする事が苦手であるし、余計な量の魔力を“献身”へ送りこんでしまうだろう。
だが「時間を区切って」魔力を送りこむ事は不可能ではない。

この方法を使えば、銃器を使うときも魔力を消耗することになるが、先程の戦闘で魔力を垂れ流し同然に“献身”へ注ぎ込む事に比べれば
その消耗はかなり押さえられるはずだ。

(あとは、撃つときのタイミングの問題……。ここで休息している間、実際に銃を撃つわけにもいきませんから、イメージトレーニングしかありませんね)

早速ネリネは目を閉じ、自分が“献身”と拳銃をそれぞれ手に持ちながら、魔力を送り込みつつ照準を合わせる自分をイメージする。
その間、どうしても稟の顔が浮かんでしまうが、ネリネはそれを自制し改めて集中し始めた。

(稟様……今の間は稟様の事を忘れます。これは稟様をお守りする為に必要なことですから……)

未だ稟を見つけられない事への不安はある。
しかし、今の自分の体力では稟を見つけても守り抜く事は出来ない。
むしろ自分の方が稟に守られる事になりかねない、それでは駄目なのだ。

なればこそ、ネリネは今の間だけ稟の事を忘れて、自分が稟を守り抜き戦うために必要な修練へ傾注する。
森の中、茂みの奥で深く静かに休息しながら、獲物が来るときを待つ山猫の様に……。


【D-4 森(神社の南東)/1日目 時間 午前】


585 : ◆/P.KoBaieg :2007/07/04(水) 02:18:36 ID:WiMMei4o
【ネリネ@SHUFFLE】
【装備:永遠神剣第七位“献身” IMI デザートイーグル 10/2+1】
【所持品1:支給品一式 IMI デザートイーグル の予備マガジン10】
【所持品2:支給品一式  トカレフTT33の予備マガジン10 S&W M37 エアーウェイト 弾数1/5】
【所持品3:出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 コンバットナイフ 九十七式自動砲 弾数5/7(重いので鞄の中に入れています) 朝倉音夢の制服及び生首】
【状態:肉体的疲労極大・魔力消費大、腹部に痣、左腕打撲、右耳に裂傷、左足首に切り傷、非常に強い意志】
【思考・行動】
0:現在休息、体力・魔力回復中及び銃を使うためのイメージトレーニング中
1: 稟を探す。その途中であった人間は皆殺し。知人であろうとも容赦無く殺す(出来る限り単独行動している者を狙う)
2:ハイリスク覚悟で魔力を一気に回復する為の方法、或いはアイテムを探す。
3:神社にやってくる人間&出て行く人間の様子を伺う。
4:出来れば次の定時放送までに純一を見つけ出し、音夢の生首を見せつけ最大級の絶望を味あわせた後で殺す。
5:つぐみの前で武を殺して、その後つぐみも殺す
6:亜沙の一団と決着をつける
7:稟を守り通して自害。
【備考】
私服(ゲーム時の私服に酷似)に着替えました。(汚れた制服はビニールに包んでデイパックの中に)
ネリネの魔法(体育館を吹き飛ばしたやつ)は使用不可能です。
※これはネリネは魔力は大きいけどコントロールは下手なので、 制限の結果使えなくなっただけで他の魔法を使えるキャラの制限とは違う可能性があります。

586 : ◆/P.KoBaieg :2007/07/04(水) 02:20:10 ID:WiMMei4o
※永遠神剣第七位“献身”は神剣っていってますが、形は槍です。
※永遠神剣第七位“献身”は制限を受けて、以下のような性能となっています。

永遠神剣の自我は消し去られている。
魔力を送れば送る程、所有者の身体能力を強化する(但し、原作程圧倒的な強化は不可能)。

以下の魔法が使えます。
尚、使える、といってもウインドウィスパー以外は、実際に使った訳では無いので、どの位の強さなのかは後続の書き手に委ねます。
アースプライヤー  回復魔法。単体回復。大地からの暖かな光によって、マナが活性化し傷を癒す。
ウィンドウィスパー 防御魔法。風を身体の周りに纏うことで、僅かな間だけ防御力を高める。
ハーベスト     回復魔法。全体回復。戦闘域そのものを活性化させ、戦う仲間に力を与える。


※古手梨花を要注意人物と判断(容姿のみの情報)
※音夢とつぐみの知り合いに関する情報を知っています。
※音夢の生首は音夢の制服と一緒にビニール袋へ詰め込みディパックの中に入れてます。
※魔力が極端に消耗する事と、回復にひどく時間がかかる(ネリネの魔力なら完全回復まで数日)という事に気が付きました。

※ネリネの休息している場所は神社とホテルの対角線上。神社の敷地外縁から直線距離で約200メートルの地点(地図における深緑の場所)。
※休息している場所からは神社の様子を伺う事が出来ますが、神社の方からネリネの存在を確認することはできません。
※また、草木が生い茂っていますので彼女が休息しているかどうかは余程近づいてみないと確認できません。



587 :静かな湖畔? ◆3Dh54So5os :2007/07/07(土) 19:22:18 ID:BnpDIlYQ
「綺麗……」
突然目の前に現われた光景に白河ことりは思わず感嘆の声をもらした。
ブリーフ一丁と言うあまり直視したくない格好の赤坂衛と共に森の中を進むこと約1時間、ことり達は山頂から見て西側にある湖の畔へとやってきていた。
絶海の孤島にあるものとは思えない程広い湖畔はここが殺しあいの場であることなど微塵も感じさせない程静かで、美しかった。
すっかり昼の陽射しとなりつつある陽光を受けて瑠璃色に輝く湖面にことりは暫しの間見入っていたが、次の瞬間、赤坂の声で現実に引き戻された。
「ことり、あれを……」
言葉少なめにある方向を指差す赤坂。言われるがままにそちらを見たことりは、その先に美しい湖畔には不釣合なモノがあることに気が付いた。

所々に赤錆がういたパワーショベルやブルドーザー、土埃にまみれたオフロードダンプ、窓ガラスが割れて廃墟と化しているプレハブ小屋……。
大自然のなかにぽつんと放置されたそれらはことりの目にはやけに異質なモノのように思えた。
「あれは……いったい……」
「多分、この湖にダムか何かを造る計画があったんだと思う。 これくらいの貯水量があれば生活用水の溜め池にも発電にも使えるだろうからね……」
「そんなっ!?」
赤坂の言葉に思わず声をあげることり。
このような景色とは無縁の初音島で育ったことりからしてみればにわかに理解しがたい話だった。
実際に生活するには必要なのかもしれないが、このような地にダムを造ろう等という神経がよく理解できなかったのだ。
「こういう島とかだとあまり聞かないけど、山奥の山村とかに行けば良くある話だよ。ここみたいに計画が途中で中断させるようなことも……ね……」
「?」
どこか昔のことを思い出すような赤坂の口振りにことりは一瞬疑問を感じたが、それを深く考えることは出来なかった。
赤坂がプレハブ小屋の方へ歩き始めたからだ。
「あの小屋に何かあるかも知れない。ちょっと様子を見てくるからことりはここで待っててくれ」

588 :静かな湖畔? ◆3Dh54So5os :2007/07/07(土) 19:23:51 ID:BnpDIlYQ
「えっ? そ、それなら私も……」
そう言いながら反射的に後を追いかけたことりを赤坂は手で制した。
「誰がが潜んでいる可能性もあるし、罠が仕掛けてあるかもしれない。安全が確認できたら呼ぶからそれまでは……」
「……分かりました」
赤坂の言葉にことりは素直に頷いた。のこのこついて行って足手纏いになっては意味がないからだ。
相変わらず武器は竹刀一本だけ、正直何かあったとき自分自身を守れるかどうかも危うい。
(よくよく考えてみたら私って結構お荷物なのかも……)
ことりが自身の無力さを内心嘆いて居ることなど露知らず、一方の赤坂は顔を少し赤くしながら言った。
「それに、作業小屋ならもしかすると作業服ぐらいあるかも知れないしね」
「あっ……」
その言葉に赤坂の今の格好と当面の目的を思い出したことりも顔を赤らめる。
なんとなく気まずい雰囲気が漂い始め、二人は知らず知らずのうちに視線を逸らせる。
「わ、分かりました。おとなしく待ってますので、なるべく早めに呼んで下さいね」
「あ、ああ、分かった」
「あっ、それと……」
さらに顔を赤くしながら歩き始めた赤坂に、ことりは今更ながら思い出した言葉をかけるべく呼びかけた。
「ん?」
「くれぐれも、無茶だけはしないでくださいね」
ことりの言葉に赤坂はふっと微笑むと、親指を立てて見せながら再び歩き始めた。

ブリーフ一丁で……


  ◇   ◇   ◇

589 :静かな湖畔? ◆3Dh54So5os :2007/07/07(土) 19:25:22 ID:BnpDIlYQ


歪んで、開きにくくなった戸を無理やり開けると、中からぶわっと埃が舞い上がった。
慌てて口元を押さえるが、それでも全てを防ぎきるには至らず、派手にむせ込んでしまう。
「ごほっ、ごほっ……ふぅ、誰もいない……か……」
ぼろぼろの外見と同じく中も荒れ放題の散らかり放題な小屋の中を見渡しながら呟く赤坂。
後は罠などが仕掛けられていないかだが……
「そっちも大丈夫そうだな……」
大して室内を物色することなく赤坂はそう判断した。
一歩踏み出してみて埃まみれの床にくっきりと足跡が付いたからだ。
足跡が付くほど埃が積もっているのに、プレハブ小屋の中には見渡す限り、それ以外の足跡はない。
この状態で足跡を残さずに室内に入り込み、さらに罠を仕掛けるのは不可能と判断してもいいだろう。
「さて、それじゃあ宝探しを始めようか」
小屋の中に危険がないことが分かり、内心安堵しつつ、赤坂は次の目的を達するために室内を探りはじめた。
プレハブ小屋は平屋で大した大きさではなかったが、作業着の捜索は思った以上に難航した。
蛍光灯やガラスの破片が散らばっていたり、ベニヤ板や鉄板が積み重なっていて、下のものが取り出せなかったり、
何よりものを動かすたびに盛大に舞い上がる埃には閉口せざるをえなかった。

「これは服が見つかっても着る前に身体を洗わないとだな……」
捜索開始から15分も経つと赤坂の身体は埃や煤で真っ黒になっていた。
そこに全身からふき出た汗が混じってなんともいえない不快感を醸し出している。
唯一の救いとしては窓ガラスが割れている所為で風通しがいいことだろうか。これで風が一切入ってこないような環境だったら既に音を上げていたかもしれない。
こういう環境で作業をしている解体業者の気持ちがちょっとだけ分かったような気がした。
「はぁ、せめてマスクがあれば…………おっ」

590 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/07(土) 19:25:37 ID:Luof4VfX
 

591 :静かな湖畔? ◆3Dh54So5os :2007/07/07(土) 19:26:52 ID:BnpDIlYQ
何枚目かのベニヤ板をどかしたとき、待望のソレは足元から顔をのぞかせた。
それは通気用の小さな穴と戸の取っ手以外対した起伏も機構もない鉄の箱。
「ロッカーか……」
上に板材が載っていたため多少変形していたが、紛れもなくそれはロッカーだった。
まだ一部が埋もれたままだったが、大した量ではないので手っ取り早く戸を開けてみることにする。
「よっ……と」
力ずくで戸を開けるのと同時に、再び小屋の中を舞う埃。
その埃が治まったとき、赤坂は今までの努力が無駄ではなかったことを悟った。
ロッカーの中からビニルの包装に包まれた真新しい作業着一式が出てきたのである。
いくつかある中から自分に合うサイズのものを選びとり、セットのヘルメットと共にそれを手に取る。
ビニル包装のおかげかあれだけ埃を飛ばしたのに汚れもなく、着るのも問題はなさそうだった。
「これで一安心かな……ん?」
そう言いながら軽く埃を払うべく作業着を広げてみた赤坂は次の瞬間、妙な感覚に襲われた。
なぜかその作業着を以前どこかで見たことがあるような気がしたのだ。
どこにでもありそうなデザインゆえ気のせいである可能性の方が高いのだが、既視感はなかなか消えてくれなかった。
「……あーっ、いけないいけない。早く着替えてことりを呼ばないと……いや、身体を洗うのが先か?」
一瞬、そのまま思考の海に溺れかけたが、外で待っていることりの事を思い出し、赤坂はその疑念を一時的に追い払った。


  ◇   ◇   ◇


「うわ、赤坂さん、凄い格好になってますね……」
赤坂の合図を受けてプレハブ小屋の前までやって来たことりは赤坂の格好を見て目を丸くした。

592 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/07(土) 19:27:04 ID:Luof4VfX
 

593 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/07(土) 19:27:10 ID:H+6oE+Fd
支援

594 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/07(土) 19:28:00 ID:Luof4VfX
 

595 :静かな湖畔? ◆3Dh54So5os :2007/07/07(土) 19:28:25 ID:BnpDIlYQ
何かを倒す音や、時々窓から煙のように埃が吹き出る様子を見ていたので大方予想は付いていたが、実際に見ると赤坂の格好は凄まじいものがあった。
炭鉱労働者か、SL列車に乗ってうっかり窓を開けたままトンネルに入ってしまった時のような、とにかく身体中煤だらけだったのだ。
「大丈夫ですか? なんだかかなり悪戦苦闘してたみたいですけど……」
「あはは……喘息の労災が下りるなら下ろして欲しいところだね」
そういいながら笑って見せようとして、直後盛大にむせ込む赤坂。大丈夫そうではなさそうだ。
「とりあえず、湖で身体を洗った方が良いんじゃないですか? その間私は何か使えそうなものが無いか探してますから」
「そうかい? それじゃあすまないがお願いできるかな。あっ、それとこの服も預かっておいてくれないか?」
「分かりました。赤坂さんが水から上がるまで責任を持って預からせてもらいますね」
ことりがビニル包装に包まれた作業着とヘルメットを受け取ると赤坂はそそくさと湖へと向かっていった。
ジャボジャボと湖へ入っていく様子を見送ってからことりは背後の廃棄物郡に目をやる。
「さて、何処から探しましょうか?」
この中ではプレハブ小屋が一番期待できるが、赤坂が既に探したし、埃だらけらしいから遠慮したいところだ。
そうなるとブルドーザーやパワーショベルといった重機類の捜索、ということになるのだが……
「どの辺を見たらいいんだろう? 動かし方とか構造とか分からないし……」
白河ことり、風見学園本校一年生、ちなみに無免。

「う〜ん、どれもまともに動きそうも無いなぁ……」
スポンジの飛び出たダンプカーの運転席に腰掛けながら、ことりは思わず溜息をついた。
各種重機の運転台によじ登って見たものの、長い時間雨風に晒されていたであろうそれらにまともに扱えそうなものはほとんど無かった。
唯一動きそうなこのダンプもガソリンメーターが底を尽いている。
「使えそうなものもこれくらいかな」
そう呟くことりの目の前にあるのは重機やダンプから回収した発炎筒4本に、懐中電灯2本、単二乾電池6つと小物ばかりだ。
いずれも使い勝手の良いものではあるが、武器になりそうなものではない。

596 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/07(土) 19:28:28 ID:H+6oE+Fd
支援

597 :静かな湖畔? ◆3Dh54So5os :2007/07/07(土) 19:29:51 ID:BnpDIlYQ
「やっぱり小屋の中を探してみた方がいいのかな?」
助手席に置いた作業着とヘルメットを見ながら、一人思案することり。
作業着はともかくヘルメットは防具代わりにもう一個くらいあってもいいかもしれない。
銃器相手にはほぼ無力だろうが刃物相手なら気休め程度にはなるだろう。
「あれ?」
そんなことを考えながら作業着とヘルメットを交互に見た、その時だった。作業着に何か刺繍がしてあることに気がついたのは……
同系色の糸を使っていた為分かりにくかったが、刺繍で何か文字が書いてある。見たところこの作業着を使っていた社名のようだ。
「……小此木造園? 何でダムの工事現場に造園業者が……?」
ダムの工事現場というのはあくまで赤坂の予想だが、違ったとしてもこんな山奥の湖畔に造園業者が来るだろうか?
どうでも良いことかも知れないが、やけに気になったことりはそのまま考えようとして……刹那、中断を余儀なくされた。
湖から上がってきたらしく、赤坂の声が聞こえたからだ。
「え、えっと、ことり、ちょっといいかな?」
「はい、何でしょ……」
「あっ、ちょっ、待った!こっちは見な……」
反射的に振り返ろうとしたことりを赤坂は止めたが、既に手遅れだった。
ことりは完全に振り返ってしまい、ばっちりと見てしまったのだ。靴以外何も身に着けていない赤坂の姿を……。
そう、今の赤坂はブリーフさえも身に着けていなかったのだ。大事なところだけは大き目の葉っぱで隠していたが、そんなのは何の慰めにもならない。
「い、いや、勘違いしないでくれ、タオルを用意していないことに水に浸かってから気づいたんだ。決して見せようとかそういう意図は……」
あたふたと必死に弁明する赤坂の言葉はことりには届いて居なかった。
ことりはまず絶句し、次に硬直し、後悔し、最後に悲鳴を上げた。



「赤坂さんのエッチーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」


少女の悲鳴と共に小物による集中砲火が赤坂を襲ったのはそれから間もなくのことである。


598 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/07(土) 19:30:03 ID:H+6oE+Fd
支援

599 :静かな湖畔? ◆3Dh54So5os :2007/07/07(土) 19:30:51 ID:BnpDIlYQ


【C-5 湖畔(川の始まり付近)/1日目 昼】

【白河ことり@D.C.P.S.】
【装備:竹刀 風見学園本校制服】
【所持品1:支給品一式 バナナ(台湾産)(4房)虹色の羽根@つよきす-Mighty Heart-】
【所持品2:ヘルメット、発炎筒(×4本)、懐中電灯(×2本)、単二乾電池(×6本)】
【状態:健康・極度の混乱状態】
【思考・行動】
基本方針:ゲームには乗らない。最終的な目標は島からの脱出。
0:赤坂さんのエッチーーーーー!!
1:赤坂と一緒に行動する
2:仲間になってくれる人を見つける。
3:朝倉君たちと、舞と、舞の友達を探す。
4:千影の姉妹を探す。

※虹色の羽根
喋るオウム、土永さんの羽根。
この島内に唯一存在する動物、その証拠。
【備考】
※テレパス能力消失後からの参加ですが、主催側の初音島の桜の効果により一時的な能力復活状態にあります。
 ただし、ことりの心を読む力は制限により相手に触らないと読み取れないようになっています。
 ことりは、能力が復活していることに大方気付き、『触らないと読み取れない』という制限についてはまだ気づいていません。
※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化) つもりですが、
 赤坂の判断や状況次第で変化するかも知れません
※坂上智代から、ボイスレコーダーを発端とした一連の事件について、聞きました。

600 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/07(土) 19:31:20 ID:H+6oE+Fd
支援

601 :静かな湖畔? ◆3Dh54So5os :2007/07/07(土) 19:31:51 ID:BnpDIlYQ

【赤坂衛@ひぐらしのなく頃に】
【装備:デリホウライのトンファー@うたわれるもの】
【装備予定品:小此木造園の作業着】
【所持品:支給品一式、椅子@SHUFFLE!、ブリーフ】
【状態:疲労、左腿に怪我、首筋に軽い傷、葉っぱと靴のみ着用】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
0:ご、誤解だよ!
1:ことりと一緒に行動する
2:まずは服を取りに戻る
3:正午までに神社に向かいトウカ・アルルゥと合流
4:大石さんと合流したい。
5:梨花ちゃんが自分の知っている古手梨花かどうか確かめる。

【備考】
※赤坂の衣類はC-4の遥の墓のそばに放置
※あゆが遥を殺した人間である可能性を考えています(あゆと遥の名前は知りません)
※坂上智代から、ボイスレコーダーを発端とした一連の事件について、聞きました。

602 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 21:49:10 ID:Z8XYD4EM
頭上を覆う梢が微風に揺れ、生い茂る葉の隙間から、網目模様の光が降り注ぐ。
極度の緊張で高まった体温を元に戻すべく、全身の表面を嫌な汗が伝う。

一ノ瀬ことみは現場に辿り着いた後、暫く動けないでいた。
前方僅か数メートルにある茂みの横で、あたかも地面に固着したかのように、人の死体が仰向けに倒れていた。
死体の頭部は無惨に粉砕されており、無事に残った部分も鮮血に塗れている。

(これは……やっぱり……)

違うと信じたかった。
目の前の現実を、全力で否定したかった。
頭部の大半が損傷した状態では、死体の身元確認など出来ぬと、そう考えたかった。

しかし、駄目だった。
脇腹に刻み込まれた傷痕も、身に纏っている服装も、ちゃんと見覚えがある。
認めなければならない。
この死体は間違い無く、自分と行動を共にした探偵、双葉恋太郎のものであると。
その身体には幾つかの銃創が見受けられるが、短時間で死に至るような物では無い。
先程の銃声と照らし合わせて考えれば、恋太郎の死因は解明出来る。
恋太郎は銃で撃たれ、行動不能に追い込まれた後に、頭部を砕かれたのだ――恐らくは、自分が芙蓉楓に手渡した大鉈によって。

ネリネの言う通り、自分達はどうしようもない程に寝惚けていたのだ。
自分が楓を撃っていれば、恋太郎は死なずに済んだだろう。
それ以前に、恋太郎一人で行かせるという愚行さえしなければ、まだ対応のしようはあった。
この殺人遊戯の場に於いて、碌な武器も伴わない単独行動がどれ位危険か、少し考えれば分かった筈だ。

……何が国家公認の天才か。
自分の覚悟が足りなかった所為で、明らかな敵である楓を殺せなかった。
楓の狂気に圧倒されてしまって、ただ震える事しか出来なかった。
自分が間抜けだった所為で、恋太郎は死んでしまった。
少し前に感じた以上の無力感と後悔が押し寄せ、計らずして瞳から涙が零れ落ちそうになる。

603 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 21:51:51 ID:Z8XYD4EM

(駄目……此処で泣いたりしたら、恋太郎さんに叱られるの。もう亜沙さんを支えてあげられるのは私しかいない。
 早く気を落ち着かせて、戻らないと――)

油断無くイングラムM10を構えながらも、必死に涙を堪えることみ。
そして、その様子を遠巻きに観察する影が存在した。


 ◇  ◇  ◇


黄金色に輝く髪に、強い意志の光を湛えた大きな瞳、小柄な身体。
茂みに身を隠した観察者の名は、大空寺あゆ。

(あ〜、ド畜生がっ! 全く何なのよ……さっきからこんな場面にばかり出くわすなんてさ)

理不尽な現実に、心の中で思い切り悪態をつく。
銃声が聞こえたからと、様子を探ろうとしたのが不味かった――自分がこのような場面を目撃するのは、これで二回目だ。
しかも前回に比べて、明らかに状況が悪い。
今前方で死体を見下ろしている女は、マシンガンの類であろう武器を片手で握り締めている。
マシンガン――それは銃弾を無尽蔵に撒き散らす、悪魔の兵器と表現するに相応しい存在。
扱う人間が熟練者かどうかなど関係無しに、吐き出される弾丸のシャワーは全てを破壊し尽くすだろう。
一応自分もS&W M10を持ってはいるものの、単発式の拳銃は素人が扱い切れるような代物では無い。
事実自分は先程の戦いに於いて、一発も銃弾を当てる事が出来なかった。
今目の前の女と交戦すれば、確実に殺されてしまう。

604 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 21:55:26 ID:Z8XYD4EM
そして恐らく、あの女は殺し合いに乗っている。
そう考えるのが自然だ。
銃声が聞こえてきてから、まだ幾ばくも時間が経過していない。
そして自分の位置からでも、未だに死体の身体から鮮血が流れ出ているのを視認出来る。
つまり、殺されて間もないのだ。
そんな状況で死体の傍に居る者となればもう、襲撃者か、死んだ者の仲間という線しか有り得ない。
そして此処で大きな判断材料となるのが、女の携えているマシンガンだ。
あれだけ強力な武器を持っているにも関わらず、仲間を守り切れなかったという事は無いだろう。
別行動していたという可能性も考えられなくはないが、それならば仲間の死体を発見すれば驚く筈。
だというのに、女が驚愕している様子は微塵も無い。
以上の事柄を踏まえれば、あの女が犯人だと判断せざるを得ない。
今立ち尽くしているのは、人を殺してしまった罪悪感に打ちひしがれている――若しくは、圧倒的な力に酔いしれているといった所か。

とにかくこれ以上考えても、仕方が無い。
この場に留まっても百害あって一利無しだろう。
今は素早く場所を移すのが肝要だ。
あゆは物音を立てないよう注意しながら、迅速にその場から離れていった。


 ◇  ◇  ◇


広大な樹海の中で、木々の合間を一人の少女がすり抜けてゆく。
巫女装束に身を包んだ少女、佐藤良美は森を西へと進んでいた。
その目的は、人探しだ。

これまで自分が企てた目論見は、その悉くが成功を収めてきた。
強敵であった伊達スバルを打倒し、碌に役立ちそうも無い鉄乙女一派だって崩壊させた。
常日頃より優等生を演じなければならなかった自分は、人を欺く技能ならば誰にも負けはしない。
装備だって優れているし、このまま上手く立ち回ってゆけば、ゲームに優勝する事も十分可能だろう。

605 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 21:57:19 ID:5R6zKUGB



606 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 21:57:44 ID:Z8XYD4EM
しかし、である。
ゲームの優勝を目標としてしまえば、対馬レオだけでなく、霧夜エリカすらも失ってしまう事になる。
それだけは極力避けたい所だ。
自分が幸せになる為には、エリカの存在が絶対に必要なのだ。

複数人での脱出を成し遂げるには、エリカや一ノ瀬ことみといった、ゲームを破壊し得る人間と合流しなければらないだろう。
身を守る為の『駒』だって必要なのだから、現状では人探しが一番の急務だ。
勿論その過程で怪しい人間や役立たずと遭遇すれば、容赦するつもりなど微塵も無いが。
集団は大規模になればなる程、内紛の可能性が増すのだから、必要最低限の人間だけが居れば良い。
力を持った者が生き、周囲の足を引っ張るだけの愚物は死ぬ――弱肉強食、それが世の摂理。
そんな事を考えながら良美が歩いていると、視界の先、一際開けた森の広場で少女――時雨亜沙――が横たわっていた。

陽光を反射して輝く翠色の長髪に、均整の取れた美しいスタイル、年齢的には自分より少し上といった所だろうか。
見た所死に至る程の傷は負っていないし、ただ眠っているだけだろう。

(う〜ん、どうすれば良いかな?)

この少女に対して、どのような行動に出るべきだろうか。
殺害するだけなら、余りにも容易い。
隠し持っている錐で首を一突きしてやれば、何の問題も無く仕留められるだろう。
相手は眠っているのだから、返り血を浴びないように注意する余裕だってある。
しかし、それは上手くない。
こんな所で無防備に眠っている女が、いきなり襲撃してくるという事も無いだろうから、まずは情報を引き出すべきだ。
その後利用価値がありそうなら『駒』にして、そうでなければ排除してしまえば良い。
結論を得た良美は、眼下で寝そべる少女の肩に手を沿えた。
余計な警戒心を与えてしまわぬように優しく、規則正しいリズムで身体を揺さぶる。
だが少女が目を醒ます気配は欠片も無く、安らかな寝息が聞こえてくるばかり。

(ふーん。折角優しく起こしてあげようとしてるのに、私の好意を裏切るんだ?)

少々苛立った良美は少女の左肩――軽く血が滲み出ている傷の部分を、平手で思い切り叩いた。

607 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 21:58:21 ID:5R6zKUGB



608 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 22:00:07 ID:Z8XYD4EM


 ◇  ◇  ◇


「……痛ぁっ!?」

突然左肩に激痛が奔り、少女――時雨亜沙は弾かれたように上半身を起こした。
すると目の前で見知らぬ人物が、困ったような表情を浮かべていた。
続けて亜沙は周囲を見渡してみたが、同行していた筈の双葉恋太郎やことみの姿は無い。
これは一体どういう状況なのか。
まるで見当もつかないが、まずは眼前の少女への対応が先だろう。

「え、えーっと、その………キミ、誰?」
「私は佐藤良美って言います。ご、ごめんなさい、起こそうとしたんですけど痛かったですか……?」

良美はそう言って視線を伏せ、心底申し訳なさげに大きく頭を下げた。
その様子、その口調から悪意は一切感じられない。
語尾を高く震わせ、身体を縮こまらせて謝罪する姿は、見てる側まで居た堪れなくなってくる程だ。
亜沙は慌ててぶんぶんと手を振って、苦笑いを形作った。

「あ、良いの良いの! 別にもう平気だからっ! それよりさ、近くに誰かいなかった?
 ボクの仲間の恋太郎さんや、ことみちゃんが居る筈なんだけど……」
「え――――あ、はい。私が来た時は貴女一人しか居ませんでしたよ」
「そっか……。う〜ん、何処行っちゃったんだろ」

ことみという名前を出した瞬間、良美の肩がピクリと反応したが、亜沙はその事に気付かなかった。
亜沙は未だ重い疲労感の残る身体を奮い起こし、活気に満ちた笑顔を浮かべた。

「とにかく、自己紹介が遅れたね。ボクは時雨亜沙、国立バーベナ学園三年生! 得意な事は料理と値切り!
 良美ちゃん、ヨロシクねっ!」 
「よ、宜しくお願いします」

609 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:00:16 ID:5R6zKUGB



610 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 22:02:14 ID:Z8XYD4EM

振り捲かれる溢れんばかりの元気さを受け、良美が少々気圧され気味に言葉を返す。
亜沙は良美が殺し合いに乗っているだとか、そういった可能性への懸念は抱いていなかった。
自分は無防備に眠っていたのだから、良美がその気ならば、既に殺されてしまっているだろう。
故に亜沙は、特に警戒する素振りも見せず会話を続けてゆく。

「ボクは仲間と一緒だったんだけど、今は二人共何処かに行っちゃってるみたい。良美ちゃんは一人なの?」

亜沙がそう問い掛けると、良美の顔に暗い影が落ちた。
よく見ればその瞳には、うっすらと涙が浮かんですらいる。

「私は朋也君って人と一緒に行動してたんですけど、途中で襲撃されて、その時にはぐれちゃいました……」
「――――え?」

それから良美が語った話は、驚愕に値するものだった。
良美は、ことみの探し人である岡崎朋也と同行していたが、その最中で攻撃を受けてしまった。
しかもその襲撃者――伊達スバルは良美の友人であったにも関わらず、騙まし討ちを仕掛けてきたらしい。
そして命がらがら逃げ延びはしたものの、朋也とは完全にはぐれてしまったとの事だった。

「朋也君、無事かな……。それに、伊達君はどうしてあんな事を……。
 私の態度が不味かったのかな……。私の信用が足りなくて、その所為で伊達君は襲ってきたのかな……」
「良美ちゃん……」

亜沙は沈痛な面持ちで、良美の話に耳を傾けていた。
友人に裏切られ、望まぬ命のやり取りを強要された――その境遇は、ネリネに襲われた自分と酷似している。
それがどれだけ辛い事なのか、どれだけ悲しい事なのか、痛い程理解出来る。
だからこそ亜沙は、励ますように良美の両肩を掴んだ。

611 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:02:52 ID:5R6zKUGB



612 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 22:04:49 ID:Z8XYD4EM

「確かにそれは辛い事だと思う……でも、元気出さなきゃ駄目だよ! クヨクヨしてても何も変わらないんだからさ」
「…………」
「きっと岡崎君も無事だし、伊達君だって話せば分かってくれるよ。ボクもね、友達――ネリネちゃんに襲われちゃったんだ。
 でもボクは諦めない! ネリネちゃんともう一度話し合って、絶対に止めてみせるんだ!! だから良美ちゃんも頑張ろ?」
「亜沙さん――――そうですね、落ち込んでても何も変わりませんもんね。有り難う御座います」

良美がそう言葉を返すと、亜沙は満足げにウインクをしてみせた。
だが勿論――良美の言葉は建前上だけのもので、その内心は全く異なるものだったが。


(……何言ってるのよ、気持ち悪い。お人好しの圭一君だって、ここまで馬鹿な事は考えないんじゃないかな)

何の根拠も、知性すらも感じさせぬ、取るに足らぬ理想論。
聞いてるだけで吐き気がする。怖気が振るう。
一度襲撃してきた相手を話し合いで止めようなどと、頭のネジが外れてるとしか言いようが無い。
そのネリネという人物がどのような目的で殺し合いに乗ったかは知らないが、生半可な覚悟で知人を襲ったりはしないだろう。
話し合いでどうにかなるような状態は、とうの昔に過ぎ去ってしまっている筈なのだ。
あの前原圭一ですら、裏切り者の伊達スバルに対しては武力行使に及んだというのに、この女は――

(どうやら亜沙さんは、未だ寝惚けてるみたいだね。だったら私が、ちゃんと起こしてあげた方が良いよねえ?)

この近辺に一ノ瀬ことみが居ると分かった以上、もう亜沙に利用価値は無い。
見た感じ随分と疲弊しているようだし、このままでは足手纏いになってしまうだけだろう。
役立たずに足を引っ張られて脱出出来ませんでした、という事態は絶対に避けなければならない。
そしてことみを発見してからでは、亜沙を殺す難易度がグンと跳ね上がってしまう。
結論、この女は今すぐ此処で殺すべきだ。
良美は隠し持った錐に手を伸ばす。

613 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:05:34 ID:5R6zKUGB



614 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 22:06:49 ID:Z8XYD4EM

「――――ッ!?」

しかしその時、がさがさという音が耳に入り、良美は攻撃を中断した。
錐を元に戻し、囁くように問い掛ける。

「亜沙さん、気付いていますか?」
「うん、向こうの方から何かが聞こえるね……」

音は亜沙の指差した先にある、深い茂みの方から聞こえてきていた。
耳を澄ますと音は未だ続いており、しかも――近付いてきている。
良美が横に視線を移すと、亜沙が緊張した面持ちでゴルフクラブを握り締めていた。

良美はポケットに忍ばせたS&W M36に手を沿えて、何時でも取り出せるような体勢になった。
亜沙を守ってやろうなどという気は微塵も無いが、自分自身の為に戦う必要があるかも知れない。
隠し持った銃を使用するのは避けたい所だが、それも状況次第では仕方があるまい。

良美は亜沙と共に、後ろ足で数メートル程後ずさった。
そうやっている間にも、音はどんどんと大きくなってゆく。
そして――茂みを切り拓いて、小柄な少女が凄まじい勢いで駆けてきた。


 ◇  ◇  ◇


「――――んあっ!?」

615 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:07:17 ID:LWf56WRy
 

616 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:07:47 ID:5R6zKUGB



617 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:08:15 ID:a4Z+Oq9n


618 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 22:09:15 ID:Z8XYD4EM

茂みを突っ切った少女――大空寺あゆは、良美達の存在に気付き足を止めた。
あゆの側から見ても、これは予期し得ぬ遭遇だった。
マシンガンの女から逃げている最中に、偶然出くわしたに過ぎない。
見れば良美達は二人共が警戒心を露にし、こちらに対して身構えている。
二人で行動している、そしていきなり攻撃を仕掛けてこないといった点から、恐らく殺し合いには乗っていまい。
通常時なら、情報交換の一つでも試みたい所だが――生憎今はそんな時間など無い。
何しろ一刻も早く逃げなければ、マシンガンの女が現れてしまうかも知れないのだ。

「――――どけや」
「……え?」
「え? ……じゃないわよ、すぐ近くにヤバイ奴がいんのよ! 逃げなきゃ殺されちゃうでしょうが!」

まるで事態を理解出来ていない亜沙に対し、ドスの効いた声で畳み掛けるあゆ。
迂回して逃亡するという選択肢もあったのだが、あゆはその方法を選ばない。
正しい自分が、愚かな人間達の為に遠回りするなど我慢ならなかった。

「そ、それってどういう事なの?」 
「知能の欠片も無いわね……まだゾウリムシの方が知性的よ。
 だ・か・ら! 近くにヤバイ奴が居るから、道開けろって言ってんのよ! あんた達が犬死すんのは勝手だけど、あたしまで巻き込むなや」
「ちょっと、急にそんな事言われても――――あ、ことみちゃん!」

一気に捲くし立てるあゆだったが、そこで亜沙達の視線が別方向へと移った。
あゆが目でその視線を追っていくと、そこには先程のマシンガンの女が立っていた。
それは亜沙の仲間である、そして良美の探し人でもある一ノ瀬ことみだったのだが、あゆがそのような事情を知る筈も無い。
あゆからすれば、ことみの出現は殺人鬼の来訪に他ならない。

(…………ヤバイわね)

619 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:09:45 ID:5R6zKUGB



620 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:10:45 ID:a4Z+Oq9n


621 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:10:49 ID:LWf56WRy
 

622 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 22:11:36 ID:Z8XYD4EM

あゆは緊張で視覚が硬直していくのを感じながらも、必死に現状を分析していた。
自分は逃亡の際S&W M10を鞄に入れてしまったから、すぐに取り出すのは不可能だ。
上手く取り出せたとしても、マシンガン相手に正面勝負ではとても勝ち目が無い。
所謂、絶体絶命的状況だった。
絶望感に打ちひしがれるあゆを余所に、亜沙が堂々と口を開く。

「も〜、ことみちゃん何処行ってたの?」
「ごめんなさい……恋太郎さんを探しに行っていたの……」
「――――恋太郎さんを?」
「うん。実は……」

ことみは事の経緯を、簡潔に説明してゆく。
但し亜沙をこれ以上動揺させぬよう、楓の事については一切触れず、必要最低限の事柄しか話さなかった。
教えたのは恋太郎が一時的に単独行動を取っていた事。
神社の方角から銃声がした事と、音の出所付近で恋太郎が死んでいた事だけだ。

「そんな……恋太郎さんが…………」

ことみが話終えた後、亜沙はがくがくと膝を震わせていた。
自分が眠っている間に、状況は一変してしまっていたのだ。
命懸けで自分を救ってくれた恋太郎は、単独行動を取った挙句に殺されてしまった。
聞く所によれば頭部を破壊されていたらしいし、もうどうしようも無いだろう。
今の自分では魔力が不足しているし、そうでなかったとしても死人を蘇らすなど不可能だ。
恋太郎という存在は、永久に失われてしまったのだ。
もう二度と笑い掛けてはくれぬし、言葉を交える事も、共に生き延びる事も出来ないのだ。

眩暈がする。
現実から急速に色が失われてゆき、冷静な思考が削り取られる。
計らずして身体から力が抜け、亜沙は大きくバランスを崩した。
慌ててことみが、亜沙の身体を抱きとめる。

623 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:13:40 ID:5R6zKUGB



624 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 22:13:49 ID:Z8XYD4EM

「亜沙さん、しっかりして!」
「ごめ……、ん……」

放っておけば倒れてしまいかねない亜沙と、それを必死に支えることみ。
そんな二人のやり取りを眺め見ながら、あゆは一つの推論を立てていた。


(自分で殺した癖に、白々しい……ウサギの皮を被ったオオカミが……)

この女――ことみと言う名前らしいが――は、殺し合いに乗ってはいるものの、正面から襲い掛かるというタイプでは無い。
素性を偽り善良なウサギの集団に取り入ってから、騙まし討ちを行おうというスタイルのようだ。
恐らく恋太郎という男は、ことみを信用し切った末に、誰も居ない場所まで誘導されて殺されたのだろう。
幾らマシンガンとは言え、集団相手では敗北する可能性もあるのだから、ことみの作戦は理に適っていると言える。
しかし――逆に、それを利用出来るのでは無いか。
正面勝負では勝ち目など無いが、集団に潜伏しての騙し合いならば十分勝機がある。
上手くことみを打倒する事が出来れば、マシンガンという最強の自衛手段が手に入る。
そして危険人物さえ排除すれば、恐らくは善良であろう仲間だって得られる。
メリットは余りにも大きい。
ならば、此処は敢えて危険に身を投じるべきだ。
先の見えぬ単独行動を続けるよりも、勝負に出た方が余程良い。
そう判断したあゆは、亜沙達の前まで歩み寄って、臆面も無く語り掛ける。

「ったく、何時までもグダグダしくさって……とにかく神社の方で、恋太郎って奴が殺されてたんでしょ? 
 だったらすぐに、もう少し離れた所まで移動した方が良いんじゃないの?」
「――――キミは?」

亜沙が弱々しい視線を、あゆの方に向ける。
今頃尋ねられた事に少々呆れながらも、あゆは自身の胸に手を当てた。

「あたしは大空寺あゆ。まあ詳しい話は、歩きながらにして貰いたいさね」

625 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:13:52 ID:LWf56WRy
 

626 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:16:17 ID:5R6zKUGB



627 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 22:17:01 ID:Z8XYD4EM

その言葉に反論する者は居ない。
あゆが信用出来るかどうかはまだ分からないが、すぐに移動すべきなのは紛れも無い事実だ。
出会ったばかりの現状で、力を合わせて仇討ちなど出来る筈も無いのだから。
ことみも、亜沙も、良美も、各々の荷物を手に行動を開始する。
もう誰も、武器を構えてはいなかった。
その様子を見て、あゆは内心でほくそ笑む。

(はっ、チョロイもんね。見てなさいよことみ、すぐアンタの化けの皮を剥がしてやんだから)

だが、あゆは知らない――ことみは殺し合いに乗っていない上、脱出の鍵と成り得る人物である事を。
あゆは気付いていない――この島で最も危険とも言える程の存在が、この集団の中に潜んでいる事を。



(……この大空寺あゆって子は、単独行動してたんだよね。そんな相手を信用なんて、出来る訳無いよね?)

良美は隠し持ったS&W M36の感触を確かめながら、これからの事について考えていた。
一ノ瀬ことみを発見出来たのは間違いなく僥倖だが、色々と余計なモノまでついてきてしまった。
ことみにも怪しい部分はあるが、ゲームを破壊し得る程の知能を持っている筈だから、それは大目に見よう。
だがことみ以外の同行者など、只の邪魔でしかない。
時雨亜沙は圭一を上回る程のお人好しであるが、とても戦力になるとは思えない。
大空寺あゆは頭の回転こそ良さそうだが、どうも何か企んでいる気がする。
船頭多くして船山に上る、という諺だってある。
必要最低限以上の人数で行動するのは、足を引っ張られる可能性を、そして裏切られる危険性を高めるだけなのだ。
何とかしなければならない。
隙を見て殺すのも良いし、適当な理由をつけて別行動させるのも良いだろう。
――さて、どうしようか。

628 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:17:43 ID:LWf56WRy
 

629 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:18:43 ID:5R6zKUGB



630 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 22:18:53 ID:Z8XYD4EM




【D-4 森/1日目 午前】

【一ノ瀬ことみ@CLANNAD】
【装備:イングラムM10(9ミリパラベラム弾17/32)】
【所持品:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』、四葉のデイパック】
【状態:肉体的に軽度の疲労、腹部に軽い打撲、精神的疲労大】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:亜沙を守る
2:まずは神社から離れる
3:あゆ、良美と情報交換を行う
4:楓に恐怖
5:工場に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
6:鷹野の居場所を突き止める
7:朋也たちが心配
8:ネリネとハクオロを強く警戒
9:ハクオロに微妙な罪悪感

※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※首輪の盗聴に気付いています
※魔法についての分析を始めました
※まだあゆと良美を信用していません

631 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 22:20:01 ID:Z8XYD4EM


【時雨亜沙@SHUFFLE!】
【装備:無し】
【所持品:支給品一式、C120入りのアンプル×8と注射器@ひぐらしのなく頃に】
【所持品2:イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×8、ゴルフクラブ】
【状態:肉体的疲労大、精神的疲労大、魔力消費極大。左肩軽傷。ロングヘアー】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:まずは神社から離れる
2:あゆ、良美と情報交換を行う
3:ネリネを止める
4:可能ならば稟や楓と合流
5:同志を集めてタカノたちを倒す
【備考】
※良美は危険ではないと判断しました。あゆについては未知数。
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※楓が恋太郎を殺したという事実に気付いていません
※C120は『雛見沢症候群』治療薬だが、健常者に使用すると10分以内に全身の発疹、発熱、瞳孔の拡大、妄想を引き起こす薬です。
症候群を抑えるには1日数回の注射が必要です。
亜沙・ことみはC120の効果を知りません。

※亜沙の回復魔法は制限を受けて以下のような感じになっています。
回復魔法の発動には、魔力と体力の両方を大きく消費する。
治す怪我が酷ければ酷いほど、亜沙の消耗は激しくなる。
命に関わるような重傷は治せない。また切り落とされる等して、失った部位も治せない。

632 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 22:21:20 ID:Z8XYD4EM



【大空寺あゆ@君が望む永遠】
【装備:S&W M10(6/6)】
【所持品:予備弾丸17発・支給品一式・ランダム支給品x2(あゆは確認済み)】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:まずは神社から離れる
2:良美、亜沙、ことみと情報交換を行う
3:殺人鬼であることみを倒し、イングラムM10を手に入れる
4:一応殺し合いに乗るつもりはない
【備考】
※あゆは放送の一部を聞き漏らしています。 その為禁止エリアがC-2と言う事は知らず、Cのどこかであるとしかわかっていません。
※赤坂が遥を殺したかもしれないと疑っています(赤坂と遥の名前は知りません)
※ことみが恋太郎を殺害したと判断しています
※亜沙、良美は無害であると予測していますが、今後の流れ次第ではどうなるか分かりません

633 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:22:03 ID:5R6zKUGB



634 :交錯する意志 ◆guAWf4RW62 :2007/07/08(日) 22:22:25 ID:Z8XYD4EM


【佐藤良美@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:S&W M36(5/5)、破邪の巫女さんセット(巫女服のみ)】
【所持品:支給品一式×2、S&W M36の予備弾12、錐】
【状態:軽い疲労、手首に軽い痛み、重度の疑心暗鬼】
【思考・行動】
基本方針:エリカ以外を信用するつもりは皆無、確実にゲームに乗っていない者を殺す時は、バレないようにやる
     利用できそうな人間は利用し、怪しい者や足手纏い、襲ってくる人間は殺す。最悪の場合は優勝を目指す
1:まずは神社から離れる
2:亜沙、ことみ、あゆと情報交換を行う
3:あゆと亜沙を排除したい
4:エリカを探して、ゲームの脱出方法を探る
5:『駒』として利用出来る人間を探す。優先順位は赤坂衛と相沢祐一
6:少しでも怪しい部分がある人間は殺す
7:もう少しまともな服が欲しい
【備考】
※メイド服はエンジェルモートは想定。現在は【F-4】に放置されています。
※良美の血濡れのセーラー服は【E-5】に放置されています
※芙蓉楓を危険人物と判断(名前のみ)
※ハクオロという人物を警戒(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※名雪の第三回放送の時に神社に居るようようにするの情報を得ました
  (禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※あゆ、ことみ、亜沙のいずれも信用していません。

635 :捨てる神あれば拾う蟹あり ◆tu4bghlMIw :2007/07/08(日) 22:36:25 ID:LWf56WRy
「はぁっ……はぁっ……やっと森を抜けた。
 ちくしょー、あのヘタレめ……。こんなに、ボクに、苦労かけやがって……」

きぬは廃線の上、ボロボロに錆付いたレールの上で肩で息をしながら悪態をつく。
正直な話、もう身体は疲労で崩れ落ちそうなくらいボロボロになっている。

無理も無い話だ。
彼女はこの島にやって来てから今の今まで、ずっと走りっぱなしだったのだから。
マシンガンを乱射する空飛ぶ魔法少女に追いかけられたり。
稟と一度分かれてから、クールに病院で待ち合わせをするつもりだったのに何故か正反対の方向にあるキラキラと光る海を拝む羽目になったり。
そして。
放送の後は何も考えられなくなって、ただ走って、泣いて、叫んで、そしてまた走って。
瑞穂、アルルゥ、アセリアと出会い、別れて。
闇と静寂が支配する森の中を一気に突っ走ってここまで来たのだ。

実際、もう何時間走り続けて来たのか見当もつかない。
荷物は逃げる際にほとんど失ってしまった。故に時間も、他の参加者も、現在位置も、全てあの一瞬の記憶と感覚に頼るしかない。
尤も皮肉にも、皮肉にも放送のおかげで今が一日目の朝六時以降だという事だけは分かるのだが。
そう考えると最低、六時間。おそらく体感的には八時間くらいだろうか。
とにかく島を駆け回っていた事になる。
野山を裸足で走り回る田舎の子供では無いのだから、もっとクールで理知的な行動を取りたいものだ。
もっとも、普段の自分が姫にこそ劣るものの、よっぴーと肩を並べるくらいには冷静なレディである事は重々承知な訳だが。

「まぁ、ボクにとっちゃこの程度の逆境、どうってことないけどね。
 ……ふぅ。さてと、病院は――」

……。
…………あれ?

「病院、どっちだ?」



636 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:36:46 ID:XIjyxvE2
 

637 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:36:48 ID:Z8XYD4EM
支援

638 :捨てる神あれば拾う蟹あり ◆tu4bghlMIw :2007/07/08(日) 22:37:19 ID:LWf56WRy



きぬが支給品一式を所持していたのは稟と出会うまでの時間と、稟と出会い他愛も無い会話を交わしたほんの数分の間だけ。
そして中身を確認したのも後者のほんのわずかな時間に過ぎない。だから自分は時計すら持っていない。
荷物をほとんど置き去りにして、さくらから逃げ出したせいだ。
コンパス?地図?もちろん、そんなもの持っている訳が無い。
というか、この二つが無いのによくココまで来れたものだ。
下手をしたら森の中で迷って、迷子になっていた可能性も大いにあるというのに。

「やべーな……てかここ何処だよ。っと廃線廃線廃線……」

頭の中に、ほんの数秒しか確認していない地図を思い描く。
ぼんやり、本当にぼんやりとだが島が形になる。
……そう、確か川を挟んだ南側に病院はあったはずだ。
困った事は自分が川の左岸にいるのか、右岸にいるのか分からないという事。
こんな事になるくらいならば、瑞穂達に地図を借りるか現在位置を尋ねておくべきだった。
何も考えずに走り回っていた時間が長過ぎるのだ

北も南も分からない以上、自分がどこにいるのかという安易な決め付けは出来ない。
とはいえレールは確か島をほぼ縦に縦断出来るくらいの距離が轢かれていたはず。
つまり、とりあえず方角的には南に向かえば良い事になる。

「うん、ボクやるじゃん。素晴らしい記憶力。さてと、どっちが南かな……と、ん?」

何気なく辺りを見回した時に、視界の中に何か赤い、ものがあることに気付いた。
赤。天然に赤い物体は意外と少ない。
こんな樹木も生えていないような場所では、果実が落ちていると言う可能性はほとんど無いし、ジュース缶のような人工物である可能性が高い。

何となく、何となくではあるのだがきぬはコレが気になった。妙に頭の中に引っ掛かりを残したのだ。
だから近づいた。本当にそれだけだった。

639 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:37:19 ID:XIjyxvE2
 

640 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:38:02 ID:XIjyxvE2
 

641 :捨てる神あれば拾う蟹あり ◆tu4bghlMIw :2007/07/08(日) 22:38:18 ID:LWf56WRy

「え……て、ちょ、マジで!?嘘、うちの……制服じゃん……」

そこに丸めるように捨ててあったのは汚れた血で濡れた、今自分が身に纏っているのと同じ竜鳴館の制服だった。
白い布地の部分から黄色いネクタイの部分まで、まるでホースで血液をぶっかけたように紅で染まっている。
既に鮮やかな赤、とは言えずその大半が真っ黒に変色していたのだが。

恐る恐る手を伸ばす。触る。冷たい。固い。パリパリする。
人の体温は感じられない。明らかにこの場所に脱ぎ捨てられてから数時間は経過している感じだ。

よっぴー?姫?自分以外にこの島に来ている竜鳴館の人間は二人だけだ。
何故かうちの制服が他の参加者にも支給されていた、という可能性も無くは無いがコレはこじ付けに近い。
普通は彼女達のどちらかがここに脱ぎ捨てた、と考えるのが妥当だ。
だが制服を脱いで、下着のまま島を闊歩しているとは考えにくい。
よっぴーや姫がそんな色情狂、発情魔のような真似をするはずが無い。ならば何かが原因で血を被り、着替えたと考えるのが自然。

そしてもう一つ。『この血は誰の血なのか』という事だ。
姫なら自分に襲い掛かってきた人間をぶちのめす、程度の事はするかもしれない。
それでも流石にここまで血が流れるほど相手を痛めつけるとは思わない。
ソレよりも誰かに襲われて血を流した、と考えた方が分かり易い。
だが、こんなに大量の血を流している人間がわざわざ着替えをするか、と言われれば疑問が湧く。
自分の頭ではこれ以上の分析は不可能だ。

「あーもう、分かんねぇ。とりあえずこの制服は拾って……。えーとこっち、行くか」

左と右、どちらに行くべきか。正直はきぬは迷っていた。
だが、彼女も一応女子高生である。不可解な血染めのセーラー服を不気味に思うのも仕方が無い事である。
尤も誰であろうとこの気味の悪さは感じ取るだろうが。
竜鳴館の制服は彼女が森を抜けた地点から見て、右側にあった。
だから彼女は、左に進む事にした。
つまり北進。病院とは正反対の方向へ。


642 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:38:40 ID:XIjyxvE2
 

643 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:39:19 ID:Z8XYD4EM
 

644 :捨てる神あれば拾う蟹あり ◆tu4bghlMIw :2007/07/08(日) 22:39:24 ID:LWf56WRy



急げ、急げ、急げ。
真っ直ぐ、このまま真っ直ぐ前へ。
地図によるとこのまま突っ切れば森にぶち当たるはず。
そこで原付を乗り捨てる事になると思うが、仕方無い。
さすがに樹木や茂み、段差や不安定な足場を気にしながらこの乗り物に執着する必要は無い。
そこからは徒歩だ。
いや違う、歩いてなどいられるはずが無い。ただ無心で脚を前へ突き動かすのみ。


舗装されたアスファルトやよく世話の行き届いた花壇が視界に入っては消える。
見据えるのはただ前方のみ。寄り道をしている暇は無い。
風を切って進む。今何キロ出ているのだろう。顎の辺りを刺激する風が少し心地よく感じる。

「痒いな……な。虫刺されの薬でもあればよかったんだけど。このアンプルは……試せないよな、いくらなんでも」

稟は誰に言うとでも無しに、そう呟く。
目覚めて、デイパックを漁るといつの間にか俺の荷物の中に"銃"が加わっていた。
だがソレはよく刑事もののドラマや海外の映画などで使われる、鉛弾を発射する鉄の凶器では無い。"麻酔銃"だ。
当然、弾丸を火薬で飛ばす訳ではない。これはエアガンの一種。
もっとも最近のエアガンの進歩は凄まじく、飛距離数十メートルを誇るものもあるらしいが。

支給された弾丸、もといアンプルは二種類。無記名の注射器と『H173』と書かれた注射器だ。
この『H173』がどのような効果を及ぼすのかは分からない。
とはいえこのアルファベットと数字の組み合わせは、おそらく何かの病原菌である可能性が高い。
一時期流行った食中毒の菌も、似たような名前だった事だし。


645 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:39:31 ID:XIjyxvE2
 

646 :捨てる神あれば拾う蟹あり ◆tu4bghlMIw :2007/07/08(日) 22:40:07 ID:LWf56WRy

そう考えると無記名の注射器の方に注目したくなる。
何か『人間以外の生き物』が近くにいれば試し撃ち出来るのだが、この島に来てから人間にしか出くわしていない。
確率的には"麻酔銃"なのだから、純粋に麻酔である可能性が最も高いのだが……。

「さっきはどっちを撃ったんだろうな……。とりあえず、威嚇用とはいえ病原菌を注射するのはマズイ……か」

原付を運転する片手間に弾丸を銃に込める。どうやら弾は一度に一つだけしか入れる事が出来ないらしい。
連射が利かないというのは確実に当てなければならないと言う事。
そしてコレはエアガンであるという事。
相手にこれが知られてしまえば、実際何の威嚇にもならないだろう。
危険人物と相対する場合でも100%命中させる事が可能な距離まで近づかなければならない、という結論に達する。

――そんなに強力な武装って訳でも無いか……厳しいな。
先程の病院の爆発から考えるに、おそらく爆薬を支給された参加者もいたのでは無いだろうか。
それに麻酔銃などという奇をてらった物では無く、"本物"の銃を持っている人間も存在するのだ。安心出来る装備では決して無い。

ふと視界の中に見慣れた形の建物が見える。学校だ。
古今東西、基本的に学校と言うものの構造は変わらない。
自分が通うバーベナ学園もモデル校的な側面は持ち合わせているが、校舎の形などの基本的な部分は一般的な学校の概念と変わりはない。

「戻れないよな……もう、今までの日常には」


647 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:40:17 ID:Z8XYD4EM
 

648 :捨てる神あれば拾う蟹あり ◆tu4bghlMIw :2007/07/08(日) 22:42:05 ID:LWf56WRy

吐き出すようにそう零す。当たり前のように自分の命を狙ってくる人間。
映画の中でしか見られないようなドラスティックな光景。
そして最愛の人の死。
違う。既に自分の中の常識が通用する世界ではないし、環境もまるで別物。
楓や亜沙先輩やネリネに関しても今、どうなってしまっているのか分からない。
大体、自分は最初の放送を聞き逃している。目覚めたときは側に六時過ぎであったのだから。
今まで出会った人間がどうなったのか、まるで分からないのだ。


「あれ……蟹、沢?」

ハッとする。思わずブレーキレバーを思い切り握り締めてしまう。
急停止。反動で身体が前方に吹っ飛びそうになる。
そうだ、蟹沢きぬ。俺はアイツと別れて、そして――。

「糞ッ!!何で忘れてたんだ!!
 今は……十一時か、日の出なんて何時間前だよ!!」


『上手く撒けたらこの先の街……そうだな、病院で待ってる。
 日の出までに来なかったら置いてくからな』


俺は馬鹿か。自分でそんな軽口を叩いておきながら、そんな大切な事を忘れていたなんて。
蟹沢の性格からして、病院に到着できたとして、そこに俺がいなかったらどうするのだろうか。
そのまま待ち続ける?
呆れて他の場所に移動する?
どちらの可能性のほうが高い?


649 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:42:41 ID:Z8XYD4EM
 

650 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:43:01 ID:jxktAKrY
支援

651 :捨てる神あれば拾う蟹あり ◆tu4bghlMIw :2007/07/08(日) 22:43:04 ID:LWf56WRy
……そうだ、放送。放送を基準に行動するに違いない。
死んだ者は動かない、話さない、考えない。
つまりそれは生きている人間にとって、全てその逆説が成り立つ事になる。
俺が生きている限り、アイツは病院の周辺にいるはずだ。俺が到着する可能性を信じて。
アイツはちゃらんぽらんなように見えるが、実直な人間だと思う。
必ず、生きていれば病院にやって来る。
今から俺が行って既に移動してしまっていたとしても、書置きの一つくらいあるはずだ。

……だが待てよ。俺はさっきまで"何処"にいた?
そうだ、俺は『病院に』いた。
六時前に到着し、出たのも八時過ぎ。しかし蟹沢らしき人物とは一切出会っていない。
常識的に考えれば『まだ来ていなかった』か『もう来れなくなった』その二択になる。
どちら……だ?後者は正直考えたくない可能性だ。明らかに判断材料が足りない。
放送を聞き逃した事がまさかここまで痛手になるとは思わなかった。

「だからって……無視するなんて……出来るわけ無いだろ」

俺が神社を目指しているのは、そこに人殺しが終結しているという情報を得たからだ。
逆を言えば神社は、そんな人間が互いに潰し合いをしてくれる可能性が存在する場所でもある。
加えてこの場所に楓達がいる、という確定的な情報がある訳では無い。
危険で今すぐにでも駆け付けたい場所である事は確かだが、確実に待っている相手がいるのにそれを無視する事は出来ない。

稟は原付のキーを回した。
丁度学校の校門の前で減速させつつ、慎重にUターンさせる。
視界の端で土が掘り返され、小山が出来ているのを視認したが、今はそんなものに構っている時間は無い。
ひとまず病院へ。先程の連中と出くわす可能性もあるが、未だあの倒壊しつつある病院にいるとは思えない。
それに今の俺には機動力がある。出くわしても舗装された道なら十分に振り切る事が出来るはずだ。




652 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:43:15 ID:XIjyxvE2
 

653 :捨てる神あれば拾う蟹あり ◆tu4bghlMIw :2007/07/08(日) 22:43:48 ID:LWf56WRy


行く先の見えない深い森を抜けると学校であった。
思わず顔が青くなった。焦りに脚が止まった。

「あれ……なんで?」

学校。学校だ。どこをどう見ても学校である。
蟹沢きぬはたっぷりと時間をかけてココまで辿り着いた。否、時間をかけるしか無かった。
なにしろ彼女の身体は既に満身創痍状態に近い。コレまでは完全に気力で手足を動かしているに近い状態だったのだ。
疲労が溜まり過ぎている。本来ならば少しは休憩を挟んだほうがいいレベルのソレが。

途中、山小屋のような場所に立ち寄ったが中にめぼしい物は無かった。
明らかに誰かが既に訪れた痕跡があったことこそ僥倖だったが、それ以外に役に立ちそうな物は何も見つけることが出来なかった。
そしてふらふらになりながら脚を進めて、いい加減目的地に辿り着いた、そう思えばコレだ。
明らかに運が無い。

「学校……って、えーと地図を思い出すと……真逆? ってオイオイ、ボク明らかに内の方に向かってんじゃん!!」

ミスった。完全に判断ミスだ。
左か右、なんとなく左を選んでしまったがどうも正解はもう片方の答えだったらしい。
時間は……校舎の入り口の上のほうに設置された時計によると、今は十一時三十分らしい。
そうだ、少し学校の中に寄って行こう。色々役に立つ道具があるはずだ。
時計と地図、最低でもこれくらいは手に入れておきたい。
もう約束の時間からは相当な時間が経過している。
既に稟は病院からいなくなっているのではないかと言う不安が頭を過ぎる。


654 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:43:58 ID:jxktAKrY
 

655 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:44:31 ID:XIjyxvE2
 

656 :捨てる神あれば拾う蟹あり ◆tu4bghlMIw :2007/07/08(日) 22:44:37 ID:LWf56WRy

「ま、あのヘタレも本当にボクを置いていくような鬼畜な真似はしねーだろうし……ちょっと寄ってくか」

そう自分に言い聞かせると、きぬは茂みから出て、校門の方に向かう。
そこで彼女は、明らかに自らの日常の感覚とは異質な、二つの違和感に気付いた。

一つ目が小山。校門の柱の部分に明らかに最近掘り返されたと思わしき土の山が出来ている。
こんもりと盛り上がった土肌の上には三つの花が置かれ、まるでソレは何かを供養しているかのように見えた。
二つ目がその小山の少し先に見えた、赤い水溜り、ではない血の池。
身体のどこか一部分を蛇口にでもしたようなおびただしい量の血液。

「お……コレ、コレって……マジで……?」

二つを結びつける。
大量の血液。何か大きな質量を持つ物体を埋めたような土の山。
血液、土山。つまりは――。

「は、は、は……マジかよ。じゃあこの土の中には……死体、が埋まってる事、か」

ゴクリと息を飲み込む。
思わずその場にへたり込んでしまう。
無理もない。様々な襲撃者と出くわしてはいたものの、彼女が生の死体と出くわしたのはコレが初めてなのだから。
その時。
後ろに付いた右手に何か硬い物が当たる。
掌に感じた芝生の感触と同時に指先に感じる鉄の触覚。

「え?」

"銃"だった。
血の池のすぐ側、茂みの中に隠れるようにソレが転がっていたのだ。
思わず手に取る。ズッシリと重い感触が、グリップを通じて伝わって来た。
今まで遊びで手にしたエアガンやガスガンなどとは明らかに違う、"本物"の匂いがする。

657 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:44:40 ID:Z8XYD4EM
 

658 :捨てる神あれば拾う蟹あり ◆tu4bghlMIw :2007/07/08(日) 22:45:21 ID:LWf56WRy

しかし何故こんな場所に銃があるのだろうか。
いや、確かにこの辺りで起きた事態を推理するための材料がまた一つ増えた事は確かなのだ。
血液、土山、そして銃。コレだけの要素が揃えば何が起こったかを予想するのは容易い事。
だが解せない。『どうしてここに銃が落ちているのか』と言うことについてだ。

きぬは辺りを見回す。
土山、血の池。それ以外にこの場所に違和感を感じる原因は存在しない。
おそらくこの場所で銃撃戦が行われ、そして誰かが命を落としたのだろう。
人間を埋葬した跡があるという事は、その人物には仲間がいた、と言う事になる。
では何故この銃を回収していかなかったのか。支給されたのは殺された側ではなくて、殺した人間だった……と言う事だろうか。

「ま、いいか。考えても仕方ねーし。しかしスゲェな……本物ってこんなに重いんだ」

先程のセーラ服の件といい、よく分からない事が多過ぎる。
そしてどちらも、深く考えれば答えが出るような問題ではないのが難しい所だ。
ならば。
とりあえず、難しい事を考えるのはソレが得意な奴にやらせる。これでいいのではないだろうか。
稟にしろ、姫やよっぴーにしろ、物事の分析に関しては自分よりもよっぽど長けているはず。
無理をして自分がその役割を担おうとする必要はどこにも無い。

慎重に銃をチェックする。
残りの弾丸は……四発。自衛のために使うとしても、無駄に乱射していてはおそらく一瞬で弾薬を使い果たしてしまう危険性がある。
どのようなタイミングで使うべきか。熟考する必要があるだろう。
とはいえ、今の今までの貧弱なナイフ一本という心もとない状態と比べれば途轍もない進歩には違いない。
コレがあれば敵意を持って襲い掛かって来た相手がいても、上手くやれば撃退する事も出来るはずだ。

「……でも気味悪いな、ホント。変な事ばっかじゃん」


659 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:45:31 ID:XIjyxvE2
 

660 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:46:03 ID:Z8XYD4EM
 

661 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:46:20 ID:XIjyxvE2
 

662 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:46:55 ID:Z8XYD4EM
 

663 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:47:00 ID:jxktAKrY
支援

664 :捨てる神あれば拾う蟹あり ◆tu4bghlMIw :2007/07/08(日) 22:47:16 ID:LWf56WRy

ため息。そして一瞬垣間見せる不安な表情。
残された拳銃。
血染めの竜鳴館のセーラ服。
謎の血溜まり。
そして、埋葬された人間の墓。

このほんの数時間の間に、自分に降りかかって来た謎にはまるで"筋"と言うものが無い。
この周辺で命のやり取りが行われた、それすら信じ難い現実であるのだ。
だがそこから感じる不気味さは所詮、感覚的なものであって、悲しみや怒りといった直接的な感情に結びつくレベルにまでは達していない。

それは放送の際、名簿で名前を確認しただけの人間の名前が次々と読み上げられていくのを静観する状態と似ている。
この時の自分の心を支配するのは『知り合いの名前が呼ばれないで欲しい』という感情だけ。
知らない人間の名前が呼ばれる事に対しては、悲劇めいた感想を持ちはしないものだ。
せいぜい『もうこんなに沢山の人間が死んだなんて……』くらい。自らの冷静さを奪い去るほどの効力を発揮はしない。

「……ま、いいか。それより、地図とか探さねーとマトモにどこにも行けないぜ」

きぬは両足に力を込めると力強く立ち上がった。
掌の中の拳銃をキツく、一度握り締める。
その顔つきにもう、迷いは無い。校門をくぐる。そして校舎に向かってゆっくりと歩き出す。

彼女の親友のうち、既に二人はこの世にいない。
生半可な不思議と出くわしても、それに怯え、意志を曲げるような不実はもう彼女にとっては在りえない事となっていた。
彼女は背負っている。死んでいったレオとフカヒレの意志を。
そしてこの馬鹿げたゲームを考えた人間を仲間と協力して一度、痛い目に合わせる。
ソレが今、蟹沢きぬがやらなければならない唯一の事なのだから。
女々しい事で涙を流すわけには、いかない。


665 :捨てる神あれば拾う蟹あり ◆tu4bghlMIw :2007/07/08(日) 22:47:57 ID:LWf56WRy



【E-5 学校/1日目 昼】

【蟹沢きぬ@つよきす-Mighty Heart-】
【装備:S&W M60 チーフスペシャル(.357マグナム弾4/5)】
【所持品:投げナイフ1本、竜鳴館の血濡れのセーラー服@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:精神高揚。両肘と両膝に擦り傷。数箇所ほど蜂に刺された形跡。疲労極大。】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:学校で地図や時計などの道具を入手
2:待ってろよヘタレ(土見稟と合流)
3:稟と合流後、博物館へ急ぐ(宮小路瑞穂達と合流)
4:ゲームをぶっ潰す
5:スバル、乙女さん、姫、よっぴーのうち誰かと合流したい。

【備考】
※レオの死を乗り越えました
※アセリアに対する警戒は小さくなっています。

『皆さんに支給された重火器類の中には実は撃つと暴発しちゃうものがあります♪
 特に銃弾・マガジンなどが大量に支給された子は要注意だぞ☆』
※“S&W M60 チーフスペシャル(4/5)”が暴発する原因は装填された弾丸の火薬超過にあります。
 リボルバー形式の残弾4つのうち、1つだけが暴発します。
 また、支給されている.357マグナム弾(40発)の中にも超過火薬の弾丸は含まれています。



666 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 22:48:05 ID:XIjyxvE2
 

667 :捨てる神あれば拾う蟹あり ◆tu4bghlMIw :2007/07/08(日) 22:48:39 ID:LWf56WRy
【F-4 住宅街/1日目 昼】

【土見稟@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【装備:麻酔銃(IMI ジェリコ941型-麻酔薬装填)】
【所持品:支給品一式x2、投げナイフ一本、ハクオロの鉄扇@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、拡声器、
     麻酔薬入り注射器×3 H173入り注射器×2、炭酸飲料水、食料品沢山(刺激物多し)】
【状態:L5侵蝕中。背中に軽い打撲。頚部にかなりの痒み(出血中)。腕に痺れ。酷い頭痛】
【思考・行動】
基本方針:参加者全員でゲームから脱出、人を傷つける気はない。
1:L5侵攻中
2:襲ってくるならば戦うしかない?
3:病院で蟹沢と合流(少し待ってこなければ移動)
4:第一回放送の内容を知りたい
5:神社へ向かう(ネリネ、楓、亜沙がいれば救出)
6:ネリネ、楓、亜沙の捜索
7:水澤真央が気になる
8:もう誰も悲しませない

【備考】
※シアルートEnd後からやってきました。
※H173が二本撃たれています。今後のL5の侵蝕状況は次の書き手さんにお任せします。
※倉成武を危険人物と断定
※稟の乗っている原付車の燃料は残り半分です。
※稟は第一回放送を聞き逃しています

668 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:13:18 ID:I0aWS+Ci
「ここは……映画館か。」
さくらの埋葬を終えた朝倉純一は隣のエリアD−3の映画館の前に来ていた。
(もし、無事に戻ることが出来たら、皆で映画でも見にいきたいな……)
そこにさくらはいない――そう思うと少し悲しくなる。
どれくらいここに居たのだろうか
(いつまでも感傷に浸って場合じゃないな。行こう。)
立ち去ろうとした矢先、
「動かないで。」
背後から聞こえた冷たい声。
(もしかして、また絶体絶命?)
またも訪れた自らの命の危険に純一はただ焦るばかりだった。




・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・





669 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:13:32 ID:Z8XYD4EM
 

670 : ◆/P.KoBaieg :2007/07/08(日) 23:13:38 ID:jxktAKrY
 

671 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:14:32 ID:Z8XYD4EM
 

672 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:14:53 ID:jxktAKrY
支援

673 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:15:55 ID:I0aWS+Ci
(できるかぎり正午までに武を見つけたいわね)
朝倉音夢、ネリネから離れ武たちの捜索を始め、今はD−3にいるつぐみはまずそう思った。
音夢たちとのもあるが、それよりも正午ぐらいには太陽も高くなる。そうなると必然的に紫外線も強くなる。
自分の体のことを考えると正午近くはあまり動き回りたくはない。
そんな事考えていると遠くにある建物近くに人影が見えたように感じ、車をとめた。
幸いつぐみにはきずいていない様だ。
(とりあえず、情報だけでも聞き出して見ようかしらね)
そうつぐみは思い車から降りる、手には釘撃ち機を持って。
そのままつぐみは物陰に隠れつつ静かに近づいていった。
人影は少年のものだった。それは音夢から聞いた『純一』の姿に似たものだった。
(あれが純一だったら……随分と早く見つけたことになるわね。)
だが純一が殺し合いに乗ってるかもしれない――その可能性があるのでつぐみはそのまますばやく背後に近づき
「動かないで。」
とそう告げた。もしを変な行動を起こしたら容赦なく釘を打ち込める気だ。

674 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:16:23 ID:jxktAKrY
支援。

675 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:17:03 ID:jxktAKrY
支援

676 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:18:12 ID:I0aWS+Ci
「あなたは殺し合いに乗っている?」
「……いや、乗っていない。」
とはいってもまだ安心できない。だからつぐみは
「なら、今手に持っている銃と荷物を地面に置いてちょうだい。そうしないと安心できないわ。」
「……わかったよ。」
純一とてこんな所で命を落としたくは無い。
素直に要求に従い銃と荷物を地面に投げた。
「これでいいか?」
「……OKよ。そしたらこっちに向いて頂戴。」
純一は無言のまま振り向いた。
するとそこには黒く長い髪をもった少女がいた。その少女は
「私の名前は小町つぐみ。つぐみでいいわ。驚かしてごめんなさい。私も乗ってはいないわ」
と名乗り、釘撃ちをデイバックの中に仕舞い。そして
「あなたは倉成武に会った事、もしくは何か武についての情報を知っている?」
「いや、残念だがどちらもないな。」
「そう……わかったわ」
つぐみとってこの少年が純一であるかという事よりもまず武のことが少しでも知りたかった。
知っている可能性が少ないとはいえ……やはり少し残念だった。
そのつぐみの様子を察したか、純一は
「大切な……人……なのか?」
「そう……とても……とても大切な人……。」
そうつぐみは愛おしそうに言った。
つぐみにとって武は唯一自分を受け入れてくれた人。
誰にも変える事ができない大切な人なのだ。
そんなつぐみの想いが純一にも感じ取れた。
がつぐみはすぐ我に帰り、
「それで……あなた、もしかして朝倉純一?」
「どうして俺の事を!?」
(やっぱり思ってた通りね。)
純一の顔が驚きに変わっていくのをみながらつぐみは言葉を続け

677 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:18:41 ID:Z8XYD4EM
 

678 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:18:56 ID:I0aWS+Ci
「あなたの妹、音夢から聞いたのよ」
「音夢!?音夢は無事なのか!?いまどこにいる!?」
純一はさらに驚きを見せ、矢継ぎ早に質問を返した。
純一のとって音夢は最優先で探しだすべき存在であり、しかももうすぐで行方が分かるかもしれないのだ。
焦らない訳が無かった。
「そんな1度に沢山言われても解らないわ。」
つぐみはそんな純一を宥め、そして一つの建物を指を指した。
「あそこで落ち着いて話さない?あまり日にあたりたくないのよ。」
指を刺した先はさっきまで純一が傍にいた、
 映画館であった。




・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・





679 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:19:04 ID:jxktAKrY
 支援

680 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:19:38 ID:I0aWS+Ci

「それで音夢は無事なのか!?」
自分の荷物をまとめ映画館に入った純一はまず真っ先にこの事を聞いた。
「ええ、たぶん大丈夫だと思うわ。さっきまで一緒行動していたし。私は武やあなたや稟を探すため離れたけどね。正午なったら戻るつもりだけど」
(そう「たぶん」ね。もしかしたらあの戦いでもう死んでるかもしれないけど。)
そんなつぐみの考えとは裏腹に、純一は安心しきった顔で
「そうか……無事だったのか、音夢。……よかった……本当によかった……」
純一は今まで張っていた緊張の糸が切れた気がした。



これで純一に博物館の場所を教えて、連れて行くか行くように指示すれば、つぐみの役割は終わるのだが――

(なんか、釈然としないわね。むしろだんだん苛立ってくる!)

――そう釈然としないのだ。また苛立ちもおきていた。

それは音夢の無事を知り安心しきっている純一に対する苛立ちだった。
いまだ武の足がかりすら掴めていない焦りともう音夢との再会がちかい純一への小さな嫉妬からきた苛立ちだった。

そんな苛立ちの中、つぐみはちょっとした意地悪な事を思いついた。
それはたった一言のこと。
でもそれは純一を絶望へと落とすかもしれない言葉。
それは些細な純一に対する報復。
でもそれは純一を変えてしまうかもしれない事。

そんな事をつぐみは実行した。

681 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:19:52 ID:Z8XYD4EM
 

682 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:20:18 ID:I0aWS+Ci





「ねえ、どうしてそんなに安心してしているの?」
「どうしてって……音夢が無事だったんだ、当然だろ。」
「ふ……ん、じゃあもし音夢が……」

そしてつぐみは告げる、その一言を。

「殺し合いに乗っているとしたら?」

「は?…今、何て言った?」

「だから音夢は殺し合いに乗っているのよ。もう2人も殺したわ。」

そう、つぐみが告げたのは「音夢が殺し合いに乗っている」ということだった。
遅かれ早かれ純一は音夢が乗っているのは分かってしまう。
それなら今つぐみが伝えても問題は無い。
安心しきっている純一が絶望するのが見てみたかった。
その後純一が音夢とどうなるかなんか自分の知っちゃことではない。
そう思いした、ちょっとした意地悪な事、些細な報復。


683 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:20:39 ID:jxktAKrY
支援

684 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:21:10 ID:Z8XYD4EM
 

685 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:21:19 ID:jxktAKrY
支援

686 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:21:21 ID:I0aWS+Ci

つぐみの予想したとおり純一は絶望の色に染まり、動揺していた。
「そんな……なんで音夢が、乗っている?……なんで?」
「あなたのためだって言ってたわよ。」
「俺のため?」
「そう、あなたを盗んだ泥棒猫から取り返す、そしてその泥棒猫と邪魔な人間を殺すと言っていたわよ。」
「そんな理由で殺し合いに乗ったのかよ、音夢。それに泥棒猫ってなんだよ、俺はお前と一緒に行くっていったのに……」
(変ね、音夢と純一が言ってる事が食い違ってる、何故?)
つぐみは音夢と純一が言ってる事の矛盾に気付いた。その時純一が
「どうして……音夢を止めなかった?仲間だったんだろ?」
と言ってきた。それに対しつぐみは
「勘違いしないでくれる?わたしと音夢は互いを利用するというだけの関係で仲間って訳じゃないわ、だから止める必要もない。」
そう言い放った。
(そろそろ潮時ね。もう興味ないわ。)
つぐみは些細な報復が成功したのを感じた。もう純一には興味は無い。あとは純一に音夢の場所を教えて、武の捜索を続けるだけだ。
幸いここから博物館は近い。一人で行けるだろう。
そう考えた矢先、純一は急に顔を上げた。
だがその顔に絶望はなく、決意に満ちた顔だった。
そんな純一の顔につぐみは戸惑い、また何処かで見たようなデジャブを少しだけ感じた。



687 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:22:09 ID:Z8XYD4EM
 

688 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:22:11 ID:jxktAKrY
支援

689 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:22:22 ID:I0aWS+Ci




(ちくしょう、さくらに続いて音夢もか、どうして俺の周りの女の子はこんなんばっかなんだ、かったるい。)
純一は音夢が殺し合いに乗っている聞き、最初は戸惑いこそしたが今は違う。
純一がするべき事はもう決まっている。
顔を上げつぐみに告げた。
「なら……止める!音夢が殺し合いをする事を俺が止めてみせる!」
そんな純一の言葉につぐみはさらに戸惑いを強め、
「あなたの言葉ならやめるかもしれないわね。でも、あの子、邪魔なもの徹底的には排除するみたいよ。それでも止める事ができるの?」
つぐみのその言葉に間髪いれずに純一は答える
「それでもだ!元々音夢が殺し合いをする人間じゃなかった。だから話し合えばきっと大丈夫だ。」
(なんて甘い……甘い人間なの!)
純一のその言葉につぐみはさらに戸惑い苛立った。
一度、修羅に堕ちた人間が戻ってくるのは難しい。
それでもなお、話会いをすれば大丈夫と言う純一にはつぐみには耐えられなかった。
それに加えさっき感じていたデジャブが強くなっていた。


690 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:22:58 ID:I0aWS+Ci

純一はさらにつぐみに告げる。
それはさくらを失って考えた事。
自分がこの島でするべき事。
貫くべきスタンス。
二度と曲げない信念。
それを今つぐみに伝える。

「それに……音夢だけじゃない、俺は他に殺し合いの乗った人間も止める!」
「あなた、何言ってるの!?見ず知らずの人間まで止めるっていうの!?」
「そうだ!皆、ゲームが始まるまでただの普通の人間だったんだよ。俺と同じく変わらない日常過ごしてたんだ。だから止める事も出来るはずなんだ。
(馬鹿な人、とてもお人よし!そんな甘すぎる考えよくもてるわね!)
つぐみの苛立ちはピ−クに達していた。
つぐみには信じられなかった。
見ず知らずの人、それも殺し合いの乗った人間というのだ。
お人よしにもほどがある。
その甘すぎる考えが信じられなかった。
が、それと同時に思いの反面、朝倉純一という人物をだんだん認め始めている自分が信じられなくてさらに苛立った。
強く感じているデジャブなお一層強まってきた。
(私はこんな人間を知っている?)
とさえ感じ始めた。

691 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:23:22 ID:Z8XYD4EM
 

692 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:23:32 ID:jxktAKrY
支援

693 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:23:46 ID:I0aWS+Ci
それを振り払う様につぐみは
「第一話合いが出来なきゃどうするのよ!?もし戦闘になったら!?」
「戦闘になったら、まずは対処する。そして拘束するなりしてその後止めるさ。殺したりは決してしない。」
(なんて命知らず!お人好し!馬鹿な人間!)
苛立ちはもう爆発しそうだった。
しかしそれと同時にデジャブは無視できなくなっていった。
もしかたらデジャブの正体に気付いてるのかも知れない。

694 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:25:11 ID:I0aWS+Ci
それでもそれすら振りはらおうとして
「そんなことしてたらいつか自分が死ぬかもしれないのよ!?それでもするの!?」

そのつぐみにたいする純一の言葉はつぐみのわだかまりと苛立ちをとくことになった。
その言葉は――

「大丈夫だ、俺は死なない!こんな所で死ぬわけにはいかないんだよぉ!!」


――それは17年前武が言った言葉そのままだった。


(あぁそうか……純一は武に似てるんだ……)




695 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:25:37 ID:g0KklWlj
支援

696 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:25:49 ID:Z8XYD4EM
 

697 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:25:53 ID:I0aWS+Ci
もの凄くお人好しで馬鹿で甘く無駄に熱い人。

純一に抱いてた人間像がよく考えてみるとこれほど武に当てはまるものはなかった。
だから強烈なデジャブを感じていた。
それでも認めたくは無かった。
自分の抱いている武の印象を他人に投射したくは無かった。
だからそんな純一に苛立っていた。
でも純一の言葉で認めてしまった。
純一が武に似てることを。
その言葉は17年前武が言った言葉。
『俺は死なない』
それはつぐみとって大切な言葉。忘れることが出来ない言葉。
その言葉で認めてしまった。純一が武に似てることを。
似ていること認めれば自然に苛立ちは無くなってしまった。
それに自分がこういう人間に弱いのも知っている。
だから認めた。
純一の生き方を。

(認めてしまったら、こんなにすっきりとした物はないわね……)
つぐみはその武に似た少年の決意を聞き続けた。

698 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:26:37 ID:5R6zKUGB



699 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:26:42 ID:I0aWS+Ci



「俺だけじゃない!この島にいる皆、こんな所で死んじゃいけないんだ!乗っている人間もそうだ!皆最初は普通だったはずだ!」
「皆、こんな腐れたゲームのせいで、狂う必要はないんだ。俺らが生きる場所は普通の日常だ!殺し合いなんかじゃない!」
そして純一は告げる。

「だから俺は、ゲームを止める!俺はこの島で殺し合いに乗ってる人間を止め、この島で生きてる人間全員でこのゲームから脱出するんだ。」
それが純一のこの島での生き方。
殺し合いに乗ってる人間を止め全員での脱出。
それが純一のスタンス。
固い決意。
揺るがぬ信念。





700 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:26:43 ID:Z8XYD4EM
 

701 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:26:48 ID:jxktAKrY
支援

702 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:27:26 ID:I0aWS+Ci

(本当に甘いわね。でも悪くは無いわ。……私も随分弱くなったものね。武に似たのかしら?)
人の信用を得るのは簡単ではない。でもきっかけできれば簡単に信用を得る事が出来る。
つぐみがそうだった。
(私がこの島で武以外を信用するなんてね。本当に信じられないわ。)
でもそれは事実だった。
純一の決意を聞いてつぐみは純一を信用した。純一が武に似てることも影響したのかもしれない。
だからつぐみは穏やかに純一に話しかけ
「なら、今度は自分の周りをよく警戒することね。そうしないとあなたの決意無駄になっちゃうわよ?」
「お、おう。分かった、気をつける。」
純一はつぐみの態度の違いに驚いた。つぐみはさらに言葉は続け、
「それと音夢は今博物館にいるわ。」
「博物館?」
「そう。隣のエリアにあるわ。ここから歩いていけるわ。だからいきなさい。」
つぐみは純一に行くように促す。だが純一は動かなかった。
「どうしたの?音夢待ってるわよ?」
「ああ、……つぐみはこの後どうするんだ?」
「武を探すわ。」
「あてはあるのか?」
つぐみは押し黙った。当ては無いようだ。
それを悟った純一はとんでもないことを言ってのけた。

703 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:28:15 ID:I0aWS+Ci

「そうか……なら、俺はつぐみについてくよ。つぐみを手伝う。」

「は!?あなた何いってるの!?」
つぐみは信じられないふうにいい、純一は繰り返した。
「だからついてくよ。いいだろ?」
「いい訳ないわよ、あなた音夢はどうするの?」
「そりゃ今すぐいきたいけど、おれは目の前で困ってる人を無視できない。それに正午になれば会えるんだ。その時合流すればいい。」
それに、と純一は付け加え
「俺にはつぐみが悪い人間は思えないしな。」
(あ……呆れた、なんて救いようが無いお人好しなの!?武以上のお人よしだわ……)
つぐみほとんど呆れながら反論した。
「二人で探しても非効率でしょ?」
「いいじゃないか、1人よりも2人、だろ?」
(り……理にかなってない、どうしてもついて行きたい様ね)
こういうお人好しを止めることはできない。それは17年前に知っていた。
だからつぐみは
「いいわ、勝手にしなさい、純一。」
諦めた様にそう承諾した。
「そうか!よろしくな、つぐみ。」
純一はそう言い、右手を差し出した。
つぐみ同じようにし握手をした。
それは音夢の時は違い、互いを信用し仲間としての意思表示。
(兄妹でここまで違うものなのかしら?)
そんな純一にペースを狂わされまくっているつぐみだった。

704 : ◆iWNzks43D6 :2007/07/08(日) 23:29:13 ID:I0aWS+Ci




・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・




一緒に行くことが決まり準備をしている二人だったが、
「つぐみ、ちょっとこれを見てくれ。」
純一は何か見つけたようだった。
「これはメモ?」
そう、ハクオロたちが書いたメモだった。
「行き先が無いのなら、こいつらに会ってみないか?武って人のことを知っているかもしれないし。」
「そうね、病院に向かおうとおもっていたけどこっちの方がいいわね、首輪について何か知っているかもしれない。」
メモに名前書いてあるのだから、ハクオロ達がゲーム乗ってる可能性は低い。つぐみはそう思い
「先回りしましょう。時間もまだそんなに経っていないし。」
「先回りできるのか?歩いていくにはきついじゃないか。」
「純一にはいってなかったわね。私、車できてるのよ。」
「そうか、じゃあ安心だな。なら行こう。」

705 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:29:55 ID:Z8XYD4EM
 

706 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:32:29 ID:jxktAKrY
支援

707 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:32:38 ID:Z8XYD4EM
 

708 :(代理投下) ◆/P.KoBaieg :2007/07/08(日) 23:35:28 ID:jxktAKrY
純一は映画館を出ようとしたが、
「純一、ちょっと待って。」
「うん?なんだ?」
「純一、音夢はどういう関係なの?」
「え?妹でもあり……大切な恋人だよ。」
純一恥ずかしそうにいったが、
(やっぱり変ね。純一は恋人だったいったけど音夢は違うといった。どっちも嘘をついてる様には見えないしどういう事?)
つぐみはさらに疑問を深めたが、
(まあ、とりあえずはいいか)
「では行きましょう、北へ。」
「ああ、行こう」
2人は進路を北に向けた。




だが純一は知らない。音夢がもうこの世にい居ない事を。
それ知っても決意は揺らがないのだろうか?
それはまだ誰もわからない―――


709 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/08(日) 23:35:33 ID:XIjyxvE2


710 :(代理投下) ◆/P.KoBaieg :2007/07/08(日) 23:36:09 ID:jxktAKrY
【D-3 映画館 1日目 午前】




【朝倉純一@D.C.P.S.】
【装備:ミニウージー(24/25)】
【所持品:支給品一式 エルルゥの傷薬@うたわれるもの オオアリクイのヌイグルミ@Kanon】
【状態:体力回復・強い決意・血が服についている】
【思考・行動】
基本行動方針:人を殺さない 、殺し合いに乗ってる人間を止め全員での脱出
1. つぐみと共に北へ向かう。
2.つぐみと共に武を探す。(正午には戻るようにする。)
3.音夢を説得する
4.ことり、杉並を探す。
5.殺し合いからの脱出方法を考える
6.さくらをちゃんと埋葬したい。
【備考】
芙蓉楓の知人の情報を入手しています。
純一の参加時期は、音夢シナリオの初キス直後の時期に設定。
※つぐみを信用しました。
※つぐみとは年が近いと思ってます

711 :(代理投下) ◆/P.KoBaieg :2007/07/08(日) 23:36:50 ID:jxktAKrY
【小町つぐみ@Ever17】
【装備:スタングレネード×9】
【所持品:支給品一式 天使の人形@Kanon、釘撃ち機(20/20)、バール、工具一式】
【状態:健康(肩の傷は完治)】
【思考・行動】
基本:武と合流して元の世界に戻る方法を見つける。
1純一と共に北へ向かう
2純一と共に武を探す。(正午には戻るようにする。ただし見つかった場合この限りではない)
3:ゲームに進んで乗らないが自分と武を襲う者は容赦しない
4稟も一応探す。
【備考】
赤外線視力のためある程度夜目が効きます。紫外線に弱いため日中はさらに身体能力が低下。
参加時期はEver17グランドフィナーレ後。



※音夢とネリネの知り合いに関する情報を知っています。
※車はキーは刺さっていません。燃料は軽油で、現在は少し消費した状態です。
※純一を信用しました。
※音夢と純一の関係に疑問を持ってます。
※純一には博物館の戦闘を話していません。


712 : ◆jWwIlynQcU :2007/07/10(火) 11:58:55 ID:u8Xh7Ywt
タイトル

それぞれの出会い。

(ボクは誰も殺したくなかったのに……どうして?……どうして?……どうして?)
(乙女さん、大石さん、名雪さん……みんな死んでしまった……)
(違う、ボクが殺したんだ……。でも、どうしてあんなことに)
(誰か、誰かボクを助けてよ!)」

月宮あゆは恐怖で混乱していた。
はっきり言えるのは、ただその場から離れたいと思っているという事だった。
なぜなら自分が乙女や大石、そして名雪を手にかけたと思いたくなかったから。

その時あゆの脳裏には佐藤良美の事が浮かんだ。
あの人ならきっと助けてくれると思った。
だから今、あゆは彼女がいるであろう薬局を目指して走る。
南の商店街へ向けて。


713 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:00:11 ID:z84cpKql
支援

714 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:00:23 ID:qUdw5e+X
sien

715 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:01:48 ID:qUdw5e+X
 

716 : ◆jWwIlynQcU :2007/07/10(火) 12:02:36 ID:u8Xh7Ywt
「はぁ……はぁ……もう、ダメ……」

だが、彼女の体では走り続けるにも限界がある。
加えて名雪の槍によって受けた左肩の傷が痛む。
おまけに息も荒くなり胸が苦しくなる。
その傷が体力を奪っていく中、遂にあゆは商店街までの途中の道で倒れてしまった。

(あゆちゃん……どうして、どうして殺し合いに乗ったの……?)

水瀬名雪は恐怖と怒り、そして決意を胸に秘めていた。
今の自分には殺し合いに乗ったあゆの手から、大好きな従兄弟である祐一を守りたいという思い。
そして、あゆの危険性を他の人に伝える責務がある。
その為には潰された右目の痛みにも耐えるつもりだった。

しかし彼女もまたあゆとの乱闘により疲弊し切っており、
惨劇の現場となった民家からそれほど離れないうちから息切れする。

いかに陸上部の部員といえど、右目を失い乱闘による疲労が重なっては
さしもの名雪も苦しいと言わざるを得ない。

(だ、誰……?)

その時、名雪の左目にこちらへ向かってくる人影が見える。
思わず手にしていた槍を構える名雪。
だが、疲労により槍を取り落としてしまう。

(あ、ダメ、ここで倒れたら……)



717 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:03:29 ID:z84cpKql
支援

718 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:03:30 ID:qUdw5e+X
 

719 : ◆jWwIlynQcU :2007/07/10(火) 12:04:48 ID:u8Xh7Ywt
名雪は、もう一度槍を拾い上げようとするが体に力が入らない。
そうしている間に人影はこちらに近づいてくる。
膝を地面についたまま、名雪はその人影をみつめる。

「おい、だ、大丈夫か!?」

その一言を聞いたとき、人影の主が殺し合いに乗ってない事が理解できた。
助かった。そう思った瞬間名雪の体から力が抜ける。

「だい……じょうぶだ……よぉ……」

そう答えると、名雪は目の前に立つ人影の主である「白鐘沙羅」に体を預けた。



「あれは……人?」

同じ頃、一台の救急車が商店街を抜けて神社に向けて走っていた。
その救急車を運転する人物――倉成武――は道路に倒れている人物を発見した。

「武さん、どうしました?」
「人が倒れているんだ。少し停まるぞ」

救急車を停車させるや武と圭一、美凪は救急車から降りて人影に近づく。
倒れていたのは顔と体を血に染めた少女だった。

「怪我でもしているのか……うわぁっ!」

真っ先に近づいた武はうつ伏せに倒れた少女を起こし
その顔を見た瞬間思わず叫び声を挙げる。
倒れている少女の顔が悪鬼の形相に見えたのだ。

720 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:05:16 ID:z84cpKql
支援

721 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:05:24 ID:qUdw5e+X
 

722 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:05:39 ID:qTEoGhIj
支援

723 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:06:20 ID:qTEoGhIj
支援

724 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:06:37 ID:z84cpKql
支援

725 : ◆jWwIlynQcU :2007/07/10(火) 12:06:57 ID:u8Xh7Ywt
だが、それも一瞬のこと。
再びその顔を見ると顔を血に染めたあどけない少女の顔だった。
どうすれば、この少女が自分に殺意を向けられるのか。

(さっきの二人の事といい、俺はどうなっているんだ?)
「武さん、どうしたんですか?叫び声なんてあげて?」
「いや、なんでもないんだ。それよりこの子を頼む」

「今の自分は明らかにどこかおかしい」という恐れにも似た感情を
抱えながらも、武は圭一と美凪に倒れている少女のことを任せ自分は
運転席に戻ろうとする。
いつの間にか、その手を喉に当てている事には気づかずに。


(また増えるの?)

一方、救急車のベッド下に身を隠していた咲耶は
外の会話を車内から聞きながら半ば呆れていた。
救急車が停止したのでどうしたのかと思ったが、どうやら道端で
倒れている他の参加者をみつけたらしい。
乗っていた三人は全員救急車から降りたみたいだ。

抜け出すとしたら今がチャンスしかない――。

彼らの行く先までこのままベッドの下に身を隠すつもりだった。
だが、正直この緊張は耐え難いものがあるし、体に悪い。
ここでコンディションを崩せば後々の行動に支障を来たすだろう。
幸い、後部座席にいた「前原」という少年と「遠野」という女性が戻る気配は無い。

(どちらにしてもこれ以上隠れるのは無理があるわね)



726 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:08:14 ID:qTEoGhIj
支援

727 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:08:40 ID:qUdw5e+X
 

728 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:09:06 ID:qTEoGhIj
支援

729 : ◆jWwIlynQcU :2007/07/10(火) 12:09:23 ID:u8Xh7Ywt
もし、これ以上人間が増えれば誰かが自分の存在に気付くのは確実だ。
そう思った咲耶は、すぐさまベッドの下から抜け出すと音を立てないよう救急車から降り、その場を離れる。

「今、後部座席の方で音がしたみたいだけど気のせいか……?」

武が運転席に戻ったのはその直後のことだった。
思わず後部座席の方を振り返るが、そこには誰もいない。
しかし、今の武にとっては自分の体の異変と神社へ向かう事に思考の大半を割いていた。
だから、まさか後部座席に誰かが隠れて乗っていたという発想には及ぶ筈もなかった。

(ここなら話も聞こえるし、姿も見えないわね)

救急車から離れた咲耶はすぐさま住宅地の角を曲がり、ある民家の敷地に入る。
そして、生垣を挟んで圭一達の位置から3メートルと離れてない場所に身を隠した。
これなら相手の声も救急車の中から外の会話を聞いたとき以上に良く聞こえる。
オマケにこちらの存在を気付かれる事も無い。
彼らはどうやらまだ発見した参加者を介抱しているみたいだ。
恐らくあの参加者を救急車に乗せてどこかに運ぶつもりだろう。
だが、まさか神社へ一直線というわけでもあるまい。



730 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:09:47 ID:z84cpKql
支援

731 : ◆jWwIlynQcU :2007/07/10(火) 12:10:53 ID:u8Xh7Ywt
そうしているうちに生垣の向こうで動きがある。
どうやら、倒れていた参加者が眼を覚ましたようだ。

(さぁ、話を聞かせてもらおうかしら)

咲耶は心の中でそう呟くと彼らの会話に聞き耳を立て始めた。
もし妹達の話が出るのならありがたいことこの上ない。
そうでなくても情報が得られるのはありがたい。

だが、焦りは禁物だ。
一度に4人を相手にするのは難しい。
だから今の間だけは話を聞く事に徹することにしよう。

咲耶はそう決めると生垣の向こう側で身を潜める。
殺気を隠しながらも、きっちりと地獄蝶々の柄には手をかけて。


732 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:10:58 ID:qUdw5e+X
 

733 : ◆jWwIlynQcU :2007/07/10(火) 12:11:59 ID:u8Xh7Ywt
【G-4 住宅街北/1日目 午前】

【水瀬名雪@kanon.】
【装備:槍 学校指定制服(若干の汚れと血の雫)】
【所持品:支給品一式 破邪の巫女さんセット(弓矢のみ(10/10本))@D.C.P.S.、乙女と大石のメモ、大石のデイパック、乙女のデイパック】
【状態:疲労極めて大。かなりの出血。右目破裂(頭に包帯を巻いています)。頭蓋骨にひび。軽欝状態。強い決意】
【思考・行動】
0:この人は敵じゃない。よかった……
1:早く祐一を探す
2:あゆちゃん……
3:祐一を襲いそうな人殺しは殺す。
4:衛と咲耶も探す
5:1〜4のために人のいる場所に向かう
【備考】
※芙蓉楓を危険人物と判断
※名雪が持っている槍は、何の変哲もないただの槍で、振り回すのは困難です(長さは約二メートル)
※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※前原圭一・古手梨花・赤坂衛の情報を得ました(名前のみ)
※ハクオロという人物を警戒(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※乙女と大石のメモは目を通していません。


734 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:12:47 ID:qUdw5e+X
 

735 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:13:28 ID:qUdw5e+X
 

736 : ◆jWwIlynQcU :2007/07/10(火) 12:14:21 ID:u8Xh7Ywt
【白鐘沙羅@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
【装備:永遠神剣第六位冥加@永遠のアセリア −この大地の果てで− ワルサー P99 (16/16)】
【所持品:支給品一式 フロッピーディスク二枚枚(中身は下記) ワルサー P99 の予備マガジン8 カンパン30個入り(10/10) 500mlペットボトル5本】
【状態:健康・強い決意】
【思考・行動】
0:倒れた少女を介抱する。
1:恋太郎を探す。
2:情報端末を探す。
3:首輪を解除できそうな人にフロッピーを渡す
4:前原を探して、タカノの素性を聞く。
5:混乱している人やパニックの人を見つけ次第保護 。
6:最終的にはタカノを倒し、殺し合いを止める。 タカノ、というかこのFDを作った奴は絶対に泣かす。
7:この場所から逃げ出す。
基本行動方針
一人でも多くの人間が助かるように行動する

※FDの中身は様々な情報です。ただし、真偽は定かではありません。
下記の情報以外にも後続の書き手さんが追加してもOKです。
『皆さんに支給された重火器類の中には実は撃つと暴発しちゃうものがあります♪特に銃弾・マガジンなどが大量に支給された子は要注意だぞ☆』
『廃坑の入り口は実は地図に乗ってる所以外にもあったりなかったり(ぉ』
『海の家の屋台って微妙なもの多いよね〜』
少なくともこの3文はあります。
※“最後に.txt .exe ”を実行するとその付近のPC全てが爆発します。
※↑に首輪の技術が使われている可能性があります。ただしこれは沙羅の推測です。
※双葉恋太郎の銃“S&W M60 チーフスペシャル(5/5)”は暴発しました。
※港には中型クルーザーが停船していますが、エンジンは動きません。
※パソコンに情報端末をつなげるとエンジンが動くというのはあくまでも沙羅の推測です。


737 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:15:32 ID:qUdw5e+X
 

738 : ◆jWwIlynQcU :2007/07/10(火) 12:15:50 ID:u8Xh7Ywt
【G-4 住宅街南/1日目 午前】

【倉成武@Ever17】
【装備:投げナイフ2本】
【所持品:支給品一式 ジッポライター、貴子のリボン@乙女はお姉さまに恋してる】
【状態:L5侵蝕中。軽度の疲労。頭蓋骨に皹(内出血の恐れあり)。頬と口内裂傷(出血中)。頚部に痒み】
【思考・行動】
0:やはり俺の体はどこかおかしい……?
1:L5侵蝕中(軽度)
2:土見稟を追い神社へ、参加者殺害を防ぐ
3:知り合いを探す。つぐみを最優先
4:土見稟をマーダーと断定
5:金髪の少女(芳乃さくら)をマーダーとして警戒
6:佐藤良美を警戒
7:余裕があれば救急車の燃料を入れる。
【備考】
※キュレイウィルスにより、L5の侵蝕が遅れていますが、発症はしています。侵蝕状況は次の書き手さんにお任せします。
※前原圭一、遠野美凪の知り合いの情報を得ました。
※救急車(鍵付き)のガソリンはレギュラーです。現在の燃料は残り2/3です。

739 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:16:16 ID:qUdw5e+X
 

740 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:17:08 ID:qUdw5e+X
 

741 : ◆jWwIlynQcU :2007/07/10(火) 12:17:13 ID:u8Xh7Ywt
【前原圭一@ひぐらしのなく頃に祭】
【状態:精神安定、右拳軽傷、腹部に軽度の打撲、左肩刺し傷(左腕を動かすと、大きな痛みを伴う)】
【装備:柳也の刀@AIR】
【所持品:支給品一式×2、キックボード(折り畳み式)、手榴弾(残4発)】
【思考・行動】
基本方針:仲間を集めてロワからの脱出、殺し合いには乗らない、人を信じる
0:血まみれになってこの子は一体……?
1:美凪を守る
2:美凪や武と共に稟を止めるため神社に向かう
3:知り合いとの合流、または合流手段の模索
4:良美を警戒
5:土見稟を警戒
【備考】
※倉成武を完全に信用しました
※宮小路瑞穂、春原陽平、涼宮茜、小町つぐみの情報を得ました



【遠野美凪@AIR】
【状態:健康】
【装備:悟史のバット@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:包丁、支給品一式×2、救急箱、人形(詳細不明)、服(詳細不明)、顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)】
基本方針:圭一についていく
0:この人は確か……。
1:知り合いと合流する
2:佐藤良美を警戒
3:土見稟を警戒
【備考】
※病院のロビーに圭一のメモと顔写真が残されています。
※倉成武を完全に信用しました
※宮小路瑞穂、春原陽平、涼宮茜、小町つぐみの情報を得ました

742 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:18:11 ID:qUdw5e+X
 

743 : ◆jWwIlynQcU :2007/07/10(火) 12:18:56 ID:u8Xh7Ywt
【咲耶@Sister Princess】
【装備:S&W M627PCカスタム(8/8)地獄蝶々@つよきす】
【所持品:支給品一式 食料・水x4、可憐のロケット@Sister Princess、タロットカード@Sister Princess 
       S&W M627PCカスタムの予備弾61、肉まん×5@Kanon、虎玉@shuffle、ナポリタンの帽子@永遠のアセリア
       日本酒x3、工事用ダイナマイトx3、ポリタンク石油(10L)×3、発火装置、首輪(厳島貴子)】
【状態:身を隠しています。極度の緊張】
【思考・行動】
基本方針:自分と姉妹達が死なないように行動する
0:とりあえず今は話を盗み聞きし情報収集する。
1:衛、千影を探し守る。
2:首輪を解析する能力を持つ参加者を探して利用する
3:三人(武、圭一、美凪)の向かう先に妹、もしくは利用できそう参加者がいなければ皆殺し
4:姉妹以外の参加者は確実に皆殺し
5:余裕がある時は姉妹の情報を得てから殺す
6:宮小路瑞穂に興味


744 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 12:18:58 ID:qUdw5e+X
 

745 : ◆jWwIlynQcU :2007/07/10(火) 12:20:05 ID:u8Xh7Ywt

【月宮あゆ@Kanon】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、ランダムアイテムの内容は不明】
【状態:疲労極めて大。混乱。恐怖。喉に紫の痣。左肩に抉り傷(左腕に力が入らない)】
【思考・行動】
0:気絶中
1:ここから逃げたい
2:早く祐一と会いたい
3:往人を説得したい
【備考】
※名雪は死んだと思っています
※佐藤良美を疑ってはいません
※芙蓉楓を危険人物と判断
※前原圭一・古手梨花・赤坂衛の情報を得ました(名前のみ)
※ハクオロという人物を警戒(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※名雪の第三回放送の時に神社に居るようようにするの情報を得ました
  (禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※月宮あゆ、水瀬名雪の通った後は、注意すれば血痕が残っているのが分かります。
※咲耶は救急車から降りて、近くの民家の生垣越しに圭一達の様子をうかがってます。

746 :知る者、知らざる者 ◆g8qXEEkC.6 :2007/07/10(火) 23:28:37 ID:8hFhw5YW
急な石段を昇り切ると、そこは古ぼけた神社だった。
「アカサカ殿はまだいらしていない様だな」
無人の境内を見回しながら呟かれたトウカの言葉に答を返す物は無い。
彼女の同行者の一人である千影は顔を青くしながら頷き返し、
もう一人のオボロに至っては、ただ何かに憑かれたように黙りこくっているだけだった。
「ま、まあ、まだ約束の時刻までには時間があるようだからな……さ、千影殿、奥の社で休息をとりましょう」
続くトウカの言葉にも二人は同じ反応を示し、社に向かう三人の間には再び沈黙が舞い降りる。
(……まったく。千影殿はともかく、オボロはいったいどうしたというのだ?)
思えば、この島で再会した時からオボロの様子はおかしかったのだ。
千影殿と互いの支給品等について会話していた時も、何か心に引っかかる事でもあったのか、終始上の空な様子だった。
それに、最初にトウカの目前に飛び出した時にも感じたのだが、普段より彼の体のキレが鈍かったような気がしたのだ。
とそこまで考えて、つい数十分前に千影と交わしていた会話をトウカは思い出す。
(そうだ、我々の体には“制限”がかけられていたのであったな)
一定以上の『力』を持った者は主催者の手によりその力を封印されている。
それがこの神社に来る道中で千影が話した推論――否、結論だった。

747 :知る者、知らざる者 ◆g8qXEEkC.6 :2007/07/10(火) 23:29:13 ID:8hFhw5YW
赤坂衛と戦った際に感じた体の重さも、主催者のかけたという制限のせいだったのだろうとトウカは思う。
千影の言う制限がオボロのこの状態と関係はあるとは限らないが、それでも心に留めておいたほうがいいだろう。
(千影殿も魔法の力を制限されているそうであるし、某が気を引き締めねば……)
と、突然、風に乗って聞こえてきた異音が、トウカの思考を妨げた。
それは今まで聞いた事の無い乾いた音。あえて言うならば、右手と左手を思い切り打ち合わせたような音だった。
三度続いたその軽い音に、トウカは首を傾げた。
「今の音は一体?」
「……今のは、銃声だね。どうやら、近くの様だけど」
トウカの困惑に千影が呼吸を整えながら答える。
しかし、帰ってきた耳慣れない言葉にトウカは更に疑問を深め、オボロもまた困惑の表情を作った。
「そうか、銃を知らないのか……」
同じ表情を浮かべる二人に対し、千影は困った表情を返す。
やがて、本殿への歩みを再開しながら、彼女は銃についての説明を始めた。




748 :知る者、知らざる者 ◆g8qXEEkC.6 :2007/07/10(火) 23:30:14 ID:8hFhw5YW
「つまり、小さな鉄の矢を高速で撃ち出す武器という事か?」
そう確認するオボロの言葉に、本殿の壁に背を預けながら千影は首を縦に振った。
銃。それはオボロやトウカの住む世界には存在しない、未知の武器だ。
千影の説明によると、それはオボロが現在装備している物に吹き矢を足したような形状らしい。
しかし矢の速度は比べ物にならないほどで視認するのは困難であり、射程も倍以上ある物が多い。
その上、元来暗殺用であるはずの吹き矢とは違い、毒など塗らなくても相手を死に至らしめる可能性が高く危険な物体である。
そして、千影に支給された予備の矢を見る限り、この島には数多くの銃が存在している。
それが千影の行った銃器に関する簡単な説明だった。
「その銃を使った者が、敵か味方かはわからぬが……」
「確認をするにしても、今の俺達の装備では不安もあるか」
千影の行った銃の解説に、トウカとオボロは顔を見合わせる。
もし相手が銃という強力な武器を持っているのならば、襲われる危険性を考慮しても接触しない方が無難かもしれない。
しかし、その人物がどういう人間で目的地は何処なのか……
もしかすると、それが殺し合いに乗っていて、ここに現れるかもしれないという可能性がある限り、危険性は同じである。
「……俺が様子を見てこよう。そういう仕事は、俺の得意な領域だ」
少しの沈黙の後、オボロはそう言った。
無論、自身が得意だからというだけでは無い。
そう提案した理由の大半は、千影と同じ場所に居たくないという後ろ向きな思いで占められていた。

749 :知る者、知らざる者 ◆g8qXEEkC.6 :2007/07/10(火) 23:30:52 ID:8hFhw5YW
「速いと言っても、射線が曲がったりするわけで無いんだろう?」
オボロの確認に千影が頷く。
それならば問題は無いと、オボロは支給されたクロスボウを片手に本殿を出ようとする。
「少し、待つんだ」
不意に背後からかけられた少女の声にオボロは足を止めた。
呼び止めた千影は自らのデイバッグに手を伸ばすと、少し躊躇しながら支給品を取り出した。
「これを、君に……渡すのは五分の一だけだけど、役に立つはずだ」
そう言って千影はクロスボウの予備弾を渡す。
そして、それを見ていたトウカも自らの鞄から小さなナイフを取り出した。
「本来の得物には及ばぬであろうが、無いよりはマシだろう」
「すまない……」
二人から武器を受け取り、オボロは軽く頭を下げる。
そして、代わりにと言うように、自らの鞄から四角い物体を取り出し、千影に手渡した。
「これは俺に支給された物なんだが、使い方が解らん。お前がわかるなら使ってくれ」
そう言い残すとオボロは本殿の戸を開け、外へと向かい飛び出していった。




750 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 23:32:49 ID:uDKJZyDa
支援(・3・)

751 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 23:33:58 ID:uDKJZyDa
 

752 :知る者、知らざる者 ◆g8qXEEkC.6 :2007/07/10(火) 23:34:26 ID:8hFhw5YW
数分後。
戸を閉め切って薄暗くなった本殿の中で、千影は一人、休息を取っていた。
外ではトウカが見張りに立っており、緊張した空気が外から漂ってきている。
(オボロくん……無事に帰ってきてくれればいいが)
勿論、彼の事を完全に信用したわけでは無かった。
だがしかし、偵察に向かってそのまま死ぬ事を願う程、千影は非情では無い。
それに、もう一人の同行者であるトウカは、ここに来るまでの会話でも信用できると判断できた。
だからこそ、その彼女の仲間であるオボロにボーガンのボルトを(20本だけだが)譲ったのだ。
(彼が殺し合いに乗ってるかどうかは解らないけど、今は無事に帰る事を祈ろう)
オボロの無事を祈りながら、千影は長方形の形をした物体を弄んでいた。
偵察に出る間際のオボロから渡された物。
支給されたオボロやトウカが何に使うか理解できなかったそれを、千影はよく知っていた。
(それにしても、見た事が無い機種の携帯だね)
少し大きめのディスプレイと通常より多めのボタンがついているが、それは紛れも無く携帯電話だった。
もっとも、バッテリーが切れているのか何処を触ってもうんともすんとも言わなかったが。
(誰かに充電用の機器が支給されているのか、それとも……)
すこし思案したが、答えが出ないのは解りきっているので保留する。
その頑丈そうなボディを懐に仕舞いながら、千影は別の事を考え始めた。
(さて、オボロくんが帰ってきて、トウカくんの言うアカサカという人物と接触したら……それから、どうしようか?)
オボロやアカサカと合流し情報交換を行ったとしても、第三放送までにはまだ余裕がある。
体は少し楽になってはいるが、大事を取ってここで休息を取りながら待つか、
このエリアを中心とした一帯で妹達を探しながら折を見て神社に戻るか。
「それとも、他の永遠神剣を探してみるか……」
そう一人ごちながら、千影は現在までに確認できた二本の永遠神剣へと思考を移した。

753 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 23:34:57 ID:uDKJZyDa
 

754 :知る者、知らざる者 ◆g8qXEEkC.6 :2007/07/10(火) 23:35:04 ID:8hFhw5YW
時に干渉する力を持つ永遠神剣第三位『時詠』と、水を操る力を持つ永遠神剣第七位『存在』の二つの魔剣。
形状も能力も大きく異なるが、その名前が示す通りこの二本は同じ種類に分類できる物だ。
(おそらく、位階が高ければ高いほど強力な物という事なんだろうね)
第三位が時間を操る能力だとしたら第一位は何ができるのだろうかと、思わず身震いしそうになる。
しかし、第一位がこの島で誰かに支給されている可能性は限りなく低いだろう。
何故ならば、島に降り立つ者全てが殺し合いを行うわけではないからだ。
強力な武器は殺し合いを加速させると同時に反逆のリスクをも生む。
だからこそ、永遠神剣の第一位がこの場所に存在する確率は低い。
それどころか、ここにある永遠神剣でもっとも位階が高い物は『時詠』であると考えてもいいだろう。
(……逆に言えばあの金髪の女達――殺し合いの主催者は『時詠』に対抗する自信があるという事か)
確かに、一回使用しただけで極度の疲労を生むような物を使いこなすのは難しいだろう。
だが、その疲労を鑑みても『時詠』の時間に干渉する能力はまだ強力だ。
例えば『時詠』で加速した状態で首輪を無理矢理外して遠くに投げでもすれば、難なく首輪の解除が成功してしまう。
そうなれば全員の首輪を解除せずとも、もはや殺し合いをさせるという主催者の目的は頓挫する。
それだけのリスクを生む物を支給品に混ぜる事ができるという事は、少なくともその可能性に対処する方法があるという事だろう。
(あまりにもバカらしい方法だけど、殺し合いを止められるのなら考えてみるのも悪くは無いかな……)
古い壁に体を預けてまどろみながら、千影は殺し合いを止める方法について模索し続ける。
その鍵ともいえる物の一つが、自分の懐にある物だとは気付かぬままに。
その四角い形状の物体――PDA(情報携帯端末)が静電充電機能付、すなわち本体を振れば充電が行われる事に気付かぬままに。





755 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 23:35:37 ID:uDKJZyDa
 

756 :知る者、知らざる者 ◆g8qXEEkC.6 :2007/07/10(火) 23:35:51 ID:8hFhw5YW
【D-4 神社付近/1日目 午前】

【オボロ@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
【装備:クロスボウ(ボルト残27/30)】
【所持品:支給品一式、カルラの剣@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄
     果物ナイフ、エルルゥのリボン】
【状態:全身に擦り傷・中程度の疲労・困惑】
【思考・行動】
 基本行動方針:襲ってくる者には手加減無し。西へ向かうのは止めた。
 1:神社周辺の偵察
 2:敵意を持つ参加者の排除
 3:エルルゥを殺した犯人を殺す
 4:千影の扱いに迷い、彼女の妹を殺した事に対する強い良心の呵責(殺す意志は消失)
 5:ハクオロ、アルルゥと一度合流

※四葉を殺した事をいっそう後悔しています
※銃についての大まかな知識を得ました



757 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 23:36:23 ID:uDKJZyDa
 

758 :知る者、知らざる者 ◆g8qXEEkC.6 :2007/07/10(火) 23:36:42 ID:8hFhw5YW
【D-4 神社/1日目 午前】

【トウカ@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
【装備:舞の剣@Kanon】
【所持品:支給品一式、永遠神剣第七位『存在』@永遠のアセリア−この大地の果てで−、
     スペツナズナイフの柄】
【状態:精神的疲労】
【思考・行動】
 基本:殺し合いはしないが、襲ってくる者は容赦せず斬る
 1:周囲を警戒しつつ、赤坂衛とオボロを待つ
 2:アルルゥを探し出す
 3:ハクオロと早急に合流し守る
 4:オボロが心配
 5:千影を守る
 6:次に蟹沢きぬと出会ったら真偽を問いただす


※蟹沢きぬが殺し合いに乗っていると疑っています
※舞の剣は少々刃こぼれしています
※銃についての大まかな知識を得ました


※永遠神剣第七位"存在"
 アセリア・ブルースピリットが元の持ち主。両刃の大剣。
 魔力を持つ者は水の力を行使できる。
 エターナル化は不可能。他のスキルの運用については不明。
 ウォーターシールド…水の壁を作り出し、敵の攻撃を受け止める。
 フローズンアーマー…周囲の温度を急激に低下させ、水分を凍結させ鎧とする。



759 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 23:37:04 ID:uDKJZyDa
 

760 :知る者、知らざる者 ◆g8qXEEkC.6 :2007/07/10(火) 23:37:44 ID:8hFhw5YW
【D-4 神社本殿内/1日目 午前】

【千影@Sister Princess】
【装備:永遠神剣第三位『時詠』@永遠のアセリア −この大地の果てで−】
【所持品:支給品一式 バーベナ学園の制服@SHUFFLE! ON THE STAGE
     銃火器予備弾セット各100発(クロスボウの予備ボルトのみ残数80/100)、バナナ(フィリピン産)(2房)
     倉成武のPDA@Ever17-the out of infinity-】
【状態:疲労(大)、魔力若干消費、時詠使用による虚脱感、スカートに裂け目】
【思考・行動】
 基本行動方針:ゲームには乗らないが、襲ってくるものには手加減しない。
 1:休息を取りながら、赤坂衛とオボロを待つ
 2:四葉を殺した人間に強い恨み
 3:衛、咲耶の捜索
 4:永遠神剣に興味
 5:相沢祐一、北川潤、月宮あゆ、朝倉純一、朝倉音夢、芳乃さくら、杉並の捜索
 6:相沢祐一に興味
 7:魔力を持つ人間とコンタクトを取りたい
 8:『時詠』を使って首輪が外せないか考える


761 :名無しくん、、、好きです。。。:2007/07/10(火) 23:37:45 ID:uDKJZyDa
 

762 :知る者、知らざる者 ◆g8qXEEkC.6 :2007/07/10(火) 23:38:19 ID:8hFhw5YW
※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※トウカの事は信用できると評価しました。オボロへの警戒が緩んだわけではないですが、トウカの仲間なので少しは信じてみようかと考えています。
※時詠を使用すれば首輪を外せるんじゃないかと考えています(ただし可能性は低いと考えています)
※千影は『時詠』により以下のスキルが使用可能です。
 タイムコンポーズ:最大効果を発揮する行動を選択して未来を再構成する。
 タイムアクセラレイト…自分自身の時間を加速する。
 他のスキルの運用は現時点では未知数です。
 詳しくはwiki参照。
 またエターナル化は何らかの力によって妨害されています。
※未来視は時詠の力ではありません。
※銃火器予備弾セットが支給されているため、千影は島にどんな銃火器があるのか全て把握しています。
 見た目と名前だけなので銃器の詳しい能力などは知りません。

※倉成武のPDA
 情報携帯端末。簡単に言えばネット通信機能搭載の超小型パソコン。携帯電話も内臓されている。
 また、静電充電機能で身に着けて歩行などすれば充電可能。ちなみに完全防水である。

763 :代理トウカ◇/Vb0OgMDJY氏の作品:2007/07/11(水) 23:41:45 ID:JzIk1oe0
「ここが、プラネタリウム?」
「ああ、とりあえずこの中は衛と会う前に調べたから、安全なはずだ。ここで一度休憩にしよう。」
(ただ、俺が調べた後に誰も此処を訪れていないとは限らない……か)
「……ゴメンね、ボクのせいで」
「だから言ったろ、俺の足の怪我のせいだって」

 博物館での襲撃を退けた悠人と衛は新市街での物資調達の後、C-2エリアとの境界付近を通ってD-3に移動し、北の方にある施設を目指していた。
 だがその道のりは平坦なものではなかった。
 先ほどの衝撃者たちの仲間(といっても一時的に手を組んだだけの関係のようだが)は車で移動したように見せて、近くに潜んでこちらを狙っているという可能性がある上に、他の危険人物がいないとも限らない。
そして、遠距離からの狙撃という手段が存在している事を確認した為、今まで以上に慎重に移動せざるを得なかったのだ。
 そしてそれは、殺し合いという場に慣れていない衛には負担が大きく、この先の道のりを考えると、一度安全な場所(幸い目的地の一つであるレジャービルへの道のりの近くにある)であるプラネタリウムで休憩をとってから、改めて北を目指したほうが良いと悠人は考えた。
 無論、気を使われている事を察した衛は反対したが、悠人の気持ちを無碍には出来ず、二人はプラネタリウムを目指すことにした。
そうしてC-2が禁止エリアになった少し後、二人はようやくプラネタリウムに到着したのだった。


「念のため中を確認してくるから、事務室の中に隠れていてくれ」
そう言って内部へ向かった悠人を見送った後、衛はそこにあったソファーに座り込んだ。
(疲れたな……)
まず最初に考えたのはそれだった。慣れない殺し合いという場、知り合った女性、仲の良い姉妹の死、そういったものは想像以上に衛の心身を疲弊させていた。
(ボク……悠人さんに迷惑ばっかりかけちゃってるな……)
 悠人の不器用な気遣いには、衛は勿論気づいていた。そのことを嬉しく思う反面、自分が悠人の――たとえ本人は気にしていなくても――足かせになっている事はとても心苦しかった。
(もっと頑張らないといけないな……)
 そんなことを考えながら、衛の意識は安らかな眠りへと落ちていった。

764 :代理トウカ◇/Vb0OgMDJY氏の作品:2007/07/11(水) 23:42:49 ID:JzIk1oe0
――どこか、暗いのに明るい所にいた
 見たことの無い場所、初めて見るのに何故か安心できる場所。
 
そして、衛の視界には二度と会えない相手、遥が写っていた。

“衛ちゃん、ありがとう”
(遥あねぇ、どうしてお礼なんかいうの。ボク、遥ねぇを助けられなかったんだよ)
“ううん、私のことは衛ちゃんのせいじゃない”
(でも、ボク、孝之さんのことも見つけられなかったし、悠人さんがいなかったら、多分遥あねぇを埋めてあげることも出来なかったんだよ)
“そうじゃないの、衛ちゃんがマヤウルの贈り物をくれて、孝之さんを連れてくれるって言ってくれてからの時間は、私にとってとても幸せな時間だった。”
(遥あねぇ……)
“だから――衛ちゃん、ありがとう”
(遥あねぇ!)

 優しい微笑みだけを残して、遥の姿はもうなかった。
 
そしていつのまにか衛の姉妹、四葉の姿がそこにあった。

(四葉ちゃん!)
“衛ちゃん、兄チャマをお願いするデス”
(四葉ちゃん、そんなこと言わないでよ!)
“咲夜ちゃんと、千影ちゃんを導いてあげて下さい”
(皆で……あにぃの所に……帰ろうよぉ……)
“兄チャマには、ゴメンナサイと伝えて欲しいのデス”
(やだよぉ……ボク……そんなこと…………言えないよ……)
“頼みごとばかりで、申し訳ないデスが”
(頼みなんて……いくらあってもいいよ、だから……)
“衛ちゃん、どうか無事に兄チャマの所へ帰って下さい、これが四葉の最後の頼みデス”

「最後」の言葉の通り、四葉は衛の前から消えてゆく
その光景を前にして衛は子供のように泣きじゃくった。

765 :代理トウカ◇/Vb0OgMDJY氏の作品:2007/07/11(水) 23:43:52 ID:JzIk1oe0
(やだよぉ、四葉ちゃん!)
“どうか泣かないで下さい……最後って言ったのにまた頼んでしまったデスね)
(四葉ちゃーーーーん!!)

結果から言うと、プラネタリウムには何の変化も見られなかった。
どうやら、自分が探索した後、この場所を訪れた人間はいないらしい。
とりあえず安堵した悠人は衛の待つ事務室へと戻ったのだが、衛はソファーに横になって眠ってしまっていた。
起こすのもかわいそうだな、と苦笑しつつ風邪をひいてはまずいのでロッカーの中にあった制服を毛布代わりにかけて、その横で休憩がてら新市街にて手に入れた食料や医薬品の整理をしていた。
外から丸見えではまずいのでカーテンを閉め、その隙間から時たま外を監視しながら、この後の行動を考えていたら、何やら衛の様子が変だなと思い起こそうと近寄った時

「四葉ちゃーーーーん!!」
と叫びながら、眠っていた衛が跳び起きた。
 ハァハァと息を切らせながら飛び起きた衛は、少しの間キョロキョロと周りを見ていたが、やがて隣にいる悠人に目を向けた。
「アレ……悠人さん?」
「ん、ああ、目が覚めたのか衛」
 いきなり叫んだ衛に若干驚きながらも、悠人は普通に返事を返した。
「え? ……目が覚めた、ってボクもしかして眠っちゃってたの!?」
 悠人の足を引っ張らないように頑張ろう、と考えていたのだが疲労のほうはそれを許してはくれなかったようだ。

「ゴメンナサイ! 悠人さんの事ほっといて眠っちゃうなんて」
「ああ、気にするな、どうせ休憩する予定だったんだから」
 安全確認に行った悠人を待てずに眠ってしまった事を謝る衛に、悠人はそう返した。
「とりあえずこの中は何も変わっていなかった、俺が調べた後は誰も来ていないじゃないかな」
 だからここは安心だ、と続けた後、先ほどまで衛が飛び起きた事を思い出して、
「それより、なんだか急に起きたみたいだけど、どうしたんだ」
 と、尋ねた。
 そしてそれを聞いた衛は急に慌てだしたが、
「あ、そうだ! 四葉ちゃんが消えちゃ…………あ」
 と言ったきり黙りこんでしまった。

766 :代理トウカ◇/Vb0OgMDJY氏の作品:2007/07/11(水) 23:46:10 ID:JzIk1oe0

その言葉と衛の様子を見て、悠人は衛が何を考えているのかを察した。
それはかつて自分が通った道。死んでしまった大切な人達の事を悔やみ、何も出来なくなりそうな状態。あの時は自分には親友達が居た、何をおいても守りたい存在―香織が居た。それは、自分に前に進む力をくれた。
衛にも会いたいと思っている人達はいるが、今そばにはいない。
なら、「今」衛のそばに居る自分が力になってやるべきなのだろう。

そう思い、悠人は口を開いた。
「四葉……って子の夢を見たのか」
 その言葉に衛は“ビクッ”と震えたが、ややあってから返事を返した。
「……よつば…ちゃんと……はるかあねぇ……が……」
 途切れ途切れの声。
 その、今にも泣き出しそうな声を聞きながら、
「二人に……会ったのか」
 と、努めて優しい声で返した。
 その言葉に、衛は首を縦に振って肯定の意をしめし、
「…よつばちゃんが……お願い……します…って…………はるかあねぇが…………あり…が……とう……て」
 嗚咽交じりの返答をした後

「ボクっ……何も出来なかったのに!!
 二人が生きている間になにもしてあげられなかったのに!!
 それなのに!
 それ…なのに……ふたりとも……やさしい……こ…え……で」

 半ば叫びながら、半ば……泣きながら、言った。
 それで、わかった。
 いや、わかっていたことだった、
衛は優しい子だ、
優しすぎる子だ、優しすぎて自分を責めている。
 遥の願いを叶えられなかった事、死なせてしまった事。
 四葉を死なせてしまった事、自分から探しに行かなかった事。
 それらが全て自分の責任だと思ってしまっている。
 自分が何も出来なかったから、自分が遅かったから、自分が、自分が、と自らを責めてしまっている。

767 :代理トウカ◇/Vb0OgMDJY氏の作品:2007/07/11(水) 23:48:01 ID:JzIk1oe0

「……俺も、衛が居てくれて嬉しいと思っている」
だから、そう言った。
「…………え?」
「衛が、守りたいと思える相手が、そばに居るということに俺はすごく感謝している」
 自分の、彼女たちの思いを伝えるために
「衛みたいな子だから、守りたいって思う」
 自分達がどう思っているのかを
「衛みたいな子だから、遥さんや四葉ちゃんは、感謝したんだと思う」
 衛は何も悪くないと
「衛が、衛の出来ることをしていたから、衛だったから、そう思う」
 衛に伝えるために
「だから、衛には責められる事は何もないんだ」
 正直な気持ちを
「だから、泣かないでくれ、衛」
 伝えた。

768 :代理トウカ◇/Vb0OgMDJY氏の作品:2007/07/11(水) 23:48:52 ID:JzIk1oe0
「ボクは……遥あねぇを助けられなかったんだよ」
 少しして、静かな声で衛は言った。
「俺だって、助けられなかったさ」
 静かに、返した。
「……四葉ちゃんを見つけられなかったんだよ」
「俺だって、アセリアやエスペリアを見つけていない」
 事実を
「何も、出来なかったんだよ」
「少なくとも、俺は衛に助けられたぞ」
 気持ちを
「ボク、何もしてないよ」
「博物館の時のこと、忘れたのか?」
 感謝を
「迷惑かけてばかりだよ」
「俺だって、足の怪我で迷惑かけてるぞ」
 様々なものをこめて
「……遥あねぇと、四葉ちゃんは、……死んじゃったんだよ」
「それは、衛のせいじゃない」
 最後に、強い思いをこめて返した。

「遥さんも、四葉ちゃんも、その他の死んだ人も、死んだのはこのよくわからない世界のせいだ」
 強い感情をこめて話す。
「衛は出来ることをした、だから絶対に衛のせいじゃない」
 悪いのはこんなことをしている連中だと
「忘れろとは言わない、悔やんでもいい」
 衛に責められる謂れはないと
「でも、自分を責めるな」
 強く、伝えた。

769 :代理トウカ◇/Vb0OgMDJY氏の作品:2007/07/11(水) 23:50:12 ID:JzIk1oe0


「……悠人さん、有り難う」
 少ししてから、衛は言った。
「気にするな」
 と、答え
「少し、落ち着いたか?」
 と、尋ねた。
「うん」
 と、少し元気に衛は答えた後
「……四葉ちゃんに、泣かないでって頼まれたのに、泣いちゃったな」
 寂しそうに言った。
「泣き止んだんだから、いいと思うぞ」
 という悠人の言葉に
「うん、そうかもね」
 いつもよりは元気の無い、でもいつも通りのように返事をした。

「それで、これからどうするの」
「とりあえず、もう少し休憩してから、予定通り北に進もう」
 少し後、表面上はいつもの元気を取り戻した衛と悠人は、これからの事を話し合っていた。
「そういえば、さっき言っていた人達が、悠人さんの知り合いの人なの?」
 ふと、思いたった衛の質問に
「ああ、アセリアとエスペリア、大事な仲間たちだよ」
 素直に返し
「そういえば、その咲耶って子と、千影って子は友達なのか?」
 何とは無しに質問してしまった。

770 :代理トウカ◇/Vb0OgMDJY氏の作品:2007/07/11(水) 23:51:14 ID:JzIk1oe0
「ううん、咲耶ちゃんと千影ちゃん……それに四葉ちゃんは大事な姉妹だよ」
「ふーん、四人姉妹か」
「ううん、12人だよ」
「じゅっ!?」
(12人姉妹!?)
「あれ、どうしたの?」
「い、いや、何でもない」
(……深く考えないようにしよう)
 そうした。

「それから、孝之って人も見つけてあげないと」
「……遥さんの知り合いって人か」
 内心の疑惑を隠して、悠人は返した
「うん、……遥さんの事、ちゃんと伝えてあげないと」
「……そうだな」
(知らせる必要は無いかもしれないが、とりあえず本人に会うまでは保留だな)
 とりあえず、その話はここまでにして、この世界に関する重要なはなしをしようとして、
  
それはドアの外から聞こえてきた
 「フム、かなり大きい建物のようだな」
 「誰も、居ないのでしょうか」
その時、二人は重要な事、他に人間が訪れるかもしれないという事を忘れていたと思い出すことになった。

   ◇    ◇    ◇

遡ること数分前、禁止エリアから離れたハクオロ、観鈴、瑛理子の三人は、次の目的地であるプラネタリウムを目指していた。
そして、その道のりの間、瑛理子は予想外の収穫を得ていた。

771 :代理トウカ◇/Vb0OgMDJY氏の作品:2007/07/11(水) 23:52:19 ID:JzIk1oe0
「プラネタリウムを知らないですって?」
「ああ、どんな建物なんだ?」
「……星を見る為の施設のことだけど」
「星を? 星なら夜になれば見れるだろう」
「都会だと見れないのよ」
「あの、ハクオロさんはトゥクルス、っていう別の世界の国の王様なんだそうです。 だから」
 噛み合わない会話を補足するべく、観鈴が瑛理子に言った。
「……別の世界ですって?」
 正直、正気を疑う発言だ。
「……観鈴、私の国の名前はトゥスクルなのだが」
 だが、彼は妄言を吐くような人物ではない。
「えっ、あ、ごめんなさい」
 むしろ逆に、強い知性と理性を感じる人間だ。
「まあ、気にしなくていい。 ……次はないがな」
 そして、「王」という地位も彼にふさわしいもののように感じる。
「え? その? わ、私」
 だが、異世界と言われて即座に納得も出来ない
「はっはっはっ、冗談だ。 だがなるべく間違えないでくれるかな」
 しかし、もしも本当だとしたら。
「え、……もう!ひどいです!」
ハクオロと観鈴のやり取りを聞き流しながら、瑛理子は考え続ける。
その疑問の答えが、十数分後に出るとも知らずに。


 「フム、かなり大きい建物のようだな」
 「誰も、居ないのでしょうか」
あれから数分後、三人はプラネタリウムの中へと入った。
無論、警戒は怠ってはいないが、こちらを伺うような気配は感じられなかったので、三人で入る事にしたのだ。
「ホールみたいな広い所に隠れる人間はいないと思うけど、一応一通り見て回るべきね」
 「それから、なるべく脅かさないように進むのが良いだろうな。 我々が殺し合いをするつもりが無いということを示すために」
 それは、特に深い意味をこめて言った言葉ではなく、ただ確認事項のようなつもりだったのだが、その言葉に対して意外なところから返事が来た。

772 :代理トウカ◇/Vb0OgMDJY氏の作品:2007/07/11(水) 23:54:55 ID:JzIk1oe0
「!? 何だと!!」
 驚愕。
 誰かが居ることを期待してはいたが、まさかこんなに早く出会うとは思ってもいなかった。
 外を監視していた気配もないのに、入り口付近で待っている人間がいるとは思わなかった。
慌てて声のしたほうを見ると、そこにあるのはドア。
 いや正確に言えば、ドアの隙間からこちらに向いている銃口だった。


 後悔、まず初めに感じたのはそれだった。
 この狭い事務室の中では隠れることも出来ない。 そして、相手が機関銃などでも持っていたら、それで終わりだ。
 ならば、こちらが待ち伏せを行うしかない。
 そう思い、言葉をなくしている衛にロッカーの中に隠れるように言い、ドアの隙間から(開くときに気づかれないかは賭けだったが)相手を観察しようとしたところ
 「それから、なるべく脅かさないように進むのが良いだろうな。 我々が殺し合いをするつもりが無いということを示すために」
という声が聞こえてきた。
 その声に内心の喝采を上げながら相手を見ると、仮面をつけた男一人と悠人と同じくらいの年齢の少女が二人。(ちなみに悠人の部下に、恥ずかしがり屋で仮面を付けているスピリットがいるので、ハクオロの仮面に関してはなんとも思わなかった)
 男の方の物腰からかなりの強さを感じたことで、逆に警戒心は薄くなった。
 殺し合いをするつもりなら、強い人間と弱い人間が組むとは考えづらいからだ。
 だが、念を入れと脅しのため銃を持ち、
「それは、本当だろうな」
 と、声をかけた。

773 :代理の代理:2007/07/12(木) 00:39:44 ID:IU7typAw
 数分後、衛を含めた5人は事務室の中で話し合っていた。
 接触時に剣呑な空気が流れたが、悠人の声にあまりにも驚いた観鈴が
「ひゃっ」
 と声を出して盛大に転んでしまい、それが悠人の警戒心をといたのだ。
(余談だが、このことで観鈴はハクオロと瑛理子からお手柄とからかわれた)
それぞれの自己紹介を終えた後、瑛理子は内心で考えていた。
(高嶺悠人ね……リストに載っている人間に続けて会えるとはね)
 言うまでもなく、ハクオロと同じくリストに載っていた人間、悠人についてだ。
(彼も信用できる人間のようね)
 衛という少女(こちらも信用できそう)を保護しており、先ほどの対応を見る限りでは中々頼りになる相手のようだ。
 などという瑛理子の思考は衛の言葉によって中断されることになった。
「鳴海孝之ですって」
 あまり愉快ではない相手の名前を聞いたからだ。
「知っているの? 瑛理子さん!」
 衛が聞いてくる
「その遥っていう子には悪いけど、あまり良い印象の相手じゃあないわよ。 四時間くらい前に博物館で別れてそれっきりね。」
 それを聞いて衛は少しショックを受けたようだった。
「そんな、……そんな近くにいたんだ」
 と弱い声で言った。
 その衛を観鈴がなぐさめる。
 が、悠人は少し考え込むと、
「その孝之って人とはいつ頃会ったんだ」
 と聞いてきた。
「……見つけたのは開始早々ぐらいね、ただ信用できる相手かわからなかったから、しばらく尾行して話したのはほんの数分」
 あまり答えたい問いではなかったが、嘘をつくわけにもいかず、どうして別れたのかの部分だけ隠して答えた。
 それを聞いて悠人は少し考えていたが、
「そうか」
 とだけ答えた後
「衛、とりあえず大体の居場所はわかったんだから、一緒に探しに行こう」
 と衛に告げた
(予想はしていたけど……)
 とその展開に内心で舌打ちをした。

774 :代理の代理:2007/07/12(木) 00:41:26 ID:IU7typAw
その文字に驚いたようだったが、何とか返事を返してきた。
「じゃあ、孝之さんや他の探している相手を見つけたら、そっちに向かってもらうってことでいいのか」
“大丈夫なのか?”
「……ええ、そのことなんだけど、出来れば一度、そうね15時くらいには工場に来て欲しいの」
 と言った。
“首輪の現物があるから、それを調べようと思ってるの”
「……何故だ?」
「工場のあるエリア一帯はマップの端っこで、しかも二箇所からしか入れないから、籠城するにはもってこいなの」
 これは事前にハクオロと決めてあった事だ。
 守りやすいのは事実だし、工場に篭る建前にもなる。
 そして時間を区切れば、探している人間が見つかるまで来ないということはなくなる。
「……つまり俺たちは偵察隊ってところか」
「そう、だから次の放送だとさすがに時間が足りないから、その次の放送の前に、一度詳しい情報が欲しいの」
 これは保険であると共に、本音だ。
 どんな人間がいるのか、どこで誰が死んだか、そういった情報は非常に貴重だ。
 そして
「じゃあ、俺たちも大体のルートを決めておいたほうがいいな」
 悠人はその裏に秘められた意図を明確に理解して答えた。
 そう、あらかじめルートが決まっていれば、……もし悠人たちが時間に工場に来れなかったとしても、そのこと自体が情報となる。
 そう理解出来たからこそ、悠人はそう言ったのだ。

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